説明

クールアイランド舗装

【課題】より効果的にヒートアイランド現象を抑制可能なクールアイランド舗装を提供する。
【解決手段】クールアイランド舗装は、路床1の上面である被舗装面1a上に敷設される下層2と、下層2上に設けられ、表面が太陽光を反射可能な反射層3とからなる。下層2は、無数の骨材と、各骨材間に気孔2aを有しながら各骨材を互いに固定するバインダとからなる断熱層である。各骨材の少なくとも一部はセルベンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートアイランド現象を抑制可能なクールアイランド舗装に関する。
【背景技術】
【0002】
熱中症はもはや「国民病」であり、今夏も既に数万人が救急車で搬送され、数百人が命を落としている。原因は言うまでも無く都市の灼熱化(ヒートアイランド現象)であり、その抑制は喫緊の国家的課題である。冬の寒冷、夏の高温といった四季の気温変化は地球の自転に伴う地表面の太陽熱受熱量の変化、即ち地表面温度の季節変化に対応する。結局、ヒートアイランド現象の熱源は太陽熱に他ならない。なお、都市の地表面は屋根、屋上、ビル壁面、道路、駐車場であり、これらは都市外皮と呼ばれる。
【0003】
このため、発明者らは、真夏に太陽熱を効果的に宇宙に反射できれば、その分だけ都市内部への熱の蓄積が抑制され、都市外皮の温度を下げられること、さらに都市全体を遮光することは不可能であるが、反射機能を付加することは実施容易であり、なによりも低コストであることを提案した(非特許文献1〜4)。この提案に基づく試験によれば、表面を白色にし、内部が緻密なアスファルトからなるクールアイランド舗装では、黒色で緻密なアスファルトのみからなる一般的な舗装に比べ、表面温度が昼間には約8°C、夜間でも3〜4°C低くなった。また、その上部の気温も、前者は昼間に5°C、夜間に2〜3°C低く推移することが実証された。つまり、従来の一般的な舗装は熱帯夜の直接の原因になっていることが明らかになった。
【0004】
また、例えば、特許文献1、2には、ヒートアイランド現象を抑制可能なクールアイランド舗装に関する技術が開示されている。特許文献1では、表面が太陽光を反射可能な色であり、金属繊維等の熱伝導性材料を含んだクールアイランド舗装を提案している。また特許文献2では、表面が太陽光を反射可能な色であり、比熱の高い樹脂の顆粒を含んだクールアイランド舗装を提案している。これらのクールアイランド舗装では、太陽光を反射して太陽熱をクールアイランド舗装内に蓄熱し難くしている。また、特許文献1のクールアイランド舗装では、クールアイランド舗装内に蓄熱してしまった太陽熱を熱伝導性材料によってより下方の地中に移動させ、夜間に大気中に放熱し難くしている。他方、特許文献2のクールアイランド舗装では、クールアイランド舗装内に蓄熱してしまった太陽熱を樹脂によって吸収しようというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−262805号公報
【特許文献2】特開2007−270494号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「岐阜新聞」東濃地域(2010年(平成22年)5月19日)
【非特許文献2】「東濃新報」第2面(2010年(平成22年)5月21日)
【非特許文献3】「中日新聞」岐阜版第14面(2010年(平成22年)5月24日)
【非特許文献4】「中日新聞」夕刊第1面(2010年(平成22年)8月23日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、発明者らの試験によれば、ヒートアイランド現象を抑制するためには、表面が太陽光を反射可能であれば足りるという訳ではない。発明者らの2009年8月の試験結果によれば、表面を白色にし、内部が緻密なアスファルトからなるクールアイランド舗装は、厚みを約5cmとした場合、表面から30cmの深さの地中で40°Cを越える異常な蓄熱の実態が示唆された。
【0008】
