説明

グラフトポリマーを用いて変性した難燃性ポリカーボネート成形配合物

【課題】優れた難燃性および非常に良好な機械的特性、例えばノッチ衝撃耐性、破断点伸び、弾性モジュラスおよび溶接線強度、それに加えて良好な応力亀裂特性を有するポリカーボネート成形配合物、および該成形配合物から得られた成型品を提供する。
【解決手段】ポリカーボネート、グラフトポリマー、フッ素化ポリオレフィンとポリアルキル(メタ)アクリレートとの混合物、及びかつ式(I):


で表されるリン化合物を含有するポリカーボネート成形配合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグラフトポリマーを用いて変性された、リン化合物および特定配合のフッ素化ポリオレフィンを含有する成形配合物に関し、その配合物は優れた難燃性および非常に良好な機械的特性、例えばノッチ衝撃耐性、破断点伸び、弾性モジュラスおよび溶接線強度、それに加えて良好な応力亀裂特性を有する。
【背景技術】
【0002】
ジホスフェートは防炎性添加剤として知られている。日本特開59−202−240号公報(特許文献1)には、オキシ塩化リン、ヒドロキノンまたはビスフェノールAのようなジフェノール、およびフェノールまたはクレゾールのようなモノフェノールからのそのような化合物の調製について開示されている。これらのジホスフェートは防炎剤としてポリアミドまたはポリカーボネート中で使用され得る。しかしながら上記公報には、オリゴマー化ホスフェートのポリカーボネート成形配合物への添加によって改良された応力亀裂耐性については記載されていない。
【0003】
欧州特開363−608A号公報(特許文献2)には、芳香族ポリカーボネート、スチレン含有コポリマーまたはグラフトコポリマー、および防炎剤としてオリゴマー化ホスフェートの難燃性ポリマー混合物について開示されている。テトラフルオロエチレンポリマーが添加され得ることが一般的に記載されている。
【0004】
欧州特開0−767−204A号公報(特許文献3)には、防炎剤としてオリゴホスフェート(ビスフェノールA(BPA)オリゴホスフェートタイプ)およびモノホスフェートの混合物を含有する難燃性ポリフェニレンオキシド(PPO)またはポリカーボネート混合物について開示されている。高含量の防炎剤は不利な機械的特性(ノッチ衝撃耐性、応力亀裂耐性)および加熱下で寸法安定性の低下を引き起こす。
【0005】
欧州特開0−611−798A号公報(特許文献4)および国際公開96/27600号公報(特許文献5)には、ポリカーボネートおよび、また、オリゴマー化、末端をアルキル化したBPAタイプのリン酸エステルを含有する成形配合物について開示されている。アルキル化のために、効果的な防炎性を達成するには高い配合割合を必要とするため、それは多くの用途の技術特性(加熱下での機械的、寸法安定性)にとって非常に不利である。
【0006】
欧州特開0−754−531A号公報(特許文献6)には、精密部品に適した強化PC/ABS成形配合物について開示されている。使用される防炎剤はとりわけBPAタイプのオリゴホスフェートである。充填剤を高い割合で含むことが、機械的特性、例えば破断点伸びまたはノッチ衝撃耐性において非常に不利な効果を及ぼす。
【0007】
欧州特開771−851A号公報(特許文献7)には芳香族ポリカーボネート、ジエンゴムをベースにしたグラフトポリマー、SANコポリマー、ホスフェートおよびテトラフルオロエチレンポリマー、種々の分子量を有するポリカーボネートを含有する成形配合物について開示されている。耐衝撃性の低下に対する安定性、熱安定性および耐湿性は利点として記載されている。
【0008】
適切なレベルの防炎性を達成するために、上記のポリマー混合物は通常、アンチドリップ剤(antidripping agent)として少量の割合のPTFEの存在を必要とする。火災の際には、このことがポリマー混合物が燃焼液滴を形成する傾向および、下部にある物質に点火することから防ぐ。ある種の火炎試験、例えばUL94V試験において、燃焼後の燃焼液滴の回避は、特に良好であると評価され、かつ最も良好な評価、V−0を達成することが不可欠であるものとして規定される。
【0009】
米国特開5−804−654A号公報(特許文献8)には、スチレン−含有ポリマーまたはコポリマーで部分的に密閉され、かつポリエステル混合物、例えばPC/ABS中の添加剤として非常に好適なPTFE粉末について開示している。米国特開6−040−300A号公報(特許文献9)には、そのような特有のPTFE含有粉末の調製方法について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】日本特開59−202−240号公報
【特許文献2】欧州特開363−608A号公報
【特許文献3】欧州特開0−767−204A号公報
【特許文献4】欧州特開0−611−798A号公報
【特許文献5】国際公開96/27600号公報
【特許文献6】欧州特開0−754−531A号公報
【特許文献7】欧州特開771−851A号公報
【特許文献8】米国特開5−804−654A号公報
【特許文献9】米国特開6−040−300A号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、非常に良好な機械的特性、高度な難燃性および非常に良好な応力亀裂特性による優れたグラフトポリマーで変性した防炎性PC成形配合物を提供することである。特に、これらの利点は高い処理温度において観測される。従って、これらの成形配合物は特有の媒質、例えば溶媒、潤滑剤、洗浄剤等との接触が起こり得る用途に対して特に好適である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
現在、本発明による組成物が、PTFE添加物がポリアルキル(メタ)アクリレートを有する混合物として使用される際に、上記の利点を示すということが知られている。
【0013】
従って、本発明はグラフトポリマーで変性され、かつ式(I):
【0014】
【化1】

[式中R、R、RおよびRは互いに独立して要すればハロゲン−置換C−C−アルキルまたは要すればハロゲン−置換および/またはアルキル−置換C−C−シクロアルキル、C−C10−アリールまたはC−C12−アラルキルを示し、
nは互いに独立して0または1を示し、
qは互いに独立して0、1、2、3または4を示し、
Nは0〜10、好ましくは0.5〜5および特に0.9〜3を示し、
およびRは互いに独立して、C−C−アルキル、好ましくはメチルまたはハロゲン、好ましくは塩素および/または臭素を示し、および
Yは、C−C−アルキリデン、C−C−アルキレン、C−C12−シクロアルキレン、C−C12−シクロアルキリデン、−O−、−S−、−SO−、−SO−または−CO−を示す。]
で表されるリン化合物およびフッ素化ポリオレフィンをポリアルキル(メタ)アクリレートとの混合物の形で含有するポリカーボネート成形配合物を提供する。
【0015】
熱可塑性成形配合物は好ましくはリン化合物(I)またはホスフェート化合物(I)の混合物0.5〜20、特に好ましくは1〜18および特に2〜16重量部を含有する。
【0016】
