説明

クロロフルオロベンゼン化合物、光学的等方性の液晶媒体および光素子

【課題】熱、光に対して安定で、大きな誘電率異方性、大きな屈折率異方性を有する液晶化合物、広い液晶相温度範囲、大きな屈折率異方性、大きな誘電率異方性を有し、光学的に等方性の液晶相を有する液晶媒体を提供する。
【解決手段】4個あるいは5個ベンゼン環を有し、これらのベンゼン環の1つがクロロフルオロベンゼンである液晶化合物およびこれとキラル剤を含有し、光学的に等方性の液晶相を発現することを特徴とする液晶媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光素子用の材料として有用な液晶化合物、液晶媒体および光素子に関する。詳しくは、大きな誘電率異方性、屈折率異方性、良好な相溶性を有する液晶媒化合物、広い液晶相温度範囲、大きな誘電率異方性、屈折率異方性を持つ液晶媒体に関する。加えて、この液晶媒体を用いた光素子に関する。詳しくは、幅広い温度範囲で使用可能であり、低電圧駆動が可能であり、高速な電気光学応答を得ることができる光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶組成物を用いた液晶表示素子は、時計、電卓、ワ−プロなどのディスプレイに広く利用されている。これらの液晶表示素子は液晶化合物の屈折率異方性、誘電率異方性などを利用したものである。液晶表示素子における動作モードとしては、主として1枚以上の偏光板を利用して表示するPC(phase change)、TN(twisted nematic)、STN(super twisted nematic)、BTN(Bistable twisted nematic)、ECB(electrically controlled birefringence)、OCB(opticallycompensated bend)、IPS(in-plane switching)、VA(vertical alignment)などが知られている。さらに近年は光学的に等方性の液晶相において電場を印加し、電気複屈折を発現させるモードも盛んに研究されている(特許文献1〜9、非特許文献1〜3)。
【0003】
さらに光学的に等方性の液晶相の一つであるブルー相における電気複屈折を利用した波長可変フィルター、波面制御素子、液晶レンズ、収差補正素子、開口制御素子、光ヘッド装置などが提案されている(特許文献10〜12)。
素子の駆動方式に基づいた分類は、PM(passive matrix)とAM(active matrix)である。PM(passive matrix)はスタティック(static)とマルチプレックス(multiplex)などに分類され、AMはTFT(thin film transistor)、MIM(metal insulator metal)などに分類される。
【0004】
これらの液晶表示素子は、適切な物性を有する液晶組成物を含有する。液晶表示素子の特性を向上させるには、この液晶組成物が適切な物性を有するのが好ましい。液晶組成物の成分である液晶化合物に必要な一般的物性は、次のとおりである。
(1)化学的に安定であること、および物理的に安定であること、
(2)高い透明点(液晶相−等方相の相転移温度)を有すること、
(3)液晶相(ネマチック相、コレステリック相、スメクチック相、ブルー相などの光学的に等方性の液晶相等)の下限温度が低いこと、
(4)他の液晶化合物との相溶性に優れること、
(5)適切な大きさの誘電率異方性を有すること、
(6)適切な大きさの屈折率異方性を有すること、
である。
特に、光学的に等方性の液晶相においては、誘電率異方性と屈折率異方性が大きな液晶化合物が駆動電圧低減の観点から好ましい。
【0005】
(1)のように化学的、物理的に安定な液晶化合物を含む液晶組成物を液晶表示素子に用いると、電圧保持率を高くすることができる。
また、(2)および(3)のように、高い透明点、あるいは液晶相の低い下限温度を有する液晶化合物を含む液晶組成物ではネマチック相や光学的に等方性の液晶相の温度範囲を広げることが可能となり、幅広い温度範囲で表示素子として使用することができる。液晶化合物は、単一の化合物では発揮することが困難な特性を発現させるために、他の多くの液晶化合物と混合して調製した液晶組成物として用いることが一般的である。したがって、液晶表示素子に用いられる液晶化合物は、(4)のように、他の液晶化合物等との相溶性が良好であることが好ましい。近年は特に表示性能、例えばコントラスト、表示容量、応答時間特性等のより高い液晶表示素子が要求されている。さらに使用される液晶材料には駆動電圧の低い液晶組成物が要求されている。また光学的に等方性の液晶相で駆動させる光素子を低電圧で駆動させるためには、誘電率異方性および屈折率異方性が大きい液晶化合物を用いることが好ましい。
【0006】
本件化合物に類似のクロロベンゼン誘導体が大きな誘電率異方性および大きな屈折率異方性を有することについての報告があるが(特許文献13)、本件発明のクロロベンゼン部位を有する化合物を想起させる記述は無く、本件化合物の優れた特性を想起させる記述もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−327966号公報
【特許文献2】国際公開2005/90520号パンフレット
【特許文献3】特開2005−336477号公報
【特許文献4】特開2006−89622号公報
【特許文献5】特開2006−299084号公報
【特許文献6】特表2006−506477号公報
【特許文献7】特表2006−506515号公報
【特許文献8】国際公開2006/063662号パンフレット
【特許文献9】特開2006−225655号公報
【特許文献10】特開2005−157109号公報
【特許文献11】国際公開2005/80529号パンフレット
【特許文献12】特開2006−127707号公報
【特許文献13】国際公開1998/023561号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Nature Materials, 1, 64, (2002)
【非特許文献2】Adv. Mater., 17, 96, (2005)
【非特許文献3】Journal of the SID, 14, 551, (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の第一の目的は、熱、光などに対する安定性、大きな屈折率異方性および大きな誘電率異方性を有する液晶化合物を提供することである。第二の目的は、熱、光などに対する安定性、広い液晶相温度範囲、大きな屈折率異方性、大きな誘電率異方性を有し、光学的に等方性の液晶相を有する液晶媒体を提供することである。第三の目的は、この液晶媒体を含有し、広い温度範囲で使用可能であり、短い応答時間、大きなコントラスト、および低い駆動電圧を有する各種光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下のような液晶化合物を提供する。さらに以下のような液晶媒体(液晶組成物または高分子/液晶複合体)および液晶媒体を含有する光素子等を提供する。
【0011】
[1]式(1)で表される化合物。



式(1)において、Rは水素または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中およびアルキル中の任意の−CH−が、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられた基中の任意の水素はハロゲンまたは炭素数1〜3のアルキルで置き換えられてもよく;Z、Z、Z、Z、およびZは独立して、単結合、または−CFO−であるが、すべて単結合であることはなく;L、L、L、LおよびLは独立して、水素またはフッ素であり;Xは水素、ハロゲン、−C≡N、−N=C=S、−C≡C−C≡N、−SF、または炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH−は、−O−、−S−、−CH=CH−、または−C≡C−により置き換えられてもよく、そして任意の水素はハロゲンにより置き換えられてもよく;mは0、1または2であり、n、およびoは独立して、0または1であり、1≦m+n+o≦2であり;mが2である場合は、LおよびZはそれぞれ異なっていてもよい。
【0012】
[2]式(1)において、Rは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH−は、−O−、−COO−、または−CH=CH−で置き換えられてもよく;Xはハロゲン、−C≡N、−N=C=S、または2個以上の水素原子がフッ素で置き換えられた炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH−は、−O−、−S−、−CH=CH−、または−C≡C−により置き換えられてもよい;である項[1]に記載の液晶化合物。
【0013】
[3]式(1)において、Rが炭素数1〜20のアルキル、炭素数2〜21のアルケニルまたは炭素数1〜19のアルコキシであり;Xがフッ素、塩素、−CF、または−OCFである項[1]または[2]に記載の液晶化合物。
【0014】
[4]式(1)において、Rが炭素数1〜20のアルキルであり;Xがフッ素、塩素または−CFである項[1]〜[3]のいずれかに記載の液晶化合物。
【0015】
[5]m+n+o=1である項[1]〜[4]のいずれか1項に記載の液晶化合物。
【0016】
[6]m+n+o=2である項[1]〜[4]のいずれか1項に記載の液晶化合物。
【0017】
[7]式(1−1B)、(1−1C)、(1−1E)、(1−1F)、および(1−2A)〜(1−2C)のいずれかで表される、項[1]〜[4]に記載の液晶化合物。




(これらの式において、Rは式(CHN−1)〜(CHN−8)で表される構造であり、ここでR1aは水素または炭素数1〜10のアルキルであり;Xはフッ素、塩素、−CF、−OCFである。)


【0018】
[8]式(1−1B)、(1−1E)、および(1−2A)〜(1−2C)において、Rが式(CHN−1)〜(CHN−6)で表される構造であり、式(CHN−1)〜(CHN−6)中のR1aは水素または炭素数1〜10のアルキルであり、Xがフッ素、塩素、−CF、−OCFである、項[7]に記載の液晶化合物。
【0019】
[9]式(1−1B)、(1−1E)、および(1−2A)〜(1−2C)において、Rが式(CHN−1)〜(CHN−6)で表される構造であり、式(CHN−1)〜(CHN−6)中のR1aは水素または炭素数1〜10のアルキルであり、Xがフッ素、塩素、−CF、または−OCFであり、LおよびLが共にフッ素である、項[7]に記載の液晶化合物。
【0020】
[10]式(1−1B−a)または(1−2A−a)で表される液晶化合物。



(これらの式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数2〜20のアルケニル基であり、Xはフッ素または−CFである)
【0021】
[11]項[1]〜[10]のいずれか1項に記載の化合物およびキラル剤を含有し、光学的に等方性の液晶相を発現することを特徴とする液晶組成物。
【0022】
[12]式(2)、(3)および(4)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[11]に記載の液晶組成物。



これらの式において、Rは炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;Xはフッ素、塩素、−OCF3、−OCHF2、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF2CHF2、または−OCF2CHFCF3であり;環B、環B、および環Bは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、または任意の水素がフッ素または塩素で置き換えられたナフタレン−2,6−ジイルであり;ZおよびZは独立して、−(CH22−、−(CH24−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素である。
【0023】
[13]式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[11]に記載の液晶組成物。



これらの式において、Rは炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;Xは−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;環C、環Cおよび環Cは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、任意の水素がフッ素または塩素で置き換えられたナフタレン−2,6−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;Zは−(CH22−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素であり;rは1または2であり、sは0または1であり、r+s=0、1または2である。
【0024】
[14]式(6)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[11]に記載の液晶組成物。



これらの式において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;環D、環D、および環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;Z10は、−C≡C−、−COO−、−(CH22−、−CH=CH−、または単結合である。
【0025】
[15]項[13]に記載の式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[12]に記載の液晶組成物。
【0026】
[16]式(6)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[12]に記載の液晶組成物。
【0027】
[17]式(6)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[13]に記載の液晶組成物。
【0028】
[18]式(7)、(8)、(9)および(10)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[11]に記載の液晶組成物。



これらの式において、Rは炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニルまたは炭素数2〜10のアルキニルであり、アルキル、アルケニルおよびアルキニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;Xはフッ素、塩素、−SF、−OCF3、−OCHF2、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF2CHF2、または−OCF2CHFCF3であり;環E、環E、環Eおよび環Eは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、任意の水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4−フェニレン、または任意の水素がフッ素または塩素で置き換えられたナフタレン−2,6−ジイルであり;Z11、Z12およびZ13は独立して、−(CH22−、−(CH24−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、または単結合である、ただし、環E、環E、環Eおよび環Eのいずれかが3−クロロ−5−フルオロ−1,4−フェニレンであるときには、Z11、Z12およびZ13は−CF2O−であることはなく;L10およびL11は独立して、水素またはフッ素である。
【0029】
[19]式(11)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[11]に記載の液晶組成物。



これらの式において、Rは炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニルまたは炭素数2〜10のアルキニルであり、アルキル、アルケニルおよびアルキニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;Xは−C≡N、−N=C=S、または−C≡C−C≡Nであり;環F、環Fおよび環Fは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、任意の水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、任意の水素がフッ素または塩素で置き換えられたナフタレン−2,6−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;Z14は−(CH22−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;L12およびL13は独立して、水素またはフッ素であり;aaは0、1または2であり、abは0または1であり、aa+abは0、1または2である。
【0030】
[20]少なくとも1つの酸化防止剤および/または紫外線吸収剤を含む項[11]〜[19]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0031】
[21]光学的に等方性の液晶相が二色以上の回折光を示さない、項[11]〜[20]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0032】
[22]光学的に等方性の液晶相が二色以上の回折光を示す、項[11]〜[20]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0033】
[23]液晶組成物が、キラルネマチック相と非液晶等方相とが共存する上限温度と下限温度との差が3〜150℃である組成物にキラル剤を添加して得られるものである、項[21]または[22]に記載の液晶組成物。
【0034】
[24]液晶組成物が、キラルネマチック相と非液晶等方相とが共存する上限温度と下限温度との差が5〜150℃である組成物にキラル剤を添加して得られるものである、項[21]または[22]に記載の液晶組成物。
【0035】
[25]液晶組成物が、ネマチック相と非液晶等方相とが共存する上限温度と下限温度との差が3〜150℃である組成物にキラル剤を添加して得られるものである、項[21]または[22]に記載の液晶組成物。
【0036】
[26]液晶組成物の全重量に対して、キラル剤の割合が1〜40重量%である、項[11]〜[25]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0037】
[27]液晶組成物の全重量に対して、キラル剤の割合が5〜15重量%である、項[11]〜[25]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0038】
[28]70〜−20℃のいずれかの温度においてカイラルネマチック相を示し、この温度範囲の少なくとも一部において螺旋ピッチが700nm以下である、項[26]または[27]に記載の液晶組成物。
【0039】
[29]キラル剤が、式(K1)〜(K5)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を含む、項[26]〜[28]のいずれか1項に記載の液晶組成物。



