説明

グアールを精製するためのプロセス

本発明は、グアールを精製するためのプロセスに関し、上記プロセスは、ボレートと水溶液中のグアールとを合わせる工程、ならびに上記水溶液を、有機溶媒で処理して、精製グアールの沈殿を誘導する工程を包含する。本発明の別の実施形態は、眼用処方物に関し、上記処方物は、記載されるプロセスによって生成される精製グアールを含む。本発明のプロセスを介して生成される材料は、眼用の水性薬学的製品の成分として、特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願との相互参照)
本願は、米国特許法§119に基づき、2009年2月5日に出願された米国仮特許出願第61/150,215号に対する優先権を主張する。この仮特許出願の全内容は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、グアールおよびグアール誘導体に関し、より具体的には、精製グアールおよびグアール誘導体を生成するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
グアールガムは、グアール(クラスタマメとしても公知)植物Cyamopsis tetragonoloba(L.) Taubの内胚乳から得られる。グアールガム粉末は、代表的には、グアール種子から内胚乳(グアール「スプリット(split)」としても公知)を機械的に分離する工程および塩基性溶液中で上記内胚乳材料を水和し、続いて、機械的に製粉および乾燥させて、上記グアール粉末を形成する工程によって生成される。特許文献1(Yehら)は、グアールガム粉末をグアールスプリットから形成するために使用され得る技術を開示する。
【0004】
グアールガム粉末自体は、大部分は、β−(1−4)グリコシド結合によって一緒に連結されるマンノースの直鎖骨格からなり、6位からガラクトースユニットにα−(1−6)結合を介して分岐点を形成する水溶性の非イオン性ポリサッカリドから構成される。加工処理技術は、食品グレード適用、条播き法(drilling)および水圧式破砕流体、および他の産業適用のためにグアールガム粉末を改善もしくは改変するために開示される。特許文献2(Applegren)は、グアールガム粉末を加工処理して、摂取可能なグアール最終製品を生成するための技術を記載する。
【0005】
多くの眼用処方物は、潤滑性および他の望ましい特性を提供する化合物を含む。これら処方物が眼に滴下される場合、このような化合物の特性は、望ましくない問題(例えば、生態接着および摩擦誘導性組織損傷の形成)を防止し得、同様に、以前に損傷した組織の自然治癒および回復を促進し得る。グアールおよびグアール誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルグアール(HP−グアール))は、眼用処方物への潤滑性のような特徴を提供するために使用される。
【0006】
グアールガム粉末は、水溶液中に上記粉末を溶解させ、有機溶媒を添加して、沈殿を誘導する工程によって加工処理されかつ精製され得る。しかし、このようにして形成された沈殿物は、しばしば凝集し、繊維性の特徴を有するガムもしくは粘性の半固体を形成する。このような沈殿物は、濾過および混合装置を詰まらせる傾向にあり、このことは、上記グアール材料を、水性の薬学的生成物(例えば、滅菌眼用溶液)を製造するための商業的スケールのプロセスにおいて利用することを困難もしくは不可能にしている。
【0007】
この問題に対処するための以前のアプローチは、乾燥する工程の前もしくは後のいずれかに、得られた沈殿物を機械的に製粉するかもしくは切断して、乾燥固体にすることを必要とする。例えば、EP 0514890(Maruyamaら)は、ポリサッカリド(グアールガムを含む)を精製するための方法を開示する。Maruyamaの方法は、さらなる加工処理のための望ましいポリサッカリド粒度を生成するために沈殿物カッターの使用を必要とし、好ましくは、沈殿を誘導するためにイソプロパノールを使用する。しかし、そのようにもたらされた上記乾燥固体は、非常に低密度であるので、このことは、上記乾燥固体を、大量に輸送しかつ貯蔵するのに、より高価かつ不便にしている。さらに、このプロセスは、沈殿後に残っている有機物が大量であるので、長い加工処理時間および乾燥時間を有する。
【0008】
以前の開示は、局所的眼用処方物(特に、ゲル化処方物)において使用するためのグアールおよびボレートの組み合わせの有用性を議論した。特許文献4(Asgharian)は、このようなグアール/ボレート組み合わせを記載するが、グアールガム粉末からグアールを生成するためのプロセスを開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,536,825号明細書
【特許文献2】米国特許第4,754,027号明細書
【特許文献3】欧州特許第0514890号明細書
