説明

グラビア印刷用塗工紙

【課題】安価な原料が用いられ、クッション性及び平滑度が高く、耐退色性に優れるだけでなくグラビア印刷適性にも優れ、かつ、高白色度を有するグラビア印刷用塗工紙を提供すること。
【解決手段】基紙と、該基紙上に、顔料及び接着剤を主成分とする、少なくとも一層の顔料塗工層とを有するグラビア印刷用塗工紙であって、前記顔料塗工層に、脂肪族ポリエーテル系化合物からなる柔軟剤が含有され、全反射型印刷平滑度計にて測定した顔料塗工層表面の正反射平滑度が75%以上であることを特徴とする、グラビア印刷用塗工紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア印刷用塗工紙に関する。さらに詳しくは、高白色度を有し、例えば高級美術印刷物、カタログ、パンフレット、カレンダー等の高級商業印刷物に好適に使用し得るグラビア印刷用塗工紙に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷方式には一般に、平版印刷(オフセット印刷)、凹版印刷(グラビア印刷)、凸版印刷(フレキソ印刷)等の種類があるが、美麗な印刷が要求される女性誌や高級美術印刷物においては、グラビア印刷が好適に用いられる。これは、グラビア印刷では印刷の濃淡をインキ濃度で表現することから、網点で表現するオフセット印刷に比べて階調表現力に優れているからである。しかし一方で、グラビア印刷で使用される用紙には、凹版部分のインキを均一に転写するための平滑性と柔軟性とが要求される。
【0003】
従来のグラビア印刷用塗工紙では、その柔軟性を向上させるために、基紙のパルプ成分として柔軟性に富んだ機械パルプを多用する方策が、また平滑性を向上させるために、塗工顔料として、塗工層のカバーリングが良好で配向し易いカオリンクレーを多用する方策が採用されている。
【0004】
しかしながら、これらの方策はいずれも、グラビア印刷用塗工紙の白色度を低下させる傾向にある。つまり、機械パルプの白色度は、従来印刷用紙で一般に使用されている晒クラフトパルプよりも低く、またカオリンクレーの白色度は、従来印刷用紙で一般に顔料として使用されている炭酸カルシウムよりも低い。これにより、従来のグラビア印刷用塗工紙の白色度は、通常70〜80%程度であり、一般の塗工紙(80〜90%)に比べて低白色度に留まっているのが現状である。
【0005】
一方、前記一般の塗工紙は、グラビア印刷用塗工紙と比べて確かに白色度が高いものの、用紙自体に柔軟性がないため、グラビア印刷適性がなく、高級印刷には適さない。したがって、これら両者の長所を有する塗工紙、すなわち一般の塗工紙と同程度の白色度を有し、かつ、グラビア印刷適性を有する塗工紙が要望されており、このような塗工紙を用いることにより、よりコントラストの高い高級印刷物の実現が可能となる。
【0006】
高白色度のグラビア印刷用塗工紙を得るために、例えば、機械パルプを配合し、顔料として硫酸カルシウムを使用する方法(特許文献1)や、特定形状の炭酸カルシウムを配合することで、機械パルプを使用せずに塗工紙を得る方法(特許文献2)が提案されているが、いずれも特殊な顔料を使用する必要があり、コスト高となるにもかかわらず、それに見合った高白色度でグラビア印刷適性を有する塗工紙が得られるわけではない。
【0007】
このように、顔料として、塗工紙用途に一般に使用されている安価な炭酸カルシウムやカオリンクレーを使用し、かつ、多量の機械パルプを使用することなく、グラビア印刷適性を有する高白色度のグラビア印刷用塗工紙は、未だ得られていないのが実情である。
【特許文献1】特開2006−70374号公報
【特許文献2】特開平6−73695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来技術の課題を解決するためになされたものであり、安価な原料が用いられ、クッション性及び平滑度が高く、耐退色性に優れるだけでなくグラビア印刷適性にも優れ、かつ、高白色度を有するグラビア印刷用塗工紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
基紙と、該基紙上に、顔料及び接着剤を主成分とする、少なくとも一層の顔料塗工層とを有するグラビア印刷用塗工紙であって、
前記顔料塗工層に、脂肪族ポリエーテル系化合物からなる柔軟剤が含有され、
全反射型印刷平滑度計にて測定した顔料塗工層表面の正反射平滑度が75%以上である
ことを特徴とする、グラビア印刷用塗工紙
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クッション性及び平滑度が高く、耐退色性に優れるだけでなくグラビア印刷適性にも優れ、かつ、高白色度を有するグラビア印刷用塗工紙を、安価な原料を用いて低コストで得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施の形態)
本発明のグラビア印刷用塗工紙は、基紙と、該基紙上に少なくとも一層の顔料塗工層とを有し、該顔料塗工層は、顔料及び接着剤を主成分とするものであり、かつ、該顔料塗工層には、特定の柔軟剤が含有されている。
【0012】
まず、本実施形態に係るグラビア印刷用塗工紙を構成する基紙について説明する。
【0013】
