説明

グラシン紙の製造方法

【課題】 グラシン紙はスーパーカレンダーで高温・高圧下に供して製造される場合があり、スーパーカレンダーに供するに際して抄造された紙をダンピング装置で再加湿しているが、一度乾燥させたものであり、エネルギーの無駄が生じていることに鑑みて、再加熱することなくスーパーカレンダーに供することができるグラシン紙の製造方法を提供する。
【解決手段】 ドライパート4の1群ドライヤー41に加湿装置15を配設して、走行する紙匹に水を噴射することより加湿する。ドライパート4を通過して製造された紙の水分率を、グラシン紙を製造するのにスーパーカレンダー10に供するのに適した値に調整して、再加湿することなく供するようにする。加湿装置15は、BM計7により得られたデータに基づいて幅方向水分制御装置で水の噴射量を紙匹の幅方向で調整して紙匹の水分率を均一化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば窓付き封筒の窓部や調剤薬の包装、剥離紙等に用いられる、透明性を備えているグラシン紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラシン紙は、トレーシングペーパー等のように半透明に抄造された紙であり、前処理工程で高度に叩解処理を行った原料を用いて抄造された抄紙をスーパーカレンダーにより高温、高圧下に供して、平滑度を向上させることにより透明性を備えさせるようにしている。
【0003】
図2はグラシン紙の抄紙工程を説明するもので、長網式抄紙機による場合を示している。ストックインレット1からワイヤーパート2に供給された製紙原料はシート状の紙匹に形成され、プレスパート3で水分率がほぼ67重量%まで搾水される。ドライパート4でドライヤーシリンダー4aに巻回しながら走行することにより乾燥されて、該ドライパート4の出口では水分率3.0〜4.5重量%に調整された紙匹となる。次いで、カレンダー5を通過させて圧潰して平滑性を付与し、欠陥検出器6を通過して小孔の有無等の紙としての欠陥が検出され、BM計7を通過させて水分率が所定の値にあるか否かを検出してポープリール8に巻き取られて、巻取Pとして完成される。
【0004】
ポープリール8に巻き取られた紙は搬送装置等により搬送されて、ダンピング装置9に供される。ダンピング装置9では巻取Pを巻き戻しながら水を噴霧して水分率を約22重量%まで上昇させる。この巻取Pを巻き戻しながらスーパーカレンダー10で高温、高圧下に供して平滑性を向上させて透明性を備えさせると共に、水分率をほぼ5.5重量%まで下降させて、グラシン紙の巻取Gが完成する。この巻取Gをワインダー11に供して巻き直した巻取Gを包装工程へ供給する。
【0005】
また、特許文献1には、2本以上の金属ロールからなり、少なくとも1本の金属ロールが、表面温度が80〜200℃に加熱されるニップ部に、100kg/cm以上の加圧条件下でシートを通引し、高平滑化処理するグラシン紙の製造方法が開示されている。また、特許文献2には、原紙上に水溶性高分子を主成分とする塗被組成物を塗工した後、高温高圧処理により仕上げるグラシン紙の製造方法であって、該塗被組成物を塗工する際の原紙水分を15〜30重量%に特定するグラシン紙の製造方法が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特許第2886336号
【特許文献2】特開平7−60905号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された製造方法では、抄紙機に連続して金属ロールが配置されることが前提とされている構成を備えたものである。また、特許文献2に開示された方法により製造されるグラシン紙は、特に剥離紙用に用いられるものであり、剥離剤がグラシン紙に浸透することを防止した製造方法に関するものである。
【0008】
ところで、前述した従来の製造方法では、抄紙機で製造された3.0〜4.5重量%の水分率にある巻取Pを、前記ダンピング装置9に供することにより巻取Pに加湿して、水分率を22重量%まで上昇させている。すなわち、ドライパート4を通過させて水分率を67重量%から3.0〜4.5重量%に低下させた紙に再度加湿しているものである。このため、ドライパート4に紙を乾燥させるために供給する蒸気の一部が無駄となってエネルギー面で不経済な操業となっている。
【0009】
そこで、この発明は、抄造の際のエネルギー効率を向上させて、しかも、品質を低下させることのないグラシン紙の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係るグラシン紙の製造方法は、抄紙機で製造された紙の巻取を高温・高圧下でスーパーカレンダーに供して、平滑度を高めて透明性を付与することにより製造するグラシン紙の製造方法において、前記抄紙機のドライパートに加湿装置を配設し、該加湿装置を通過する紙匹に水を噴射して、前記抄紙機で抄造される紙の水分率を所望の値に調整し、前記所望の値の水分率を有する紙匹を前記スーパーカレンダーに供することを特徴としている。
