説明

グラフト共重合体粒子及びその製造方法、並びにそれを用いた制電性樹脂組成物

【課題】制電性樹脂組成物に用いた場合において、十分な透明性を有し且つ十分な制電性が付与された制電性樹脂組成物を得ることが可能なグラフト共重合体粒子を提供する。
【解決手段】アルキレンオキサイド基及びエチレン系不飽和結合を有するアルキレンオキサイド基含有単量体1〜50質量%と、共役ジエン及びアクリル酸エステルからから選ばれる少なくとも一つのゴム状幹形成単量体50〜99質量%とを含有する単量体組成物を、共重合せしめて得られるゴム状幹重合体粒子(X)100質量部、重合体粒子(X)に内包されているスチレン系不飽和単量体からなるスチレン系重合体粒子1〜100質量部、並びに重合体粒子(X)の表面に存在する、第1のエチレン系不飽和単量体(e)からなるエチレン系重合体(Z)1〜500質量部、を備えるグラフト共重合体粒子で、且つ重合体粒子(X)及びスチレン系重合体粒子(Y)の平均粒子径が特定の関係式を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフト共重合体粒子及びその製造方法、並びにそれを用いた制電性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な樹脂は絶縁体であり帯電しやすいため、ごみやほこりを吸引しやすいといった問題が生じやすい。そこで、このような樹脂に制電性を付与することが検討されており、例えば、(i)帯電防止剤の内部練込み法、(ii)帯電防止剤の表面塗布法、(iii)シリコン系化合物の表面塗布法、(iv)樹脂構造の化学的改質法といった方法が検討されている。
【0003】
しかしながら、これらのうち(i)帯電防止剤の内部練込み法は、永久的な帯電防止には十分でなく、表面に存在する帯電防止剤を洗浄、摩擦等の手段で除去してしまうと制電効果が失われること、また帯電防止剤が表面にブリードしすぎる場合には、ゴミやホコリの粘着がおこることや透明性を損なうことといった問題があった。また、(ii)帯電防止剤の表面塗布法や(iii)シリコン系化合物の表面塗布法においては、洗浄、摩擦等の手段で除去してしまうと帯電防止効果が激減してしまうといった問題があった。さらに、(iv)樹脂構造の化学的改質法は、樹脂に親水基を導入する方法であるが、一般的に制電効果を発揮するためにはかなり多量の親水基を含ませる必要があり、そのために吸湿によって機械的性質や他の物性に悪影響を及ぼすといった問題があった。
【0004】
このような問題を解決し、樹脂に永久的な制電性を付与する方法として、親水性ポリマー粒子と絶縁性の熱可塑性樹脂からなる制電性樹脂組成物を用いることが知られており、例えば、特開昭55−36237号公報(特許文献1)には、共役ジエン及び/又はアクリル酸エステル50〜99質量%、4〜500個のアルキレンオキサイド基を有する単量体1〜50質量%、及び必要により1種以上の共重合可能なビニル単量体又はビニリデン単量体0〜49質量%からなるゴム状幹重合体5〜80質量%に対し、1種以上のビニル単量体又はビニリデン単量体20〜95質量%をグラフト重合せしめて得られるグラフト共重合体を含有する制電性樹脂組成物が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のような制電性樹脂組成物は、制電性の点で未だ必ずしも十分なものではなく、また、高度の制電性を付与するためにグラフト共重合体の組成を調整した場合には得られる制電性樹脂組成物の透明性が不十分となるという問題があった。すなわち、特許文献1に記載のような制電性樹脂組成物は、透明性と制電性との両立という点で未だ必ずしも十分なものではなかった。
【特許文献1】特開昭55−36237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、制電性樹脂組成物に用いた場合において、十分な透明性を有し且つ十分な制電性が付与された制電性樹脂組成物を得ることが可能なグラフト共重合体粒子、それを効率よく且つ確実に製造することが可能なグラフト共重合体粒子の製造方法、並びに、それを用いた制電性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、アルキレンオキサイド基を有し且つエチレン系不飽和結合を有するアルキレンオキサイド基含有単量体(a)1〜50質量%と、共役ジエン及びアクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つのゴム状幹形成単量体(b)50〜99質量%とを含有する単量体組成物を共重合せしめて得られるゴム状幹重合体粒子(X)に対して、スチレン系不飽和単量体(d)及び第1のエチレン系不飽和単量体(e)をそれぞれグラフト重合せしめて得られるグラフト共重合体粒子を用いることにより、十分な透明性を有し且つ十分な制電性が付与された制電性樹脂組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のグラフト共重合体粒子は、アルキレンオキサイド基を有し且つエチレン系不飽和結合を有するアルキレンオキサイド基含有単量体(a)1〜50質量%と、共役ジエン及びアクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つのゴム状幹形成単量体(b)50〜99質量%とを含有する単量体組成物を共重合せしめて得られるゴム状幹重合体粒子(X)100質量部、
前記ゴム状幹重合体粒子(X)に内包されている、スチレン系不飽和単量体(d)からなるスチレン系重合体粒子(Y)1〜100質量部、並びに
前記ゴム状幹重合体粒子(X)の表面に偏在している、第1のエチレン系不飽和単量体(e)からなるエチレン系重合体(Z)1〜500質量部、
を備えるグラフト共重合体粒子であり、且つ前記ゴム状幹重合体粒子(X)の平均粒子径x、前記スチレン系重合体粒子(Y)の平均粒子径y及び前記グラフト共重合体粒子の平均粒子径zが下記数式(F1)〜(F4):
20nm ≦ x ≦ 500nm ・・(F1)
5nm ≦ y ≦ 50nm ・・(F2)
50nm ≦ z ≦ 550nm ・・(F3)
y < x < z ・・(F4)
で表される条件を満たすことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第1のグラフト共重合体粒子の製造方法は、アルキレンオキサイド基を有し且つエチレン系不飽和結合を有するアルキレンオキサイド基含有単量体(a)1〜50質量%と、共役ジエン及びアクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つのゴム状幹形成単量体(b)50〜99質量%とを含有する単量体組成物を共重合せしめてゴム状幹重合体粒子(X)を得る工程と、
