グラビア印刷方法および印刷物
【課題】重ね刷りをした場合にあっても、セル目、モワレ、ロゼッタ模様等が発現することがなく、より高品質な印刷が可能なグラビア印刷方法、および当該方法より印刷された印刷物を提供すること。
【解決手段】複数のセルが形成された凹版を用いるグラビア印刷方法であって、前記用いられる凹版のうち、少なくとも1つは、隣り合うセル同士の形状が異なっており不規則に配列されている不定形セル凹版とする。
【解決手段】複数のセルが形成された凹版を用いるグラビア印刷方法であって、前記用いられる凹版のうち、少なくとも1つは、隣り合うセル同士の形状が異なっており不規則に配列されている不定形セル凹版とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア印刷方法、およびグラビア印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア印刷方法とは、複数のセルが形成された凹版(グラビア版とも呼ばれる。)を用いた印刷方法であり、主に写真画像を含んだ高品質の印刷物を形成する用途に広く利用されている。この印刷方法は、一般的には、前記凹版全体に印刷インキをつけた後、ドクターと呼ばれる薄い鋼鉄の刃でこすることにより、凹版上についた余計な印刷インキを掻き落とし、セルの中に残存した印刷インキを被転写物に転移させることにより行われる。
【0003】
グラビア印刷方法に用いられる凹版に形成されているセルの形状としては、正方形や正六角形等が一般的であり、また凹版表面には同一形状のセルが規則的に配列されているのが通常である(例えば、特許文献1)。なお、本明細書において、同一形状のセルとは、凹版表面から観察した場合の形状が同一であることを意味し、相似形も同一形状に含まれる。またセルの深さが異なっている場合も同一形状に含まれる。
【0004】
ところでグラビア印刷方法によりカラー写真等を印刷する場合にあっては、通常3〜4回の重ね刷り(例えば、C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)K(黒)の4色刷り)をするのが一般的である。
【特許文献1】特公昭52−041683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような、同一形状のセルが規則的に配列されている凹版を用いて重ね刷りをした場合、それぞれの印刷層同士が干渉し合い、いわゆるセル目、モワレ、ロゼッタ模様が発現してしまうことがあった。
【0006】
セル目、モワレ、ロゼッタ模様の発現を防止するために、凹版に形成されるセルの角度をずらす(例えば、第1版目に使用する凹版に形成されている正方形のセルを基準にすると、第2版目に使用する凹版に形成されている正方形のセル目は、右に15°回転させる)ことが行われているが、完全に防止することはできないのが現状である。
【0007】
特に、グラビア印刷方法により印刷した印刷物を用いて水圧転写方法を行った場合には、印刷模様が被転写物の表面形状に追従して若干引き延ばされる傾向があるため、前記セル目、モワレ、ロゼッタ模様等が目立ってしまい、問題が顕著であった。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みなされたものであり、重ね刷りをした場合にあっても、セル目、モワレ、ロゼッタ模様等が発現することがなく、より高品質な印刷が可能なグラビア印刷方法、および当該方法より印刷された印刷物を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための、本願発明は、複数のセルが形成された凹版を用いるグラビア印刷方法であって、前記用いられる凹版のうち、少なくとも1つは、隣り合うセル同士の形状が異なっており不規則に配列されている不定形セル凹版であることを特徴とする。
【0010】
また、上記発明にあっては、セルの形状が全て同一形状を呈し規則的に配列されている定形セル凹版を用いて印刷する工程と、前記不定形セル凹版を用いて印刷する工程と、を含んでもよい。
【0011】
さらに前記発明にあっては、前記定形セル凹版を用いて印刷する工程を行った後、最後に前記不定形セル凹版を用いて印刷する工程を行うようにしてもよい。
【0012】
また、上記課題を解決するための、他の本願発明は、基板と、当該基板上に形成された印刷層とからなる印刷物であって、前記印刷層は、隣り合うセル同士の形状が異なっており不規則に配列されている不定形セル凹版を用いて、グラビア印刷方法により印刷されていることを特徴とする。
【0013】
上記発明にあっては、前記印刷層は、さらに、セルの形状が全て同一形状を呈し規則的に配列されている定形セル凹版を用いて、グラビア印刷方法により印刷されていてもよい。
【0014】
さらに、前記基板が、水溶性若しくは水膨潤性のシートからなり、前記印刷層に活性剤を塗布し、次いで、印刷模様層が形成された面が上になるように水圧転写用シートを水面に浮遊せしめ、次いで、被転写体を前記印刷模様層に押圧して、水圧により被転写体表面に印刷模様層を転写する水圧転写法において用いられていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
上記の発明によれば、グラビア印刷方法により重ね刷りを行った場合であっても、使用される凹版のうち、少なくとも1つは、隣り合うセル同士の形状が異なっており不規則に配列されている不定形セル凹版であるため、同一形状のセルが規則正しく配列されている定形セルとの間で干渉することがなく、従ってセル目、モワレ、ロゼッタ模様が発現することを防止することができる。
【0016】
この場合において、本願発明の特徴である不定形セル凹版を重ね刷りの一番最後の印刷層を形成する際に用いることにより、それまでの印刷層においてセル目、モワレ、ロゼッタ模様等が発現していた場合であっても、当該不定形セル凹版を用いて印刷した印刷層によりこれらを解消する(見えなくする)ことができ、より効果的である。
【0017】
また、本願の印刷方法により印刷した印刷物は、セル目、モワレ、ロゼッタ模様等がなく、特に水圧転写方法に用いる水圧転写シートに好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本願発明のグラビア印刷方法について、図面を用いて詳細に説明する。
【0019】
図1は、本願発明のグラビア印刷方法に用いられる、いわゆる不定形セル凹版の表面(セル形状)の一例(およびこれを形成するためのスクリーン画像の一例)を示す図である。
【0020】
図1に示すように、本願発明のグラビア印刷方法にあっては、隣り合うセルU同士の形状が異なっており不規則に配列されている不定形セル凹版10を用いることを特徴としている。このような不定形セル凹版10を用いることにより、定形せる凹版を用いて重ね刷りをした際に生じるセル目、モワレ、ロゼッタ模様の発現を防止することができる。
【0021】
本願発明の方法に用いられる不定形セル凹版10に形成されているセルUの形状は、不定形であることに特徴を有しており、従って、その大きさや形状は特に限定されることはない。また、その深さについても、所望の印刷模様の濃淡を出すために、任意に設定することができる。
【0022】
このような不定形セル凹版10の製造方法については、本願発明は特に限定することはなく、隣り合うセルU同士の形状を異なった形状とし、不規則に配列することが可能な製造方法であれば、如何なる製造方法をも採用することが可能である。
【0023】
以下に、不定形セル凹版10の表面に形成される不定形セルUの製造方法の具体例の1つを説明する。なお、不定形セルUを形成するにあっては、その基礎となるスクリーン画像を形成する必要がある。このスクリーン画像を形成することにより、これを基に従来公知の方法(例えば、物理的な彫刻方法や、化学的な腐食方法)を用いてセルUを彫り込み、不定形セル凹版10を形成することができる。従って、以下の説明は、不定形セルUを形成するのに必要なスクリーン画像を形成する方法について説明する。
【0024】
図2は、不定形セル凹版10の表面に形成される不定形セルUを形成するために必要なスクリーン画像を生成するための基本手順を示す流れ図である。
【0025】
この流れ図に示す各手順は、実際には、コンピュータを用いて実行されることになる。まず、ステップS1において、以後の処理に必要なパラメータの設定が行われる。図示の例では、画素配列のサイズSx,Sy、母点の標準ピッチPx,Py、乱雑さの程度Dr、土手幅Wbなる各パラメータが設定される。
【0026】
画素配列のサイズSx,Syは、生成対象となるスクリーン画像を構成する画素配列の縦横の画素数を示すパラメータであり、たとえば、図3に示すようなスクリーン画像32を生成する場合であれば、Sx=20、Sy=12なるパラメータが設定されることになる。一方、母点の標準ピッチPx,Pyは、ステップS2で配置される母点Mの横方向および縦方向のピッチを示すパラメータである。本願明細書における「母点M」とは、網点(セル)の核となる点(後述するように、必ずしも網点の幾何学的な中心点になるわけではない)を意味するものである。たとえば、図3に示すように、網点が周期的に配置される従来のAMスクリーン画像の場合は、中心点Cが母点Mに一致することになり、図3に示すピッチPx,Pyが、母点のピッチPx,Pyに一致する。すなわち、図3の例の場合、画素配列のサイズは、Sx=20、Sy=12、母点のピッチは、Px=4,Py=4ということになる。ステップS1において設定するパラメータPx,Pyを、母点の「標準」ピッチと呼んでいるのは、ステップS3において、母点位置を変動させる処理が行われ、最終的な母点ピッチは、標準ピッチをランダムに変動させたものになるからである。
【0027】
なお、ここに示す例では、画素配列のサイズSx,Syおよび母点の標準ピッチPx,Pyを、スクリーン画像を構成する1画素のピッチを単位長とした値で設定しているが、もちろん、実寸単位での値を設定してもかまわない。たとえば、上述の例において、Sx=20、Sy=12、Px=4,Py=4という設定値は、それぞれ20画素に相当する長さ、12画素に相当する長さ、4画素に相当する長さ、4画素に相当する長さ、を示しているが、1画素分に相当する長さを実寸で定義しておけば、Sx,Sy、Px,Pyなるパラメータは、いずれも実寸で設定することができる。実寸で設定したSx,Syの値は、生成対象となるスクリーン画像の実際の寸法を示すパラメータとなり、実寸で設定した標準ピッチPx,Pyは、当該スクリーン画像を用いたスクリーニング処理で得られるハーフトーン画像上における網点の標準的な間隔(一般に線数と呼ばれている寸法値の逆数)を示すパラメータとなる。