【0011】
ドライパートで紙匹に加湿することにより抄造された紙の水分率を、グラシン紙を製造するのに適した値となるようするものである。ドライパートを通過する際に、前記加湿装置から水を紙匹に噴射して水分率を調整して、抄造された紙の水分率をグラシン紙を製造するのに適した値とする。すなわち、水分率が調整された紙を、直接スーパーカレンダーに供することによりグラシン紙を製造するものである。このため、従来のダンピング装置が不要となる。
【0012】
また、請求項2の発明に係るグラシン紙の製造方法は、前記加湿装置は幅方向水分制御装置を備えて、紙匹の幅方向で均一に加湿することを特徴としている。
【0013】
加湿装置による水の噴射量を、幅方向水分制御装置により制御させるようにしたもので、紙匹の幅員方向で水分率を均一にするものである。なお、水分率は抄紙機の終端部に設置されて、抄造された紙に関して測定するBM計等により検出される。
【0014】
また、請求項3の発明に係るグラシン紙の製造方法は、前記スーパーカレンダーに供する紙匹の水分率を20〜22重量%とすることを特徴としている。
【0015】
スーパーカレンダーの高温・高圧下に供するに際して、グラシン紙を製造する際に適した水分率である約22重量%となるように、抄紙機で抄造された紙の水分率を調整するようにしたものである。この調整は、前記加湿装置による噴射水量やドライヤーシリンダーに供給する蒸気温度等を変更して行う。特に、加湿装置に幅方向水分制御装置を備えさせることにより、紙匹の水分率を安定させることができ、ドライヤーシリンダーへの供給蒸気を安定させられる。
【0016】
また、請求項4の発明に係るグラシン紙の製造方法は、前記加湿装置は、ドライパートの一部であってプレスパートに後続するドライヤー群に配設したことを特徴としている。
【0017】
抄紙機のドライパートは、供給する蒸気の系統により複数のドライヤーシリンダーを有する群を複数個連続させて配してある。紙匹の走行方向の上流側から、すなわちプレスパート側から1群ドライヤー、2群ドライヤー、3群ドライヤー等のように複数のドライヤーシリンダーを含むドライヤー群が連続している。これら複数群のうちのプレスパートに後続するドライヤー群、すなわち1群ドライヤーの部分に前記加湿装置を配置したものである。加湿装置はドライパートであればいずれの位置に配置しても構わないが、所望の水分率となるように調整するためには、上流側のドライヤー群に配置することにより、後続するドライヤー群における乾燥状態を制御しやすくなって好ましい。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係るグラシン紙の製造方法によれば、抄造した紙を再度加湿するためのダンピング装置が不要となると共に、ドライパートにおけるドライヤーシリンダーに供給する蒸気量を低減させることができる。これにより、グラシン紙を製造する工程におけるエネルギーの低減化を図ることができる。
【0019】
また、請求項2の発明に係るグラシン紙の製造方法によれば、スーパーカレンダに供することになる紙の水分率を安定させることができ、製造されるグラシン紙の品質を向上させると共に、安定させることができて、歩留まりを向上させることができる。
【0020】
また、請求項3の発明に係るグラシン紙の製造方法によれば、スーパーカレンダーでの製造の効率を向上させると共に、安定した品質のグラシン紙を製造することができる。
【0021】
また、請求項4の発明に係るグラシン紙の製造方法によれば、所望の値の水分率を有する紙の抄造を確実に行うことができ、ドライパートにおけるエネルギー効率を最も良好にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係るグラシン紙の製造方法を具体的に説明する。
【0023】
図1に、この発明に係るグラシン紙の製造方法を実施するための工程を示している。なお、図2に示した従来の構成と同様の部位については、同一の符号を付してある。ドライパート4は紙匹の走行方向の上流側、すなわちプレスパート3の側から順に、1群ドライヤー41と2群ドライヤー42、3群ドライヤー43が連続して配置されており、1群ドライヤー41の一部に加湿装置15が配設されている。この加湿装置15は図示しない複数本のノズルが、抄紙機の走行方向に直交する方向である紙幅方向に適宜間隔で配設されており、このノズルからドライヤーシリンダー4aに巻回されて走行している紙匹に向けて水を噴射して、紙匹を加湿するようにする。