(式(K1)〜(K5)中、Rは独立に、水素、ハロゲン、−C≡N、−N=C=O、−N=C=Sまたは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;Aは独立に、芳香族性あるいは非芳香族性の3ないし8員環、または、炭素数9以上の縮合環であり、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたはハロアルキルで置き換えられてもよく、環の−CH−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;Bは独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、炭素数1〜3のハロアルキル、芳香族性または非芳香族性の3から8員環、または炭素数9以上の縮合環であり、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたはハロアルキルで置き換えられてもよく、−CH−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;Zは独立に、単結合、炭素数1〜8のアルキレンであるが、任意の−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
Xは単結合、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、または−CHCH−であり;
mKは1〜4の整数である。)
【0040】
[30]キラル剤が、式(K2−1)〜(K2−8)、(K4−1)〜(K4−6)および(K5−1)〜(K5−3)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を含む、項[26]〜[28]のいずれか1項に記載の液晶組成物。









(Rは独立に、炭素数3〜10のアルキルであり、このアルキル中の環に隣接する−CH−は−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH−は、−CH=CH−で置き換えられてもよい。)
【0041】
[31]項[11]〜[30]のいずれかに記載の液晶組成物と、重合性モノマーとを含む混合物。
【0042】
[32]重合性モノマーが光重合性モノマーまたは熱重合性モノマーである、項[31]に記載の混合物。
【0043】
[33]項[31]または[32]に記載の混合物を重合して得られる、光学的に等方性の液晶相で駆動される素子に用いられる高分子/液晶複合材料。
【0044】
[34]項[31]または[32]に記載の混合物を非液晶等方相または光学的に等方性の液晶相で重合させて得られる、項[33]に記載の高分子/液晶複合材料。
【0045】
[35]高分子/液晶複合材料に含まれる高分子がメソゲン部位を有する、項[33]または[34]に記載の高分子/液晶複合材料。
【0046】
[36]高分子/液晶複合材料に含まれる高分子が架橋構造を有する、項[33]〜[35]のいずれかに記載の高分子/液晶複合材料。
【0047】
[37]液晶組成物の割合が60〜99重量%であり、高分子の割合が1〜40重量%である、項[33]〜[36]のいずれか1項に記載の高分子/液晶複合材料。
【0048】
[38]一方または両方の面に電極が配置され、基板間に配置された液晶媒体、および電極を介して液晶媒体に電界を印加する電界印加手段を備えた光素子であって、液晶媒体が、項[26]〜[30]のいずれか1項に記載の液晶組成物または項[33]〜[37]のいずれか1項に記載の高分子/液晶複合材料である光素子。
【0049】
[39]一方または両方の面に電極が配置され、少なくとも一方が透明な一組の基板、基板間に配置された液晶媒体、および基板の外側に配置された偏光板を有し、電極を介して液晶媒体に電界を印加する電界印加手段を備えた光素子であって、液晶媒体が、項[26]〜[30]のいずれか1項に記載の液晶組成物または項[33]〜[37]のいずれか1項に記載の高分子/液晶複合材料である光素子。
【0050】
[40]一組の基板の少なくとも一方の基板上において、少なくとも2方向に電界を印加できるように電極が構成されている項[39]に記載の光素子。
【0051】
[41]互いに平行に配置された一組の基板の一方または両方に、少なくとも2方向に電界を印加できるように電極が構成されている項[39]に記載の光素子。
【0052】
[42]電極がマトリックス状に配置されて、画素電極を構成し、各画素がアクティブ素子を備え、このアクティブ素子が薄膜トランジスター(TFT)である項[38]〜[41]のいずれか1項に記載の光素子。
【0053】
本発明において、液晶媒体とは、液晶組成物および高分子/液晶複合体の総称である。また、光素子とは、電気光学効果を利用して、光変調や光スイッチングなどの機能を奏する各種の素子を指し、たとえば、表示素子(液晶表示素子)、光通信システム、光情報処理や種々のセンサーシステムに用いられる光変調素子が挙げられる。光学的に等方性の液晶媒体への電圧印加による屈折率の変化を利用した光変調については、カー効果が知られている。カー効果とは電気複屈折値Δn(E)が電場Eの二乗に比例する現象であり、カー効果を示す材料ではΔn(E)=KλEが成立する(K:カー係数(カー定数)、λ:波長))。ここで、電気複屈折値とは、等方性媒体に電界を印加した時に誘起される屈折率異方性値である。
【0054】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。液晶化合物は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。キラル剤は、光学活性化合物であり、液晶組成物に所望のねじれた分子配列を与える為に添加される。液晶表示素子は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。液晶化合物、液晶組成物、液晶表示素子をそれぞれ化合物、組成物、素子と略すことがある。また、例えば液晶相の上限温度は液晶相−等方相の相転移温度であり、そして単に透明点または上限温度と略すことがある。液晶相の下限温度を単に下限温度と略すことがある。式(1)で表わされる化合物を化合物(1)と略すことがある。この略記は式(2)などで表される化合物にも適用することがある。式(1)から式(19)において、六角形で囲んだB、D、Eなどの記号はそれぞれ環B、環D、環Eなどに対応する。百分率で表した化合物の量は組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。環A、Y、Bなど複数の同じ記号を同一の式または異なった式に記載したが、これらはそれぞれが同一であってもよいし、または異なってもよい。
【0055】
「任意の」は、位置だけでなく個数についても任意であることを示すが、個数が0である場合を含まない。任意のAがB、CまたはDで置き換えられてもよいという表現は、任意のAがBで置き換えられる場合、任意のAがCで置き換えられる場合および任意のAがDで置き換えられる場合に加えて、複数のAがB〜Dの少なくとも2つで置き換えられる場合をも含むことを意味する。例えば、任意の−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキルには、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルなどが含まれる。なお、本発明においては、連続する2つの−CH−が−O−で置き換えられて、−O−O−のようになることは好ましくない。そして、アルキルにおける末端の−CH−が−O−で置き換えられることも好ましくない。以下に本発明をさらに説明する。式(1)で表わされる化合物における末端基、環および結合基等に関して好ましい例も述べる。
【発明の効果】
【0056】
本発明の液晶化合物は、熱、光などに対する安定性、大きな誘電率異方性、大きな屈折率異方性を有し、本発明の液晶組成物は熱、光などに対する安定性、光学的に等方性の液晶相の高い上限温度、低い下限温度を示し、光学的に等方性の液晶相で駆動させる素子において低い駆動電圧を有する。本発明の高分子/液晶複合材料で光学的に等方性の液晶相を有するものは、光学的に等方性の液晶相の高い上限温度、低い下限温度を示し、光学的に等方性の液晶相で駆動させる素子において低い駆動電圧を有する。
本発明の光学的に等方性の液晶相で駆動される光素子は、使用できる広い温度範囲、短い応答時間、大きなコントラスト比、および低い駆動電圧を有する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】使用例1で用いた櫛型電極基板を示す。
【図2】使用例2で用いた光学系を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
1−1 化合物(1)
本発明の液晶化合物は、前記式(1)で表される化合物である。本発明の第1の態様は、式(1)で表される液晶化合物である。まず、式(1)で表される化合物について説明する。



式(1)において、Rは水素または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中およびアルキル中の任意の−CH−が、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられた基中の任意の水素はハロゲンまたは炭素数1〜3のアルキルで置き換えられてもよい。
例えば、CH(CH−において任意の−CH−を−O−、−S−、または−CH=CH−で置き換えた基の例は、CH(CHO−、CH−O−(CH−、CH−O−CH−O−、CH(CHS−、CH−S−(CH−、CH−S−CH−S−、CH=CH−(CH−、CH−CH=CH−(CH−、CH−CH=CH−CHO−、CHCHC≡C−などである。例えば、CH(CH−または、CH(CH−において任意の−CH−を−O−、−C≡C−または−CH=CH−で置き換えた基中の任意の水素がハロゲンに置き換えられた基の例として、ClCH(CH−、CF=CH−(CH−、CHF(CHO−、CHFCHC≡C−が挙げられる。
【0059】
このようなRにおいて分岐よりも直鎖の方が好ましい。Rが分岐の基であっても光学活性であるときは好ましい。アルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。−CH=CHCH、−CH=CHC、−CH=CHC、−CH=CHC、−CCH=CHCH、および−CCH=CHCのような奇数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはトランス配置が好ましい。−CHCH=CHCH、−CHCH=CHC、および−CHCH=CHCのような偶数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはシス配置が好ましい。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、高い上限温度または液晶相の広い温度範囲を有する。Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 109およびMol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 327に詳細な説明がある。
【0060】
アルキルとしては、直鎖でも分岐でもよく、アルキルの具体的な例は、−CH、−C、−C、−C、−C11、−C13、−C15、−C17、−C19、−C1021、−C1123、−C1225、−C1327、−C1429、および−C1531である。
【0061】
アルコキシとしては、直鎖でも分岐でもよく、アルコキシの具体的な例は、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC11、−OC13および−OC15、−OC17、−OC19、−OC1021、−OC1123、−OC1225、−OC1327、および−OC1429である。
【0062】
アルコキシアルキルとしては、直鎖でも分枝でもよく、アルコキシアルキルの具体的な例は、−CHOCH、−CHOC、−CHOC、−(CH−OCH、−(CH−OC、−(CH−OC、−(CH−OCH、−(CH−OCH、および−(CH−OCHである。
【0063】
アルケニルとしては、直鎖でも分枝でもよく、アルケニルの具体的な例は、−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHCH、−(CH−CH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHC、−(CH−CH=CHCH、および−(CH−CH=CHである。
【0064】
アルケニルオキシとしては、直鎖でも分枝でもよく、アルケニルオキシの具体的な例は、−OCHCH=CH、−OCHCH=CHCH、および−OCHCH=CHCである。
【0065】
アルキニルとしては、直鎖でも分岐でもよく、アルキニルの具体的例は、−C≡CH、−C≡CCH、−CHC≡CH、−C≡CC、−CHC≡CCH、−(CH−C≡CH、−C≡CC、−CHC≡CC、−(CH−C≡CCH、および−C≡C(CHである。
【0066】
は式(CHN−1)〜(CHN−17)で表される構造が好ましい。ここでR1aは水素または炭素数1〜10のアルキルである。より好ましいRは式(CHN−1)〜(CHN−8)で表される構造である。さらに好ましくは式(CHN−1)〜(CHN−6)であり、特に好ましくは(CHN−1)である。


【0067】
式(1)においてZ、Z、Z、Z、およびZは独立して、単結合、または−CFO−であるが、すべて単結合であることはない。

【0068】
式(1)においてL、L、L、LおよびLは独立して、水素またはフッ素である。
【0069】
式(1)においてXは水素、ハロゲン、−C≡N、−N=C=S、−C≡C−C≡N、−SF、または炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH−は、−O−、−S−、−CH=CH−、または−C≡C−により置き換えられてもよく、そして任意の水素はハロゲンにより置き換えられてもよい。
【0070】
任意の水素がハロゲンにより置き換えられたアルキルの具体的な例は、−CHF、−CHF、−CF、−(CH−F、−CFCHF、−CFCHF、−CHCF、−CFCF、−(CH−F、−(CF−F、−CFCHFCF、−CHFCFCF、−(CH−F、−(CF−F、−(CH−F、および−(CF−Fである。
【0071】
任意の水素がハロゲンにより置き換えられたアルコキシの具体的な例は、−OCHF、−OCHF、−OCF、−O−(CH−F、−OCFCHF、−OCFCHF、−OCHCF、−O−(CH−F、−O−(CF−F、−OCFCHFCF、−OCHFCFCF、−O(CH−F、−O−(CF−F、−O−(CH−F、および−O−(CF−Fである。
【0072】
任意の水素がハロゲンにより置き換えられたアルケニルの具体的な例は、−CH=CHF、−CH=CF、−CF=CHF、−CH=CHCHF、−CH=CHCF、−(CH−CH=CF、−CHCH=CHCF、および−CH=CHCFCFである。
【0073】
の具体的な例は、水素、フッ素、塩素、−C≡N、−N=C=S、−SF、−CH、−C、−C、−C、−C11、−C13、−C15、−C17、−C19、−C1021、−CHF、−CHF、−CF、−(CH−F、−CFCHF、−CFCHF、−CHCF、−CFCF、−(CH−F、−(CF−F、−CFCHFCF、−CHFCFCF、−(CH−F、−(CF−F、−(CH−F、−(CF−F、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC11、−OCHF、−OCHF、−OCF、−O−(CH−F、−OCFCHF、−OCFCHF、−OCHCF、−O−(CH−F、−O−(CF−F、−OCFCHFCF、−OCHFCFCF、−O(CH−F、−O−(CF−F、−O−(CH−F、−O−(CF−F、−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHCH、−(CH−CH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHC、−(CH−CH=CHCH、−(CH−CH=CH、−CH=CHF、−CH=CF、−CF=CHF、−CH=CHCHF、−CH=CHCF、−(CH−CH=CF、−CHCH=CHCF、および−CH=CHCFCFである。
【0074】
好ましいXの例は、フッ素、塩素、−C≡N、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHFおよび−OCHFである。最も好ましいXの例は、フッ素、塩素、および−CFである。
【0075】
式(1)においてmは0、1または2であり、n、およびoは独立して、0または1であり、1≦m+n+o≦2である。
【0076】
1−2 化合物(1)の性質
本発明に用いられる化合物(1)をさらに詳細に説明する。化合物(1)はクロロベンゼン環を有する液晶化合物である。この化合物は、素子が通常使用される条件下において物理的および化学的に極めて安定であり、そして他の液晶化合物との相溶性がよい。さらにスメクチック相を発現しにくい。この化合物を含有する組成物は素子が通常使用される条件下で安定である。したがって組成物において光学的に等方性の液晶相の温度範囲を広げることが可能となり、幅広い温度範囲で表示素子として使用することができる。さらにこの化合物は誘電率異方性と屈折率異方性が大きい為、光学的に等方性の液晶相で駆動される組成物の駆動電圧を下げるための成分として有用である。
【0077】
化合物(1)のm、n、およびoの組み合わせと、左末端基R、L〜L、一番右側のベンゼン環上の基およびその置換位置(L、LおよびX)を適切に選択することによって、透明点、屈折率異方性、誘電率異方性などの物性を任意に調整することが可能である。m、n、およびoの組み合わせ、左末端基R、右末端基X、結合基Z〜Z、L〜Lの種類が、化合物(1)の物性に与える効果を以下に説明する。
【0078】
一般にm+n+oが2の化合物は透明点が高く、m+n+oが1の化合物は融点が低い。
【0079】
が直鎖であるときは液晶相の温度範囲が広くそして粘度が小さい。Rが分岐であるときは他の液晶化合物との相溶性がよい。Rが光学活性基である化合物は、キラルドーパントとして有用である。Rが光学活性基でない化合物は組成物の成分として有用である。Rがアルケニルであるとき、好ましい立体配置は二重結合の位置に依存する。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、高い上限温度または液晶相の広い温度範囲を有する。
【0080】
結合基Z〜Zは単結合または−CFO−であるため、化学的に比較的安定であって、比較的劣化をおこしにくい。さらに結合基が単結合であるときは、粘度が小さい。また、結合基が−CFO−であるときは、誘電率異方性が大きい。
【0081】
右末端基Xがフッ素、塩素、−C≡N、−N=C=S、−SF、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHFまたは−OCHFであるときは誘電率異方性が大きい。Xが−C≡N、−N=C=Sまたはアルケニルであるときは屈折率異方性が大きい。Xがフッ素、−OCF、またはアルキルであるときは、化学的に安定である。
【0082】
およびLが共にフッ素であり、Xがフッ素、塩素、−C≡N、−N=C=S、−SF、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHFまたは−OCHFであるときは、誘電率異方性が大きい。Lがフッ素でありXが−CF、−OCFであるとき、LおよびLが共にフッ素でありXが−CF、−OCFであるとき、またはL、LおよびXが全てフッ素であるときは誘電率異方性値が大きく、液晶相の温度範囲が広いうえ、化学的に安定であり劣化を起こしにくい。
〜Lのフッ素の数は好ましくは多いほど誘電率異方性が大きい。
【0083】
以上のように、末端基、結合基などの種類を適当に選択することにより目的の物性を有する化合物を得ることができる。
【0084】
1−3 化合物(1)の具体例
化合物(1)の好ましい例は、式(1−1A)〜(1−1I)、(1−2A)〜(1−2D)である。さらに好ましくは、式(1−1B)、(1−1C)、(1−1E)、(1−1F)、(1−2A)〜(1−2C)を挙げることができる。
【0085】




