説明

クロマトグラフィー媒体およびクロマトグラフィー器材保存溶液ならびにそれらの使用

ベンジルアルコールおよびエタノールの緩衝化抗微生物溶液およびクロマトグラフィー固形物の短期または長期保存のためのその使用。本発明は、クロマトグラフィー媒体およびクロマトグラフィー器材を長期間、例えば約2年まで、またはそれ以上の間保存するための、安定および適当な組成物に関連する。本発明はまた、細菌の増殖を阻害し、そして細菌を殺菌する液体−固体懸濁液を作成するための、新規溶液の調製および使用の方法に関連する。本発明はまた、液体−固体懸濁液を作成する、およびそのような懸濁液を保存するための組成物または溶液を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィー媒体およびクロマトグラフィー器材を長期間、例えば約2年まで、またはそれ以上の間保存するための、安定および適当な組成物に関連する。本発明はまた、細菌の増殖を阻害し、そして細菌を殺菌する液体−固体懸濁液を作成するための、新規溶液の調製および使用の方法に関連する。本発明はまた、液体−固体懸濁液を作成する、およびそのような懸濁液を保存するための組成物または溶液を開示する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフィー分析は、様々な物質の性質、成分および/または特徴を決定するための、通常使用される分析技術の1つである。しかし、クロマトグラフィー分析は広く採用されてきたが、そのようなクロマトグラフィー分析において利用される媒体および器材は、特にクロマトグラフィー媒体およびクロマトグラフィー器材が保存される場合、特に利用されないで長期保存される場合に、不純になる、または細菌性物質に感染するという一つの問題が生じた。従来の技術は、クロマトグラフィー媒体およびクロマトグラフィー器材の安全および有効な保存、特に長期保存の問題に対して、有効な解決を提供しなかった。
【0003】
リン酸(0.01−0.5N)、塩酸(0.1−0.5N)、NaOH(0.1−2N)、およびアルコール(水中で最低20%v/vのエタノールまたはイソプロパノール)のような様々な溶液が、細菌の阻害のために広く使用される。しかし、これらの溶液は高度に酸性または塩基性である、または何らかの環境的および取り扱いのリスクを有し、そしてクロマトグラフィー媒体およびクロマトグラフィー器材と適合性でない。現在の習慣では、もし水酸化ナトリウム(0.1M−0.5M)または酸(0.1M−0.5M)を使用するなら、それぞれ酸または塩基を使用することによって、それらをまず中和し、続いて十分な水で洗浄して過剰な塩を除去する必要がある。もし20%またはそれより高い濃度のアルコール(エタノールまたはイソプロピルアルコール)が殺菌効果に必要であるなら、それは適切な有機物の取り扱いおよび廃棄を必要とする。上記の溶液に加えて、pH5.0またはそれより低い緩衝液および1.0%のベンジルアルコールを含む溶液組成物を、いくつかのクロマトグラフィー媒体の保存に使用した。しかし、低いpHにおけるクロマトグラフィー媒体の低い安定性のために、低pHの調合物は、長期保存には適さない。ベンジルアルコールは、グラム陽性細菌に対する抗微生物保存剤であり、そして化粧品、食品、および広い範囲の医薬品に使用されるが、非特許文献1;および非特許文献2において示されているように、それは中程度の殺菌性質しか有さず、最適な活性はpH5.0より下で起こることが公知である。それに加えて、非特許文献2および非特許文献3において明記されているように、ベンジルアルコールの活性は、メチルセルロース、ポリエチレン、ポリスチレン、天然ゴム、ネオプレンおよびブチルゴム等のような、いくつかの包装材料との不適合性によって減少することが示された。
【0004】
従って、クロマトグラフィー媒体またはクロマトグラフィー器材の細菌感染が起こるリスクのない、または本質的に最小限のリスクである、クロマトグラフィー媒体およびクロマトグラフィー器材の安全および有効な保存を可能にする、許容可能な組成物または溶液に対する、明らかな必要性が依然として存在する。特に、クロマトグラフィー媒体またはクロマトグラフィー器材の細菌感染が起こるリスクのない、または本質的に最小限のリスクである、長期間の、例えば約2年またはそれ以上の、クロマトグラフィー媒体およびクロマトグラフィー器材の安全および有効な保存を可能にする、組成物または溶液に対する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Karabit,M.S.、Juneskans,O.T.およびLundgren,P. Journal of Clinical and Hospital Pharmacy(1986)11、281−289
