説明

クロマン化合物

【課題】クロマン化合物を提供する。
【解決手段】本発明による式Iのクロマン化合物である。化合物は、例えば、液晶ディスプレイ装置において使用される際に、異方的スイッチング媒体の成分として適切である。


(式中、R、A、A、A、W、W、Z、Z、Z、Z、a、bおよびcは、請求項1で示される意味を有し、クロマンより誘導される2つの部分構造WおよびWを有する。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式Iの化合物に関する。
【0002】
【化1】

式中、
、Wは、互いに独立に、下式の2価基を表し、
【0003】
【化2】

環Bは不飽和または部分的に飽和の6員環を表し、該基において1個または2個のCH基はOで置き換えられており、ただし2個のO原子は隣接しておらず、および、該基において−CH−は−CHF−または−CF−で置き換えられていてもよく、または=CH−は=CF−で置き換えられていてもよく、
、LおよびLは、それぞれ互いに独立に、H、Cl、F、CNまたはCFを表し、
、Rは、互いに独立に、H、Cl、F、CN、SCN、SF、15個までのC原子を有するアルキル基を表し、該基は無置換、CNで一置換またはハロゲンで少なくとも一置換されており、ただし加えて、これらの基において1個以上のCH基は、それぞれ互いに独立に、O原子が互いに直接結合しないようにして、−O−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CF=CH−、−C≡C−、−S−、−CO−、−(CO)O−、−O(CO)−または−O(CO)O−で置き換えられていてもよく、
、AおよびAは、それぞれ互いに独立に、
(a)トランス−1,4−シクロヘキシレン基、ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基は−O−および/または−S−で置き換えられていてもよく、
(b)1,4−フェニレン基、ただし加えて、1個または2個のCH基はNで置き換えられていてもよく、
(c)1,4−シクロヘキセニレン、
(d)1,3−ビシクロ[1.1.1]ペンチレン、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン、シクロブタ−1,3−ジイル、スピロ[3.3]ヘプタン−2,6−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルの群からの基を表し、
ただし、該基(a)〜(d)は、1個以上、特には1個または2個のフッ素原子で置換されていてもよく、
、Z、ZおよびZは、それぞれ互いに独立に、−(CO)O−、−O(CO)−、−CHO−、−OCH−、−CHCH−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−、−CHFCHF−、−CHCHF−、−CHFCH−、−C≡C−、−(CH−、−CFO−、−OCF−、−C−、−CH=CH−CHCH−、−CHCHOCF−または単結合を表し、および
a、b、cは、互いに独立に、0または1を表し、ただし、
a+b+cは、0、1または2の値を採用する。
【0004】
更に、本発明は液晶媒体の成分としてのこれらの化合物の使用に関し、本発明による液晶媒体を含有する液晶および電気光学的ディスプレイ素子に関する。
【0005】
式Iの化合物は液晶媒体、特に、ツイストセルの原理、ゲスト−ホスト効果、配向相の変形効果または動的散乱効果に基づくディスプレイ用の成分として使用できる。
【背景技術】
【0006】
国際特許出願公開第2006/040009号パンフレット(特許文献1)、日本国特許出願公開第2006199941号公報(特許文献2)および欧州特許第14910612号明細書(特許文献3)の文献には、クロマン構造を有する部分構造を1個のみ有するクロマン誘導体が開示されている。
【0007】
よって、本発明は、液晶媒体、特に、TN、STN、IPS用、および更なるアクティブマトリクスディスプレイ用の成分として適切で、新規および安定な化合物を見出す目的に基づくものであった。
【0008】
特に、多くのディスプレイ用途向けに基本的に好適で、非常に高い極性(Δε>20)の化合物の分野において、化合物の溶解性がますます低下すると言う問題に直面している。このため、そのような化合物の使用は、実用面において制限されている。従って、新規で極性が高く、同時に、高極性の液晶混合物中において高い重量比で溶解できるメソゲン化合物を見出すことも目的である。関与する全ての化合物の溶解性を全体として考慮することにより低温における結晶化の傾向が本質的に決定され、従って、用途範囲における最低温度でのディスプレイの安定性が決定される。
【0009】
加えて、高い正の誘電異方性Δεを有する化合物を提供することも本発明の目的であった。加えて、本発明による化合物は、熱的および光化学的に安定でなければならない。更に、本発明による化合物は液晶混合物中で使用可能でなければならず、液晶混合物中において化合物は液晶混合物の液晶相範囲を損なわないか、むしろ改良する。本発明による化合物が可能な限り広いネマチック相を有する場合、それは更に好適である。
【0010】
特に、ホスト混合物の特に高い極性が重要な場合、例えば、ブルー相を使用して液晶ディスプレイを製造する場合(国際特許出願公開第2004/046805号パンフレット(特許文献4)およびH.Kikuchiら、Nature Materials(2002年)1巻、64〜68頁(非特許文献1)参照)がそうであるが、式Iの化合物は正の誘電異方性の液晶混合物の成分として際立って適切である。本発明によるクロマン誘導体は、異方性電気光学的媒体の成分として際立って適切であることが見出された。それらは、特に、TN−TFT、STNおよびIPSディスプレイおよびブルー相に基づくディスプレイに適切で安定なメソゲンスイッチング媒体を入手するために使用できる。それらの特性のため、化合物は、ブルー相の領域で動作される高速スイッチングディスプレイにおける、特に、ポリマー安定化媒体の構成物質として、例えば、欧州特許出願公開第1690914号公報(特許文献5)の文献中に記載される通りの使用に対して特に適切である。本発明による化合物は、化学的、熱的および(UV)光に対して安定である。それらは、純粋な状態で無色である。また、それらは強力な正の誘電異方性Δεによって区別され、そのため、光学的スイッチング素子で使用する際には、より低い閾電圧が必要である。本発明による化合物が更に好適な点は、2個の置換クロマン環の高い極性である。
【0011】
加えて、本発明による化合物は広いネマチック相範囲を有する。
【0012】
環の数および/または末端置換基を適切に選択することで、本発明による液晶の物理的特性を広い範囲で変化させることができる。
【0013】
本発明によるクロマン誘導体を提供することで、各種の用途的観点から液晶混合物の調製に適する化合物の範囲が、非常に一般的に大幅に広がる。
【0014】
適切な共成分との混合物中において、電気光学的使用にとって好適な温度範囲内において、本発明による化合物は液晶中間相を形成する。広いネマチック相範囲を有する液晶媒体を、本発明による化合物および更なる物質より調製できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際特許出願公開第2006/040009号パンフレット
【特許文献2】日本国特許出願公開第2006199941号公報
【特許文献3】欧州特許第14910612号明細書
【特許文献4】国際特許出願公開第2004/046805号パンフレット
【特許文献5】欧州特許出願公開第1690914号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】H.Kikuchiら、Nature Materials(2002年)1巻、64〜68頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
クロマン誘導体は広い用途範囲を有する。置換基の選択に依存して、これらの化合物は、液晶媒体を主に成す基礎材料としての機能を果たすことができる。しかしながら、例えば、このタイプの誘電体の誘電的および/または光学的異方性を修正するため、および/またはその動作温度範囲を最適化するために、本発明による化合物に、他のクラスの化合物からの液晶基礎材料を加えることも可能である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
よって、本発明は式Iの化合物に関し、これらの化合物を液晶媒体の成分として使用することに関する。更に、本発明は、式Iの化合物を少なくとも1種類含む液晶媒体に関し、このタイプの媒体を含有する液晶ディスプレイ素子、特に、電気光学的ディスプレイ素子に関する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本出願の目的のために、W1/2に対して示される式の原子の位置の番号付けは、以下の通りである。
【0020】
【化3】

環Bのフリーの結合手は位置2または3に位置しており、ベンゾ環のフリーの結合手は位置6または7に配置している。置換基Lは残っている位置6または7に配置される。環系は、相互に対向する位置2/6または3/7において、式Iの構造の基に好ましくは同時に結合されており、形式的に結果として置換のパターン(1)および(2)が生じる。
【0021】
【化4】