基紙は、通常の原料パルプを抄紙して得られるものであればよい。該原料パルプにも特に限定がなく、例えば未晒針葉樹パルプ(NUKP)、未晒広葉樹パルプ(LUKP)、晒針葉樹パルプ(NBKP)、晒広葉樹パルプ(LBKP)等の化学パルプ;ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプ;茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙、更紙古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、離解・脱墨・漂白古紙パルプ等の古紙パルプや、これらを漂白したパルプ等があげられ、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択し、その割合を調整して用いることができる。
【0014】
ただし、本発明においては、後述するような顔料塗工層表面の白色度が85%以上の高白色度グラビア印刷用塗工紙を得るためには、基紙における機械パルプの含有量はパルプ全量の10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下に抑えることが望ましい。この機械パルプの量は、グラビア印刷用塗工紙の基紙に含まれる量であり、原料として意図的に配合した含有量と、古紙パルプから意図せずに混入した含有量とを合わせた、パルプ全量に対する量である。したがって、機械パルプの含有量を10質量%以下に抑えるためには、原料として意図的に機械パルプを配合せず、かつ、古紙パルプの配合量も50質量%以下に抑えることが好ましい。このように基紙における機械パルプの含有量をパルプ全量の10質量%以下に抑えることで、顔料塗工層表面の白色度を85%以上にまで向上させることができ、後述する特定の柔軟剤を顔料塗工層に含有させてグラビア印刷適性を向上させることで、さらに高白色度の目的とするグラビア印刷用塗工紙を得ることができる。
【0015】
本実施形態においては、前記原料パルプを混合して抄紙原料(紙料スラリー)を調製するが、該原料パルプに、例えば内添サイズ剤、紙力増強剤、紙厚向上剤、歩留向上剤等の、通常塗工紙の基紙に配合される種々の添加剤を、その種類及び配合量を適宜調整して内添することができる。
【0016】
前記のごとき抄紙原料をワイヤーパートにて抄紙し、次いでプレスパート、プレドライヤーパートに供して基紙を製造することができ、次いでコーターパートにて後述する塗工剤を基紙上に塗工した後、アフタードライヤーパート、カレンダーパート、リールパート、ワインダーパート等に供して目的とする塗工紙を得ることができる。
【0017】
目的とするグラビア印刷用塗工紙の白色度をより向上させるには、基紙の白色度は、カラーアナライザー(型番:カラーi5、マクベスグレタグ社製)にて測定して75%以上、さらには80%以上であることが好ましい。このような基紙からグラビア印刷用塗工紙を製造した場合、後述するように、顔料塗工層表面の白色度を例えば90%以上とすることが可能になる。そして、このような白色度が90%以上のグラビア印刷用塗工紙を用いると、白色度が90%未満のグラビア印刷用塗工紙と比べて、さらに高精彩で、コントラストの高い高級印刷物を得ることが可能になる。
【0018】
基紙の坪量に特に限定はないが、後述するように、目的とするグラビア印刷用塗工紙の坪量が好ましくは50〜200g/m2であることを考慮して、該基紙の坪量は、通常45〜195g/m2程度となるように調整することが好ましい。
【0019】
基紙には、後述する顔料塗工層を設ける前に、サイズ剤を含む下塗塗工剤を塗工し、下塗塗工層を設けることが好ましい。該下塗塗工層を設けることにより、後述する顔料及び接着剤を主成分とする顔料塗工剤の塗工時に、該顔料塗工剤からの水分が基紙へと吸収されるのを抑えることができ、水分の吸収ムラにより顔料塗工層の平滑性が低下するのを防止することができる。
【0020】
なお、前記下塗塗工剤として澱粉を塗工することは好ましくない。これは、澱粉を塗工することでグラビア印刷用塗工紙の剛度が向上する反面、柔軟性が低下してグラビア印刷適性が低下する恐れがあるからである。
【0021】
下塗塗工剤(サイズ剤水溶液)は、固形分付着量で基紙の片面あたりで0.1〜1.5g/m2、好ましくは0.2〜1.2g/m2となるように、抄紙工程中のサイズプレス工程で、例えばフィルム転写方式により塗工されることが望ましい。サイズ剤が配合されていなかったり、該固形分付着量が0.1g/m2未満であると、顔料塗工剤の塗工時に基紙が水分を吸収し易く、顔料塗工層の平滑性が低下し、グラビア印刷適性も低下する恐れがある。逆に固形分付着量が1.5g/m2を超えると、サイズ効果が頭打ちとなるだけでなく、塗工時にミストの発生が増加し、異物等の欠陥が発生する恐れがある。
【0022】
前記したように、下塗塗工剤は、抄紙工程中のサイズプレス工程で公知の種々の方式により塗工することができるが、特にフィルム転写方式により塗工されることが好ましい。該フィルム転写方式は、アプリケーターロール上に、湿潤状態にある下塗塗工膜を形成し、この下塗塗工膜を基紙表面に転写する方式で、例えばトランスファーロールコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター等が用いられる。フィルム転写方式を採用すると、一定膜厚の下塗塗工層を基紙表面に塗工することができるので、例えばツーロールサイズプレスのような塗工剤のポンドを形成して塗工する方式に比べて、基紙内部への塗工剤の浸透が抑制され、基紙表面への薄膜塗工が可能となる点が特徴である。したがって、フィルム転写方式で下塗塗工剤が塗工されると、基紙表面に均一にサイズ効果が付与され、水分の吸収ムラに起因して顔料塗工層の平滑性にムラが発生し難いという効果がある。なお、フィルム転写方式において、アプリケーターロール上への下塗塗工膜の形成は、いかなる方法であってもよい。
