説明

グラウンドアンカー工法

【課題】アンカー孔を切削し、ついでアンカー孔内に引張材を挿入して、その先端部をグラウト材により定着させたのち、アンカー孔の周りに型枠を設置して型枠内に鉄筋を配筋し、ついでコンクリートを打設して鉄筋コンクリート製の受圧板を構築する。その後、受圧板より突出する引張材に定着具を取付けて緊張し定着するグラウンドアンカー工法において、型枠を支保工を要することなく設置し、上記工法を安価にできるようにする。
【解決手段】縦桟2aと横桟2bを格子状に組み合わせた構造体2に支圧板6を連結材4を介して連結した定着体1をアンカー孔9より突出する引張材12に差込み、ついでその周りに型枠15を配置し、該型枠15と定着体1を鉄筋等の連結具17にて連結して組み付けると共に、配筋したのちコンクリートを打設する。コンクリートの打設は受圧板6の表面が埋まらない程度まで行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面安定化のため法面に施工されるグラウンドアンカー工法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラウンドアンカー工法は、一般に次のようにして行われる。
地山の法面にアンカー孔を削孔したのち、アンカー孔内にPC鋼線等の引張材を挿入し、ついでアンカー孔内にモルタル等のグラウト材を注入して引張材先端部を地中に定着する。定着後、アンカー孔から突出する引張材に受圧板を差込み、締着具で締め込んで引張材を緊張し定着する。この工法は、引張材の引張力の反力を受圧板で支持するもので、その一例が下記特許文献1に開示され、受圧板としては、プレキャストコンクリートブロックや鋼製、アルミ製、FRP製等のものが用いられ、また現場にてコンクリートを打設する鉄筋コンクリート製のものも知られる。
【特許文献1】特公平5−85696号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
受圧板のうち、軽量なものは、引張材の引張力の反力に耐える耐力の点で難点があるのに対し、プレキャストコンクリートブロックや鋼製の受圧板は、引張材の引張力の十分な反力に耐え得るが、重量が嵩んで法面に施工する際には、クレーン等を設置する必要があるうえ、施工現場まで資材を搬入するのも容易でない。また法面に凹凸があると、法面と受圧板との間に不陸が生ずる。これに対し、現場にてコンクリートを打設する鉄筋コンクリート製の受圧板は、個々の資材の搬入が容易で、クレーンを設置しなくても施工でき、なによりも安価で、また法面が多少凹凸になっていても法面と不陸になることはないが、施工に際しては、型枠を組付けたり、組付けた型枠が崩れないように支持する支保工が必要で、勾配のきつい法面においては、このような作業を行うのは容易でない。
【0004】
本発明は、現場にてコンクリートを打設する鉄筋コンクリート製の受圧板における上記の利点を生かす一方で、支保工を不要にしてより安価に提供できるグラウンドアンカー工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、地山の法面にアンカー孔を削孔したのち、該アンカー孔内に引張材を挿入して定着する工程と、縦桟と横桟を格子状に組み合わせるか、或いはグレーチングよりなる構造体及び該構造体に連結材を介して連結される支圧板を有する定着体を用い、該定着体をアンカー孔より突出する引張材に差込んで前記構造体を法面に設置したのち、前記定着体より突出する引張材を締着具により定着する工程と、前記定着体の周りに型枠を設置し、定着体と型枠を連結具により連結する工程と、型枠内に鉄筋を配筋したのち、コンクリートを定着体のうち、少なくとも支圧板表面が露出するように打設する工程とよりなることを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、構造体を構成する縦桟と横桟またはグレーチングの主部材は、そのうちの少なくとも一部が断面を先細り状となし、法面に容易に食い込み可能であることを特徴とする。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、構造体には側方に突出して法面への食い込み量を規制するストッパーが設けられることを特徴とする。