【0028】
一方、ステップS1で設定される乱雑さの程度Drは、ステップS3における母点位置の変動の程度を示すパラメータであり、この例では、0<Dr≦1の範囲内の任意の値が設定される。セルの周期性は、セル目、モワレ、ロゼッタ模様などを発現させる要因となるが、このパラメータDrを大きな値に設定すればするほど、セルの周期性は失われ、セル目、モワレ、ロゼッタ模様などが発現しにくくなる。
【0029】
ここで、土手幅Wbは、隣接するセルU間の寸法(距離あるいは間隙)を示すパラメータであり、グラビア印刷の場合は、印刷版上に形成されるグラビアセル間の物理的な土手の最小寸法を規定するパラメータになる。この物理的な土手の最小寸法が小さすぎると、印刷中に土手が決壊し、グラビアセルに充填されていたインキが隣接するグラビアセルへと流入し、正しい階調をもったグラビア印刷を行うことができなくなる。したがって、土手幅Wbをパラメータとして設定する際には、必要枚数の印刷を行った場合でも、グラビア印刷版上に形成された物理的な土手が十分に耐久性を維持できるような寸法値に設定する必要がある。また、グラビア印刷版上にグラビアセルを形成するプロセスは、通常、エッチング液を用いた腐食プロセスにより行うことになるので、この腐食プロセスにおいて、いわゆるサイドエッチ(版面に平行な方向への腐食)が生じる場合には、サイドエッチ量を考慮して最適な土手幅Wbを決定するようにするのが好ましい。
【0030】
続くステップS2では、母点の配置が行われる。すなわち、ステップS1で設定されたサイズSx,Syをもった画素配列が定義された二次元平面上に、標準ピッチPx,Pyで多数の母点Mを配置する処理が実行される。たとえば、図3に示す例の場合、20×12なる画素配列上の中心点Cの位置に、母点Mが配置されることになる。もっとも、本願発明を実施するにあたって、母点Mは必ずしも正方格子状に配置する必要はない。実用上は、むしろ二次元平面上に同一サイズの正六角形を隙間なく配置したときの各正六角形の中心点となる位置に各母点を配置するのが好ましい。図4は、XY平面上に同一サイズの正六角形を隙間なく配置したときの各正六角形の中心点に各母点Mを配置した例を示す平面図である。各母点Mが中心となるようにそれぞれ単位領域Uを定義した場合、個々の正六角形が単位領域Uを構成することになる。
【0031】
このような正六角形を用いた母点配置の特徴は、隣接する母点間の距離がすべて等しくなるという点である。すなわち、図4に黒点で示した各母点Mからなる格子は、正三角形を並べた格子となっており、各母点Mはこの正三角形の頂点位置に配置されている。したがって、隣接する母点間の距離は、すべてこの正三角形の一辺の長さに等しくなり、最終的な印刷物上に、円に近い網点を形成することができるようになる。これに対して、図3に示すような正方格子状に配置された母点では、縦または横方向に隣接する母点間距離と斜め方向に隣接する母点間距離とが異なってしまうため、円に近い網点を形成する上では好ましくない。
【0032】
なお、図4に示すように、各正六角形の中心点に各母点Mを配置する場合、X軸方向のピッチPxとY軸方向のピッチPyとは当然異なることになる。具体的には、Px:Py=2:ルート3の関係になる。また、一般に、デジタル画像データは、矩形状の画素を縦横に並べた画素配列(この例では、生成対象となるスクリーン画像は、サイズSx,Syをもった画素配列)から構成されるため、図4に示すように、単位領域Uを正六角形の領域により構成すると、多くの画素は、単位領域Uの境界線を跨ぐような位置にくることになるが(たとえば、図4に示す画素Q)、個々の画素の中心点位置を含む領域を、当該画素が所属する単位領域とする取り扱いをすれば、不都合は生じない。
【0033】
もちろん、このステップS2における母点配置の処理は、実際には、コンピュータ内の演算処理として実行されるものであり、具体的に実行される処理内容は、個々の母点Mについて、それぞれ所定の座標値を求める演算処理ということになる。ここでは、個々の母点Mについて、XY座標系上での座標値(x,y)を求める演算が行われたものとし、座標(x,y)の位置に配置された母点を、母点M(x,y)と呼ぶことにする。
【0034】
続くステップS3では、ステップS2で配置された各母点の位置を、それぞれランダムに変動させる母点位置変動処理が行われる。この母点位置変動処理は、個々の母点がランダムに位置変動を生じるような処理であれば、どのような処理であってもかまわないが、図2に示す例では、次のような具体的な手法により、個々の母点を変動させている。
【0035】
まず、基本的に、個々の母点について、X軸方向に関する変動量が最大でも±(1/2)Pxの範囲内となり、Y軸方向に関する変動量が最大でも±(1/2)Pyの範囲内となるように、各母点の位置を変動させることにする。ここで、Px,Pyは、ステップS1で設定した母点の標準ピッチである。
【0036】
図5は、このような条件下での母点Mの位置変動範囲を示す平面図である。
【0037】
すなわち、このような条件下では、図示する母点M(x,y)に対しては、図にハッチングを施した範囲内での位置変動が生じることになる。このような範囲内で位置変動を行うようにすれば、隣接する母点間での位置関係の入れ替わりが生じることがないため、変動後の各母点間のピッチはランダムであっても、全体としての平均的な母点ピッチの値は、ステップS1で設定した標準ピッチPx,Pyに近い値が維持される。
【0038】
実際には、母点M(x,y)を、図5にハッチングを施した領域内でランダムに変動させるために、コンピュータ内で乱数を発生させ、この乱数の値に基づいて、変動後の位置を決定させるようにしている。また、変動量を、ステップS1で設定した乱雑さの程度Drなるパラメータに応じた値とするため、パラメータDrを考慮して変動量を決定するアルゴリズムを用いている。すなわち、図2に示すステップS3では、1つの母点M(x,y)のx座標値およびy座標値を、次の式に基づいて変動させている。
【0039】
x → x+(R・Dr・Px)
y → y+(R・Dr・Py)
ここで、Px,Py,Drは、ステップS1で設定した各パラメータであり、Rは、−0.5〜+0.5の範囲の一様分布乱数の値である。ここで、パラメータDrを最大値1に設定すると、図5に示す母点M(x,y)は、図のハッチング領域内の任意の位置へ変動することになるが、パラメータDrの値を小さく設定すると、このハッチング領域が徐々に狭くなる。したがって、パラメータDrは、各母点の変動量を制御するパラメータとして機能し、個々の母点をそれぞれ変動させた後の母点位置の乱雑さの程度を制御するパラメータということになる。
【0040】
図6は、図4に示すように整然と配置されていた母点Mを、上述のアルゴリズムによって変動させた後の状態を示す平面図である。破線は、図4に示す正六角形の位置を示している。図4では、個々の母点Mが各正六角形の中心に位置していたのに対し、図6では、それぞれがランダムに位置変動している状態がわかる。前述したとおり、本明細書における「母点M」とは、セルの核となる点であり、単位領域Uの核となる点である。ここで、単位領域Uは、AMスクリーン画像上において、1つのセルへの変換対象となる領域としての意味をもち、単位領域内の各画素値の出現頻度がほぼ均一となり、単位領域内にひとまとまりの黒画素の集団からなる領域(セル)が形成されるような画素値配置をもつ、という特徴を有している必要がある。図4に示すように、個々の母点Mが規則的に配置されている状態では、規則的に配置された正六角形をそのまま単位領域Uとすることができるが、図6に示すように、個々の母点Mの位置がランダムに変動した状態では、新たに不規則な単位領域Uを定義する必要がある。
【0041】
図2に示すステップS4は、変動後の各母点Mに基づいて、各単位領域Uを定義する処理である。
【0042】
図7は、図5に示す各母点Mに基づいて、それぞれ単位領域Uを定義した一例を示す平面図である。ランダムに配置された母点Mに基づいて、それぞれ当該母点Mを核とする単位領域Uを定義する手法は、必ずしも1つの手法に限定されるものではないが、実用上は、コンピュータによる効率的な演算が可能な手法を用いるのが好ましい。本願発明者は、以下に述べるボロノイ分割処理という手法が、本発明の目的達成に最適な手法であると考えている。
【0043】
ボロノイ分割の基本概念は、空間上に分散配置された多数の母点Mについて、それぞれ所定の条件に基づいて支配領域を決定し、空間を複数の支配領域に分割する、というものである。支配領域を決定するための条件として、空間上の所定点と母点との距離(ユークリッド距離)が用いられる。たとえば、図8に示すように、二次元平面上に3つの母点M1,M2,M3が配置されていた場合を考える。この場合、ボロノイ分割を実施することにより、この二次元平面は、母点M1の支配領域、母点M2の支配領域、母点M3の支配領域、という3つの支配領域に分割されることになる。
【0044】
この二次元平面上の任意の点Q(x,y)が、どの支配領域に所属するかは、各母点M1,M2,M3との間の距離d1,d2,d3を比較することによって決定される。すなわち、任意の点Q(x,y)は、最も近い母点(以下、最近接母点と呼ぶ)の支配領域に所属させられることになる。図8に示す例では、d1<d2<d3となっているので、点Q(x,y)の最近接母点はM1となり、点Q(x,y)は母点M1の支配領域に所属させられることになる。このように、二次元平面上のすべての点を、それぞれ最近接母点の支配領域に所属させることにすれば、二次元平面は3つの支配領域に分割されることになる。
【0045】
もちろん、幾何学的な二次元平面上には、無限個の点が存在することになるが、本発明を実施する上では、ステップS1で定義されたサイズSx,Syをもった画素配列を構成する個々の画素について、それぞれ最近接母点の支配領域に所属させる処理を行えばよい。具体的には、特定の画素が所属する支配領域を決定するには、たとえば、当該画素の中心位置と全母点との距離をそれぞれ演算により求め、距離が最小となる母点を最近接母点として認識し、当該画素をこの最近接母点の支配領域に所属させるような処理を行えばよい。なお、実用上は、距離自身を求めて比較する代わりに、距離の2乗を求めて比較する方が、演算負担が軽減される。このような処理を行えば、画素配列を構成する(Sx・Sy)個のすべての画素を、いずれかの母点の支配領域に所属させることができる。そこで、同一の支配領域に所属している画素の集合を1つの単位領域と定義すれば、個々の母点を核とした単位領域を定義することができる。