熱可塑性成形配合物はポリアルキル(メタ)アクリレートとの特定の配合物の形態においてフッ素化ポリオレフィン好ましくは0.01〜3、特に0.05〜2および極めて特に好ましくは0.1〜0.8重量部を含有する。
【0017】
好ましい熱可塑性成形配合物は:
A) 芳香族ポリカーボネートおよび/またはポリエステルカーボネート40〜99および好ましくは60〜98.5重量部、
B) B.1)1種以上のビニルモノマー5〜95および好ましくは30〜80重量%と
B.2)ガラス転移温度<10℃、好ましくは<0℃および特に好ましくは<−20℃を有する1種以上のグラフトベース95〜5および好ましくは20〜70重量%と、
からなるグラフトポリマー0.5〜60、好ましくは1〜40および特に2〜25重量部、
C) ビニル(コ)ポリマーおよびポリアルキレンテレフタレートから成る群から選択される少なくとも1種の熱可塑性ポリマー0〜45、好ましくは0〜30および特に好ましくは0〜25重量部、
D) 式(I):
【0018】
【化2】

[式中R〜R、Y、n、Nおよびqは上記に示したものと同意義である。]
で表されるリン化合物0.5〜20重量部、好ましくは1〜18重量部および特に好ましくは2〜16重量部、および
E) ポリアルキル(メタ)アクリレートとの混合物の形態においてフッ素化ポリオレフィン0.01〜3、好ましくは0.05〜2および特に好ましくは0.1〜0.8重量部
を含有するものである。
【発明の効果】
【0019】
現在、本発明による組成物が、PTFE添加物がポリアルキル(メタ)アクリレートを有する混合物として使用される際に、上記の利点を示すということが知られている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
成分A
本発明による成分Aとして好適な芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートは文献公知であり、文献公知の製造方法によって製造してもよい(芳香族ポリカーボネートの製造については、例えば文献(Schnell,「ポリカーボネートの化学と物理」(「Chemistry and Physics of Polycarbonates」)、Interscience Publishers,1964年)並びに西独特許1−495−626AS号明細書、西独特許2−232−877OS号明細書、西独特許2−703−376OS号明細書、西独特許2−714−544OS号明細書、西独特許3−000−610OS号明細書および西独特許3−832−396OS号明細書;芳香族ポリエステルカーボネートの製造については例えば西独特許3−077−934OS号明細書。
【0021】
芳香族ポリカーボネートは、例えばジフェノールと炭酸ハライド好ましくはホスゲン、および/または芳香族ジカルボン酸ジハライド、好ましくはベンゼンジカルボン酸ジハライドとを、界面プロセスによって、要すれば連鎖停止剤、例えばモノフェノールを用い、および要すれば三官能またはより高い官能性分岐剤、例えばトリフェノールまたはテトラフェノールを用いて反応することによって調製される。
【0022】
芳香族ポリカーボネートおよび芳香族ポリエステルカーボネートの調製に用いるジフェノールは、好ましくは式(III):
【0023】
【化3】

[式中Aは単結合、C−C−アルキレン、C−Cアルキリデン、C−C−シクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO−、C−C12−アリーレン、それらはその他の芳香環、要すればヘテロ原子含有芳香環が縮合してもよく、
または式(IV)または(V)で表される基であってもよく:
【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

Bはいずれの場合もC−C12−アルキル、好ましくはメチル、またはハロゲン、好ましくは塩素および/または臭素であり、
xはいずれの場合も互いに独立して0、1または2であり、
pは1または0であり、および
およびRは、Xと独立に選択され、互いに独立して水素またはC−C−アルキル、好ましくは水素、メチルまたはエチルを示し、
は炭素を示し、および
mは4〜7の整数、好ましくは4または5であるが、少なくとも1つのX原子上で、RおよびRはともにアルキルである。]
を有する化合物である。
【0026】
好ましいジフェノ−ルはヒドロキノン、レゾルシノ−ル、ジヒドロキシジフェノ−ル、ビス(ヒドロキシフェニル)−C1−C−アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)−C−C−シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン類、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホンおよびα,α−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、およびそれらの環−ブロモ化および/または環−塩素化誘導体である。
【0027】
特に好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンおよびそれらのジ−およびテトラ臭素化または塩素化誘導体、例えば2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンまたは2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンが特に好ましい。
【0028】
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。
【0029】
ジフェノールは独立してまたはある所望の混合物として使用し得る。
【0030】
ジフェノールは文献公知であり、文献公知の方法で得てもよい。
【0031】
熱可塑性、芳香族ポリカーボネートの調製に好適な連鎖停止剤の例は、フェノール、p−クロロフェノール、p−t−ブチルフェノールまたは2,4,6−トリブロモフェノール、並びに長鎖アルキルフェノール、例えば西独特許2−842−005OS号明細書による4−(1,3−テトラメチルブチル)フェノールまたはアルキル置換基に8〜20の炭素原子を有するモノアルキルフェノールまたはジアルキルフェノール、例えば3,5−ジ−t−ブチルフェノール、p−i−オクチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノール、2−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノールおよび4−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノールである。使用される連鎖停止剤の量は通常0.5mol%〜10mol%(特にジフェノールの総モル量に基づく)である。
【0032】
熱可塑性、芳香族ポリカーボネートは平均重量−平均分子量(M、超遠心分離法または光散乱法)10,000〜200,000および好ましくは20,000〜80,000を有する。
【0033】
熱可塑性、芳香族ポリカーボネートは公知の方法、好ましくは使用したジフェノールの総重量に基づいて、三官能またはそれ以上の化合物(例えば、3またはそれ以上のフェノール基を有する化合物)を0.05〜2.0mol%の量で導入することによって分岐され得る。