【0008】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3に係る発明において、定着体には引張材を通すパイプが取付けられ、コンクリートがパイプ外の型枠内に打設されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によると、型枠内へのコンクリートの打設により鉄筋コンクリート製の受圧板が形成されるが、コンクリート打設に際し組み付けられる型枠は定着体に連結具により連結されて支持され、支保工を必要としない。また受圧板を形成するための、定着体、定着具、型枠、鉄筋等の個々の資材は、構築された鉄筋コンクリート製の受圧板に比べ、軽量で嵩張らないため現場への搬入が容易であり、クレーンを設置しなくても施工できて安価である。更に法面が多少凹凸になっていても、不陸になることがない。
【0010】
請求項2に係る発明によると、定着体が法面への取付時、法面に食い込み易くなり、仮止めされて法面よりずり落ちるのを防止することができる。
【0011】
請求項3に係る発明によると、定着体の法面への食い込みを一定に規制することができ、これにより鉄筋コンクリート製受圧板の厚み(法面からの高さ)を一定にすることができる。
【0012】
請求項4に係る発明によると、引張材をパイプに通し、パイプで取囲むことによりコンクリート打設時にコンクリートが引張材に付着するのが防止され、定着具による定着に支障を生ずることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面により説明する。
図1は、全体を符号1で示す定着体の平面、図2は法面に取付けた定着体1の断面を示すもので、定着体1は縦桟2aと横桟2bを中心部を除いて格子状に組み合わせ、中心部に矩形の開口部3を形成した鋼製の構造体2または中心部に開口部3を設けたグレーチング(これらを以下単に構造体という)と、開口部3の四隅より立設される鋼管よりなる連結材4を介して構造体2に連結され、中心部に前記開口部3と同軸の透孔5を形成し、かつ周縁に側方に突出する取付部8を取付けた支圧板6と、前記構造体2の側面に固着され、構造体2の中間部より側方に突出する部分がストッパーとしての機能を果たす山形鋼7とからなっている。
【0014】
前述の縦桟2aと横桟2bまたは主部材は、図2に示す例では断面I形をなしているが、図3に示すようなフラットバーであってもよい。好ましくは図4に示すような断面が先細りの楔状に形成される。
【0015】
前記支圧板6は構造体2に開口部四隅の連結材4を介して連結されているが、開口部周縁又は開口部内側に固着される鋼管製の1つの連結材により連結してもよい。
【0016】
また山形鋼7は図1に示す例では、定着体1の四側面に取付けられているが、図5に示すように対向する二側面にのみ取付けてもよい。
【0017】
次に前記定着体1を用いたグラウンドアンカー工法について説明する。
先ず、常法により図6に示すように、法面にアンカー孔9を削孔し、該孔の孔底にモルタル等のグラウト材11を注入する。ついでアンカー孔9内にPC鋼線よりなる引張材12を挿入し、その先端部をグラウト材内に押し込んで定着させる。
【0018】
次にアンカー孔9より突出する引張材12の突出部分に図2に示す定着体2の開口部3及び透孔5を通すようにして該定着体2を法面に設置する。設置に際しては、構造体2を押し込んで該構造体2を構成する縦桟2a及び横桟2b(構造体がグレーチングである場合、グレーチングを構成する主部材)の先端を法面に食い込ませる。これにより定着体1が法面に仮止めされ、法面よりずり落ちることがない。なお、構造体2の縦桟2a及び横桟2bまたは主部材は、そのうちの一部好ましくは全部を先細り状に形成すれば、法面への食い込みが容易となる。構造体2の法面への食い込みは、山形鋼7の側方に突出する部分がストッパーとしての機能を果たし、該部によって法面への食い込み量が規制され、該部が法面に当たる限度まで食い込み可能となる。法面の地盤が軟弱である場合、縦桟2a及び横桟2bまたは主部材を先細り状に形成する必要がない。この場合、山形鋼のストッパーとしての機能を果たす部分は幅広にしてストッパーとしての機能を確実に果たすようにする必要がある。定着体1を取付後、プラスチック製、紙製、金属製等のパイプ16を引張材12に上方より通し、前記透孔5及び構造体2の開口部3に装入する。
【0019】
その後、定着体1の周りに型枠15を組み、定着体1と型枠15を鉄筋等の連結具17により連結する(図6)。連結具17を定着体1、連結材4、パイプ16、支圧板6等に取付けるには、例えば支圧板6に取付けられる取付部8(図1参照)を定着体1、連結材4或いはパイプ16等に取付け、各取付部8にボルトやネジ等の止着具によって取付けるか、或いは溶接等によって取付けられ、型枠15への取付けは、溶接や図6に示すようなボルトやネジ等の止着具19により行われる。
【0020】