また、発明者らの考察によれば、上記特許文献1のクールアイランド舗装のように、クールアイランド舗装内に蓄熱した太陽熱をより下方の地中に移動させる場合、地中の広範囲にその太陽熱を拡散できれば効果があると思われるものの、実際には舗道直下の地中に太陽熱が蓄熱され、夜間にクールアイランド舗装と外気との温度差により、地中の太陽熱がクールアイランド舗装内の熱伝導性材料を逆流して表面から放熱されることが懸念される。また、上記特許文献2のクールアイランド舗装のように、クールアイランド舗装内の樹脂に蓄熱された太陽熱は、夜間におけるクールアイランド舗装と外気との温度差に基づき、やはり外気に放熱されるものと思われる。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、より効果的にヒートアイランド現象を抑制可能なクールアイランド舗装を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のクールアイランド舗装は、被舗装面上に敷設される下層と、該下層上に設けられ、表面が太陽光を反射可能な反射層とからなり、該下層は、気孔を有する断熱層であることを特徴とする(請求項1)。
【0011】
本発明のクールアイランド舗装では、反射層の表面が太陽光を反射することから、太陽光とともに太陽熱を効果的に宇宙に反射し、太陽熱をクールアイランド舗装内に蓄熱し難い。
【0012】
また、このクールアイランド舗装では、反射層の下方に下層が設けられており、下層が気孔を有する断熱層からなる。このため、クールアイランド舗装内に蓄熱してしまった太陽熱は、下層によってより下方の地中に移動し難い。空隙率が20%程度の透水性のアスファルト舗装を断熱層とすることもできる。断熱層の空隙率が高い程、断熱効果が大きい。このため、地中への太陽熱の蓄熱量が抑制されるので、夜間に地中の太陽熱がクールアイランド舗装を逆流して表面から放熱され難い。
【0013】
一方、クールアイランド舗装に蓄熱される太陽熱は、クールアイランド舗装の熱容量を超えることにより、反射層等から放熱される。ここで、下層の気孔は樹脂よりも比熱が小さいため、外気の温度低下によって迅速にその放熱を行い、夜間の放熱による熱帯夜を起こし難い。
【0014】
また、このクールアイランド舗装では、雨等によって下層である断熱層の気孔内に水を保持し易い。気孔内に水を保持したこのクールアイランド舗装は、気孔内の水の潜熱によって蓄熱した太陽熱の熱量を奪うことも可能である。
【0015】
したがって、本発明のクールアイランド舗装によれば、より効果的にヒートアイランド現象を抑制することが可能である。また、このクールアイランド舗装は、高価な熱伝導性材料や樹脂の顆粒等を採用していないため、安価に製造可能である。
【0016】
本発明のクールアイランド舗装は被舗装面上に設けられる。被舗装面は、路床又は路盤の上面であり得る。下層は気孔を有する断熱層である。この下層は、1層でもよく、空隙率や材料等が異なる2層以上であってもよい。反射層は、白色、ベージュ色等、表面が太陽光を反射可能である。反射層も1層に限られず、2層以上であってもよい。本発明のクールアイランド舗装は下層の厚みが5cm以上であることが好ましい。
【0017】
下層は、無数の骨材と、各骨材間に気孔を有しながら各骨材を互いに固定する固定材とからなり得る。骨材としては、一般的なアスファルト舗装等に用いられる砂利、砕石等を採用し得る。各骨材の少なくとも一部はセルベンであることが好ましい(請求項2)。セルベンとは、タイル等の陶磁器、碍子、電子部品セラミックス等を生産する過程において大量に発生するスクラップを回収して粉砕して粒度調整をした製品である。この場合、セルベンをリサイクルによって使用することができ、クールアイランド舗装を比較的安価に製造することができる。骨材の粒径は断熱層の空隙率、強度等によって適宜選択される。
【0018】
固定材としては、ストレートアスファルト、脱色乳剤等のバインダを採用することができる。バインダの割合は断熱層の空隙率、強度等によって適宜選択される。また、固定材として、側壁によって囲まれる複数のセルがハニカム状又は編状に形成されたポリエチレン製等のマット等を採用することもできる。
【0019】
骨材は多孔質であることが好ましい(請求項3)。骨材が多孔質であれば、断熱層の空隙率が上がり、本発明の作用効果がより顕著になる。多孔質の骨材として、多孔質のセルベンを採用すれば、クールアイランド舗装を比較的安価に製造することができる。多孔質のセルベンは、素焼きのタイル等のスクラップを回収して粉砕して粒度調整することによって得られる。骨材の空隙率は断熱層の空隙率、強度等によって適宜選択される。
【0020】
反射層は白色、ベージュ色等の塗料からなり得る。塗料は、有機塗料であるよりも、無機塗料であることが好ましい。無機塗料の方が太陽光中の紫外線によって劣化し難く、クールアイランド舗装の耐久性が向上するからである。
【0021】
反射層は、セルベンの細粒材を含み得る(請求項4)。セルベンの細粒材を反射層にしても、表面は、白色に近く、太陽光を反射可能だからである。この場合、反射層、ひいてはクールアイランド舗装を比較的安価に製造することができる。
