説明

クールコンテナの保冷運転制御装置

【課題】コンプレッサとヒータの同時駆動を回避することで、冷凍機に搭載されている発電機の過負荷状態の発生を回避し、2温度帯の制御を安全かつ精度良く行う。
【解決手段】冷凍庫側の設定温度が冷蔵庫側の設定温度より低く設定されており、かつ、冷凍庫側の冷気を冷蔵庫側に導入することによって冷蔵庫側の温度制御を行い、冷蔵庫側の温度が下がり過ぎた場合には冷蔵庫側の電気ヒータ23を駆動して温度を維持するように制御を行う制御部51を備えた保冷運転制御装置であって、前記制御部51は、冷凍機20のコンプレッサまたは電気ヒータ23のいずれか一方を運転中は他方の運転を停止するように制御する。この場合、コンプレッサまたは電気ヒータ23のいずれかを優先して制御する優先度が設定されており、前記制御部51は、この優先度に従ってコンプレッサまたは電気ヒータ23のいずれかを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン駆動の発電機搭載型冷凍機によって、第1室と第2室に仕切られたコンテナ内の各室をそれぞれ異なった設定温度を目標として制御することにより、保存温度の異なる貨物を混載可能なクールコンテナに係り、より詳細には、前記第1室に設けられた前記冷凍機の冷気を前記第2室に導入することによって第2室の温度制御を行うとともに、第2室の温度が下がり過ぎた場合には、第2室に設けられているヒータによって温度を維持するように制御を行う制御手段を備えた保冷運転制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時のクールコンテナは、コンテナ庫内を可動式の断熱仕切板で前後2室に仕切り、前室と後室をそれぞれ異なった設定温度を目標として制御することにより、保存温度の異なる貨物を混載可能として、輸送効率の向上を図っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、前室は、冷凍肉や冷凍魚介類等の冷凍状態を維持して搬送しなければならない冷凍保存物品を収納する冷凍庫として使用し、後室は、生鮮野菜や清涼飲料等の冷蔵状態を維持して搬送しなければならない冷蔵保存物品を収納する冷蔵庫として使用される。
【0004】
この場合、クールコンテナは、エンジン駆動の発電機搭載型冷凍機によって保冷運転を行っている。具体的に説明すると、例えば、前室の冷凍庫の設定温度が後室の冷蔵庫の設定温度より低く設定されており、かつ、冷凍庫の冷気を冷蔵庫に導入することによって冷蔵庫の温度制御を行っている。また、冷蔵庫の温度が下がり過ぎた場合には、冷蔵庫側に設けられたヒータによって冷蔵庫内の温度を維持するように制御する。
【特許文献1】特開2004−122891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなエンジン駆動の発電機搭載型冷凍機では、冷凍機のサイズは、コンテナもしくはトラックに搭載したときに、−20℃〜−30℃程度に冷える能力を有するように設計されている。この場合、上記したように、冷凍庫と冷蔵庫の2室を異なった設定温度で制御する、いわゆる2温度帯の制御を行おうとすると、コンプレッサと冷蔵庫側のヒータを同時に運転させる必要が生じることになるが、上記設計の冷凍機では、コンプレッサとヒータを同時に運転すると発電機(エンジン)が過負荷状態となり、ひいては安全性の面で問題となる。
【0006】
この問題を解決するためには、コンプレッサの能力にヒータ駆動分の能力を加えた容量の発電機(エンジン)を搭載すればよいが、そうすると発電機が大型化し、重量面、コスト面、燃費面で不利になるといった問題があった。
【0007】