以下の定義の観点において、置換のパターン(1)が好ましい。
【0022】
環Bは以下の環構造およびそれの鏡像を包含し、フッ素原子で置換されていてもよいが、示されていない。
【0023】
【化5】

本発明の目的のために、描かれた全ての環要素を簡単のためにクロマン環と呼び、付随する化合物をクロマン化合物と呼ぶ。従って、化合物をビスクロマニル誘導体とも呼ぶ。環Bがベンゼン環の二重結合を1個のみ含有する場合、環Bは部分的に飽和している。環Bが2個の二重結合を含有している場合、環Bは不飽和と呼ばれる。
【0024】
環Bは、好ましくは、フッ素原子で置換されていない。それは、好ましくは、正確に1個の酸素原子を有する。環Bが第2の二重結合を有する場合、これは、好ましくは、酸素原子に対してβ−位(アリル位)に配置されている。環Bは、好ましくは、部分的に飽和されている。
【0025】
部分構造WおよびWは、好ましくは互いに独立に、付随の名前と共に以下の意味を有する。
【0026】
【化6】

およびWは、特に好ましくは互いに独立に、部分構造(w10)または(w20)、特に(w10)の意味を採用する。WおよびWは、好ましくは、同一の意味を採用する。同様に、Wは、好ましくは、意味(w20)を採用し、Wは意味(w10)である。
【0027】
式Iおよびサブ式中の基L、LおよびLは、好ましくは、H、Cl、F、CFまたはCNであり、特に好ましくは、HまたはFである。置換基L、LおよびLの少なくとも1つは、好ましくは、水素ではない。Lは、好ましくは、Fを表す。Lは、好ましくは、水素原子である。Lは、好ましくは、HまたはFを表す。
【0028】
基Wについては、Lは、好ましくは、Fを表し;基Wについては、Lは、好ましくは、Hを表す。
【0029】
環系が対称でない場合、基(a)〜(d)中で示される環系は、両方の可能な配向でよい。それらは、好ましくは、環の双極子が同一の方向で平行してクロマン環の双極子に対して同一の配向で可能な限り離れて整列するように配置される。
【0030】
、ZおよびZは、好ましくは、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、CHOまたは−CFO−、特には、単結合または−CHCH−を表す。
【0031】
に対する好ましい意味は、CHCH、CHOまたは単結合、特には、単結合である。
【0032】
式I中の指数a、bおよびcの合計は0、1または2でなければならず、好ましくは、0または1である。
【0033】
、Aおよび/またはAが、シクロヘキサン−1,4−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、Fで一置換または二置換される1,4−フェニレンまたは更に式Iで定義される通りの項目(d)における群からの基を表す式Iおよび全てのサブ式の化合物が好ましい。
【0034】
、AおよびAは、特に好ましくは、下式より選択される2価基を表す。
【0035】
【化7】

、A、bおよびZは、好ましくは、基−(Z−A)−Z−が単結合を表さないように共に選択される。
【0036】
は、好ましくは、15個までのC原子を有するアルキル基を表し、該基は無置換、CNで一置換またはハロゲンで少なくとも一置換されており、ただし加えて、これらの基において1個以上のCH基は、それぞれ互いに独立に、O原子が互いに直接結合しないようにして、−O−、−CH=CH−、−C≡C−、−S−、−CO−、−(CO)O−、−O(CO)−または−O(CO)O−で置き換えられていてもよい。
【0037】
は、特に好ましくは、7個までのC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルケニルまたはアルケニルオキシ、非常に特に好ましくは、1〜5Cアルキルまたは2〜5Cアルケニルを表す。
【0038】
は、好ましくは、H、Cl、F、CN、SCN、SF、15個までのC原子を有するアルキル基を表し、該基はCNで一置換またはハロゲンで少なくとも一置換されており、ただし加えて、これらの基において1個以上のCH基は、それぞれ互いに独立に、O原子が互いに直接結合しないようにして、−O−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CF=CH−、−C≡C−、−S−、−CO−、−(CO)O−、−O(CO)−または−O(CO)O−で置き換えられていてもよい。
【0039】
は、特に好ましくは、H、Cl、F、CN、SCN、SF、CF、CHFまたはOCF、非常に特に好ましくは、F、OCFまたはCN、これらの中でも特にCNを表す。
【0040】
1/2がアルキル基および/またはアルコキシ基を表す場合、これは直鎖状または分岐状のいずれでも構わない。それは、好ましくは、直鎖状で、1、2、3、4、5、6または7個のC原子を有しており、従って、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘプチル、ヘキシル、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシまたはヘプチルオキシ、更には、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、メトキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオキシまたはテトラデシルオキシを表す。
【0041】
1/2が、1個のCH基が−CH=CH−で置き換えられたアルキル基を表す場合、これは直鎖状または分岐状のいずれでも構わない。それは、好ましくは、直鎖状で、2〜10個のC原子を有している。従って、それは、特に、ビニル、プロパ−1−または−2−エニル、ブタ−1−、−2−または−3−エニル、ペンタ−1−、−2−、−3−または−4−エニル、ヘキサ−1−、−2−、−3−、−4−または−5−エニル、ヘプタ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−または−6−エニル、オクタ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−または−7−エニル、ノナ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−または−8−エニル、デカ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−、−8−または−9−エニルを表す。
【0042】
1/2が、1個のCH基が−O−で置き換えられており、1個が−CO−で置き換えられたアルキル基を表す場合、これらは好ましくは隣接している。よって、これらは、アシロキシ基−CO−O−またはオキシカルボニル基−O−CO−を含む。これらは、好ましくは、直鎖状で、2〜6個のC原子を有する。従って、それらは、特には、アセトキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、アセトキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、ペンタノイルオキシメチル、2−アセトキシエチル、2−プロピオニルオキシエチル、2−ブチリルオキシエチル、3−アセトキシプロピル、3−プロピオニルオキシプロピル、4−アセトキシブチル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、プロポキシカルボニルメチル、ブトキシカルボニルメチル、2−(メトキシカルボニル)エチル、2−(エトキシカルボニル)エチル、2−(プロポキシカルボニル)エチル、3−(メトキシカルボニル)プロピル、3−(エトキシカルボニル)プロピル、4−(メトキシカルボニル)ブチルを表す。
【0043】
1/2が、1個のCH基が無置換または置換された−CH=CH−で置き換えられており、隣接するCH基がCOまたはCO−OまたはO−COで置き換えられたアルキル基を表す場合、これは直鎖状または分岐状のいずれでも構わない。それは、好ましくは、直鎖状で、4〜13個のC原子を有している。従って、それは、特に、アクリロイルオキシメチル、2−アクリロイルオキシエチル、3−アクリロイルオキシプロピル、4−アクリロイルオキシブチル、5−アクリロイルオキシペンチル、6−アクリロイルオキシヘキシル、7−アクリロイルオキシヘプチル、8−アクリロイルオキシオクチル、9−アクリロイルオキシノニル、10−アクリロイルオキシデシル、メタクリロイルオキシメチル、2−メタクリロイルオキシエチル、3−メタクリロイルオキシプロピル、4−メタクリロイルオキシブチル、5−メタクリロイルオキシペンチル、6−メタクリロイルオキシヘキシル、7−メタクリロイルオキシヘプチル、8−メタクリロイルオキシオクチル、9−メタクリロイルオキシノニルを表す。
【0044】
1/2が、CNで一置換されるアルキルまたはアルケニル基を表す場合、この基は、好ましくは直鎖状で、CNによる置換はω−位である。
【0045】
1/2が、ハロゲンで少なくとも一置換されているアルキルまたはアルケニル基を表す場合、この基は好ましくは直鎖状で、ハロゲンは好ましくはFまたはClである。多置換の場合、ハロゲンは好ましくはFである。結果として生じる基は、ペルフルオロ化された基も含む。一置換の場合、フッ素または塩素置換は何れの所望の位置でも構わないが、好ましくはω−位である。
【0046】
本発明の目的のために、ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を表し、好ましくは、Br、ClまたはF、特に好ましくは、ClまたはF、特には、フッ素である。
【0047】
環基R1/2を含有し重合反応に適する式Iの化合物は、メソゲンポリマーの調製、また他のモノマーとの組み合わせにおいても適する。これらのポリマーは、重合条件において大部分を占める中間相の安定化に適する。
【0048】
分岐状の環基Rを含有する式Iの化合物は、従来の液晶基礎材料における溶解性を更により向上するため、しばしば重要な場合があるが、化合物が光学的に活性な場合、キラルドーパントとして特に重要な場合がある。式Iは、これらの化合物のラセミ体および、また光学的対掌体の両者、およびそれらの混合物を包含する。このタイプのスメクチック化合物は、強誘電体材料の成分として適する。
【0049】
相を有する式Iの化合物は、例えば、熱的アドレスディスプレイに適する。
【0050】
このタイプの分岐状の基は、一般に、1個より多い鎖分岐を含まない。好ましい分岐状の基Rは、イソプロピル、2−ブチル(即ち、1−メチルプロピル)、イソブチル(即ち、2−メチルプロピル)、2−メチルブチル、イソペンチル(即ち、3−メチルブチル)、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、イソプロポキシ、2−メチルプロポキシ、2−メチルブトキシ、3−メチルブトキシ、2−メチルペントキシ、3−メチルペントキシ、2−エチルヘキシルオキシ、1−メチルヘキシルオキシ、1−メチルヘプチルオキシである。
【0051】
好ましい実施形態において、式Iの化合物は、
cは1を表し、
はCFOを表し、および
は下式より選択される2価基を表すことにより特徴付けられる。
【0052】
【化8】