【0022】
反射層は白色天然石の細粒材も含み得る(請求項5)。石灰石等の白色天然石は、安価でありながら、太陽光を好適に反射可能だからである。反射層にセルベンの細粒材を含ませる場合、太陽光をより反射しやすくするため、白色天然石の細粒材を含ませることが好ましい。白色天然石としては、商品名「リバーストーン」、商品名「リバーロック」、商品名「暁石」等を採用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1のクールアイランド舗装の模式断面図である。
【図2】実施例1のクールアイランド舗装に係り、下層の模式拡大断面図である。
【図3】実施例2のクールアイランド舗装の模式断面図である。
【図4】実施例3のクールアイランド舗装の模式断面図である。
【図5】試験1の結果を示すグラフである。
【図6】試験2に係り、測定日の気温と日射量とを示すグラフである。
【図7】試験2に係り、各試験品及び従来品の表面温度を示すグラフである。
【図8】試験2に係り、各試験品及び従来品の裏面温度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施例1等を図面を参照しつつ説明する。
【0025】
(実施例1)
実施例1のクールアイランド舗装は、図1に示すように、気孔2aを有する断熱層である下層2と、下層2上に設けられた反射層3とからなる。
【0026】
下層2は、路床(路盤でもよい。)1の上面である被舗装面1a上に敷設されている。下層2は、図2に示すように、無数の骨材2bと、各骨材2b間に気孔2aを有しながら各骨材2bを互いに固定するバインダ2cとからなる。ここで採用した骨材2bは粒径が5〜13mmの焼結タイルのセルベンである。骨材2bの全てを砂利や砕石にしてもよく、骨材2bの一部にセルベンを採用し、残部を砂利や砕石にしてもよい。バインダ2cはストレートアスファルトである。
【0027】
図1に示す反射層3は、下層2の上面に塗布した白色無機塗料(株式会社シーエムテクノ製「ロードクーラー」)からなる。反射層3の厚みは1mm未満である。
【0028】
このクールアイランド舗装はおよそ以下のように製造される。まず、96質量%の各骨材2bと、4質量%のバインダ2cとからなる高温のアスファルト混合物を準備する。このアスファルト混合物を被舗装面1a上に敷き詰め、所定圧力で締め固める。アスファルト混合物の冷却後、上面に白色無機塗料を塗布する。こうして、アスファルト混合物によって下層2が構成され、白色無機塗料によって反射層3が構成され、実施例1のクールアイランド舗装が得られる。
【0029】
このクールアイランド舗装では、反射層3の表面に太陽光Rが照射されたとしても、一部が太陽熱R1として内部に吸収されるものの、大部分の光R2は効果的に宇宙に反射される。このため、太陽熱がクールアイランド舗装内に蓄熱し難い。
【0030】
また、このクールアイランド舗装では、反射層3の下方に下層2が設けられており、下層2が気孔2aを有する断熱層からなる。このため、クールアイランド舗装内に蓄熱してしまった太陽熱は、下層2によってより下方の地中に移動し難い。このため、地中への太陽熱の蓄熱量が抑制されるので、夜間に地中の太陽熱がクールアイランド舗装を逆流して表面から放熱され難い。
【0031】
一方、クールアイランド舗装に蓄熱される太陽熱は、クールアイランド舗装の熱容量を超えることにより、反射層3等から放熱されるが、下層2の気孔2aは樹脂よりも比熱が小さいため、外気の温度低下によって迅速にその放熱を行い、夜間の放熱による熱帯夜を起こし難い。
【0032】
また、このクールアイランド舗装では、雨等によって下層2である断熱層の気孔2a内に水を保持し易い。気孔内に水を保持したこのクールアイランド舗装は、気孔2a内の水の潜熱によって蓄熱した太陽熱の熱量を奪うことも可能である。
【0033】
したがって、このクールアイランド舗装によれば、より効果的にヒートアイランド現象を抑制することが可能である。
【0034】
また、このクールアイランド舗装は、高価な熱伝導性材料や樹脂の顆粒等を採用していないため、安価に製造可能である。特に、このクールアイランド舗装では、下層2の断熱層をセルベンからなる無数の骨材2bで構成している。このため、セルベンをリサイクルによって使用することができ、クールアイランド舗装を比較的安価に製造することができる。
【0035】
(実施例2)
実施例2のクールアイランド舗装は、図3に示すように、下層4の各骨材4bが多孔質のセルベンからなる。下層4には、各骨材4b間の気孔4aの他、各骨材4b内の気孔4cが存在する。他の構成は実施例1と同様である。
