説明

クロム錯体色素

本発明は、新規な1:2クロム錯体色素、それらの調製方法、およびヒドロキシル基含有または窒素含有繊維材料を染色または印刷するためのそれらの使用に関する。本発明は、全置換基が請求項中で規定された式(I)の1:2クロム錯体色素、


それらの調製方法、およびヒドロキシル基含有または窒素含有繊維材料を染色または印刷するためのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な1:2クロム錯体色素、それらの調製方法、およびヒドロキシル基含有または窒素含有繊維材料を染色または印刷するためのそれらの使用に関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本発明は、式(I)の1:2クロム錯体色素、
【化1】

(式中
は、H,Cl,BrまたはNOであり、
は、H,Cl,Br,−NO,−SONHまたは−SOHであり、
は、O(CHORまたは(CHORであり、
は、H、直鎖C1〜4アルキル、分枝C3〜4アルキルまたは−SOHであり、
nは、1,2,3または4であり、
そしてKaは、カチオンである)
並びにそれらの混合物および/またはそれらの塩に関する。
【0003】
該直鎖または分枝アルキル基は、置換または非置換であってもよい。好適な置換基は、ヒドロキシル基、例えばClもしくはBr等のハロゲン基、またはスルホ基であってもよく、
式(I)の好ましい化合物では、RはH、C1〜3アルキルまたは−SOHであり、そしてnは1,2,3または4である、好ましくはRはHまたはC1〜3アルキルである、そしてnは1,2,3または4である。
【0004】
式(I)の好ましい化合物において、Rは窒素原子に対してパラ位にある。
式(I)の好ましい化合物において、RはHまたはNOを独立して表し、Rは好ましくはNOを表す。
【0005】
式(I)の好ましい化合物において、RはNOまたはSONHを独立して表し、Rは好ましくはNOを表す。
式(I)のさらに好ましい化合物において、RはH、CHまたはCHCHであり、そしてnは2,3または4である。
式(I)のさらに好ましい化合物において、Rは、Hであり、そしてnは2である。
【0006】
好適なカチオンKは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアンモニウムまたはアルキルアンモニウムカチオンである。Kはまた、例えば一価のカチオンの場合、1つより多いカチオンであることができる。対応するカチオンの例は、ナトリウム、リチウムまたはアンモニウムカチオンまたはモノ−、ジまたはトリエタノールアンモニウムカチオンである。
【0007】
本発明のさらなる態様は、
式(II)のアゾ化合物と、
【化2】