【0046】
結局、図2のステップS4で行う処理は、ステップS1で設定したサイズSx,Syをもつ画素配列を構成する各画素について、それぞれ最も距離が近い母点を、当該画素についての最近接母点と定義し、同一の母点を最近接母点とする画素の集合により1つの単位領域が構成されるように、二次元平面上に複数の単位領域を定義する処理、と言うことができる。こうして定義された各単位領域は、それぞれがランダムな形状をした領域となり、それぞれがランダムな配置をとる。図9は、ランダムな形状をした単位領域Uの一例を示す平面図であり、Mは母点の位置を示している。図示のとおり、この単位領域Uは、多数の画素Q(x,y)の集合によって構成されている。
【0047】
なお、図4に示すように、規則的に配置された母点Mに基づいてボロノイ分割処理を行って単位領域Uを定義した場合、各母点Mは単位領域Uの中心点となるが、図6に示すように、不規則配置された母点Mに基づいてボロノイ分割処理を行って単位領域Uを定義した場合、各母点Mは必ずしも単位領域Uの幾何学的な中心点(重心)にはならない。これは、ボロノイ分割処理により定義される単位領域Uの境界線が、2つの隣接する母点から等距離の点の集合となるためである(図7に示す各単位領域Uは、図示の便宜上、正確なボロノイ分割処理の結果として得られる単位領域にはなっていない)。後述するように、母点Mは、最終的な印刷物上に形成されるセルの核となる点であるため、母点Mが単位領域Uの幾何学的な中心点になっていないと、母点Mは、形成される網点の幾何学的な中心点にもならないが、実用上は何ら問題は生じない。
【0048】
なお、当該工程の際には、二番目に距離が近い母点を当該画素についての次近接母点と定義する処理も併せて行うようにする。このように、ある特定の画素について、最近接母点と次近接母点とが求まると、この最近接母点と次近接母点の位置に基づいて、当該特定の画素が、土手領域内の画素か否かを判定することが可能になる。
【0049】
図11は、座標(x,y)に位置する画素Q(x,y)が、土手幅Wbをもつ土手領域内の画素か否かを判定する原理を示す平面図ある。
【0050】
ここでは、画素Q(x,y)に最も近い母点がM1、第2番目に近い母点がM2、第3番目に近い母点がM3であったものとしよう。この場合、画素Q(x,y)の最近接母点はM1、次近接母点がM2ということになり、母点M3はこの判定には一切関与しない。判定を行うには、まず、最近接母点M1と次近接母点M2とを結ぶ線分L1(図の破線)を求め、この線分L1の垂直二等分線L2(図の一点鎖線)を求める。そして、この垂直二等分線L2を中心線として、パラメータとして設定した土手幅Wbに相当する幅をもった帯状領域Ab(図のハッチング領域)を定義し、判定対象となる画素Q(x,y)がこの帯状領域Ab内の画素であった場合には、当該画素Q(x,y)を土手領域B内の画素と判定すればよい。
【0051】
図示の例の場合、画素Q(x,y)は、帯状領域Ab外にあるので、土手領域B内の画素とは判定されないことになる。このように、土手領域B内の画素とは判定されなかった画素については、最近接母点M1についての単位領域に所属する画素として取り扱えばよい。図示の例では、画素Q(x,y)は、母点M1についての単位領域に所属する画素になる。もちろん、図11に示す帯状領域Abは、母点M1,M2に関しての判定基準となる領域である。したがって、たとえば、最近接母点がM1,次近接母点がM3となるような別な画素についての判定を行う場合には、これら両母点M1,M3を結ぶ線分の垂直二等分線を中心線とする別な帯状領域が判定基準として用いられる。こうして、すべての画素について、それぞれ土手領域内の画素か否かの判定を行い、土手領域外と判定された画素については、最近接母点についての単位領域に所属させ、土手領域内と判定された画素については、土手領域に所属させる処理を行えば、図1に示すような領域定義を行うことができる。
【0052】
こうして単位領域の定義が完了すると、最後に、図2のステップS5において、各単位領域内の画素について、それぞれ画素値を決定する処理が行われる。前述したとおり、単位領域Uは、AMスクリーン画像上において、1つのセルへの変換対象となる領域としての意味をもち、単位領域内の各画素値の出現頻度がほぼ均一となり、単位領域内にひとまとまりの黒画素の集団からなる領域(網点)が形成されるような画素値配置をもつ、という特徴を有している必要がある。
【0053】
定義すべき画素値の範囲は、原画像のもつ階調情報に応じて定まる。たとえば、4ビットの階調情報(0〜15の画素値)をもつ原画像についてのスクリーニング処理を行うためのAMスクリーンを生成するには、0〜14の範囲内の画素値(1〜15の範囲内の画素値でもかまわない)を定義すればよいし、8ビットの階調情報(0〜255の画素値)をもつ原画像についてのスクリーニング処理を行うためのAMスクリーンを生成するには、0〜254の範囲内の画素値(1〜255の範囲内の画素値でもかまわない)を定義すればよい。
【0054】
ステップS4で定義された個々の単位領域Uは、それぞれ形状や大きさが異なり、構成要素となる画素の数もそれぞれ異なる。したがって、ステップS5における画素値の決定処理は、個々の単位領域ごとに独立して実行されることになる。こうして、すべての単位領域Uについて、画素値を決定する処理が完了すれば、サイズSx,Syの画素配列を構成するすべての画素に対して、所定の画素値が得られたことになるので、この画素配列をサイズSx,Syのスクリーン画像として出力する処理を行えばよい。こうして出力されたスクリーン画像は、従来のAMスクリーン画像と同様に、濃度情報を網点の面積として表現したハーフトーン画像を生成する機能を有し、しかも網点の周期性を排除することにより、セル目、モワレ、ロゼッタ模様の発現を防止することができる。
【0055】
最後に、具体的な画像の例を示しておく。
【0056】
図12は、上述した土手領域を考慮した手法で生成されたスクリーン画像の具体的な一例を示す平面図である。
【0057】
電子出願における図面解像度の制約により、濃淡の具合が若干不明瞭であるが、不定形の多数の単位領域が、所定幅の土手領域を挟んでランダムな位置に配置されている様子がわかる。個々の単位領域は、中心部分ほど濃度が高く(黒に近く)、周囲ほど濃度が低く(白に近く)なっている。これは、中心から周囲にかけて画素値が徐々に変化しているためである。
【0058】
図13は、本願発明の方法に用いられる、いわゆる定形セル凹版の表面(セル形状)の一例(およびこれを形成するためのスクリーン画像の一例)を示す図である。
【0059】
本願発明の方法においては、上記で説明してきた不定形セルに加えて、図示するような従来から用いられている定形セルをも併用することが可能である。このような定形セルを用いても、上述した不定形セルの効果により、セル目、モワレ、ロゼッタ模様等が発現することがない。
【0060】
本願発明のグラビア印刷方法において、図1に示す不定形セルと、図13に示す定形セルとを併用する場合にあっては、その使用順序(印刷順序)については、特に限定することはなく、任意に設定することが可能である。しかしながら、最終的に完成する印刷物において、セル目、モワレ、ロゼッタ模様等の発現を効果的に防止するためには、不定形セルを用いた印刷層が最表面に位置するように使用することが好ましい。
【0061】
図14は、本願発明の印刷物としての水圧転写方法に用いられる水圧転写用シートの概略断面図である。
【0062】
図示するように、基板としての水溶性または水膨潤性のシート41上に印刷層を4層重ね刷りする場合にあっては、少なくとも第4印刷層45については、不定形セル凹版を用いて印刷することが好ましく、任意で第1〜3印刷層42〜44についても不定形セル凹版を用いて印刷すればよい。
【0063】
なお、不定形セル凹版のみを用いて重ね刷りをする場合には、それぞれの不定形セル凹版のセル形状を全て異なるパターンとすることが好ましい。完全に同一の不定形セル同士を用いて重ね刷りをすると、干渉等によりセル目、モワレ、ロゼッタ模様等が発現する虞があるからである。
【0064】
なお、水溶性または水膨潤性のシート41としては、従来から水圧転写用シートとして一般に用いられている材料を適宜選択して用いることができる。具体的な材料としては、ポリビニルアルコール樹脂、デキストリン、ゼラチン、にかわ、カゼイン、セラック、アラビアゴム、澱粉、蛋白質、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルメチルエーテル、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、酢酸ビニルとイタコン酸との共重合体、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、アルギン酸ソーダ等が挙げられる。支持体シート41の厚さは10〜100μmが好ましい。
【0065】
なお、図14を用いて本発明の印刷物について説明したが、これに限定されることはなく、現在グラビア印刷方法により印刷されている印刷物であれば、前述の本発明のグラビア印刷方法を用いることで、本発明の印刷物とすることが可能である。例えば、書籍、雑誌、包装、さらには特に高い意匠性を要求される建材、自動車等の乗り物における内装パネル等、各種印刷物を挙げることができる。
【0066】
また、本発明のグラビア印刷方法、および本発明の印刷物にあっては、前記の水圧転写方法に用いられる水圧転写用シートや真空成形方法の際に用いられる印刷シート、さらには圧空成形方法の際に用いられる印刷シートなどに効果的に応用できる。これらの方法にあっては、印刷シートが延ばされつつ成形される場合が多く、その結果セル目、モワレ、ロゼッタ模様が目立つ虞が方法であるところ、本発明によれば、これらが発現することを防止することができるからである。
【実施例】
【0067】
次に、本願発明について実施例を用いて説明する。
【0068】
(実施例1)
図14に示すような水圧転写用シートを本願発明の方法により形成した。
【0069】
具体的には、水溶性フィルムとして、PVAフィルム(日本合成化学工業製 ハイセロン C−300)を用い、この上に、図13に示した従来からの定形セルが形成された凹版を用いて第1〜第3の印刷層をグラビア印刷方法により設け、最後に、図1に示したいわゆる不定形セルが形成された凹版を用いて第4の印刷層をグラビア印刷方法により設けることにより、実施例1の水圧転写用シートを形成した。
【0070】
なお、このグラビア印刷方法において用いたインキは、ザ・インクテック社製商品名:KLCF(改−3)墨、耐候赤、耐候黄、青、耐候ゴールドパール、ホワイトパール、シルバーであり、混色または単色の組合せにより調色されたものを使用した。