【非特許文献2】R.C.Rowe、P.J.SheskeyおよびP.J.Weller、Handbook of Pharmaceutical Excipients、第4版、American Pharmaceutical Association(2003)53−55
【非特許文献3】M.S.Robertsら、Int.J.Pharm.(1979)2、295−306
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
抗微生物溶液の組成物を採用することによって、クロマトグラフィーの支持体または媒体のようなクロマトグラフィーの固形物、およびクロマトグラフィー器材と適合性である、実質的に中性のpH、一般的に約pH5.5から7.5、好ましくは約6.0から約7.5のpHを有する溶液を提供し得ること、およびそのような溶液は殺微生物および阻害の性質を維持することが、予期せず発見された。本発明の組成物または溶液は、約1.5%から約4%のベンジルアルコール、約0.5%から約4%のエチルアルコール、および約5.5から約7.5のpHで溶液を提供するために、一般的に約92%から約98%の、約50mMから約200mMの緩衝液の緩衝化抗微生物溶液を含み、ここでそれらのパーセンテージは重量パーセントである。そのような溶液において、媒体、支持体のようなクロマトグラフィーの固形物および器材を、媒体、支持体、または器材の細菌感染が起こる過度のリスク無しに、短期間または長期間、安全に保存し得る。本発明の溶液は、クロマトグラフィー媒体、支持体、または器材を、短期間または長期間これらの溶液中で保存する場合、固形物の存在下で、細菌を殺菌し、そして細菌の増殖を阻害し得る。本発明の別の特徴は、それは高度に塩基性でも酸性でもない、そして多くの(高いパーセンテージの)有機溶媒を含まないような溶液を提供することである。さらに、本発明の溶液は、通常使用されるクロマトグラフィー媒体および器材の構築物質に対して不活性である。さらに、本発明の溶液は、低毒性であり、そして環境にやさしい。
【0007】
好ましい組成物は、2%のベンジルアルコールおよび2%のエタノールを含む、pH6.0−pH7.0の溶液を提供するために、100mMのリン酸ナトリウム−酢酸緩衝液を含む。この溶液を、シリカまたはポリマー性ビーズに基づくクロマトグラフィー媒体の保存のために使用し得る。クロマトグラフィー媒体および当該溶液を用いて作成した液体−固体懸濁液は、長期間溶液を無菌に維持しながら、E.coliおよびC.albicansを2時間以内に、およびA.nigerを24時間以内に殺すことを示している。それに加えて、この溶液はまた、クロマトグラフィー媒体のような固体支持体に存在する様々な微生物を殺し、そしてそれを長期間無菌に維持することを示している。この溶液は高度に不活性および無毒性であるので、クロマトグラフィーカラムの充填または器材の清掃のような通常の操作を可能にする。それに加えて、その溶液成分を、通常クロマトグラフィー操作で使用される、水、他の緩衝液、または酢酸(1.0%)のような薄い酸で洗浄することによって、クロマトグラフィー媒体または器材表面のような表面から、容易に除去し得る。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の目的は、その溶液またはクロマトグラフィー固形物が短期間または長期間この溶液中で保存される場合に、クロマトグラフィー固形物の存在下で、細菌を殺菌し、そして細菌の増殖を阻害し得る溶液を調製することである。本発明の別の目的は、高度に酸性でも塩基性でもなく、大量の有機溶媒を含まず、不活性であり、すなわち通常使用されるクロマトグラフィー媒体および器材の構築物質を損傷せず、低毒性および環境にやさしい溶液を提供することである。
【0009】