【0023】
なお、下塗塗工層を形成するためのサイズ剤の種類には特に限定がなく、例えばスチレン系サイズ剤、オレフィン系サイズ剤、アクリレート系サイズ剤、スチレン−アクリル系サイズ剤等、一般的に製紙用途に用いられるものを適宜使用することができる。
【0024】
下塗塗工剤を調製する方法には特に限定がなく、前記サイズ剤に、所望の固形分濃度となるように適宜精製水を加えて適切な温度で撹拌し、均一な水溶液とすることが好ましい。
【0025】
次に、基紙上に、好ましくは該基紙上に設けられた下塗塗工層上に形成される顔料塗工層について説明する。該基紙上、好ましくは該基紙上に設けた下塗塗工層上には、顔料及び接着剤を主成分とする顔料塗工層が、少なくとも一層形成される。
【0026】
前記顔料の種類には特に限定がなく、一般的に製紙用の顔料として用いられるものを使用することができる。該顔料としては、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリンクレー、デラミネーテッドカオリン、タルク等が例示され、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して配合することができる。なお、高白色度を有する特殊顔料として、ホワイトカーボン、二酸化チタン、硫酸カルシウム等を使用することもできるが、本発明では、これら高白色度を有する特殊顔料を使用しなくとも、目的とする高白色度のグラビア印刷用塗工紙が得られるので、該特殊顔料を配合しないほうが、低コスト化が可能であり好ましい。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、サチンホワイト、亜硫酸カルシウム、石膏、硫酸バリウム、珪藻土、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ベントナイト、セリサイト等の無機顔料や、ポリスチレン樹脂微粒子、尿素ホルマリン樹脂微粒子、微小中空粒子、多孔質微粒子等の有機顔料等の特殊顔料を併用することもできる。
【0027】
前記特殊顔料を除く顔料の中でも、重質炭酸カルシウムを用いた場合には、グラビア印刷用塗工紙の白色度がより向上し易いので好ましい。特に、グラビア印刷用塗工紙においては、表面の平滑度を向上させるためにクレーを高配合する結果、重質炭酸カルシウムの配合量が少なく、白色度も低くなるのが一般的であるが、本発明においては、後述する特定の柔軟剤が顔料塗工層に含有されるので、重質炭酸カルシウムを高配合しても、充分な平滑性を付与することができ、グラビア印刷適性が向上する。
【0028】
前記重質炭酸カルシウムの配合量は、全顔料100質量部に対して30質量部以上であることが好ましく、さらに好ましくは40〜80質量部、特に好ましくは50〜80質量部である。重質炭酸カルシウムの配合量が30質量部未満では、得られるグラビア印刷用塗工紙の白色度が充分に向上しない恐れがあり、逆に80質量部を超えると、グラビア印刷適性が低下する恐れがある。
【0029】
なお、重質炭酸カルシウムの種類には特に限定がないが、例えば白色結晶質石灰石を乾式粉砕又は湿式粉砕した、5μm程度以下の平均粒子径を有するものを例示することができる。
【0030】
また、前記重質炭酸カルシウムの代わりに、軽質炭酸カルシウムを用いることもできる。軽質炭酸カルシウムとしては、例えば石灰石を焼成して化学的に製造した、数μm前後の平均粒子径を有するものや、0.02〜0.1μm程度の平均粒子径を有するものがあげられ、その形状としては、例えば柱状、針状、紡錘型の他、これらの形状を有する結晶構造が凝集・結晶化した毬栗状等があげられる。軽質炭酸カルシウムは、顔料の柔軟性が高く、より平滑な顔料塗工層表面を形成することができるという点から、より好ましい。
【0031】
さらに、前記重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウムといった炭酸カルシウム以外でも、例えばカオリンクレーを用いることができる。カオリンクレーは、グラビア印刷用塗工紙の光沢度及び平滑性が向上し易く、グラビア印刷適性がより良好となるので好ましいが、一方で、白色度が炭酸カルシウムよりも低いため、高配合するとグラビア印刷用塗工紙の白色度が低下する恐れがある。したがって、該カオリンクレーの配合量は、全顔料100質量部に対して70質量部以下とすることが好ましく、さらに好ましくは60質量部以下、特に好ましくは50質量部以下である。
【0032】
また、焼成を行ったり、製造工程で不純物の除去を充分に行うことによって得られる、さらに高白色度を付与し得る高白色度クレーや、高白色度と共に高光沢度も付与し得る高白色度微粒クレーを配合することもできるが、本発明においては、これら高白色度クレーや高白色度微粒クレーを使用しなくても、目的とする高白色度のグラビア印刷用塗工紙を得ることができる。これらを用いる場合には、例えば前記カオリンクレーと同様に、全顔料100質量部に対して50質量部以下の配合量とすることが特に好ましい。