前記ゴム状幹重合体粒子(X)に、前記ゴム状幹重合体粒子(X)100質量部に対して1〜500質量部の第1のエチレン系不飽和単量体(e)をグラフト共重合せしめることにより、前記ゴム状幹重合体粒子(X)の表面にエチレン系重合体(Z)を形成させてエチレン系重合体被覆ゴム状幹重合体粒子(XZ)を得る工程と、
前記エチレン系重合体被覆ゴム状幹重合体粒子(XZ)に、前記ゴム状幹重合体粒子(X)100質量部に対して1〜100質量部のスチレン系不飽和単量体(d)をグラフト共重合せしめることにより、前記ゴム状幹重合体粒子(X)の内部にスチレン系重合体粒子(Y)を形成させてグラフト共重合体粒子を得る工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
【0010】
また、本発明の第2のグラフト共重合体粒子の製造方法は、アルキレンオキサイド基を有し且つエチレン系不飽和結合を有するアルキレンオキサイド基含有単量体(a)1〜50質量%と、共役ジエン及びアクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つのゴム状幹形成単量体(b)50〜99質量%とを含有する単量体組成物を共重合せしめてゴム状幹重合体粒子(X)を得る工程と、
前記ゴム状幹重合体粒子(X)に、前記ゴム状幹重合体粒子(X)100質量部に対して1〜100質量部のスチレン系不飽和単量体(d)をグラフト共重合せしめることにより、前記ゴム状幹重合体粒子(X)の内部にスチレン系重合体粒子(Y)を形成させてスチレン系重合体粒子含有ゴム状幹重合体粒子(XY)を得る工程と、
前記スチレン系重合体粒子含有ゴム状幹重合体粒子(XY)に、前記ゴム状幹重合体粒子(X)100質量部に対して1〜500質量部の第1のエチレン系不飽和単量体(e)をグラフト共重合せしめることにより、前記スチレン系重合体粒子含有ゴム状幹重合体粒子(XY)の表面にエチレン系重合体(Z)を形成させてグラフト共重合体粒子を得る工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
【0011】
また、本発明のグラフト共重合体粒子及びその製造方法においては、前記ゴム状幹重合体粒子(X)が、前記アルキレンオキサイド基含有単量体(a)1〜50質量%と、前記ゴム状幹形成単量体(b)50〜99質量%と、前記アルキレンオキサイド基含有単量体(a)及び前記ゴム状幹形成単量体(b)と共重合可能な第2のエチレン系不飽和単量体(c)0.05〜10質量%とを含有する単量体組成物を共重合せしめて得られることが好ましい。
【0012】
本発明の制電性樹脂組成物は、前記グラフト共重合体粒子と、前記グラフト共重合体粒子に対し相溶性を有する熱可塑性樹脂及び/又はアニオン系界面活性剤とを含有することを特徴とするものである。
【0013】
なお、本発明のグラフト共重合体粒子を用いることにより、十分な透明性を有し且つ十分な制電性が付与された制電性樹脂組成物を得ることが可能となる。透明性を確保するには制電性樹脂組成物のマトリックス樹脂として一般的に用いられる熱可組成樹脂、例えばメタクリル樹脂に対して屈折率をあわせる必要がある。ゴム状幹重合体を構成するポリマーは屈折率が一般の熱可組成樹脂よりも低いことから、従来はゴム状幹重合体を形成する際にスチレン系不飽和単量体も併せて共重合せしめ屈折率調整を行い、透明性向上を図っていた。しかし、この場合には得られる制電性樹脂組成物の透明性は向上するものの、スチレン系不飽和単量体成分によりゴム状幹重合体が固い性質となり、制電性が低下してしまう欠点があった。本発明のグラフト共重合体粒子においては、ゴム状幹共重合体中にスチレン系重合体粒子が形成されており、そのスチレン系重合体粒子の存在のためにグラフト共重合体粒子の屈折率を高めることができ高透明性が達成できる。さらに、ゴム状幹共重合体中にスチレン系重合体粒子が形成されていることからゴム状幹重合体の制電性への影響も少ない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、制電性樹脂組成物に用いた場合において、十分な透明性を有し且つ十分な制電性が付与された制電性樹脂組成物を得ることが可能なグラフト共重合体粒子、それを効率よく且つ確実に製造することが可能なグラフト共重合体粒子の製造方法、並びに、それを用いた制電性樹脂組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0016】
先ず、本発明のグラフト共重合体粒子について説明する。すなわち、本発明のグラフト共重合体粒子は、アルキレンオキサイド基を有し且つエチレン系不飽和結合を有するアルキレンオキサイド基含有単量体(a)1〜50質量%と、共役ジエン及びアクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つのゴム状幹形成単量体(b)50〜99質量%とを含有する単量体組成物を共重合せしめて得られるゴム状幹重合体粒子(X)100質量部、
前記ゴム状幹重合体粒子(X)に内包されている、スチレン系不飽和単量体(d)からなるスチレン系重合体粒子(Y)1〜100質量部、並びに
前記ゴム状幹重合体粒子(X)の表面に偏在している、第1のエチレン系不飽和単量体(e)からなるエチレン系重合体(Z)1〜500質量部、
を備えるグラフト共重合体粒子であり、且つ前記ゴム状幹重合体粒子(X)の平均粒子径x、前記スチレン系重合体粒子(Y)の平均粒子径y及び前記グラフト共重合体粒子の平均粒子径zが下記数式(F1)〜(F4):
20nm ≦ x ≦ 500nm ・・(F1)
5nm ≦ y ≦ 50nm ・・(F2)
50nm ≦ z ≦ 550nm ・・(F3)
y < x < z ・・(F4)
で表される条件を満たすものである。
【0017】
本発明にかかるゴム状幹重合体粒子(X)は、後述するアルキレンオキサイド基含有単量体(a)と、後述するゴム状幹形成単量体(b)とを含有する単量体組成物を共重合せしめて得られるものである。
【0018】
本発明にかかるアルキレンオキサイド基含有単量体(a)は、アルキレンオキサイド基を有し且つエチレン系不飽和結合を有するものである。このようなアルキレンオキサイド基含有単量体(a)は、エチレン不飽和基に結合し、且つ下記一般式(1):
【0019】
【化1】

【0020】
