説明

グラウンド

【課題】台風や集中豪雨など際の局地的な大量降雨に起因する水害の防止に有効なグラウンドを提供する。
【解決手段】グラウンド10は、地盤11上に形成された下層基盤12と、下層基盤12上に形成された透水性保水層13と、透水性保水層13上に形成された透水性表層14と、を備え、透水性表層14上に流入した雨水を透水性表層14上に貯留するための堰き止め手段として、透水性表層14の周縁部分に、地表面15と略同じ高さであって且つ透水性表層14表面より高い上縁部16aを有する側溝16を配置している。また、透水性表層14の周辺領域から透水性表層14上に雨水を流入させるための導水手段として、透水性表層14表面を周辺領域の地表面15より低い位置に形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台風や集中豪雨などの際の局地的な大量降雨に起因する水害を回避することのできるグラウンドに関する。
【背景技術】
【0002】
台風や集中豪雨などにより住宅地域などにおいて局地的な大量降雨が続くと、洪水や浸水などの水害が発生する事例が増えている。このような水害発生が増加しているのは、近年、既設の排水設備の処理能力を超えるような局地的な大量降雨が各地で頻発していることに原因があると言われている。そこで、台風や集中豪雨などに見舞われたときの水害発生を防止することを目的として、雨水を地中あるいは地下貯留槽などに一時的に貯留する技術が提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−70126号公報
【特許文献2】特開2005−155298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の雨水貯留施設は、グラウンドの表層に降り注いだ雨水を、表層や透水部などを経由して、表層下方の雨水貯留層に流入させ、そこに一時的に貯留させることにより、大量の雨水が側溝などに流入して水害が発生するのを防止する。
【0005】
一方、特許文献2には、グラウンドや公園などの周辺に設けられた側溝と連通する地下貯留槽を設け、大量降雨時に側溝から溢れる雨水を地下貯留槽に流入させることによって水害発生を防止する技術が記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の雨水貯留施設を構成する雨水貯留層あるいは特許文献記載の地下貯留槽に貯留することのできる水量は限られているため、近年頻発している局地的な大量豪雨の際の降水量に対応できない可能性が高い。
【0007】
本発明は、台風や集中豪雨などの際の局地的な大量降雨に起因する水害の防止に有効なグラウンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のグラウンド構造は、地盤上に形成された下層基盤と、前記下層基盤上に形成された透水性保水層と、前記透水性保水層上に形成された透水性表層と、を備え、前記透水性表層の周辺領域から前記透水性表層上に雨水を流入させるための導水手段と、前記透水性表層上に流入した雨水を前記透水性表層上に貯留するための堰き止め手段と、を設けたことを特徴とするグラウンド。
【0009】
このような構成とすれば、雨天の際にグラウンドに降り注いだ雨水と、周辺領域の地中へ浸透しきれず当該周辺領域からグラウンドに流入した雨水と、はグラウンドの透水性表層を通過して透水性保水層に流入し、そこに貯留される。また、透水性保水層に貯留できない大量の雨水がグラウンドに流入した場合、これらの雨水は堰き止め手段によって透水性表層上に貯留されることにより、一時的な「溜め池」が形成される。このため、既存の排水施設で処理不能な大量の雨水が側溝に流れ込んだり、側溝から雨水が溢れたりするような事態が発生するのを防止することができる。従って、台風や集中豪雨など際の局地的な大量降雨に起因する水害の防止に有効である。
【0010】
ここで、前記透水性保水層を、土材、セメント系固化材及び団粒化剤を含む混合物を固化させて形成すれば、雨水を保水する機能と、保水しきれない雨水は下方へ浸透させる透水機能と、を兼備した、透水性保水層を形成することができる。即ち、土材とセメント系固化材とを混合したものに団粒化剤を加えると、イオンの作用により、土材の粒子とセメント系固化材の粒子とが立体的な団粒構造を形成し、連続した空隙が発生するため、保水性と保水性とをバランス良く兼備した透水性保水層を形成することができる。
【0011】
一方、前記透水性表層の表面と前記堰き止め手段との間に段差緩和手段を設ければ、グラウンド使用者が堰き止め材付近を通過する際の安全性を確保することができる。
【0012】