【0033】
前記顔料と共に配合される接着剤の種類には特に限定がないが、より柔軟な顔料塗工層を形成するためには、ラテックスの安定性が高いことから、モノマー成分としてブタジエン成分を含むラテックスを特に好適に使用することができる。中でも本発明においては、ブタジエン成分をモノマー成分全量の50〜80質量%、さらには55〜75質量%、特に60〜70質量%含有するラテックスを用いることが好ましい。該ブタジエン成分が50質量%を下回る場合には、顔料塗工層の柔軟性が低下してグラビア印刷適性が低下する恐れがある。逆にブタジエン成分が80質量%を超える場合には、例えばスーパーカレンダーで平坦化処理を行う場合に、顔料塗工層が金属ロールに取られてロール汚れが発生し易くなる恐れがある。
【0034】
本発明のように、用紙に柔軟性が求められる場合は、後述する特定の柔軟剤に加えて、ブタジエン成分が前記特定の範囲内の含有量であるラテックス、特にブタジエン成分が前記特定の範囲内の含有量であるスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを接着剤として用いることで、さらに顔料塗工層の平滑性及び柔軟性を向上させることができる。したがって、たとえ機械パルプやカオリンクレーの含有量が少なくとも、充分なグラビア印刷適性を得ることができ、目的とする高白色度のグラビア印刷用塗工紙が得られる。
【0035】
前記スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス以外にも、本発明においては、一般的に製紙用途で使用可能な接着剤を併用することができる。このような接着剤としては、例えばカゼイン、大豆蛋白等の蛋白質類;メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン−メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス等の共役ジエン系ラテックス、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体ラテックスもしくは共重合体ラテックス等のアクリル系ラテックス、エチレン−酢酸ビニル重合体ラテックス等のビニル系ラテックス、あるいはこれらの各種共重合体ラテックスをカルボキシル基等の官能基含有単量体で変性したアルカリ部分溶解性又は非溶解性のラテックス等のラテックス類;ポリビニルアルコール、オレフィン−無水マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂等の合成樹脂系接着剤;酸化澱粉、陽性化澱粉、エステル化澱粉、デキストリン等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体等の、通常塗工紙に用いられる接着剤が例示され、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して併用することができる。
【0036】
顔料塗工剤における顔料と接着剤との配合割合は、全顔料100質量部に対して接着剤が3質量部以上、さらには4質量部以上となるように調整することが好ましく、また12質量部以下、さらには10質量部以下となるように調整することが好ましい。接着剤の配合量が3質量部未満では、例えばスーパーカレンダーで平坦化処理を行う場合に、顔料塗工層が金属ロールに取られてロール汚れが発生し易くなる恐れがある。逆に接着剤の配合量が12質量部を超えると、顔料塗工層中で接着剤が成膜してインキが転移し難くなり、グラビア印刷適性が低下する恐れがある。
【0037】
本実施形態に係るグラビア印刷用塗工紙においては、その顔料塗工層に、前記顔料及び接着剤以外に、脂肪族ポリエーテル系化合物からなる柔軟剤が含有されることが大きな特徴の1つである。
【0038】
前記脂肪族ポリエーテル系化合物は、界面活性剤としての性能を有しており、顔料塗工剤の濡れ性を向上させることが可能であり、基紙上に形成された顔料塗工層を平滑化する効果がある。
【0039】
一般的に塗工紙では、塗工剤の塗工直後から、赤外線ドライヤーやスキャッフドライヤー等の乾燥設備を経る間に、塗工面の平滑化(レベリング)が発生する。脂肪族ポリエーテル系化合物からなる柔軟剤は、この間における顔料塗工層の表面張力を低下させ、顔料塗工層の柔軟性を向上させることができ、得られるグラビア印刷用塗工紙の平滑性が向上し、グラビア印刷適性が向上するものと考えられる。このような効果は、脂肪族ポリエーテル系化合物以外の化合物、例えばポリビニルアルコール(脂肪族ポリオール)やカルボキシメチルセルロース(脂環族ポリエーテルポリオール)では得ることができない。したがって、脂肪族ポリエーテル系化合物からなる柔軟剤を顔料塗工層に含有させることで初めて、基紙に機械パルプを配合しない場合であっても、また、顔料として炭酸カルシウムを50質量%以上配合した場合であっても、顔料塗工層表面の正反射平滑度が75%以上にまでグラビア印刷適性を向上させることができ、高白色度のグラビア印刷用塗工紙を得ることができる。
【0040】