式Iおよび全てのサブ式の化合物のうち、その中に存在する1個以上の基が示される好ましい意味の1つを有するものが好ましい。更なる好ましい実施形態は、実施例部分の詳細より当業者によって導出することができ、当業者の目的のために一般化できる。
【0053】
式Iの化合物において、シクロヘキサン環がトランス−1,4−二置換されている立体異性体が好ましい。複数種類の立体異性体を含有し得る上記の式のものは、それぞれの場合で、全ての可能な立体異性体を包含する。
【0054】
式Iの化合物の好ましいより小さい群は、加えて、サブ式Ia〜Ifのものである。
【0055】
【化9】

1,4−シクロヘキセニレン基は、好ましくは、以下の構造を有する。
【0056】
【化10】

式Iの化合物は、それ自体既知であり、文献中(例えば、Houben−Weyl著、Methoden der organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry]、Georg−Thieme−Verlag社、Stuttgart市などの標準的な著作中)に記載される通りの方法により、既知であり、前記反応に適切な反応条件下において精密に調製される。
【0057】
また、ここでは非常に詳細には述べていないが、それ自体既知の変法も使用できる。
【0058】
単純なベンゼン誘導体より出発して、本発明による式Iの化合物を以下の方法で調製できる。
【0059】
式Iの化合物の合成は、例えば、ハロゲン化されたベンゾクロメン(化合物2)を使用して行うことができ、その調製は、国際特許出願公開第2006/040009号パンフレット(特許文献1)の文献中に記載されている。
【0060】
【化11】

このタイプの化合物を直接反応させる(例えば、遷移金属を触媒として、ケトン、マロン酸エステル、オレフィンなどをアリール化する、スキーム1)こともできれば、または、当業者に既知で、文献(Houben Weyl著、Methoden der organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry]、Georg Thieme Verlag社、Stuttgart市、ニューヨーク州、4版、1993年)に記載される通りにして、標準的な転換を使用する以下のスキームに従い、式Iの化合物の合成のための更なる反応に適切な方法で修飾できる。
【0061】
【化12】

<スキーム1>中間体化合物2からの、本発明による化合物またはそれの適切な前駆体の合成。Rは式Iにおける通りの有機基で、例えば、(それぞれの場合で置換されていてもよい)アルキルまたはアリールである。
【0062】
次いで、例えば、化合物2の金属化(XがHの場合:LDA、BuLi、Schlosser塩基を使用;Xがハロゲンの場合:Mg、iPrMgHalなどを使用)、および任意工程として、例えば、ハロゲン化亜鉛を使用する金属転換化により、とりわけ、アリール金属化合物7を与え(スキーム2)、汎用的な方法で更なる新規な合成構築ブロックに転化できる(スキーム3)。
【0063】
【化13】

<スキーム2>反応性金属誘導体7を形成するための中間体化合物2の金属化。
【0064】
【化14】


<スキーム3>本発明による化合物を合成するための金属誘導体7の可能な反応。Arは、本発明による式Iの化合物における通りの置換された芳香環でよい。
【0065】
脂環式環Bに結合するための合成構築ブロックの汎用的な利用は、サリチルアルデヒド14より出発することで可能で、例えば、ヘキサメチレンテトラミンを使用し(スキーム4)、フェノールよりDuff(J.C.DuffおよびE.J.Bills著、J.Chem.Soc.(1932年)1987頁;(1934年)1305頁;J.C.Duff、同上(1941年)547頁;(1945年)276頁)の方法により容易に入手できる。
【0066】
【化15】

<スキーム4>中間体14を経由するカルボニトリル化合物15の合成。
【0067】
次いで、L.D.Wiseら、J.Med.Chem.(1988年)31巻、688〜691頁に類似して、サリチルアルデヒド14をアクリロニトリルと縮合することで、カルボニトリル(15)を与え、スキーム5およびスキーム6に従い当業者に良く知られている方法で修飾でき、多数の合成構築ブロックを与える。
【0068】
【化16】

<スキーム5>カルボニトリル化合物15の可能な誘導化(第1部)。
【0069】
【化17】

<スキーム6>カルボニトリル化合物15の可能な誘導化(第2部)。
【0070】
以下のスキームは、スキーム1〜6に記載される合成構築ブロックの幾つかの好ましい反応を示し、式Iの目的化合物を与える。次いで、マロン酸エステル5より、クロマン自身の合成(国際特許出願公開第2006/040009号パンフレット(特許文献1)参照)(スキーム7)に類似して、直接結合されたビスクロマニル誘導体を得ることができる。
【0071】
【化18】

<スキーム7>直接結合されたビスクロマニル誘導体(bが0でZが単結合)の合成。
【0072】
ここで、化合物25は環Aを更に含有する(位置7)こともあり、同様の方法で入手でき、対応する最終生成物27aおよび27bに転化できる(スキーム8a、8b)。
【0073】
【化19】

<スキーム8a>更なる環Aとして1,4−シクロヘキサンジイル基を含有する式Iの化合物の合成。
【0074】
【化20】

<スキーム8b>環Aとして1,4−フェニレン環を更に含有する式Iの化合物の合成。
【0075】
同様に、ジオール24はジオキサンの合成に適する(スキーム9)。24をアルデヒド16と縮合する(スキーム5参照)ことで化合物28を与え、化合物28は水素化でき、飽和ジオキサン29を与える。
【0076】
【化21】

<スキーム9>ジオキサン誘導体29の合成。
【0077】
クロマン環の間に単純なブリッジZを含有する(即ち、環Aなしで)式Iの化合物への可能な合成経路を、スキーム10に示す。次いで、例えば、Negishiカップリングにおいてアセチレン誘導体18をハロゲン化アリール2と反応させることができ、化合物30aを与え、次いで、水素化後、エチレンで架橋された化合物30bを与える。
【0078】
【化22】