【特許文献4】米国特許第6,403,609号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、一般に、グアールおよびグアール誘導体を生成するためのプロセスに関する。本発明のプロセスを介して生成される材料は、眼用の水性薬学的製品の成分として特に有用である。
【0011】
本発明者らは、グアール加工処理方法の一部として、ボレートと水溶液中のグアールとを合わせることが、公知のプロセスによって生成されるグアールと比較して、改善された純度、溶解度、透明性、および熱安定性特性を有する顆粒状グアール沈殿物を生じることを予測外にも発見した。本発明に従うプロセスによって生成されるグアールはまた、改善された水和特性を有する。
【0012】
理論には拘束されないが、グアールは、ボレートと、塩析を介して相分離し得るアニオン性の多価電解質ポリマーを形成するようである。このことは、溶液中に、上記ポリマーの電荷が、塩、緩衝化剤、および/もしくはpHで調節される場合、これは、時間を経ると、溶液から、沈殿し得る非常に架橋した粒子になり得ることを意味する。任意の有機溶媒の添加は、このように形成される粒子をさらに誘導して、上記上清から沈殿物を沈殿させる。この発見は、ほんの僅かな制御されるプロセスおよびレオロジーパラメーターとともにスケール調節可能な製造プロセスへと組み込まれ得る。このように生成されるグアールは、望ましい粘性および溶液透過(solution transmission)特性を有し、溶液中で迅速に水和し、改善された純度プロフィールを有する。
【0013】
本発明の実施形態は、製薬グレードのグアール組成物を製造するためのプロセスに関し、上記プロセスは、ボレートと水溶液中のグアールとを合わせる工程、および有機溶媒を上記水溶液に添加することによって、グアールを沈殿させる工程を包含する。
【0014】
本発明はさらに、局所投与のために処方される眼用薬学的組成物において使用するのに特に適切なグアール誘導体(例えば、ヒドロキシエチルグアールおよびカルボキシメチルヒドロキシプロピルグアール)を生成するためのプロセスに関する。
【0015】
本発明はまた、薬学的適用および医学的適用に十分に適した、特に、潤滑剤および粘性増強剤として特に適した、上記のプロセスによって生成される組成物の提供に関する。
【0016】
前述の要旨は、本発明の特定の実施形態の特徴および技術的利点を広く記載する。さらなる特徴および技術的利点は、以下の発明の詳細な説明で記載される。本発明の特徴であると考えられる新規な特徴は、発明の詳細な説明からよりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明のより完全な理解、およびその利点は、添付の図面の図とともに考慮して、以下の説明を参照することによってもたらされ得る。ここで類似の参照番号は、類似の特徴を示す。
【図1】図1は、熱滅菌したグアールの測定した安定性を比較する棒グラフである。
【図2】図2は、異なる技術を使用して加工処理したヒドロキシプロピル化グアールと比較して、本発明に従うグアールの測定された粘性を比較する棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
グアール粉末および水は、水溶液もしくはスラリーを形成するために合わされる。上記グアールおよび水のスラリーは、次いで、上記グアールを分散させるために混合される。水中のグアール濃度は変動し得るが、代表的には、0.1%〜1.5% w/vである。好ましい実施形態において、上記グアールは、最終濃度1.0% w/v未満、および好ましくは、約0.5%〜0.8% w/vを提供するに十分な量で添加され、pH約6.0〜7.0で2時間以上にわたって水中で水和させられる。水和のための異なる時間およびpH条件が、他の実施形態において使用され得る。種々の温度もまた、水和に使用され得る。一実施形態において、70℃での水和が好ましい。
【0019】
上記グアール水溶液は、次いで、ボレート源と合わされ、必要に応じて、1回以上の濾過工程後に、ボレートと合わせられる。ボレートの添加後に、有機溶媒が、上記ボレートおよびグアールの溶液に添加されて、グアールの沈殿を誘導する。上記沈殿したグアールは、次いで、単離され、必要に応じて、上記単離の前に、1回以上の沈殿および/もしくは洗浄工程が伴う。上記単離されたグアールは、乾燥され、必要に応じて、製粉されて、所望の粒度および均一性を生じる。
【0020】
グアールガムおよびグアール誘導体は、一般に、種々のレベルの純度を有する粉末形態で利用可能である。これら粉末は、本発明の実施形態における使用に好ましい。市販されているグアール誘導体としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、およびカルボキシメチルヒドロキシプロピル置換基を含むもののような誘導体、ならびに他の疎水性誘導体。本発明の実施形態で使用される他のグアール誘導体としては、カチオン性グアールガム、アニオン性グアールガムが挙げられる。このようなグアールおよびグアール誘導体は、例えば、Rhodia,Inc.(Cranbury,New Jersey)、Hercules,Inc.(Wilmington,Delaware)、TIC Gum,Inc.(Belcamp,Maryland)、AEP Colloids,Inc.(Hadley,NY)、およびLamberti USA,Inc.(Hungerford,TX)から得られ得る。好ましいグアールガム粉末は、TIC Gumから得られるUSPグレードもしくは一般グレードのグアール粉末である。