【0034】
ホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートはいずれも好適である。成分Aとして本発明によるコポリカボネートは、使用され得るジフェノールの総量に基づいて1〜25重量%、好ましくは2.5〜25重量%のヒドロキシアリーロキシ末端を有するポリジオルガノシロキサンを用いて調製してもよい。これらは知られており(例えば米国特許3−419−634号明細書)、または文献公知の方法によって調製され得る。ポリジオルガノシロキサンを含有するコポリカーボネートの調製は西独特許3−334−782OS号明細書に開示されている。
【0035】
ビスフェノールAホモポリカーボネートの他に、好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールAと、好ましいまたは特に好ましいとして記載された他のジフェノール、特に2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ジフェノールの総モル量に対して)15mol%以下とのコポリカーボネートである。
【0036】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造のための芳香族ジカルボン酸ジハライドは、好ましくはイソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸のジ酸二塩化物である。
【0037】
イソフタル酸およびテレフタル酸のジ酸二塩化物の割合1:20および20:1の混合物は特に好ましい。
【0038】
炭酸ハライド、好ましくはホスゲンを、ポリエステルカーボネートの製造における二官能性酸の誘導体として更に使用する。
【0039】
芳香族ポリエステルカーボネートの調製のための好適な連鎖停止剤は、上記のモノフェノールの他に、それらのクロロカルボン酸エステルおよび芳香族モノカルボン酸の酸クロリド(要すればC−C22−アルキル基でまたはハロゲン原子で置換されてもよい)、並びに脂肪族C−C22−モノカルボン酸クロリドである。
【0040】
連鎖停止剤の量はフェノール連鎖停止剤の場合はジフェノールモル量に基づき、かつモノカルボン酸クロリド連鎖停止剤の場合はジカルボン酸ジクロリドモル量に基づいて、いずれの場合も0.1〜10mol%である。
【0041】
芳香族ヒドロキシカルボン酸をまた、芳香族ポリエステルカーボネート中に導入してもよい。
【0042】
芳香族ポリエステルカーボネートは公知の方法で直鎖状および分岐状であり得る(西独特開2−940−024OS号明細書および西独特開3−007−934OS号明細書参照)。
【0043】
使用され得る分岐剤の例としては、三官能性またはそれより高い官能性カルボン酸クロリド、例えばトリメシン酸トリクロリド、シアヌル酸トリクロリド、ベンゾフェノン−3,3',4,4'−テトラカルボン酸テトラクロリド、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸テトラクロリドまたはピロメリット酸テトラクロリド、0.01〜1.0mol%の量(使用したジカルボン酸ジクロリドに基づく)、または三官能性またはより高い官能性フェノール、例えばフロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、4,4−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラ−(4−[4−ヒドロキシフェニルイソプロピル]フェノキシ)メタンまたは1,4−ビス[4,4'−(ジヒドロキシトリフェニル)メチル]ベンゼン0.01〜1.0mol%(使用ジフェノールに基づく)である。フェノール分岐剤はジフェノールと共に使用され、酸クロリド分岐剤は、酸ジクロリドとともに導入されてもよい。
【0044】
熱可塑性、芳香族ポリエステルカーボネートにおけるカーボネート構造単位の割合は任意に変化する。好ましいカーボネート基の割合は、エステル基およびカーボネート基の総量に基づいて、100mol%以下、特に80mol%以下、特に好ましくは50mol%以下である。芳香族ポリステルカーボネートのエステル部分およびカーボネート部分の両者は、縮合重合物中でブロック型またはランダムに分散された形で存在し得る。
【0045】
芳香族ポリカーボネートとポリエステルカーボネートの相対溶液粘度(ηrel)は(25℃でのメチレンクロリド溶液100ml中のポリカーボネートまたはポリエステルカーボネート0.5g溶液で測定して)1.18〜1.4および好ましくは1.22〜1.3である。
【0046】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートは単独または所望の混合物中で使用され得る。
【0047】
成分B
B.1 少なくともビニルモノマー5〜95および好ましくは30〜80重量%と
B.2 ガラス転移温度<10℃、好ましくは<0℃および特に好ましくは<−20℃と、
からなる1種以上のグラフトベース95〜5および好ましくは70〜20重量%、
からなる1種以上のグラフトポリマーを含有する成分B。
【0048】
グラフトベースB.2は一般的に平均粒径(d50値)0.05〜5μm、好ましくは0.10〜0.5μm、特に好ましくは0.20〜0.40μmを有する。
【0049】
モノマーB.1は好ましくは:
B.1.1 ビニル芳香族および/または環−置換ビニル芳香族(例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン)および/またはC−C−アルキル(メタ)アクリレート(例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート)50〜99重量部、および
B.1.2 ビニルシアニド(不飽和ニトリル、例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル)および/またはC−C−アルキル(メタ)アクリレート(例えばメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート)および/または不飽和カルボン酸の誘導体(例えば、無水物およびイミド(具体的には無水マレイン酸およびN−フェニルマレイミド))1〜50重量部。
の混合物である。
【0050】
好ましいモノマーB.1.1はモノマーであるスチレン、α−メチルスチレン、およびメチルメタクリレートの少なくとも1つから選択され、好ましいモノマーB.1.2はモノマーであるアクリロニトリル、無水マレイン酸およびメチルメタクリレートの少なくとも1つから選択される。
【0051】
特に好ましいモノマーであるB.1.1およびB.1.2は各々スチレンおよびアクリロニトリルである。
【0052】
グラフトポリマーBに好適なグラフトベースB.2の例は、ジエンゴム、EP(D)Mゴム(すなわち、エチレン/プロピレンおよび要すればジエン、およびアクリレート、ポリウレタン、シリコーン、クロロプレンおよびエチレン/ビニルアセテートゴム)が挙げられる。
【0053】