<スキーム10>クロマン環の間に単純なブリッジZを含有する式Iの化合物(30a/30b)への合成経路。
【0079】
国際特許出願公開第2006/040009号パンフレット(特許文献1)に記載される類似の方法で同様にして入手可能なサリチルアルデヒド14(スキーム4参照)の構造異性体は、例えば、出発材料としてアルデヒド8を使用するアセタール化(スキーム3参照)によりスキーム11に示される通りのベンゾ[1,3]ダイオキシン33の合成に有用である。
【0080】
【化23】

<スキーム11>ベンゾ[1,3]ダイオキシンタイプのクロマン誘導体33の合成。
【0081】
タイプ(w21)および(w20)のクロマンの合成をスキーム12に示す。Q.Wang、M.G.Finn、Org.Lett.(2000年)2巻、4063〜4065頁の方法によるPetasis反応により、タイプ(w21)のα−置換されたクロマン化合物(クロメン)の合成に化合物35を使用でき、次いで、水素化でき、クロマン37を与える(スキーム12)。文献より既知の工程により、アルキン4をヒドロホウ素化(スキーム1参照)して、ボロン酸34を得る。
【0082】
【化24】

<スキーム12>タイプ(w21)および(w20)のα−置換されたクロマンの合成。
【0083】
【化25】

<スキーム13>イソクロマンタイプのクロマン化合物の調製。
【0084】
同様に、サリチルアルデヒド35(例えば、41、スキーム13)より出発してイソクロマンを調製できる。ここで、最初に、サリチルアルデヒド35を、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸無水物と反応して、トリフレート38を与え、次いで、それよりSuzuki反応においてボロン酸34により、スチルベン39を調製できる(上を参照)。例えば、水素化ホウ素ナトリウムで反応することにより、アルデヒド基をアルコール40に還元後、次いで、R.G.F.Gilesら、J.Chem.Soc.Perkin 1巻(1984年)2389〜2396頁の方法により、塩基を触媒とする環化によってイソクロマン41を得ることができる。
【0085】
従って、また、本発明の実施形態は、Aはジオキサン環であり、ZおよびZは単結合である式Iの化合物を調製する第1の方法であり、式IIの化合物を式IIIのアルデヒドと反応させ、ジオキサン環を形成する工程を含むことを特徴とする。工程は、好ましくは、有機溶媒中において酸触媒で行う。ここで、例えば、吸着剤の利用または共沸蒸留により連続して反応より水を除去することが有利である。式IIIは、好ましくは、化合物16(スキーム5)のものである。
【0086】
【化26】

式中、基は式Iに対して上で定義される通りである。
【0087】
【化27】

式中、基は式Iに対して上で定義される通りである。
【0088】
本発明の更なる実施形態は、bは0で、Zは単結合である式Iの化合物を調製する第2の方法であり、式IVのオキセタン化合物を式Vのブロモベンゼン誘導体と反応させ、下式の化合物を与え、更なる工程で環化により、式Iの化合物またはその前駆体に転化する工程を含むことを特徴とする。環化は、好ましくは、強塩基により達成する。反応は、好ましくは、不活性溶媒中で行う。適切な強塩基は、例えば、水素化カリウムである。
【0089】
【化28】

式中、基は式Iに対して上で定義される通りである。
【0090】
【化29】

式中、基は式Iに対して上で定義される通りである。
【0091】
【化30】

クロマン化合物に対する更なる可能な合成経路は、国際特許出願公開第2006/040009号パンフレット(特許文献1)の文献の42〜52頁および例で開示されている。最後に述べた開示は、引用により、ここに取り込まれるものとする。
【0092】
本発明による液晶媒体は、本発明による1種類以上の化合物に加え、更なる構成材料として好ましくは2〜40種類、特には4〜30種類の成分を含む。これらの媒体は、非常に特に好ましくは、本発明による1種類以上の化合物に加え、7〜25種類の成分を含む。これらの更なる構成材料は、好ましくは、ネマチックまたはネマトゲン性(モノトロピックまたはアイソトロピック)の物質、特に、アゾキシベンゼン類、ベンジリデンアニリン類、ビフェニル類、ターフェニル類、フェニルまたはシクロヘキシル安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸のフェニルまたはシクロヘキシルエステル類、シクロヘキシル安息香酸のフェニルまたはシクロヘキシルエステル類、シクロヘキシルシクロヘキサンカルボン酸のフェニルまたはシクロヘキシルエステル類、安息香酸の、シクロヘキサンカルボン酸のまたはシクロヘキシルシクロヘキサンカルボン酸のシクロヘキシルフェニルエステル類、フェニルシクロヘキサン類、シクロヘキシルビフェニル類、フェニルシクロヘキシルシクロヘキサン類、シクロヘキシルシクロヘキサン類、シクロヘキシルシクロヘキシルシクロヘキサン類、1,4−ビスシクロヘキシルベンゼン類、4,4’−ビスシクロヘキシルビフェニル類、フェニル−またはシクロヘキシルピリミジン類、フェニル−またはシクロヘキシルピリジン類、フェニル−またはシクロヘキシルジオキサン類、フェニル−またはシクロヘキシル−1,3−ジチアン類、1,2−ジフェニルエタン類、1,2−ジシクロヘキシルエタン類、1−フェニル−2−シクロヘキシルエタン類、1−シクロヘキシル−2−(4−フェニルシクロヘキシル)エタン類、1−シクロヘキシル−2−ビフェニルエタン類、1−フェニル−2−シクロヘキシルフェニルエタン類、ハロゲン化されていてもよいスチルベン類、ベンジルフェニルエーテル類、トラン類および置換桂皮酸類のクラスからの物質より選択される。これらの化合物中の1,4−フェニレン基も、フッ素化されていてよい。
【0093】
本発明による媒体の更なる構成材料として適当で最も重要な化合物は、式1、2、3、4および5で特徴付けることができる。
【0094】
【化31】

