説明

クロロトリフルオロプロペンとペンタンの共沸組成物および共沸様組成物

クロロトリフルオロプロペン、特に1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)と、イソ−ペンタン、n−ペンタン、シクロ−ペンタンおよびこれらの混合物とを含む共沸組成物または共沸様組成物と、その使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロトリフルオロプロペン、特に1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)と、イソ−ペンタン、n−ペンタン、シクロ−ペンタンおよびこれらの混合物の中から選択されるペンタンとから成る共沸組成物および共沸様組成物と、その使用とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フルオロカーボンをベースにした流体は多くの用途、例えば冷媒、エアゾール噴射剤、発泡剤、熱伝導媒体および気体誘電体として工業的に広範に使用されている。これらの流体のいくつかの使用に関連した環境問題、例えば相対的に高い地球温暖化係数が懸念されており、オゾン層破壊係数が低い、さらにはゼロである流体を用いることが望ましい。さらに、沸騰または蒸発で分留されない単一成分の流体または共沸混合物の使用が望ましい。しかし、共沸混合物の形成は容易に予測できないため、環境を破壊せず、分留されない新規な混合物を見出すことは容易ではない。
【0003】
CFCおよびHCFCの環境問題の点から見て安全な代替物とみなされる新規なフルオロカーボンベースの混合物を工業的な代替案が絶えず求められている。
オゾン層を保護するモントリオール議定書ではクロロフルオロカーボン(CFC)の段階的廃止を義務付けており、クロロフルオロカーボンはオゾン層により「優しい」材料、例えばヒドロフルオロカーボン(HFC)、例えばHFC−134aへ切り替えられた。クロロフルオロカーボンは地球温暖化の原因である温室効果ガスであることが証明され、気候変動に関する京都議定書で規制された。その新たな置換材料であるヒドロフルオロプロペンは環境的に受け入れ可能である。すなわち、オゾン層破壊係数(ODP)がゼロで、GWPは許容可能な低さにある。
【0004】
特許文献1(国際特許第WO 2007/002625号公報)には、熱伝導流体として使用可能な3〜6個の炭素原子を有する少なくとも一種のフルオロオレフィンを含む組成物が開示されている。テトラフルオロプロペン、クロロトリフルオロプロペンおよびペンタフルオロプロペンが好ましいとされている。
【0005】
特許文献2(国際特許第WO 2007/002703号公報)には、フォーム(ポリウレタンおよび熱可塑性樹脂)の製造でのフルオロプロペンの発泡剤としての使用が記載されている。
【0006】
特許文献3(米国特許第US 2006/0142173号公報)には、3〜4個の炭素原子を有するオレフィン化合物の溶剤としての使用が記載されている。ジクロロテトラフルオロプロペン、クロロテトラオロプロペンおよびテトラフルオロブテンが好ましいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際特許第WO 2007/002625号公報
【特許文献2】国際特許第WO 2007/002703号公報
【特許文献3】米国特許第US 2006/0142173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、オゾン層破壊係数が低いか、ゼロで、現在のHFCに比べて地球温暖化係数が低いというニーズを満たすというユニークな特徴を与える、冷媒、熱伝導流体、発泡剤、溶剤として使用できる新規な組成物を提供することにある。
本発明者は、CFCおよびHCFCの代替物に対して絶えず存在する上記のニーズを満たす複数の組成物を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、本発明の一実施例として、クロロトリフルオロプロペンと、イソ−ペンタン、n−ペンタン、シクロ−ペンタンの中から選択される少なくとも一種のペンタンとを含む共沸組成物または共沸様組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
