説明

クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)不完全ソマトスタチン融合タンパク質およびその使用

ソマトスタチンに基づくキメラポリペプチド、該ポリペプチドをコードするために用いられるポリヌクレオチド、該ポリペプチドを単離しそして産生するための方法、ならびにその使用を提供する。さらに、免疫原性応答を増進するための低コストアジュバントを提供する。ソマトスタチンに基づくキメラポリペプチドおよび新規アジュバントの両方を含むワクチン接種が含まれ、これは農場動物生産性を促進するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明はソマトスタチンに基づくキメラポリペプチド、該ポリペプチドをコードするために用いられるポリヌクレオチド、該ポリペプチドを単離しそして産生するための手段、ならびにその使用に関する。本発明はまた、例えば本発明のソマトスタチンに基づくキメラポリペプチドならびに他の類似の抗原の免疫原性増進のための新規アジュバントおよび免疫組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]ソマトスタチン(成長ホルモン阻害ホルモンまたはGHIHとしてもまた知られる)は、視床下部ならびに消化系の特定の部分で産生されるペプチドホルモンである。ソマトスタチンは、一般的に、Gタンパク質共役型ソマトスタチン受容体との相互作用を介して、内分泌系の制御に関与する。ソマトスタチンに基づくこのシグナル伝達カスケードは、体全体に広がる多くの作用を導く。
【0003】
[0003]本発明の側面に関連して、ソマトスタチンは、下垂体前葉からの成長ホルモンおよび甲状腺刺激ホルモンの放出を阻害することが知られる(Patel YCおよびSrikant CB, Somatostatin and its receptors Adv Mol Cell Endocrinol, 1999. 3 43−73)。ソマトスタチンによって阻害される他のホルモンには、インスリン、グルカゴン、セクレチン、ガストリン、ペプシン、マレチン(maletin)等が含まれる(Patel YCおよびSrikant CB Somatostatin and its receptors Adv Mol Cell Endocrinol, 1999. 3 43−73)。ソマトスタチンは、成長および食物利用に必要な非常に多くの因子/ホルモンを制御可能であるため、畜産分野において、動物成長を制御するための中心的なターゲットとなってきており、すなわち、ソマトスタチンを阻害すると、その結果、ターゲット動物に存在する成長ホルモンのレベルが増加し、そしてそれによって、ミルクを産生し、より多い肉量を提供するなどの能力が増進した動物が生じる。
【0004】
[0004]特に、ソマトスタチンに対する動物の免疫は、ターゲット動物におけるソマトスタチンを中和し、そしてそれによって動物の生産性の多様な側面、例えば乳牛におけるミルク産生に対するソマトスタチンの通常の阻害効果を除去する手段と認識されてきている。Reichlin S.監修, 1987, Somatostatin, Basic and Clinical Status, Plenum Press, ニューヨーク(pp 3−50, 121−136, 146−156, 169−182, 221−228, 267−274)。Spencer G.S., 1985, Hormonal systems regulating growth, 概説, Livestock Production Science, 12, 31−46。重要なことに、ソマトスタチンに基づくこれらの免疫法は、動物における、同化ホルモン、例えば成長ホルモン等の直接の使用を回避し、そして内因性同化因子濃度のわずかな変化を可能にし、そしてそれによって生態学的に純粋な食品を可能にする。
【0005】
[0005]ソマトスタチンは、血中で、比較的短い半減期を有することが知られる。ソマトスタチンの免疫学的効果を増進するため、ソマトスタチンをターゲットキャリアタンパク質にコンジュゲート化することによって、該タンパク質の半減期を増進する免疫プロトコルが開発されてきている。これらのコンジュゲート化されたソマトスタチンタンパク質は、血中での半減期増加および抗原性増加を有するように設計されており、そしてしたがって、利益の増進を提供する(特に、ソマトスタチン調製のコストを考慮して)。例えば、キメラソマトスタチンタンパク質が米国特許第6,316,004号(および対応する欧州特許EP0645454)に開示されており、該特許では、他の慣用的な免疫または同化ホルモンに基づく方法に比較した際、多様なコンジュゲート化ソマトスタチン含有タンパク質が、抗原性増加および農場動物の生産性に関する機能の増加を有することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,316,004号
【特許文献2】欧州特許EP0645454
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Patel YCおよびSrikant CB, Somatostatin and its receptors Adv Mol Cell Endocrinol, 1999. 3 43−73
【非特許文献2】Reichlin S.監修, 1987, Somatostatin, Basic and Clinical Status, Plenum Press, ニューヨーク(pp 3−50, 121−136, 146−156, 169−182, 221−228, 267−274)
【非特許文献3】Spencer G.S., 1985, Hormonal systems regulating growth, 概説, Livestock Production Science, 12, 31−46
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0006]しかし、畜産分野において、全体の生産性および適時性を改善するには、より低い用量でより高い抗原性に基づく免疫組成物および方法が必要である。本発明は、これらのより抗原性が高くそして機能的に活性である、ソマトスタチンに基づく免疫化合物、組成物および方法を提供することに対して向けられる。
【0009】
[0007]この背景に対して、以下の開示を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[0008]本発明は、ソマトスタチンの免疫原性が増進した新規ポリペプチド、および該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明のポリペプチドには、機能的に最適化されたリンカーを通じて、実質的に不活性化されたクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼタンパク質に融合されたソマトスタチン−14が含まれる。本発明のキメラポリペプチドは、以下により詳細に記載するように、畜産分野において使用するための、非常に有効でそして低コストの材料を提供する。本発明の態様には、配列番号1〜14に定義するようなアミノ酸および核酸配列が含まれる。