本発明はかかる問題点を解決すべく創案されたもので、その目的は、コンプレッサとヒータの同時駆動を回避することで、上記設計の冷凍機の能力でもエンジンの過負荷状態の発生を回避し、2温度帯の制御を安全かつ安定的に行うことのできるクールコンテナの保冷運転制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係わるコンプレッサの保冷運転制御装置は、エンジン駆動の発電機搭載型冷凍機によって、第1室と第2室に仕切られたコンテナ内の各室をそれぞれ異なった設定温度を目標として制御することにより、保存温度の異なる貨物を混載可能なクールコンテナであって、前記第1室に設けられた前記冷凍機の冷気を前記第2室に導入することによって第2室の温度制御を行うとともに、第2室の温度が下がり過ぎた場合には、第2室に設けられているヒータによって温度を維持するように制御を行う制御手段を備えた保冷運転制御装置において、前記制御手段は、前記冷凍機のコンプレッサまたは前記ヒータのいずれか一方を運転中は他方の運転を停止するように制御することを特徴とする。この場合、前記コンプレッサまたは前記ヒータのいずれかを優先して制御する優先度が設定されており、前記制御手段は、この優先度に従ってコンプレッサまたはヒータのいずれかを制御する。
【0009】
このような特徴を有する本発明によれば、冷凍機のコンプレッサまたはヒータのいずれか一方を運転中は他方の運転を停止することで、エンジンの過負荷状態を回避することができる。また、このときの運転では、予め設定した優先度に従って保冷運転制御を行うので、第1室及び第2室の双方を優先度に従って安定的に制御することが可能となる。
【0010】
ここで、前記第1室を冷凍庫、前記第2室を冷蔵庫とし、前記冷凍庫側の設定温度に対する庫内温度の差である冷凍側温度偏差をΔT1、前記冷蔵庫の設定温度に対する庫内温度の差である冷蔵側温度偏差をΔT2とすると、優先度としては以下の4つのパターンが考えられる。
【0011】
優先度1:前記制御手段は、1℃<ΔT1の場合には、前記コンプレッサを制御して冷凍庫の温度制御を優先する。
【0012】
優先度2:前記制御手段は、ΔT2<−2℃の場合に、ΔT1<0.5℃である場合には、前記ヒータを運転して冷蔵庫の温度制御を優先する。
【0013】
優先度3:前記制御手段は、−2℃<ΔT2<0℃の場合に、ΔT1<0℃である場合には、前記ヒータを運転して冷蔵庫の温度制御を優先する。
【0014】
優先度4:前記制御手段は、0℃<ΔT2<0.5℃の場合に、ΔT1<−0.5℃である場合には、前記ヒータを運転して冷蔵庫の温度制御を優先する。
【0015】
すなわち、上記優先度は、基本的には、設定温度からより外れている方を優先してコンプレッサまたはヒータを運転するように設定している。そして、まずは冷凍庫の方を優先し、次に冷蔵庫の方のヒータの運転を、コンプレッサによる冷凍庫側の温度を見ながら行うように設定している。
【0016】
このように優先度を設定することで、冷凍庫側の庫内温度制御の精度は±1℃、冷蔵庫側の庫内温度制御の精度は±2℃の範囲で安定して保冷運転制御を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係わるクールコンテナの保冷運転制御装置によれば、冷凍機のコンプレッサまたはヒータのいずれか一方を運転中は他方の運転を停止することで、エンジンの過負荷状態を回避することができる。そのため、発電機の容量を必要最小限とすることができ、重量面、コスト面、燃費面で最適化することができる。また、このときの運転では、予め設定した優先度に従って保冷運転制御を行うので、第1室及び第2室の双方を優先度に従って安定して制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
−クールコンテナの構造の説明−
図1は、本実施形態のクールコンテナのコンテナ構造を示す概略縦断面図、図2はクールコンテナを上方から見た通気ダクト部分の横断面図である。なお、図中の矢印は冷気の流れ方向を示している。
【0020】
すなわち、本実施形態のクールコンテナは、コンテナ内部が前後に可動可能な断熱仕切板11によって前室12と後室13とに仕切られている。また、コンテナ内部の天井部分はコンテナ外壁(天壁)14とコンテナ内壁15との2重構造となっており、このコンテナ外壁14とコンテナ内壁15との間の空間が通気ダクト16となっている。
