説明

クーラントポンプ装置

【課題】モータに発生した発熱がポンプに伝わらないように遮断し、クーラント液の温度上昇を抑えることができるクーラントポンプ装置を提供する。
【解決手段】クーラント液Aを収納するタンク12の内部に、モータ13で駆動されるポンプ14を配置し、このポンプ14でタンク12内のクーラント液Aを外部に取出すようにしたクーラントポンプ装置であって、前記ポンプ14のシャフト15とモータ13のシャフト16をタンク12の外部で分断させ、ポンプ14のシャフト15をタンク12の上部に設置した軸方向に長い軸受22で支持し、両シャフト15と16を断熱効果の高い合成樹脂等の軸継手17で接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械の加工部分を冷却して戻ってきたダーティークーラント液を、このダーティークーラント液に含まれる異物を除去する処理装置に送り出したり、貯留したダーティークーラント液を攪拌するクーラントポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の加工部分を冷却して戻ってきたダーティークーラント液(以下単にクーラント液という)は、クーラントタンクに一度貯留し、このタンク内のクーラント液を、クーラントポンプで濾過器やマグネットセパレータ等のスラッジ除去装置に送り、この装置で切り屑や砥粒などのスラッジを除去し、清浄なクーラント液にして工作機械の加工部分に供給するものである。
【0003】
従来のクーラントポンプ装置は、図4のように、タンク1の内部にポンプ2を収納すると共に、タンク1の上部外側にモータ3を設置し、モータ3はタンク1の上部に重ねて設けた取付け台4に固定し、ポンプ2は筒軸5を用いてタンク1の上部から吊り下げ状に取付け、タンク1内の下部でクーラント液Aに浸漬する配置となり、このポンプ2とモータ3のシャフト6は一体構造となり、モータ3のシャフト6を延長してその先端に羽根車7を取付けた構造になっている。
【0004】
上記クーラントポンプ装置は、クーラント液Aの戻りパイプ8でタンク1内に蓄えられ、ポンプ2はモータ3の起動による羽根車7の回転により、下部の吸引口9からクーラント液Aを吸引し、吐出口に接続した送り出し管10でスラッジ除去装置に送りだすことになる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ところで、クーラントポンプ装置は、処理能力を高めるため、スラッジをタンクの底に溜めることなくスラッジ除去装置に送り出す必要があり、図示省略したが、タンク1内のクーラント液Aの攪拌を行い、スラッジの沈殿を防止する方法が採られている。
【0006】
沈殿防止の攪拌は、工作機械運転中は連続で行われるため、ポンプ2を駆動するモータ3の発熱や、攪拌による発熱でクーラント液Aの温度は上昇する。
【0007】
ところで、工作機械の加工精度を上げるためには、ワークにかけるクーラント液Aの温度を一定にする必要があり、チラー等を使ってクーラント液の温度を制御している。
【特許文献1】特開2004−50397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のクーラントポンプ装置は、モータ3とポンプ2のシャフト6が一体構造になっているので、モータ3に発生した発熱は、シャフト6を介してポンプ2に直接伝わることになり、このため、ポンプ2が浸漬するクーラント液Aの温度上昇を招くという問題がある。
【0009】
そこで、この発明の課題は、上記のような問題点を解決するため、モータに発生した発熱がポンプに伝わらないように遮断し、クーラント液の温度上昇を抑えることができるクーラントポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような課題を解決するため、この発明は、クーラント液を収納するタンクの内部に、容器上に位置するモータで駆動されるポンプを配置し、このポンプでタンク内のクーラント液を外部に取出したり攪拌するようにしたクーラントポンプ装置において、前記ポンプのシャフトとモータのシャフトを分断させ、両シャフトを断熱機能のある軸継手で接続した構成を採用したものである。
【0011】
また、上記ポンプのシャフトを、タンクの上部に設置した軸方向に長い軸受で支持した構造としたり、上記軸継手が、断熱効果の高い合成樹脂等を用いて形成されている構造とすることができる。
【0012】
ここで、上記ポンプは、垂直の筒軸を用いてタンクの上部から吊り下げ状に取付け、タンク内の下部でクーラント液に浸漬する配置となり、このポンプのシャフトは、筒軸内に納まり、その上部がタンクの上部に設置した軸方向に長い軸受で回転可能に支持され、下部先端に羽根車が取付けられている。
【0013】
上記軸受は、タンク上に固定した筒型ケースの内部で上下の位置に、シャフトを支持するベアリングを組み込んで形成され、このような軸受によるシャフトの支持により、シャフトの長さを長くして熱伝達性を低くしている。
【0014】
上記モータは、軸受における筒型ケースの上端に設置され、このモータのシャフトとポンプのシャフトが同軸心の配置となり、両シャフトを繋ぐ軸継手は、断熱効果の高いナイロンやPPSの合成樹脂等を用いたカップリングとこれにスプライン結合した中間部材を用い、カップリングを両シャフトに外嵌し、カップリング及び中間部材と両シャフトをそれぞれキー結合することにより両シャフトを連動させている。
【発明の効果】
【0015】
この発明によると、ポンプのシャフトとモータのシャフトを分断させ、両シャフトを断熱機能のある軸継手で接続したので、モータに発生した発熱がシャフトを介してポンプに伝わりにくいように遮断することができ、モータの発熱によるクーラント液の温度上昇を抑えることができる。
【0016】