【0011】
[0009]本発明はまた、内毒素不含であり、そして非常に機能的な状態にある、本発明のキメラポリペプチドを作製するための産生法および精製法も提供する。内毒素不含ポリペプチドは、典型的には免疫原性応答を誘発するのに好適であると考えられる少量の内毒素が、実際には有意な機能的不利益を導くような、特定のターゲット動物において使用するために、実質的でそして予想外の利点を提供する。これは特に、本発明のポリペプチドを、米国で育ちそして飼育された乳牛を免疫するのに用いる際に当てはまる。さらに、本発明のキメラポリペプチドは、慣用的な材料に比較した際に増進した機能を示すため、ターゲット動物を免疫するのに、より少量でそしてより少数の用量が用いられる。必要な量がこのように減少していることから、結果として、本発明のワクチンにおける内毒素の減少もまた提供される。本発明のキメラポリペプチドの内毒素を含まない単離、および使用がより少量であることが組み合わされて、本明細書において、実質的に内毒素不含のワクチンを使用することが可能になる。
【0012】
[0010]本発明はまた、慣用的なアジュバント材料に比較した際、機能および安全性が増進したアジュバント組成物も提供する。本明細書のアジュバントは、動物由来の材料を含有せず、そして大部分の既知の化学的発癌物質、例えばベンゼンおよび他の類似の材料を含まない。本明細書のアジュバント組成物は、ターゲット抗原と組み合わせると、免疫応答を誘発するのに予想外に有効であることが立証されてきている。
【0013】
[0011]本発明は、本発明のアジュバント組成物と本発明のキメラポリペプチドを含有するワクチンをさらに提供する。本明細書のワクチンは、ワクチン接種した哺乳動物および鳥類、例えばターゲット農場動物において、免疫応答を誘導するために用いられる。本明細書で使用するための例示的な農場動物には:乳牛、ブタ、ヒツジ、ヤギ、七面鳥、ウサギ、および雄の子ウシが含まれる。いくつかの側面において、本発明のポリペプチドは、会合する内毒素を少量しかまたはまったく伴わずに調製され、そして精製される。これらのワクチンは、ターゲット動物において、安全でそして増進した免疫原性反応を誘発するように最適化されてきている。
【0014】
[0012]本発明にはさらに、本発明のワクチンを用いて、ターゲット哺乳動物および鳥類にワクチン接種するための方法が含まれる。安全で(動物および最終使用者の両方にとって)、費用効率的で、そして非常に有用な方式で、ミルク産生を増進させる、乳牛のワクチン接種のための例示的な方法を提供する。他の例示的な方法には、安全でそして費用効率的な方式で、ターゲット動物における肉(そして特に赤身肉)産生を増進するための、子ブタ、ヒツジ、七面鳥、ヤギ、ウサギまたは雄の子ウシのワクチン接種が含まれる。
【0015】
[0013]本発明のこれらのおよび多様な他の特徴および利点は、以下の詳細な説明を読み、そして付随する請求項を精査することから明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】[0014]図1は、本発明の態様にしたがったpET30b CatSomプラスミドの例示的概略図である。該プラスミドには、すべて本発明の態様にしたがった、カナマイシン耐性マーカー、Lacオペレーター、T7プロモーター、CATコード配列が含まれ、本明細書の本発明にしたがったリンカー領域、および本発明にしたがったソマトスタチンコード領域もまた含まれる。
【図2】[0015]図2は、例示的な染色されたSDS−PAGEであり、本発明のコドンが最適化されたCAT不完全ソマトスタチンポリペプチドの予測されたサイズに対応する28KDバンドを示す。レーン1はLB+IPTG、還元であり、レーン2はLB、還元であり、レーン3は、LB+IPTGであり、そしてレーン4はLBである。
【図3】[0016]図3Aおよび3Bは、ワクチン接種された(実施例に記載するようなワクチンを用いる)および対照乳牛(BSY)の1日あたりのリットルでのミルク産生を示す表である。各乳牛は、各表に示すように、特定の同定番号を有した。
【0017】
配列および配列識別子の同定
【0018】
【化1−1】

【0019】
【化1−2】

【0020】
【化1−3】

【0021】
【化1−4】

【発明を実施するための形態】
【0022】
[0032]本発明の態様は、ソマトスタチンの免疫原性が増進したキメラポリペプチド、および該キメラポリペプチドをコードする核酸構築物を提供する。本明細書の態様には、キメラタンパク質を調製するための方法、ならびにキメラタンパク質を用いて、ターゲット農場動物の特定の生産性を増加させるための方法、そして特に乳牛におけるミルク産生および畜牛、ブタ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、雄の子ウシ等の肉産生を増加させるための方法が含まれる。
【0023】
[0033]本発明の態様にはまた、ターゲット動物における免疫原性増進、ワクチン接種されたターゲット動物に関する安全性増進、およびターゲット動物の使用者、すなわちワクチン接種動物の消費者またはワクチン接種動物由来の製品の消費者に関する安全性増進のための、本発明のキメラタンパク質とともに使用するための新規アジュバントも含まれる。
【0024】
[0034]1つの側面において、本発明は、ソマトスタチンの免疫原性増進のために設計されたキメラソマトスタチンタンパク質を提供する。キメラソマトスタチンタンパク質態様には、実質的に不活性化されたクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)一部切除(truncated)タンパク質に対して、リンカー配列によって連結されたソマトスタチン−14のアミノ酸配列が含まれる。いくつかの場合、リンカー(本明細書において、スペーサーとも称される)は、ターゲット宿主細胞におけるキメラポリペプチドの産生を増進するように最適化されてきている。他の場合、実質的に内毒素不含状態で、キメラタンパク質のこれらの増進した量を産生し、そして単離するための方法を提供する。
【0025】
[0035]別の側面において、本発明は、本発明のキメラソマトスタチンタンパク質を取り込む、新規アジュバント組成物(いかなる動物由来タンパク質も、またはベンゼンのような化学薬品も含有しない)およびワクチンを提供する。態様には、予想外に有効なアジュバント/キメラソマトスタチンタンパク質(典型的には実質的に内毒素不含)、すなわちワクチン接種されたターゲット農場動物において抗原性を誘導するための新規ワクチン、組成物が含まれる。いくつかの態様において、ターゲット農場動物は、乳牛、雄の子ウシ、ブタ、ヤギ等である。本発明のアジュバントは、本明細書のキメラソマトスタチンタンパク質と組み合わせて記載されるが、本明細書の本発明のアジュバントを、他のワクチンとともに、そして多様なターゲット動物、例えばヒト、ブタ、イヌ、ネコ等において用いてもよいことが想定される。
【0026】