好ましいグラフトベースB.2はジエンゴム(例えばブタジエン、イソプレン等をベースにしたもの)またはジエンゴムの混合物、またはジエンゴムのコポリマーまたはそれら混合物と別のコポリマーになり得るモノマーとの混合物(例えばB.1.1およびB.1.2による)、好ましくはブタジエン/スチレンコポリマーであるが、成分B.2のガラス転移温度は<10℃、好ましくは<0℃、特に好ましくは<−10℃である。
【0054】
純粋なポリブタジエンゴムは特に好ましい。
【0055】
特に好ましいポリマーBの例は、ABSポリマー(エマルジョン、バルクおよび懸濁ABS)、例えば西独特開2−035−390OS号公報=米国特開3−644−574PS号公報、西独特開2−248−242OS号公報=英国特開1−409−275PS号公報またはUllmann Enzyklopaedie der Technischen Chemie,Vol.19(1980年),280ページ以下に開示されているものが挙げられる。グラフトベースB.2のゲル含量は、少なくとも30重量%および好ましくは少なくとも40重量%(トルエン中で測定)である。
【0056】
グラフトポリマーBはフリーラジカル重合、例えばエマルジョン、懸濁液、溶液またはバルク重合、好ましくはエマルジョン重合またはバルク重合によって調製される。
【0057】
その他特に好適なグラフトゴムは米国特許第4−937−285P号公報による有機ヒドロペルオキシドおよびアスコルビン酸からなる開始システムを用いたレドックス開始によって製造されるABSポリマーである。
【0058】
グラフトモノマーはグラフト反応において必ずしも完全にグラフトベース上にグラフト化される必要はないことが知られており、本発明によればグラフトポリマーBはまた、グラフトベース存在下におけるグラフトモノマーの(コ)ポリマー化によって得られる生成物およびワークアップの際に起こるものを含むものと理解されている。
【0059】
ポリマーBのB.2による好適なアクリレートゴムは、好ましくはアルキルアクリレートと、要すればB.2に基づいて40重量%以下の他の重合可能なエチレン性不飽和モノマーとのポリマーである。好ましい重合可能なアクリル酸エステルはC−C−アルキルエステル、例えばメチル、エチル、ブチル、n−オクチルおよび2−エチルヘキシルエステル;ハロゲン化アルキルエステル、好ましくはハロゲン−C−C−アルキルエステル、例えばクロロエチルアクリレート;およびそれらのモノマーの混合物を包含する。
【0060】
1以上の重合可能な二重結合を含有しているモノマーを架橋のために共重合しても良い。架橋性モノマーの好ましい例は、炭素原子3〜8個の不飽和モノカルボン酸と炭素原子3〜12の不飽和一価アルコールまたはOH基2〜4個および炭素原子2〜20個の飽和ポリオールとのエステル、例えばエチレングリコールジメタクリレートおよびアリルメタクリレート;多価不飽和複素環式化合物、例えばトリビニルおよびトリアリルシアヌレート;多官能性ビニル化合物、例えばジ−およびトリビニルベンゼン;およびトリアリルホスフェートおよびジアリルフタレートである。
【0061】
好ましい架橋性モノマーは、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレートおよび少なくとも3つのエチレン性不飽和基を有する複素環式化合物である。
【0062】
特に好ましい架橋性モノマーは環状モノマーであるトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、およびトリアリルベンゼンである。架橋性モノマーの量はグラフトベースB.2に基づいて0.02〜5重量%で、特に0.05〜2重量%である。
【0063】
少なくとも3つのエチレン性不飽和基を有する環状架橋性モノマーの場合において、その量をグラフトベースB.2の1重量%以下の量に制限することが有効である。
【0064】
アクリル酸エステルとは別に、要すればグラフトベースB.2の調製に使用され得る、「他の」重合可能なエチレン性不飽和モノマーの好ましい例は、例えばアクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリルアミド、ビニルC−C−アルキルエーテル、メチルメタクリレートおよびブタジエンである。グラフトベースB.2としての好ましいアクリル酸ゴムは、少なくとも60重量%のゲル含量を有しているエマルジョンポリマーである。
【0065】
他の適切なグラフトベースB.2は、グラフト−活性サイトを有するシリコーンゴム、例えば西独特開3−704−657OS号公報、西独特開3−704−655OS号公報、西独特開3−631−540OS号公報および西独特開3−631−539OS号公報で開示されているものが挙げられる。
【0066】
グラフトベースB.2のゲル含量は、好適な溶液中にて25℃で測定される(M.Hoffmann, H.Kroemer, R.Kuhn, Polymeranalytik I および II, Georg Thieme-Verlag, シュトゥットガルト, 1977年参照)。
【0067】
平均粒径d50は、それより上と下にそれぞれ50重量%の粒子が存在する粒径であり、かつ超遠心分離器測定によって決定されうる(W.Scholtan, H.Lange, Kolloid,Z. および Z.Polymere250(1972年)、782−1796頁)。
【0068】
成分C
成分Cは1種以上の熱可塑性ビニル(コ)ポリマーC.1および/またはポリアルキレンテレフタレートC.2を含有する。
【0069】
好適なビニル(コ)ポリマーC.1は、ビニル芳香族、ビニルシアニド(不飽和ニトリル)、C−C−アルキル(メタ)アクリレート、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)からなる群からの少なくとも1種のモノマーのポリマーである。特に好適には、以下の成分の(コ)ポリマーである:
C.1.1 ビニル芳香族および/または環−置換ビニル芳香族(例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン)および/またはC−C−アルキル(メタ)アクリレート(例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート)50〜99重量部および好ましくは60〜80重量部、および
C.1.2 ビニルシアニド(不飽和ニトリル)(例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル)および/またはC−C−アルキル(メタ)アクリレート(例えばメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート)および/または不飽和カルボン酸(例えばマレイン酸)および/または不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)(具体的には、無水マレイン酸およびN−フェニルマレイミド)1〜50重量部および好ましくは20〜40重量部。
【0070】
(コ)ポリマーC.1は樹脂性、熱可塑性およびゴムフリーである。
【0071】
C.1.1スチレンおよびC.1.2アクリロニトリルのコポリマーが特に好ましい。
【0072】