【0086】
(これらの式において、Rは前記式(CHN−1)〜(CHN−4)および(CHN−6)〜(CHN−8)から選択される一つの鎖であり;Xはフッ素、塩素、−C≡N、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHF、または−C=C−CFである。)
【0087】
さらに具体的化合物として、下記式(1−1B−1)〜(1−1B−6)、(1−1C−1)〜(1−1C−6)、(1−1E−1)〜(1−1E−6)、(1−1F−1)〜(1−1F−6)、(1−1H−1)〜(1−1H−4)、(1−1I−1)〜(1−1I−4)、(1−2A−1)〜(1−2A−6)、(1−2B−1)〜(1−2B−6)、(1−2C−1)〜(1−2C−6)で示した化合物、実施例1〜4に記載した式(S1−9)、(S2−2)、(S3−4)、及び(S10−1)で示した化合物を挙げることができる。
【0088】








【0089】




【0090】


【0091】




【0092】
1−4 化合物(1)の合成
次に、化合物(1)の合成について説明する。化合物(1)は有機合成化学における手法を適切に組み合わせることにより合成できる。出発物に目的の末端基、環および結合基を導入する方法は、オーガニックシンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などに記載されている。
【0093】
1−4−1 クロロベンゼン環
1−ブロモ−3−クロロ−5−フルオロベンゼン、3−クロロ−5−フルオロフェノールなどクロロベンゼン類は試薬として購入することが可能である。
【0094】
1−4−2 結合基Z〜Zを生成する方法
化合物(1)における結合基Z〜Zを生成する方法の一例は、下記のスキームの通りである。このスキームにおいて、MSGまたはMSGは少なくとも一つの環を有する1価の有機基である。スキームで用いた複数のMSG(またはMSG)は、同一であってもよいし、または異なってもよい。化合物(1A)〜(1J)は、化合物(1)に相当する。


【0095】


【0096】
次に、化合物(1)における結合基Z〜Zについて、各種の結合の生成方法について、以下の(I)〜(II)項で説明する。
【0097】
(I)単結合の生成
アリールホウ酸(20)と公知の方法で合成される化合物(21)とを、炭酸塩水溶液とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で反応させて化合物(1A)を合成する。この化合物(1A)は、公知の方法で合成される化合物(22)にn−ブチルリチウムを、次いで塩化亜鉛を反応させ、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で化合物(21)を反応させることによっても合成される。
【0098】
(II)−CFO−の生成
化合物(22)にn−ブチルリチウムを、続いて二酸化炭素を反応させてカルボン酸(23)を得る。化合物(23)と、公知の方法で合成されるフェノール(25)とをDCC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)とDMAP(4−ジメチルアミノピリジン)の存在下で脱水させて−COO−を有する化合物(24)を合成する。この方法によって−OCO−を有する化合物も合成する。化合物(24)をローソン試薬のような硫黄化剤で処理して化合物(26)を得る。化合物(26)をフッ化水素ピリジン錯体とNBS(N−ブロモスクシンイミド)でフッ素化し、−CFO−を有する化合物(1B)を合成する。M. Kuroboshi et al., Chem. Lett., 1992,827.を参照。化合物(1B)は化合物(26)を(ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド(DAST)でフッ素化しても合成される。W. H. Bunnelle et al., J. Org. Chem. 1990, 55, 768.を参照。この方法によって−OCF−を有する化合物も合成する。Peer. Kirsch et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 1480.に記載の方法によってこれらの結合基を生成させることも可能である。
【0099】
1−4−4 化合物(1)を合成する方法
式(1)で表される化合物を合成する方法は複数あり、市販の試薬から適宜、本明細書実施例や文献、書籍を参考にして合成することが可能である。
【0100】
2 化合物(2)〜(11)
本発明の第2の態様は、前記式(1)で表される化合物である成分Aに以下に示す成分B、C、DおよびEから選ばれた成分を加えることにより得られる液晶組成物であり、成分Aのみの組成物に比べて、駆動電圧、液晶相温度範囲、屈折率異方性値、誘電率異方性値および粘度等を自由に調整することができる。
【0101】
成分Aに加える成分として、前記式(2)、(3)および(4)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分B、または前記式(5)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分C、または前記式(6)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分D、または前記式(7)〜(10)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分E、または前記式(11)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分Fを混合したものが好ましい。

【0102】
また、本発明に使用される液晶組成物の各成分においては、各元素の同位体元素からなる類縁体でもその物理特性に大きな差異がないので、使用出来る。
【0103】
上記成分Bのうち、式(2)で表される化合物の好適例として式(2−1)〜(2−16)、式(3)で表される化合物の好適例として式(3−1)〜(3−112)、式(4)で表される化合物の好適例として式(4−1)〜(4−52)をそれぞれ挙げることができる。
【0104】


【0105】


【0106】


【0107】


【0108】


【0109】


【0110】


【0111】



(式中、R、Xは前記と同じ意味を表す)
【0112】
これらの式(2)〜(4)で表される化合物すなわち成分Bは、誘電率異方性値が正であり、熱安定性や化学的安定性が非常に優れているので、TFT用の液晶組成物を調製する場合に用いられる。本発明の液晶組成物における成分Bの含有量は、液晶組成物の全重量に対して1〜99重量%の範囲が適するが、好ましくは10〜97重量%、より好ましくは40〜95重量%である。
前記、式(5)で表される化合物すなわち成分Cのうちの好適例として、式(5−1)〜(5−62)を挙げることができる。
【0113】


【0114】


【0115】



(これらの式において、RおよびXは前記と同じ意味である)
【0116】
これらの式(5)で表される化合物すなわち成分Cは、誘電率異方性値が正でその値が非常に大きい。この成分Cを含有させることにより、組成物駆動電圧を小さくすることができる。また、粘度の調整、屈折率異方性値の調整および液晶相温度範囲を広げることができる。
【0117】
成分Cの含有量は、組成物全量に対して好ましくは0.1〜99.9重量%の範囲、より好ましくは10〜97重量%の範囲、さらに好ましくは40〜95重量%の範囲である。また、後述の成分を混合することによりしきい値電圧、液晶相温度範囲、屈折率異方性値、誘電率異方性値および粘度などを調整できる。
【0118】
式(6)で表わされる化合物(成分D)の好適例として、それぞれ式(6−1)〜(6−6)を挙げることができる。
【0119】



(式中、RおよびRは前記と同じ意味を表す)
【0120】
式(6)で表される化合物(成分D)は、誘電率異方性値の絶対値が小さく、中性に近い化合物である。式(6)で表される化合物は透明点を高くするなどの光学的に等方性の液晶相の温度範囲を広げる効果、または屈折率異方性値の調整の効果がある。
【0121】
成分Dで表される化合物の含有量を増加させると液晶組成物の駆動電圧が高くなり、粘度が低くなるので、液晶組成物の駆動電圧の要求値を満たす限り、含有量は多いほうが望ましい。TFT用の液晶組成物を調製する場合に、成分Dの含有量は、組成物全量に対して好ましくは60重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。
本発明の液晶組成物は、本発明の式(1)で表される化合物の少なくとも1種類を0.1〜99重量%の割合で含有することが、優良な特性を発現せしめるために好ましい。
【0122】
本発明の液晶組成物の調製は、公知の方法、例えば必要な成分を高温度下で溶解させる方法などにより一般に調製される。
【0123】
3 化合物(7)〜(11)
本発明の第3の態様は、成分Aに以下に示す成分EおよびFから選ばれた成分を加えることにより得られる液晶組成物である。
【0124】
成分Aに加える成分として、前記式(7)、(8)、(9)および(10)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分E、または前記式(11)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分Fを混合したものが好ましい。
【0125】
また、本発明に使用される液晶組成物の各成分は、各元素の同位体元素からなる類縁体でもその物理特性に大きな差異がない。
【0126】
上記成分Fのうち、式(7)で表される化合物の好適例として式(7−1)〜(7−8)、式(8)で表される化合物の好適例として式(8−1)〜(8−26)、式(9)で表される化合物の好適例として式(9−1)〜(9−22)、式(10)で表される化合物の好適例として式(10−1)〜(10−5)をそれぞれ挙げることができる。
【0127】


【0128】


【0129】






(式中、R、X4は前記と同じ意味を表し、(F)は水素またはフッ素を表し、(F,Cl)は水素またはフッ素または塩素を表す。)
【0130】
これらの式(7)〜(10)で表される化合物すなわち成分Eは、誘電率異方性値が正でありかつ非常に大きく、熱安定性や化学的安定性が非常に優れているので、TFT駆動などのアクティブ駆動用の液晶組成物を調製する場合に好適である。本発明の液晶組成物における成分Fの含有量は、液晶組成物の全重量に対して1〜99重量%の範囲が適するが、好ましくは10〜97重量%、より好ましくは40〜95重量%である。また式(6)で表される化合物(成分D)をさらに含有させることにより透明点および粘度調整をすることができる。
【0131】
前記、式(11)で表される化合物すなわち成分Fのうちの好適例として、式(11−1)〜(11−37)を挙げることができる。
【0132】





(これらの式において、R、X、(F)および(F,Cl)は前記と同じ意味である)
【0133】
これらの式(11)で表される化合物すなわち成分Fは、誘電率異方性値が正でその値が非常に大きいので光学的に等方性の液晶相で駆動される素子、PDLCD、PNLCD、PSCLCDなどの素子を低駆動電圧化する場合に主として用いられる。この成分Gを含有させることにより、組成物の駆動電圧を小さくすることができる。また、粘度の調整、屈折率異方性値の調整および液晶相温度範囲を広げることができる。さらに急峻性の改良にも利用できる。
【0134】
成分Fの含有量は、組成物全量に対して好ましくは0.1〜99.9重量%の範囲、より好ましくは10〜97重量%の範囲、さらに好ましくは40〜95重量%の範囲である。
【0135】
4 光学的に等方性の液晶相を有する組成物
4.1 光学的に等方性の液晶相を有する組成物の組成
本発明の第4の態様は、式(1)で表される化合物およびキラル剤を含む組成物であり、光学的に等方性の液晶相で駆動される光素子に用いることのできる液晶組成物である。液晶組成物は、光学的等方性の液晶相を発現する組成物である。
式(1)で表される化合物は、透明点が低く、大きな誘電率異方性と大きな屈折率異方性を有するため、その含有量は、キラル剤が添加されていないアキラルな液晶組成物の全重量に対して、5〜100重量%でもよく、好ましくは5〜80重量%、より好ましくは10〜70重量%である。
液晶組成物の全重量に対して、キラル剤を1〜40重量%含むことが好ましく、3〜25重量%含むことがさらに好ましく、5〜15重量%含むことが最も好ましい。これらの範囲でキラル剤を含有する液晶組成物は、光学的に等方性の液晶相を有するようになりやすく、好ましい。
液晶組成物に含有されるキラル剤は1種でも2種以上でもよい。
【0136】
4.2 キラル剤
光学的に等方性の液晶組成物が含有するキラル剤としては、ねじり力(Helical Twisting Power)が大きい化合物が好ましい。ねじり力が大きい化合物は所望のピッチを得るために必要な添加量が少なくできるので、駆動電圧の上昇を抑えられ、実用上有利である。具体的には、下記式(K1)〜(K5)で表される化合物が好ましい。
【0137】



式(K1)〜(K5)中、Rは独立に、水素、ハロゲン、−C≡N、−N=C=O、−N=C=Sまたは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;Aは独立に、芳香族性あるいは非芳香族性の3ないし8員環、または、炭素数9以上の縮合環であり、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたはハロアルキルで置き換えられてもよく、−CH−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;Bは独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、炭素数1〜3のハロアルキル、芳香族性または非芳香族性の3から8員環、または炭素数9以上の縮合環であり、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたはハロアルキルで置き換えられてもよく、−CH−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;Zは独立に、単結合、炭素数1〜8のアルキレンであるが、任意の−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;Xは単結合、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、または−CHCH−であり;mKは1〜4である。
【0138】
これらの中でも、液晶組成物に添加されるキラル剤としては、式(K2)に含まれる式(K2−1)〜式(K2−8)、式(K4)に含まれる式(K4−1)〜式(K4−6)および、式(K5)に含まれる式(K5−1)〜式(K5−3)が好ましい。
【0139】