式1、2、3、4および5で、LおよびEは同一でも異なっていてもよく、それぞれ互いに独立に、−Phe−、−Cyc−、−Phe−Phe−、−Phe−Cyc−、−Cyc−Cyc−、−Pyr−、−Dio−、−G−Phe−および−G−Cyc−およびそれらの鏡像よりなる群からの2価基を表し、ただし、Pheは無置換またはフッ素置換された1,4−フェニレンを表し、Cycはトランス−1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンを表し、Pyrはピリミジン−2,5−ジイルまたはピリジン−2,5−ジイルを表し、Dioは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルを表し、Gは2−(トランス−1,4−シクロヘキシル)エチルを表す。
【0095】
基LおよびEの一方は、好ましくは、Cyc、PheまたはPyrである。Eは、好ましくは、Cyc、PheまたはPhe−Cycである。本発明による媒体は、好ましくは、LおよびEが、Cyc、PheおよびPyrからなる群より選ばれている式1、2、3、4および5の化合物より選ばれる1種類以上の成分を含み、同時に基LおよびEの一方が、Cyc、PheおよびPyrからなる群より選ばれ、他の基が、−Phe−Phe−、−Phe−Cyc−、−Cyc−Cyc−、−G−Phe−および−G−Cyc−からなる群より選ばれている式1、2、3、4および5の化合物より選ばれる1種類以上の成分を含み、任意成分として、基LおよびEが、−Phe−Cyc−、−Cyc−Cyc−、−G−Phe−および−G−Cyc−からなる群より選ばれている式1、2、3、4および5の化合物より選ばれる1種類以上の成分を含んでもよい。
【0096】
式1、2、3、4および5の化合物のより小さなサブ群では、R’およびR”は、それぞれ互いに独立に、8個までの炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニルオキシまたはアルカノイルオキシを表す。以下では、このより小さなサブ群を群Aと呼び、化合物をサブ式1a、2a、3a、4aおよび5aと呼ぶ。これらの化合物のほとんどではR’およびR”は互いに異なっており、普通これらの基の1つはアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアルコキシアルキルである。
【0097】
群Bと呼ばれる式1、2、3、4および5の化合物のもう1つのより小さなサブ群では、R”は、−F、−Cl、−NCSまたは−(O)CH3−(k+l)Clを表し、ただしiは0または1で、k+lは1、2または3で、R”がこの意味を有する化合物は、サブ式1b、2b、3b、4bおよび5bと呼ばれる。R”が−F、−Cl、−NCS、−CF、−OCHFまたは−OCFの意味を有するサブ式1b、2b、3b、4bおよび5bの化合物が特に好ましい。
【0098】
サブ式1b、2b、3b、4bおよび5bの化合物の中で、R’はサブ式1a〜5aの化合物に対して示される意味を有し、好ましくは、アルキル、アルケニル、アルコキシまたはアルコキシアルキルである。
【0099】
式1、2、3、4および5の化合物の更なるより小さなサブ群では、R”は−CNを表す。このサブ群を下では群Cと呼び、このサブ群の化合物を対応してサブ式1c、2c、3c、4cおよび5cと記載する。サブ式1c、2c、3c、4cおよび5cの化合物において、R’はサブ式1a〜5aの化合物に対して示される意味を有し、好ましくは、アルキル、アルコキシまたはアルケニルである。
【0100】
群A、BおよびCの好ましい化合物に加え、提案された置換基とは変わった他のものを有する式1、2、3、4および5の他の化合物も通常使用される。これらの物質は、全て、文献で知られているかそれに類似の方法で得ることができる。
【0101】
本発明による式Iの化合物に加え、本発明による媒体は、好ましくは、群Aおよび/またはBおよび/またはCより選択される1種類以上の化合物を含む。これらの群からの化合物の重量による割合は、本発明による媒体中において、好ましくは、
群A:0〜90%、好ましくは20〜90%、特には30〜90%、
群B:0〜80%、好ましくは10〜80%、特には10〜65%、
群C:0〜80%、好ましくは5〜80%、特には5〜50%であり、
ただし、本発明による媒体中に存在する群A、BおよびCからの化合物の重量による割合の和は、好ましくは、5〜90%、特には、10〜90%である。
【0102】
本発明による媒体は、好ましくは、本発明による化合物を1〜40%含んでおり、特に好ましくは5〜30%である。更に、本発明による化合物を40%より多く、特には、45〜90%含んでいる媒体が好ましい。媒体は、好ましくは、本発明による化合物を2、3または4種類含む。
【0103】
本発明による媒体は、それ自体は従来の方法で調製される。一般に成分を互いに溶解し、好ましくは昇温する。適切な添加剤を利用することで、本発明による液晶相を、現在までに開示されてきた液晶ディスプレイ素子の全てのタイプで液晶相を使用できるように改変できる。このタイプの添加剤は当業者に既知で、文献(H.Kelker/R.Hatz著、Handbook of Liquid Crystals、Verlag Chemie社、Weinheim市、1980年)に詳細に記載されている。一般に、成分を混合後、引き続いて、ポリマー安定化媒体に重合化を施す。更に、安定剤、酸化防止剤、染料またはナノ粒子を加えることもできる。
【0104】
本発明による混合物は、TN、STN、ECB、IPSまたはTN−TFT用途、特に、ブルー相での媒体用途に適している。ポリマー安定化ブルー相における使用が特に好ましい。ブルー相の適切な重合性構成材料はメソゲン性および非メソゲン性モノマーで、特には、モノ−およびジアクリレートで、それらが広い温度範囲において所望の分子構造を維持するように混合物中で重合される。
【0105】
偏光子、電極基板および表面処理された電極からの本発明によるマトリクスディスプレイの構造様式は、このタイプのディスプレイに対する通常の設計に対応している。ここで、通常の設計との用語は幅広く引用され、また、マトリクスディスプレイの全ての誘導および改変、特に、多結晶シリコンTFTに基づくマトリクスディスプレイ素子も包含する。
【0106】
以下の例は、制限することなく、本発明を説明することを意図する。上および下において、パーセンテージのデーターは重量パーセントを表す。全ての温度は、摂氏度で示される。M.p.は融点を表し、cl.p.は透明点である。更に、Cは結晶状態、Nはネマチック相、Smはスメクチック相、Iは等方相である。これらの記号の間のデーターは、転移温度を表す。Δnは光学異方性(589nm、20℃)を表し、流動粘度ν20(mm/秒)および回転粘度γ[mPa・秒]は、それぞれ20℃で決定される。
【0107】
物理的、物理化学的および電気光学的パラメータは一般に既知の方法、とりわけ冊子「メルク液晶−Licristal(登録商標)−液晶の物理的特性−測定方法の記載、1998年」、Merck社、Darmstadt市に記載される通り決定される。
【0108】
それぞれの物質の誘電異方性Δεは、20℃および1kHzで決定される。このために、検討される物質の5〜10重量%を秤量し、誘電的に正の混合物ZLI−4792(メルク社)に溶解し、測定値を濃度100%に外挿する。光学異方性Δnを20℃および波長589.3nmで決定し、回転粘度γを20℃で決定し、両者とも同様に線形外挿する。
【0109】
上および下において、以下の略称を使用する:
RT 室温
MTBエーテル メチルtert−ブチルエーテル
THF テトラヒドロフラン
p−TsOH p−トルエンスルホン酸
DABCO 1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン
Rf クロマトグラフィーにおける保持因子
DIBAL−H 水素化ジイソブチルアルミニウム
Pd(C) パラジウム炭素(商業的に入手可能な触媒)
【実施例】
【0110】
<例1:6,6’−ジフルオロ−3’−プロピル−3,4,3’,4’−テトラヒドロ−2H,2’H−[3,7’]ビクロメニル−7−カルボニトリル>
7−ブロモ−6−フルオロ−3−プロピルクロマンの合成を、国際特許出願公開第2006/040009号パンフレット(特許文献1)に従い行う。
【0111】
1.1.6−フルオロ−7−ヨード−3−プロピルクロマン
【0112】
【化32】

最初に、10.6g(38.8mmol)の7−ブロモ−6−フルオロ−3−プロピルクロマンを100mlのTHFに導入し、ヘキサン中n−ブチルリチウムが15パーセントである溶液27ml(43.0mmol)を滴下により加える。90分後、50mlのTHF中に溶解された10.0g(39.4mmol)のヨウ素を加え、混合物を1時間撹拌し、冷却を取り除く。反応物をMTBエーテルで希釈し、水および飽和重亜硫酸ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥する。真空中で溶媒を除去し、粗生成物をヘプタン/トルエン(4:1)でシリカゲルに通して濾過し、更なる反応にとって十分純粋な6−フルオロ−7−ヨード−3−プロピルクロマンを無色の固体として与える。
【0113】
1.2.2−(6−フルオロ−3−プロピルクロマン−7−イル)マロン酸ジエチル
【0114】
【化33】

最初に、17.0g(52.2mmol)の無水炭酸セシウム、700mg(3.67mmol)のヨウ化銅(I)および700mg(4.11mmol)のo−フェニルフェノールを乾燥窒素下で導入し、150mlのTHF中の11.4g(33.5mmol)の6−フルオロ−7−ヨード−3−プロピルクロマンおよび16.0g(100mmol)のマロン酸ジエチルを加え、混合物を還流下で一晩加熱する。MTBエーテルを反応物に引き続き加え、希塩酸で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥する。真空下で溶媒を除去し、粗生成物をクロマトグラフィーによりシリカゲル上においてヘプタン/酢酸エチル(4:1)で精製する。生成物の画分(Rf=0.55)を、更に精製することなく反応させる。
【0115】
1.3.2−(6−フルオロ−3−プロピルクロマン−7−イル)プロパン−1,3−ジオール
【0116】
【化34】