【0021】
本発明の実施形態で使用されるボレート源は、ホウ酸および他のボレート塩(例えば、ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)およびホウ酸カリウムである。ホウ酸が好ましい。ボレートは、代表的には、水性グアールと組み合わされる場合、濃度0.05%〜0.5% w/vへと添加される;0.01% w/vが好ましい。しかし、他の濃度が、本発明のプロセスにおいて使用され得る。また、上記ボレートの濃度は、pH、グアール水溶液中のグアールの濃度、混合時間などに依存して、変動し得る。ホウ酸アルキル(例えば、ホウ酸トリメチル)およびホウ酸フェニルの使用は、その後の沈殿工程が、より高いpHで行われることを可能にし得る。
【0022】
本発明のプロセスは、有機溶媒の添加を利用する沈殿工程を包含する。好ましい実施形態において、上記有機溶媒は、上記グアールおよびボレートの溶液に添加されて、沈殿を誘導する。種々の有機溶媒が使用され得る(例えば、エタノール、アセトン、およびイソプロパノール;しかし、アセトンが好ましい)。1種以上の有機溶媒が使用され得、上記溶媒は、種々の比で水とさらに混合され得る。最初のグアール沈殿のために、1:1 アセトンと水の溶液が、好ましく、上記溶液は、上記グアールの溶液およびボレートの溶液の最終比が1:1になるまで徐々に添加される。
【0023】
ボレートとグアールとを合わせる前の選択肢的な濾過工程は、当業者に公知の種々のフィルタおよび濾過技術を利用し得る。好ましい濾過技術は、デプスフィルタ(depth filter)(例えば、Pall Corp.(East Hills,NY)によって製造されている40μm、20μmおよび10μmのSealKleen(登録商標)フィルタ)を利用する。活性炭フィルタ(例えば、Millipore(Billerica,MA)によって製造されているMilliStakTMシリーズ)もまた、使用され得る。圧力および温度制御が、使用される上記フィルタおよび濾過システムに依存して、上記濾過工程の間に利用され得る。
【0024】
本発明の沈殿工程後に生成されるグアール固体は、当業者に公知の濾過装置(例えば、10ミクロンフィルタプレートもしくはWhatman,Inc.(Florham Park,NJ)のような会社から容易に入手可能なフィルタ)を使用して単離され得る。他の分離技術(例えば、遠心分離)もまた、使用され得る。
【0025】
上記最終の沈殿および洗浄から得られた沈殿物が、いったん濾過もしくは遠心分離もしくは他の分離技術によって分離されたら、上記沈殿物は、乾燥させられ得、必要に応じて、最終精製グアール粉末を生成するために、これら手順のための利用可能な技術を使用して製粉され得る。
【0026】
本発明のプロセスによって生成されるグアール組成物は、種々のタイプの生成物において使用され得るが、潤滑剤および/もしくは湿潤剤として機能する薬学的生成物および医学的製品において特に有用である。このような処方物は、必要に応じて、1種以上のさらなる賦形剤および/もしくは1種以上のさらなる活性成分を含み得る。
【0027】
薬学的処方物中で一般に使用される賦形剤としては、等張化剤、保存剤、キレート化剤、緩衝化剤、および界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。他の賦形剤は、可溶化剤、安定化剤、快適性を増強する薬剤、ポリマー、皮膚軟化薬、pH調節剤、および/もしくは潤滑剤を含む。種々の賦形剤のうちのいずれかが、本発明の処方物中で使用され得る。これらとしては、水、水と水混和性溶媒(例えば、C1−C7−アルカノール)との混合物、0.5〜5% 非毒性の水溶性ポリマーを含む植物性油もしくはミネラルオイル、天然の生成物(例えば、アルギネート、ペクチン、トラガカントガム、カラヤガム、キサンタンガム、カラギーナン、寒天およびアカシアガム)、デンプン誘導体(例えば、デンプンアセテートおよびヒドロキシプロピルデンプン)、ならびに同様に他の合成生成物(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、好ましくは、架橋ポリアクリル酸およびそれら生成物の混合物が挙げられる。上記賦形剤の濃度は、代表的には、上記グアールの濃度の1〜100,000倍である。好ましい実施形態において、上記処方物に含められるべき賦形剤は、代表的には、上記処方物のグアール成分に対してそれらが不活性であることを基本にして選択される。
【0028】