クロロトリフルオロプロペンとしては1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)および2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)が好ましい。
【0011】
本発明の好ましい一実施例では、共沸組成物または共沸様組成物は1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)とイソ−ペンタンとから成る。
本発明の好ましい組成物は難燃性であり、さらには不燃性であるとともに、地球温暖化係数(「GWP」)が相対的に低い、という両方の傾向を有する。
本発明者は、この組成物が多くの用途、例えば冷媒、エアゾール、その他の用途でのCFC、HCFCおよびHFC(例えばHCFC−23、HFC−134a、HFC−245fa、HFC−365mfc)の代替物として大きな効果を挙げることができるということを見出した。
【0012】
本発明者はさらに、驚くべきことに、クロロトリフルオロプロペンと、イソ−ペンタン、n−ペンタン、シクロ−ペンタンおよびこれらの混合物との共沸組成物または共沸様組成物を生成できるということを見出した。
従って、本発明はクロロトリフルオロプロペンと、イソ−ペンタン、n−ペンタン、シクロ−ペンタンおよびこれらの混合物とを共沸様組成物を製造するのに有効な量で組み合わせることを含む、共沸様組成物の製造方法を提供する。
【0013】
本発明者はさらに、本発明の共沸様組成物は、冷媒組成物としての使用または冷媒組成物での使用およびフォーム発泡剤での使用に有利な特性を示すということを見出した。
従って、本発明のさらに別の実施例では、本発明はクロロトリフルオロプロペンと、イソ−ペンタン、n−ペンタン、シクロ−ペンタンおよびこれらの混合物との共沸様組成物を含む、熱伝導組成物および/または発泡剤および溶剤を提供する。
【0014】
共沸様組成物
本明細書の「共沸様(azeotrope-lile)」とは、厳密な共沸組成物と共沸混合物のような挙動をする組成物の両方を含めた意味する。流体の熱力学的状態は基本原則からは圧力、温度、液体組成物および蒸気組成物で定義される。共沸混合物は液体組成物と蒸気組成物とが規定の圧力および温度で等しい2種以上の成分の系である。これは実際には共沸混合物の成分が一定の沸点を有し、相変化中に分離しないことを意味する。
【0015】
本発明の共沸様組成物は、新規な共沸様系を生成しない追加の成分または第1蒸留カット中に存在しない追加の成分を含むことができる。第1蒸留カットとは、蒸留カラムが全還流条件下で定常状態で運転した後に取られた第1カットである。成分の追加によって本発明の範囲外となる新規な共沸様系が生成するかどうかを決定する一つの方法は、非共沸混合物をその別個の成分に分離することが予想される条件下で、その成分を有する組成物のサンプルを蒸留することである。追加の成分を含む混合物が非共沸様である場合は、追加の成分が共沸様成分から分留される。混合物が共沸様である場合は、全ての混合物成分を含み、低沸点または単一物質として振る舞う第1蒸留カットの一定量が得られる。
【0016】
このことから、共沸様組成物の別の特徴は、共沸様または低沸点の同じ成分を種々の比率で含む種々の組成物が存在するということになる。これらの全ての組成物は「共沸様」および「低沸点の」という用語でカバーされる。本発明の一つの実施例では、所定共沸混合物の組成は圧力が異なると少なくともわずかに相違し、組成物の沸点もそうであるということは周知である。従って、AとBの共沸混合物は唯一のタイプの関係を示すが、温度および/または圧力に応じて組成は変化する。従って、共沸様組成物として同じ成分を種々の比率で含む種々の共沸様組成物が存在する。本明細書ではこのような組成物は全て共沸様という用語に含まれる。
【0017】
共沸混合物の形成は予測できない、ということは当技術分野ではよく認識されている。本発明者は、全く予期外に、クロロトリフルオロプロペンと、イソ−ペンタン、n−ペンタン、シクロ−ペンタンおよびこれらの混合物とによって共沸組成物および/または略共沸組成物が形成されるということを見出した。
【0018】