最初に、8.7g(21.1mmol)の1.2で得られた2−(6−フルオロ−3−プロピルクロマン−7−イル)マロン酸ジエチルを60mlのトルエンに導入し、106ml(106mmol)のトルエン中の水素化ジイソブチルアルミニウム1M溶液を滴下により5℃で加える。引き続いて、反応物を氷冷の飽和塩化アンモニウム溶液に加え、希塩酸を使用して酸性とし、MTBエーテルで抽出する。合わされた有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発させる。シリカゲル上でMTBエーテル/ヘプタン(4:1)により粗生成物にクロマトグラフィーを行うことにより、2−(6−フルオロ−3−プロピルクロマン−7−イル)プロパン−1,3−ジオールを無色の固体として与える。
【0117】
19F−NMR(377MHz、CDCl
δ=−129.0ppm(dd、J=6.4Hz、J=10.3Hz、1F、Ar−F)。
【0118】
1.4.6−フルオロ−7−オキセタン−3−イル−3−プロピルクロマン
【0119】
【化35】

3.80g(13.7mmol)の2−(6−フルオロ−3−プロピルクロマン−7−イル)プロパン−1,3−ジオールを70mlのTHF中に溶解し、ヘキサン中n−ブチルリチウムが15パーセントである溶液8.7ml(13.7mmol)を0℃で加える。30分後、30mlのTHF中の2.7g(14.2mmol)の塩化p−トルエンスルホニルを加え、混合物を室温で1時間撹拌し、0℃まで再び冷却する。8.7ml(13.7mmol)のヘキサン中n−ブチルリチウムの15パーセント溶液を更に添加後、冷却を取り外し、反応物を還流下で4時間加熱する。引き続いて、反応物をMTBエーテルで希釈し、水で洗浄する。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発させ、粗生成物をクロマトグラフィーによりシリカゲル上においてヘプタン/酢酸エチル(3:2)で精製する。生成物の画分(Rf=0.5)を蒸発させ、生成物を更に精製することなく使用する。
【0120】
1.5.3−(4−ブロモ−2,5−ジフルオロフェニル)−2−(6−フルオロ−3−プロピルクロマン−7−イル)プロパン−1−オール
【0121】
【化36】

4.50g(16.6mmol)の1,4−ジブロモ−2,6−ジフルオロベンゼンを70mlのエーテル中に溶解し、11ml(18mmol)のヘキサン中n−ブチルリチウムの15パーセント溶液を−70℃で加える。30分後、30mlのエーテル中の3.00g(11.0mmol)の6−フルオロ−7−オキセタン−3−イル−3−プロピルクロマンを滴下で加え、1時間後、1.5ml(11.9mmol)のボロントリフルオリドジエチルエーテル錯体を注意深く加える。反応物を−78℃で2時間および室温で一晩放置して撹拌し、飽和塩化アンモニウム溶液を使用して加水分解する。有機相を分離し、水および飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥する。溶媒を真空中で除去し、最初にトルエン、次いでトルエン/酢酸エチル(2:1)によりシリカゲル上で残渣にクロマトグラフィーを行い、3−(4−ブロモ−2,5−ジフルオロフェニル)−2−(6−フルオロ−3−プロピルクロマン−7−イル)プロパン−1−オールを無色の固体として与える。
【0122】
1.6.7−ブロモ−6,6’−ジフルオロ−3’−プロピル−3,4,3’,4’−テトラヒドロ−2H,2’H−[3,7’]ビクロメニル
【0123】
【化37】

最初に、1.2g(10.5mmol)の水素化カリウム(パラフィンオイル中35パーセント)を40mlのTHF中に導入し、20mlのTHF中の4.50g(8.12mmol)の3−(4−ブロモ−2,5−ジフルオロフェニル)−2−(6−フルオロ−3−プロピルクロマン−7−イル)プロパン−1−オールを滴下で30℃において加える。引き続いて反応物を60℃で4時間撹拌し、微量のエタノールを加え、反応物をMTBエーテルで希釈し、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄する。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を真空中で除去し、粗生成物をシリカゲルに通してトルエンで濾過し、ヘプタン/酢酸エチルより再結晶して、7−ブロモ−6,6’−ジフルオロ−3’−プロピル−3,4,3’,4’−テトラヒドロ−2H,2’H−[3,7’]ビクロメニルを無色の結晶として与える。
【0124】
19F−NMR(377MHz、CDCl
δ=−119.4ppm(dd、J=6.2Hz、J=8.5Hz、1F、Ar−F)、−129.6(ddd、J=6.5Hz、J=6.5Hz、J=10.4Hz、1F、Ar−F)。
【0125】
1.7.6,6’−ジフルオロ−3’−プロピル−3,4,3’,4’−テトラヒドロ−2H,2’H−[3,7’]ビクロメニル−7−カルボニトリル
【0126】
【化38】

1.4g(3.31mmol)の7−ブロモ−6,6’−ジフルオロ−3’−プロピル−3,4,3’,4’−テトラヒドロ−2H,2’H−[3,7’]ビクロメニルを20mlのTHF中に溶解し、3ml(4.8mmol)のヘキサン中n−ブチルリチウムの15パーセント溶液を−50℃で加える。反応物を放置して−70℃で2時間撹拌し、引き続き、温度が−65℃を超えない速度で、10mlのTHF中の0.9g(5.00mmol)のp−トルエンスルホニルシアニドの溶液を加える。30分後、反応物を解凍させ、エーテルで希釈し、希塩酸で洗浄する。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発させ、シリカゲル上でヘプタン/トルエン(2:3)により粗生成物にクロマトグラフィーを行い、6,6’−ジフルオロ−3’−プロピル−3,4,3’,4’−テトラヒドロ−2H,2’H−[3,7’]ビクロメニル−7−カルボニトリルを、融点122℃の無色の結晶として与える。
【0127】
相挙動:C122N(59)I。
【0128】
<例2:(R)−6,8−ジフルオロ−3−[5−((R)−6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イル)−1,3−ジオキサン−2−イル]クロマン−7−カルボニトリル>
2.1.2−(6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イル)プロパン−1,3−ジオール
【0129】
【化39】

1.3で記載される2−(6−フルオロ−3−プロピルクロマン−7−イル)プロパン−1,3−ジオールの合成に類似して、調製を行う。
【0130】
2.2.6,8−ジフルオロ−2H−クロメン−3−カルバルデヒド
2.2.1.3,5−ジフルオロサリチルアルデヒド
【0131】
【化40】

260g(2.00mol)の2,4−ジフルオロフェノールを1.6lのトリフルオロ酢酸に溶解し、560g(4.00mol)のヘキサメチレンテトラミンを数回に分けて加える。30分後、反応物を75℃まで温め、一晩撹拌する。引き続き、2lの40パーセント硫酸を室温で加え、混合物を放置して2.5時間撹拌し、1.5lの氷水を加え、混合物を更に30分撹拌する。析出する沈殿を分離し、水で洗浄し、ジクロロメタン中に取り集める。結果として生じる溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発させ、3,5−ジフルオロサリチルアルデヒドをベージュ色の固体として与える。
【0132】
2.2.2.6,8−ジフルオロ−2H−クロメン−3−カルボニトリル
【0133】
【化41】

84g(0.531mol)の3,5−ジフルオロサリチルアルデヒドを850mlのアクリロニトリル中に溶解し、1g(8mmol)のp−メトキシフェノールおよび18g(0.16mol)のDABCOを加え、混合物を75℃で一晩加熱する。反応物を蒸発させ、残渣をジクロロメタン中に取り集め、溶液をシリカゲルに通して濾過し、更なる反応にとって十分に純粋な6,8−ジフルオロ−2H−クロメン−3−カルボニトリルを与える。
【0134】
2.2.3.6,8−ジフルオロ−2H−クロメン−3−カルバルデヒド
【0135】
【化42】