(コ)ポリマーC.1は知られており、フリーラジカル重合、特にエマルジョン、懸濁液、溶液またはバルク重合によって調製することができる。(コ)ポリマーは好ましくは平均分子量M(光散乱法によって測定または沈降分離法によって測定した重量平均)15,000〜200,000を有する。
【0073】
成分C.2のポリアルキレンテレフタレートは、芳香族ジカルボン酸またはそれらの反応性誘導体、例えばジメチルエステルまたは無水物と、脂肪族、脂環式または芳香脂肪族ジオールとの反応から得られる生成物、およびそれらの反応生成物の混合物である。
【0074】
好ましいポリアルキレンテレフタレートはジカルボン酸成分に基づいて、テレフタル酸基を少なくとも80重量%および好ましくは少なくとも90重量%、およびジオール成分に基づいて、エチレングリコール基および/または1,4−ブタンジオール基を少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90mol%を含有する。
【0075】
テレフタル酸基とは別に,好ましいポリアルキレンテレフタレートは、炭素原子8〜14個を有する他の芳香族または環状脂肪族ジカルボン酸または炭素原子4〜12個を有する脂肪族ジカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4'−ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸およびシクロヘキサンジ酢酸の基20mol%以下、好ましくは10mol%以下を含有し得る。
【0076】
エチレングリコール基または1,4−ブタンジオール基とは別に、好ましいポリアルキレンテレフタレートは、炭素原子3〜12個を有する他の脂肪族ジオールまたは炭素原子6〜21個を有する脂環式ジオール、例えば1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、3−エチル−2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,4−ジ(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2−ビス−(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)−プロパンおよび2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチルシクロブタン、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンおよび2,2−ビス(4−ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパン(西独特開2−407−674OS号公報、西独特開2−404−776OS号公報、西独特開2−715−932OS号公報参照)の基20mol%以下、好ましくは10mol%以下を含有し得る。
【0077】
ポリアルキレンテレフタレートは比較的少量の三価または四価のアルコール、または三塩基または四塩基のカルボン酸を導入することによって分岐され得る(例えば西独特開1−900−270OS号公報および米国特開3−692−744PS号公報参照)。分岐剤の例は、トリメシン酸、トリメリット酸、トリメチロールエタンおよびトリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトールである。
【0078】
特に好ましいポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸およびその反応性誘導体(例えばそのジアルキルエステル)およびエチレングリコールおよび/または1,4−ブタンジオールからのみ調製されたもの、およびそれらポリアルキレンテレフタレートの混合物が挙げられる。
【0079】
ポリアルキレンテレフタレートの混合物は、ポリエチレンテレフタレート含量1〜50重量%および好ましくは1〜30重量%およびポリブチレンテレフタレート含量50〜99重量%および好ましくは70〜99重量%である。
【0080】
好ましく使用されるポリアルキレンテレフタレートは、フェノール/o−ジクロロベンゼン(重量で1:1)中25℃で、Ubbelohde製粘度計で測定した極限粘度0.4〜1.5dl/g、好ましくは0.5〜1.2dl/gを有する。
【0081】
ポリアルキレンテレフタレートは公知の方法(例えばKunststoff-Handbuch、VOL.VIII、695ページ以下(Carl-Hanser-Verlag,Munich)1973年参照)によって調製され得る。
【0082】
成分D
本発明による成形配合物は防炎剤として式(I):
【0083】
【化6】

[式中の基は前記に述べたとおりである。]
のリン化合物を含有する。
【0084】
本発明による好適な成分Dのリン化合物は一般的に知られている(例えばUllmanns Encyklopaedie der Technischen Chemie,Vol.18,301頁以下、1979年、Houben-Weyl,Methoden der Organischen Chemie,Vol.12/1、43頁、Beistein Vol.6、177頁)。
【0085】
好ましい置換基R〜Rはメチル、ブチル、オクチル、クロロエチル、2−クロロプロピル、2,3−ジブロモプロピル、フェニル、クレシル、クミル、ナフチル、クロロフェニル、ブロモフェニル、ペンタクロロフェニルおよびペンタブロモフェニルを包含する。メチル、エチル、ブチル、フェニルおよびナフチルは特に好ましい。
【0086】
芳香族基R、R、RおよびRは、ハロゲンおよび/またはC−C−アルキルによって置換され得る。特に好ましいアリール基はクレシル、フェニル、キシレニル、プロピルフェニルまたはブチルフェニル、並びにそれらの臭素化および塩素化誘導体メチルである。
【0087】
およびRは、互いに独立して好ましくはメチルまたは臭素である。
【0088】
Yは好ましくはC−C−アルキレンおよび特にイソプロピリデンまたはメチレンである。
【0089】
式(I)中のnは、互いに独立して0または1および好ましくは1であり得る。
【0090】
qは0、1、2、3または4、好ましくは、qは0、1または2および特に好ましくはq=0であり得る。
【0091】
Nは0〜10、好ましくは0.5〜5および特に0.9〜3の値であり得る。異なるホスフェートの混合物も本発明による成分Dとして使用され得る。この場合Nは平均値を有する。この混合物はまた、モノホスフォラス化合物(monophosphorus compounds)(N=0)を含有し得る。
【0092】
Nの平均値は好適な方法[ガスクロマトグラフィー(GC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガス透過クロマトグラフィー(GPC)]を用いてリン酸混合物の組成(分子量分布)を決定し、これからNの平均値を計算することによって決定され得る。
【0093】
成分E
フッ素化ポリオレフィンは別の成分として添加される。
【0094】