脂肪族ポリエーテル系化合物の代表例としては、例えば脂肪族ポリエーテルポリオールや脂肪族ポリエーテルポリオールのアルキレンオキサイド付加物等の脂肪族ポリエーテルポリオール系化合物があげられるが、中でも脂肪族ポリエーテルポリオールのアルキレンオキサイド付加物が、顔料塗工層の柔軟化効果が高く、よりグラビア印刷適性を向上させることができるので、特に好ましい。
【0041】
グラビア印刷適性にさらに優れたグラビア印刷用塗工紙を得るには、該脂肪族ポリエーテル系化合物の含有量は、全顔料100質量部に対して0.1質量部以上、さらには0.2質量部以上であることが好ましく、また3.0質量部以下、さらには1.0質量部以下であることが好ましい。該脂肪族ポリエーテル系化合物の含有量が0.1質量部未満では、所定の平滑化効果が得られず、グラビア印刷適性が充分に向上しない恐れがある。逆に脂肪族ポリエーテル系化合物の含有量が3.0質量部を超えると、顔料塗工層の細孔を塞いでインキ吸収性が低下し、やはりグラビア印刷適性が充分に向上しない恐れがある。
【0042】
また、前記脂肪族ポリエーテル系化合物からなる柔軟剤に、接着剤としてブタジエン成分をモノマー成分全量の50〜80質量%含有するスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを組み合わせることで、顔料塗工層をより柔軟化、平滑化させることができる。したがって、基紙に機械パルプを配合せず、また、顔料として炭酸カルシウムを50質量%以上配合し、例えば白色度を85%以上にまで向上させた場合においても、充分なグラビア印刷適性を得ることができる。
【0043】
さらに顔料塗工層中には、白色度をより向上させる目的で、一般的に製紙用途で使用されている蛍光染料を含有させることができる。
【0044】
蛍光染料の種類には特に限定がなく、一般的に製紙用途に用いられるものを使用することができる。該蛍光染料としては、例えばアミノスチルベン系、イミダゾール系、オキサゾール系、トリアゾール系、クマリン系、ナフタルイミド系、ピラゾリン系等の蛍光染料が例示され、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。これらの中でも、アミノスチルベン系蛍光染料が好ましく、中でもアミノスチルベン系スルホン酸誘導体が好ましい。さらには、スルホン酸基が1分子内に6つ配位したヘキサタイプやスルホン酸基が1分子内に4つ配位したテトラタイプのアミノスチルベン系スルホン酸誘導体が、蛍光増白効果が高いので好ましい。特に、ヘキサタイプのアミノスチルベン系スルホン酸誘導体が、より蛍光増白効果が高いので好ましい。
【0045】
前記脂肪族ポリエーテル系化合物には、蛍光染料の定着剤としての効果もあるので、蛍光染料を顔料塗工層に含有させることで、さらに高白色度のグラビア印刷用塗工紙を得ることができる。
【0046】
一般に、蛍光染料を配合すると退色と呼ばれる色戻りが発生し、塗工紙の白色度が低下し易くなる。高白色度の塗工紙を得るには、この退色を最小限に抑えなければならず、蛍光染料を充分に保持することができる定着剤が必要となる。従来の一般的な蛍光染料の定着剤では、蛍光染料の保持性能が低いため退色し易く、高白色度の塗工紙を得ることはできない。一方、脂肪族ポリエーテル系化合物は、ポリビニルアルコール(脂肪族ポリオール)やカルボキシメチルセルロース(脂環族ポリエーテルポリオール)等、従来の一般的な定着剤と比べて蛍光染料の保持性能が高く、退色が発生し難い。このように脂肪族ポリエーテル系化合物が高い保持性能を示す理由は、該脂肪族ポリエーテル系化合物は、界面活性剤としての性能を有しているので、蛍光染料の親水性基及び疎水性基双方を充分に定着させることができるためであると考えられる。
【0047】
このように、脂肪族ポリエーテル系化合物に加えて、蛍光染料を顔料塗工層に含有させることで、蛍光増白効果による高白色度、平滑化効果によるグラビア印刷適性、さらには耐退色性の向上効果が得られるので、例えば白色度が90%以上と、より高白色度を有するグラビア印刷用塗工紙を得ることができる。
【0048】
顔料塗工層中の蛍光染料の含有量は、全顔料100質量部に対して0.1質量部以上、さらには0.2質量部以上であることが好ましく、また1.0質量部以下、さらには0.6質量部以下であることが好ましい。蛍光染料の含有量が0.1質量部を下回ると、白色度の向上効果が充分に得られない恐れがある。逆に蛍光染料の含有量が1.0質量部を超えると、白色度の向上効果が頭打ちになるだけでなく、蛍光染料そのものの色がグラビア印刷用塗工紙に反映され、かえって白色度が低下する恐れがある。
【0049】
本実施形態にて用いる顔料塗工剤は、顔料及び接着剤を主成分とし、脂肪族ポリエーテル系化合物からなる柔軟剤と、好ましくは蛍光染料を含むが、これらの他にも、例えば消泡剤、離型剤、着色剤、保水剤等、製紙用途で一般的に用いられる各種助剤を、本発明の目的を阻害しない範囲で適宜配合することができる。
【0050】
顔料塗工剤を調製する方法には特に限定がなく、顔料、接着剤及び柔軟剤、並びに必要に応じて蛍光染料や各種助剤等の配合割合を適宜調整し、適切な温度にて均一な組成となるように撹拌混合すればよい。また顔料塗工剤の固形分濃度は特に限定されるものではなく、塗工装置や塗工量に応じて、例えば60〜75質量%程度に調整することが好ましい。
【0051】
次に、前記顔料塗工剤を基紙の少なくとも一方の面に、好ましくは該基紙上に設けられた前記下塗塗工層上に塗工し、該基紙上に少なくとも一層の顔料塗工層を形成する。