式(III)の1:1クロム錯体化合物と、
【化3】

(式中、R,R,RおよびRが上記のように規定される)
を反応させることを含む、式(I)の化合物の製造方法である。
【0008】
式(II)のアゾ化合物と、式(III)の1:1クロム錯体化合物との反応は、例えば、40℃〜130℃、特に70℃〜100℃の温度の、例えば、8〜14のpHの、特に10〜13のpHの、例えば、水性媒体中で行われる。反応は、例えば、ナトリウムがアルカリ金属として好ましい、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アセテートまたはアルカリ金属水酸化物の存在下で、鉱酸またはアルカリ性試薬を中和する試薬の存在下で有利に行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
式(II)および(III)の化合物は公知であり、または公知方法に類似の方法で得ることができる。
式(II)の化合物は、伝統的ジアゾ化およびカップリング反応によって得ることができる。ジアゾ化は、概して低温、例えば0℃〜20℃で、水性鉱物性酸溶液中で亜硝酸の作用により、行われる、そしてカップリングは、アルカリ性pH、例えば8〜12のpHで有利に行われる。
【0010】
式(III)の1:1クロム錯体化合物は、このように伝統的クロム処理方法によって得ることができ、反応は、クロム塩と、例えば水性媒体中で、適当な場合は加圧下で、例えば、90℃〜130℃の温度で行うことができる。クロム塩は、例えば、酢酸クロム(lll)、硝酸クロム(lll)、塩化クロム(lll)、サリチル酸クロム(lll)または、特に、硫酸クロム(lll)である。本発明のさらなる態様は、ヒドロキシル基含有または窒素含有繊維材料の染色または印刷方法である。
【0011】
繊維材料は、好ましくは天然ポリアミド繊維材料、例えば絹もしくは特に羊毛、または合成ポリアミド繊維材料、例えばポリアミド6もしくはポリアミド6,6、または羊毛もしくはポリアミドを含有する混合物織物のいずれかである。合成ポリアミド繊維材料は、本明細書中では特に興味がある。
上記の繊維材料は、例えば繊維、糸、織物または編物として、そして特にじゅうたんの形で、最も多様な処理形態であることができる。
【0012】
染色または印刷は、伝統的染色または印刷装置で行われる。染液または印刷ペーストは、さらに添加物、例えば湿潤剤、消泡剤、均染剤、または繊維製品材料の特性に影響する試薬、例えば柔軟剤、防炎性仕上げを提供する添加物もしくは撥土壌剤、撥水剤および撥油剤、並びに軟水化剤および天然もしくは合成増粘剤、例えばアルギン酸およびセルロースエーテルを含む。
【0013】
好ましい印刷方法において、例えばパッドスチーム、パッドサーモフィックス、パッドドライ、パッドバッチ、パッドジグおよびパッドロールのパディング法が使用される。あるいは、印刷は、インクジェット法を使用して行われてもよい。
【0014】
本発明による式(I)の1:2クロム錯体色素は、良好な幅広い特性を有する均一な染色を与える。本発明による式(I)の1:2クロム錯体色素は、染色混合物中の成分としても好適である。
【0015】
下記の例は、本発明を具体的に示すのに役立つ。他に記載しなければ、パーセンテージは、質量%であり、そして温度は摂氏である。
【実施例】
【0016】
例1a
195部の4−ヒドロキシ−7−[(4−(2'−ヒドロキシエトキシ)フェニル)アミノ]−ナフタレン−2−スルホン酸を、600部の水と45部の30%水酸化ナトリウムとの溶液中に溶解した。次に50部の尿素を、25℃の温度で加えた。99.5部の2−アミノ−4,6−ジニトロ−1−ヒドロキシベンゼンと125容積部の4Nナトリウム亜硝酸溶液との混合物から0〜5℃およびpH1で生成したジアゾニウム塩溶液を、30分以内に加えた。カップリング反応の間に、30%水酸化ナトリウム溶液を連続的に加えて、pHを9〜10で維持した。反応の最後に得られた製品を塩析させ、そして吸引ろ過した。このように得られた化合物は、式1を有する
【化4】

【0017】
吸引ろ過後のまだ湿っている残留物に、4000部の水と65部のギ酸と125部の硫酸クロム−(lll)との混合物を加え、そして130℃の温度、2barの圧力下で、5時間充分攪拌した。反応が完了すると、このように形成された1:1クロム錯体を伝統的な方法で単離しろ過した。生成物は式2を有する。
【化5】

【0018】
例1b
伝統的な方法で得られた149.3部の式3を有するモノアゾ化合物
【化6】

【0019】
を、75〜80℃且つpH8〜9の3000部の水中で懸濁した。この混合物に、例1に記載された方法で得られた318部の式(2)を有する1:1クロム錯体
【0020】
【化7】

を、攪拌しながら加えた。同時に30%水酸化ナトリウム溶液の添加によってpHを10に保った。反応が完了後に、生じる1:2クロム錯体を従来の方法を使用して塩析させ、ろ過し、そして真空下60℃で乾燥させた。最終生成物は、式(4)に従い、
【化8】

そして羊毛および合成ポリアミドを青い色合い(blue shade)に染色する。このように得られた色素は、優れた光および湿気堅牢度特性を示す。
【0021】
例2〜15
表1は、対応する出発原料を使用してこの例1a〜1bに記載された方法に類似する方法によって生成される幾つかの染料(式(5)による置換基)を開示する。全ての場合において、得られた染料は、羊毛および合成ポリアミドを青い色合いに染色し、このように得られた色素は、優れた光および湿気堅牢度特性を示す。
【化9】