本発明は、微生物の増殖を阻害し、そして微生物叢を殺す液体−固体懸濁液を作成するための新規溶液を提供することに関連する。より具体的には、本発明は、クロマトグラフィー固形物、特に容器またはクロマトグラフィー処理カラム中のクロマトグラフィー媒体の保存に関連する。本発明の過程は、約1.5から約4%のベンジルアルコール、約0.5から約4%のエチルアルコール、約5.5から約7.5のpHの、約92から約98%の、約50mMから約200mMの緩衝溶液を含む、抗微生物緩衝溶液を提供することを含む。本発明の別の局面は、クロマトグラフィー固形物を、そのような抗微生物緩衝溶液中で短期間または長期間保存することを含む。これは、例えば約1部分のクロマトグラフィー媒体を、約1−4部分の抗微生物緩衝溶液と容器中で混合することによって達成される、または本発明の別の局面は、密閉した容器またはクロマトグラフィーカラム中で、次回の使用まで、クロマトグラフィー媒体の抗微生物スラリーを、抗微生物緩衝溶液中で保存することである。
【0010】
緩衝化抗微生物溶液を、緩衝溶液をエタノールおよびベンジルアルコールと混合することによって作成し得る。好ましい実施態様において、ベンジルアルコールをまずはじめにエタノールと混合し、そして次いで緩衝液を加えて、約5.5から7.5の望ましいpHを得る。採用し得る様々な適当な緩衝化剤の例は、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、トリエタノールアミン、トリス(ヒドロメチル)アミノメタン(TRIS)、HEPES(N−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン−N’−(2−エタンスルホン酸))、およびMES(4−モルホリンエタンスルホン酸)を含むがこれに限らない。
【0011】
本発明の好ましい抗微生物組成物は、水中の酢酸でpH6.0に滴定した、約2%のエタノール、約2%のベンジルアルコール、および約96%、約100mMのリン酸二ナトリウムである。ポリプロピレン容器中に保存された、抗微生物溶液またはクロマトグラフィー固形物−緩衝溶液スラリーは、その抗微生物有効性および化学的組成を、少なくとも2年間維持することを示している。
【0012】
抗微生物溶液およびそのクロマトグラフィー媒体の保存のための使用は、小規模から大規模までの産業使用に非常に適当である。本発明の抗微生物溶液は、一般的に安全であると考えられる(GRAS)ベンジルアルコールを、それを扱い易くする、および容易に廃棄される4%未満のエチルアルコールと共に使用する。それに加えて、ベンジルアルコールは、約10mMから約1Mの範囲の濃度で、3.0から9.0までのpH範囲であるような、一般的に使用されるクロマトグラフィー緩衝液のどちらで洗浄することによって、クロマトグラフィー媒体から容易に除去し得る。例えば、TRIS、HEPES、MES、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムおよびリン酸ナトリウムを使用し得る。あるいは、希酢酸(0.01Mから0.5M)も、クロマトグラフィー媒体のようなクロマトグラフィー固形物から、抗微生物溶液および成分を除去するために使用し得る。
【0013】
本発明の開示において使用した材料および方法は、以下の通りである:

試験微生物
様々なアッセイにおいて使用した微生物を、American Type Culture Collection(ATCC)、10810 University Blvd.、Manassas、VA 20110−2209から得た。以下の微生物を得た:Candida albicans(ATCC#10231)、Aspergillus niger(ATCC#16404)、Staphylococcus aureus(ATCC#6538)およびEscherichia coli(ATCC#8739)。C.albicansの培養を、2%のYeast Malt Agar(YMA)(Sigma Chemical Co.#Y3127)上で維持した。A.nigerの培養を、2%ポテトデキストロース寒天(PDA)(Sigma Chemical Co.#P2182)上で維持した。S.aureusおよびE.coliの培養を、2%のニュートリエント寒天(NA)(Sigma Chemical Co.#N0394)上で維持した。全ての培養を、必要になるまで室温または5−10℃で維持し、そして定期的に(ほぼ週1回)新しい培地の滅菌プレートに画線した。