[0036]他の側面において、この新規ワクチンのわずかに単一の用量を用いて、ターゲット農場動物にワクチン接種して、生産性増進、そして特に乳牛および他の類似の農場動物におけるミルク産生増進を得る方法を提供する。これらの改善された用量法(キメラソマトスタチンのより少ないワクチン接種回数およびより低い濃度)は、時間有効性およびより低いコストを提供し、これは、乳業に拡張された場合、農場動物生産性における有意な前進に相当する。また、本明細書の方法は、ターゲット農場動物、最終使用者、および組換え成長ホルモンの排出が地下水供給内に放出される環境の両方に対して、医療業界内で懸念が持たれている、組換え成長ホルモン療法の使用を回避する。
【0027】
[0037]定義
[0038]本明細書で頻繁に用いられる特定の用語の理解を容易にするため、以下の定義を提供し、そしてこうした定義は本開示の範囲を限定することを意味しない。
【0028】
[0039]用語「アミノ酸」は、20の天然存在アミノ酸のいずれかならびに修飾アミノ酸配列いずれかを指す。修飾には、翻訳後プロセシングなどの天然プロセスが含まれてもよいし、または当該技術分野に知られる化学的修飾が含まれてもよい。修飾には、限定されるわけではないが:リン酸化、ユビキチン化、アセチル化、アミド化、グリコシル化、フラビンの共有結合、ADP−リボシル化、架橋、ヨード化、メチル化等が含まれる。
【0029】
[0040]用語「キメラポリペプチド」または融合タンパク質は、第一および第二のポリペプチドがインフレームで発現されるように、第二の異種ポリペプチドに付着した第一のポリペプチドを指す。しばしば、2つのポリペプチドは、本発明のキメラポリペプチド(単数または複数)の発現および機能を最適にするために、リンカーまたはスペーサー部分を通じて付着されてもよい。
【0030】
[0041]用語「内毒素」は、グラム陰性細菌の細胞壁中で会合する毒素を指す。いくつかの場合、毒素はグラム陰性細菌細胞壁の外膜の細菌膜構成要素のリポ多糖構成要素である。
【0031】
[0042]用語「(単数または複数の)宿主細胞」は、ex vivo培養中で確立された細胞を指す。本発明のキメラタンパク質を発現可能であることが、本明細書に論じる宿主細胞の特徴である。本発明の側面に有用な適切な宿主細胞の例には、限定されるわけではないが、細菌、酵母、昆虫および哺乳動物細胞が含まれる。こうした細胞の特定の例には、SF9昆虫細胞(SummersおよびSmith, 1987, Texas Agriculture Experiment Station Bulletin, p1555)、大腸菌(E.Coli)細胞(BL21(DE3)、Novagen)、酵母(ピキア・パストリス(Pichia Pastoris)、Invitrogen)およびヒト肝臓細胞(Hep G2(ATCC HB8065))が含まれる。
【0032】
[0043]用語「核酸配列」は、デオキシリボ核酸鎖に沿ったデオキシリボヌクレオチド配列の順序を指す。これらのデオキシリボヌクレオチドの順序は、ポリペプチド鎖に沿ったアミノ酸の順序を決定する。デオキシリボヌクレオチド配列は、アミノ酸配列をコードする。
【0033】
[0044]用語「タンパク質」、「ペプチド」、および「ポリペプチド」は、交換可能に用いられて、アミノ酸ポリマーあるいは2以上の相互作用するかまたは結合したアミノ酸ポリマーのセットを意味する。
【0034】
[0045]用語「実質的に」は、「大きな度合い」を指し、例えば、実質的に除去された、は、少なくとも75%、より典型的には少なくとも80%、85%、90%、95%、そして最も典型的には96%、97%、98%、99%のターゲット物質が除去されたことを意味し;実質的に不活性な、は、少なくとも75%、より典型的には少なくとも80%、85%、90%、95%、そして最も典型的には96%、97%、98%、99%の酵素が不活性化されたことを意味する。こうしたものとして、実質的に不活性なCAT酵素は、その活性の75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%が除去されたものである。(既知の機能アッセイ、例えば放射標識クロラムフェニコールにn−ブチリル補酵素Aを結合させてそして続いて液体シンチレーション計測(LCS)によって測定するアッセイ;薄層クロマトグラフィーによる[14C]アセチルCoAからクロラムフェニコールに移動した放射能標識量の決定によるアッセイ(Molecular Cloning: A Laboratory Model, 第3版, J SambrookおよびDW Russell, 2001. Cold Spring Harbor Press)または他の既知のまたは類似のアッセイ等を用いて、CAT活性を決定してもよい)。
【0035】
[0046]用語「ベクター」は、1つの細胞から別の細胞にDNAセグメント(単数または複数)を移動させる核酸分子を指すよう用いられる。用語「ビヒクル」は、ときに、ベクターと交換可能に用いられる。2つの一般的なタイプのベクターは、プラスミドおよびウイルスベクターである。
【0036】
[0047]ソマトスタチン
[0048]いくつかの研究によって、ソマトスタチンで免疫された動物は、10〜20%の平均一日増体重、9%の食欲減少、および食物利用効率の11%の増加を有することが示された。ソマトスタチンで免疫された動物、およびまたその子孫は、正しい比率(proportions)を有し、そして筋肉、骨および脂肪の間の動物の重量分布は、対照動物におけるのと同じである(Reichlin、1987を参照されたい)。したがって、ソマトスタチン免疫は、ターゲット動物の生産性を増進する有用でそして安全な方法を提供する。これは、その使用に関して、治療された動物由来のミルクまたは肉におけるホルモンに関する懸念、あるいは動物自身の安全性または生態系、特に地下水供給におけるホルモンの蓄積に関する懸念が生じている、組換え成長ホルモンの使用と比較した際、特に当てはまる。
【0037】
[0049]ソマトスタチン−14は、視床下部および胃腸管で産生される、生物学的に活性であるテトラデカペプチドである。該テトラデカペプチドのアミノ酸配列は、AGCKNFFWKTFTSC(配列番号1)である。ソマトスタチン−14の配列は、哺乳動物間で非常に保存されている(Lin XWら Evolution of neuroendocrine peptide systems: gonadotropin−releasing hormone and somatostatin. Comp Biochem Physiol C Pharmacol Toxicol Endocrinol. 1998 119(3):375−88.)。該テトラデカペプチドは、核酸配列GCTGGCTGCAAGAATTTCTTCTGGAAGACTTTCACATCCTGT(配列番号1a)にコードされる(配列番号1をコードする他の核酸配列を用いてもよいが、配列番号1aが例示目的のために提供されていることに留意されたい)。
【0038】