(式中、Rは独立に、炭素数3〜10のアルキルであり、このアルキル中の環に隣接する−CH−は−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH−は、−CH=CH−で置き換えられてもよい。)。
【0140】
4.3 光学的に等方性の液晶相
液晶組成物が光学的に等方性を有するとは、巨視的には液晶分子配列は等方的であるため光学的に等方性を示すが、微視的には液晶秩序が存在することをいう。「液晶組成物が微視的に有する液晶秩序に基づくピッチ(以下では、ピッチと呼ぶことがある)」は700nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがさらに好ましく、350nm以下であることが最も好ましい。
【0141】
ここで、「非液晶等方相」とは一般的に定義される等方相、すなわち、無秩序相であり、局所的な秩序パラメーターがゼロでない領域が生成したとしても、その原因がゆらぎによるものである等方相である。たとえばネマチック相の高温側に発現する等方相は、本明細書では非液晶等方相に該当する。本明細書におけるキラルな液晶についても、同様の定義があてはまるものとする。そして、本明細書において「光学的に等方性の液晶相」とは、ゆらぎではなく光学的に等方性の液晶相を発現する相を表し、たとえばプレートレット組織を発現する相(狭義のブルー相)はその一例である。
【0142】
本発明の光学的に等方性の液晶組成物において、光学的に等方性の液晶相ではあるが、偏光顕微鏡観察下、ブルー相に典型的なプレートレット組織が観測されないことがある。そこで本明細書において、プレートレット組織を発現する相をブルー相と称し、ブルー相を含む光学的に等方性の液晶相を光学的に等方性の液晶相と称する。すなわちブルー相は光学的に等方性の液晶相に包含される。
【0143】
一般的に、ブルー相は3種類に分類され(ブルー相I、ブルー相II、ブルー相III)、これら3種類のブルー相はすべて光学活性であり、かつ、等方性である。ブルー相Iやブルー相IIのブルー相では異なる格子面からのブラッグ反射に起因する2種以上の回折光が観測される。ブルー相は一般的に非液晶等方相とキラルネマチック相の間で観測される。
光学的に等方性の液晶相が二色以上の回折光を示さない状態とは、ブルー相I、ブルー相IIに観測されるプレートレット組織が観測されず、概ね一面単色であることを意味する。二色以上の回折光を示さない光学的に等方性の液晶相では、色の明暗が面内で均一であることまでは不要である。
【0144】
二色以上の回折光を示さない光学的に等方性の液晶相は、ブラッグ反射による反射光強度が抑えられる、あるいは低波長側にシフトするという利点がある。
また、可視光の光を反射する液晶材料では、表示素子として利用する場合に色味が問題となることがあるが、二色以上の回折光を示さない液晶では、反射波長が低波長シフトするため、狭義のブルー相(プレートレット組織を発現する相)より長いピッチで可視光の反射を消失させることができる。
【0145】
本発明の光学的に等方性の液晶組成物は、ネマチック相を有する組成物にキラル剤を添加して得ることが出来る。この際に、キラル剤は好ましくはピッチが700nm以下になるような濃度で添加される。なお、ネマチック相を有する組成物は、式(1)で表される化合物および必要に応じてその他の成分を含む。また、本発明の光学的に等方性の液晶組成物は、キラルネマチック相を有し、光学的に等方性の液晶相を有さない組成物にキラル剤を添加して得ることも出来る。なお、キラルネマチック相を有し光学的に等方性の液晶を有さない組成物は、式(1)で表される化合物、光学活性化合物および必要に応じてその他の成分を含む。この際に、光学活性化合物は光学的に等方性の液晶相を発現させないために、好ましくはピッチが700nm以上になるような濃度で添加される。ここで、添加される光学活性化合物は、前述のねじり力が大きい化合物である式(K1)〜(K5)、式(K2−1)〜(K2−8)、式(K4−1)〜(K4−6)または式(K5−1)〜(K5−3)で表される化合物が使用出来る。また、添加される光学活性化合物は、ねじり力がそれほど大きくない化合物であってもよい。そのような光学活性化合物としては、ネマチック相で駆動される素子(TN方式、STN方式など)用の液晶組成物に添加される化合物を挙げることができる。
【0146】
ねじり力がそれほど大きくない光学活性化合物の例として、以下の光学活性化合物(Op−1)〜(Op−13)を挙げることができる。


【0147】
なお本発明の光学的に等方性の液晶組成物の温度範囲は、ネマチック相またはキラルネマチック相と非液晶等方相の共存温度範囲が広い液晶組成物に、キラル剤を添加し、光学的に等方性の液晶相を発現させることにより、広くすることができる。例えば、透明点の高い液晶化合物と透明点の低い液晶化合物とを混合し、広い温度範囲でネマチック相と非液晶等方相の共存温度範囲が広い液晶組成物を調製し、これにキラル剤を添加することで、広い温度範囲で光学的に等方性の液晶相を発現する組成物を調製することができる。
【0148】
ネマチック相またはキラルネマチック相と非液晶等方相の共存温度範囲が広い液晶組成物としては、キラルネマチック相と非液晶等方相とが共存する上限温度と下限温度との差が3〜150℃である液晶組成物が好ましく、差が5〜150℃である液晶組成物が更に好ましい。また、ネマチック相と非液晶等方相とが共存する上限温度と下限温度との差が3〜150℃である液晶組成物が好ましい。
【0149】
光学的に等方性の液晶相において本発明の液晶媒体に電界を印加すると、電気複屈折が生じるが、必ずしもカー効果である必要はない。
光学的に等方性の液晶相における電気複屈折はピッチが長くなるほど大きくなるので、その他の光学特性(透過率、回折波長など)の要求を満たす限り、キラル剤の種類と含有量を調整して、ピッチを長く設定することにより、電気複屈折を大きくすることができる。
【0150】
4.4 その他の成分
本発明の光学的に等方性の液晶組成物は、その組成物の特性に影響を与えない範囲で、さらに高分子物質等の他の化合物が添加されてもよい。本発明の液晶組成物は、高分子物質の他にも、たとえば二色性色素、フォトクロミック化合物を含有していてもよい。二色性色素の例としては、メロシアニン系、スチリル系、アゾ系、アゾメチン系、アゾキシ系、キノフタロン系、アントラキノン系、テトラジン系などが挙げられる。
【0151】
5.光学的に等方性の高分子/液晶複合材料
本発明の第5の態様は、式(1)で表される化合物およびキラル剤を含む液晶組成物と高分子の複合材料であり、光学的に等方性を示すものである。光学的に等方性の液晶相で駆動される光素子に用いることのできる光学的に等方性の高分子/液晶複合材料である。モノマーと液晶の混合物をブルー相において重合することにより得られる非特許文献1の高分子安定化ブルー相や、モノマーと液晶の混合物を等方相において重合することにより得られる非特許文献2の擬等方性液晶は、光学的に等方性の高分子/液晶複合材料に包含される。このような高分子/液晶複合材料は例えば、項[1]〜[30]に記載の液晶組成物(液晶組成物CLC)と高分子で構成される。
本発明の、「高分子/液晶複合材料」とは、液晶材料と高分子の化合物の両者を含む複合材料であれば特に限定されないが、高分子の一部または全部が液晶材料に溶解していない状態で高分子が液晶材料と相分離している状態でもよい。なお、本明細書において、特に言及がなければ、ネマチック相はキラルネマチック相を含まない、狭義のネマチック相を意味する。
【0152】
本発明の好ましい態様に係る光学的に等方性の高分子/液晶複合材料は、光学的に等方性の液晶相を広い温度範囲で発現させることが可能である。また、本発明の好ましい態様に係る高分子/液晶複合材料は、応答速度が極めて速い。また、本発明の好ましい態様に係る高分子/液晶複合材料は、これらの効果に基づいて表示素子等の光素子等に好適に用いることができる。
【0153】
5.2 高分子
本発明の複合材料は、光学的に等方性の液晶組成物と、予め重合されて得られた高分子とを混合しても製造できるが、高分子の材料となる低分子量のモノマー、マクロモノマー、オリゴマー等(以下、まとめて「モノマー等」という)と液晶組成物CLCとを混合してから、当該混合物において重合反応を行うことによって、製造されることが好ましい。モノマー等と液晶組成物とを含む混合物を本件明細書では、「重合性モノマー/液晶混合物」と呼ぶ。「重合性モノマー/液晶混合物」には必要に応じて、後述する重合開始剤、硬化剤、触媒、安定剤、二色性色素、またはフォトクロミック化合物等を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでもよい。たとえば、本件発明の重合性モノマー/液晶混合物には必要に応じて、重合開始剤を重合性モノマー100重量部に対して0.1〜20重量部含有してもよい。
【0154】
重合温度は、高分子/液晶複合材料が高透明性と等方性を示す温度であることが好ましい。より好ましくはモノマーと液晶材料の混合物が等方相またはブルー相を発現する温度で、かつ、等方相ないしは光学的に等方性の液晶相で重合を終了する。すなわち、重合後は高分子/液晶複合材料が可視光線より長波長側の光を実質的に散乱せずかつ光学的に等方性の状態を発現する温度とするのが好ましい。
【0155】
本発明の複合材料を構成する高分子の原料としては、例えば低分子量のモノマー、マクロモノマー、オリゴマーを使用することができ、本明細書において高分子の原料モノマーとは低分子量のモノマー、マクロモノマー、オリゴマー等を包含する意味で用いる。また、得られる高分子が三次元架橋構造を有するものが好ましく、そのために、高分子の原料モノマーとして2つ以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーを用いることが好ましい。重合性の官能基は特に限定されないが、アクリル基、メタクリル基、グリシジル基、エポキシ基、オキセタニル基、ビニル基などを上げることができるが、重合速度の観点からアクリル基およびメタクリル基が好ましい。高分子の原料モノマー中、二つ以上の重合性のある官能基を持つモノマーをモノマー中に10重量%以上含有させると、本発明の複合材料において高度な透明性と等方性を発現しやすくなるので好ましい。
また、好適な複合材料を得るためには、高分子はメソゲン部位を有するものが好ましく、高分子の原料モノマーとしてメソゲン部位を有する原料モノマーをその一部に、あるいは全部に用いることができる。
【0156】
5.2.1 メソゲン部位を有する単官能性・二官能性モノマー
メソゲン部位を有する単官能性、または二官能性モノマーは構造上特に限定されないが、例えば下記の式(M1)または式(M2)で表される化合物を挙げることができる。
【0157】
−Y−(A−Zm1−A−Y−R(M1)
−Y−(A−Zm1−A−Y−R (M2)


【0158】
式(M1)中、Rは、それぞれ独立して水素、ハロゲン、−C≡N、−N=C=O、−N=C=S、または炭素数1〜20のアルキルであり、これらのアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらのアルキルにおいて任意の水素はハロゲンまたは−C≡Nで置き換えられてもよい。Rは、それぞれ独立して、式(M3−1)〜式(M3−7)の重合性基である。
【0159】
好ましいRは、水素、ハロゲン、−C≡N、−CF、−CFH、−CFH、−OCF、−OCFH、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜19のアルコキシ、炭素数2〜21のアルケニル、および炭素数2〜21のアルキニルである。特に好ましいRは、−C≡N、炭素数1〜20のアルキルおよび炭素数1〜19のアルコキシである。
【0160】
式(M2)中、Rは、それぞれ独立して、式(M3−1)〜(M3−7)の重合性基である。
【0161】
ここで、式(M3−1)〜(M3−7)におけるRは、それぞれ独立して水素、ハロゲンまたは炭素数1〜5のアルキルであり、これらのアルキルにおいて任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。好ましいRは、水素、ハロゲンおよびメチルである。特に好ましいRは、水素、フッ素およびメチルである。
また、式(M3−2)、式(M3−3)、式(M3−4)、式(M3−7)はラジカル重合で重合するのが好適である。式(M3−1)、式(M3−5)、式(M3−6)はカチオン重合で重合するのが好適である。いずれもリビング重合なので、少量のラジカルあるいはカチオン活性種が反応系内に発生すれば重合は開始する。活性種の発生を加速する目的で重合開始剤を使用できる。活性種の発生には例えば光または熱を使用できる。
【0162】
式(M1)および(M2)中、Aは、それぞれ独立して芳香族性または非芳香族性の5員環、6員環または炭素数9以上の縮合環であるが、環中の−CH−は−O−、−S−、−NH−、または−NCH−で、環中の−CH=は−N=で置き換わってもよく、環上の水素原子はハロゲン、および炭素数1〜5のアルキル、またはハロゲン化アルキルで置き換わってもよい。好ましいAの具体例は、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、またはビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイルであり、これらの環において任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH=は−N=で置き換えられてもよく、これらの環において任意の水素はハロゲン、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のハロゲン化アルキルで置き換えられてもよい。
化合物の安定性を考慮して、酸素と酸素とが隣接した−CH−O−O−CH−よりも、酸素と酸素とが隣接しない−CH−O−CH−O−の方が好ましい。硫黄においても同様である。
【0163】
これらの中でも、特に好ましいAは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−メチル−1,4−フェニレン、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレン、2,3−ビス(トリフルオロメチル)−1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、9−メチルフルオレン−2,7−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、およびピリミジン−2,5−ジイルである。なお、前記1,4−シクロヘキシレンおよび1,3−ジオキサン−2,5−ジイルの立体配置はシスよりもトランスの方が好ましい。
2−フルオロ−1,4−フェニレンは、3−フルオロ−1,4−フェニレンと構造的に同一であるので、後者は例示しなかった。この規則は、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンと3,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンの関係などにも適用される。
【0164】
式(M1)および(M2)中、Yは、それぞれ独立して単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、これらのアルキレンにおいて任意の−CH2−は−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよい。好ましいYは、単結合、−(CH2m2−、−O(CH2m2−、および−(CH2m2O−(前記式中、rは1〜20の整数である)である。特に好ましいYは、単結合、−(CH2m2−、−O(CH2m2−、および−(CH2m2O−(前記式中、m2は1〜10の整数である)である。化合物の安定性を考慮して、−Y−Rおよび−Y−Rは、それらの基中に−O−O−、−O−S−、−S−O−、または−S−S−を有しない方が好ましい。
【0165】
式(M1)および(M2)中、Zは、それぞれ独立して単結合、−(CH2m3−、−O(CH2m3−、−(CH2m3O−、−O(CH2m3O−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−(CF22−、−(CH2−COO−、−OCO−(CH2−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、−CH=CH−(CH22−、−(CH22−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−CH=CH−、−CH=CH−C≡C−、−OCF−(CH2−、−(CH2−CFO−、−OCF−または−CFO−(前記式中、m3は1〜20の整数である)である。
【0166】
好ましいZは単結合、−(CH2m3−、−O(CH2m3−、−(CH2m3O−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−(CH2−COO−、−OCO−(CH2−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−OCF−、および−CFO−である。
【0167】
式(M1)および(M2)中、m1は1〜6の整数である。好ましいm1は、1〜3の整数である。m1が1のときは、6員環などの環を2つ有する二環の化合物である。m1が2と3のときは、それぞれ三環と四環の化合物である。例えばm1が1であるとき、2つのAは同一であってもよいし、または異なってもよい。また、例えばm1が2であるとき、3つのA(または2つのZ)は同一であってもよいし、または異なってもよい。m1が3〜6であるときについても同様である。R、R、R、Z、AおよびYについても同様である。
【0168】
式(M1)で表される化合物(M1)および式(M2)で表される化合物(M2)はH(重水素)、13Cなどの同位体を天然存在比の量よりも多く含んでいても同様の特性を有するので好ましく用いることができる。
【0169】
化合物(M1)および化合物(M2)の更に好ましい例は、式(M1−1)〜(M1−41)および(M2−1)〜(M2−27)で表される化合物(M1−1)〜(M1−41)および化合物(M2−1)〜(M2−27)である。これらの化合物において、R、R、R、Z、A、Yおよびpの意味は、本発明の態様に記載した式(M1)および式(M2)のそれらと同一である。
【0170】
化合物(M1−1)〜(M1−41)および(M2−1)〜(M2−27)における下記の部分構造について説明する。部分構造(a1)は、任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンを表す。部分構造(a2)は、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンを表す。部分構造(a3)は、任意の水素がフッ素またはメチルのいずれかで置き換えられてもよい1,4−フェニレンを表す。部分構造(a4)は、9位の水素がメチルで置き換えられてもよいフルオレンを表す。
【0171】