眼用処方物に関して、適切な張度調節剤としては、マンニトール、塩化ナトリウム、グリセリン、ソルビトールなどが挙げられるが、これらに限定されない。適切な緩衝化剤としては、ホスフェート、ボレート、アセテートなどが挙げられるが、これらに限定されない。適切な界面活性剤としては、イオン性および非イオン性の界面活性剤(しかし非イオン性界面活性剤が好ましい)、RLM 100、POE 20 セチルステアリルエーテル(例えば、Procol(登録商標) CS20)およびポロキサマー(例えば、Pluronic(登録商標) F68)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
本明細書に記載される処方物は、1種以上の保存剤を含み得る。このような保存剤の例としては、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、過ホウ酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、アルコール(例えば、クロロブタノール、ベンジルアルコールもしくはフェニルエタノール)、グアニジン誘導体(例えば、ポリヘキサメチレンビグアニド)、過ホウ酸ナトリウム、ポリクオタニウム−1、アミノアルコール(例えば、AMP−95)、またはソルビン酸が挙げられる。特定の実施形態において、上記処方物は、保存剤が必要とされないように、それ自体で保存(self−preserved)され得る。
【0030】
眼用投与については、上記処方物は、溶液、懸濁物、もしくはゲルであり得る。好ましい局面において、上記グアールもしくはグアール誘導体を含む処方物は、滴剤の形態で、水溶液中で眼へ局所投与するために処方され得る。用語「水性の」とは、代表的には、上記処方物の>50重量%、より好ましくは、>75重量%、および特に、>90重量%が水である水性処方物を意味する。これら滴剤は、好ましくは、無菌であり得るので、上記処方物の静菌成分が不要になり得る単一用量アンプルから送達され得る。あるいは、上記滴剤は、好ましくは、送達される場合に上記処方物から任意の保存剤を抽出するデバイス(このようなデバイスは、当該分野で公知である)を含み得る複数用量ボトルから送達され得る。
【0031】
他の局面において、本発明の成分は、濃縮ゲルもしくは同様のビヒクルとして、または眼瞼の下に配置される溶解可能な挿入物として、眼に送達され得る。
【0032】
眼に局所投与するのに適合されている本発明の処方物は、蒸発および/もしくは疾患によって引き起こされる涙液の任意の高張性に打ち勝つように、好ましくは、等張性、もしくは僅かに低張性である。このことは、上記処方物の重量オスモル濃度210〜320ミリオスモル/kg(mOsm/kg)もしくはその付近のレベルにするために、等張化剤を必要とする。本発明の処方物は、一般に、220〜320mOsm/kgの範囲の重量オスモル濃度を有し、好ましくは、235〜300mOsm/kgの範囲の重量オスモル濃度を有する。上記眼用処方物は、一般に、滅菌水溶液として処方される。
【0033】
特定の実施形態において、本発明のグアール組成物は、1種以上の涙液置換物とともに処方される。種々の涙液置換物が当該分野で公知であり、これらとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:モノマー性ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、およびエチレングリコール);ポリマー性ポリオール(例えば、ポリエチレングリコール);セルロースエステル(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびヒドロキシプロピルセルロース);デキストラン(例えば、デキストラン70);ビニルポリマー(例えば、ポリビニルアルコール);およびカルボマー(例えば、カルボマー934P、カルボマー941、カルボマー940およびカルボマー974P)。本発明の特定の処方物は、コンタクト・レンズもしくは他の眼用製品とともに使用され得る。
【0034】
本発明の処方物を構成する成分の濃度は、変動し得ることもまた、企図される。好ましい実施形態において、上記グアール成分は、濃度約0.1%〜0.25% w/vで眼用処方物に存在する。しかし、上記濃度は、所定の処方物中の成分の付加、置換、および/もしくは差し引きに依存して変動し得る。
【0035】
好ましい処方物は、pH約3〜pH約8.0で上記処方物を維持する緩衝系を使用して調製され得る。局所処方物(特に、上記のように、局所的眼用処方物)は、上記処方物が適用されるかもしくは分与される組織に適合する生理学的pHを有するのが好ましい。
【0036】
特定の実施形態において、本発明のグアール組成物を含む眼用処方物は、1日に1回投与される。しかし、上記処方物はまた、任意の投与頻度(1週間に1回、5日ごとに1回、3日ごとに1回、2日ごとに1回、1日に2回、1日に3回、1日に4回、1日に5回、1日に6回、1日に8回、1時間ごと、またはより高い頻度が挙げられる)での投与のために処方され得る。このような投与頻度はまた、治療レジメンに依存して、種々の期間にわたって維持される。特定の治療レジメンの期間は、1回の投与から、数ヶ月もしくは数年に及ぶレジメンまで、変動し得る。上記処方物は、種々の投与量で投与されるが、代表的投与量は、各投与で1〜2滴、またはゲルもしくはグアール組成物の他の形態の匹敵する量である。当業者は、特定の適応症についての治療レジメンを決定することに精通している。