【0014】

コロニー形成単位法による抗微生物効果の決定
あらゆる所定の微生物の単一コロニーを、滅菌ループで取り、そして滅菌水または1×リン酸緩衝化生理食塩水に移し、そして1mLあたり約10,000コロニー形成単位(CFU)まで希釈した。5mLの試験抗微生物溶液(またはコントロールとするために滅菌水または0.1−1.0×リン酸緩衝化生理食塩水)に対して、0.1mLの約10,000CFU/mLの培養物を加え、そして静かにボルテックスすることによって簡単に混合した。様々な時間に、0.1−1.0mLの播種した抗微生物溶液を、空の滅菌プレートの中央に移し、そして45−50℃に維持した15mLの滅菌培地(寒天)を加え、そして十分に混合した。それぞれの微生物に加えた培地は、培養を維持するために使用したものと同じであった。プレートを室温で20−45分間維持し、次いで34−37℃に維持したインキュベーターに移し、そこで4日間維持した。定期的に、プレートを増殖に関して調べ、そしてコロニーを数えた。典型的には、コロニーが24時間で出現し、そして24、48および72時間に数えた。通常48および72時間における計測は同一であった。2番目のコントロールとして、微生物を加えない試験抗微生物溶液のサンプル(0.1−1.0mL)を、滅菌プレートの中央に加え、そして1,000−2,000CFUs/mLの、0.1mLの問題の微生物のコントロール培養を、試験サンプルから少なくとも2cmの距離を離して、プレートに加えた。前と同様、45−50℃に維持した、その微生物のために選択した15mLの滅菌培地(寒天)を加え、そして完全に混合した。これが、播種した抗微生物溶液中の微生物を殺すよりも、試験成分の存在がプレート上の増殖を阻害しているかどうか決定するために役立った。
【実施例】
【0015】
実施例1.様々な緩衝化組成物
様々な型および濃度(0.02−1.0M)の緩衝液を、適当な酸または塩基によって5.0−7.5のpHに滴定し、次いでエタノールおよびベンジルアルコールをそれぞれ2%になるように加えた。代表的な緩衝液は、酢酸ナトリウム(水酸化ナトリウムで滴定した酢酸)、酢酸−トリエタノールアミン(トリエタノールアミンで滴定した酢酸)、リン酸ナトリウム−酢酸(酢酸で滴定したリン酸二ナトリウム)、およびリン酸ナトリウム(水酸化ナトリウムで滴定したリン酸一ナトリウム)であった。典型的には、選択した緩衝化薬剤を、望ましい濃度の1.1−1.3倍で作成し、そして望ましいpHに滴定し、次いで水で希釈して、望ましい濃度を得た。pHは希釈しないストックと同じままであった。100mLのメスフラスコに、2.0+/−0.02グラムのベンジルアルコールおよび2+/−0.01グラムのエタノールを加え、そして次いで緩衝化溶液を加えた。いくつかの場合において、最終的な溶液を、滅菌0.2ミクロンフィルターを通して滅菌フラスコへろ過し、それを確実に滅菌にした。1%またはそれより多い濃度のベンジルアルコールおよび他の滅菌剤を含む溶液(エタノールの存在ありまたはなし)を用いたいくつかの試験は、24時間のインキュベーションが、その溶液が内因性微生物を含まないようにするために十分であることを示したので、これは一般的に必要でないことが見出された。その試験を、5mLの試験溶液を、滅菌ガラスチューブに移し、そして0.1mLの微生物培養物を加え、よく混合し、そして約1から24時間の適当な時間室温(20−23℃)に維持して細菌の増殖または殺菌を可能にし、次いで0.1−1.0mLを滅菌プレートに移すことによって始めた。次いでそれぞれのプレートに、15mLの適当な細菌増殖培地を45−55℃で加え、そしてその培地を該試験培養物とよく混合した。34−37℃で、48−72時間の適当なインキュベーションの後、コロニー形成を決定した。緩衝液の型は殺微生物速度にほとんど影響を与えないようであるが、濃度およびpHが多くの場合重要であることが見出された。殺速度において実質的な増加を得るために必要な濃度は、一般的に0.1Mより多かった。また、5.5より高いpHにおけるよりも、5.5より低いpHにおいて、より多くの微生物が殺された。
【0016】

実施例2.pH4.0−7.5における抗微生物溶液を用いた抗微生物および殺微生物