[0050]ソマトスタチン−14は、動物において、成長および食物利用に関与する多数のホルモンに対して、強い阻害効果を有することが知られる。米国特許第6,316,004号(すべての使用のため、本明細書に援用される)に先に記載されるように、毎日の体重増加および適切な場合はミルク産生の増加のために、ソマトスタチン−14およびソマトスタチンのキメラ型を動物の免疫に用いてもよい。これらの免疫法は、慣用的なアジュバントを用いて行われ、そしてソマトスタチンに基づく本発明の材料を利用しなかった。抗ソマトスタチン抗体でのターゲット動物の治療は、過剰に費用が掛かり、そして機能的に劇的でなく、それによって直接抗体治療は非現実的であるとして排除されると立証されてきたことに留意されたい。Muromtsev G.S.ら, 1990, Basics of agricultural biotechnology, Agropromizdat, モスクワ, pp 102−106。本発明の1つの側面は、本明細書に記載する組成物および方法によって形成される抗ソマトスタチン抗体が、ターゲット動物において、ソマトスタチンの大部分の阻害作用を減弱するが、完全には排除しないという概念に基づく。このプロセスは、免疫ターゲット動物における成長および生産性の自然でそして比例的な増加を生じる。
【0039】
[0051]こうしたものとして、本発明の側面は、ターゲット動物を免疫する際に使用するための、非常に免疫原性の物質を提供することによって、ソマトスタチンに基づく免疫を促進する。これらのソマトスタチンに基づく免疫化合物は、発現および抗原性に関して最適化されてきている。いくつかの態様において、ソマトスタチン−14は、コドンが最適化されたCAT不完全ソマトスタチンキメラポリペプチドとして発現される。これらの物質は、他の免疫に基づくワクチンに勝る、予想外の改善を提供する。
【0040】
[0052]コドンが最適化されたCAT不完全ソマトスタチン新規構築物
[0053]本発明の1つの側面は、最適化されたソマトスタチン免疫原性活性を有するキメラタンパク質をコードする、単離核酸分子を提供する。特に、本発明の態様には、ソマトスタチンに関する免疫原性活性を有するCAT融合タンパク質をコードする新規核酸構築物が含まれる。これらのポリペプチドは、免疫法において、最適な機能的活性があると同定されてきている。
【0041】
[0054]1つの態様において、本発明のキメラポリペプチドをコードする、図1に示すような概略図を有する構築物を提供する。本発明の核酸構築物は、一般的に、10のC末端アミノ酸を含まず、そして1つまたは2つのヒスチジン置換アミノ酸を含む、不活性CAT酵素をコードする。CATの実質的な不活性化は、注射されたターゲット動物において、CATに対する不都合な反応を回避する(そしてそれによってCAT耐性を回避する)。クロラムフェニコールは、畜産業において一般的に用いられる抗生物質であり、そして畜牛におけるクロラムフェニコールに対する耐性は、本発明の材料を用いてワクチン接種された動物の安全性に対して不都合であろうことに留意されたい。こうしたものとして、不活性化されたCATを有する構築物は、ワクチン接種された動物において、耐性の不都合な副作用(動物に対する、問題がある安全性の関心事)を伴わずに、CATの免疫原性を有する。
【0042】
[0055]CAT酵素は、His193(規範的なCATIII変異体においてはHis195、以下のLewendonらを参照されたい)のイミダゾール基を除去することによって不活性化される。別の態様において、CAT酵素は、His193および近くのHis192の両方(CATIIIに関しては、それぞれ、His195およびHis194)のイミダゾール基を除去することによって不活性化される。CATの活性部位から必須のHis193(CATIIIにおいてはHis195)イミダゾール基を除去して、そしてアラニン、グリシンまたは他の類似のアミノ酸で置換すると、CAT酵素の実質的な不活性化が生じる(Lewendon Aら(1994). Replacement of catalytic histidine−195 of chloramphenicol acetyl transferase: evidence for a general base role for glutamate. Biochemistry. 33(7): 1944−50.)。最後に、本明細書の態様にはまた、His192(CATIIIに関してはHis194)のみのイミダゾール基を除去することによるCAT酵素不活性化も含まれてもよい。His193に関しては、置換は、アラニン、グリシン、または他の類似のアミノ酸を用いてもよい。
【0043】
[0056]いくつかの側面において、1以上の置換ヒスチジンアミノ酸は、配列番号2の574〜576位および577〜579位に位置する核酸によってコードされる(配列番号3のアミノ酸192および193に対応する)。いくつかの態様において、本発明の核酸配列には、配列番号4、配列番号5および配列番号6が含まれる。本明細書のヒスチジン置換構築物を含む本発明のキメラタンパク質は、ほとんどまたはまったくCAT活性がない、非常に免疫原性のタンパク質を提供し、これは現存する技術に勝る有意な改善である。実質的に不活性化されたCAT酵素態様を、本発明のソマトスタチンポリペプチドに付着させる。この付着は、直接であってもまたはリンカーを用いて行われてもよい(以下により詳細に記載される)。
【0044】
[0057]部位特異的突然変異誘発および合成遺伝子組み立てを含む、当業者に知られる多数の方法のいずれによって、ターゲット部位(His192および/またはHis193)の不活性化を達成してもよい。1つの態様において、アラニン、グリシンまたは他の類似のアミノ酸をコードするように、ヒスチジン193をコードする核酸配列を修飾する。別の態様において、アラニン、グリシンまたは他の類似のアミノ酸をコードするように、ヒスチジン192をコードする核酸配列を修飾する。192および193キメラポリペプチドに関する典型的な組み合わせ置換には:アラニン、アラニン;アラニン、グリシン;グリシン、アラニン;およびグリシン、グリシンが含まれる。
【0045】
[0058]本発明の態様にはまた、本発明のCAT不完全ポリペプチドに関するアミノ酸配列も含まれ、配列番号7、8および3を有するアミノ酸配列が含まれる(193でのhis→gly、193でのhis→ala、192および193の両方でのhis→glyに対応する)。
【0046】
[0059]図1に示すように、実質的に活性でないCAT酵素を、多様な長さのスペーサーを介して、ソマトスタチン−14に連結してもよい。スペーサーは、球状の表面上に、コードされるソマトスタチンが提示されるのを確実にするために必要である。本明細書のスペーサー態様は、最適なプロテアーゼ耐性および最適なエピトープ曝露を提供し、そして本発明のキメラポリペプチド中に包含すると、本発明のリンカー配列(単数または複数)を持たない構築物に勝る、予想外の改善を示した。
【0047】
[0060]したがって、スペーサー態様は、多様な微生物において、そして特に大腸菌において、CAT不完全ソマトスタチン発現を確実にするように、長さおよび組成が最適化されてきた。米国特許第6,316,004号に記載されるような元来の構築物には、稀な大腸菌コドンを有するスペーサーが含まれ、そして該構築物は、第二のまたはヘルパープラスミドからの稀なtRNAの同時発現を必要とした。本明細書のスペーサー態様は、これらの稀な大腸菌コドンを除去して、そしてそれによって、第二のヘルパープラスミドに関する必要性を取り除いて、先行技術に勝る改善を提供する。