で表せられるアルキレンオキサイド鎖を有するものである。なお、前記一般式(1)において、R、Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、m、nは数式:4≦m+n≦500で表される条件を満たす整数を表す。また、このようなアルキレンオキサイド基含有単量体(a)は、R、Rの少なくとも一方が水素であるエチレンオキサイド基を4個以上からなるエチレンオキサイドブロックを有するものであることが好ましい。
【0021】
また、このようなアルキレンオキサイド基含有単量体(a)としては、下記一般式(2)又は(3)で表せられる単量体であることが好ましい。
【0022】
【化2】

【0023】
【化3】

【0024】
前記一般式(2)及び前記一般式(3)において、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、R、R、m及びnは、前記一般式(1)におけるR、R、m及びnと同義である。さらに、Xは、水素、炭素数1〜9のアルキル基、フェニル基、SOY(Yは水素又はアルカリ金属を表す。)、SOY、PO、下記一般式(i)で表される基、下記一般式(ii)で表される基、又は下記一般式(iii)で表される基を表す。
【0025】
【化4】

【0026】
(前記一般式(i)〜(iii)において、R、R、Rは、水素又は炭素数1〜9のアルキル基を表す。Rは、水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、Yは水素又はアルカリ金属を表す。)。
【0027】
前記一般式(3)において、Zは水素、炭素数1〜40のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、フェニル基、又は下記一般式(iv)で表される基を表す。
【0028】
【化5】

【0029】
(前記一般式(iv)において、p、qは4≦p+q≦500を満たす整数を表す。また、R及びRは、前記一般式(1)におけるR及びRと同義である。)
前記一般式(2)又は前記一般式(3)で表わされる単量体の中でも、R、Rの少なくとも一方が水素であり、4個以上のエチレンオキサイド基を有するものが特に好ましく用いられる。
【0030】
本発明にかかるアルキレンオキサイド基含有単量体(a)においては、単量体中のアルキレンオキサイド基が4〜500個であることが好ましく、6〜50個であることがより好ましく、9〜50個であることが特に好ましい。アルキレンオキサイド基の数が前記下限未満では制電性を付与しにくい傾向にあり、他方、前記上限を超えると重合せしめる際に水又はモノマーに溶解しにくく、また重合性も悪くなる傾向にある。
【0031】
本発明にかかるゴム状幹重合体粒子(X)を作製する際に用いるアルキレンオキサイド基含有単量体(a)の使用量は、ゴム状幹重合体粒子(X)100質量%に対して、1〜50質量%の範囲であることが必要であり、4〜45質量%の範囲であることがより好ましい。また、アルキレンオキサイド基含有単量体(a)の使用量が1質量%未満では、制電性樹脂組成物に十分な制電性を付与することはできず、他方、50質量%を超えると、ゴム状幹重合体の形成或いはグラフト共重合における重合性並びに得られる共重合体の酸析や塩析等の処理が困難となる。
【0032】
本発明にかかるゴム状幹形成単量体(b)は、共役ジエン及びアクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つの単量体である。このようなゴム状幹形成単量体(b)において、共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3−ペンタジエンが挙げられる。また、アクリル酸エステルとしては炭素数2〜20のアクリル酸エステルを用いることが好ましく、炭素数2〜10のアクリル酸エステルを用いることがより好ましい。このようなアクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸エチル、アルリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシルが挙げられる。これらのゴム状幹形成単量体(b)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
本発明にかかるゴム状幹重合体粒子(X)を作製する際に用いるゴム状幹形成単量体(b)の使用量は、ゴム状幹重合体粒子(X)100質量%に対して、50〜99質量%の範囲であることが必要であり、55〜96質量%の範囲であることが好ましい。また、ゴム状幹形成単量体(b)の使用量が50質量%未満では、得られる共重合体の酸析や塩析等の処理が困難となり、他方、99質量%を超えると、制電性が低下したりする。
【0034】
本発明にかかるゴム状幹重合体粒子(X)は、透明性(全光線透過率や曇価)の調整や重合性や製造性の改良という観点から、前記アルキレンオキサイド基含有単量体(a)及び前記ゴム状幹形成単量体(b)の他に、以下説明する第2のエチレン系不飽和単量体(c)を含有する単量体組成物を共重合せしめて得られるものであることが好ましい。
【0035】
前記第2のエチレン系不飽和単量体(c)を使用する場合において、前記第2のエチレン系不飽和単量体(c)は、前記アルキレンオキサイド基含有単量体(a)及び前記ゴム状幹形成単量体(b)と共重合可能な単量体であることが好ましい。このような第2のエチレン系不飽和単量体(c)としては、公知の単量体を用いることができ、例えば、スチレン、ビニルナフタレン、2−イソプロピニルナフタレン等の芳香族ビニルモノマー;アクリル酸メチル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、不飽和二トリル、芳香族ビニル、アルキルビニルエーテル、アルキルビニルケトン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステル、ダイアセトンアクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イタコン酸、イタコン酸アルキルエステル、イソブテン、2−アシッドホスフォオキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスフオキシピロピルメタクリレート、スチレンスルフオン酸ソーダが挙げられる。これらの第2のエチレン系不飽和単量体(c)の中でも、芳香族ビニルモノマーを用いることが本発明の構造を有する共重合体を得る上で好ましく、特に好ましいものとして、スチレンを用いることが好ましい。これらの第2のエチレン系不飽和単量体(c)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