【0052】
基紙への顔料塗工剤の塗工は、例えば、複数段階、通常はプレドライヤーパートとアフタードライヤーパートとの2段階で行われるドライヤーパートの間のコーターパートにおいて行われることが好ましい。コーターパートでは、例えばブレードコーター、エアーナイフコーター、トランスファーロールコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、カーテンコーター等の塗工装置を設けたオンマシンコーター又はオフマシンコーターによって、基紙上に一層又は多層に分けて顔料塗工剤が塗工される。中でも、顔料塗工層表面の高い平滑性が確保されるという点から、ブレードコーターを用いることが好ましい。またドライヤーパートでの乾燥方法としては、例えば熱風加熱、ガスヒーター加熱、赤外線ヒーター加熱等の各種加熱乾燥方式を適宜採用することができる。
【0053】
顔料塗工剤の塗工量は、固形分付着量で基紙の片面あたり5g/m2以上、さらには7g/m2以上、特に9g/m2以上であることが好ましく、また20g/m2以下、さらには18g/m2以下、特に15g/m2以下であることが好ましい。該塗工量が片面あたり5g/m2未満では、顔料塗工層が充分に平坦化されず、良好なグラビア印刷適性が得られ難いだけでなく、顔料由来の白色度がグラビア印刷用塗工紙に反映されず、白色度が充分に向上しない恐れがある。逆に塗工量が片面あたり20g/m2を超えると、例えばスーパーカレンダーで平坦化処理を行う際に、顔料塗工層が剥離してロールに取られる、ロール汚れトラブルが発生し易くなり、生産性や品質が低下する恐れがある。
【0054】
なお、基紙上には、前記したように、顔料及び接着剤を主成分とし、脂肪族ポリエーテル系化合物からなる柔軟剤を含有した特定の顔料塗工層が、少なくとも一層形成されるが、基紙上に顔料塗工層を二層以上設ける場合、該特定の顔料塗工層が二層以上設けられていてもよく、最表層(トップコート)のみが該特定の顔料塗工層であり、最表層の下の顔料塗工層は、別の顔料塗工層であってもよい。ただし、高白色度でグラビア印刷適性に優れたグラビア印刷用塗工紙を得るには、最表層、最表層の下の顔料塗工層共に、柔軟剤として脂肪族ポリエーテル系化合物を含有させることが好ましい。
【0055】
前記のごとく形成された顔料塗工層には、光沢や平滑性、グラビア印刷適性をさらに向上させる目的で、スーパーカレンダーやソフトカレンダー等、弾性ロールと金属ロールとを組み合わせた平坦化設備にて平坦化処理を施すことができる。このような平坦化設備は、従来のマシンカレンダーとは異なり、用紙表面を幅広の面で、高温で処理することで、基紙の密度や塗工層の密度を過度に高めることなく平坦化が可能であり、例えばオフセット印刷、電子写真印刷等において好適な印刷面を形成させることができる。中でも、所定温度の金属ロールと弾性ロールとを、垂直方向に複数段組み合わせ、垂直方向に加圧するスーパーカレンダーは、温水を用いて70℃程度に加熱することから、電気を用いて加熱するソフトカレンダーに比べて経済的であるので、特に好適に用いられる。
【0056】
カレンダーによる平坦化処理の線圧や温度、速度は特に限定されないが、処理後の顔料塗工層の平滑性を充分に向上させ、また最終的に得られるグラビア印刷用塗工紙の緊度が過度とならないようにするために、例えばスーパーカレンダーで、線圧は95〜350kN/m、金属ロール温度は50〜90℃、速度は500〜1000m/分となるように調整することが好ましい。
【0057】
かくして得られるグラビア印刷用塗工紙の坪量は、グラビア印刷適性、紙質強度の確保、不透明度の確保という点から、JIS P 8124「坪量測定方法」に記載の方法に準拠して測定して、50g/m2以上、さらには70g/m2以上であることが好ましく、また200g/m2以下、さらには170g/m2以下であることが好ましい。坪量が50g/m2未満の場合、例えばグラビア印刷適性を確保しながら、同時に紙質強度を確保することが困難となる恐れがある。逆に坪量が200g/m2を超える場合には、近年要求されてきている軽量化や省資源化を達成することが困難となる恐れがある。
【0058】
グラビア印刷用塗工紙の白色度としては、その用途に応じて多少異なるが、印刷物、記録物として充分に満足な美観を得るという観点から、カラーアナライザー(型番:カラーi5、マクベスグレタグ社製)にて測定した顔料塗工層表面の白色度が85%以上、さらには88%以上、特に90%以上であることが好ましい。なお、印刷後に画線部と非画線部とのコントラストが高くなりすぎて、印刷物の見栄えを低下させないためには、該白色度は100%以下であることが好ましい。
【0059】
グラビア印刷用塗工紙のグラビア印刷適性は、正反射平滑度と網点ぬけ(スペックル)との2通りの方法で評価することができる。
【0060】
正反射平滑度は、グラビア印刷用塗工紙とガラス面との接触率から算出される平滑性の指標であり、数値が高いほど高平滑でグラビア印刷適性に優れることが知られている。グラビア印刷に適した、全反射型印刷平滑度計(マイクロトポグラフ、(株)東洋精機製作所製)にて測定した顔料塗工層表面の正反射平滑度は75%以上であり、好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上である。正反射平滑度が75%を下回ると、網点抜け(スペックル)が多発し、印刷物の見栄えが低下する。