また、前記段差緩和手段として、前記透水性表層の表面と前記堰き止め手段との間に前記堰き止め手段に向かって上り勾配の斜面部を有する段差解消部材を配置することが望ましい。このような構成とすれば、透水性表層の表面と前記堰き止め手段との間の段差を解消することができるので、車椅子なども容易に通過可能となり、安全性も向上する。
【0013】
さらに、前記段差緩和手段を柔軟な弾性材料で形成すれば、人間やペットの身体や物品などが前記段差緩和手段に接触したときに損傷するのを回避することができるため、さらに安全性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、台風や集中豪雨など際の局地的な大量降雨に起因する水害の防止に有効なグラウンドを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の第一実施形態であるグラウンドの要部を示す垂直断面図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の第一実施形態であるグラウンド10は、地盤11上に形成された下層基盤12と、下層基盤12上に形成された透水性保水層13と、透水性保水層13上に形成された透水性表層14と、を備え、透水性表層14上に流入した雨水Wを透水性表層14上に貯留するための堰き止め手段として、透水性表層14の周縁部分に、地表面15と略同じ高さであって且つ透水性表層14表面より高い上縁部16aを有する側溝16を配置している。また、透水性表層14の周辺領域から透水性表層14の表面14aに雨水を流入させるための導水手段として、透水性表層14の表面14aを周辺領域の地表面15より低い位置に形成している。側溝16の上面開口部には溝蓋16bが被せられ、蓋体16bの一部には通水孔(図示せず)が開設されている。
【0017】
雨天の際にグラウンド10に降り注いだ雨水は、透水性表層14を通過して透水性保水層13に流入し、そこに貯留される。また、グラウンド10の周辺領域に降り注いだ雨水の一部は地表面15から地中へ浸透するが、浸透しきれない残りの雨水は地表面15から溝蓋16bの通水孔(図示せず)を通過して側溝16内へ流入したり、溝蓋16b上を流動してグラウンド10に流入したりする。
【0018】
地表面15から側溝16内へ流入した雨水W1は側溝16に沿って流下し、所定の排水処理施設(図示せず)にて処理されるが、地表面15からグラウンド10に流入した雨水は、グラウンド10に降り注いだ雨水と一緒になって透水性表層14を通過して透水性保水層13に流入し、そこに貯留される。
【0019】
一方、透水性保水層13に貯留できない大量の雨水がグラウンド10に流入した場合、これらの雨水Wは堰き止め手段である側溝16の上縁部16aによって透水性表層14上に貯留されるため、グラウンド10が一時的に「溜め池」としての機能を発揮する。従って、既存の排水施設で処理不能な大量の雨水が側溝16に流れ込んだり、側溝16から雨水W1が溢れたりするような事態が発生するのを防止することができる。このため、台風や集中豪雨など際の局地的な大量降雨に起因する水害の防止に有効である。
【0020】
また、グラウンド10を構成する透水性保水層13は、土材、セメント系固化材及び団粒化剤を含む混合物を固化させて形成されているため、透水性保水層13に浸透した雨水を保持する保水機能と、保水しきれない雨水を下方(下層基盤12,地盤11など)へ浸透させる透水機能と、を兼備している。即ち、土材とセメント系固化材とを混合したものに団粒化剤を加えると、イオンの作用により、土材の粒子とセメント系固化材の粒子とが立体的な団粒構造を形成し、連続した空隙が発生するため、保水性と保水性とをバランス良く兼備した透水性保水層13が形成されている。
【0021】
従って、雨が上がった後、グラウンド10に貯留されている雨水Wは徐々に透水性表層14を通過して透水性保水層13に流入し、下方(下層基盤12,地盤11など)へ浸透したり、雨水Wの表面から蒸発したりするため、水捌けが良好であり、グラウンド10は比較的短時間で使用可能な状態に戻る。
【0022】
次に、図2〜図4に基づいて、本発明のその他の実施の形態について説明する。図2は本発明の第二実施形態であるグラウンドを示す垂直断面図、図3は本発明の第三実施形態であるグラウンドの要部を示す垂直断面図、図4は図3に示すグラウンドが満水状態にあるときの垂直断面図である。なお、図2〜図4において、図1中の符号と同符号を付している部分はグラウンド10の構成部分と同じ構造、機能を有する部分であり、説明を省略する。
【0023】
図2に示すグラウンド20においては、透水性表層14の表面14bが一方の側溝16Rに向かって下り勾配をなすように形成されている。このような構成とすれば、一方の側溝16Rの上縁部16aのみが堰き止め手段として機能するため、グラウンド20の側溝16R寄りの領域に雨水Wが貯留され、この部分が一時的な「溜め池」となる。グラウンド20の場合、他方の側溝16Lの部分においては、側溝16Lの上縁部16aと透水性表層14の表面14bとの間に段差が存在しないので、この部分を通過する際に足が引っ掛かったりすることがなく、安全性に優れている。