【0036】
このクールアイランド舗装では、各骨材4bが多孔質であるため、断熱層の空隙率が上がり、本発明の作用効果がより顕著になる。
【0037】
(実施例3)
実施例3のクールアイランド舗装は、図4に示すように、エポキシ樹脂(ニチレキ(株)製「カラーファルトTO」)からなるバインダと、ポリエチレン製のマット(三菱樹脂(株)製「砂利想い」)5とを固定材として採用している。マット5は、側壁によって囲まれる複数のセル5aが編状に形成されたものである。また、このクールアイランド舗装では、セルベンの細粒材と白色天然石の細粒材とからなる反射層7を採用している。
【0038】
このクールアイランド舗装はおよそ以下のように製造される。まず、焼結タイルのセルベンに上記バインダ6質量%を混合した混合物を準備し、被舗装面1a上に設けたマット5内にこの混合物を充填し、所定圧力で締め固める。バインダの固化後、バインダ、マット5及び骨材2bによって下層6が構成される。
【0039】
また、粒径1.73〜0.5mmのセルベンの細粒材と、粒径1.8〜0.5mmの白色天然石(商品名「暁石」)の細粒材とを用意する。これらを50質量%ずつ混合し、この混合物を下層6上に敷き詰め、所定圧力で締め固める。こうして、これらの細粒材によって反射層7が構成される。そして、これにより実施例3のクールアイランド舗装が得られる。他の構成は実施例1と同様である。
【0040】
このクールアイランド舗装は、マット5を固定材としているため、比較的簡易に施工される。そして、このクールアイランド舗装では、反射層7にセルベン及び白色天然石の細粒材を採用しているため、太陽光を反射する点においては実施例1、2と同様の作用効果を奏しつつ、さらなる製造コストの低廉化を実現している。また、反射層7が気孔7aを有することから、より断熱効果が高く、より顕著に本発明の作用効果を奏することができる。
【0041】
(試験1)
以下の試験品1と従来品とを用い、断熱層からなる下層によって地中に向かう熱量がどのように違うのかを確認した。
【0042】
試験品1は、上記実施例1と同様のものであり、以下のように製造したものである。まず、骨材の最大粒径が13mmであり、表面が粗く、すべり止めや透水性舗装に用いられる加熱アスファルト混合物(開粒アスコン13mmTOP)を用意した。この加熱アスファルト混合物に対し、粒径が5〜13mmの焼結タイルのセルベンからなる骨材30質量%を加えてなる高温のアスファルト混合物を準備した。このアスファルト混合物を基台上に敷き詰め、所定圧力で締め固めた。
【0043】
そして、アスファルト混合物の冷却後、上面に白色無機塗料(株式会社シーエムテクノ製「ロードクーラー」)を塗布した。この試験品1は、アスファルト混合物によって構成された断熱層である下層と、白色無機塗料によって構成された反射層とからなる。
【0044】
従来品は、一般的なアスファルト舗装と同様、骨材の最大粒径が13mmであり、骨材にアスファルトガラ30質量%の再生材を使用し、表面排水舗装に用いられる加熱アスファルト混合物(再生密粒度アスコン13mmTOP)を基台上に敷き詰め、所定圧力で締め固めて得たものである。この従来品は、アスファルト混合物によって構成された緻密な層のみからなる。試験品1と従来品とで厚みにほとんど相違はない。
【0045】
測定は平成22年8月30日の午前0時から平成22年9月1日の午前0時まで行った。試験品1及び従来品の熱流量(W/m2)の結果を図5に示す。
【0046】
図5に示されるように、本発明の実施例に相当する試験品1は、従来品と比べ、地中に向かう熱量が半減していることがわかる。このため、試験品1と同様のクールアイランド舗装を施工すれば、クールアイランド舗装内に蓄熱してしまった太陽熱が地中に移動し難く、地中に太陽熱が蓄熱され難いため、夜間に地中の太陽熱がクールアイランド舗装を逆流して表面から放熱され難いことがわかる。
【0047】
(試験2)
以下の試験品2〜5及び従来品について、表面及び裏面の温度変化を求めた。
【0048】
試験品2の下層は、骨材95質量%とバインダ5質量%とからなり、空隙率が10%である。他の構成は、実施例3のマット5を用いた点を除き、試験品1と同様である。
【0049】
試験品3の下層は、骨材96質量%とバインダ4質量%とからなり、空隙率が20%である。他の構成は試験品2と同様である。
【0050】
試験品4の下層は、骨材97質量%とバインダ3質量%とからなり、空隙率が26%である。他の構成は試験品2と同様である。