【0021】
通気ダクト16は、図2に示すように、コンテナ本体の長手方向に沿って左右に2分割されており、一方の側(図2では上側)の通気ダクト161は、前室12側から後室13側に向けて冷気を送るための往路側通気ダクト、他方の側(図2では下側)の通気ダクト162は、後室13から前室12に向けて冷気を戻すための復路側通気ダクトとなっている。
【0022】
往路側通気ダクト161及び復路側通気ダクト162の前室12側の端部には、往路側シャッタ部材311及び復路側シャッタ部312がそれぞれ設けられており、これら往路側シャッタ部材311及び復路側シャッタ部312の開閉動作(これについては図3を用いて後述する。)によって、往路側通気ダクト161及び復路側通気ダクト162と前室12の内部とが連通するようになっている。
【0023】
また、前室12の前側上部には、冷凍機20を収納するための冷凍機収納部17a、及び3台の循環ファン18,18,18を収納するための循環ファン収納部17bが設けられている。また、冷凍機収納部17aには、冷凍機20のファン20aの近傍に電気ヒータ10が設けられている。この電気ヒータ10は、基本的には熱交換機に付着した霜等を除去するためのデフロストヒータである。
【0024】
また、前室12の前壁には、冷凍機20からの冷気を下方に流すためのバルクヘッド19が設けられており、このバルクヘッド19の上部が冷凍機収納部17a及び循環ファン収納部17bに開口し、バルクヘッド19の下部は前室12の内部に開口している。すなわち、前室12は、冷気を下から吹き出す下吹き出し構造となっている。
【0025】
一方、後室13の後側上部には、前室12からの冷気を吸い込むための1台の冷気導入ファン21を収納した冷気導入ファン収納部22と、後室13内で冷気を循環させるための3台の循環ファン23,23,23を収納した循環ファン収納部24とが連通して設けられている。また、冷気導入ファン収納部22と往路側通気ダクト161の後端部とが往路側シャッタ部材311によって開閉可能に設けられている。一方、復路側通気ダクト162の後端部は、後室13の内部及び循環ファン収納部24の両方に開口しており、復路側シャッタ部312によって開閉可能に設けられている。
【0026】
また、後室13の後壁を構成する扉25の内壁には、冷気を下方に流すためのバルクヘッド26が設けられており、このバルクヘッド26の上部は冷気導入ファン収納部22及び循環ファン収納部24に開口し、バルクヘッド26の下部は後室13の内部に開口している。すなわち、後室13は、前室12と同様、冷気を下から吹き出す下吹き出し構造となっている。また、循環ファン収納部24には、各循環ファン23,23,23に対向して電気ヒータ27が設けられている。
【0027】
すなわち、本実施形態のクールコンテナは、往路側シャッタ部材311及び復路側シャッタ部312が閉じている状態では、前室12は、冷凍機20のファン20aの回転及び循環ファン18,18,18の回転により、下吹き出しで冷気を循環し、後室13は、循環ファン23,23,23の回転により、下吹き出しで冷気を循環する。一方、冷気導入ファン21の回転により往路側シャッタ部材311及び復路側シャッタ部312が開くと、図1及び図2中に矢印で示すように、冷凍機20から吹き出された冷気は、バルクヘッド19を通って前室12の下側から吹き出し、前室12内を循環した後、上部の往路側通気ダクト161を通って前室12側から後室13側に送られ(図1では破線の矢印で示している)、後室13側の冷気導入ファン収納部22を通り、循環ファン収納部24を通ってバルクヘッド26を通り、後室13の下側から吹き出し、後室13内を循環する。循環した冷気は、循環ファン23,23,23に吸い込まれるようにして循環ファン収納部24に引き込まれ、再びバルクヘッド26を通って後室13の下側から吹き出される。このとき、前室12から吸い込まれたことによって若干高圧となった後室13内の冷気の一部が、循環ファン収納部24に引き込まれる再に復路側通気ダクト162を通って前室12側に戻される(図1では実線の矢印で示している)ことになる。