前記第2のエチレン系不飽和単量体(c)を使用する場合において、本発明にかかるゴム状幹重合体粒子(X)を作製する際に用いる第2のエチレン系不飽和単量体(c)の使用量は、幹重合体がゴム状を失わない範囲で使用できる。例えばゴム状幹重合体粒子(X)100質量%に対して、0.05〜10質量%であることが好ましく、0.07〜9質量%の範囲であることがより好ましく、0.08〜8質量%の範囲であることが更により好ましく、0.1〜5質量%の範囲であることが特に好ましい。また、第2のエチレン系不飽和単量体(c)の使用量が前記上限を超えると、制電性樹脂組成物に十分な制電性を付与することは困難となる傾向にある。
【0037】
また、前記ゴム状幹重合体粒子(X)を作製するための単量体組成物には、必要に応じて架橋剤を含有させてもよい。このような架橋剤としては、例えば、ビニル基、1,3−ブタジエニル基、アクリル基、メタクリル基、アリル基等のエチレン性不飽和基の1種以上を2個以上有する多官能性単量体も使用することができる。多官能不飽和単量体としては、例えば、アリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジアリルフタレートが挙げられる。これらの多官能不飽和単量体の中でも、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジアリルフタレート、及びこれらの誘導体等の芳香族系ジビニル化合物;アリルアクリレート;アリルメタクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(繰り返し単位数が2〜50)のジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0038】
さらに、前記ゴム状幹重合体粒子(X)を作製する際には、必要に応じて分子量調節剤を用いてもよい。このような分子量調節剤としては、ターシャリードデシルメルカプタン、ノルマルオクチルメルカプタン等の連鎖移動剤を使用することができる。
【0039】
本発明にかかるゴム状幹重合体粒子(X)は、前記アルキレンオキサイド基含有単量体(a)と、前記ゴム状幹形成単量体(b)と、必要に応じて前記第2のエチレン系不飽和単量体(c)とを含有する単量体組成物を共重合せしめて得られるものであるが、このようなゴム状幹重合体粒子(X)の平均粒子径xは、下記数式(F1)で表される条件を満たすことが必要である。
20nm ≦ x ≦ 500nm ・・(F1)
前記ゴム状幹重合体粒子(X)の平均粒子径xが20nm未満のものは製造が困難であり、他方、500nmを超えると、得られるグラフト共重合体粒子における透明性が損なわれたり、制電性の改良効果が小さくなる。また、前記ゴム状幹重合体粒子(X)の平均粒子径xは、25nm以上で且つ400nm以下であることがより好ましい。なお、前記ゴム状幹重合体粒子(X)の平均粒子径xは、リンタングステン酸等で染色した試料を透過型電子顕微鏡を用いて観察することにより粒子50個の粒子径を測定し、その平均粒子径を算出することにより測定することができる。また、コールター社製の商品名「N4型サブミクロン粒子アナライザー」を用いて測定することも可能である。
【0040】
本発明にかかるスチレン系重合体粒子(Y)は、前記ゴム状幹重合体粒子(X)に内包されているものであって、スチレン系不飽和単量体(d)からなるものである。このようなスチレン系不飽和単量体(d)としては、例えば、スチレン、ハロゲン置換スチレン(クロロスチレン等)、ビニルナフタレン、2−イソプロピルナフタレン、スチレンスルホン酸ソーダが挙げられる。これらのスチレン系不飽和単量体(d)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
このようなスチレン系重合体粒子(Y)の含有量は、前記ゴム状幹重合体粒子(X)100質量部に対して1〜100質量部の範囲となる量であることが必要であり、4〜85質量部の範囲となる量であることが好ましい。前記含有量が前記ゴム状幹重合体粒子(X)100質量部に対して1質量部未満では、得られる制電性樹脂組成物の透明性が不十分となり、他方、100質量部を超えると、重合安定性等の製造性が悪くなったり、得られるグラフト共重合体粒子の制電性や透明性が低下してしまう。
【0042】
このようなスチレン系重合体粒子(Y)の平均粒子径yは、下記数式(F2)で表される条件を満たすことが必要である。
5nm ≦ y ≦ 50nm ・・(F2)
前記スチレン系重合体粒子(Y)の平均粒子径yが5nm未満では、得られるグラフト共重合体粒子の製造が困難となり、他方、50nmを超えると、得られるグラフト共重合体粒子の透明性が不十分となる。また、前記スチレン系重合体粒子(Y)の平均粒子径yは、5nm以上で且つ45nm以下であることがより好ましい。なお、前記スチレン系重合体粒子(Y)の平均粒子径yは、例えばリンタングステン酸及び四酸化ルテニウムで染色した試料を透過型電子顕微鏡を用いて観察することにより粒子50個の粒子径を測定し、その平均粒子径を算出することにより測定することができる。
【0043】
本発明にかかるエチレン系重合体(Z)は、前記ゴム状幹重合体粒子(X)の表面に偏在しているものであって、以下説明する第1のエチレン系不飽和単量体(e)を前記ゴム状幹重合体粒子(X)にグラフト重合せしめてなるものである。このようなエチレン系重合体(Z)は、前記ゴム状幹重合体粒子(X)の表面に微粒子状として存在していてもよく、皮膜として存在していてもよい。
【0044】