【0071】
(実施例2)
前記実施例1と同様の水溶性フィルムおよびインキを用いて、第1の印刷層と第4の印刷層を、図1に示したいわゆる不定形セルが形成された凹版を用いてグラビア印刷方法により設け、第2と第3の印刷層については、図13に示した従来からの定形セルが形成された凹版を用いてグラビア印刷方法により設けることにより、実施例2の水圧転写用シートを形成した。
【0072】
(実施例3)
前記実施例1と同様の水溶性フィルムおよびインキを用いて、第1、第2、第4の印刷層を、図1に示したいわゆる不定形セルが形成された凹版を用いてグラビア印刷方法により設け、第3の印刷層については、図13に示した従来からの定形セルが形成された凹版を用いてグラビア印刷方法により設けることにより、実施例3の水圧転写用シートを形成した。
【0073】
(実施例4)
前記実施例1と同様の水溶性フィルムおよびインキを用いて、第1〜第4全ての印刷層を、図1に示したいわゆる不定形セルが形成された凹版を用いてグラビア印刷方法により設けることにより、実施例4の水圧転写用シートを形成した。
【0074】
(比較例1)
前記実施例1と同様の水溶性フィルムおよびインキを用いて、第1〜4全ての印刷層を図13に示した従来からの定形セルが形成された凹版を用いてグラビア印刷方法により設けることにより、比較例1の水圧転写用シートを形成した。
【0075】
(実施例1〜4と比較例1の比較結果)
上記実施例1〜4の水圧転写用シート、および比較例1の水圧転写用シートのそれぞれについて、印刷性、セル目の有無、モワレの有無、意匠性、の各項目を比較した。
【0076】
またさらに、これらの水圧転写用シートを用いて、それぞれ水圧転写方法を実施し、その際の転写特性、および被転写物に転写された印刷模様におけるセル目の有無、モワレの有無、意匠性の各項目を比較した。
【0077】
その結果を以下の表1に示す。
【0078】
【表1】
また、図15に実施例1の水圧転写用シート、および比較例1の水圧転写用シートのそれぞれの表面(印刷面側)と裏面(水溶性シート側)の写真を示す。
【0079】
さらに、図16に実施例1の水圧転写用シート、および比較例1の水圧転写用シートを用いて水圧転写方法を実施した場合の被転写物の印刷面の写真を示す。
【0080】
表1、および図15、16からも明らかなように、本願発明の方法、および本願発明の印刷物によれば、セル目、モワレ、ロゼッタ模様の発現を防止することが出来ることが分かる。
【0081】
(実施例5)
図17は、本発明の実施例5の印刷物(真空成形方法に用いられる印刷シート)の構成を示す概略断面図である。
【0082】
図示するように、基板としてアクリルフィルム(住友化学製、商品名:S−001)を用い、その上に図13に示した従来からの定形セルを用いて第1〜3の印刷層をグラビア印刷方法により設け、次いで、図1に示した不定形セルが形成された凹版を用いて第4の印刷層をグラビア印刷方法により設け、さらに、図13に示した従来からの定形セルを用いて第5〜6の印刷層をグラビア印刷方法により設けることにより、本発明の実施例5の真空成形方法に用いられる印刷シートを成形した。
【0083】
なお、このグラビア印刷方法に用いたインキは、市販されている昭和インク工業製建材用インキの各色を使用した。
【0084】
(比較例2)
図17に示す本発明の実施例5の印刷物において、第1〜第6全ての印刷層を従来からの定形セルを使用した他は、全て実施例5と同様の条件を用いることにより、比較例2の真空成形方法に用いられる印刷シートを作成した。
【0085】
(実施例5と比較例2の比較結果)
上記実施例5の真空成形方法に用いられる印刷シート、および比較例2の真空成形方法に用いられる印刷シートのそれぞれについて、印刷性、セル目の有無、モワレの有無、意匠性、の各項目を比較した。
【0086】
その結果を以下の表2に示す。
【0087】
【表2】
上記表2からも明らかなように、本発明の方法により形成された本発明の真空成型方法に用いられる印刷シートは、従来のそれに比べ、印刷性、セル目の有無、モワレの有無、意匠性の各項目において優れていることが分かった。
【0088】
(実施例6)
図18は、本発明の実施例6の印刷物(壁紙用印刷紙)を構成を示す概略断面図である。
【0089】
図示するように、基板として裏打ち紙(中越パルプ製)を用い、その上に塩化ビニルを主成分とする層をコーティングし、次いで、図1に示した不定形セルが形成された凹版を用いて第1の印刷層をグラビア印刷方法により設け、さらに、図13に示した従来からの定形セルを用いて第2の印刷層をグラビア印刷方法により設けることにより、本発明の実施例6の壁紙用印刷紙を成形した。
【0090】
なお、このグラビア印刷方法に用いたインキは、大日精化工業製商品名ハイドリック各色を使用した。
【0091】
(比較例3)
図18に示す本発明の実施例5の印刷物において、第1、2の印刷層を従来からの定形セルを使用した他は、全て実施例6と同様の条件を用いることにより、比較例3の壁紙用印刷紙を作成した。
【0092】
(実施例6と比較例3の比較結果)
上記実施例6の壁紙用印刷紙、および比較例3の壁紙用印刷紙のそれぞれについて、印刷性、セル目の有無、モワレの有無、意匠性、の各項目を比較した。
【0093】
その結果を以下の表3に示す。
【0094】
【表3】
上記表3からも明らかなように、本発明の方法により形成された本発明の壁紙用印刷紙は、従来のそれに比べ、印刷性、セル目の有無、モワレの有無、意匠性の各項目において優れていることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本願発明のグラビア印刷方法に用いられる、いわゆる不定形セル凹版の表面(セル形状)の一例(およびこれを形成するためのスクリーン画像の一例)を示す図である。
【図2】不定形セル凹版10の表面に形成される不定形セルUを形成するために必要なスクリーン画像を生成するための基本手順を示す流れ図である。
【図3】複数の単位領域Uを縦横に繰り返し配置することにより構成されたスクリーン画像32の一例を示す平面図である。
【図4】XY平面上に同一サイズの正六角形を隙間なく配置したときの各正六角形の中心点に各母点Mを配置した例を示す平面図である。
【図5】X軸方向に関する変動量が最大でも±(1/2)Pxの範囲内となり、Y軸方向に関する変動量が最大でも±(1/2)Pyの範囲内となる、という条件下での母点Mの位置変動範囲を示す平面図である。
【図6】図4に示すように整然と配置されていた母点Mを、所定のアルゴリズムによって変動させた後の状態を示す平面図である。
【図7】図6に示す各母点Mに基づいて、それぞれ単位領域Uを定義した一例を示す平面図である。
【図8】ボロノイ分割処理の基本概念を説明する平面図である。
【図9】ランダムな形状をした単位領域Uの一例を示す平面図である。
【図10】具体的なスクリーン画像31の画素構成を示す平面図である。
【図11】画素Q(x,y)が土手領域内の画素か否かを判定する原理を示す平面図である。
【図12】土手領域を考慮した本発明に係るスクリーン画像の生成方法により生成されたスクリーン画像の具体的な一例を示す平面図である。
【図13】いわゆる定形セル凹版の表面(セル形状)の一例(およびこれを形成するためのスクリーン画像の一例)を示す図である。
【図14】本願発明の印刷物としての水圧転写方法に用いられる水圧転写用シートの概略断面図である。
【図15】実施例1の水圧転写用シート、および比較例1の水圧転写用シートのそれぞれの表面(印刷面側)と裏面(水溶性シート側)の写真である。
【図16】実施例1の水圧転写用シート、および比較例1の水圧転写用シートを用いて水圧転写方法を実施した場合の被転写物の印刷面の写真である。
【図17】実施例5の印刷物(真空成形方法に用いられる印刷シート)の構成を示す概略断面図である。
【図18】実施例6の印刷物(壁紙用印刷紙)の構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0096】
10 … 不定形セル凹版
31,32 … スクリーン画像
B … 土手領域
C … 単位領域の中心点
Dr … 乱雑さの程度を示すパラメータ(0<Dr≦1)
d1〜d3 … 母点との距離
L1 … 母点間を結ぶ線分
L2 … 線分L1の垂直二等分線
M,M1〜M3,M(x,y) … 母点
Px … X軸方向の標準ピッチ
Py … Y軸方向の標準ピッチ
Q,Q(x,y) … スクリーン画像の画素/画素値
R … 一様分布乱数(−0.5≦R≦+0.5)
S1〜S5, … 流れ図の各ステップ
Sx,Sy … スクリーンサイズ
U,U1〜U3 … 単位領域
Wb … 土手幅
x,y … XY座標系の座標値
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア印刷方法、およびグラビア印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア印刷方法とは、複数のセルが形成された凹版(グラビア版とも呼ばれる。)を用いた印刷方法であり、主に写真画像を含んだ高品質の印刷物を形成する用途に広く利用されている。この印刷方法は、一般的には、前記凹版全体に印刷インキをつけた後、ドクターと呼ばれる薄い鋼鉄の刃でこすることにより、凹版上についた余計な印刷インキを掻き落とし、セルの中に残存した印刷インキを被転写物に転移させることにより行われる。
【0003】
グラビア印刷方法に用いられる凹版に形成されているセルの形状としては、正方形や正六角形等が一般的であり、また凹版表面には同一形状のセルが規則的に配列されているのが通常である(例えば、特許文献1)。なお、本明細書において、同一形状のセルとは、凹版表面から観察した場合の形状が同一であることを意味し、相似形も同一形状に含まれる。またセルの深さが異なっている場合も同一形状に含まれる。
【0004】
ところでグラビア印刷方法によりカラー写真等を印刷する場合にあっては、通常3〜4回の重ね刷り(例えば、C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)K(黒)の4色刷り)をするのが一般的である。
【特許文献1】特公昭52−041683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような、同一形状のセルが規則的に配列されている凹版を用いて重ね刷りをした場合、それぞれの印刷層同士が干渉し合い、いわゆるセル目、モワレ、ロゼッタ模様が発現してしまうことがあった。