【0028】
図3は、往路側シャッタ部材311及び復路側シャッタ部材312の開閉構造を示している。往路側シャッタ部材311と復路側シャッタ部材312とは、その配置方向が左右反転している以外は全く同じ構造であるので、ここでは復路側シャッタ部材312を例に挙げ説明する。
【0029】
復路側シャッタ部材312は、往路側通気ダクト162の両端部にそれぞれ同方向(図3に示す方向)を向いて配置されている。すなわち、冷気が通過する開口部33を有するシャッタ取付板34の上端部34a及び下端部34bが、コンテナ外壁(天壁)14及びコンテナ内壁15にそれぞれ固定具(図では、ボルト・ナット)35によって固定されており、このシャッタ取付板34に、前記開口部33を塞ぐようにして復路側シャッタ部材312が取り付けられている。復路側シャッタ部材312は、その上端部が支持軸36によって回動可能に取り付けられている。また、シャッタ取付板34は、垂直方向に対して角度θ(例えば、15度等)だけ傾斜して設けられている。このようにシャッタ取付板34が傾斜して設けられていることにより、復路側シャッタ部材312は、その自重によって開口部33を常に塞ぐように作用する。そして、往路側通気ダクト162内に、図3中に白抜きの矢符で示す方向に冷気が流れると、その冷気の押圧作用によって復路側シャッタ部材312が図3中二点鎖線で示すように回動し、開口部33を開くようになっている。冷気の流れが無くなると、自重により復路側シャッタ部材312が回動し、再び開口部33を閉じることになる。
【0030】
なお、往路側シャッタ部材311は、図2に示すクールコンテナを図中矢符A方向から見ると、図3に示す配置関係となる。
【0031】
このような構成の復路側シャッタ部材312及び往路側シャッタ部材311の材質としては、冷気の流れによって容易に回動し得る程度の比較的軽い材質のものが良く、例えばポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などの樹脂によって成形された樹脂板を使用するのが好ましい。
【0032】
−本発明に係わる保冷運転制御の説明−
上記したように、本実施形態のクールコンテナは、前室12と後室13の各室をそれぞれ異なった設定温度を目標として制御(2温度帯制御)することにより、保存温度の異なる貨物を混載可能である。本実施形態では、前室12を冷凍肉や冷凍魚介類等の冷凍状態を維持して搬送しなければならない冷凍保存物品を収納する冷凍庫とし、後室13を生鮮野菜や清涼飲料等の冷蔵状態を維持して搬送しなければならない冷蔵保存物品を収納する冷蔵庫として使用する。
【0033】
また、前室(以下「冷凍庫」という。)12の設定温度が後室(以下「冷蔵庫」という。)13の設定温度より低く設定されており、かつ、上記したように、冷凍庫12の冷気を往路側通気ダクト161を通って冷蔵庫13側に導入することによって、冷蔵庫13の温度制御を行い、冷蔵庫13の温度が下がり過ぎた場合には電気ヒータ27によって温度を維持するように制御を行う。
【0034】
ここで、冷蔵庫13の温度が下がり過ぎた場合とは、次のような場合が考えられる。すなわち、冷凍庫12の庫内温度は−20℃〜−30℃程度に制御され、冷蔵庫(チルド)13の庫内温度は+5℃前後に制御されるため、この温度差により、冷凍庫12側の冷気を往路側通気ダクト161を通じて冷蔵庫13側に供給していなくても、冷凍庫12側の冷熱が断熱仕切板11を伝導して冷蔵庫13側に伝達され、冷蔵庫13内が冷却さることによって設定温度から下がり過ぎる場合がある。また、例えば冬場に大阪から北海道に物品を搬送する場合などには、北海道の外気温によっても冷蔵庫13内が冷却され、設定温度から下がり過ぎる場合もある。このような場合には、電気ヒータ27によって庫内を温めて、庫内を設定温度(+5℃等)に維持するように制御する必要がある。また、冷凍庫12側でも電気ヒータ10によって庫内を温めて、庫内を設定温度(−20℃〜−30℃)に維持するように制御する必要がある場合も考えられる。
【0035】