0.025Mのリン酸二ナトリウムを、0.5pH単位で増加する様々なpHに氷酢酸で滴定することによって緩衝液組成物を作成した。100mLのメスフラスコに、2.0+/−0.02グラムのベンジルアルコールおよび2+/−0.01グラムのエタノールを加え、次いで所定のpHの0.025Mのリン酸ナトリウム−酢酸で目盛りまで満たした。pHは、緩衝液単独+/−0.09pH単位と同じままであった。これらの混合物を、室温で少なくとも24時間置き、いずれにしろ典型的には0であった、内因性の微生物の除去を可能にした。これらの溶液を、微生物の活性培養物を、5mLの試験溶液に加え、そして適当な時間室温でインキュベートすることによって試験した。試験混合物のサンプルを、問題の微生物に適当な培地とともに定期的にまき、そして33−37℃で72−96時間増殖させた。pH4.5およびそれより下における殺速度は、pH5.5−7.5よりもかなり速かったが、pH4.5の酸性溶液は、許容可能に安定ではなく、そしてクロマトグラフィー媒体に有害であり、一方pH5.5−6.5における殺速度は許容可能であり、活性なA.niger細胞の>95%を除去するのに約24時間、および活性なE.coliおよびC.albicans細胞の100%を殺すのにそれぞれ2および4時間未満が必要であるが、クロマトグラフィー媒体には有害でなく、そして約pH5.5−6.5のそのような溶液は安定であった。
【0017】

実施例3.クロマトグラフィー媒体のスラリーにおける抗微生物効果
0.025Mのリン酸二ナトリウムを、様々なpHに氷酢酸で滴定することによって緩衝液組成物を作成した。100mLのメスフラスコに、1.5+/−0.2または2.0+/−0.02グラムいずれかのベンジルアルコール、および1.5+/−0.2または2+/−0.01グラムいずれかのエタノールを加え、次いで所定のpHの0.025Mのリン酸ナトリウム−酢酸で目盛りまで満たした。pHは、緩衝液単独+/−0.09pH単位と同じままであった。これらの混合物を、室温で少なくとも24時間置き、いずれにしろ典型的には0であった、内因性の微生物の除去を可能にした。一方、2%のベンジルアルコールおよび2%のエタノールを含む25mMのリン酸ナトリウム−酢酸、pH6中で、室温で48時間保存されていた、約3.1充填mLのプロテインA−シリカ媒体を、簡単に遠心し、そして上清を吸引して除いた。充填ペレットを、15mLの0.2ミクロンろ過水に懸濁し、そして遠心してペレットを形成し、そして上清を吸引して除いた。これをろ過水でさらに3回繰り返し、次いで滅菌(オートクレーブした)水でさらに3回繰り返した。プロテインA−シリカ媒体のペレットを、滅菌(オートクレーブした)水に懸濁して、8mLの容量の懸濁液を得た。いくつかの試験溶液のそれぞれに、約0.1mLの充填プロテインA−シリカ媒体吸着剤に相当する0.25mLの懸濁した吸着剤を移した。他のチューブに、0.25mLの滅菌水のみを入れた。次いでチューブに微生物の培養物を「加えて」、そして室温で様々な時間置き、その上に、上記で記載したように生きた細胞を計測するために、サンプルをまいた。E.coliおよびC.albicansはどちらも、開始カウントの1%未満まで殺され、一方A.nigerは100%殺すために90時間までを必要とした。しかし、吸着剤の存在下または非存在下で、殺速度に検出可能な差異はなかった。
【0018】

実施例4.抗微生物効果vs時間
10mMの酢酸をNaOHでpH6に滴定し、次いでNaClを25mM、およびベンジルアルコールおよびエタノールを上記のようにそれぞれ2%加えることによって、抗微生物溶液を作成した。生きた培養物を「スパイク」として加え、そして定期的に生きた細胞を計測した。溶液を数ヵ月(for month)保存した後、S.aureusで試験した場合、殺微生物能力は同じままであった。
【0019】

実施例5.抗微生物溶液の安定性
10mMの酢酸−NaOH−25mMのNaCl−2%のベンジルアルコール−2%のエタノール、pH5.5の溶液を、水希釈溶液中257nmにおいて測定した吸光度に基づいて、ベンジルアルコールの検出可能な損失無しに(そのもともとの濃度の1%未満)、高密度ポリエチレンボトル中で22ヵ月保存した。
【0020】

実施例6.クロマトグラフィー媒体の存在下における、抗微生物溶液の安定性