【0006】
セル目、モワレ、ロゼッタ模様の発現を防止するために、凹版に形成されるセルの角度をずらす(例えば、第1版目に使用する凹版に形成されている正方形のセルを基準にすると、第2版目に使用する凹版に形成されている正方形のセル目は、右に15°回転させる)ことが行われているが、完全に防止することはできないのが現状である。
【0007】
特に、グラビア印刷方法により印刷した印刷物を用いて水圧転写方法を行った場合には、印刷模様が被転写物の表面形状に追従して若干引き延ばされる傾向があるため、前記セル目、モワレ、ロゼッタ模様等が目立ってしまい、問題が顕著であった。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みなされたものであり、重ね刷りをした場合にあっても、セル目、モワレ、ロゼッタ模様等が発現することがなく、より高品質な印刷が可能なグラビア印刷方法、および当該方法より印刷された印刷物を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための、本願発明は、複数のセルが形成された凹版を用いるグラビア印刷方法であって、前記用いられる凹版のうち、少なくとも1つは、隣り合うセル同士の形状が異なっており不規則に配列されている不定形セル凹版であることを特徴とする。
【0010】
また、上記発明にあっては、セルの形状が全て同一形状を呈し規則的に配列されている定形セル凹版を用いて印刷する工程と、前記不定形セル凹版を用いて印刷する工程と、を含んでもよい。
【0011】
さらに前記発明にあっては、前記定形セル凹版を用いて印刷する工程を行った後、最後に前記不定形セル凹版を用いて印刷する工程を行うようにしてもよい。
【0012】
また、上記課題を解決するための、他の本願発明は、基板と、当該基板上に形成された印刷層とからなる印刷物であって、前記印刷層は、隣り合うセル同士の形状が異なっており不規則に配列されている不定形セル凹版を用いて、グラビア印刷方法により印刷されていることを特徴とする。
【0013】
上記発明にあっては、前記印刷層は、さらに、セルの形状が全て同一形状を呈し規則的に配列されている定形セル凹版を用いて、グラビア印刷方法により印刷されていてもよい。
【0014】
さらに、前記基板が、水溶性若しくは水膨潤性のシートからなり、前記印刷層に活性剤を塗布し、次いで、印刷模様層が形成された面が上になるように水圧転写用シートを水面に浮遊せしめ、次いで、被転写体を前記印刷模様層に押圧して、水圧により被転写体表面に印刷模様層を転写する水圧転写法において用いられていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
上記の発明によれば、グラビア印刷方法により重ね刷りを行った場合であっても、使用される凹版のうち、少なくとも1つは、隣り合うセル同士の形状が異なっており不規則に配列されている不定形セル凹版であるため、同一形状のセルが規則正しく配列されている定形セルとの間で干渉することがなく、従ってセル目、モワレ、ロゼッタ模様が発現することを防止することができる。
【0016】
この場合において、本願発明の特徴である不定形セル凹版を重ね刷りの一番最後の印刷層を形成する際に用いることにより、それまでの印刷層においてセル目、モワレ、ロゼッタ模様等が発現していた場合であっても、当該不定形セル凹版を用いて印刷した印刷層によりこれらを解消する(見えなくする)ことができ、より効果的である。
【0017】
また、本願の印刷方法により印刷した印刷物は、セル目、モワレ、ロゼッタ模様等がなく、特に水圧転写方法に用いる水圧転写シートに好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本願発明のグラビア印刷方法について、図面を用いて詳細に説明する。
【0019】
図1は、本願発明のグラビア印刷方法に用いられる、いわゆる不定形セル凹版の表面(セル形状)の一例(およびこれを形成するためのスクリーン画像の一例)を示す図である。
【0020】
図1に示すように、本願発明のグラビア印刷方法にあっては、隣り合うセルU同士の形状が異なっており不規則に配列されている不定形セル凹版10を用いることを特徴としている。このような不定形セル凹版10を用いることにより、定形せる凹版を用いて重ね刷りをした際に生じるセル目、モワレ、ロゼッタ模様の発現を防止することができる。
【0021】
本願発明の方法に用いられる不定形セル凹版10に形成されているセルUの形状は、不定形であることに特徴を有しており、従って、その大きさや形状は特に限定されることはない。また、その深さについても、所望の印刷模様の濃淡を出すために、任意に設定することができる。
【0022】
このような不定形セル凹版10の製造方法については、本願発明は特に限定することはなく、隣り合うセルU同士の形状を異なった形状とし、不規則に配列することが可能な製造方法であれば、如何なる製造方法をも採用することが可能である。
【0023】
以下に、不定形セル凹版10の表面に形成される不定形セルUの製造方法の具体例の1つを説明する。なお、不定形セルUを形成するにあっては、その基礎となるスクリーン画像を形成する必要がある。このスクリーン画像を形成することにより、これを基に従来公知の方法(例えば、物理的な彫刻方法や、化学的な腐食方法)を用いてセルUを彫り込み、不定形セル凹版10を形成することができる。従って、以下の説明は、不定形セルUを形成するのに必要なスクリーン画像を形成する方法について説明する。
【0024】
図2は、不定形セル凹版10の表面に形成される不定形セルUを形成するために必要なスクリーン画像を生成するための基本手順を示す流れ図である。
【0025】
この流れ図に示す各手順は、実際には、コンピュータを用いて実行されることになる。まず、ステップS1において、以後の処理に必要なパラメータの設定が行われる。図示の例では、画素配列のサイズSx,Sy、母点の標準ピッチPx,Py、乱雑さの程度Dr、土手幅Wbなる各パラメータが設定される。
【0026】
画素配列のサイズSx,Syは、生成対象となるスクリーン画像を構成する画素配列の縦横の画素数を示すパラメータであり、たとえば、図3に示すようなスクリーン画像32を生成する場合であれば、Sx=20、Sy=12なるパラメータが設定されることになる。一方、母点の標準ピッチPx,Pyは、ステップS2で配置される母点Mの横方向および縦方向のピッチを示すパラメータである。本願明細書における「母点M」とは、網点(セル)の核となる点(後述するように、必ずしも網点の幾何学的な中心点になるわけではない)を意味するものである。たとえば、図3に示すように、網点が周期的に配置される従来のAMスクリーン画像の場合は、中心点Cが母点Mに一致することになり、図3に示すピッチPx,Pyが、母点のピッチPx,Pyに一致する。すなわち、図3の例の場合、画素配列のサイズは、Sx=20、Sy=12、母点のピッチは、Px=4,Py=4ということになる。ステップS1において設定するパラメータPx,Pyを、母点の「標準」ピッチと呼んでいるのは、ステップS3において、母点位置を変動させる処理が行われ、最終的な母点ピッチは、標準ピッチをランダムに変動させたものになるからである。
【0027】
なお、ここに示す例では、画素配列のサイズSx,Syおよび母点の標準ピッチPx,Pyを、スクリーン画像を構成する1画素のピッチを単位長とした値で設定しているが、もちろん、実寸単位での値を設定してもかまわない。たとえば、上述の例において、Sx=20、Sy=12、Px=4,Py=4という設定値は、それぞれ20画素に相当する長さ、12画素に相当する長さ、4画素に相当する長さ、4画素に相当する長さ、を示しているが、1画素分に相当する長さを実寸で定義しておけば、Sx,Sy、Px,Pyなるパラメータは、いずれも実寸で設定することができる。実寸で設定したSx,Syの値は、生成対象となるスクリーン画像の実際の寸法を示すパラメータとなり、実寸で設定した標準ピッチPx,Pyは、当該スクリーン画像を用いたスクリーニング処理で得られるハーフトーン画像上における網点の標準的な間隔(一般に線数と呼ばれている寸法値の逆数)を示すパラメータとなる。
【0028】
一方、ステップS1で設定される乱雑さの程度Drは、ステップS3における母点位置の変動の程度を示すパラメータであり、この例では、0<Dr≦1の範囲内の任意の値が設定される。セルの周期性は、セル目、モワレ、ロゼッタ模様などを発現させる要因となるが、このパラメータDrを大きな値に設定すればするほど、セルの周期性は失われ、セル目、モワレ、ロゼッタ模様などが発現しにくくなる。
【0029】
ここで、土手幅Wbは、隣接するセルU間の寸法(距離あるいは間隙)を示すパラメータであり、グラビア印刷の場合は、印刷版上に形成されるグラビアセル間の物理的な土手の最小寸法を規定するパラメータになる。この物理的な土手の最小寸法が小さすぎると、印刷中に土手が決壊し、グラビアセルに充填されていたインキが隣接するグラビアセルへと流入し、正しい階調をもったグラビア印刷を行うことができなくなる。したがって、土手幅Wbをパラメータとして設定する際には、必要枚数の印刷を行った場合でも、グラビア印刷版上に形成された物理的な土手が十分に耐久性を維持できるような寸法値に設定する必要がある。また、グラビア印刷版上にグラビアセルを形成するプロセスは、通常、エッチング液を用いた腐食プロセスにより行うことになるので、この腐食プロセスにおいて、いわゆるサイドエッチ(版面に平行な方向への腐食)が生じる場合には、サイドエッチ量を考慮して最適な土手幅Wbを決定するようにするのが好ましい。
【0030】
続くステップS2では、母点の配置が行われる。すなわち、ステップS1で設定されたサイズSx,Syをもった画素配列が定義された二次元平面上に、標準ピッチPx,Pyで多数の母点Mを配置する処理が実行される。たとえば、図3に示す例の場合、20×12なる画素配列上の中心点Cの位置に、母点Mが配置されることになる。もっとも、本願発明を実施するにあたって、母点Mは必ずしも正方格子状に配置する必要はない。実用上は、むしろ二次元平面上に同一サイズの正六角形を隙間なく配置したときの各正六角形の中心点となる位置に各母点を配置するのが好ましい。図4は、XY平面上に同一サイズの正六角形を隙間なく配置したときの各正六角形の中心点に各母点Mを配置した例を示す平面図である。各母点Mが中心となるようにそれぞれ単位領域Uを定義した場合、個々の正六角形が単位領域Uを構成することになる。
【0031】