このように、2温度帯の制御では、冷凍機20のコンプレッサと主に冷蔵庫13の電気ヒータ27とを同時に運転する必要が生じる場合がある。しかし、上記したように、冷凍機20のコンプレッサと冷蔵庫13の電気ヒータ27とを同時に運転すると、発電機が過負荷状態になるといった不具合が発生する。そこで、本実施形態では、冷凍機のコンプレッサまたは電気ヒータ27のいずれか一方を運転中は他方の運転を停止するように制御手段で制御する構成としている。この場合、コンプレッサまたは電気ヒータ27のいずれかを優先して制御する優先度を予め設定し、この優先度に従ってコンプレッサまたは電気ヒータ27のいずれかを制御する構成としている。
【0036】
図4は、上記構成のクールコンテナにおいて、2温度帯の制御を行う制御システムの概略構成を示す機能ブロック図である。
【0037】
すなわち、2温度帯の制御全般を司る制御部51に、冷凍庫12及び冷蔵庫13の適宜の個所に設けられた複数の温度センサ52(ただし、図1ないし図3には図示されていない。)が接続されている。また、制御部51は、各電気ヒータ10,27をON/OFF駆動するヒータ駆動部53に接続されているとともに、冷気導入ファン21や循環ファン18,23をON/OFF制御するファン駆動部54に接続されている。また、制御部51は、冷凍機20のコンプレッサを駆動制御するようになっている。制御部51は、図示は省略しているが、各種演算処理を行うCPU、2温度帯の温度制御プログラムを格納しているROM、各種検出温度データを記憶したり、温度制御時にはワークエリアとして働くRAM等を備えている。
【0038】
以下、冷凍庫側の通常の保冷運転制御及び冷蔵庫側の通常の保冷運転制御の具体例を説明し、最後に、本発明に係わる優先度による保冷運転制御について説明する。
【0039】
<冷凍庫側の通常の保冷運転制御>
図5は、冷凍庫側の通常の保冷運転制御の処理を示すフローチャートである。以下、図5に示すフローチャートを参照して保冷運転制御処理を説明する。ここで、冷凍庫12の設定温度を例えば−25℃とし、冷凍庫12の庫内温度制御の精度を、+1℃〜−2℃とする。また、冷凍庫12の設定温度に対する庫内温度の差である冷凍側温度偏差をΔT1とする。また、循環ファン18は常に運転しているものとする。
【0040】
制御部51は、冷凍室12の図示しない所定の個所に設けられた温度センサ52により庫内温度を検出し、その検出温度と冷凍庫12の設定温度との差である冷凍側温度偏差ΔT1が、制御精度である+1℃を超えているか否かを判断する(ステップS11)。その結果、ΔT1が+1℃を超えている場合(ステップS11でYesと判断された場合)には、コンプレッサをONとして運転を開始する(ステップS12)。一方、コンプレッサの運転を開始した後、ΔT1が−1℃以下になったか否かを判断する(ステップS13)。その結果、ΔT1が−1℃以下になった場合(ステップS13でYesと判断された場合)には、コンプレッサをOFFとする(ステップS14)。
【0041】
制御部51は、基本的に上記の処理(ステップS11〜ステップS14の処理)を繰り返すことにより、冷凍庫12の庫内温度を設定温度である−25℃から±1℃の範囲内となるように制御する。
【0042】
一方、このようなコンプレッサのON/OFF制御において、制御部51は、ΔT1が−2℃以下になったか否かを常に監視している(ステップS15)。これは、上記したように、コンプレッサのON/OFFだけでは制御できない他の要素(例えば、上記した外気温度等の影響)を考慮している。
【0043】
そして、ΔT1が−2℃以下になった場合(ステップS15でYesと判断された場合)には、冷凍庫12内が冷え過ぎていると判断し、電気ヒータ10をONとする(ステップS16)。そして、庫内温度が設定温度になると、すなわち、ΔT1が0になると(ステップS17でYesと判断されると)、電気ヒータ10をOFFとして(ステップS18)、ステップS11に戻る。
【0044】
<冷蔵庫側の通常の保冷運転制御の説明>