それぞれ2%のベンジルアルコールおよびエタノールの溶液を、25mMのリン酸二ナトリウム中で作成し、そして酢酸でpH6まで滴定した。溶液を、ポリプロピレンのボトル中で、室温および5−8℃で4ヵ月維持し、そしてベンジルアルコール濃度およびコロニー形成単位法による抗微生物効果の決定を用いたE.coliの殺菌能力に関して試験した。4ヵ月でベンジルアルコールの検出可能な損失または殺菌能力の損失はなかった。
【0021】

実施例7.抗微生物溶液中に保存したクロマトグラフィー媒体の安定性
BakerbondTMXWP500 PolyABx−35(500Å)(#7586−02、Lot A24804)クロマトグラフィー媒体を、2%のベンジルアルコールおよび2%のエタノールを含む100mMの酢酸ナトリウム−酢酸、pH5で数回すすぎ、次いで等量の同じベンジルアルコール−エタノール−緩衝液の組み合わせに懸濁した。その懸濁液を室温で2年間置いた。吸光度アッセイに基づいて、ベンジルアルコールはその元の濃度の2%未満を失い、そしてコロニー形成単位法による抗微生物効果の決定によってアッセイした場合、検出可能な殺菌能力の損失は見出されなかった。吸着剤を、能力および試験タンパク質の分解能に関して定期的に試験し、そして2年間まで有意な変化を示さないことが見出された。PolyABX−35の能力を、ウサギガンマグロブリンを用いたブレークスルー法(breakthrough method)によって測定した。同じ条件で、0ヵ月における10%ブレークスルー能力は、54.5mg/mlの樹脂であり、そして24ヵ月後は54mg/mlであり、ブレークスルー能力において有意な変化がないことを示した。
【0022】

実施例8.抗微生物溶液に保存された、アフィニティークロマトグラフィー媒体の安定性
プロテインA結合シリカクロマトグラフィー媒体を、2%のベンジルアルコールおよび2%のエタノールを含む100mMの酢酸ナトリウム−酢酸、pH6で数回すすぎ、次いで等量の同じベンジルアルコール−エタノール−緩衝液の組み合わせに懸濁した。その懸濁液を4−8℃で4ヵ月置いた。吸光度アッセイに基づいて、ベンジルアルコールはその元の濃度の2%未満を失い、そしてコロニー形成単位法による抗微生物効果の決定によってアッセイした場合、検出可能な殺菌能力の損失は見出されなかった。さらに、該アフィニティー媒体は、6より低いpHでの速度より、6およびそれより高いpHで、はるかに遅い速度で、樹脂から液体媒体へリガンドを失った。リガンドの漏出を、酵素結合免疫特異検定法(enzyme−linked immunospecific assay)(ELISA)で測定した。ELISAアッセイによって検出された、pH5.0におけるプロテインAの媒体への漏出は、pH6.0よりも2−3倍多く、そしてpH4.5ではpH6.0よりもほとんど15倍多かった。
【0023】
本発明は、その特定の実施態様に関して参考として本明細書中で記載されたが、本明細書中で開示された発明概念の意図および範囲から離れることなく、変更、改変および変異をし得ることが認識される。よって、添付の請求の意図および範囲内に入る全てのそのような変更、改変および変異を含むことが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィーの固形物の保存のための緩衝化抗微生物溶液であって、該緩衝化抗微生物溶液は、約1.5重量%から約4重量%のベンジルアルコール、約0.5重量%から約4重量%のエチルアルコール、および約5.5から約7.5のpHで溶液を提供するために、約92重量%〜約98重量%の約50mMから約200mMの緩衝液を含む、緩衝化抗微生物溶液。
【請求項2】
前記pHが約6.0である、請求項1に記載の緩衝化抗微生物溶液。
【請求項3】
前記ベンジルアルコールの量が約2重量%であり、前記エチルアルコールの量が約2重量%である、請求項1に記載の緩衝化抗微生物溶液。
【請求項4】
前記緩衝液は、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、トリエタノールアミン、TRIS(トリス(ヒドロメチル)アミノメタン)、HEPES(N−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン−N’−(2−エタンスルホン酸))、およびMES(4−モルホリンエタンスルホン酸)からなる群より選択される、請求項1に記載の緩衝化抗微生物溶液。
【請求項5】