47.0g(243mmol)の6,8−ジフルオロ−2H−クロメン−3−カルボニトリルを300mlのトルエンに溶解し、260ml(260mmol)のトルエン中の水素化ジイソブチルアルミニウムの1M溶液を−20℃で加える。1時間後、反応物を解凍させ、溶液を氷冷の希塩酸に加え、混合物を放置して、激しく2時間撹拌する。水相を分離し、MTBエーテルに抽出する。合わされた有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発させ、99.0%の含有量(GC)を有する6,8−ジフルオロ−2H−クロメン−3−カルバルデヒドを与える。
【0136】
2.3.6,8−ジフルオロ−3−[5−(6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イル)−1,3−ジオキサン−2−イル]−2H−クロメン
【0137】
【化43】

1.30g(4.39mmol)の2−(6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イル)プロパン−1,3−ジオールおよび900mg(4.59mmol)の6,8−ジフルオロ−2H−クロメン−3−カルバルデヒドを50mlのジクロロメタンに溶解し、還流下で水分離器上において5時間、50mgのp−トルエンスルホン酸の存在下において加熱する。引き続いて、溶液を飽和炭酸水素ナトリウム溶液によって洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥する。溶媒を真空中で除去し、残渣をヘプタン/トルエンから再結晶し、6,8−ジフルオロ−3−[5−(6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イル)−1,3−ジオキサン−2−イル]−2H−クロメン(トランス:シス=80:20)を無色の固体として与える。
【0138】
2.4.(R)−6,8−ジフルオロ−3−[5−((R)−6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イル)−1,3−ジオキサン−2−イル]クロマン
【0139】
【化44】

6,8−ジフルオロ−3−[5−(6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イル)−1,3−ジオキサン−2−イル]−2H−クロメンを、THF中パラジウム活性炭触媒上において完了するまで水素化する。溶液を濾過し、蒸発させ、残渣をヘプタンより再結晶して、異性体的に純粋な(R)−6,8−ジフルオロ−3−[5−((R)−6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イル)−1,3−ジオキサン−2−イル]クロマンを、無色の固体として与える。
【0140】
19F−NMR(377MHz、CDCl
δ=−121.8ppm(t、J=8.6Hz、1F、Ar−F)、−128.4(ddd、J=6.4Hz、J=10.4Hz、1F、Ar−F)、−133.1(dd、J=1.5Hz、J=10.8Hz、1F、Ar−F)。
【0141】
2.5.(R)−6,8−ジフルオロ−3−[5−((R)−6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イル)−1,3−ジオキサン−2−イル]クロマン−7−カルボニトリル
【0142】
【化45】

800mg(1.68mmol)の(R)−6,8−ジフルオロ−3−[5−((R)−6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イル)−1,3−ジオキサン−2−イル]クロマンを30mlのTHFに溶解し、1.7ml(2.38mmol)のシクロヘキサン中s−ブチルリチウムの1.4M溶液を−50℃で加える。反応物を−25℃で5分温め、放置して−70℃で2時間撹拌し、引き続き、温度が−65℃を超えない速度で、10mlのTHF中の400mg(2.21mmol)のp−トルエンスルホニルシアニドの溶液を加える。1時間後、反応物を解凍させ、エーテルで希釈し、希塩酸で洗浄する。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発させ、シリカゲル上でトルエンにより粗生成物にクロマトグラフィーを行い、(R)−6,8−ジフルオロ−3−[5−((R)−6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イル)−1,3−ジオキサン−2−イル]クロマン−7−カルボニトリルを、融点111℃の無色の結晶として与える。
【0143】
相挙動:Tg6C111N145I
Δε:83
Δn:0.140。
【0144】
<例3:6,8−ジフルオロ−3−[5−(6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イル)−1,3−ジオキサン−2−イル]−7−トリフルオロメトキシクロマン>
【0145】
【化46】

例2で記載される合成により、6,8−ジフルオロ−3−[5−(6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イル)−1,3−ジオキサン−2−イル]−7−トリフルオロメトキシクロマンを、無色の固体として与える。
【0146】
相挙動:Tg−22C88SmA175N(174.8)I
19F−NMR(377MHz、CDCl
δ=−59.79ppm(t、J=7.0Hz、3F、−OCF)、128.4(dd、J=6.4Hz、J=10.3Hz、1F、Ar−F)、137.2(m、1F、Ar−F)、146.8(m、1F、Ar−F)
Δn:0.102。
【0147】
<例4:7−シアノ−6,8−ジフルオロ−3−[2−(6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イル)エチル]−2H−クロメン>
4.1 6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−カルバルデヒド
【0148】
【化47】

15.5g(51.5mmol)の7−ブロモ−6−フルオロ−3−ペンチルクロマンを85mlのTHF中に溶解し、n−ヘキサン中の35ml(55.7mmol)のn−ブチルリチウムの15パーセント溶液を−70℃で徐々に加える。1時間後、15mlのTHF中の6.3ml(56.7mmol)のN−ホルミルピペリジンを滴下で加え、混合物を1時間撹拌する。引き続いて、反応物を解凍させ、水に加え、希塩酸で酸性とし、MTBエーテルで3回抽出する。合わされた有機相を水および飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空中で溶媒を除去し、残渣をヘプタンより−25℃で再結晶し、6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−カルバルデヒドを無色の結晶(R=0.4;1−クロロブタン)として与える。
【0149】
4.2 (6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イル)メタノール
【0150】
【化48】

11.1g(44.3mmol)の6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−カルバルデヒドを100mlのエタノール中に溶解し、2.0g(52.8mmol)の水素化ホウ素ナトリウムを数回で加える。3時間後、反応物を水で希釈し、MTBエーテルで3回抽出する。合わされた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空中で溶媒を除去し、残渣をシリカゲルに通しジクロロメタンで濾過(R=0.3)し、(6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イル)メタノールを無色の固体として与える。
【0151】
4.3 7−ブロモメチル−6−フルオロ−3−ペンチルクロマン
【0152】
【化49】

10.2g(38.9mmol)のトリフェニルホスフィンを80mlのアセトニトリル中に懸濁し、2.0ml(39.0mmol)の臭素を氷冷しながら滴下で加える。引き続いて、20mlのアセトニトリル中の10.0g(38.4mmol)の(6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イル)メタノールの溶液を加え、混合物を室温で一晩撹拌する。水を添加後、混合物をn−ヘプタンで3回抽出し、合わされた有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥する。真空中で溶媒を除去し、残渣をシリカゲルに通しヘプタン/トルエン(4:1)で濾過し、7−ブロモメチル−6−フルオロ−3−ペンチルクロマンを無色のオイルとして与える。
【0153】
19F−NMR(377MHz、CDCl
δ=−128.7ppm(dd、J=6.7Hz、J=9.7Hz、1F)。
【0154】
4.4 臭化(6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イルメチル)トリフェニルホスホニウム
【0155】
【化50】

11.0g(34.9mmol)の7−ブロモメチル−6−フルオロ−3−ペンチルクロマンおよび9.20g(35.1mmol)のトリフェニルホスフィンを70mlのアセトニトリル中に溶解し、混合物を室温で一晩撹拌する。引き続いて、反応物を0℃に冷却し、沈殿する臭化(6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イルメチル)トリフェニルホスホニウムを吸引で濾別し、真空中で乾燥する。
【0156】
4.5 6,8−ジフルオロ−3−[2−(6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イル)ビニル]−2H−クロメン
【0157】
【化51】