【0048】
[0061]典型的な態様において、スペーサーは、tgggaactgcaccgttctggtccacgcccgcgccctcgcccacgtccggaattcatg(配列番号9)の核酸配列を有する。本発明のスペーサーの1つの例は、welhrsgprprprprpefm(配列番号10)のアミノ酸配列を有する。本発明のスペーサーの典型的なアミノ酸配列は、welhrsgp(rp)efm、式中、n>l(配列番号11)である。上述のように、これらの新規スペーサー配列は、プロテアーゼ耐性の増進(それによって米国特許第6,316,004号に開示される構築物に比較した際、増加した産生を可能にする)および最適なソマトスタチン−14曝露を提供する。最適に構成されたリンカーによって、実質的に不活性化されたCAT酵素(ヒスチジン置換構築物)に付着したソマトスタチン−14の組み合わせは、生産性増進のためにターゲット動物を免疫するのに用いた際、他の慣用的な材料に勝る、予想外でそして驚くべき改善を示した。
【0049】
[0062]機能では最適ではないが、多様な長さの他のリンカー配列を用いて、実質的に不活性であるCAT酵素に、ソマトスタチン−14を付着させてもよい。さらに、実質的に不活性であるCAT酵素へのソマトスタチン−14の直接融合もまた、本明細書で使用可能であることが想定され、そして本発明の範囲内であると見なされる。
【0050】
[0063]ベクターおよび宿主細胞
[0064]本発明はまた、本発明のポリヌクレオチド分子を含むベクター、ならびにこうしたベクターで形質転換された宿主細胞にも関する。一般的に、関心対象の増殖宿主のための選択可能マーカーおよび複製起点を含むベクターに、本発明のポリヌクレオチド分子のいずれを連結してもよい。宿主細胞がこれらのベクターを含み、そしてそれによって本発明のポリペプチドを発現するように、宿主細胞を遺伝的に操作する。一般的に、本明細書のベクターには、微生物またはウイルス宿主細胞のためのものなどの、適切な転写または翻訳制御配列に機能可能であるように連結された、本発明のポリヌクレオチド分子が含まれる。制御配列の例には、転写プロモーター、オペレーター、またはエンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、ならびに転写および翻訳を制御する適切な配列が含まれる。ヌクレオチド配列は、本明細書の制御配列が、本発明のポリヌクレオチドをコードするキメラポリペプチドに機能的に関連している場合、機能可能であるように連結されている。
【0051】
[0065]典型的なビヒクルには、プラスミド、酵母シャトルベクター、バキュロウイルス、不活性化アデノウイルス等が含まれる。1つの態様において、ビヒクルは修飾pET30b CatSomプラスミドである(図1を参照されたい)。本明細書で使用するためのターゲット宿主細胞には、細菌宿主、例えば大腸菌、酵母、SF−9昆虫細胞、哺乳動物細胞、植物細胞等が含まれる。
【0052】
[0066]1つの態様において、制御配列には、大腸菌または他の類似の微生物における本発明のキメラポリペプチドの発現のためのT7lac、CAT、Trp、またはT5プロモーターが含まれる。これらの制御配列は当該技術分野に知られ、そして適切でそして既知の条件下で用いられる。
【0053】
[0067]発現のために、遺伝的に修飾された緑色植物細胞を利用する場合、Planet Biotechnologyなどによって開発されたような系を利用してもよい。
[0068]ターゲット制御配列の利用を通じて、本発明のキメラポリペプチドを発現させるための、本発明の多様なプラスミドが構築されてきている。例示的なプラスミドには、T7lacプロモーターが含まれてもよい(図1を参照されたい)。
【0054】
[0069]ターゲットキメラポリペプチドの発現のための宿主細胞には、原核生物、酵母およびより高次の真核細胞が含まれる。例示的な原核宿主には、エシェリキア属(Escherichia)、バチルス属(Bacillus)、およびサルモネラ属(Salmonella)、ならびにシュードモナス属(Pseudomonas)、およびストレプトミセス属(Streptomyces)の細菌が含まれる。典型的な態様において、宿主細胞はエシェリキア属のものであり、そして大腸菌であってもよい。
【0055】
[0070]以下の実施例に示すように、本発明の構築物は、多様な条件下で、最適なCAT不完全ソマトスタチン発現を提供する。これらの構築物は、原核宿主において、そして特に、エシェリキア属の細菌において発現させるのに特に効率的である。本発明の背景において、典型的にはアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium trameficies)を用いた、多様な植物発現系もまた使用可能であることにもまた留意されたい。
【0056】
[0071]内毒素不含融合タンパク質精製
[0072]本発明の側面には、動物ワクチン接種において使用するための、そして特に、いくつかの場合、米国で育った乳牛である、農場動物のワクチン接種のための、内毒素不含でコドンが最適化されたCAT不完全ソマトスタチンの使用が含まれる。内毒素不含材料は、米国で育ちそして飼育された畜牛に関して特に重要である(例えば、Drackley, JK 2004. Physiological adaptations in transition dairy cows. pp 74−87, Proc. Minnesota Dairy Herd Health Conf.中, ミネソタ州セントポール, ミネソタ大学, セントポール)。
【0057】
[0073]1つの態様において、適切なソマトスタチン含有ビヒクルでターゲット細胞を形質転換することによって、本発明のキメラ免疫原性ソマトスタチン含有タンパク質を調製する。上述のように、本明細書で使用するためのビヒクルには、選択したターゲット細胞において発現するのに適した既知のプラスミドおよびベクター系が含まれる。
【0058】
[0074]本発明の1つの側面において、キメラ免疫原性ソマトスタチン含有タンパク質は、ターゲット宿主細胞において発現される。キメラタンパク質発現は、ターゲット制御配列を用いて行われる。いくつかの側面において、キメラポリペプチドは、大腸菌での発現のために最適化されてきている(特に、本明細書に開示するスペーサー配列に関して)。
【0059】
[0075]次いで、例えば、リゾチーム溶解、封入体の分画遠心分離、篩クロマトグラフィー等を含む、既知のタンパク質精製技術にしたがって、キメラタンパク質を精製してもよい。アルカリpHの塩化グアニジンおよび尿素中での再フォールディング法を行い、その後、透析および凍結乾燥してもよい。
【0060】