本発明にかかる第1のエチレン系不飽和単量体(e)は、熱可塑性樹脂との相溶性を高めることが可能な単量体である。また、このような単量体の存在により、得られるグラフト共重合体粒子の後処理をし易くするという効果も達成される。このような第1のエチレン系不飽和単量体(e)としては、公知の単量体を用いることができ、例えば、メタクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、酢酸ビニル、不飽和ニトリル、芳香族ビニル、アルキルビニルエーテル、アルキルビニルケトン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステル、ダイアセトンアクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イタコン酸、イタコン酸アルキルエステル、イソブテン、2−アッシドホスフォキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アッシドホスフォキシプロピルメタクリレート、スチレンスルホン酸ソーダが挙げられる。これらの第1のエチレン系不飽和単量体(e)の中でも、熱可塑性樹脂との相溶性、並びに製造工程における得られるグラフト重合体粒子の後処理のし易さという観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリロニトリル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートが好ましい。これらの第1のエチレン系不飽和単量体(e)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
本発明にかかるエチレン系重合体(Z)の含有量は、前記ゴム状幹重合体粒子(X)100質量部に対して1〜500質量部の範囲となる量であることが必要であり、5〜400質量部の範囲となる量であることがより好ましく、10〜350質量部の範囲となる量であることが更により好ましく、20〜300質量部の範囲となる量であることが特に好ましい。前記含有量が前記ゴム状幹重合体粒子(X)100質量部に対して1質量部未満では、得られるグラフト共重合体粒子と熱可塑性樹脂との相溶性が不十分となり、他方、500質量部を超えると、得られるグラフト共重合体粒子の制電性が不十分となる。
【0046】
本発明のグラフト共重合体粒子は、前記ゴム状幹重合体粒子(X)と、前記ゴム状幹重合体粒子(X)に内包されている前記スチレン系重合体粒子(Y)と、前記ゴム状幹重合体粒子(X)の表面に偏在している前記エチレン系重合体(Z)とを備えるものである。本発明のグラフト共重合体粒子においては、前記ゴム状幹重合体粒子(X)の平均粒子径x、前記スチレン系重合体粒子(Y)の平均粒子径y及び前記グラフト共重合体粒子の平均粒子径zが、下記数式(F3)及び(F4)で表される条件を満たすことが必要である。
50nm ≦ z ≦ 550nm ・・(F3)
y < x < z ・・(F4)
前記グラフト共重合体粒子の平均粒子径zが50nm未満では、グラフト共重合体粒子の製造が困難となり、他方、550nmを超えると、得られるグラフト共重合体粒子の制電性が低下する。また、前記グラフト共重合体粒子の平均粒子径zは、55nm以上で且つ400nm以下であることがより好ましく、60nm以上で300nm以下であることが特に好ましい。また、前記数式(F4)で表される条件を満たさないグラフト共重合体粒子を製造することは困難である。なお、前記グラフト共重合体粒子の平均粒子径zは、試料を透過型電子顕微鏡を用いて観察することにより粒子50個の粒子径を測定し、その平均粒子径を算出することにより測定することができる。また、重合後のラテックス状態のグラフト共重合体粒子を試料として、コールター社製の商品名「N4型サブミクロン粒子アナライザー」を用いて測定することも可能である。
【0047】
次に、本発明のグラフト共重合体粒子の製造方法について説明する。以下説明する本発明の第1又は第2のグラフト共重合体粒子の製造方法によれば、前記本発明のグラフト共重合体粒子を効率よく且つ確実に製造することができる。
【0048】
本発明の第1のグラフト共重合体粒子の製造方法は、アルキレンオキサイド基を有し且つエチレン系不飽和結合を有するアルキレンオキサイド基含有単量体(a)1〜50質量%と、共役ジエン及びアクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つのゴム状幹形成単量体(b)50〜99質量%とを含有する単量体組成物を共重合せしめてゴム状幹重合体粒子(X)を得る工程と、
前記ゴム状幹重合体粒子(X)に、前記ゴム状幹重合体粒子(X)100質量部に対して1〜500質量部の第1のエチレン系不飽和単量体(e)をグラフト共重合せしめることにより、前記ゴム状幹重合体粒子(X)の表面にエチレン系重合体(Z)を形成させてエチレン系重合体被覆ゴム状幹重合体粒子(XZ)を得る工程と、
前記エチレン系重合体被覆ゴム状幹重合体粒子(XZ)に、前記ゴム状幹重合体粒子(X)100質量部に対して1〜100質量部のスチレン系不飽和単量体(d)をグラフト共重合せしめることにより、前記ゴム状幹重合体粒子(X)の内部にスチレン系重合体粒子(Y)を形成させてグラフト共重合体粒子を得る工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
【0049】
前記ゴム状幹重合体粒子(X)を得る工程においては、前記アルキレンオキサイド基含有単量体(a)と、前記ゴム状幹形成単量体(b)とを含有する単量体組成物を共重合せしめる。
【0050】
このような共重合の方法としては、例えば、界面活性剤の存在下において単量体を乳化重合させる方法を採用することができる。このような界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤等の公知のものを適宜使用することができ、特に限定されない。このような界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸塩等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、こはく酸エステルスルホン酸塩、燐酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル硫酸塩が挙げられる。また、分散媒としては、例えば水を使用することができる。さらに、このような乳化重合に用いる開始剤としては、適宜公知のものを使用することができ、特に限定されない。重合に用いるラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、又は酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が用いられる。これらのラジカル重合開始剤の中でも、レドックス系開始剤を用いることが好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート・ヒドロパ−オキサイドを組み合わせたスルホキシレ−ト系開始剤を用いることが好ましい。
【0051】
また、アルキレンオキサイド基含有単量体(a)及びゴム状幹形成単量体(b)並びにその使用量としては、前記本発明のグラフト共重合体粒子で用いたアルキレンオキサイド基含有単量体(a)及びゴム状幹形成単量体(b)と同様のものを同様の範囲でそれぞれ使用することができる。