このような正六角形を用いた母点配置の特徴は、隣接する母点間の距離がすべて等しくなるという点である。すなわち、図4に黒点で示した各母点Mからなる格子は、正三角形を並べた格子となっており、各母点Mはこの正三角形の頂点位置に配置されている。したがって、隣接する母点間の距離は、すべてこの正三角形の一辺の長さに等しくなり、最終的な印刷物上に、円に近い網点を形成することができるようになる。これに対して、図3に示すような正方格子状に配置された母点では、縦または横方向に隣接する母点間距離と斜め方向に隣接する母点間距離とが異なってしまうため、円に近い網点を形成する上では好ましくない。
【0032】
なお、図4に示すように、各正六角形の中心点に各母点Mを配置する場合、X軸方向のピッチPxとY軸方向のピッチPyとは当然異なることになる。具体的には、Px:Py=2:ルート3の関係になる。また、一般に、デジタル画像データは、矩形状の画素を縦横に並べた画素配列(この例では、生成対象となるスクリーン画像は、サイズSx,Syをもった画素配列)から構成されるため、図4に示すように、単位領域Uを正六角形の領域により構成すると、多くの画素は、単位領域Uの境界線を跨ぐような位置にくることになるが(たとえば、図4に示す画素Q)、個々の画素の中心点位置を含む領域を、当該画素が所属する単位領域とする取り扱いをすれば、不都合は生じない。
【0033】
もちろん、このステップS2における母点配置の処理は、実際には、コンピュータ内の演算処理として実行されるものであり、具体的に実行される処理内容は、個々の母点Mについて、それぞれ所定の座標値を求める演算処理ということになる。ここでは、個々の母点Mについて、XY座標系上での座標値(x,y)を求める演算が行われたものとし、座標(x,y)の位置に配置された母点を、母点M(x,y)と呼ぶことにする。
【0034】
続くステップS3では、ステップS2で配置された各母点の位置を、それぞれランダムに変動させる母点位置変動処理が行われる。この母点位置変動処理は、個々の母点がランダムに位置変動を生じるような処理であれば、どのような処理であってもかまわないが、図2に示す例では、次のような具体的な手法により、個々の母点を変動させている。
【0035】
まず、基本的に、個々の母点について、X軸方向に関する変動量が最大でも±(1/2)Pxの範囲内となり、Y軸方向に関する変動量が最大でも±(1/2)Pyの範囲内となるように、各母点の位置を変動させることにする。ここで、Px,Pyは、ステップS1で設定した母点の標準ピッチである。
【0036】
図5は、このような条件下での母点Mの位置変動範囲を示す平面図である。
【0037】
すなわち、このような条件下では、図示する母点M(x,y)に対しては、図にハッチングを施した範囲内での位置変動が生じることになる。このような範囲内で位置変動を行うようにすれば、隣接する母点間での位置関係の入れ替わりが生じることがないため、変動後の各母点間のピッチはランダムであっても、全体としての平均的な母点ピッチの値は、ステップS1で設定した標準ピッチPx,Pyに近い値が維持される。
【0038】
実際には、母点M(x,y)を、図5にハッチングを施した領域内でランダムに変動させるために、コンピュータ内で乱数を発生させ、この乱数の値に基づいて、変動後の位置を決定させるようにしている。また、変動量を、ステップS1で設定した乱雑さの程度Drなるパラメータに応じた値とするため、パラメータDrを考慮して変動量を決定するアルゴリズムを用いている。すなわち、図2に示すステップS3では、1つの母点M(x,y)のx座標値およびy座標値を、次の式に基づいて変動させている。
【0039】
x → x+(R・Dr・Px)
y → y+(R・Dr・Py)
ここで、Px,Py,Drは、ステップS1で設定した各パラメータであり、Rは、−0.5〜+0.5の範囲の一様分布乱数の値である。ここで、パラメータDrを最大値1に設定すると、図5に示す母点M(x,y)は、図のハッチング領域内の任意の位置へ変動することになるが、パラメータDrの値を小さく設定すると、このハッチング領域が徐々に狭くなる。したがって、パラメータDrは、各母点の変動量を制御するパラメータとして機能し、個々の母点をそれぞれ変動させた後の母点位置の乱雑さの程度を制御するパラメータということになる。
【0040】
図6は、図4に示すように整然と配置されていた母点Mを、上述のアルゴリズムによって変動させた後の状態を示す平面図である。破線は、図4に示す正六角形の位置を示している。図4では、個々の母点Mが各正六角形の中心に位置していたのに対し、図6では、それぞれがランダムに位置変動している状態がわかる。前述したとおり、本明細書における「母点M」とは、セルの核となる点であり、単位領域Uの核となる点である。ここで、単位領域Uは、AMスクリーン画像上において、1つのセルへの変換対象となる領域としての意味をもち、単位領域内の各画素値の出現頻度がほぼ均一となり、単位領域内にひとまとまりの黒画素の集団からなる領域(セル)が形成されるような画素値配置をもつ、という特徴を有している必要がある。図4に示すように、個々の母点Mが規則的に配置されている状態では、規則的に配置された正六角形をそのまま単位領域Uとすることができるが、図6に示すように、個々の母点Mの位置がランダムに変動した状態では、新たに不規則な単位領域Uを定義する必要がある。
【0041】
図2に示すステップS4は、変動後の各母点Mに基づいて、各単位領域Uを定義する処理である。
【0042】
図7は、図5に示す各母点Mに基づいて、それぞれ単位領域Uを定義した一例を示す平面図である。ランダムに配置された母点Mに基づいて、それぞれ当該母点Mを核とする単位領域Uを定義する手法は、必ずしも1つの手法に限定されるものではないが、実用上は、コンピュータによる効率的な演算が可能な手法を用いるのが好ましい。本願発明者は、以下に述べるボロノイ分割処理という手法が、本発明の目的達成に最適な手法であると考えている。
【0043】
ボロノイ分割の基本概念は、空間上に分散配置された多数の母点Mについて、それぞれ所定の条件に基づいて支配領域を決定し、空間を複数の支配領域に分割する、というものである。支配領域を決定するための条件として、空間上の所定点と母点との距離(ユークリッド距離)が用いられる。たとえば、図8に示すように、二次元平面上に3つの母点M1,M2,M3が配置されていた場合を考える。この場合、ボロノイ分割を実施することにより、この二次元平面は、母点M1の支配領域、母点M2の支配領域、母点M3の支配領域、という3つの支配領域に分割されることになる。
【0044】
この二次元平面上の任意の点Q(x,y)が、どの支配領域に所属するかは、各母点M1,M2,M3との間の距離d1,d2,d3を比較することによって決定される。すなわち、任意の点Q(x,y)は、最も近い母点(以下、最近接母点と呼ぶ)の支配領域に所属させられることになる。図8に示す例では、d1<d2<d3となっているので、点Q(x,y)の最近接母点はM1となり、点Q(x,y)は母点M1の支配領域に所属させられることになる。このように、二次元平面上のすべての点を、それぞれ最近接母点の支配領域に所属させることにすれば、二次元平面は3つの支配領域に分割されることになる。
【0045】
もちろん、幾何学的な二次元平面上には、無限個の点が存在することになるが、本発明を実施する上では、ステップS1で定義されたサイズSx,Syをもった画素配列を構成する個々の画素について、それぞれ最近接母点の支配領域に所属させる処理を行えばよい。具体的には、特定の画素が所属する支配領域を決定するには、たとえば、当該画素の中心位置と全母点との距離をそれぞれ演算により求め、距離が最小となる母点を最近接母点として認識し、当該画素をこの最近接母点の支配領域に所属させるような処理を行えばよい。なお、実用上は、距離自身を求めて比較する代わりに、距離の2乗を求めて比較する方が、演算負担が軽減される。このような処理を行えば、画素配列を構成する(Sx・Sy)個のすべての画素を、いずれかの母点の支配領域に所属させることができる。そこで、同一の支配領域に所属している画素の集合を1つの単位領域と定義すれば、個々の母点を核とした単位領域を定義することができる。
【0046】
結局、図2のステップS4で行う処理は、ステップS1で設定したサイズSx,Syをもつ画素配列を構成する各画素について、それぞれ最も距離が近い母点を、当該画素についての最近接母点と定義し、同一の母点を最近接母点とする画素の集合により1つの単位領域が構成されるように、二次元平面上に複数の単位領域を定義する処理、と言うことができる。こうして定義された各単位領域は、それぞれがランダムな形状をした領域となり、それぞれがランダムな配置をとる。図9は、ランダムな形状をした単位領域Uの一例を示す平面図であり、Mは母点の位置を示している。図示のとおり、この単位領域Uは、多数の画素Q(x,y)の集合によって構成されている。
【0047】
なお、図4に示すように、規則的に配置された母点Mに基づいてボロノイ分割処理を行って単位領域Uを定義した場合、各母点Mは単位領域Uの中心点となるが、図6に示すように、不規則配置された母点Mに基づいてボロノイ分割処理を行って単位領域Uを定義した場合、各母点Mは必ずしも単位領域Uの幾何学的な中心点(重心)にはならない。これは、ボロノイ分割処理により定義される単位領域Uの境界線が、2つの隣接する母点から等距離の点の集合となるためである(図7に示す各単位領域Uは、図示の便宜上、正確なボロノイ分割処理の結果として得られる単位領域にはなっていない)。後述するように、母点Mは、最終的な印刷物上に形成されるセルの核となる点であるため、母点Mが単位領域Uの幾何学的な中心点になっていないと、母点Mは、形成される網点の幾何学的な中心点にもならないが、実用上は何ら問題は生じない。
【0048】
なお、当該工程の際には、二番目に距離が近い母点を当該画素についての次近接母点と定義する処理も併せて行うようにする。このように、ある特定の画素について、最近接母点と次近接母点とが求まると、この最近接母点と次近接母点の位置に基づいて、当該特定の画素が、土手領域内の画素か否かを判定することが可能になる。
【0049】
図11は、座標(x,y)に位置する画素Q(x,y)が、土手幅Wbをもつ土手領域内の画素か否かを判定する原理を示す平面図ある。
【0050】