[0076]1つの態様において、コドンが最適化されたCAT不完全ソマトスタチン含有プラスミド−pET30b CatSomを用いて、大腸菌細胞を形質転換する; pET30b CatSomは、発現に適した大腸菌塩基制御配列を有する。いくつかの場合、これらの細胞をおよそ10リットル発酵させると、少なくとも500グラム、そしていくつかの場合、600グラムの総バイオマスが提供され、約4〜6グラムの総タンパク質を生じる。銀およびクーマシーブルー染色から、タンパク質の最大で半量がキメラタンパク質でありうると概算される(実施例2および図2を参照されたい)。
【0061】
[0077]本明細書のいくつかの態様において、本発明のキメラタンパク質を、実質的に内毒素不含状態で、形質転換宿主細胞から精製する。内毒素、そして特に内毒素への多数回の曝露が、ある動物において、そして特に乳牛において、実質的に易感染性の動物(米国で育ちそして飼育された乳牛における乳腺炎および内毒素ショック)を生じるという認識は、本発明者らが得た、予想外でそして驚くべき結果であった。この認識の結果、乳牛ワクチン接種において、内毒素用量または曝露回数を排除するかまたは低下させるよう試みた。内毒素に基づくこの影響は、乳牛が異なる系統の乳牛の子孫であるため、ロシアおよび他の国で育ちそして飼育された乳牛においてははるかにより認められないことに留意されたい。Holstein Association, 1 Holstein Place, Brattleboro, Vermont 05302−0808。米国乳牛におけるこの発見は、一般的に、いくつかの他の欧州市場におけるソマトスタチンでワクチン接種した際の乳牛の場合のように、動物の免疫応答の最大化を補助するために、ワクチンが何らかの少量の内毒素を含むべきであるという予想とは反対である(米国特許第6,316,004号を参照されたい)。
【0062】
[00078]こうしたものとして、本明細書のいくつかの態様は、ワクチンにおいて使用するための、そして特に家畜産業で用いる、そして米国内の家畜産業で用いるワクチンにおいて使用するための、実質的に内毒素不含のキメラタンパク質の産生に関する。特定の態様において、内毒素レベルは、1EU/ml以下であり、そして他の態様において、内毒素レベルは、実質的に除去され、すなわち、本発明のキメラポリペプチドは実質的に内毒素不含である。
【0063】
[0079]1つの態様において、内毒素を欠く洗浄溶液、すなわち内毒素不含水または溶液を用いて、溶解した宿主細胞から回収したIBを数回洗浄する。内毒素レベルがおよそ1EU/ml未満になるまで、回収したIPペレットを、場合によって洗浄してもよい(MP Biochemicals、Charles River等から商業的に入手可能な試験キットを含む、1以上の既知のアッセイを用いて、内毒素試験を行ってもよい)。いくつかの態様において、洗浄溶液は内毒素不含であり、そしてこれには、1以上のタンパク質分解性タンパク質阻害剤(単数または複数)、例えばフェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)、4−(2−アミノエチル)−ベンゼンスルホニルフルオリド(AEBSF)等が含まれる。いくつかの態様において、洗浄溶液は、PMSF、AEBSFまたはPMSFおよびAEBSF両方の組み合わせの阻害有効量を有する、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。
【0064】
[0080]いくつかの側面において、尿素を含有するpH12.5のタンパク質アンフォールディング溶液で、実質的に内毒素不含のペレットを処理して、そしてアルギニン、グリセロールおよび/またはスクロースとともに、減少したモル濃度の尿素を含有するタンパク質再フォールディング溶液中で再フォールディングさせてもよい。精製キメラタンパク質濃度を、1〜3mg/ml、そして典型的には約1.4〜1.8mg/mlの間になるように修正する。いくつかの場合、実質的に内毒素不含のキメラタンパク質を約1.5〜5mg/2ml用量、そしてより典型的には、2.0〜3.5mg/2ml用量で、ワクチン配合物に提供する。
【0065】
[0081]他の内毒素除去法が本発明の範囲内であると想定され、そしてこれには例えば、商業的に入手可能なイオン交換内毒素除去カラム、疎水性カラム等が含まれてもよい(例えば、Mustang EまたはGカラム(Millipore)を参照されたい)。
【0066】
[0082]免疫応答が増進されたアジュバント
[0083]本発明の態様は、体液性免疫の誘導増進のための新規アジュバントを提供する。これらのアジュバントは、体液性応答の誘導のための慣用的な材料に勝る有意な改善を提供する。本明細書のアジュバントは、多くのワクチンとともに使用可能であるが、実施例には、乳牛、ブタまたは雄の子ウシにおけるワクチン接種のための本発明のポリペプチドを伴う使用を示す。
【0067】
[0084]重要なことに、本明細書のアジュバントのすべての構成要素は、非動物起源であり、それによって、ワクチン接種された動物が、潜在的に汚染されているアジュバント構成要素によって交差汚染される可能性を排除する。例えば、本明細書の態様は、動物起源不含Tween80を利用してもよい。これは、ターゲット動物が乳牛である場合には特に重要であり、これは、ウシ海綿状脳症(BSE)またはウシの他の類似の病気に関する懸念があるためである。これらの懸念は、非動物起源のアジュバントが有意な安全性の利点を提供する、ヒト治療にも同等に適切であることに留意されたい。さらに、本明細書のアジュバント態様は、ベンゼンおよび他の類似の発癌性化合物を含まない。これらの態様は、大部分の慣用的なアジュバント化合物において利用可能でない、安全性の利点を提供する。例えば、本明細書の態様は、Carbopol(登録商標)974Pまたはベンゼン不含多塩基酸を利用してもよい。
【0068】
[0085]1つの態様において、免疫学的アジュバントは、エマルジョンプレミックス内で混合された、選択された抗原と組み合わされた水中油エマルジョンを含む。
[0086]本明細書で使用するための例示的な水中油エマルジョンには、ミネラルオイル、Tween80、Span85およびターゲットポリマー(ベンゼン不含ポリアクリル酸)の組み合わせが含まれる。いくつかの場合、ターゲットポリマーは、CarbomerホモポリマーB型からなる群より選択される。典型的な油−水エマルジョンは、約8〜10%ミネラルオイル(v/v)、0.003〜0.004% Tween80(v/v)、0.007〜0.008 Span85(v/v)および0.04〜0.06%ポリマー(w/v)を含む。
【0069】
[0087]本発明の例示的なエマルジョンプレミックスは、高分子量ポリマー、表面活性剤、およびおよそ50%の油−水性基剤中の乳化剤で構成される。本明細書で使用するための高分子量ポリマーには、ペンタエリスリトールのアリルエーテルと架橋したアクリル酸が含まれる。いくつかの場合、高分子量ポリマーは、約29,000〜40,000の間のBrookfield RVT粘性を有し、例えばCarbopol(登録商標)974P(Noveon, Inc.)である。
【0070】
[0088]乳牛または他のターゲット農場動物において、最適化された免疫応答を得るための方法