pH6.0に滴定した、約2重量%のベンジルアルコール、約2重量%のエタノール、および約96重量%の約100mMのリン酸二ナトリウムを含む、請求項1に記載の緩衝化抗微生物溶液。
【請求項6】
クロマトグラフィーの固形物の微生物感染を防ぎながら、該固形物を保存する方法であって、該クロマトグラフィーの固形物を、請求項1に記載の緩衝化抗微生物溶液中に保持する工程を包含する、方法。
【請求項7】
クロマトグラフィーの固形物の微生物感染を防ぎながら、該固形物を保存する方法であって、該クロマトグラフィーの固形物を、請求項2に記載の緩衝化抗微生物溶液中に保持する工程を包含する、方法。
【請求項8】
クロマトグラフィーの固形物の微生物感染を防ぎながら、該固形物を保存する方法であって、該クロマトグラフィーの固形物を、請求項3に記載の緩衝化抗微生物溶液中に保持する工程を包含する、方法。
【請求項9】
クロマトグラフィーの固形物の微生物感染を防ぎながら、該固形物を保存する方法であって、該クロマトグラフィーの固形物を、請求項4に記載の緩衝化抗微生物溶液中に保持する工程を包含する、方法。
【請求項10】
クロマトグラフィーの固形物の微生物感染を防ぎながら、該固形物を保存する方法であって、該クロマトグラフィーの固形物を、請求項5に記載の緩衝化抗微生物溶液中に保持する工程を包含する、方法。
【請求項11】
前記クロマトグラフィーの固形物が、クロマトグラフィー媒体またはクロマトグラフィー器材から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記クロマトグラフィーの固形物が、クロマトグラフィー媒体である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記クロマトグラフィーの固形物が、最大約2年間の期間、前記抗微生物溶液中に保存される、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記クロマトグラフィーの固形物が、最大約2年間の期間、前記緩衝化抗微生物溶液中に保存される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記クロマトグラフィーの固形物が、クロマトグラフィー媒体である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記クロマトグラフィーの固形物が、クロマトグラフィー媒体である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
緩衝化抗微生物溶液中に保存された、クロマトグラフィーの固形物であって、該緩衝化抗微生物溶液は、約1.5重量%から約4重量%のベンジルアルコール、約0.5重量%から約4重量%のエチルアルコール、および約5.5から約7.5のpHで溶液を提供するために、約92重量%〜約98重量%の約50mMから約200mMの緩衝液を含む、クロマトグラフィーの固形物。
【請求項18】
前記クロマトグラフィーの固形物は、クロマトグラフィー媒体またはクロマトグラフィー器材から選択される、請求項17に記載のクロマトグラフィーの固形物。
【請求項19】
前記クロマトグラフィーの固形物が、最大約2年間の期間、前記緩衝化抗微生物溶液中に保存される、請求項17に記載のクロマトグラフィーの固形物。
【請求項20】
前記緩衝化抗微生物溶液が、pH6.0に滴定した、約2重量%のベンジルアルコール、約2重量%のエタノール、および約96重量%の約100mMのリン酸二ナトリウムを含む、請求項17に記載のクロマトグラフィーの固形物。

【公表番号】特表2010−518376(P2010−518376A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548224(P2009−548224)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/025261
【国際公開番号】WO2008/094237
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(592162807)マリンクロット ベーカー, インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】J T BAKER INCORPORATED
【Fターム(参考)】