【0037】
以下の実施例は、本発明の選択された実施形態をさらに例示するために提示される。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
本発明の好ましいプロセスは、TIC Gum,Incから得たUSPグレードのグアール粉末を利用する。上記未加工グアール粉末を使用して、0.8% グアール水溶液を形成する。上記溶液を、pH6〜7で4時間にわたって、水中でグアール(8g)を混合することによって調製する。次いで、上記グアール水溶液を、40μm 孔サイズのデプスフィルタ、続いて、20μmおよび10μmの孔サイズのデプスフィルタ(Pall SealKleen(登録商標))を通して、25℃で加圧濾過(5psi)する。次いで、ホウ酸(2g)を添加し、上記濾過した0.8% グアール溶液中に溶解させる。上記ホウ酸が溶解した後、必要であれば、そのpHを6〜6.5に調節する。
【0039】
次いで、グアール沈殿物を、上記グアールおよびホウ酸の溶液から、混合しながら沈殿物が形成し始めるまで、アセトン中で滴定する(10mL/分)ことによって形成する。上記混合を停止し、上記沈殿物を30分間沈殿させる。さらなるアセトンを添加し、得られた沈殿物をさらに30分間沈殿させる。合計1Lのアセトンを、この量のグアールおよびボレートに対して使用した。上記沈殿工程の終了後に、その上清をデカントし、上記沈殿物を洗浄した。水:アセトン溶液(1:1; 1L)を、上記沈殿物に添加し、1時間にわたって混合する。洗浄後、その上清をデカントする。第2の沈殿工程を、その前に記載されるのと同様に行う。上記第2の沈殿の後、500mLのアセトンおよび1時間の混合を使用する第2の洗浄工程を、行う。沈殿物を、30分間沈殿させ、その上清をデカントする。
【0040】
次いで、洗浄したグアールを、アセトン(250mL)を添加し、さらなるアセトンですすぎ、それとともに移して、濾紙(Whatman,Inc;Florham Park,NJ)を使用してブフナー漏斗でグアールを単離することによって、単離する。次いで、単離したグアールを、乾燥プレートに移し、60℃で24時間にわたって真空下(30mmHg)で乾燥させる。
【0041】
(実施例2)
以下の表1および表2は、(i)エタノール/アセトン沈殿物および洗浄工程のみを使用して精製したグアール、および(ii)ボレート添加およびエタノール/アセトンを使用して精製したグアールを比較して、水溶液中の非加工処理グアール(USPグレード;TIC Gum,Inc.)を比較する実験の結果を示す。透過性測定のために選択した500nm波長は、可視スペクトル領域に存在し、上記溶液の視覚的透明性に対応する一方で、280nm波長は、タンパク質不純物の吸収領域にあり、よって、保持された不純物の間接的測定になる。
【0042】
表1に示されるように、本発明のプロセスに従って生成されたグアール(「精製グアール」)は、水溶液中の未精製グアール粉末(「未加工グアール」)中の未精製グアール粉末、およびボレート添加なしのエタノール/アセトン沈殿物を使用して精製したグアールと比較して、よりよい水和特性を示す。精製グアールはまた、500nmおよび280nmで優れた透過性を示し(表2)、このことは、はるかによい視覚的透明性(500nm)および低濃度の不純物(280nm)を示す。また、精製グアールの0.5% 水溶液は、室温で4週間後に沈殿物を精製しなかった一方で、他の試験したグアール(未加工グアールHP8A、およびHPGG)は、全て沈殿物を形成した。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

(実施例3)
本発明に従って生成したグアールの熱安定性を、非加工処理グアールおよび他の技術を使用して加工処理したグアールの熱安定性と比較した。この実験において、グアールサンプルを、121℃で35分間、オートクレーブにかけた。上記実験の結果を、図1に示す。
【0046】
示されるように、未加工グアールおよびエタノールとアセトンでの沈殿技術を使用して生成したグアールは、熱安定性が乏しく、オートクレーブ前の粘性の3.2%および29.5%を保持したに過ぎなかった。本発明の一実施形態に従う技術で精製したグアールは、市販のHP8Aグアールおよびヒドロキシプロピル化グアール誘導体 HPGG-75のものと匹敵する粘性を保持した。
【0047】
(実施例4)
本発明の一実施形態に従うグアール処方物のpH感受性を、市販のHP8Aグアールおよびヒドロキシプロピル化グアール誘導体HPGG−75のものと比較した。上記処方物は、グアールと、ホウ酸、塩化ナトリウム、ソルビトールおよびポリクオタニウム−1とから構成された。その粘性を、40℃で1週間後に測定した。図2に示されるように、本発明のプロセスを使用して精製したグアールは、生理的pH(7〜8)で良好な粘性保持を示し、HP8AもしくはHPGG−75よりもpH変化に対する感受性が有意に高かった。そしてpH8.0で粘性の増大を示す。