ここでは、画素Q(x,y)に最も近い母点がM1、第2番目に近い母点がM2、第3番目に近い母点がM3であったものとしよう。この場合、画素Q(x,y)の最近接母点はM1、次近接母点がM2ということになり、母点M3はこの判定には一切関与しない。判定を行うには、まず、最近接母点M1と次近接母点M2とを結ぶ線分L1(図の破線)を求め、この線分L1の垂直二等分線L2(図の一点鎖線)を求める。そして、この垂直二等分線L2を中心線として、パラメータとして設定した土手幅Wbに相当する幅をもった帯状領域Ab(図のハッチング領域)を定義し、判定対象となる画素Q(x,y)がこの帯状領域Ab内の画素であった場合には、当該画素Q(x,y)を土手領域B内の画素と判定すればよい。
【0051】
図示の例の場合、画素Q(x,y)は、帯状領域Ab外にあるので、土手領域B内の画素とは判定されないことになる。このように、土手領域B内の画素とは判定されなかった画素については、最近接母点M1についての単位領域に所属する画素として取り扱えばよい。図示の例では、画素Q(x,y)は、母点M1についての単位領域に所属する画素になる。もちろん、図11に示す帯状領域Abは、母点M1,M2に関しての判定基準となる領域である。したがって、たとえば、最近接母点がM1,次近接母点がM3となるような別な画素についての判定を行う場合には、これら両母点M1,M3を結ぶ線分の垂直二等分線を中心線とする別な帯状領域が判定基準として用いられる。こうして、すべての画素について、それぞれ土手領域内の画素か否かの判定を行い、土手領域外と判定された画素については、最近接母点についての単位領域に所属させ、土手領域内と判定された画素については、土手領域に所属させる処理を行えば、図1に示すような領域定義を行うことができる。
【0052】
こうして単位領域の定義が完了すると、最後に、図2のステップS5において、各単位領域内の画素について、それぞれ画素値を決定する処理が行われる。前述したとおり、単位領域Uは、AMスクリーン画像上において、1つのセルへの変換対象となる領域としての意味をもち、単位領域内の各画素値の出現頻度がほぼ均一となり、単位領域内にひとまとまりの黒画素の集団からなる領域(網点)が形成されるような画素値配置をもつ、という特徴を有している必要がある。
【0053】
定義すべき画素値の範囲は、原画像のもつ階調情報に応じて定まる。たとえば、4ビットの階調情報(0〜15の画素値)をもつ原画像についてのスクリーニング処理を行うためのAMスクリーンを生成するには、0〜14の範囲内の画素値(1〜15の範囲内の画素値でもかまわない)を定義すればよいし、8ビットの階調情報(0〜255の画素値)をもつ原画像についてのスクリーニング処理を行うためのAMスクリーンを生成するには、0〜254の範囲内の画素値(1〜255の範囲内の画素値でもかまわない)を定義すればよい。
【0054】
ステップS4で定義された個々の単位領域Uは、それぞれ形状や大きさが異なり、構成要素となる画素の数もそれぞれ異なる。したがって、ステップS5における画素値の決定処理は、個々の単位領域ごとに独立して実行されることになる。こうして、すべての単位領域Uについて、画素値を決定する処理が完了すれば、サイズSx,Syの画素配列を構成するすべての画素に対して、所定の画素値が得られたことになるので、この画素配列をサイズSx,Syのスクリーン画像として出力する処理を行えばよい。こうして出力されたスクリーン画像は、従来のAMスクリーン画像と同様に、濃度情報を網点の面積として表現したハーフトーン画像を生成する機能を有し、しかも網点の周期性を排除することにより、セル目、モワレ、ロゼッタ模様の発現を防止することができる。
【0055】
最後に、具体的な画像の例を示しておく。
【0056】
図12は、上述した土手領域を考慮した手法で生成されたスクリーン画像の具体的な一例を示す平面図である。
【0057】
電子出願における図面解像度の制約により、濃淡の具合が若干不明瞭であるが、不定形の多数の単位領域が、所定幅の土手領域を挟んでランダムな位置に配置されている様子がわかる。個々の単位領域は、中心部分ほど濃度が高く(黒に近く)、周囲ほど濃度が低く(白に近く)なっている。これは、中心から周囲にかけて画素値が徐々に変化しているためである。
【0058】
図13は、本願発明の方法に用いられる、いわゆる定形セル凹版の表面(セル形状)の一例(およびこれを形成するためのスクリーン画像の一例)を示す図である。
【0059】
本願発明の方法においては、上記で説明してきた不定形セルに加えて、図示するような従来から用いられている定形セルをも併用することが可能である。このような定形セルを用いても、上述した不定形セルの効果により、セル目、モワレ、ロゼッタ模様等が発現することがない。
【0060】
本願発明のグラビア印刷方法において、図1に示す不定形セルと、図13に示す定形セルとを併用する場合にあっては、その使用順序(印刷順序)については、特に限定することはなく、任意に設定することが可能である。しかしながら、最終的に完成する印刷物において、セル目、モワレ、ロゼッタ模様等の発現を効果的に防止するためには、不定形セルを用いた印刷層が最表面に位置するように使用することが好ましい。
【0061】
図14は、本願発明の印刷物としての水圧転写方法に用いられる水圧転写用シートの概略断面図である。
【0062】
図示するように、基板としての水溶性または水膨潤性のシート41上に印刷層を4層重ね刷りする場合にあっては、少なくとも第4印刷層45については、不定形セル凹版を用いて印刷することが好ましく、任意で第1〜3印刷層42〜44についても不定形セル凹版を用いて印刷すればよい。
【0063】
なお、不定形セル凹版のみを用いて重ね刷りをする場合には、それぞれの不定形セル凹版のセル形状を全て異なるパターンとすることが好ましい。完全に同一の不定形セル同士を用いて重ね刷りをすると、干渉等によりセル目、モワレ、ロゼッタ模様等が発現する虞があるからである。
【0064】
なお、水溶性または水膨潤性のシート41としては、従来から水圧転写用シートとして一般に用いられている材料を適宜選択して用いることができる。具体的な材料としては、ポリビニルアルコール樹脂、デキストリン、ゼラチン、にかわ、カゼイン、セラック、アラビアゴム、澱粉、蛋白質、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルメチルエーテル、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、酢酸ビニルとイタコン酸との共重合体、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、アルギン酸ソーダ等が挙げられる。支持体シート41の厚さは10〜100μmが好ましい。
【0065】
なお、図14を用いて本発明の印刷物について説明したが、これに限定されることはなく、現在グラビア印刷方法により印刷されている印刷物であれば、前述の本発明のグラビア印刷方法を用いることで、本発明の印刷物とすることが可能である。例えば、書籍、雑誌、包装、さらには特に高い意匠性を要求される建材、自動車等の乗り物における内装パネル等、各種印刷物を挙げることができる。
【0066】
また、本発明のグラビア印刷方法、および本発明の印刷物にあっては、前記の水圧転写方法に用いられる水圧転写用シートや真空成形方法の際に用いられる印刷シート、さらには圧空成形方法の際に用いられる印刷シートなどに効果的に応用できる。これらの方法にあっては、印刷シートが延ばされつつ成形される場合が多く、その結果セル目、モワレ、ロゼッタ模様が目立つ虞が方法であるところ、本発明によれば、これらが発現することを防止することができるからである。
【実施例】
【0067】
次に、本願発明について実施例を用いて説明する。
【0068】
(実施例1)
図14に示すような水圧転写用シートを本願発明の方法により形成した。
【0069】
具体的には、水溶性フィルムとして、PVAフィルム(日本合成化学工業製 ハイセロン C−300)を用い、この上に、図13に示した従来からの定形セルが形成された凹版を用いて第1〜第3の印刷層をグラビア印刷方法により設け、最後に、図1に示したいわゆる不定形セルが形成された凹版を用いて第4の印刷層をグラビア印刷方法により設けることにより、実施例1の水圧転写用シートを形成した。
【0070】
なお、このグラビア印刷方法において用いたインキは、ザ・インクテック社製商品名:KLCF(改−3)墨、耐候赤、耐候黄、青、耐候ゴールドパール、ホワイトパール、シルバーであり、混色または単色の組合せにより調色されたものを使用した。
【0071】
(実施例2)
前記実施例1と同様の水溶性フィルムおよびインキを用いて、第1の印刷層と第4の印刷層を、図1に示したいわゆる不定形セルが形成された凹版を用いてグラビア印刷方法により設け、第2と第3の印刷層については、図13に示した従来からの定形セルが形成された凹版を用いてグラビア印刷方法により設けることにより、実施例2の水圧転写用シートを形成した。
【0072】
(実施例3)
前記実施例1と同様の水溶性フィルムおよびインキを用いて、第1、第2、第4の印刷層を、図1に示したいわゆる不定形セルが形成された凹版を用いてグラビア印刷方法により設け、第3の印刷層については、図13に示した従来からの定形セルが形成された凹版を用いてグラビア印刷方法により設けることにより、実施例3の水圧転写用シートを形成した。
【0073】
(実施例4)
前記実施例1と同様の水溶性フィルムおよびインキを用いて、第1〜第4全ての印刷層を、図1に示したいわゆる不定形セルが形成された凹版を用いてグラビア印刷方法により設けることにより、実施例4の水圧転写用シートを形成した。
【0074】
(比較例1)
前記実施例1と同様の水溶性フィルムおよびインキを用いて、第1〜4全ての印刷層を図13に示した従来からの定形セルが形成された凹版を用いてグラビア印刷方法により設けることにより、比較例1の水圧転写用シートを形成した。
【0075】
(実施例1〜4と比較例1の比較結果)
上記実施例1〜4の水圧転写用シート、および比較例1の水圧転写用シートのそれぞれについて、印刷性、セル目の有無、モワレの有無、意匠性、の各項目を比較した。
【0076】
またさらに、これらの水圧転写用シートを用いて、それぞれ水圧転写方法を実施し、その際の転写特性、および被転写物に転写された印刷模様におけるセル目の有無、モワレの有無、意匠性の各項目を比較した。
【0077】
その結果を以下の表1に示す。
【0078】
【表1】
また、図15に実施例1の水圧転写用シート、および比較例1の水圧転写用シートのそれぞれの表面(印刷面側)と裏面(水溶性シート側)の写真を示す。
【0079】
さらに、図16に実施例1の水圧転写用シート、および比較例1の水圧転写用シートを用いて水圧転写方法を実施した場合の被転写物の印刷面の写真を示す。
【0080】