図6は、冷蔵庫側の通常の保冷運転制御の処理を示すフローチャートである。以下、図6に示すフローチャートを参照して保冷運転制御処理を説明する。ここで、冷蔵庫13の設定温度を例えば+5℃とし、冷蔵庫13の庫内温度制御の精度を、±2℃とする。また、冷蔵庫13の設定温度に対する庫内温度の差である冷蔵側温度偏差をΔT2とする。また、循環ファン23は常に運転しているものとする。
【0045】
制御部51は、冷蔵室13の図示しない所定の個所に設けられた温度センサ52により庫内温度を検出し、その検出温度と冷蔵庫13の設定温度との差である冷蔵側温度偏差ΔT2が、制御精度である+1℃を超えているか否かを判断する(ステップS21)。その結果、ΔT2が+1℃を超えている場合(ステップS21でYesと判断された場合)には、冷気導入ファン21をONとして運転を開始する(ステップS22)。一方、冷気導入ファン21の運転を開始した後、ΔT2が−0.5℃以下になったか否かを判断する(ステップS23)。その結果、ΔT2が−0.5℃以下になった場合(ステップS23でYesと判断された場合)には、冷気導入ファン21をOFFとする(ステップS24)。
【0046】
制御部51は、基本的に上記の処理(ステップS21〜ステップS24の処理)を繰り返すことにより、冷蔵庫13の庫内温度を設定温度である+5℃から+1℃〜−0.5℃の範囲内となるように制御する。
【0047】
一方、このような冷気導入ファン21のON/OFF制御において、制御部51は、ΔT2が−1℃以下になったか否かを常に監視している(ステップS25)。これは、上記したように、冷気導入ファン21のON/OFFだけでは制御できない他の要素(例えば、上記した冷凍庫12から断熱仕切板11を伝導してくる冷熱や、外気温度等の影響)を考慮している。
【0048】
そして、ΔT2が−1℃以下になった場合(ステップS25でYesと判断された場合)には、冷蔵庫13内が冷え過ぎていると判断し、電気ヒータ27をONとする(ステップS26)。そして、ΔT2が0.5℃を超えると(ステップS27でYesと判断されると)、電気ヒータ27をOFFとして(ステップS28)、ステップS21に戻る。
【0049】
<優先度による保冷運転制御の説明>
本実施形態では、基本的には上記の冷凍庫側の通常の保冷運転制御、及び冷蔵庫側の通常の保冷運転制御を個別に行い、その際に、コンプレッサと電気ヒータ27の運転が重なる事態となったときには、以下に説明する優先度による保冷運転制御を上記各保冷運転制御に優先して実施する。
【0050】
図7は、優先度による保冷運転制御の処理を示すフローチャートである。以下、図7に示すフローチャートを参照して優先度による保冷運転制御処理を説明する。
【0051】
優先度による保冷運転制御処理では、制御部51はまず最初に、冷凍側温度偏差であるΔT1が+1℃を超えているか否かを優先的に判断する(ステップS31)。その結果、ΔT1が+1℃を超えている場合(ステップS31でYesと判断された場合)には、冷凍庫12の保冷運転制御を優先する(ステップS38)。すなわち、図4に示す処理を優先する。つまり、冷蔵庫13側で電気ヒータ27をONするタイミングであっても、電気ヒータはONせず、冷凍庫12側の制御を優先する。
【0052】
一方、ΔT1が+1℃以下である場合(ステップS31でNoと判断された場合)には、次に、冷蔵側温度偏差であるΔT2が−2℃以下であるか否かを判断する(ステップS32)。その結果、ΔT2が−2℃以下である場合(ステップS32でYesと判断された場合)には、次に、ΔT1が+0.5℃以下であるか否かを判断する(ステップS33)。そして、ΔT1が+0.5℃を超えている場合(ステップS33でNoと判断された場合)には、ステップS38に進み、冷凍庫12の保冷運転制御を優先する。すなわち、冷蔵庫13側が多少冷え過ぎであっても、電気ヒータ27をONせず、冷凍庫12側の制御を優先する。
【0053】