【0024】
図3,図4に示すグラウンド30においては、透水性表層14の表面14cと堰き止め手段(側溝16の上縁部16a)との間に段差解消部材17が配置されている。段差解消部材17は垂直断面が台形状の部材であって、側溝16の上縁部16aに向かって上り勾配の斜面部17aを有している。また、段差解消部材17は柔軟な弾性材料であるゴム系素材で形成されている。
【0025】
このような構成とすれば、透水性表層14の表面14cと堰き止め手段(側溝16の上縁部16a)との間の段差を解消することができるので、グラウンド30と周囲の地表面15との間を通過する際に足が引っ掛かったり、躓いたりすることがなく、車椅子などの通過も容易であり、安全性に優れている。
【0026】
また、段差解消部材17は柔軟な弾性材料(ゴム系素材)で形成されているため、人間やペットの身体や物品などが段差解消部材17に接触したときに損傷するのを回避することができ、安全性確保に有効である。
【0027】
グラウンド30の基本的機能は前述したグラウンド10(図1参照)と同様である。即ち、図3,図4に示すように、集中豪雨などの際に、透水性保水層13に貯留できない大量の雨水が周辺領域の地表面15からグラウンド30に流入した場合、これらの雨水は堰き止め手段である側溝16の上縁部16aによって透水性表層14上に貯留されるため、グラウンド30が一時的に「溜め池」としての機能を発揮する。従って、既存の排水施設で処理不能な大量の雨水が側溝16に流れ込んだり、側溝16から雨水W1が溢れたりすることがなく、台風や集中豪雨など際の局地的な大量降雨に起因する水害の防止に有効である。
【0028】
また、雨が上がった後は、図4に示すように、グラウンド30に貯留されている雨水Wは徐々に透水性表層14を通過して透水性保水層13に流入した後、下方(下層基盤12,地盤11など)へ浸透したり、雨水Wの表面から蒸発したりするため、水捌けが良好であり、グラウンド30は比較的短時間で使用可能な状態に戻る。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係るグラウンドは、住宅地域などにおける水害防止手段として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第一実施形態であるグラウンドの要部を示す垂直断面図である。
【図2】本発明の第二実施形態であるグラウンドを示す垂直断面図である。
【図3】本発明の第三実施形態であるグラウンドの要部を示す垂直断面図である。
【図4】図3に示すグラウンドが満水状態にあるときの垂直断面図である。
【符号の説明】
【0031】
10,20,30 グラウンド
11 地盤
12 下層基盤
13 透水性保水層
14 透水性表層
14a,14b,14c 表面
15 地表面
16,16L,16R 側溝
16a 上縁部
16b 溝蓋
17 段差解消部材
17a 斜面部
W,W1 雨水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤上に形成された下層基盤と、前記下層基盤上に形成された透水性保水層と、前記透水性保水層上に形成された透水性表層と、を備え、
前記透水性表層の周辺領域から前記透水性表層上に雨水を流入させるための導水手段と、前記透水性表層上に流入した雨水を前記透水性表層上に貯留するための堰き止め手段と、を設けたことを特徴とするグラウンド。
【請求項2】
前記透水性保水層を、土材、セメント系固化材及び団粒化剤を含む混合物を固化させて形成した請求項1記載のグラウンド。
【請求項3】
前記透水性表層の表面と前記堰き止め手段との間に段差緩和手段を設けた請求項1または2記載のグラウンド。
【請求項4】
前記段差緩和手段として、前記透水性表層の表面と前記堰き止め手段との間に前記堰き止め手段に向かって上り勾配の斜面部を有する段差解消部材を配置した請求項3記載のグラウンド。
【請求項5】
前記段差緩和手段を柔軟な弾性材料で形成した請求項3または4記載のグラウンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−150895(P2010−150895A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333232(P2008−333232)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(500305380)株式会社シーマコンサルタント (30)
【Fターム(参考)】