【0022】
表1
【表1】

【0023】
適用例A
2000部の水、エトキシレート化アミノプロピル脂肪酸アミドをベースとし、そして色素に親和性を有する1部の弱カチオン活性均染剤、1.5部の例1の色素からなり、そして0.5部の40%酢酸でpH6に調整された40℃の染浴に、100部のナイロン〜6織物を入れた。40℃で10分後、染浴を98℃まで、1℃/分の速度で加熱し、次に45〜60分で沸騰させた。その後15分かけて70℃に冷却した。染め物を、浴から除去し、熱水次に冷水で洗浄し、そして乾燥した。得られた結果は、非常に高い光堅牢度を有する灰色ポリアミド染色である。
【0024】
適用例B
4000部の水、硫酸化、エトキシレート化アミノプロピル脂肪酸アミドをベースとし、そして色素に親和性を有する1部の弱両性均染剤、2部の例1の色素からなり、そして0.5部の40%酢酸でpH6に調整した40℃の染浴に、100部の羊毛織物を入れた。40℃で10分後に、染浴を1℃/分の速度で沸騰するまで加熱し、次に45〜60分沸騰させた。その後20分にかけて70℃まで放冷した。染め物を浴から除去し、熱水次に冷水で洗浄し、そして乾燥した。得られた結果物は、非常に高い光堅牢度を有する灰色の羊毛染色である。
【0025】
適用例C
100部の編みナイロン−6材料を、
40部の例1の色素、
100部の尿素、
ブチルジグリコールをベースとする20部の非イオン性可溶化剤、
15〜20部の(pH4に調整するため)酢酸、
エトキシレート化アミノプロピル脂肪酸アミドをベースとし、そして色素に親和性を有する、10部の弱カチオン活性均染剤、および
810〜815部の(1000部のパディング液を作るための)水
から成る50℃の液体でパッドした。
このように含浸された材料を、巻き上げ、そして定着させるために、85〜98℃で飽和蒸気条件下の蒸気チャンバーに、3〜6時間放置した。染め物を熱水そして冷水で洗浄し、そして乾燥した。得られた結果は、断片中で非常に良好な均染度と良好な光堅牢度を有する灰色のナイロン染色である。
【0026】
適用例D
ナイロン−6からなり、そして合成ベースの織物を有する繊維製品カットパイルシートを、
1000部当たり
2部の例1の色素
イナゴマメ粉エーテルをベースとする4部の市販の増粘剤
2部の高級アルキルフェノールの非イオン性エチレンオキサイド付加物
1部の60%酢酸
を含有する液体でパッドした。
次に、これを1000部当たり以下の成分を含むペーストで印刷した:
20部の市販のアルコキシレート化脂肪アルキルアミン(置換製品)、
イナゴマメ粉エーテルをベースとする20部の市販の増粘剤。
印刷物を100℃の飽和蒸気中で6分間固定させ、洗浄し、そして乾燥した。得られた結果は、灰色および白色パターンを有する均染着色カバー材料である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の1:2クロム錯体色素、
【化1】

(式中、
は、H,Cl,BrまたはNOであり、
は、H,Cl,Br,−NO,−SONHまたは−SOHであり、
は、O(CHORまたは(CHORであり、
は、H、直鎖C1〜4アルキル、分枝C3〜4アルキルまたは−SOHであり、
nは、1,2,3または4であり、そして
Kaは、カチオンである)
並びにそれらの混合物および/またはそれらの塩。
【請求項2】
が該窒素原子に対してパラ位にあり、そしてRがH、CHまたはCHCHであり、そしてnが2,3または4である、請求項1に記載の式(I)の1:2クロム錯体色素、並びにそれらの混合物および/またはそれらの塩。
【請求項3】
がHまたはNOを表し、そしてRがNOまたはSONHを表す、請求項1に記載の式(I)の1:2クロム錯体色素。
【請求項4】
,R,RおよびRが上記のように規定される、
式(II)のアゾ化合物と
【化2】

式(III)の1:1クロム錯体化合物と
【化3】

を反応させることを特徴とする、請求項1,2または3のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の製造方法。
【請求項5】
請求項1,2または3のいずれか一項に記載の染料または染料の混合物の使用を含んで成るインクジェットインクの調製方法。
【請求項6】
該染色または印刷が、式(I)の化合物、それらの塩またはそれらの混合物で行われる、ヒドロキシル基含有または窒素含有繊維材料の染色または印刷方法。
【請求項7】
該繊維材料が請求項1,2または3のいずれか一項で規定された化合物、それらの塩またはそれらの混合物で染色または印刷されることを特徴とする、ヒドロキシル基含有または窒素含有繊維材料。

【公表番号】特表2009−501823(P2009−501823A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521952(P2008−521952)
【出願日】平成18年7月17日(2006.7.17)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064313
【国際公開番号】WO2007/009966
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(596033657)クラリアント インターナショナル リミティド (48)
【Fターム(参考)】