本発明の好ましい実施例では、本発明の共沸組成物または共沸様組成物は有効共沸量または共沸様量のクロロトリフルオロプロペンと、イソ−ペンタン、n−ペンタン、シクロ−ペンタンおよびこれらの混合物とを含む、好ましくは基本的にこれらから成る。本明細書の「有効な共沸様量」とは、各成分をその他の成分と組み合わせたときに、本発明の共沸様組成物を形成する各成分の量を意味する。本発明の共沸様組成物は約99〜約71重量%のクロロトリフルオロプロペンと、約1〜約29重量%のイソ−ペンタン、n−ペンタン、シクロ−ペンタンおよびこれらの混合物とを含む、好ましくは基本的にこれらから成るのが好ましい。本発明の共沸様組成物は約99〜約79重量%のクロロトリフルオロプロペンと、約1〜約21重量%のイソ−ペンタン、n−ペンタン、シクロ−ペンタンおよびこれらの混合物を含む、好ましくは基本的にこれらから成るのが有利である。
【0019】
クロロトリフルオロプロペンとしては1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)および2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)が好ましい。
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)は組成物中でシス形またはトランス形またはシス形異性体とトランス形異性体との混合物として存在できる。
【0020】
本発明の好ましい実施例では、本発明の共沸組成物または共沸様組成物は、有効共沸量または共沸様量のクロロトリフルオロプロペンと、イソ−ペンタンとを含む、好ましくは基本的にこれらから成る。
【0021】
本発明の特に好ましい共沸組成物は、93〜99重量%のトランス1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)と、1〜7重量%の100±0.1℃での蒸気圧が10.52バールであるイソ−ペンタンとを含み、好ましくは基本的にこれらから成り、。
【0022】
本発明の共沸組成物は、92〜74重量%のトランス1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、8〜26重量%の16.4±0.2℃での蒸気圧が1バールであるイソ−ペンタンとを含み、好ましくは基本的にこれらから成るのが好ましい。
【0023】
本発明共沸組成物は、98〜87重量%の2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、2〜13重量%の12.2±0.1℃で蒸気圧が1バールであるイソ−ペンタンとを含み、好ましくは基本的にこれらから成るのが好ましい。
本発明共沸組成物は、98〜90重量%のトランス1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、2〜10%の17.6±0.2℃での蒸気圧が1バールであるn−ペンタンとを含み、好ましくは基本的にこれらから成るのが好ましい。
【0024】
本明細書の重量%は特に記載のない限り組成物中のクロロトリフルオロプロペンと、イソ−ペンタン、n−ペンタン、シクロ−ペンタンおよびこれらの混合物の全重量に対して示される。
本発明の共沸様組成物は、有効共沸量または共沸様量のクロロトリフルオロプロペンと、イソ−ペンタン、n−ペンタン、シクロ−ペンタンおよびこれらの混合物とを組み合わせて製造できる。2種以上の成分を組み合わせて組成物を形成する当技術分野で周知の任意の各種方法を本発明方法での使用に適合させて共沸様組成物を製造することができる。例えば、クロロトリフルオロプロペンと、イソ−ペンタン、n−ペンタン、シクロ−ペンタンおよびこれらの混合物とを主動および/または機械を用いてバッチまたは連続反応および/またはプロセスの一部として、または2つ以上の段階を組み合わせて、混合、混練または接触させることができる。当業者は本明細書の開示から必要以上の実験をすることなしに本発明に従って共沸様組成物を容易に調製できる。
【0025】
組成物添加剤
本発明の共沸組成物または共沸様組成物は、種々の任意成分の添加剤、例えば安定剤、金属不動態化剤、腐食防止剤等をさらに含むことができる。
【0026】
本発明の好ましい実施例では、本発明組成物は潤滑剤をさらに含む。本発明組成物では種々の通常の潤滑剤が使用できる。潤滑剤に関する重要な必要条件は、冷蔵システムでの使用時に、このシステムのコンプレッサに十分な潤滑剤を戻し、コンプレッサを潤滑しなければならないことである。従って、冷媒/潤滑剤の特徴と潤滑剤が使用されるシステムの特徴とに応じた所定システムに適した潤滑剤を決定する。適切な潤滑剤の例としては鉱油、アルキルベンゼン、ポリオールエステル、例えばポリアルキレングリコール、PAG油等が挙げられる。鉱油はパラフィン油またはナフテン油を含み、市販されている。