定着体1の周りに型枠15を組付け後、型枠15内に鉄筋18を配筋する。鉄筋18を配筋する際は、連結具17についても同じであるが、定着体1、連結材4、パイプ16、支圧板6等に取付部8を取付け、該取付部8に取付けるようにするのが望ましい。これにより鉄筋取付時の位置決めや取付けが容易となる。配筋後、型枠15を被せ蓋をする。この型枠15は型枠下面が支圧板6下面と面一となるようにして組付けられる。その後、法面の上側に位置する型枠15にあけられた孔20を通して型枠内にコンクリートを打設する。コンクリート打設時、引張材12はパイプ16に通されているため、コンクリートが付着するのが防止される。養生後、各型枠15が取外され、その後、支圧板6の透孔5より突出する引張材12に締着具13を取付け、支圧板上で引張材12を緊張させて定着する(図7)。こうして鉄筋コンクリート製の受圧板21が構築される。
【0021】
本工法によると、型枠15は定着体1に連結具17により連結されるため支保工を必要とせず、また定着体1、パイプ16、型枠15、締着具13、鉄筋18、連結具17等、個々の資材は、比較的軽量で嵩張らないため、現場への搬入が容易であり、クレーンを設置しなくても組み付けできること、定着体1は構造体2の桟2a、2bまたは主部材を法面に押し込んで食い込ませることにより仮止め状態で法面に取付けられ、法面よりずり落ちるのが防止されるうえ、法面への食い込みは、山形鋼7の側方に突出する部分がストッパーとなって規制され、一定以上の厚みの受圧板を製作できること、引張材12はパイプ16に通されることによりコンクリート打設時にコンクリートが付着するのが防止され、定着具による定着に支障を生ずることがないこと、法面が図示するように多少凹凸になっていてもコンクリートが充填されることにより受圧板と法面との不陸が生ずることがないこと等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】定着体の平面図。
【図2】法面に定着体を取付けた断面図。
【図3】構造体の縦桟又は横桟の断面図。
【図4】縦桟又は横桟の別の例の断面図。
【図5】定着体の別の態様の平面図。
【図6】型枠を組み付けた断面図。
【図7】構築された受圧板の断面図。
【符号の説明】
【0023】
1・・定着体
2・・構造体
2a・・縦桟
2b・・横桟
3・・開口部
4・・連結部
5・・透孔
6・・支圧板
7・・山形鋼
8・・取付部
9・・アンカー孔
11・・グラウト材
12・・引張材
13・・締着具
15・・型枠
16・・パイプ
17・・連結具
18・・鉄筋
19・・止着具
20・・孔
21・・受圧板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山の法面にアンカー孔を削孔したのち、該アンカー孔内に引張材を挿入して定着する工程と、縦桟と横桟を格子状に組み合わせるか、或いはグレーチングよりなる構造体及び該構造体に連結材を介して連結される支圧板を有する定着体を用い、該定着体をアンカー孔より突出する引張材に差込んで前記構造体を法面に設置したのち、前記定着体より突出する引張材を締着具により定着する工程と、前記定着体の周りに型枠を設置し、定着体と型枠を連結具により連結する工程と、型枠内に鉄筋を配筋したのち、コンクリートを定着体のうち、少なくとも支圧板が露出するように打設する工程とよりなることを特徴とするグラウンドアンカー工法。
【請求項2】
構造体を構成する縦桟と横桟またはグレーチングの主部材は、そのうちの少なくとも一部が断面を先細り状となし、法面に容易に食い込み可能であることを特徴とする請求項1記載のグラウンドアンカー工法。
【請求項3】
構造体には側方に突出して法面への食い込み量を規制するストッパーが設けられることを特徴とする請求項1又は2記載のグラウンドアンカー工法。
【請求項4】
定着体には引張材を通すパイプが取付けられ、コンクリートがパイプ外の型枠内に打設されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のグラウンドアンカー工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−257006(P2009−257006A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109026(P2008−109026)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(598123943)
【出願人】(000133294)株式会社ダイクレ (65)
【Fターム(参考)】