【0052】
さらに、前記ゴム状幹重合体粒子(X)を得るにあたり、前記アルキレンオキサイド基含有単量体(a)及び前記ゴム状幹形成単量体(b)の他に、第2のエチレン系不飽和単量体(c)を含有する単量体組成物を共重合せしめることが好ましい。また、このように第2のエチレン系不飽和単量体(c)を使用する場合において、第2のエチレン系不飽和単量体(c)及びその使用量としては、前記本発明のグラフト共重合体粒子で用いた第2のエチレン系不飽和単量体(c)と同様のものを同様の範囲で使用することができる。
【0053】
前記エチレン系重合体付きゴム状幹重合体粒子(XZ)を得る工程においては、前記ゴム状幹重合体粒子(X)に第1のエチレン系不飽和単量体(e)をグラフト共重合せしめる。
【0054】
このようなグラフト共重合の方法としては、例えば、前記ゴム状幹重合体粒子(X)を含有する水系分散液に第1のエチレン系不飽和単量体(e)を添加し、界面活性剤の存在下において単量体をグラフト重合させる方法を採用することができる。
【0055】
また、第1のエチレン系不飽和単量体(e)及びその添加量としては、前記本発明のグラフト共重合体粒子で用いた第1のエチレン系不飽和単量体(e)と同様のものを同様の範囲で使用することができる。
【0056】
このように、前記ゴム状幹重合体粒子(X)に第1のエチレン系不飽和単量体(e)をグラフト共重合せしめることにより、前記ゴム状幹重合体粒子(X)の表面にエチレン系重合体(Z)を形成させてエチレン系重合体被覆ゴム状幹重合体粒子(XZ)を得ることができる。
【0057】
前記グラフト共重合体粒子を得る工程においては、前記エチレン系重合体被覆ゴム状幹重合体粒子(XZ)にスチレン系不飽和単量体(d)をグラフト共重合せしめる。
【0058】
このようなグラフト共重合の方法としては、例えば、前記エチレン系重合体被覆ゴム状幹重合体粒子(XZ)を含有する水系分散液にスチレン系不飽和単量体(d)を添加し、界面活性剤の存在下において単量体をグラフト重合させる方法を採用することができる。
【0059】
また、スチレン系不飽和単量体(d)及びその添加量としては、前記本発明のグラフト共重合体粒子で用いたスチレン系不飽和単量体(d)と同様のものを同様の範囲で使用することができる。
【0060】
このように、前記ゴム状幹重合体粒子(X)に前記スチレン系不飽和単量体(d)をグラフト共重合せしめた場合には、前記スチレン系不飽和単量体(d)は疎水性の単量体であることから前記ゴム状幹重合体粒子(X)の内部に浸透しやすいため、前記ゴム状幹重合体粒子(X)の内部において前記スチレン系不飽和単量体(d)を共重合させることができる。そのため、前記ゴム状幹重合体粒子(X)の内部にスチレン系重合体粒子(Y)を内包させることができる。
【0061】
本発明の第2のグラフト共重合体粒子の製造方法は、アルキレンオキサイド基を有し且つエチレン系不飽和結合を有するアルキレンオキサイド基含有単量体(a)1〜50質量%と、共役ジエン及びアクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つのゴム状幹形成単量体(b)50〜99質量%とを含有する単量体組成物を共重合せしめてゴム状幹重合体粒子(X)を得る工程と、
前記ゴム状幹重合体粒子(X)に、前記ゴム状幹重合体粒子(X)100質量部に対して1〜100質量部のスチレン系不飽和単量体(d)をグラフト共重合せしめることにより、前記ゴム状幹重合体粒子(X)の内部にスチレン系重合体粒子(Y)を形成させてスチレン系重合体粒子含有ゴム状幹重合体粒子(XY)を得る工程と、
前記スチレン系重合体粒子含有ゴム状幹重合体粒子(XY)に、前記ゴム状幹重合体粒子(X)100質量部に対して1〜500質量部の第1のエチレン系不飽和単量体(e)をグラフト共重合せしめることにより、前記スチレン系重合体粒子含有ゴム状幹重合体粒子(XY)の表面にエチレン系重合体(Z)を形成させてグラフト共重合体粒子を得る工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
【0062】
前記ゴム状幹重合体粒子(X)を得る工程においては、前記本発明の第1のグラフト共重合体粒子の製造方法におけるゴム状幹重合体粒子(X)を得る工程と同様の工程を実施することにより、ゴム状幹重合体粒子(X)を得ることができる。
【0063】
前記スチレン系重合体粒子含有ゴム状幹重合体粒子(XY)を得る工程においては、前記ゴム状幹重合体粒子(X)にスチレン系不飽和単量体(d)をグラフト共重合せしめる。
【0064】
このようなグラフト共重合の方法としては、例えば、前記ゴム状幹重合体粒子(X)を含有する水系分散液にスチレン系不飽和単量体(d)を添加し、界面活性剤の存在下において単量体をグラフト重合させる方法を採用することができる。
【0065】
また、スチレン系不飽和単量体(d)及びその添加量としては、前記本発明の第1のグラフト共重合体粒子で用いたスチレン系不飽和単量体(d)と同様のものを同様の範囲で使用することができる。
【0066】
このように、前記ゴム状幹重合体粒子(X)に前記スチレン系不飽和単量体(d)をグラフト共重合せしめた場合には、前記スチレン系不飽和単量体(d)は疎水性の単量体であることから前記ゴム状幹重合体粒子(X)の内部に浸透しやすいため、前記ゴム状幹重合体粒子(X)の内部において前記スチレン系不飽和単量体(d)を共重合させることができる。そのため、前記ゴム状幹重合体粒子(X)の内部にスチレン系重合体粒子(Y)を内包させることができる。
【0067】
前記グラフト共重合体粒子を得る工程においては、前記スチレン系重合体粒子含有ゴム状幹重合体粒子(XY)に第1のエチレン系不飽和単量体(e)をグラフト共重合せしめる。
【0068】
このようなグラフト共重合の方法としては、例えば、前記スチレン系重合体粒子含有ゴム状幹重合体粒子(XY)を含有する水系分散液に第1のエチレン系不飽和単量体(e)を添加し、界面活性剤の存在下において単量体をグラフト重合させる方法を採用することができる。
【0069】
また、第1のエチレン系不飽和単量体(e)及びその添加量としては、前記本発明の第1のグラフト共重合体粒子で用いた第1のエチレン系不飽和単量体(e)と同様のものを同様の範囲で使用することができる。
【0070】
このように、前記スチレン系重合体粒子含有ゴム状幹重合体粒子(XY)に第1のエチレン系不飽和単量体(e)をグラフト共重合せしめることにより、前記スチレン系重合体粒子含有ゴム状幹重合体粒子(XY)の表面にエチレン系重合体(Z)を形成させてグラフト共重合体粒子を得ることができる。