10.2g(17.7mmol)の臭化(6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イルメチル)トリフェニルホスホニウムを50mlのTHF中に溶解し、2.0g(17.8mmol)のカリウムtert−ブトキシドを氷冷しながら加える。1時間後、50mlのTHF中の6,8−ジフルオロ−2H−クロメン−3−カルバルデヒドの溶液を徐々に滴下で加え、反応物を放置して室温で一晩撹拌する。引き続いて、溶液を水に加え、希塩酸を用いて酸性とし、MTBエーテルに3回抽出する。合わされた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥する。真空中で溶媒を除去し、シリカゲル上でヘプタン/トルエン(1:1)により残渣にクロマトグラフィーを行い、ヘプタンより−20℃で再結晶して、6,8−ジフルオロ−3−[2−(6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イル)ビニル]−2H−クロメンを黄色の結晶として与える。
【0158】
19F−NMR(377MHz、CDCl
δ=−120.3ppm(dt、J=2.1Hz、J=8.3Hz、1F)、−128.8(dd、J=6.5Hz、J=10.7Hz、1F)、−133.9(m、そこにおいて:d、J=10.3Hz、1F)。
【0159】
4.6 6,8−ジフルオロ−3−[2−(6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イル)エチル]−2H−クロメン
【0160】
【化52】

6,8−ジフルオロ−3−[2−(6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イル)ビニル]−2H−クロメンをTHFに溶解し、パラジウム活性炭触媒上において完了するまで水素化する。触媒を濾別し、溶液を蒸発させ、残渣をシリカゲルに通しトルエン/ヘプタン(3:2)で濾過し、粗生成物をn−ヘプタンより−25℃で再結晶して、融点84℃の無色の結晶を与える。
【0161】
4.7 7−シアノ−6,8−ジフルオロ−3−[2−(6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イル)エチル]−2H−クロメン
【0162】
【化53】

例2の工程2.5に類似して、6,8−ジフルオロ−3−[2−(6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イル)ビニル]−2H−クロメンより、7−シアノ−6,8−ジフルオロ−3−[2−(6−フルオロ−3−ペンチルクロマン−7−イル)エチル]−2H−クロメンを無色の固体として与える。
【0163】
相挙動:C70Sm(17)I
Δε:53
Δn:0.119。
【0164】
以下の化合物を、例1〜4に類似して調製する。
【0165】
【化54】

式中、置換基は、表中で示される通りの意味を採用する。
【0166】
【表1】

【0167】
【表2】

【0168】
【表3】

【0169】
【表4】

【0170】
【表5】

【0171】
【表6】

【0172】
【表7】

【0173】
【表8】

【0174】
【表9】

【0175】
【表10】

【0176】
【表11】

【0177】
【表12】

【0178】
【表13】

【0179】
【表14】

【0180】
【表15】

【0181】
【表16】

【0182】
【表17】

【0183】
【表18】

【0184】
【表19】

【0185】
【表20】

【0186】
【表21】

【0187】
【表22】

【0188】
【表23】

【0189】
【表24】

【0190】
【表25】

【0191】
【表26】

【0192】
【表27】

【0193】
【表28】

【0194】
【表29】

【0195】
【表30】

【0196】
【表31】

更なる実施形態の組み合わせおよび本発明の変法が、以下の請求項から生じる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物。
【化1】

(式中、
、Wは、互いに独立に、下式の2価基を表し、
【化2】

環Bは不飽和または部分的に飽和の6員環を表し、該基において1個または2個のCH基はOで置き換えられており、ただし2個のO原子は隣接しておらず、および、該基において−CH−は−CHF−または−CF−で置き換えられていてもよく、または=CH−は=CF−で置き換えられていてもよく、
、LおよびLは、それぞれ互いに独立に、H、Cl、F、CNまたはCFを表し、
、Rは、互いに独立に、H、Cl、F、CN、SCN、SF、15個までのC原子を有するアルキル基を表し、該基は無置換、CNで一置換またはハロゲンで少なくとも一置換されており、ただし加えて、これらの基において1個以上のCH基は、それぞれ互いに独立に、O原子が互いに直接結合しないようにして、−O−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CF=CH−、−C≡C−、−S−、−CO−、−(CO)O−、−O(CO)−または−O(CO)O−で置き換えられていてもよく、
、AおよびAは、それぞれ互いに独立に、
(a)トランス−1,4−シクロヘキシレン基、ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基は−O−および/または−S−で置き換えられていてもよく、
(b)1,4−フェニレン基、ただし加えて、1個または2個のCH基はNで置き換えられていてもよく、
(c)1,4−シクロヘキセニレン、
(d)1,3−ビシクロ[1.1.1]ペンチレン、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン、シクロブタ−1,3−ジイル、スピロ[3.3]ヘプタン−2,6−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルの群からの基を表し、
ただし、該基(a)〜(d)は、1個以上のフッ素原子で置換されていてもよく、
、Z、ZおよびZは、それぞれ互いに独立に、−(CO)O−、−O(CO)−、−CHO−、−OCH−、−CHCH−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−、−CHFCHF−、−CHCHF−、−CHFCH−、−C≡C−、−(CH−、−CFO−、−OCF−、−C−、−CH=CH−CHCH−、−CHCHOCF−または単結合を表し、および
a、b、cは、互いに独立に、0または1を表し、ただし、
a+b+cは、0、1または2の値を採用する。)
【請求項2】
、Wは、互いに独立に、部分構造(w10)、(w11)、(w20)および(w21)より選択される構造要素の1つを表すことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【化3】

(式中、L1/2/3は、請求項1で定義される通りである。)
【請求項3】
、Wは、互いに独立に、請求項2に記載される部分構造(w10)および(w20)より選択される構造要素の1つを表すことを特徴とする請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
は15個までのC原子を有するアルキル基を表し、該基は無置換、CNで一置換またはハロゲンで少なくとも一置換されており、ただし加えて、これらの基において1個以上のCH基は、それぞれ互いに独立に、O原子が互いに直接結合しないようにして、−O−、−CH=CH−、−C≡C−、−S−、−CO−、−(CO)O−、−O(CO)−または−O(CO)O−で置き換えられていてもよいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
は、H、Cl、F、CN、SCN、SF、15個までのC原子を有するアルキル基を表し、該基はCNで一置換またはハロゲンで少なくとも一置換されており、ただし加えて、これらの基において1個以上のCH基は、それぞれ互いに独立に、O原子が互いに直接結合しないようにして、−O−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CF=CH−、−C≡C−、−S−、−CO−、−(CO)O−、−O(CO)−または−O(CO)O−で置き換えられていてもよいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
指数の合計a+b+cは0または1の値を採用することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
、AおよびAは、互いに独立に、下式より選択される2価基を表すことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【化4】

【請求項8】
、Z、ZおよびZは、互いに独立に、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−CHO−または−CFO−を表すことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
cは1を表し、
はCFOを表し、および
は下式の2価基を表す
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【化5】

【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載され、Aはジオキサン環であり、ZおよびZは単結合である式Iの化合物を調製する方法であって、
式IIの化合物を式IIIのアルデヒドと反応させ、ジオキサン環を形成する工程を含むことを特徴とする調製方法。
【化6】

(式中、基は請求項1で式Iに対して定義される通りである。)
【化7】

(式中、基は請求項1で式Iに対して定義される通りである。)
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載され、bは0で、Zは単結合である式Iの化合物を調製する方法であって、
式IVのオキセタン化合物を式Vのブロモベンゼン誘導体と反応させ、式VIの化合物を与え、更なる工程で環化させる工程を含むことを特徴とする調製方法。
【化8】

(式中、基は請求項1で式Iに対して定義される通りである。)
【化9】

(式中、基は請求項1で式Iに対して定義される通りである。)
【化10】

【請求項12】
液晶媒体中の成分として、請求項1〜9のいずれか一項に記載される式Iの1種類以上の化合物の使用。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか一項に記載される式Iの化合物を少なくとも1種類含むことを特徴とする、少なくとも2種類の成分を有する液晶媒体。
【請求項14】
ブルー相においてポリマーで安定化される媒体であることを特徴とする請求項13に記載の媒体。
【請求項15】
誘電体として、請求項13または14に記載の媒体を含有することを特徴とする電気光学的ディスプレイ素子。

【公表番号】特表2010−516792(P2010−516792A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547542(P2009−547542)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010815
【国際公開番号】WO2008/092491
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】