一方、ΔT1が+0.5℃以下である場合(ステップS33でYesと判断された場合)には、ステップS39に進み、冷蔵庫13側の制御である図6のステップS26,ステップS27の処理を優先して行う。すなわち、コンプレッサが運転中である場合には、コンプレッサをOFFして、ステップS26,ステップS27の処理を優先する。そして、ステップS27での判断がYesとなってステップS28により電気ヒータ27をOFFしたか否かを常に監視するとともに(ステップS40)、ΔT1が+1℃を超えたか否かを常に監視し(ステップS41)、電気ヒータがOFFされず、ΔT1が+1℃を超えない場合(ステップS40でNo、ステップS41でNoと判断された場合)には、ステップS39に戻って、図6に示すステップS26,ステップS27の処理を繰り返す。一方、電気ヒータがOFFされるか、またはΔT1が+1℃を超えた場合(ステップS40でYes、またはステップS41でYesと判断された場合)には、ステップS38に進み、冷凍庫12の保冷運転制御を優先する。
【0054】
一方、ステップS32において、ΔT2が−2℃以下でない場合(ステップS32においてNoと判断された場合)には、次に、ΔT2が、−2℃〜0℃の範囲内であるか否かを判断する(ステップS34)。その結果、ΔT2が−2℃〜0℃の範囲内である場合(ステップS34でYesと判断された場合)には、次に、ΔT1が0℃以下であるか否かを判断する(ステップS35)。その結果、ΔT1が0℃以下でない場合(ステップS35でNoと判断された場合)には、ステップS38に進み、冷凍庫12の保冷運転制御を優先する。一方、ΔT1が0℃以下である場合(ステップS35でYesと判断された場合)には、ステップS39に進み、冷蔵庫13側の制御である図6のステップS26,ステップS27の処理を優先して行う。すなわち、コンプレッサが運転中である場合には、コンプレッサをOFFして、ステップS26,ステップS27の処理を優先する。そして、電気ヒータがOFFされず、ΔT1が+1℃を超えない場合(ステップS40でNo、ステップS41でNoと判断された場合)には、ステップS39に戻って、図6に示すステップS26,ステップS27の処理を繰り返す。一方、電気ヒータがOFFされるか、またはΔT1が+1℃を超えた場合(ステップS40でYes、またはステップS41でYesと判断された場合)には、ステップS38に進み、冷凍庫12の保冷運転制御を優先する。
【0055】
一方、ステップS34において、ΔT2が、−2℃〜0℃の範囲内でない場合(ステップS34でNoと判断された場合)には、次に、ΔT2が、0℃〜+0.5℃の範囲内であるか否かを判断する(ステップS36)。その結果、ΔT2が、0℃〜+0.5℃の範囲内である場合(ステップS36においてYesと判断された場合)には、次に、ΔT1が−0.5℃以下であるか否かを判断する。その結果、ΔT1が−0.5℃以下でない場合(ステップS37でNoと判断された場合)には、ステップS38に進み、冷凍庫12の保冷運転制御を優先する。一方、ΔT1が−0.5℃以下である場合(ステップS37でYesと判断された場合)には、ステップS39に進み、冷蔵庫13側の制御である図6のステップS26,ステップS27の処理を優先して行う。すなわち、コンプレッサが運転中である場合には、コンプレッサをOFFして、ステップS26,ステップS27の処理を優先する。そして、電気ヒータがOFFされず、ΔT1が+1℃を超えない場合(ステップS40でNo、ステップS41でNoと判断された場合)には、ステップS39に戻って、図6に示すステップS26,ステップS27の処理を繰り返す。一方、電気ヒータがOFFされるか、またはΔT1が+1℃を超えた場合(ステップS40でYes、またはステップS41でYesと判断された場合)には、ステップS38に進み、冷凍庫12の保冷運転制御を優先する。
【0056】
一方、ステップS36において、ΔT2が、0℃〜+0.5℃の範囲内でない場合(ステップS36においてNoと判断された場合)には、ステップS31に戻る。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明のクールコンテナのコンテナ構造を示す概略縦断面図である。