[0089]本発明の組成物および方法にしたがって、本明細書記載の免疫原性組成物(内毒素不含でコドンが最適化されたCAT不完全ソマトスタチン構築物)を、上述のような新規アジュバントと組み合わせて、本発明のワクチンを提供する。1つの態様において、2.98mg/2ml(このうち5〜25%がアジュバント(v/v)であり、より典型的には10%〜20%がアジュバントであり、そして最も典型的には約20%がアジュバントである)の総用量で、内毒素不含でコドンが最適化されたCAT不完全ソマトスタチン構築物を投与する。他の慣用的なアジュバントが本発明の範囲内であると想定され、そしてこれを、本発明のコドンが最適化されたCAT不完全ソマトスタチン構築物とともに用いてもよいが、本明細書の新規アジュバントをこの能力で用いると、最適な結果になることが示されてきていることに留意されたい。
【0071】
[0090]新規ソマトスタチン構築物およびアジュバントの目的は、ターゲット動物、典型的には農場動物、そしてより典型的には、乳牛、雄の子ウシ、ヒツジ、ブタ、またはヤギの生産性を増加させることである。
【0072】
[0091]調製物を、好ましくは12回未満、より好ましくは6回未満、そしていくつかの場合、わずか1回のみ、筋内または皮下注射する。ターゲット動物に1回より多く注射する必要がある場合、次の注射の前に、14〜28日の間隔を空けるのが標準的である。上述のように、本明細書の態様は、ターゲット動物に対する組換えホルモン治療の使用を回避し、これは畜産分野における大きな利点である(組換え成長ホルモンは、少女における思春期の早期開始、ならびに治療された畜牛由来の肥料が、表面および地下水環境の両方に、不都合に影響を及ぼしうるという、多様な環境的な懸念と関連づけられてきている)。
【0073】
[0092]皮下または筋内経路によって、本発明の無菌組成物を投与してもよい。典型的な場合、投与部位は、ターゲット動物の首または尾であるが、他の部位を利用してもよい。不都合な反応によって、動物が動き、食べ、飲む能力などが妨げられないような部位を用いなければならないことに留意されたい。
【0074】
[0093]上述のように、本明細書のワクチンは、典型的には内毒素不含状態であり、本明細書記載の新規アジュバントを用いて、乳牛、畜牛、ブタ等の肉およびミルク産生の有意な改善を提供する。しかし、これらの治療には、食物消費の増加は付随しない。
【実施例】
【0075】
[0094]以下の実施例は、例示目的のためのみに提供され、そして本発明の範囲を限定することを意図されない。
実施例1: CAT不完全ソマトスタチン融合タンパク質の構築
[0095]本実施例は、本発明の態様にしたがった、CAT不完全ソマトスタチン融合タンパク質の産生を例示する。プラスミドpET30b−Cat−Somに対して部位特異的突然変異誘発を行って、His192およびHis193をグリシン残基で置換した(修飾後: Gly192およびGly193)。His193(およびHis192)残基を不活性化すると、CAT酵素が陽子を受容する能力が排除され、それによってCATの完全な不活性化が提供される。
【0076】
[0096]同じpET30b−Cat−Som(His置換(単数または複数)を有する)中のスペーサーは、同時発現されるtRNA分子の非存在下で、大腸菌による発現のため、コドンが最適化された。
【0077】
[0097]修飾CAT不完全ソマトスタチン核酸構築物を配列番号12に示す。非修飾CAT−ソマトスタチン融合タンパク質(配列番号14)と比較して、CAT不完全ソマトスタチン融合タンパク質配列を配列番号13として開示する。
【0078】
実施例2: CAT不完全ソマトスタチン融合タンパク質は高レベルで発現させうる
[0098]実施例1に記載するような、コドンが最適化されたCAT不完全ソマトスタチン構築物を用いて、BL21(DE3)細胞において融合タンパク質を発現させた。形質転換細胞をLB中で増殖させて、そして0.4mM IPTGでおよそ3時間誘導した。OD0.7の密度の培養から1ミリリットルの細胞をペレットにし、そして100μl SDS試料緩衝液中で、70℃で10分間加熱した。SDS PAGEのため、レーンあたり40μlの細胞抽出物試料を装填した。
【0079】
[0099]図2に示すように、コドンが最適化されたCAT不完全ソマトスタチン融合タンパク質の予測されるサイズに対応する28KDのバンドは、IPTGでの誘導後、レーン1(LB+IPTG、還元)およびレーン3(LB+IPTG)で可視であった。対照レーン2(LB、還元)およびレーン4(LB)では発現はまったく見られない。予期されるように、標準的または還元条件下で泳動した際、融合タンパク質サイズには相違はなかった。
【0080】
実施例3:内毒素不含でコドンが最適化されたCAT不完全ソマトスタチン含有ワクチン
[00100]本発明にしたがった例示的なワクチン:
【0081】
【表1】

【0082】
[00101]実施例4:内毒素不含キメラペプチド/アジュバントは、ミルク産生増加を提供する
[00102]乳牛のランダムなプール(ホルスタイン交雑種−米国で育ちそして飼育されたもの)を同定し、各々は分娩31〜65日後であった(3〜5回目の授乳)。獣医によって、各乳牛を検査し、そして最適な健康状態であると決定した。
【0083】
[00103]本研究における平均乳牛体重は、約1,000〜2,000ポンドであった。6頭の授乳中の乳牛を、JH14中、1.96mg/キメラタンパク質/2ml用量で治療した。あるいは、9頭の授乳中の乳牛に、慣用的なrBST治療を提供した。治療およびミルク産生研究は、大規模集中的ミルク産生乳製品製造所で行った。
【0084】
[00104]ワクチン接種を第0日に行った。抗SST血清抗体およびIGF−1血清レベルを4週間後に試験した。ミルク産生および動物の全身健康状態の同定を定期的なスケジュールで行った。
【0085】
[00105]本明細書記載の本発明の組成物を用いてワクチン接種した6頭の乳牛は正常の外見を有し、内毒素反応または食物離脱(withdrawal)はなかった。6頭の乳牛はすべて、SSTに対して陽性の血清学的応答を有し、平均力価は1:14であった。1回のワクチン接種のみで6頭の乳牛のミルク産生を得て(図3Aを参照されたい)、23.7%の平均収量増加が示された。
【0086】
[00106]第0日および第14日に、慣用的なrBST注射を用いて、9頭の乳牛を治療し、ミルク産生性の全体の平均増加は2%であった(図3Bを参照されたい)。
[00107]本実施例中のデータによって、乳牛において、本発明のアジュバントと組み合わせて内毒素不含構築物を用いると、有効性の大幅な改善が示される。これらの結果は、rBSTを2回注射された(rejected)乳牛に比較すると、動物の健康および生産性に向けて劇的に改善される。
【0087】
[00108]実施例5:内毒素不含キメラペプチド/アジュバントは、治療した雌ブタの子ブタにおいて、肉産生増加を提供する
[00109]雌ブタのランダムなプールを同定し、各々は、分娩の少なくとも35〜36日前である。獣医によって、各雌ブタを検査し、そして最適な健康状態であると決定する。妊娠した雌ブタを、本発明のワクチンを用いて2回免疫し(実施例3を参照されたい)、1回は、分娩35〜36日前であり、そしてもう1回は分娩8日前である。妊娠した雌ブタの対照群を比較目的のため維持する(ワクチン接種なしまたは無菌生理食塩水でのワクチン接種)。