【0172】


【0173】


【0174】


【0175】


【0176】


【0177】


【0178】


【0179】


【0180】


【0181】


【0182】
前述のメソゲン部位を有さないモノマー、およびメソゲン部位を持つモノマー(M1)、および(M2)以外の重合性化合物を必要に応じて使用することができる。
【0183】
本発明の高分子/液晶複合材料の光学的に等方性を最適化する目的で、メソゲン部位を持ち3つ以上の重合性官能基を持つモノマーを使用することもできる。メソゲン部位を持ち3つ以上の重合性官能基を持つモノマーとしては公知の化合物を好適に使用できるが、例えば、(M4−1)〜(M4−3)であり、より具体的な例として、特開2000−327632号、特開2004−182949号、特開2004−59772号に記載された化合物をあげることができる。ただし、(M4−1)〜(M4−3)において、R、Za、Y、および(F)は前述と同一の意味を示す。
【0184】


【0185】
5.2.2 メソゲン部位を有さない重合性のある官能基を持つモノマー
メソゲン部位を有さない重合性のある官能基を持つモノマーとして、例えば、炭素数1〜30の直鎖あるいは分岐アクリレート、炭素数1〜30の直鎖あるいは分岐ジアクリレート、三つ以上の重合性官能基を有するモノマーとしては、グリセロール・プロポキシレート(1PO/OH)トリアクリレート、ペンタエリスリトール・プロポキシレート・トリアクリレート、ペンタエリスリトール・トリアクリレート、トリメチロールプロパン・エトキシレート・トリアクリレート、トリメチロールプロパン・プロポキシレート・トリアクリレート、トリメチロールプロパン・トリアクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ペンタエリスリトール・テトラアクリレート、ジ(ペンタエリスリトール)ペンタアクリレート、ジ(ペンタエリスリトール)ヘキサアクリレート、トリメチロールプロパン・トリアクリレートなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0186】
5.2.3 重合開始剤
本発明の複合材料を構成する高分子の製造における重合反応は特に限定されず、例えば、光ラジカル重合、熱ラジカル重合、光カチオン重合等が行われる。
【0187】
光ラジカル重合において用いることができる光ラジカル重合開始剤の例は、ダロキュア(DAROCUR、登録商標)1173および4265(いずれも商品名、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株))、イルガキュア(IRGACURE、登録商標)184、369、500、651、784、819、907、1300、1700、1800、1850、および2959(いずれも商品名、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株))、などである。
【0188】
熱ラジカル重合において用いることができる熱によるラジカル重合の好ましい開始剤の例は、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル(MAIB)、ジt−ブチルパーオキシド(DTBPO)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(ACN)などである。
【0189】
光カチオン重合において用いることができる光カチオン重合開始剤として、ジアリールヨードニウム塩(以下、「DAS」という。)、トリアリールスルホニウム塩(以下、「TAS」という。)などがあげられる。
【0190】
DASとしては、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、ジフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホナートなどが挙げられる。
【0191】
DASには、チオキサントン、フェノチアジン、クロロチオキサントン、キサントン、アントラセン、ジフェニルアントラセン、ルブレンなどの光増感剤を添加することで高感度化することもできる。
【0192】
TASとしては、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホネートなどが挙げられる。
【0193】
光カチオン重合開始剤の具体的な商品名の例は、サイラキュア(Cyracure、登録商標)UVI−6990、サイラキュアUVI−6974、サイラキュアUVI−6992(それぞれ商品名、UCC(株))、アデカオプトマーSP−150、SP−152、SP−170、SP−172(それぞれ商品名、(株)ADEKA)、Rhodorsil Photoinitiator 2074(商品名、ローディアジャパン(株))、イルガキュア(IRGACURE、登録商標)250(商品名、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株))、UV−9380C(商品名、GE東芝シリコーン(株))などである。
【0194】
5.2.4 硬化剤等
本発明の複合材料を構成する高分子の製造において、前記モノマー等および重合開始剤の他にさらに1種または2種以上の他の好適な成分、例えば、硬化剤、触媒、安定剤等を加えてもよい。
【0195】
硬化剤としては、通常、エポキシ樹脂の硬化剤として使用されている従来公知の潜在性硬化剤が使用できる。潜在性エポキシ樹脂用硬化剤は、アミン系硬化剤、ノボラック樹脂系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、酸無水物系硬化剤等が挙げられる。アミン系硬化剤の例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、m−キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等の脂肪族ポリアミン、イソフォロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ラロミン等の脂環式ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエタン、メタフェニレンジアミン等の芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
【0196】
ノボラック樹脂系硬化剤の例としては、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂などが挙げられる。イミダゾール系硬化剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルへキシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウム・トリメリテートなどが挙げられる。
【0197】
酸無水物系硬化剤の例としては、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルへキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0198】
また、グリシジル基、エポキシ基、オキセタニル基を有する重合性化合物と硬化剤との硬化反応を促進するための硬化促進剤をさらに用いてもよい。硬化促進剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルシクロヘキシルアミン等の3級アミン類、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等の有機リン系化合物、テトラフェニルホスホニウムブロマイド等の4級ホスホニウム塩類、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等やその有機酸塩等のジアザビシクロアルケン類、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩類、三フッ化ホウ素、トリフェニルボレート等のホウ素化合物などが挙げられる。これらの硬化促進剤は単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0199】
また、例えば貯蔵中の不所望な重合を防止するために、安定剤を添加することが好ましい。安定剤として、当業者に知られているすべての化合物を用いることができる。安定剤の代表例としては、4−エトキシフェノール、ハイドロキノン、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)等が挙げられる。
【0200】
5.3 液晶組成物等の含有率
本発明の高分子/液晶複合材料中における液晶組成物の含有率は、複合材料が光学的に等方性の液晶相を発現できる範囲であれば、可能な限り高含有率であることが好ましい。液晶組成物の含有率が高い方が、本発明の複合材料の電気複屈折値が大きくなるからである。
【0201】
本発明の高分子/液晶複合材料において、液晶組成物の含有率は複合材料に対して60〜99重量%であることが好ましく、60〜95重量%がさらに好ましく、65〜95重量%が特に好ましい。高分子の含有率は複合材料に対して1〜40重量%であることが好ましく、5〜40重量%がさらに好ましく、5〜35重量%が特に好ましい。
【0202】
5.4 その他の成分
本発明の高分子/液晶複合材料は、たとえば二色性色素、フォトクロミック化合物を本発明の効果を損なわない範囲で含有していてもよい。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によっては制限されない。なお特に断りのない限り、「%」は「重量%」を意味する。
【0203】
6 光素子
本発明の第6の態様は、液晶組成物または高分子/液晶複合材料(以下では、本発明の液晶組成物および高分子/液晶複合材料を総称して液晶媒体と呼ぶことがある)を含む光学的に等方性の液晶相で駆動される光素子である。
電界無印加時には液晶媒体は光学的に等方性であるが、電場を印加すると、液晶媒体は光学的異方性を生じ、電界による光変調が可能となる。
液晶表示素子の構造例としては、図1に示すように、櫛型電極基板の電極が、左側から伸びる電極1と右側から伸びる電極2が交互に配置された構造を挙げることができる。電極1と電極2との間に電位差がある場合、図1に示すような櫛型電極基板上では、上方向と下方向の2つの方向の電界が存在する状態を提供できる。
【実施例】
【0204】
得られた化合物は、1H−NMR分析で得られる核磁気共鳴スペクトル、ガスクロマトグラフィー(GC)分析で得られるガスクロマトグラムなどにより同定したので、まず分析方法について説明をする。
【0205】
1H−NMR分析:測定装置は、DRX−500(ブルカーバイオスピン(株)社製)を用いた。測定は、実施例等で製造したサンプルを、CDCl3等のサンプルが可溶な重水素化溶媒に溶解し、室温で、500MHz、積算回数24回の条件で行った。なお、得られた核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、mはマルチプレットであることを意味する。また、化学シフトδ値のゼロ点の基準物質としてはテトラメチルシラン(TMS)を用いた。
【0206】
GC分析:測定装置は、島津製作所製のGC−14B型ガスクロマトグラフを用いた。カラムは、島津製作所製のキャピラリーカラムCBP1−M25−025(長さ25m、内径0.22mm、膜厚0.25μm);固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。キャリアーガスとしてはヘリウムを用い、流量は1ml/分に調整した。試料気化室の温度を300℃、検出器(FID)部分の温度を300℃に設定した。
【0207】
試料はトルエンに溶解して、1重量%の溶液となるように調製し、得られた溶液1μlを試料気化室に注入した。
記録計としては島津製作所製のC−R6A型Chromatopac、またはその同等品を用いた。得られたガスクロマトグラムには、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積値が示されている。
【0208】
なお、試料の希釈溶媒としては、例えば、クロロホルム、ヘキサンを用いてもよい。また、カラムとしては、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Agilent Technologies Inc.製のHP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty.Ltd製のBP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)などを用いてもよい。
【0209】
ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は成分化合物の割合に相当する。一般には、分析サンプルの成分化合物の重量%は、分析サンプルの各ピークの面積%と完全に同一ではないが、本発明において上述したカラムを用いる場合には、実質的に補正係数は1であるので、分析サンプル中の成分化合物の重量%は、分析サンプル中の各ピークの面積%とほぼ対応している。成分の液晶化合物における補正係数に大きな差異がないからである。ガスクロマトグラムにより液晶組成物中の液晶化合物の組成比をより正確に求めるには、ガスクロマトグラムによる内部標準法を用いる。一定量正確に秤量された各液晶化合物成分(被検成分)と基準となる液晶化合物(基準物質)を同時にガスクロ測定して、得られた被検成分のピークと基準物質のピークとの面積比の相対強度をあらかじめ算出する。基準物質に対する各成分のピーク面積の相対強度を用いて補正すると、液晶組成物中の液晶化合物の組成比をガスクロ分析からより正確に求めることができる。
【0210】
液晶化合物等の物性値の測定試料
液晶化合物の物性値を測定する試料としては、化合物そのものを試料とする場合、化合物を母液晶と混合して試料とする場合の2種類がある。
【0211】
化合物を母液晶と混合した試料を用いる後者の場合には、以下の方法で測定を行う。まず、得られた液晶化合物15重量%と母液晶85重量%とを混合して試料を作製する。そして、得られた試料の測定値から、下記の計算式に基づく外挿法にしたがって、外挿値を計算する。この外挿値をこの化合物の物性値とする。
【0212】
〈外挿値〉=(100×〈試料の測定値〉−〈母液晶の重量%〉×〈母液晶の測定値〉)/〈液晶化合物の重量%〉
【0213】
液晶化合物と母液晶との割合がこの割合であっても、スメクチック相、または結晶が25℃で析出する場合には、液晶化合物と母液晶との割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更をしていき、スメクチック相、または結晶が25℃で析出しなくなった組成で試料の物性値を測定し上記式にしたがって外挿値を求めて、これを液晶化合物の物性値とする。
【0214】
測定に用いる母液晶としては様々な種類が存在するが、例えば、母液晶Aの組成(重量%)は以下のとおりである。
母液晶A:


【0215】
液晶化合物等の物性値の測定方法
物性値の測定は後述する方法で行った。これら測定方法の多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。また、測定に用いたTN素子には、TFTを取り付けなかった。
【0216】
測定値のうち、液晶化合物そのものを試料とした場合は、得られた値を実験データとして記載した。液晶化合物と母液晶との混合物を試料として用いた場合は、外挿法で得られた値を実験データとして記載した。
【0217】
相構造および相転移温度(℃):以下(1)、および(2)の方法で測定を行った。
(1)偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に化合物を置き、3℃/分の速度で加熱しながら相状態とその変化を偏光顕微鏡で観察し、液晶相の種類を特定した。
(2)パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システム、またはDiamond DSCシステムを用いて、3℃/分速度で昇降温し、試料の相変化に伴う吸熱ピーク、または発熱ピークの開始点を外挿により求め(on set)、相転移温度を決定した。
【0218】
以下、結晶相はKと表し、さらに結晶相の区別がつく場合は、それぞれK1またはK2と表した。また、スメクチック相はSm、ネマチック相はNと表した。液体(アイソトロピック)はIと表した。スメクチック相の中で、スメクチックB相、またはスメクチックA相の区別がつく場合は、それぞれSmB、またはSmAと表した。BPはブルー相または光学的に等方性の液晶相を表す。2相の共存状態は(N+I)、(N+BP)という形式で表記することがある。具体的には、(N+I)は、それぞれ非液晶等方相とキラルネマチック相とが共存する相を表し、(N+BP)は、BP相または光学的に等方性の液晶相とキラルネマチック相が共存した相を表す。Unは光学的等方性ではない未確認の相を表す。相転移温度の表記として、例えば、「K 50.0 N 100.0 I」とは、結晶からネマチック相への相転移温度(KN)が50.0℃であり、ネマチック相から液体への相転移温度(NI)が100.0℃であることを示す。他の表記も同様である。
【0219】
ネマチック相の上限温度(TNI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に、試料(液晶化合物と母液晶との混合物)を置き、1℃/分の速度で加熱しながら偏光顕微鏡を観察した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度をネマチック相の上限温度とした。以下、ネマチック相の上限温度を、単に「上限温度」と略すことがある。
【0220】
低温相溶性:母液晶と液晶化合物とを、液晶化合物が、20重量%、15重量%、10重量%、5重量%、3重量%、および1重量%の量となるように混合した試料を作製し、試料をガラス瓶に入れる。このガラス瓶を、−10℃または−20℃のフリーザー中に一定期間保管したあと、結晶もしくはスメクチック相が析出しているかどうか観察をした。
【0221】
粘度(η;20℃で測定;mPa・s):液晶化合物と母液晶との混合物を、E型粘度計を用いて測定した。
【0222】
屈折率異方性(Δn):測定は25℃の温度下で、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料(液晶化合物と母液晶との混合物)を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。屈折率異方性(Δn)の値は、Δn=n‖−n⊥の式から計算した。
【0223】
誘電率異方性(Δε;25℃で測定):2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μm、ツイスト角が80度の液晶セルに試料(液晶化合物と母液晶との混合物)を入れた。このセルに20ボルトを印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。0.5ボルトを印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0224】
ピッチ(P;25℃で測定;nm)
ピッチ長は選択反射を用いて測定した(液晶便覧196頁 2000年発行、丸善)。選択反射波長λには、関係式<n>p/λ=1が成立する。ここで<n>は平均屈折率を表し、次式で与えられる。<n>={(n2+n2)/2}1/2。選択反射波長は顕微分光光度計(日本電子(株)、商品名MSV-350)で測定した。得られた反射波長を平均屈折率で除すことにより、ピッチを求めた。可視光より長波長領域に反射波長を有するコレステリック液晶のピッチは、光学活性化合物濃度が低い領域では光学活性化合物の濃度の逆数に比例することから、可視光領域に選択反射波長を有する液晶のピッチ長を数点測定し、直線外挿法により求めた。「光学活性化合物」は本発明におけるキラル剤に相当する。
【0225】
(実施例1)
化合物(S1−9)の合成
化合物(S1−9)は、式(1−2A)において、RがCであり、L、L、およびLが全てフッ素であり、Xがフッ素である化合物である。



合成スキームを下図に示す。


【0226】
化合物(S1−3)の合成
窒素雰囲気下の反応器へ、4−プロピルフェニルボロン酸(S1−1)25.8gと1−ブロモ−3−クロロ−5−フルオロベンゼン(S1−2)30.0gとテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム2.5gと炭酸ナトリウム50.1gとトルエン/エタノール/水=3/3/1(容積比)の混合溶媒700ml加え、5時間還流した。反応液を室温まで冷却し、これにトルエンを加え、これを1N−塩酸、水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて溶媒を留去した。ヘプタンを展開溶媒として、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、減圧にて乾燥して4−プロピル−1−(3−クロロ−5−フルオロフェニル)ベンゼン(S1−3)34.8gを得た。このものの(S1−1)からの収率は97.7%であった。
【0227】
化合物(S1−4)の合成
窒素雰囲気下の反応器へ、(S1−3)を15.0g、テトラヒドロフラン(THF)150mlを加え、−70℃まで冷却し、これにn−BuLi(1.6M;n−ヘキサン溶液)46.1mlを滴下し、1時間そのままの温度で撹拌した。反応液にヨウ素8.4gのTHF100ml溶液を−70℃で滴下し、そのままの温度で5時間撹拌した。反応液を室温まで加温し、チオ硫酸ナトリウム水溶液に注いだ。生成物を酢酸エチルで抽出し、有機層をチオ硫酸ナトリウム水、水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて溶媒を留去した。ヘプタン/トルエン=3/1を展開溶媒として、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、減圧にて乾燥して4−プロピル−1−(3−クロロ−5−フルオロ−4−ヨードフェニル)ベンゼン(S1−4)22.4gを得た。このものの(S1−3)からの収率は99.3%であった。
【0228】
化合物(S1−6)の合成
窒素雰囲気下の反応器へ、(S1−4)22.3g、3,5−ジフロオロフェニルボロン酸(S1−5)10.3g、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム1.0gと炭酸ナトリウム20.8gとトルエン/エタノール/水=3/3/1(容積比)の混合溶媒490ml加え、10時間還流した。テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム1.0gを追加しさらに10時間還流した。反応液を室温まで冷却し、これにトルエンを加え、これを1N−塩酸、水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて溶媒を留去した。ヘプタンを展開溶媒として、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、減圧にて乾燥して4−プロピル−1−(3−クロロ−5−フルオロフェニル)ベンゼン(S1−6)24.9gを得た。このものの(S1−4)からの収率は91.1%であった。
【0229】
化合物(S1−7)の合成
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(S1−6) 15.0gとTHF 150mlとを加えて、−74℃まで冷却した。そこへ、1.60M n−ブチルリチウム,n−ヘキサン溶液 31.8mlを−74℃から−60℃の温度範囲で滴下し、さらに60分攪拌した。続いてジブロモジフルオロメタン 12.2gのTHF 20.0ml溶液を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、25℃に戻しつつ60分攪拌した。得られた反応混合物を氷水 150mlに注ぎ込み、混合した。トルエン 100mlを加え有機層と水層とに分離させ抽出操作を行い得られた有機層を分取し、続いて食塩水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をヘプタン/トルエン=4/1の混合溶媒を展開溶媒とし、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。溶媒を留去し乾燥させ、(S1−7)19.4gを得た。
【0230】
化合物(S1−9)の合成
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(S1−7) 6.0g、3,4,5−トリフルオロフェノール(S1−8) 1.5g、炭酸カリウム 2.8g、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) 100mlを加え、90℃で120分攪拌した。反応混合物を25℃に戻した後、氷水 50mlに注ぎ込み混合させ、トルエン 100mlを加え有機層と水層とに分離させ抽出操作を行い得られた有機層を分取し、続いて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、0.5N水酸化ナトリウム水溶液、食塩水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をヘプタンを展開溶媒とし、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらにヘプタン/ソルミックスA−11の混合溶媒からの再結晶により精製し、乾燥させ、(S1−9)2.2gを得た。(S1−9)の(S1−6)からの収率は30.6%であった。
【0231】
得られた化合物(S1−9)の相転移温度は以下の通りであった。
相転移温度(℃) :K 69.6 I 。
【0232】
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、 (S1−9)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDCl3である。化学シフトδ(ppm);7.55(m,1H),7.51(d,2H),7.33(dd,1H),7.30(d,2H),7.10(d、2H)、7.03〜7.00(m、2H),2.66(t、2H),1.73−1.64(m,2H),0.98(t,3H).
【0233】
液晶化合物(S1−9)の物性
前述した母液晶Aとして記載された4つの化合物を混合し、ネマチック相を有する母液晶Aを調製した。この母液晶Aの物性は以下のとおりであった。
上限温度(TNI)=71.7℃;誘電率異方性(Δε)=11.0;屈折率異方性(Δn)=0.137。
【0234】
母液晶A 85重量%と、実施例1で得られた(S1−9)の15重量%とからなる液晶組成物Bを調製した。得られた液晶組成物Bの物性値を測定し、測定値を外挿することで液晶化合物(S1−9)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
上限温度(TNI)=29.0℃;誘電率異方性(Δε)=44.4;屈折率異方性(Δn)=0.150。
これらのことから液晶化合物(S1−9)は、他の液晶化合物との優れた相溶性を有し、誘電率異方性(Δε)、屈折率異方性(Δn)の大きい化合物であることがわかった。
【0235】
(実施例2)
化合物(S2−2)の合成
化合物(S2−2)は、式(1−2A)において、RがCであり、L、L、およびLが全てフッ素であり、Xが−CFである化合物である。


【0236】
化合物(S2−2)の合成
(S1−6)から(S2−2)の合成は、実施例1の(S1−6)から(S1−9)を合成する手法に準じた。この時、(S1−8)に代えて、3,5−ジフロオロ−4−トリフロオロメチルフェノール(S2−1)を用いた。(S1−6)からの(S2−2)の収率は27.2%であった。得られた化合物(S2−2)の相転移温度は以下の通りであった。
相転移温度(℃) :K 98.9 I 。
【0237】
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、 (S2−2)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDCl3である。化学シフトδ(ppm);7.55(m,1H),7.50(d,2H),7.33(dd,1H),7.30(d,2H),7.10(d、2H)、7.01(d、2H),2.66(t、2H),1.72−1.67(m,2H),0.98(t,3H).
【0238】
液晶化合物(S2−2)の物性
前述した母液晶Aとして記載された4つの化合物を混合し、ネマチック相を有する母液晶Aを調製した。この母液晶Aの物性は以下のとおりであった。
上限温度(TNI)=71.7℃;誘電率異方性(Δε)=11.0;屈折率異方性(Δn)=0.137。
【0239】
母液晶A 95重量%と、実施例2で得られた(S2−2)の5重量%とからなる液晶組成物Cを調製した。得られた液晶組成物Cの物性値を測定し、測定値を外挿することで液晶化合物(S2−2)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
上限温度(TNI)=33.7℃;誘電率異方性(Δε)=57.7;屈折率異方性(Δn)=0.157。
これらのことから液晶化合物(S2−2)は、特に誘電率異方性(Δε)の大きい化合物であることがわかった。
【0240】
(実施例3)
化合物(S3−4)の合成
化合物(S3−4)は、式(1−1B)において、RがCであり、L、L、L、およびLが全てフッ素であり、Xがフッ素である化合物である。



合成スキームを下図に示す。


【0241】
化合物(S3−3)の合成
窒素雰囲気下の反応器へ、4−ブロモ−3−フルオロフェノール(S3−1)75.0g、3,4,5−トリフロオロフェニルボロン酸(S3−2)82.9g、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム13.6gと炭酸ナトリウム108.5gとジメトキシエタン/水=2/1(容積比)の混合溶媒1100ml加え、80℃まで加温し、4時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、これにトルエンを加え、これを1N−塩酸、水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて溶媒を留去した。ヘプタン/酢酸エチル=4/1を展開溶媒として、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、減圧にて乾燥した。得られた残分をヘプタンで再結晶して3−フロオロ−4−(3,4,5−トリフルオロフェニル)フェノール(S3−3)77.5gを得た。このものの(S3−1)からの収率は81.5%であった。
【0242】
化合物(S3−4)の合成
(S1−6)から(S3−4)の合成は、実施例1の(S1−6)から(S1−9)を合成する手法に準じた。この時、(S1−8)に代えて、3−フロオロ−4−(3,4,5−トリフルオロフェニル)フェノール(S3−3)を用いた。(S1−6)からの(S3−4)の収率は31.4%であった。得られた化合物(S3−4)の相転移温度は以下の通りであった。
相転移温度(℃) :K 128.3 N 161.1 I 。
【0243】
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、 (S3−4)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDCl3である。化学シフトδ(ppm);7.55(m,1H),7.51(d,2H),7.39(t,1H),7.33(dd,1H),7.30(d,2H),7.22〜7.16(m、4H)、7.10(d、2H),2.65(t、2H),1.71−1.67(m,2H),0.98(t,3H).
【0244】
液晶化合物(S3−4)の物性
母液晶A 95重量%と、実施例3で得られた(S3−4)の5重量%とからなる液晶組成物Dを調製した。得られた液晶組成物Dの物性値を測定し、測定値を外挿することで液晶化合物(S3−4)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
上限温度(TNI)=83.7℃;誘電率異方性(Δε)=47.7;屈折率異方性(Δn)=0.197。
これらのことから液晶化合物(S3−4)は、上限温度(TNI)が高いうえに、誘電率異方性(Δε)、屈折率異方性(Δn)の大きい化合物であることがわかった。
【0245】
(参考例1)
化合物(S4−4)の合成