【0051】
試験品5は以下のように製造したものである。まず、再生密粒度アスコン13mmTOPに対し、粒径が5〜13mmの焼結タイルのセルベンからなる骨材30質量%を加えてなる高温のアスファルト混合物を準備した。このアスファルト混合物を基台上に敷き詰め、所定圧力で締め固めた。
【0052】
そして、アスファルト混合物の冷却後、上面に白色無機塗料(株式会社シーエムテクノ製「ロードクーラー」)を塗布した。この試験品5は、アスファルト混合物によって構成された緻密な層と、白色無機塗料によって構成された反射層とからなる。
【0053】
測定は平成22年9月18日の午前0時から平成22年9月20日の午前0時まで行った。測定日の気温と日射量とを図6に示す。
【0054】
そして、試験品2〜5及び従来品の表面温度の変化を図7に示し、裏面温度の変化を図8に示す。また、試験品2〜5及び従来品の表面温度の最高値と、裏面温度の最高値とを表1に示す。試験品2〜5及び従来品において、表面温度と裏面温度との差の最大値及び最小値を表2に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
図7、8及び表1、2より、表面温度の最高値は、従来品が最も高く、次いで試験品5、試験品2〜4の順に温度が低くなるが、試験品2〜4の空隙率の違いによる温度差は小さい。このため、表面温度は、表面を白色にしただけでも下がるが、空隙率によってはさほどの影響がないことがわかる。
【0058】
一方、裏面温度の最高値は、最も高いのが従来品及び試験品5であり、これらはほとんど差がない。次いで試験品2、試験品3、試験品4の順に裏面温度が低くなる。このため、空隙率が高い程、裏面温度が下がることがわかる。断熱層の空隙率が高い程、断熱効果が大きいからである。
【0059】
なお、表面温度と裏面温度との差に着目すると、温度差は昼間に最大値を示し、従来品で約14°C、試験品5で約11°C、試験品4で10.5°C、試験品3で9.8°C、試験品2で9.2°Cの順に最大値が小さくなっている。一方、温度差は夜間に最小値を示し、試験品2〜5及び従来品において、夜間は表面温度が裏面温度よりも低くなっている。最小値は試験品3と試験品4とが−3.5°C前後、その他が−3°C前後である。
【0060】
以上の結果から、本発明の実施例に相当する試験品2〜4は、従来品や単に表面の色のみを変更した試験品5と比べ、いずれも表面温度及び裏面温度が低いことがわかる。このため、試験品2〜4と同様のクールアイランド舗装を施工すれば、効果的にヒートアイランド現象を抑制できることがわかる。
【0061】
以上において、本発明を実施例1〜3及び試験品2〜4に即して説明したが、本発明はこれら実施例1〜3及び試験品2〜4に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、道路、駐車場等の舗装に利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1…路床
1a…被舗装面
2、4、6…下層
3、7…反射層
2a、4a、4c…気孔
2b、4b…骨材
2c、5…固定材(2c…バインダ、5…マット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被舗装面上に敷設される下層と、該下層上に設けられ、表面が太陽光を反射可能な反射層とからなり、
該下層は、気孔を有する断熱層であることを特徴とするクールアイランド舗装。
【請求項2】
前記下層は、無数の骨材と、各該骨材間に気孔を有しながら各該骨材を互いに固定する固定材とからなり、各該骨材の少なくとも一部はセルベンである請求項1記載のクールアイランド舗装。
【請求項3】
前記骨材は多孔質である請求項2記載のクールアイランド舗装。
【請求項4】
前記反射層はセルベンの細粒材を含む請求項1乃至3のいずれか1項記載のクールアイランド舗装。
【請求項5】
前記反射層は白色天然石の細粒材を含む請求項1乃至4のいずれか1項記載のクールアイランド舗装。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−87502(P2012−87502A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233901(P2010−233901)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(510277349)社団法人多治見建設業協会 (1)
【Fターム(参考)】