【0088】
[00110]ワクチン接種群から分娩された子ブタは、より高い生存可能性を有し、そしてより大きい平均サイズのものであろう。より大きい子ブタは、雌ブタの乳首から押しやられる可能性がより低いため、生存可能性パーセントを増進させるのは、子ブタサイズの増加である。治療および対照子ブタの重量を、第21日、第30日および第75日に測定する。本発明のワクチン接種は、75日間の期間に渡って、平均35%、子ブタの1日重量を増加させる。
【0089】
[00111]重要なことに、子ブタ生存可能性および重量は、組換え増殖ホルモンの非存在下で、本発明のワクチンの使用を通じて増加する。これは、組換えホルモン療法に勝る有意な改善である。
【0090】
[00112]実施例6:内毒素不含キメラペプチド/アジュバントは、治療した雄の子ウシにおいて、肉産生増加を提供する
[00113]1〜3ヶ月齢の雄の子ウシのランダムなプールを同定し、そして本発明の組成物を注射する。およそ10ヶ月の期間に渡る体重増加を監視し、そして本発明のワクチン注射以外は、すべての意味で注射群と同じに処置した対照群と比較する。治療経過中、獣医によって、雄の子ウシ各々を検査し、そして最適な健康状態であると決定する。
【0091】
[00114]ワクチン接種群のため、本明細書の注射を第0週、第4週および第8週で行う(3回の総ワクチン接種)。ワクチン接種は、18〜21ゲージcc針を用いて、首に皮下的または筋内的に提供する。ブースター注射もまた提供する(4ブースト、3ブーストまたはブーストなし)。ワクチン接種注射には2mg/2mlのキメラポリペプチドが含まれた。配列番号3に記載するような、本発明の、CAT中の両方のヒスチジン残基がグリシンアミノ酸で置換され、そして最適化されたリンカーを有するキメラポリペプチドを調製した。
【0092】
[00115]ワクチン接種した雄の子ウシおよび対照子ウシを各々重量測定して、最初の重量を得る。本明細書のワクチン接種した動物は、対照動物よりも15〜40%の重量増加を示すと予期される。治療した雄の子ウシの平均重量のこの増加は、治療しないものに勝る有意な改善を示す。
【0093】
[00116]重要なことに、治療した雄の子ウシから採取した肉は、組換え成長ホルモンを含有しない。
[00117]本発明は、いくつかの態様に言及して特に示され、そして記載されてきているが、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に開示する多様な態様に対して、形式および詳細の変化を行ってもよく、そして本明細書に開示する多様な態様は、請求項の範囲に対する限定として作用するとは意図されないことを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソマトスタチンの免疫原性を有するキメラポリペプチドであって:実質的に不活性でありそして一部切除された(truncated)クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼポリペプチドに連結されたソマトスタチン−14のアミノ酸配列を含み、該ソマトスタチン−14が、ターゲット宿主細胞におけるキメラポリペプチドの最適な発現のために最適化されたスペーサーによって該不活性クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼに連結され、そして該不活性クロラムフェニコールが、アラニン、グリシンまたは他の類似のアミノ酸で置換された少なくとも1つのヒスチジン残基193を有する、前記キメラポリペプチド。
【請求項2】
スペーサーが配列番号10または配列番号11のアミノ酸配列を有する、請求項1のキメラポリペプチド。
【請求項3】
実質的に不活性でありそして一部切除されたクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼポリペプチドが、配列番号3、配列番号7または配列番号8のアミノ酸配列を有する、請求項1のキメラポリペプチド。
【請求項4】
配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも99%の配列同一性を持つアミノ酸配列を有する、請求項1のキメラポリペプチド。
【請求項5】
配列番号12のアミノ酸配列を有する、請求項1のキメラポリペプチド。
【請求項6】
免疫応答を誘発するのに有効な量の薬学的に適切なアジュバントとともに、請求項1のキメラポリペプチドを含む、免疫原性組成物。
【請求項7】
エマルジョンプレミックスと混合された水中油エマルジョンを含む、免疫学的アジュバントであって、水中油エマルジョンが、ミネラルオイル、Tween80、Span85および1以上のポリマーを含む、前記免疫学的アジュバント。
【請求項8】
エマルジョンプレミックスが、高分子量ポリマー、界面活性剤、および油水性(oil−aqueous)基剤中の乳化剤を含む、請求項7のアジュバント。
【請求項9】
抗原が、天然、組換えまたは合成ポリペプチド、多糖および糖タンパク質である、あらかじめ選択された抗原をさらに含む、請求項7のアジュバント。
【請求項10】
請求項8のアジュバントとともに、請求項1のキメラポリペプチドを含む、免疫原性組成物。
【請求項11】
乳牛におけるミルク産生を増加させるための方法であって:
乳牛に請求項6の組成物の1以上の用量をワクチン接種し;そして
ワクチン接種の非存在下での同じ乳牛のミルク産生に比較した際、乳牛のミルク産生が、少なくとも10日間、増加することを可能にする
工程を含む、前記方法。
【請求項12】
乳牛に請求項6の組成物の単一用量のみをワクチン接種する、請求項11の方法。
【請求項13】
乳牛におけるミルク産生を増加させるための方法であって:
乳牛に請求項10の組成物の1以上の用量をワクチン接種し;そして
ワクチン接種の非存在下での同じ乳牛のミルク産生に比較した際、乳牛のミルク産生が、少なくとも10日間、増加することを可能にする
工程を含む、前記方法。
【請求項14】
農場家畜における赤身肉産生を増加させるための方法であって;
農場家畜にワクチン接種する
工程を含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−525914(P2011−525914A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516244(P2011−516244)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/068195
【国際公開番号】WO2009/157926
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(510340090)ブラーシュ・バイオテック・エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】