【0071】
次に、本発明の制電性樹脂組成物について説明する。すなわち、本発明の制電性樹脂組成物は、前記グラフト共重合体粒子と、前記グラフト共重合体粒子に対し相溶性を有する熱可塑性樹脂及び/又はアニオン系界面活性剤とを含有するものである。そして、本発明のグラフト共重合体粒子は、制電性樹脂組成物に用いた場合において、十分な透明性を有し且つ十分な制電性が付与された制電性樹脂組成物を得ることが可能なものであるため、本発明の制電性樹脂組成物は、十分な透明性を有し且つ十分な制電性が付与されたものとなる。
【0072】
また、前記本発明のグラフト共重合体粒子自体を制電性樹脂組成物として使用することもできる。また、本発明の制電性樹脂組成物においては、前記グラフト共重合体粒子、前記グラフト共重合体粒子に対し相溶性を有する熱可塑性樹脂、及びアニオン系界面活性剤を含有することがより好ましい。
【0073】
本発明に用いる熱可塑性樹脂は、前記グラフト共重合体粒子と相溶性を有するものであればよく、特に限定されない。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、芳香族ビニルポリマー、ニトリル樹脂、メタクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート及びその共重合体)、ABS樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂の中でも、透明性や機械的物性という観点から、メタクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート及びその共重合体)、アクリロニトリル−スチレン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ABS樹脂が好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0074】
このような熱可塑性樹脂の含有量としては、前記グラフト共重合体粒子と熱可塑性樹脂との合計100質量部に対して1〜90質量部の範囲であることが好ましく、5〜80質量部の範囲であることがより好ましく、10〜70質量部の範囲であることが特に好ましい。含有量が前記下限未満では、熱可塑性樹脂添加により得られる樹脂の機械物性向上効果が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる制電性樹脂組成物における制電性が不十分となる。
【0075】
本発明に用いるアニオン系界面活性剤としては、適宜公知のアニオン系界面活性剤を使用することができ、特に限定されない。このようなアニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、コハク酸エステルスルホン酸塩、リン酸エステル塩、脂肪酸エチルスルホン酸塩、脂肪酸塩、脂肪族アルコール硫酸エステル塩が挙げられる。これらのアニオン系界面活性剤の中でも、成形時において分解や飛散等によって発生すると見られる成形体のくもりや変色の抑制、並びに得られる制電性樹脂組成物における制電性の低下防止という観点から、熱重量減少開始温度が250℃以上のアニオン系界面活性剤を用いることが好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、脂肪酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩を用いることが好ましい。これらのアニオン系界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0076】
このようなアニオン系界面活性剤の含有量としては、前記グラフト共重合体粒子と熱可塑性樹脂との合計100質量部に対して0.01〜5質量部の範囲であることが好ましく、0.05〜4質量部の範囲であることがより好ましく、0.1〜3質量部の範囲であることが特に好ましい。含有量が前記下限未満では、制電性付与効果が小さくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ブリード等の問題が発生しやすくなる傾向にある。
【0077】
以上説明した本発明の制電性樹脂組成物は、例えば、前記グラフト共重合体粒子、前記熱可塑性樹脂及び又は前記アニオン系界面活性剤を混合することにより製造することができる。混合方法は特に限定されず、適宜公知の方法を採用することができる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、制電性組成物の体積抵抗率、表面抵抗率、制電性、曇価及び透明性はそれぞれ以下の方法により測定又は評価した。また、実施例及び比較例においては、材料としてそれぞれ以下のものを用いた。
【0079】
(I)体積抵抗率、表面抵抗率、制電性、曇価及び透明性の測定方法又は評価方法
(i)制電性(体積抵抗率)
JIS K−6911に記載の方法に準拠して、温度23℃、湿度45%RHで3日間調湿して、極超絶縁計(東亜電波工業製、製品名「SM−10E」)を用いて成形体の体積抵抗率を測定した。なお、成形体の制電性は、制電性組成物の体積抵抗率(Ω・m)と相関がある。また、成形体の制電性は、以下の基準に基づいて判定した。
A:体積抵抗率が2.0×10以下である。すなわち、制電性が非常に優れる。
B:体積抵抗率が2.0×10を超え2.0×10以下である。すなわち、制電性が優れる。
C:体積抵抗率が2.0×10を超え1.0×1011以下である。
D:体積抵抗率が1.0×1011を超え1.0×1013以下である。
E:体積抵抗率が1.0×1013を超える。すなわち、制電性改良効果が少ない。
【0080】
(ii)制電性(表面抵抗率)
JIS K−6911に記載の方法に準拠して、温度23℃、湿度45%RHで3日間調湿して、極超絶縁計(東亜電波工業製、製品名「SM−10E」)を用いて成形体の表面抵抗率を測定した。なお、成形体の制電性は、制電性組成物の表面抵抗率(Ω/□)と相関がある。また、成形体の制電性は、以下の基準に基づいて判定した。
A:表面抵抗率が1.0×1011以下である。すなわち、制電性が非常に優れる。
B:表面抵抗率が1.0×1011を超え1.0×1012以下である。すなわち、制電性が優れる。
C:表面抵抗率が1.0×1012を超え1.0×1013以下である。すなわち、制電性を有する。
D:表面抵抗率が1.0×1013を超える。すなわち、制電性が劣る。