また、モータに発生した発熱をポンプに伝わりにくいように遮断するので、その分モータに出力の大きなものを採用することができ、粘性のあるクーラント液の送り出しや攪拌が円滑に行えると共に、ポンプとモータは軸継手の部分で分離できるので、モータが故障した場合にモータだけの取換えで対応でき、経済的である。
【0017】
更に、ポンプのシャフトを軸方向に長い軸受で支持し、この軸受の上にモータを取付けたので、長い軸受の介在によりモータの熱がタンクに伝わるのを少なくすると共に、ポンプのシャフトの長さを長く設定することで、モータからポンプへの熱伝達性を低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1のように、クーラントポンプ装置は、クーラント液Aの戻りパイプ11で送られてきたクーラント液Aを収納するタンク12の内部に、タンク12上に位置するモータ13で駆動されるポンプ14をクーラント液Aに浸漬するよう配置し、前記ポンプ14のシャフト15とモータ13のシャフト16はタンク12の外部で上下に分断させ、両シャフト15と16を断熱機能のある軸継手17で着脱自在に接続し、前記ポンプ14のケーシング18に形成した下部の吸引口19がタンク12の低部に接近して開口し、ケーシング18の吐出口に接続した取出し管20をタンク12の外部に導出させた構造になっている。
【0020】
上記ポンプ14は、垂直の筒軸21を用いてタンク12の上部から吊り下げ状に取付け、タンク12内の下部でクーラント液Aに浸漬する配置となり、このポンプ14のシャフト15は、筒軸21内に納まり、その上部がタンク12の上部に設置した軸方向に長い軸受22で回転可能に支持され、下部先端に羽根車23が取付けられている。
【0021】
上記モータ13は、軸受22における筒型ケース24の上端に設置され、このモータ13のシャフト16とポンプ14のシャフト15が同軸心の配置となり、両シャフト15と16をつなぐ軸継手17は、図3のように、断熱効果の高いナイロンやPPSの合成樹脂等を用いたカップリング25を両シャフト15と16に外嵌し、このカップリング25内に同様の材質を用いた中間部材26をスプライン結合し、前記カップリング25と中間部材26を、両シャフト15と16に対してそれぞれキー結合することにより両シャフト15と16を連動させている。
【0022】
上記軸受22は、タンク12上に固定した筒型ケース24の内部で上下の位置に、ポンプ14のシャフト15を支持するベアリング27、27を組み込んで形成され、このような上下に長い軸受22によるシャフト15の支持により、モータ13の熱がタンク12に伝わるのを少なくすると共に、ポンプ14のシャフト15の長さを長くして、モータ13からポンプ14への熱伝達性を低くしている。
【0023】
この発明のクーラントポンプ装置は、上記のような構成であり、モータ13を起動してクーラント液Aに浸漬するポンプ14の羽根車23を回転させると、ポンプ14の羽根車23と渦巻き室の作用でクーラント液Aを吸引して送り出すことになり、タンク12内のクーラント液Aは吐出口に接続した取出し管20で、マグネットセパレータや濾過機等を用いた処理装置に向けて送られることになる。
【0024】
なお、ポンプ14は、羽根車23の回転で、タンク12内のクーラント液Aを攪拌する機能を有するものであってもよい。
【0025】
上記モータ13のシャフト16とポンプ14のシャフト15は、上下に分断され、断熱効果の高い軸継手17で繋がれているので、モータ13の起動により発生した熱でシャフト16の温度が上昇しても、分断されているポンプ14のシャフト15には伝わりにくく、従って、タンク12内のクーラント液Aの温度がモータ13の熱で上昇するのを防ぐことができ、チラー等を使ってクーラント液Aの温度を制御する場合のコスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明に係るクーラントポンプ装置の縦断正面図
【図2】この発明に係るクーラントポンプ装置の軸継手部分を拡大した縦断正面図
【図3】この発明に係るクーラントポンプ装置の軸継手部分を示す分解斜視図
【図4】従来のクーラントポンプ装置の縦断正面図
【符号の説明】
【0027】
11 戻りパイプ
12 タンク
13 モータ
14 ポンプ
15 シャフト
16 シャフト
17 軸継手
18 ケーシング
19 吸引口
20 取出し管
21 筒軸
22 軸受
23 羽根車
24 筒型ケース
25 カップリング
26 中間部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クーラント液を収納するタンクの内部に、容器上に位置するモータで駆動されるポンプを配置し、このポンプでタンク内のクーラント液を外部に取出したり攪拌するようにしたクーラントポンプ装置において、
前記ポンプのシャフトとモータのシャフトを分断させ、両シャフトを断熱機能のある軸継手で接続したことを特徴とするクーラントポンプ装置。
【請求項2】
上記ポンプのシャフトを、軸方向に長い軸受で支持したことを特徴とする請求項1に記載のクーラントポンプ装置。
【請求項3】
上記軸継手が、断熱効果の高い合成樹脂等を用いて形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のクーラントポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−2252(P2009−2252A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164597(P2007−164597)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000145105)株式会社寺田ポンプ製作所 (9)
【Fターム(参考)】