【0246】
合成スキームを下図に示す。


【0247】
化合物(S4−2)の合成
窒素雰囲気下の反応器へ、4−(4−プロピルフェニル)−2−フルオロフェニルボロン酸(S4−1)55.0g、1−ブロモ−3−クロロ−5−フルオロベンゼン(S1−2)40.6g、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム3.4gと炭酸ナトリウム67.8gとトルエン/エタノール/水=3/3/1(容積比)の混合溶媒900ml加え、6時間還流した。反応液を室温まで冷却し、これにトルエンを加え、これを1N−塩酸、水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて溶媒を留去した。ヘプタンを展開溶媒として、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、減圧にて乾燥した。得られた残分をエタノール/酢酸エチル=10/1で再結晶して(S4−2)47.7gを得た。このものの(S1−2)からの収率は71.9%であった。
【0248】
化合物(S4−3)の合成
窒素雰囲気下の反応器へ、(S4−2)10.0gとTHF 100mlとを加えて、−74℃まで冷却した。そこへ、1.60M n−ブチルリチウム,n−ヘキサン溶液 22.3mlを−74℃から−60℃の温度範囲で滴下し、さらに60分攪拌した。続いて粉砕したドライアイス(二酸化炭素)6.4gを徐々に加えた。反応液を0℃まで徐々に加温し、6N−HCl50mlを滴下し、1時間撹拌した。反応液に酢酸エチルを加え有機層と水層とに分離させ抽出操作を行い得られた有機層を分取し、続いて食塩水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をエタノールで再結晶して、(S4−3)6.8gを得た。(S4−2)からの(S4−3)の収率は59.8%であった。
【0249】
化合物(S4−4)の合成
窒素雰囲気下の反応器へ、(S4−3)2.2g、3,4,5−トリフルオロフェノール(S1−8)0.88g、ジメチルアミノピリジン(DMAP)0.07g、塩化メチレン100mlを加え、0℃まで冷却した。ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)の塩化メチレン30ml溶液を滴下し、4時間そのままの温度で撹拌した後、室温まで加温し15時間撹拌した。反応液を吸引ろ過し、ろ液を1N−塩酸、飽和重曹水、水でこの順に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を減圧下で濃縮し、残渣をヘプタン/酢酸エチル=4/1を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらにヘプタン/酢酸エチル=10/1で再結晶して、(S4−4)2.2gを得た。(S4−3)からの(S4−4)の収率は75.2%であった。
【0250】
得られた化合物(S4−4)の相転移温度は以下の通りであった。
相転移温度(℃) :K 78.6 N 155.0 I 。
【0251】
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、(S4−4)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDCl3である。
【0252】
化学シフトδ(ppm);7.56〜7.53(m,3H),7.51〜7.49(m,2H),7.43(d,1H),7.40(d,1H),7.30(d,2H),7.06〜7.01(m、2H)、2.65(t、2H),1.74−1.66(m,2H),0.99(t,3H).
【0253】
液晶化合物(S4−4)の物性
母液晶A 85重量%と、参考例1で得られた(S4−4)の15重量%とからなる液晶組成物Eを調製した。得られた液晶組成物Eの物性値を測定し、測定値を外挿することで液晶化合物(S4−4)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
上限温度(TNI)=93.7℃;誘電率異方性(Δε)=37.0;屈折率異方性(Δn)=0.204。

(参考例2)
化合物(S5−2)の合成


【0254】
合成スキームを下図に示す。



化合物(S5−2)の合成
(S4−3)から(S5−2)の合成は、参考例1の(S4−3)から(S4−4)を合成する手法に準じた。この時、(S1−8)に代えて、4−クロロ−3,5−ジフロオロフェノール(S5−1)を用いた。(S4−3)からの(S5−2)の収率は90.3%であった。得られた化合物(S5−2)の相転移温度は以下の通りであった。
相転移温度(℃) :K 95.4 N 192.0 I 。
【0255】
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、 (S5−2)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDCl3である。化学シフトδ(ppm);7.56〜7.54(m,3H),7.50〜7.49(m,2H),7.44(d,1H),7.40(d,1H),7.30(d,2H),7.06〜7.03(m、2H)、2.66(t、2H),1.73−1.66(m,2H),0.99(t,3H).
【0256】
液晶化合物(S5−2)の物性
母液晶A 85重量%と、参考例2で得られた(S5−2)の15重量%とからなる液晶組成物Fを調製した。得られた液晶組成物Fの物性値を測定し、測定値を外挿することで液晶化合物(S5−2)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
上限温度(TNI)=110.4℃;誘電率異方性(Δε)=33.7;屈折率異方性(Δn)=0.224。

(参考例3)
化合物(S6−2)の合成


【0257】
合成スキームを下図に示す。



化合物(S6−1)の合成
(S1−3)から(S6−1)の合成は、参考例1の(S4−2)から(S4−3)を合成する手法に準じた。この時、(S4−2)に代えて、(S1−3)を用いた。(S1−3)からの(S6−1)の収率は95.0%であった。
化合物(S6−2)の合成
(S6−1)から(S6−2)の合成は、参考例1の(S4−3)から(S4−4)を合成する手法に準じた。この時、(S4−3)に代えて、(S6−1)を用いた。(S6−1)からの(S6−2)の収率は77.5%であった。得られた化合物(S6−2)の相転移温度は以下の通りであった。
相転移温度(℃) :K 62.6 I 。
【0258】
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、 (S6−2)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDCl3である。化学シフトδ(ppm);7.51〜7.48(m,3H),7.32(dd,1H),7.29(d,2H),7.02〜6.99(m、2H)、2.65(t、2H),1.71−1.66(m,2H),0.97(t,3H).
【0259】
液晶化合物(S6−2)の物性
母液晶A 85重量%と、参考例3で得られた(S6−2)の15重量%とからなる液晶組成物Gを調製した。得られた液晶組成物Gの物性値を測定し、測定値を外挿することで液晶化合物(S6−2)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
上限温度(TNI)=−9.6℃;誘電率異方性(Δε)=28.3;屈折率異方性(Δn)=0.104。

(参考例4)
化合物(S7−2)の合成


【0260】
合成スキームを下図に示す。



化合物(S7−2)の合成
(S6−1)から(S7−2)の合成は、参考例3の(S6−1)から(S6−2)を合成する手法に準じた。この時、(S1−8)に代えて、3,5−ジフルオロ−4−トリフルオロメトキシフェノール(S7−1)を用いた。(S6−1)からの(S7−2)の収率は74.4%であった。得られた化合物(S7−2)の相転移温度は以下の通りであった。
相転移温度(℃) :K 66.0 I 。
【0261】
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、 (S7−2)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDCl3である。化学シフトδ(ppm);7.53〜7.49(m,3H),7.33(dd,1H),7.30(d,2H),7.07〜7.05(m、2H)、2.65(t、2H),1.71−1.66(m,2H),0.98(t,3H).
【0262】
液晶化合物(S7−2)の物性
母液晶A 85重量%と、参考例4で得られた(S7−2)の15重量%とからなる液晶組成物Hを調製した。得られた液晶組成物Hの物性値を測定し、測定値を外挿することで液晶化合物(S7−2)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
上限温度(TNI)=4.4℃;誘電率異方性(Δε)=31.7;屈折率異方性(Δn)=0.110。

(参考例5)
化合物(S8−1)の合成


【0263】
合成スキームを下図に示す。



化合物(S8−1)の合成
(S6−1)から(S8−1)の合成は、参考例3の(S6−1)から(S6−2)を合成する手法に準じた。この時、(S1−8)に代えて、3,5−ジフロオロ−4トリフロオロメチルフェノール(S2−1)を用いた。(S6−1)からの(S8−1)の収率は82.9%であった。得られた化合物(S8−1)の相転移温度は以下の通りであった。
相転移温度(℃) :K 85.9 I 。
【0264】
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、 (S8−1)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDCl3である。化学シフトδ(ppm);7.53〜7.48(m,3H),7.33(dd,1H),7.30(d,2H),7.06〜7.04(m、2H)、2.65(t、2H),1.71−1.66(m,2H),0.97(t,3H).
【0265】
液晶化合物(S8−1)の物性
母液晶A 90重量%と、参考例5で得られた(S8−1)の10重量%とからなる液晶組成物Iを調製した。得られた液晶組成物Iの物性値を測定し、測定値を外挿することで液晶化合物(S8−1)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
上限温度(TNI)=−6.3℃;誘電率異方性(Δε)=40.7;屈折率異方性(Δn)=0.117。

(参考例6)
化合物(S9−1)の合成


【0266】
合成スキームを下図に示す。



化合物(S9−1)の合成
(S6−1)から(S9−1)の合成は、参考例3の(S6−1)から(S6−2)を合成する手法に準じた。この時、(S1−8)に代えて、(S3−3)を用いた。(S6−1)からの(S9−1)の収率は63.3%であった。得られた化合物(S9−1)の相転移温度は以下の通りであった。
相転移温度(℃) :K 101.2 N 139.2 I 。
【0267】
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、 (S8−1)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDCl3である。化学シフトδ(ppm);7.53〜7.49(m,3H),7.45(t,1H),7.33(dd,1H),7.30(d,2H),7.22〜7.17(m、4H)、2.66(t、2H),1.71−1.67(m,2H),0.98(t,3H).
【0268】
液晶化合物(S9−1)の物性
母液晶A95重量%と、参考例6で得られた(S9−1)の5重量%とからなる液晶組成物Jを調製した。得られた液晶組成物Jの物性値を測定し、測定値を外挿することで液晶化合物(S9−1)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
上限温度(TNI)=69.7℃;誘電率異方性(Δε)=33.7;屈折率異方性(Δn)=0.177。
【0269】
(実施例4)
化合物(S10−1)の合成
化合物(S10−1)は、式(1−2A)において、RがC11であり、L、L、およびLが全てフッ素であり、Xが−CFである化合物である。


【0270】
化合物(S10−1)の合成
(S10−1)の合成は、実施例1の(S1−1)から(S1−9)を合成する手法に準じた。この時、(S1−1)に代えて、4−ペンチルフェニルボロン酸を用い、(S1−8)に代えて、3,5−ジフロオロ−4−トリフロオロメチルフェノール(S2−1)を用いた。得られた化合物(S10−1)の相転移温度は以下の通りであった。
相転移温度(℃) :K 102 I 。
【0271】
液晶化合物(S10−1)の物性
母液晶A95重量%と、実施例4で得られた(S10−1)の5重量%とからなる液晶組成物Kを調製した。得られた液晶組成物Kの物性値を測定し、測定値を外挿することで液晶化合物(S10−1)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
上限温度(TNI)=33.7℃;誘電率異方性(Δε)=56.2;屈折率異方性(Δn)=0.157。
これらのことから液晶化合物(S10−1)は、誘電率異方性(Δε)と屈折率異方性(Δn)の大きい化合物であることがわかった。
【0272】
(本件発明の組成物)
本発明において、液晶組成物の特性値の測定は下記の方法にしたがって行うことができる。それらの多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。測定に用いたTN素子には、TFTを取り付けなかった。
【0273】
ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0274】
ネマチック相の下限温度(TC;℃):ネマチック相を有する試料を0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶(またはスメクチック相)に変化したとき、TCを≦−20℃と記載する。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0275】
光学的に等方性の液晶相の転移温度:偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、クロスニコルの状態で、まず試料が非液晶等方相になる温度まで昇温した後、1℃/分の速度で降温し、完全にキラルネマチック相または光学的に等方性の液晶相を出現させた。その降温過程での相転移した温度を測定し、次いで1℃/分の速度で昇熱し、その昇温過程における相転移した温度を測定した。本発明において、特に断りの無い限り、昇温過程での相転移した温度を相転移温度とした。光学的に等方性の液晶相においてクロスニコル下では暗視野で相転移温度の判別が困難な場合は、偏光板をクロスニコルの状態から1〜10°ずらして相転移温度を測定した。
【0276】
粘度(η;20℃で測定;mPa・s):測定にはE型粘度計を用いた。
【0277】
回転粘度(γ1;25℃で測定;mPa・s):
1)誘電率異方性が正である試料:測定はM. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。ツイスト角が0°であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。TN素子に16ボルトから19.5ボルトの範囲で0.5ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文の40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算で必要な誘電率異方性の値は、この回転粘度の測定で使用した素子にて、下記の誘電率異方性の測定方法で求めた。
【0278】
2)誘電率異方性が負である試料:測定はM. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmのVA素子に試料を入れた。この素子に30ボルトから50ボルトの範囲で1ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算に必要な誘電率異方性は、下記の誘電率異方性で測定した値を用いた。
【0279】
屈折率異方性(Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビング(rubbing)したあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。屈折率異方性の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。試料が組成物のときはこの方法によって屈折率異方性を測定した。試料が化合物のときは、化合物を適切な組成物に混合したあと屈折率異方性を測定した。化合物の屈折率異方性は外挿値である。
【0280】
誘電率異方性(Δε;25℃で測定):試料が化合物のときは、化合物を適切な組成物に混合したあと誘電率異方性を測定した。化合物の誘電率異方性は外挿値である。
1)誘電率異方性が正である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μm、ツイスト角が80度の液晶セルに試料を入れた。このセルに20ボルトを印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。0.5ボルトを印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0281】
2)誘電率異方性が負である組成物:ホメオトロピック配向に処理した液晶セルに試料を入れ、0.5ボルトを印加して誘電率(ε‖)を測定した。ホモジニアス配向に処理した液晶セルに試料を入れ、0.5ボルトを印加して誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0282】
しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):試料が化合物のときは、化合物を適切な組成物に混合したあとしきい値電圧を測定した。化合物のしきい値電圧は外挿値である。1)誘電率異方性が正である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が(0.5/Δn)μmであり、ツイスト角が80度である、ノーマリーホワイトモード(normally white mode)の液晶表示素子に試料を入れた。Δnは上記の方法で測定した屈折率異方性の値である。この素子に周波数が32Hzである矩形波を印加した。矩形波の電圧を上昇させ、素子を通過する光の透過率が90%になったときの電圧の値を測定した。
【0283】
2)誘電率異方性が負である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μmであり、ホメオトロピック配向に処理したノーマリーブラックモード(normally black mode)の液晶表示素子に試料を入れた。この素子に周波数が32Hzである矩形波を印加した。矩形波の電圧を上昇させ、素子を通過する光の透過率10%になったときの電圧の値を測定した。
【0284】
電圧保持率(VHR;25℃で測定;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は6μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線によって重合する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。
【0285】
らせんピッチ(20℃で測定;μm):らせんピッチの測定には、カノのくさび型セル法を用いた。カノのくさび型セルに試料を注入し、セルから観察されるディスクリネーションラインの間隔(a;単位はμm)を測定した。らせんピッチ(P)は、式P=2・a・tanθから算出した。θは、くさび型セルにおける2枚のガラス板の間の角度である。
【0286】
あるいは、ピッチ長は選択反射を用いて測定した(液晶便覧196頁(2000年発行、丸善)。選択反射波長λには、関係式<n>p/λ=1が成立する。ここで<n>は平均屈折率を表し、次式で与えられる。<n>={(n‖2+n⊥2)/2}1/2。選択反射波長は顕微分光光度計(日本電子(株)、商品名MSV-350)で測定した。得られた反射波長を平均屈折率で除すことにより、ピッチを求めた。
可視光より長波長領域に反射波長を有するコレステリック液晶のピッチは、キラル剤濃度が低い領域ではキラル剤の濃度の逆数に比例することから、可視光領域に選択反射波長を有する液晶のピッチ長を数点測定し、直線外挿法により求めた。
【0287】
成分または液晶化合物の割合(百分率)は、液晶化合物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。組成物は、液晶化合物などの成分の重量を測定してから混合することによって調製される。したがって、成分の重量%を算出するのは容易である。
【0288】
(組成例1)
下図に示す液晶化合物を、下記の割合で混合することにより液晶組成物Aを調製した。
構造式の右側に一般式との対応を記した。本件化合物については化合物番号を記した。