フッ素化ポリオレフィンEは、高分子であり、ガラス転移温度−30℃以上および通常100℃以上、フッ素含量好ましくは65〜76および特に70〜76重量%および平均粒径d50=0.05〜1000および好ましくは0.08〜20μmを有する。フッ素化ポリオレフィンEは一般的に密度1.2〜2.3g/cmを有する。好ましいフッ素化ポリオレフィンEはポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリドおよびテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンおよびエチレン/テトラフルオロエチレンコポリマーが挙げられる。フッ素化ポリオレフィンは知られている(例えば「Vinyl and Related Polymers」 von Schildknecht, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1962年, 484-494頁、「Fluorpolymers」 von Wall, Wiley-Interscience, John Wiley & Sons, Inc., New York, volume 13, 1970年,623-654頁、「Modern Plastics Encyclopedia」, 1970-1971年, volume 47, No. 10 A, October 1970年, Mc Graw-Hill, Inc., New York, 134 and 774頁、「Modern Plastica Encyclopedia」, 1975-1976年, October 1975年, volume 52, No. 10 A, Mc Graw-Hill, Inc., New York, 27, 28 and 472頁、米国特開3−671−487PS号公報、米国特開3−723−373PS号公報および米国特開3−838−092PS号公報。
【0095】
それらは公知の方法、例えば水性媒体中でテトラフルオロエチレンをフリーラジカルを形成する触媒、例えばナトリウム、カリウムまたはアンモニウムペルオキシジスルフェートを用いて、圧力7〜71kg/cmおよび温度0〜200℃および好ましくは20〜100℃(詳細は米国特開2−393−967号公報参照)で重合することによって調製され得る。使用される形状によって、それら物質の密度は1.2〜2.3g/cmであり、平均粒径は0.5〜1000μmであり得る。
【0096】
本発明により好ましいフッ素化ポリオレフィンEは平均粒径0.05〜20μmおよび好ましくは0.08〜10μmおよび密度1.2〜1.9g/cmを有するエマルジョン状、または平均粒径100〜1000μmおよび密度2.0g/cm〜2.3g/cmを有するパウダー状で使用される。
【0097】
本発明によれば、フッ素化ポリオレフィンEは好ましくは特定の配合の形で使用される。
【0098】
本発明によれば、フッ素化ポリオレフィンおよびポリアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはポリ−C−C−アルキル(メタ)アクリレートの混合物は以下の方法で得られ得る:
1)ポリ−C−C−アルキル(メタ)アクリレートのエマルジョンとフッ素化ポリオレフィンのエマルジョンとの凝集混物。特別な態様はまた、ここで好適であり、例えばフッ素化ポリオレフィンのエマルジョンの存在下にポリアルキル(メタ)アクリレートを重合し、共沈する。
2)フッ素化ポリオレフィンとポリアルキル(メタ)アクリレートのプレコンパウンドとして、成分は溶融、一般的に200℃〜330℃の温度で、常套の設備、例えばインターナルニーダー、押出機、二軸押出機でコンパウンドされる。
【0099】
本発明によれば、ポリアルキル(メタ)アクリレートは、好ましくはC−C−アルキルメタアクリレート、好ましくはC−C−アルキルメタクリレートおよび特にメチルメタクリレート、およびC−C−アルキルアクリレート、好ましくはC−C−アルキルアクリレートおよび特にエチルアクリレートから選択される少なくとも1種のモノマーから合成される。ポリアルキル(メタ)アクリレートはホモポリマーまたはコポリマーの形態を取り得る。コポリマーは好ましくはメチルメタクリレートおよびコモノマーとして1種以上のC−C−アルキルアクリレート約30重量%以下、好ましくは3〜30重量%を含有する。
【0100】
ポリアルキルメタクリレートは特に好ましい。ポリアルキル(メタ)アクリレートは一般的に知られている(例えば米国特開5−292−786A号公報参照)。
【0101】
混合物において、ポリアルキル(メタ)アクリレート/フッ素化ポリオレフィンEの比は、95:5〜5:95および好ましくは90:10〜40:60である。次いで、エマルジョン混合物は公知の方法、例えばスプレー乾燥、フリーズ乾燥または無機または有機塩、酸または塩基または有機水−混和性溶媒、例えばアルコールまたはケトンの添加、好ましくは20〜150℃および特に50〜100℃の温度で凝集することにより凝固される。必要であれば、成分は50〜200℃および好ましくは70〜100℃で乾燥され得る。
【0102】
好適なテトラフルオロエチレンポリマーエマルジョンは、商業的に入手可能であり、例えばテフロン(登録商標)30NとしてDuPont(米国、Wilmington、Delaware)またはHostaflon(登録商標)としてDyneon GmbH(ドイツ国、Burgkichen)によって市販されている。
【0103】
好適なフッ素化ポリオレフィンパウダーは、商業的に入手可能であり、例えばテフロン(登録商標)CFP6000NとしてDuPont(米国、Wilmington、Delaware)またはHostaflon(登録商標)TF2071としてDyneon GmbH(ドイツ国、Burgkichen)によって市販されている。
【0104】
成分F
本発明による成形配合物は常套の添加剤、例えば潤滑剤、成形品取り出し剤、例えばペンタエリスリトールテトラステアレート、成核剤、静電防止剤、安定剤、充填剤および強化剤、並びに染料および顔料の少なくとも1種を含有し得る。
【0105】
充填または強化成形配合物は、充填または強化成形配合物に基づいて充填剤および/または強化剤60重量%以下および好ましくは1〜40重量%を含有し得る。好ましい強化剤はガラスファイバーである。好ましい充填剤類は、また強化効果も有し得るが、ガラス球、マイカ、シリケート、石英、タルカム、二酸化チタンおよび珪灰石が挙げられる。
【0106】
好ましい充填剤および強化剤は、異方性粒子径を有する微細無機粒子である。
【0107】
異方性粒子径を有する無機粒子は、いわゆるアスペクト比(最も大きい粒子と最も小さい粒子の比)が1以上、好ましくは2以上および特に好ましくは約5以上の平均粒子として理解される。そのような粒子は、少なくとも広義の意味においてプレート状または繊維状である。そのような物質は、例えばシート状またはファイバー状を有する一定のタルカムおよび一定の(アルミノ)−シリケート、例えばベントナイト、珪灰石、マイカ、カオリン、ヒドロタルサイト、ヘクトライトまたはモントモリロナイトが挙げられる。
【0108】
好ましくは、スケール状またはプレート状特性の無機物質、例えばタルカム、マイカ/粘土薄板鉱物、モントモリロナイト(後者はまた、イオン交換によって変性された有機親和性形態で)、カオリンおよびバーミキュライトを使用することも可能である。