市販の鉱油としては、Witco 社のWitco LP 250(登録商標)、Shrieve Chemical社のZerol 300(登録商標)、Witco 社のSunisco 3GSおよびCalumet社のCalumet R015が挙げられる。市販のアルキルベンゼン潤滑剤としてはZerol 150(登録商標)が挙げられる。市販のエステルとしてはEmery 2917(登録商標)およびHatcol 2370(登録商標)として入手可能なネオペンチルグリコールジペラルゴネートが挙げられる。その他の有用なエステルとしては燐酸エステル、二塩基酸エスエルおよびフルオロエステルが挙げられる。好ましい潤滑剤としてはポリアルキレングリコールおよびエステルが挙げられる。より好ましい潤滑剤としてはポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0027】
組成物の使用
本発明組成物は様々な用途で有用性がある。例えば、本発明の一実施例は本発明の共沸様組成物を含む熱伝導流体組成物に関する。
本発明の熱伝導流体組成物は任意の冷蔵システム、例えば空調、冷蔵、ヒートポンプ、特に140℃以下の凝縮温度で運転するヒートポンプ、チラー、HVACシステム、遠心コンプレッサ等で使用できる。本発明の好ましい実施例では、本発明組成物は、もともとHCFC冷媒、例えばHCFC−123と一緒に用いるように設計された冷蔵システムで用いられる。本発明の好ましい組成物はHCFC−123およびその他のHFC冷媒の多くの望ましい特徴、例えば通常のHFC冷媒のGWPと同じくらい低いまたはそれより低いGWPと、この冷媒と同じくらい高いまたはより高い容量を示す傾向がある。本発明の組成物はさらに、相対的に低沸であるという特性を有するので、多くの用途での冷媒としての使用において通常のHFCよりさらに望ましい。
【0028】
その他の好ましい実施例では、本発明組成物はもともとCFC−冷媒と一緒に用いるように設計された冷蔵システムで用いられる。本発明の好ましい冷蔵組成物は、通常CFC−冷媒と一緒に用いられる潤滑剤、例えば鉱油、シリコン油、ポリアルキレングリコール油等を入れた冷蔵システム内で使用でき、あるいは、従来HFC冷媒と一緒に用いられるその他の潤滑剤と一緒に使用できる。本明細書の「冷蔵システム」とは一般に冷却のために冷媒を使用する任意のシステムまたは装置またはこのようなシステムまたは装置の任意の部品または部分を意味する。このような冷蔵システムとしては、例えば空調、電気冷蔵庫、チラー、輸送冷蔵システム、商業用冷蔵システム等が挙げられる。
【0029】
本発明の冷媒組成物は任意の種々の方法を用いて冷蔵システムに導入することができる。例えば、その一つの方法では冷媒容器を冷蔵システムの低圧側に取り付け、冷蔵システムコンプレッサに冷媒をシステムに引き込む。この実施例ではシステムに入る冷媒組成物の量をモニターできるように冷媒容器を配置して、所望量の冷媒組成物がシステムに導入されたときに導入を止める。当業者に周知の種々の充填ツールが市販されている。従って、当業者は上記の開示から必要以上の実験をすることなく、本発明の冷媒組成物を冷蔵システムに充填できる。
【0030】
本発明の他の実施例では、本発明は本発明冷媒を含む冷蔵システムと、本発明組成物を凝縮および/または蒸発させて加熱または冷却する方法とを提供する。本発明の好ましい実施例では、本発明の物品冷却方法は、本発明の共沸様組成物を含む冷媒組成物を凝縮し、その後にこの冷媒組成物を冷却すべき物品の近くで蒸発させることを含む。物品を加熱する好ましい方法は、本発明共沸様組成物を含む冷媒組成物を加熱すべき物品の近くで凝縮し、その後にこの冷媒組成物を蒸発させることを含む。当業者は上記の開示から必要以上の実験をすることなく、本発明の物品を容易に加熱および冷却することができる。
【0031】
本発明の別の実施例では、本発明の共沸様組成物は噴霧性組成物中で噴射剤として単独でまたは周知な噴射剤と組み合わせて使用できる。噴射剤組成物は、本発明の共沸様組成物を含む、好ましくは基本的にこの組成物を含み、さらに好ましくはこの組成物から成る。不活性成分と一緒に噴霧すべき活性成分、溶剤およびその他の材料も噴霧性混合物中に存在できる。噴霧性組成物はエアゾールであるのが好ましい。噴霧するのに適した活性材料としては化粧品原料、例えば脱臭剤、香水、ヘアスプレー、クレンザーおよび研磨剤および医薬品原料、例えば抗ぜんそく薬および口臭予防薬が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本発明のさらに別の実施例は、一種以上の本発明の共沸様組成物を含む発泡剤に関する。その他の実施例では、本発明は、発泡性組成物、好ましくはポリウレタンおよびポリイソシアヌレートフォーム組成物およびフォームの製造方法を提供する。このフォームの実施例では一種以上の本発明の共沸様組成物を発泡剤として発泡性組成物中に含む。この発泡性組成物は好ましくは一種以上の追加の成分を含み、この追加の成分は適切な条件下で反応および発泡でき、フォームまたは気泡構造物となる成分であることは当業者に周知である。当業者に周知な任意の方法を本発明のフォーム実施例に従った用途に使用または適合できる。