【0024】
抄紙機の最下流には紙匹を巻き取って巻取Pを成形するポープリール8が設けられており、その直前には紙匹の水分率を測定するBM計7が設けられている。このBM計7により検出された紙の水分率に基づいて、前記加湿装置15からの水の噴射量を調整する幅方向水分制御装置(図示せず)が設けられている。
【0025】
前記ポープリール8に巻き取られて形成された巻取Pは、枠回転装置16に搬送される。この枠回転装置16では、必要に応じて、例えば剥離紙に適したグラシン紙を製造する場合などのように、高分子組成物を塗布する等のシーズニング処理が行われる。
【0026】
前記巻取Pはスーパーカレンダー10に供せられて、高温・高圧下で処理され、平滑度が高められて透明性を向上させて、グラシン紙の巻取Gが完成する。完成された巻取Gは、ワインダー11に供されて巻き直されて、巻取包装工程へ搬送されて、出荷のための包装が施される。
【0027】
上述したグラシン紙の製造方法では、前記加湿装置15によりドライパート4を走行中の紙匹を加湿する。このときの加湿量とドライパート4における乾燥量とを調整して、ポープリール8により巻き取られる紙匹の水分率を約22重量%に調整する。したがって、従来のグラシン紙の製造方法のように、抄造された紙をダンピング装置9に供して再度加湿することなくスーパーカレンダー10に供することができる。
【0028】
抄造された紙の水分率は前記BM計7によって検出されて、抄紙機のストックインレット1からドライパート4の各装置に伝達され、それぞれの処理過程における水分率が調整される。特に、前記加湿装置15へは図示しない幅方向水分制御装置を介して伝達されて、紙匹の幅方向、すなわち抄紙機の流れ方向に直交する方向に沿って均一の水分率となるように、加湿装置15から噴射される水量を幅方向に沿って調整する。
【産業上の利用可能性】
【0029】
この発明に係るグラシン紙の製造方法によれば、抄造された紙の水分率を、グラシン紙を製造するためのスーパーカレンダーに供するのに適宜な値とするから、スーパーカレンダーに供するために再加湿する必要がなく、したがって再加湿のためのダンピング装置を必要とせず、しかも、ドライパートにおいて水分率が小さくなるまで乾燥する必要をなくすことによりドライヤーシリンダーへの供給蒸気を削減することができ、エネルギー削減に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明に係るグラシン紙の製造方法を実施するための製造工程を説明する図で、グラシン紙をスーパーカレンダーに供することにより製造するものを示している。
【図2】抄造された紙をスーパーカレンダに供してグラシン紙を製造する従来の製造工程を説明する図である。
【符号の説明】
【0031】
1 ストックインレット
2 ワイヤーパート
3 プレスパート
4 ドライパート
4a ドライヤーシリンダー
5 カレンダー
6 欠陥検出器
7 BM計
8 ポープリール
10 スーパーカレンダー
11 ワインダー
15 加湿装置
16 枠回転装置
P 巻取
G グラシン紙の巻取

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙機で製造された紙の巻取を高温・高圧下でスーパーカレンダーに供して、平滑度を高めて透明性を付与することにより製造するグラシン紙の製造方法において、
前記抄紙機のドライパートに加湿装置を配設し、該加湿装置を通過する紙匹に水を噴射して、前記抄紙機で抄造される紙の水分率を所望の値に調整し、
前記所望の値の水分率を有する紙匹を前記スーパーカレンダーに供することを特徴とするグラシン紙の製造方法。
【請求項2】
前記加湿装置は幅方向水分制御装置を備えて、紙匹の幅方向で均一に加湿することを特徴とする請求項1に記載のグラシン紙の製造方法。
【請求項3】
前記スーパーカレンダーに供する紙匹の水分率を20〜22重量%とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のグラシン紙の製造方法。
【請求項4】
前記加湿装置は、ドライパートの一部であってプレスパートに後続するドライヤー群に配設したことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載のグラシン紙の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−155758(P2009−155758A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335540(P2007−335540)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】