【0109】
さらに、無機粒子は表面変性、例えばポリマーとの親和性を改良するために、有機分子を用いてシラン化され得る。疎水性または親水性表面はこの方法で形成され得る。
【0110】
本発明による成形配合物は、成形配合物全体の量に基づいて、要すれば相乗作用を有する他の防炎剤35重量%以下を含有し得る。上記その他の防炎剤の例としては、例えば有機ハロゲン化合物、例えばデカブロモジフェニルエーテルおよびテトラブロモビスフェノール、無機ハロゲン化合物、例えばアンモニウムブロミド、ニトロ化合物、例えばメラミンおよびメラミン/ホルムアルデヒド樹脂、無機ヒドロキシド化合物、例えばマグネシウムおよびアルミニウムヒドロキシド、無機化合物、例えばアンチモンオキシド、バリウムメタボレート、ヒドロキソアンチモネート、ジルコニウムオキシド、ジルコニウムヒドロキシド、モリブデナムオキシド、アンモニウムモリブデート、亜鉛ボレート、アンモニウムボレート、タルカム、シリケート、シリコンオキシドおよび錫オキシド、並びにシロキサン化合物が挙げられる。使用し得る他の防炎剤は、モノホスフェート化合物、オリゴマー化ホスフェート化合物またはそれらの混合物である。そのようなリン化合物については、欧州特開363−608A号公報、欧州特開345−522A号公報および西独特開197−21−628OS号公報で開示されている。
【0111】
本特許出願で与える重量部は、組成物中の成分A〜Fの重量部の合計が100になるように標準化されている。
【0112】
成分A〜Eおよび要すれば他に既知の添加剤、例えば安定剤、染料、顔料、潤滑剤および成形品取り出し剤、成核剤および静電防止剤、充填剤および強化剤を含有する本発明による成形配合物は、好適な成分を公知の方法で混合し、200℃〜300℃の温度で、常套の装置、例えば、インターナルニーダー、押出成形機および二軸押出成形機中で、溶融下に混合物をコンパウンドおよび押出することによって調製される。
【0113】
各々の成分は、公知の方法で、連続的にまたは同時に、かつ約20℃(室温)でまたは昇温下で混合してもよい。
【0114】
本発明は従って、成形配合物の調製方法も提供する。
【0115】
本発明による成形配合物は、全ての種類の成形品の製造に使用され得る。成形品は特に射出成形によって製造され得る。製造され得る成形品の例は、全てのタイプのハウジング部品、例えば、家庭用品用、例えば、ジュース圧搾機、コーヒーメーカーおよびミキサー、またはオフィス装置用、例えばモニター、プリンターおよび複写機、または建築部門用のプレートカバープレートおよび自動車部門用の部品が挙げられる。それらはまた、非常に良好な電気特性を有する電気装置領域で使用され得る。
【0116】
本発明による成形配合物は、以下の成形品または成形部品の製造に使用することもできる:
列車用の内部要素、ハブキャップ、小さい変圧器を有する電気装置用のハウジング、宣伝および情報通信のために使用される装置用のハウジング、医療目的のハウジングおよび衣服、マッサージ機およびそのためのハウジング、子供用おもちゃの自動車、壁パネル、安全装置用のハウジング、リアスポイラー、断熱輸送コンテナ、小動物を捕獲または飼育するための装置、洗面所および浴室用成形部品、換気口用のカバー格子、夏の別荘および庭の納屋および道具格納庫用の成形部品が挙げられる。
【0117】
加工の別の形態は、予め製造した上述の厚板またはシートを深絞り成形することによる成形品の製造である。
【0118】
従って、本発明は、全ての種類の成形品、好ましくは上述のものを製造するための本発明による成形配合物の使用および本発明による成形配合物から製造した成形品も提供する。
【実施例】
【0119】
成分A1
25℃でメチレンクロリドの濃度0.5g/100mlで測定した相対溶液粘度1.280を有するビスフェノールAに基づくポリカーボネート。
【0120】
成分A2
25℃でメチレンクロリドの濃度0.5g/100mlで測定した相対溶液粘度1.255を有するビスフェノールAに基づくポリカーボネート。
【0121】
成分B
エマルジョン重合で調製された粒子状架橋ポリブタジエンゴム(平均粒子径d50=0.33μm)60重量部に対し比率73:27のスチレンおよびアクリロニトリル40重量部を含有するグラフトポリマー。
【0122】
成分C
72:28のスチレン/アクリロニトリルの比および極限粘度0.55dl/g(20℃でジメチルホルムアミドにおいて測定)であるスチレン/アクリロニトリルのコポリマー。
【0123】
成分D1
重量比75:25におけるBDPおよびTPPの混合物。
【0124】
a)ビスフェノールジホスフェート(BDP):
【0125】
【化7】

Nの平均値は、まずHPLCを用いてモノマーおよびオリゴマーホスフェートの量比を測することにより決定される:
カラムタイプ:LiChrosorp RP−8
溶離剤勾配:アセトニトリル/水 50:50〜100:0
濃度:5mg/ml
【0126】
次いで、数―重量平均値は個々に各成分(モノホスフェートおよびオリゴホスフェート)の比率から公知の方法で計算される:
b)トリフェニルホスフェート(TPP):Disflamoll(登録商標)TP、ドイツ国、レーフェルクーゼン(Leverkusen)、バイエルAG社製。
で測定した。
【0127】
成分D2
成分D1 a)のBDP。
【0128】
成分E
E.1
SANコポリマー50重量部とPTFE50重量部の凝固混合物;Blendex 449、ジェネラルエレクトリックプラスチック社。
【0129】
E.2
ポリメチルメタクリレート50重量部およびPTFE50重量部の凝固混合物;Metablen A−3800、三菱レーヨン社製。
【0130】
E.3
(比73:27のスチレンおよびアクリロニトリルの40重量部と平均粒径d50=0.33μmを有する、粒子状架橋ポリブタジエンゴム60重量部を含有する)グラフトポリマー90重量部とポリテトラフルオロエチレンポリマー(テフロン(登録商標)30N、DuPont社製、米国、Delaware、Wilmington)10重量部の凝固混合物。
【0131】
成分F
HiTak製HTP Ultra 5タルカム。
【0132】
本発明による成形配合物の調製および試験
成分を常套の加工補助器具、ZSK25二軸押出成形機を用いて混合した。成形品はArburg270E射出成形装置において240℃または280℃で製造された。
【0133】
溶接線強度を、両サイドから射出成形した80mm×10mm×4mmの試験片でISO 179の1eUによって室温で測定した。
【0134】
加熱下のビカーB寸法安定性を80mm×10mm×4mmの試験片でDIN53 460に従って測定した。
【0135】
弾性率および破断点伸びを、ISO527/DIN53 457によって測定した。
【0136】
試験片の火炎特性を260℃での射出成形機において製造した127mm×12.7mm×1.6mmの試験片でUL Subj.94Vに従って測定した。
【0137】
UL94V試験は以下に従って行った:
物質の試験片は、127×12.7×1.6mmの試験片に形成した。試験片を垂直に置いて、試験片の下側がサージカルドレッシングのストリップの上に305mm位置するようにした。各々の試験片は、2つの連続的な点火プロセスによって10秒かけて個々に火をつけ、燃焼特性を各点火工程の後観察し、試験片を評価した。試験片は、発熱量3.73×10kJ/m(1000BUT/1立方フィート)を有する天然ガス10mm(3.8インチ)の高さの青い炎を有するブンゼンバーナーを使って着火した。