【0061】
網点抜け(スペックル)は、グラビア印刷用塗工紙にグラビア印刷を行い、発生した網点抜けの個数で評価することができる。グラビア印刷において、網点抜けの個数が少ないほど好ましく、グラビア印刷に適した網点抜けの個数は、1cm2あたり好ましくは80個以下、さらに好ましくは50個以下、最も好ましくは20個以下である。網点抜けの個数が1cm2あたり80個を超えると、高級印刷物としての見栄えが低下する恐れがある。
【0062】
このように、本発明のグラビア印刷用塗工紙は、優れたグラビア印刷適性を維持しながら、高白色度を達成したものであり、かつ、従来の高白色塗工紙で問題であった耐退色性にも優れ、見栄えの良いものであるので、例えば高級美術印刷物、カタログ、パンフレット、カレンダー等の高級商業印刷物に好適に使用することができる。
【0063】
次に、本発明のグラビア印刷用塗工紙を以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0064】
調製例1〜26及び比較調製例1〜2(塗工剤の調製)
以下に示すサイズ剤に精製水を加えて常温で撹拌し、固形分濃度が7.0質量%の均一なサイズ剤水溶液である下塗塗工剤を得た。
【0065】
次に、顔料及び接着剤と、表1〜2に示す種類及び割合で柔軟剤及び蛍光染料とを常温にて混合撹拌し、固形分濃度が60〜75質量%の顔料塗工剤を得た。用いた顔料、接着剤、柔軟剤及び蛍光染料は以下のとおりである。なお、表1〜2に示す柔軟剤及び蛍光染料の配合量は、顔料全量100質量部に対する値である。また、表1〜2には記載していないが、顔料はカオリンクレー50質量部と重質炭酸カルシウム50質量部とを用い、この顔料100質量部に対して接着剤を6質量部配合して各顔料塗工剤を調製した。
【0066】
[1]下塗塗工剤
・サイズ剤
(品番:AK400、星光PMC(株)製)
【0067】
[2]顔料塗工剤
(1)顔料
・カオリンクレー
(品番:CenturyHC、PPSA社製)
・重質炭酸カルシウム
(品番:ハイドロカーブ90K、オミヤコーリア社製)
【0068】
(2)接着剤
・スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス
(品番:PA3024、日本エイアンドエル(株)製)
上記ラテックスを用い、モノマー成分全量中のブタジエン成分の含有量を表1〜2に示すとおりに変更して目的のラテックスを得た。なお、表1〜2にはメタクリル酸メチル及びアクリロニトリルの含有量も併せて示す。
【0069】
(3)柔軟剤
・柔軟剤A:脂肪族ポリエーテルポリオールのアルキレンオキサイド付加物
(品名:オプティアクトI−10、サンノプコ(株)製)
・柔軟剤B:脂肪族ポリエーテルポリオール
(品名:ポリエチレングリコール#200、ライオン(株)製)
・柔軟剤C:脂肪族ポリオール(ポリビニルアルコール)
(品名:ゴーセノールNL−05、日本合成化学(株)製)
・柔軟剤D:脂環族ポリエーテルポリオール(カルボキシメチルセルロース)
(品名:FINFIX300、CPkelco社製)
【0070】
(4)蛍光染料
・スチルベン:ヘキサタイプのアミノスチルベン系スルホン酸誘導体
(品番:カヤホールEXN、日本化薬(株)製)
・オキサゾール:オキサゾール系蛍光染料
(品番:ケイコールSN、日本曹達(株)製)
【0071】
【表1】

【表2】

【0072】
実施例1〜26及び比較例1〜2(グラビア印刷用塗工紙の製造)
原料パルプとしてLBKP、NBKP及びBPGW(漂白加圧ストーングランドパルプ)を、表3に示す質量割合で配合し、このパルプ100質量部(絶乾量)に対して、各々固形分で、内添サイズ剤(品番:AK−720H、ハリマ化成(株)製)0.02質量部、カチオン化澱粉(品番:アミロファックスT−2600、アベベジャパン(株)製)1.0質量部、及び歩留向上剤(品番:NP442、日産エカケミカルス(株)製)0.02質量部を添加してパルプスラリーを得た。
【0073】
次に、ワイヤーパート、プレスパート、プレドライヤーパート、アンダーコーターパート、アフタードライヤーパート、リールパートを含む製紙システムを用い、トップコーターパートを含む塗工機で顔料塗工剤を塗工し、カレンダーパートを含むスーパーカレンダーを用いて平坦化処理を行い、ワインダーパートにて製品に仕上げた。
【0074】
まず、パルプスラリーをワイヤーパートにて抄紙し、次いでプレスパート、プレドライヤーパートに供して、坪量49〜51g/m2の基紙を製造した。次いでアンダーコーターパートにて、下塗塗工剤を、固形分付着量で片面あたり1.0g/m2となるように、基紙の両面に下塗塗工し、アフタードライヤーパートで乾燥して下塗塗工層を形成した。
【0075】
また、基紙の白色度を、後述するグラビア印刷用塗工紙の白色度と同様の方法で測定したところ、83〜86%であった。
【0076】
この後、トップコーターパートにて、顔料塗工剤を、固形分付着量で片面あたり14g/m2となるように、基紙の両面における下塗塗工層の上に塗工して顔料塗工層を形成し、坪量79〜81g/m2の塗工紙を得た。
【0077】
次に、カレンダーパートにて、線圧300kN/m、金属ロール温度60℃、速度600m/分で前記塗工紙に平坦化処理を施し、ワインダーパートに供した後、目的とするグラビア印刷用塗工紙を得た。