【0033】
本発明の別の実施例は、発泡性ポリマー組成物を含む成分を任意の順序で混練して発泡性ポリマー組成物を製造する、発泡熱可塑性生成物の製造方法に関する。一般に、ポリマー樹脂を可塑化し、次いで発泡剤組成物の各成分を初期圧力で混合して発泡性ポリマー組成物を調製する。ポリマー樹脂を可塑化する共通プロセスは熱可塑化であり、この熱可塑化はポリマー樹脂を十分に加熱して、十分に軟化させ、発泡剤組成物を混合することを含む。一般に、熱可塑化は熱可塑性ポリマー樹脂をそのガラス遷移温度(Tg)あるいは結晶性ポリマーの場合は溶融温度(Tm)またはそれに近い温度に加熱することを含む。
【0034】
本発明の共沸様組成物のその他の用途としては溶剤、洗浄剤等としての使用が挙げられる。一例としては蒸気脱脂、精密洗浄、電子機器洗浄、乾燥洗浄、溶剤エッチング洗浄、潤滑剤および剥離剤塗布用の担体溶剤およびその他の溶剤または表面処理が挙げられる。当業者は必要以上の実験をすることなく、本発明組成物をこのような用途での使用に容易に適合できる。
【実施例】
【0035】
実施例1
サファイア管を備えた真空セルを油浴を用いて100℃に加熱する。温度平衡に達したら、セルに既知量のイソ−ペンタンを充填し、平衡に達した圧力を記録する。既知量のトランスHCFO−1233zdをセルに導入し、内容物を混合して平衡を加速する。平衡点で気相および液相からごく少量のサンプルを採取し、熱検出器を備えたガスクロマトグラフィで分析する。
イソペンタンおよびトランス−HCFO−1233zdの各種組成物に関して集めた平衡データを各組成物の沸点での圧力に変換した([表1])。
【0036】
【表1】

【0037】
実施例2
沸点は下記式を用いて、大気圧を1.013バールと仮定して以下の式を用いて計算できる。
Ln P=a+b/T
(ここで、Pは圧力で、Tは温度で、aおよびbは定数である)
圧力容器を真空ポンプで真空排気して全ての気体を除去する。成分AおよびBをシリンジポンプによって下記の方法を用いて容器に導入した:初めにAを導入し、次に、50重量%のAと50重量%のBとの組成物が得られるまで、計算された量の成分Bを加えた。次いで、圧力容器を再び真空排気した。次いで、初めにBを導入し、次に、組成物の残りの範囲を埋めるために、計算された量のAを加えた。各組成物ごとに、圧力容器をオービタルシェーカー上に配置し、テスト温度をそれぞれ、15℃、25℃、35℃および45℃に設定した。圧力変化を30分おきに各温度点で3回読み取り、液−気相平衡に達したことを確認する。記録した圧力変化を上記の式を用いて計算し、測定した沸点データを得る。結果は[表2]〜[表5]にまとめてある。
【0038】
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【0039】
実施例3
配合物の一般的な注入法を用いてポリウレタンフォームを調製した。得られたフォームのk−ファクタ測定(ASTM C518に従う)を10℃で行った。フォーム表皮を帯鋸で取り除いた後、24時間以内に初期k−ファクタを採る。室温で8カ月エージングした後に再びK−ファクタを測定した。k−ファクタが低ければ低いほど、断熱値は良い。結果は[表6]にまとめてある。
A:95重量%のトランス−1233zdと、5重量%のイソペンタン
B:90重量%のトランス−1233zdと、10重量%のイソペンタン
C:85重量%のトランス−1233zdと、15重量%のイソペンタン
D:95重量%のトランス−1233zdと、5重量%のn−ペンタン
E:90重量%のトランス−1233zdと、10重量%のn−ペンタン
F:85重量%のトランス−1233zdと、15重量%のn−ペンタン
G:95重量%のトランス−1233zdと、5重量%のシクロペンタン
H:90重量%のトランス−1233zdと、10重量%のシクロペンタン
I:85重量%のトランス−1233zdと、15重量%のシクロペンタン