【0138】
UL 94のV−0の分類は、UL 94Vの指示に従って試験して、以下に記す材料特性を包含する。このクラスにおける成形配合物の試験片は、試験火炎の各適用後、10秒以上燃焼しない。;総燃焼時間は、試験片の各々のセットについて2つの火炎適用のために、50秒を上回らない。;試験片は、試験片の上端に取り付けられた固定クランプまで、完全に燃焼させない。;試験片は、試験片の下に位置するサージカルドレッシングに火をつける火炎液滴または粒子を形成しない。;試験片は、試験火炎の除去の後、30秒以上の間持続する発光燃焼を示さない。
【0139】
他のUL94の分類は、試験片が燃焼液滴(flaming drip)または粒子を製造したことによる試験片の難燃性の低下または自己消化性の低下を示す。これらの分類は、UL 94V−1およびV−2によって表記される。Fは「欠陥」であり、≧30秒の残燼時間を示す試験片の分類を意味する。
【0140】
応力亀裂特性(ESC特性)を、260℃で射出成形された80mm×10mm×4mmの試験片によって試験した。使用した試験媒体は60体積%のトルエンと40体積%のイソプロパノールの混合物である。試験体を弓型の治具を用いて予め歪ませ(パーセント毎εで予め歪ませる)および試験媒体を室温で貯蔵した。応力亀裂耐性は、試験媒体における予め歪ませた機能としての亀裂または破断を通じて評価した。
【0141】
表1:組成物および成形配合物の性質
組成物全体に基づいて、実施例1〜4のPTFE含量はPTFE0.4重量%と同じである。
【0142】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフトポリマーで変性され、かつ式(I):
【化1】

[式中
、R、RおよびRは互いに独立して要すればハロゲン−置換C−C−アルキルまたは要すればハロゲン−置換および/またはアルキル−置換C−C−シクロアルキル、C−C10−アリールまたはC−C12−アラルキルを示し、
nは互いに独立して0または1を示し、
qは互いに独立して0、1、2、3または4を示し、
Nは0〜10を示し、
およびRは互いに独立して、C−C−アルキルまたはハロゲンを示し、および
Yは、C−C−アルキリデン、C−C−アルキレン、C−C12−シクロアルキレン、C−C12−シクロアルキリデン、−O−、−S−、−SO−、−SO−または−CO−を示す。]
で表されるリン化合物およびフッ素化ポリオレフィンをポリアルキル(メタ)アクリレートとの混合物の形で含有するポリカーボネート成形配合物。
【請求項2】
1)ポリアルキル(メタ)アクリレートの乳化物とフッ素化ポリオレフィンの乳化物との凝集混合物
または
2)フッ素化ポリオレフィンおよびポリアルキル(メタ)アクリレートのプレコンパウンド
としてフッ素化ポリオレフィンまたはポリオレフィン混合物を含有する請求項1記載の成形配合物。
【請求項3】
式(I)のリン化合物またはそのような化合物の混合物(組成物全体の100重量部に基づいて)0.5〜20重量部を含有する請求項1記載の成形配合物。
【請求項4】
凝集混合物またはプレコンパウンドの形状でフッ素化ポリオレフィン(組成物全体の100重量部に基づいて)0.01〜3重量部を含有する請求項1〜3記載の成形配合物。
【請求項5】
フッ素化ポリオレフィン(組成物全体の重量部100に基づいて)0.05〜2重量部を含有する請求項4記載の成形配合物。
【請求項6】
A)芳香族ポリカーボネートおよび/またはポリエステルカーボネート40〜99重量部、
B)B.1)1以上のビニルモノマー5〜95重量%と、
B.2)ガラス転移温度<10℃を有する1以上のグラフトベース95〜5重量%と、
からなるグラフトポリマー0.5〜60重量部、
C)ビニル(コ)ポリマーおよびポリアルキレンテレフタレートから成る群から選択される少なくとも1種の熱可塑性ポリマー0〜45重量部、
D)式(I):
【化2】

[式中R〜R、Y、n、Nおよびqは請求項1に示したものと同意義である。]
で表されるリン化合物0.5〜20重量部、および
E)請求項1によるフッ素化ポリオレフィン0.01〜3重量部
を含有する請求項1記載の成形配合物。
【請求項7】
式(I)中のNが平均値0.5〜5を有する従前請求項いずれかに記載の成形配合物。
【請求項8】
式(I)中のNが平均値0.9〜3を有する従前請求項いずれかに記載の成形配合物。
【請求項9】
B.1 少なくとも1種のビニルモノマー5〜95重量%と
B.2 ガラス転移温度<10℃を有する1種以上のグラフトベース95〜5重量%と、
からなる1種以上のグラフトポリマーを含有する従前請求項いずれかに記載の成形配合物。
【請求項10】
ビニルモノマーB.1として
B.1.1 ビニル芳香族および/または環−置換ビニル芳香族および/またはC−C−アルキル(メタ)アクリレート50〜99重量部、および
B.1.2 ビニルシアニドおよび/またはC−C−アルキル(メタ)アクリレートおよび/または不飽和カルボン酸の誘導体1〜50重量部
の混合物を含有する請求項9記載の成形配合物。
【請求項11】
グラフトベースB.2として、ジエンゴム、アクリレートゴム、シリコーンゴムまたはエチレン/プロピレン/ジエンゴムまたはそれらの混合物を含有する従前請求項いずれかに記載の成形配合物。
【請求項12】
式(I)中のYがイソプロピリデンまたはメチレンである従前請求項いずれかに記載の成形配合物。
【請求項13】
式(I)中のYがイソプロピリデンである請求項12記載の成形配合物。
【請求項14】
ポリアルキル(メタ)アクリレートとしてポリメチルメタクリレートを含有する請求項1記載の成形配合物。
【請求項15】
ビニル芳香族、ビニルシアニド、C−C−アルキル(メタ)アクリレート、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)から成る群から選択される少なくとも1種のモノマーであるビニル(コ)ポリマーを含有する従前請求項いずれかに記載の成形配合物。
【請求項16】
安定剤、顔料、成形品取り出し剤(demoulding agent)、流動性助剤および/または静電防止剤、充填剤および強化剤から成る群から選択される少なくとも1種の添加剤を含有する従前請求項いずれかに記載の成形配合物。
【請求項17】
成形品の製造のための従前請求項いずれかに記載の成形配合物の使用。
【請求項18】
従前請求項いずれかに記載の成形配合物から得られた成形品。

【公開番号】特開2010−270338(P2010−270338A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176985(P2010−176985)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【分割の表示】特願2004−526757(P2004−526757)の分割
【原出願日】平成15年7月23日(2003.7.23)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】