【0078】
なお、ワイヤーパートではハイブリットフォーマーを用いて抄紙し、アンダーコーターパートではロッドメタリングサイズプレスコーターを用いたフィルム転写方式を採用し、トップコーターパートではブレードコーターを用いた。またカレンダーパートでは、スーパーカレンダーを用いた。
【0079】
【表3】

【0080】
得られたグラビア印刷用塗工紙について、各物性及び特性を以下の方法にて調べた。その結果を表4に示す。
【0081】
(1)白色度
カラーアナライザー(型番:カラーi5、マクベスグレタグ社製)にて顔料塗工層表面の白色度を測定した。測定条件は、UVIN(紫外線を含む)、SCI(反射光を含む)、C光源及び視野角2°である。
【0082】
(2)耐退色性
照射計(型番:FAL−3、スガ試験機(株)製)を用い、波長340nmのキセノン光を、温度63℃、照射強度0.4W/m2で24時間照射した。キセノン光の照射前後に、L値、a値及びb値を測定し、これらL値、a値及びb値各々について、照射前後の値の差、ΔL、Δa及びΔbを算出し、次式に従ってΔE値を求め、耐退色性の指標とした。
ΔE=(ΔL2+Δa2+Δb21/2
なお、このΔE値が小さくなるほど耐退色性に優れていることを示す。
【0083】
(3)グラビア印刷適性
(a)正反射平滑度
全反射型印刷平滑度計(マイクロトポグラフ、(株)東洋精機製作所製)を用いて測定した。加圧圧力20kgf/cm2の設定で加圧開始後10ミリ秒後の測定値を、顔料塗工層表面の正反射平滑度とした。
【0084】
(b)網点抜け(スペックル)
印刷局式グラビア印刷適性試験機(熊谷理機工業(株)製)を用い、各グラビア印刷用塗工紙の両面(F面側とW面側)それぞれの20%ハーフトーン部における網点欠落状態を、1cm2あたりの欠落数(個数)として測定した。
【0085】
(4)ロール汚れ
スーパーカレンダーの金属ロールに付着した、脱落した顔料塗工層について、以下の評価基準に基づいて汚れの程度を評価した。
(評価基準)
5:顔料塗工層が付着しておらず、ロール汚れが全くなかった。
4:顔料塗工層が僅かに付着してロール汚れが若干認められたが、操業に全く問題がなか
った。
3:顔料塗工層が付着してロール汚れが多少認められたが、簡単なロール掃除で操業が可
能であり、作業性は殆ど低下しなかった。
2:顔料塗工層が付着してロール汚れが認められ、ロール掃除が必要であり、作業性が低
下した。
1:多量の顔料塗工層が付着してロール汚れが著しく、充分なロール掃除が必要であり、
作業性が大きく低下した。
なお、前記評価基準のうち、5〜3の場合を実使用可能と判断する。
【0086】
【表4】

【0087】
実施例1〜26のグラビア印刷用塗工紙はいずれも、その顔料塗工層に、柔軟剤として脂肪族ポリエーテル系化合物が含有されているので、正反射平滑度が75%以上とグラビア印刷適性に優れ、同時に白色度が高く、耐退色性にも優れ、しかもロール汚れも発生しない乃至少なく作業性が良好なものであり、高級商業印刷物に好適に使用することが可能な、見栄えのよいグラビア印刷用塗工紙であることがわかる。
【0088】
これに対して、比較例1〜2のグラビア印刷用塗工紙は、柔軟剤として、脂肪族ポリエーテル系化合物ではなく、従来の脂肪族ポリオールや脂環族ポリエーテルポリオールが使用されているため、白色度が低く、耐退色性及びグラビア印刷適性のいずれにも劣り、高級商業印刷物として適切でないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のグラビア印刷用塗工紙は、例えば高級美術印刷物、カタログ、パンフレット、カレンダー等の高級商業印刷物に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙と、該基紙上に、顔料及び接着剤を主成分とする、少なくとも一層の顔料塗工層とを有するグラビア印刷用塗工紙であって、
前記顔料塗工層に、脂肪族ポリエーテル系化合物からなる柔軟剤が含有され、
全反射型印刷平滑度計にて測定した顔料塗工層表面の正反射平滑度が75%以上である
ことを特徴とする、グラビア印刷用塗工紙。
【請求項2】
前記接着剤が、ブタジエン成分をモノマー成分全量の50〜80質量%含有するラテックスである、請求項1に記載のグラビア印刷用塗工紙。
【請求項3】
前記脂肪族ポリエーテル系化合物が、脂肪族ポリエーテルポリオール系化合物である、請求項1又は2に記載のグラビア印刷用塗工紙。
【請求項4】
前記基紙における機械パルプの含有量がパルプ全量の10質量%以下であり、カラーアナライザーにて測定した前記顔料塗工層表面の白色度が85%以上である、請求項1〜3のいずれか1つに記載のグラビア印刷用塗工紙。
【請求項5】
前記顔料塗工層にアミノスチルベン系蛍光染料が含有され、カラーアナライザーにて測定した該顔料塗工層表面の白色度が90%以上である、請求項1〜4のいずれか1つに記載のグラビア印刷用塗工紙。

【公開番号】特開2009−150012(P2009−150012A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328668(P2007−328668)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】