【0040】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のクロロトリフルオロプロペンと、イソ−ペンタン、n−ペンタン、シクロ−ペンタンの中から選択される少なくとも一種のペンタンとを含む共沸様組成物。
【請求項2】
約99〜約71重量%のクロロトリフルオロプロペンと、約1〜約29重量%のイソ−ペンタン、n−ペンタン、シクロ−ペンタンおよびこれらの混合物を含む、好ましくは基本的にこれらから成る、請求項1に記載の共沸様組成物。
【請求項3】
クロロトリフルオロプロペンが1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、好ましくはトランス1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンである請求項2に記載の共沸様組成物。
【請求項4】
ペンタンがイソ−ペンタンである請求項1〜3に記載の共沸様組成物。
【請求項5】
ペンタンがn−ペンタンである請求項1〜3に記載の共沸様組成物。
【請求項6】
93〜99重量%のトランス1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、1〜7重量%の100±0.1℃での蒸気圧が10.52バールであるイソ−ペンタンとを含む、好ましくは基本的にこれらから成る、請求項1〜4に記載の共沸組成物。
【請求項7】
92〜74重量%のトランス1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、8〜26重量%の16.4±0.2℃での蒸気圧が1バールであるイソ−ペンタンとを含む、好ましくは基本的にこれらから成る、請求項1〜4に記載の共沸組成物。
【請求項8】
98〜87重量%の2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、2〜13重量%の12.2±0.1℃での蒸気圧が1バールのイソ−ペンタンとを含む、好ましくは基本的にこれらから成る、請求項1〜4に記載の共沸組成物。
【請求項9】
98〜90重量%のトランス1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、2〜10重量%の17.6±0.2℃での蒸気圧が1バールであるn−ペンタンとを含む、好ましくは基本的にこれらから成る、請求項1〜3および5に記載の共沸組成物。
【請求項10】
請求項1〜9に記載の熱伝導流体組成物。
【請求項11】
潤滑剤をさらに含む請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
潤滑剤を鉱油、アルキルベンゼン、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコールおよびこれらの2種以上の組合せから成る群の中から選択する請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項10および11に記載の熱伝導流体組成物を凝縮し、その後にこの冷媒組成物を冷却すべき物品の近くで蒸発させることを含む物品の冷却方法。
【請求項14】
請求項10および11に記載の熱伝導流体組成物を、加熱すべき物品の近くで凝縮し、その後にこの冷媒組成物を蒸発させることを含む物品の加熱方法。
【請求項15】
被噴霧材料と、請求項1〜9に記載の共沸様組成物を含む噴射剤とを含む噴霧性組成物。
【請求項16】
噴霧性組成物がエアゾールである請求項15に記載の噴霧性組成物。
【請求項17】
請求項1〜9に記載の共沸様組成物を含む発泡剤。
【請求項18】
請求項17に記載の発泡剤とポリオールとを含むフォームプレミクス。
【請求項19】
請求項17に記載の発泡剤と熱可塑性樹脂とを含む発泡性組成物。
【請求項20】
請求項1〜19に記載の共沸様組成物を含む溶剤。

【公表番号】特表2012−519736(P2012−519736A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549545(P2011−549545)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051656
【国際公開番号】WO2010/092085
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】