【図2】本発明のクールコンテナを上方から見た通気ダクト部分の横断面図である。
【図3】往路側シャッタ部材及び復路側シャッタ部材の構造を示す断面図である。
【図4】本発明のクールコンテナにおける2温度帯の制御を行う制御システムの機能ブロック図である。
【図5】冷凍庫側の通常の保冷運転制御の処理を示すフローチャートである。
【図6】冷蔵庫側の通常の保冷運転制御の処理を示すフローチャートである。
【図7】優先度による保冷運転制御の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
11 断熱仕切板
12 前室(冷凍庫)
13 後室(冷蔵庫)
14 コンテナ外壁(天壁)
15 コンテナ内壁
16 通気ダクト
161 往路側通気ダクト
162 復路側通気ダクト
17a 冷凍機収納部
17b 循環ファン収納部
18 循環ファン
19 バルクヘッド
20 冷凍機
21 冷気導入ファン
22 冷気導入ファン収納部
23 循環ファン
24 循環ファン収納部
26 バルクヘッド
311 往路側シャッタ部材
312 復路側シャッタ部材
33 開口部
34 シャッタ取付板
36 支持軸
51 制御部
52 温度センサ
53 電気ヒータ駆動部
54 ファン駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン駆動の発電機搭載型冷凍機によって、第1室と第2室に仕切られたコンテナ内の各室をそれぞれ異なった設定温度を目標として制御することにより、保存温度の異なる貨物を混載可能なクールコンテナであって、前記第1室に設けられた前記冷凍機の冷気を前記第2室に導入することによって第2室の温度制御を行うとともに、第2室の温度が下がり過ぎた場合には、第2室に設けられているヒータによって温度を維持するように制御を行う制御手段を備えた保冷運転制御装置において、
前記制御手段は、前記冷凍機のコンプレッサまたは前記ヒータのいずれか一方を運転中は他方の運転を停止するように制御することを特徴とするクールコンテナの保冷運転制御装置。
【請求項2】
前記コンプレッサまたは前記ヒータのいずれかを優先して制御する優先度が設定されており、前記制御手段は、この優先度に従ってコンプレッサまたはヒータのいずれかを制御することを特徴とする請求項1に記載のクールコンテナの保冷運転制御装置。
【請求項3】
前記第1室を冷凍庫、前記第2室を冷蔵庫とし、前記冷凍庫側の設定温度に対する庫内温度の差である冷凍側温度偏差をΔT1、前記冷蔵庫の設定温度に対する庫内温度の差である冷蔵側温度偏差をΔT2とするとき、
前記制御手段は、1℃<ΔT1の場合には、前記コンプレッサを制御して冷凍庫の温度制御を優先することを特徴とする請求項2に記載のクールコンテナの保冷運転制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、ΔT2<−2℃の場合に、ΔT1<0.5℃である場合には、前記ヒータを運転して冷蔵庫の温度制御を優先することを特徴とする請求項3に記載のクールコンテナの保冷運転制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、−2℃<ΔT2<0℃の場合に、ΔT1<0℃である場合には、前記ヒータを運転して冷蔵庫の温度制御を優先することを特徴とする請求項3または請求項4に記載のクールコンテナの保冷運転制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、0℃<ΔT2<0.5℃の場合に、ΔT1<−0.5℃である場合には、前記ヒータを運転して冷蔵庫の温度制御を優先することを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれかに記載のクールコンテナの保冷運転制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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