表1、および図15、16からも明らかなように、本願発明の方法、および本願発明の印刷物によれば、セル目、モワレ、ロゼッタ模様の発現を防止することが出来ることが分かる。
【0081】
(実施例5)
図17は、本発明の実施例5の印刷物(真空成形方法に用いられる印刷シート)の構成を示す概略断面図である。
【0082】
図示するように、基板としてアクリルフィルム(住友化学製、商品名:S−001)を用い、その上に図13に示した従来からの定形セルを用いて第1〜3の印刷層をグラビア印刷方法により設け、次いで、図1に示した不定形セルが形成された凹版を用いて第4の印刷層をグラビア印刷方法により設け、さらに、図13に示した従来からの定形セルを用いて第5〜6の印刷層をグラビア印刷方法により設けることにより、本発明の実施例5の真空成形方法に用いられる印刷シートを成形した。
【0083】
なお、このグラビア印刷方法に用いたインキは、市販されている昭和インク工業製建材用インキの各色を使用した。
【0084】
(比較例2)
図17に示す本発明の実施例5の印刷物において、第1〜第6全ての印刷層を従来からの定形セルを使用した他は、全て実施例5と同様の条件を用いることにより、比較例2の真空成形方法に用いられる印刷シートを作成した。
【0085】
(実施例5と比較例2の比較結果)
上記実施例5の真空成形方法に用いられる印刷シート、および比較例2の真空成形方法に用いられる印刷シートのそれぞれについて、印刷性、セル目の有無、モワレの有無、意匠性、の各項目を比較した。
【0086】
その結果を以下の表2に示す。
【0087】
【表2】
上記表2からも明らかなように、本発明の方法により形成された本発明の真空成型方法に用いられる印刷シートは、従来のそれに比べ、印刷性、セル目の有無、モワレの有無、意匠性の各項目において優れていることが分かった。
【0088】
(実施例6)
図18は、本発明の実施例6の印刷物(壁紙用印刷紙)を構成を示す概略断面図である。
【0089】
図示するように、基板として裏打ち紙(中越パルプ製)を用い、その上に塩化ビニルを主成分とする層をコーティングし、次いで、図1に示した不定形セルが形成された凹版を用いて第1の印刷層をグラビア印刷方法により設け、さらに、図13に示した従来からの定形セルを用いて第2の印刷層をグラビア印刷方法により設けることにより、本発明の実施例6の壁紙用印刷紙を成形した。
【0090】
なお、このグラビア印刷方法に用いたインキは、大日精化工業製商品名ハイドリック各色を使用した。
【0091】
(比較例3)
図18に示す本発明の実施例5の印刷物において、第1、2の印刷層を従来からの定形セルを使用した他は、全て実施例6と同様の条件を用いることにより、比較例3の壁紙用印刷紙を作成した。
【0092】
(実施例6と比較例3の比較結果)
上記実施例6の壁紙用印刷紙、および比較例3の壁紙用印刷紙のそれぞれについて、印刷性、セル目の有無、モワレの有無、意匠性、の各項目を比較した。
【0093】
その結果を以下の表3に示す。
【0094】
【表3】
上記表3からも明らかなように、本発明の方法により形成された本発明の壁紙用印刷紙は、従来のそれに比べ、印刷性、セル目の有無、モワレの有無、意匠性の各項目において優れていることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本願発明のグラビア印刷方法に用いられる、いわゆる不定形セル凹版の表面(セル形状)の一例(およびこれを形成するためのスクリーン画像の一例)を示す図である。
【図2】不定形セル凹版10の表面に形成される不定形セルUを形成するために必要なスクリーン画像を生成するための基本手順を示す流れ図である。
【図3】複数の単位領域Uを縦横に繰り返し配置することにより構成されたスクリーン画像32の一例を示す平面図である。
【図4】XY平面上に同一サイズの正六角形を隙間なく配置したときの各正六角形の中心点に各母点Mを配置した例を示す平面図である。
【図5】X軸方向に関する変動量が最大でも±(1/2)Pxの範囲内となり、Y軸方向に関する変動量が最大でも±(1/2)Pyの範囲内となる、という条件下での母点Mの位置変動範囲を示す平面図である。
【図6】図4に示すように整然と配置されていた母点Mを、所定のアルゴリズムによって変動させた後の状態を示す平面図である。
【図7】図6に示す各母点Mに基づいて、それぞれ単位領域Uを定義した一例を示す平面図である。
【図8】ボロノイ分割処理の基本概念を説明する平面図である。
【図9】ランダムな形状をした単位領域Uの一例を示す平面図である。
【図10】具体的なスクリーン画像31の画素構成を示す平面図である。
【図11】画素Q(x,y)が土手領域内の画素か否かを判定する原理を示す平面図である。
【図12】土手領域を考慮した本発明に係るスクリーン画像の生成方法により生成されたスクリーン画像の具体的な一例を示す平面図である。
【図13】いわゆる定形セル凹版の表面(セル形状)の一例(およびこれを形成するためのスクリーン画像の一例)を示す図である。
【図14】本願発明の印刷物としての水圧転写方法に用いられる水圧転写用シートの概略断面図である。
【図15】実施例1の水圧転写用シート、および比較例1の水圧転写用シートのそれぞれの表面(印刷面側)と裏面(水溶性シート側)の写真である。
【図16】実施例1の水圧転写用シート、および比較例1の水圧転写用シートを用いて水圧転写方法を実施した場合の被転写物の印刷面の写真である。
【図17】実施例5の印刷物(真空成形方法に用いられる印刷シート)の構成を示す概略断面図である。
【図18】実施例6の印刷物(壁紙用印刷紙)の構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0096】
10 … 不定形セル凹版
31,32 … スクリーン画像
B … 土手領域
C … 単位領域の中心点
Dr … 乱雑さの程度を示すパラメータ(0<Dr≦1)
d1〜d3 … 母点との距離
L1 … 母点間を結ぶ線分
L2 … 線分L1の垂直二等分線
M,M1〜M3,M(x,y) … 母点
Px … X軸方向の標準ピッチ
Py … Y軸方向の標準ピッチ
Q,Q(x,y) … スクリーン画像の画素/画素値
R … 一様分布乱数(−0.5≦R≦+0.5)
S1〜S5, … 流れ図の各ステップ
Sx,Sy … スクリーンサイズ
U,U1〜U3 … 単位領域
Wb … 土手幅
x,y … XY座標系の座標値
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルが形成された凹版を用いるグラビア印刷方法であって、
前記用いられる凹版のうち、少なくとも1つは、隣り合うセル同士の形状が異なっており不規則に配列されている不定形セル凹版であることを特徴とするグラビア印刷方法。
【請求項2】
請求項1に記載のグラビア印刷方法であって、
セルの形状が全て同一形状を呈し規則的に配列されている定形セル凹版を用いて印刷する工程と、前記不定形セル凹版を用いて印刷する工程と、を含むことを特徴とするグラビア印刷方法。
【請求項3】
請求項2に記載のグラビア印刷方法であって、
前記定形セル凹版を用いて印刷する工程を行った後、最後に前記不定形セル凹版を用いて印刷する工程を行うことを特徴とするグラビア印刷方法。
【請求項4】
基板と、当該基板上に形成された印刷層とからなる印刷物であって、
前記印刷層は、隣り合うセル同士の形状が異なっており不規則に配列されている不定形セル凹版を用いて、グラビア印刷方法により印刷されていることを特徴とする印刷物。
【請求項5】
請求項4に記載の印刷物であって、
前記印刷層は、さらに、セルの形状が全て同一形状を呈し規則的に配列されている定形セル凹版を用いて、グラビア印刷方法により印刷されていることを特徴とする印刷物。
【請求項6】
請求項4または5に記載の印刷物であって、
前記基板が、水溶性若しくは水膨潤性のシートからなり、
前記印刷層に活性剤を塗布し、次いで、印刷模様層が形成された面が上になるように水圧転写用シートを水面に浮遊せしめ、次いで、被転写体を前記印刷模様層に押圧して、水圧により被転写体表面に印刷模様層を転写する水圧転写法において用いられることを特徴とする印刷物。
【請求項1】
複数のセルが形成された凹版を用いるグラビア印刷方法であって、
前記用いられる凹版のうち、少なくとも1つは、隣り合うセル同士の形状が異なっており不規則に配列されている不定形セル凹版であることを特徴とするグラビア印刷方法。
【請求項2】
請求項1に記載のグラビア印刷方法であって、
セルの形状が全て同一形状を呈し規則的に配列されている定形セル凹版を用いて印刷する工程と、前記不定形セル凹版を用いて印刷する工程と、を含むことを特徴とするグラビア印刷方法。
【請求項3】
請求項2に記載のグラビア印刷方法であって、
前記定形セル凹版を用いて印刷する工程を行った後、最後に前記不定形セル凹版を用いて印刷する工程を行うことを特徴とするグラビア印刷方法。
【請求項4】
基板と、当該基板上に形成された印刷層とからなる印刷物であって、
前記印刷層は、隣り合うセル同士の形状が異なっており不規則に配列されている不定形セル凹版を用いて、グラビア印刷方法により印刷されていることを特徴とする印刷物。
【請求項5】
請求項4に記載の印刷物であって、
前記印刷層は、さらに、セルの形状が全て同一形状を呈し規則的に配列されている定形セル凹版を用いて、グラビア印刷方法により印刷されていることを特徴とする印刷物。
【請求項6】
請求項4または5に記載の印刷物であって、
前記基板が、水溶性若しくは水膨潤性のシートからなり、
前記印刷層に活性剤を塗布し、次いで、印刷模様層が形成された面が上になるように水圧転写用シートを水面に浮遊せしめ、次いで、被転写体を前記印刷模様層に押圧して、水圧により被転写体表面に印刷模様層を転写する水圧転写法において用いられることを特徴とする印刷物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図17】
【図18】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図17】
【図18】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−152645(P2007−152645A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348468(P2005−348468)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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