液晶組成物A


【0289】
次に、液晶組成物A(94wt%)と、下記の式で表されるキラル剤ISO−60BA2(6wt%)からなる液晶組成物Bを得た。
なお、ISO−60BA2は、イソソルバイドと4−ヘキシルオキシ安息香酸とをジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、4−ジメチルアミノピリジン存在下でエステル化することによって得た。
ISO−6OBA2


【0290】
(使用例1)
モノマーと液晶組成物の混合物の調製
液晶組成物とモノマーとの混合物として液晶組成物Bを79.4重量%、n−ドデシルアクリレートを10.0重量%、1,4−ジ(4−(6−(アクリロイルオキシ)ヘキシルオキシ)ベンゾイルオキシ)−2−メチルベンゼンを10.0重量%、光重合開始剤として2,2’−ジメトキシフェニルアセトフェノンを0.6重量%混合した液晶組成物C−1Mを調製した。
【0291】
高分子/液晶複合材料の調製
液晶組成物C−1Mを配向処理の施されていない櫛型電極基板と対向ガラス基板(非電極付与)の間に狭持し(セル厚10μm)、得られたセルを63.0℃の非液晶等方相まで加熱した。この状態で、紫外光(紫外光強度23mWcm−2(365nm))を1分間照射して、重合反応を行った。
【0292】
このようにして得られた高分子/液晶複合材料C−1Pは室温まで冷却しても光学的に等方性の液晶相を維持していた。
【0293】
なお、図1に示すように、櫛型電極基板の電極は、左側から伸びる電極1と右側から伸びる電極2が交互に配置される。したがって、電極1と電極2との間に電位差がある場合、図1に示すような櫛型電極基板上では、上方向と下方向の2つの方向の電界が存在する状態を提供できる。
【0294】
(使用例2)
使用例1で得られた高分子/液晶複合材料C−1Pが狭持されたセルを、図2に示した光学系にセットし、電気光学特性を測定した。光源として偏光顕微鏡(ニコン製 エクリプス LV100POL)の白色光源を用い、セルへの入射角度がセル面に対して垂直となるようにし、櫛型電極の線方向がPolarizerとAnalyzer偏光板に対してそれぞれ45°となるように前記セルを光学系にセットした。測定温度を透明点(59.1℃)−40℃=19.1℃として印加電圧と透過率の関係を調べた。47.6Vの矩形波を印加すると、透過率が80%となり、透過光強度は飽和した。
【産業上の利用可能性】
【0295】
本発明の活用法として、たとえば、液晶媒体を用いる表示素子などの光素子が挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物。



式(1)において、Rは水素または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中およびアルキル中の任意の−CH−が、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられた基中の任意の水素はハロゲンまたは炭素数1〜3のアルキルで置き換えられてもよく;Z、Z、Z、Z、およびZは独立して、単結合、または−CFO−であるが、すべて単結合であることはなく;L、L、L、LおよびLは独立して、水素またはフッ素であり;Xは水素、ハロゲン、−C≡N、−N=C=S、−C≡C−C≡N、−SF、または炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH−は、−O−、−S−、−CH=CH−、または−C≡C−により置き換えられてもよく、そして任意の水素はハロゲンにより置き換えられてもよく;mは0、1または2であり、n、およびoは独立して、0または1であり、1≦m+n+o≦2であり;mが2である場合は、LおよびZはそれぞれ異なっていてもよい。
【請求項2】
式(1)において、Rは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH−は、−O−、−COO−、または−CH=CH−で置き換えられてもよく;Xはハロゲン、−C≡N、−N=C=S、または2個以上の水素原子がフッ素で置き換えられた炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH−は、−O−、−S−、−CH=CH−、または−C≡C−により置き換えられてもよい;である請求項1に記載の液晶化合物。
【請求項3】
式(1)において、Rが炭素数1〜20のアルキル、炭素数2〜21のアルケニルまたは炭素数1〜19のアルコキシであり;Xがフッ素、塩素、−CF、または−OCFである請求項1または2に記載の液晶化合物。
【請求項4】
式(1)において、Rが炭素数1〜20のアルキルであり;Xがフッ素、塩素または−CFである請求項1〜3のいずれかに記載の液晶化合物。
【請求項5】
m+n+o=1である請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶化合物。
【請求項6】
m+n+o=2である請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶化合物。
【請求項7】
式(1−1B)、(1−1C)、(1−1E)、(1−1F)、および(1−2A)〜(1−2C)のいずれかで表される、請求項1〜4に記載の液晶化合物。




(これらの式において、Rは式(CHN−1)〜(CHN−8)で表される構造であり、ここでR1aは水素または炭素数1〜10のアルキルであり;Xはフッ素、塩素、−CF、−OCFである。)


【請求項8】
式(1−1B)、(1−1E)、および(1−2A)〜(1−2C)において、Rが式(CHN−1)〜(CHN−6)で表される構造であり、式(CHN−1)〜(CHN−6)中のR1aは水素または炭素数1〜10のアルキルであり、Xがフッ素、塩素、−CF、−OCFである、請求項7に記載の液晶化合物。
【請求項9】
式(1−1B)、(1−1E)、および(1−2A)〜(1−2C)において、Rが式(CHN−1)〜(CHN−6)で表される構造であり、式(CHN−1)〜(CHN−6)中のR1aは水素または炭素数1〜10のアルキルであり、Xがフッ素、塩素、−CF、または−OCFであり、LおよびLが共にフッ素である、請求項7に記載の液晶化合物。
【請求項10】
式(1−1B−a)または(1−2A−a)で表される液晶化合物。



(これらの式中、Rは炭素数1〜20のアルキル、または炭素数2〜20のアルケニルであり、Xはフッ素または−CFである)
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物およびキラル剤を含有し、光学的に等方性の液晶相を発現することを特徴とする液晶組成物。
【請求項12】
式(2)、(3)および(4)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項11に記載の液晶組成物。



これらの式において、Rは炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;Xはフッ素、塩素、−OCF3、−OCHF2、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF2CHF2、または−OCF2CHFCF3であり;環B、環B、および環Bは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、または任意の水素がフッ素または塩素で置き換えられたナフタレン−2,6−ジイルであり;ZおよびZは独立して、−(CH22−、−(CH24−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素である。
【請求項13】
式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項11に記載の液晶組成物。



これらの式において、Rは炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;Xは−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;環C、環Cおよび環Cは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、任意の水素がフッ素または塩素で置き換えられたナフタレン−2,6−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;Zは−(CH22−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素であり;rは1または2であり、sは0または1であり、r+s=0、1または2である。
【請求項14】
式(6)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項11に記載の液晶組成物。



これらの式において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;環D、環D、および環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;Z10は、−C≡C−、−COO−、−(CH22−、−CH=CH−、または単結合である。
【請求項15】
請求項13に記載の式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項12に記載の液晶組成物。
【請求項16】
式(6)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項12に記載の液晶組成物。
【請求項17】
式(6)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項13に記載の液晶組成物。
【請求項18】
式(7)、(8)、(9)および(10)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項11に記載の液晶組成物。



これらの式において、Rは炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニルまたは炭素数2〜10のアルキニルであり、アルキル、アルケニルおよびアルキニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;Xはフッ素、塩素、−SF、−OCF3、−OCHF2、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF2CHF2、または−OCF2CHFCF3であり;環E、環E、環Eおよび環Eは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、任意の水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4−フェニレン、または任意の水素がフッ素または塩素で置き換えられたナフタレン−2,6−ジイルであり;Z11、Z12およびZ13は独立して、−(CH22−、−(CH24−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、または単結合である、ただし、環E、環E、環Eおよび環Eのいずれかが3−クロロ−5−フルオロ−1,4−フェニレンであるときには、Z11、Z12およびZ13は−CF2O−であることはなく;L10およびL11は独立して、水素またはフッ素である。
【請求項19】
式(11)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項11に記載の液晶組成物。



これらの式において、Rは炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニルまたは炭素数2〜10のアルキニルであり、アルキル、アルケニルおよびアルキニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;Xは−C≡N、−N=C=S、または−C≡C−C≡Nであり;環F、環Fおよび環Fは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、任意の水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、任意の水素がフッ素または塩素で置き換えられたナフタレン−2,6−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;Z14は−(CH22−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;L12およびL13は独立して、水素またはフッ素であり;aaは0、1または2であり、abは0または1であり、aa+abは0、1または2である。
【請求項20】
少なくとも1つの酸化防止剤および/または紫外線吸収剤を含む請求項11〜19のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項21】
光学的に等方性の液晶相が二色以上の回折光を示さない、請求項11〜20のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項22】
光学的に等方性の液晶相が二色以上の回折光を示す、請求項11〜20のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項23】
液晶組成物が、キラルネマチック相と非液晶等方相とが共存する上限温度と下限温度との差が3〜150℃である組成物にキラル剤を添加して得られるものである、請求項21または22に記載の液晶組成物。
【請求項24】
液晶組成物が、キラルネマチック相と非液晶等方相とが共存する上限温度と下限温度との差が5〜150℃である組成物にキラル剤を添加して得られるものである、請求項21または22に記載の液晶組成物。
【請求項25】
液晶組成物が、ネマチック相と非液晶等方相とが共存する上限温度と下限温度との差が3〜150℃である組成物にキラル剤を添加して得られるものである、請求項21または22に記載の液晶組成物。
【請求項26】
液晶組成物の全重量に対して、キラル剤の割合が1〜40重量%である、請求項11〜25のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項27】
液晶組成物の全重量に対して、キラル剤の割合が5〜15重量%である、請求項11〜25のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項28】
70〜−20℃のいずれかの温度においてカイラルネマチック相を示し、この温度範囲の少なくとも一部において螺旋ピッチが700nm以下である、請求項26または27に記載の液晶組成物。
【請求項29】
キラル剤が、式(K1)〜(K5)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を含む、請求項26〜28のいずれか1項に記載の液晶組成物。



(式(K1)〜(K5)中、Rは独立に、水素、ハロゲン、−C≡N、−N=C=O、−N=C=Sまたは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;Aは独立に、芳香族性あるいは非芳香族性の3ないし8員環、または、炭素数9以上の縮合環であり、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたはハロアルキルで置き換えられてもよく、環の−CH−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;Bは独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、炭素数1〜3のハロアルキル、芳香族性または非芳香族性の3から8員環、または炭素数9以上の縮合環であり、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたはハロアルキルで置き換えられてもよく、−CH−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;Zは独立に、単結合、炭素数1〜8のアルキレンであるが、任意の−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
Xは単結合、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、または−CHCH−であり;
mKは1〜4の整数である。)
【請求項30】
キラル剤が、式(K2−1)〜(K2−8)、(K4−1)〜(K4−6)および(K5−1)〜(K5−3)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を含む、請求項26〜28のいずれか1項に記載の液晶組成物。









(Rは独立に、炭素数3〜10のアルキルであり、このアルキル中の環に隣接する−CH−は−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH−は、−CH=CH−で置き換えられてもよい。)
【請求項31】
請求項11〜30のいずれかに記載の液晶組成物と、重合性モノマーとを含む混合物。
【請求項32】
重合性モノマーが光重合性モノマーまたは熱重合性モノマーである、請求項31に記載の混合物。
【請求項33】
請求項31または32に記載の混合物を重合して得られる、光学的に等方性の液晶相で駆動される素子に用いられる高分子/液晶複合材料。
【請求項34】
請求項31または32に記載の混合物を非液晶等方相または光学的に等方性の液晶相で重合させて得られる、請求項33に記載の高分子/液晶複合材料。
【請求項35】
高分子/液晶複合材料に含まれる高分子がメソゲン部位を有する、請求項33または34に記載の高分子/液晶複合材料。
【請求項36】
高分子/液晶複合材料に含まれる高分子が架橋構造を有する、請求項33〜35のいずれかに記載の高分子/液晶複合材料。
【請求項37】
液晶組成物の割合が60〜99重量%であり、高分子の割合が1〜40重量%である、請求項33〜36のいずれか1項に記載の高分子/液晶複合材料。
【請求項38】
一方または両方の面に電極が配置され、基板間に配置された液晶媒体、および電極を介して液晶媒体に電界を印加する電界印加手段を備えた光素子であって、液晶媒体が、請求項26〜30のいずれか1項に記載の液晶組成物または請求項33〜37のいずれか1項に記載の高分子/液晶複合材料である光素子。
【請求項39】
一方または両方の面に電極が配置され、少なくとも一方が透明な一組の基板、基板間に配置された液晶媒体、および基板の外側に配置された偏光板を有し、電極を介して液晶媒体に電界を印加する電界印加手段を備えた光素子であって、液晶媒体が、請求項26〜30のいずれか1項に記載の液晶組成物または請求項33〜37のいずれか1項に記載の高分子/液晶複合材料である光素子。
【請求項40】
一組の基板の少なくとも一方の基板上において、少なくとも2方向に電界を印加できるように電極が構成されている請求項39に記載の光素子。
【請求項41】
互いに平行に配置された一組の基板の一方または両方に、少なくとも2方向に電界を印加できるように電極が構成されている請求項39に記載の光素子。
【請求項42】
電極がマトリックス状に配置されて、画素電極を構成し、各画素がアクティブ素子を備え、このアクティブ素子が薄膜トランジスター(TFT)である請求項38〜41のいずれか1項に記載の光素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−1342(P2011−1342A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94824(P2010−94824)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】