【0048】
本発明およびその実施形態は、詳細に記載されてきた。しかし、本発明の範囲は、本明細書に記載されるいかなるプロセス、製造、組成物、化合物、手段、方法、および/もしくは工程の特定の実施形態に制限されることをも意図しない。種々の改変、置換、およびバリエーションは、本発明の趣旨および/もしくは本質的な特徴から逸脱することなく、本明細書に記載されるプロセス、組成物および処方物に対して行われ得る。よって、当業者は、本明細書に記載される実施形態と実質的に同じ機能を発揮するか、または同じ結果を実質的に達成する後の改変、置換、およびバリエーションが、本発明のこのような関連実施形態に従って利用され得ることを、本開示から容易に認識する。従って、以下の特許請求の範囲は、それらの範囲内に、本明細書で開示されるプロセス、製造、組成物、化合物、手段、方法、および/もしくは工程_Hlt70835394_Hlt70835394に対する改変、置換、およびバリエーションを包含することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グアールを製造するためのプロセスであって、該プロセスは、
ボレートと水溶液中のグアールとを合わせる工程;および
有機溶媒を該水溶液に添加することによって、グアールを沈殿させる工程、
を包含するプロセス。
【請求項2】
前記有機溶媒は、アセトンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
沈殿したグアールを濾過する工程、
をさらに包含する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記濾過する工程は、沈殿したグアールを、孔サイズ40μm以下を有する1つ以上のフィルタを使用して濾過する工程を包含する、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記フィルタは、40μm、20μm、および10μmからなる群より選択される孔サイズを有する、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記合わせる工程は、ボレートを、グアール水溶液に添加する工程を包含する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記グアール水溶液は、前記ボレートを添加する工程の前に濾過される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ボレートは、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸、ホウ酸アルキル、ホウ酸トリメチル、ホウ酸フェニル、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ボレートは、前記合わせる工程の間に添加されて、前記水溶液中、0.05%〜0.05% w/vの濃度を形成する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記グアールは、前記水溶液中、1.0% w/v未満の濃度である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
請求項1に記載のプロセスによって生成される、グアール。
【請求項12】
前記グアールは、ヒドロキシエチルグアール、ヒドロキシプロピルグアールガラクトマンナン、もしくはカルボキシメチルヒドロキシプロピルグアールである、請求項11に記載のグアール。
【請求項13】
眼用処方物であって、
請求項1に記載のプロセスによって生成されるグアール、および1種以上の賦形剤を含む、
処方物。
【請求項14】
前記グアールは、ヒドロキシエチルグアール、ヒドロキシプロピルグアールガラクトマンナン、カルボキシメチルヒドロキシプロピルグアール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項13に記載の眼用処方物。
【請求項15】
前記グアールは、ヒドロキシプロピルグアールガラクトマンナンである、請求項13に記載の眼用処方物。
【請求項16】
前記グアールは、0.1%〜0.25% w/vの濃度で存在する、請求項13に記載の眼用処方物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−516936(P2012−516936A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549292(P2011−549292)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/023369
【国際公開番号】WO2010/091287
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)
【Fターム(参考)】