【0081】
(iii)透明性(曇価)
JIS K−7105に記載の方法に準拠して、ヘーズメーター(東京電色製、製品名「TC−H3DP」)を用いて測定した。成形体の透明性は、以下の基準に基づいて判定した。
A:透明性が十分に高い(曇価10%以下である。)。
B:透明性が高く、十分な視認性を有する(曇価10%超過で且つ20%以下である。)。
C:視認性が不十分である(曇価20%超過で且つ40%以下である。)。
D:視認性が劣っている(曇価40%超過である。)。
【0082】
(II)実施例及び比較例において用いた材料
M1:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイド基の数:平均約23個)。
M2:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイド基の数:平均約14個)。
BA:アクリル酸ブチル。
ST:スチレン。
ALMA:アリルメタクリレート
MMA:メタクリル酸メチル。
NOM:ノルマルオクチルメルカプタン。
EDMA:エチレングリコールジメタクリレート。
DVB:ジビニルベンゼン。
BUT:1,3−ブタジエン。
PMMA:メタクリル樹脂(住友化学社製、商品名「スミペックスEXA」、屈折率:1.49)。
PAN:アクリロニトリル樹脂(三井化学社製、商品名「バレックス♯3000」、屈折率:1.51)。
DBS:ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム。
【0083】
(実施例1〜7)
ステンレス製のオートクレーブに、アルキレンオキサイド基含有単量体(a)として、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイド基の数:平均約14個)8質量部、ゴム状幹形成単量体(b)として、アクリル酸ブチル46質量部、並びに第2のエチレン系不飽和単量体(c)として、スチレン2質量部及びアリルメタクリレート0.8質量部を仕込み、更に、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.1質量部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート0.09質量部、Fe−EDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸鉄(III)塩)0.005質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5質量部、ピロリン酸ソーダ0.1質量部及び脱イオン水359質量部を仕込み、塩酸水溶液でpHを7に調整した後に、窒素雰囲気下において温度50℃にて2時間攪拌して、これらの単量体を乳化重合せしめてゴム状幹重合体粒子(X)を含有するゴムラテックスを得た。得られたゴム状幹重合体粒子(X)の平均粒子径をコールター社製の商品名「N4型サブミクロン粒子アナライザー」にて測定したところ64nmであった。また、得られたゴム状幹重合体粒子(X)についてガスクロマトグラフィー法で残存単量体を測定し、収率を測定したところ99%であった。
【0084】
得られたゴム状幹重合体粒子(X)を含有するゴムラテックスに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1質量部を添加した後に、メタクリル酸メチル33質量部、アクリル酸ブチル1.5質量部及びノルマルオクチルメルカプタン0.3質量部を添加し、更に、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.01質量部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート0.01質量部及び脱イオン水56質量部を添加し、窒素雰囲気下において温度50℃にて2時間攪拌して、これらの単量体をグラフト重合せしめてエチレン系重合体被覆ゴム状幹重合体粒子(XZ)を含有するゴムラテックスを得た。得られたエチレン系重合体被覆ゴム状幹重合体粒子(XZ)の平均粒子径及び収率を、ゴム状幹重合体粒子(X)において平均粒子径及び収率を測定した方法と同様の方法で測定したところ、平均粒子径は75nmであり、収率は99%であった。
【0085】
得られたエチレン系重合体被覆ゴム状幹重合体粒子(XZ)を含有するゴムラテックスに、スチレン8質量部を添加し、更に、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.2質量部及びホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート0.2質量部を添加し、窒素雰囲気下において温度50℃にて3時間攪拌して、これらの単量体をグラフト重合せしめてグラフト共重合体粒子を含有するゴムラテックスを得た。得られたグラフト共重合体粒子の平均粒子径及び収率を、ゴム状幹重合体粒子(X)において平均粒子径及び収率を測定した方法と同様の方法で測定したところ、平均粒子径は81nmであり、収率は99%であった。
【0086】
得られたグラフト共重合体粒子をリンタングステン酸及び四酸化ルテニウムで染色した後に、透過型電子顕微鏡にて観察した(透過型電子顕微鏡写真を図1に示す。)。スチレン系重合体粒子(Y)50個の粒子径を測定し、その平均粒子径を算出したところ20nmであった。また、得られたグラフト共重合体粒子においては、平均粒子径64nmのゴム状幹重合体粒子(X)中に平均粒子径20nmのスチレン系重合体粒子(Y)が内包されていることが確認された。
【0087】
その後、得られたグラフト共重合体粒子を含有するゴムラテックスを取り出し、塩酸水溶液によりグラフト共重合体粒子を析出させ、水酸化ナトリウム水溶液でpHを5.5に調整し、脱水洗浄した後に温度60℃にて一晩乾燥してグラフト共重合体の白色粉末を得た。得られた白色粉末のグラフト共重合体粒子の収率は97%であった。
【0088】
また、グラフト共重合体粒子の制電性、並びにグラフト共重合体粒子を用いて得られる制電性樹脂組成物の制電性及び透明性を評価するために、得られたグラフト共重合体粒子を用いてグラフト共重合体粒子の成形体及び制電性樹脂組成物の成形体を作製した。すなわち、得られたグラフト共重合体粒子100質量部にドデシルベンゼンスルホン酸カリウム1.5質量部を添加したものを表面温度160℃のロールで3分間混錬した後、温度200℃、圧力10MPaにて3分間プレス成形してグラフト共重合体粒子の成形体を作製した。また、ヘンシェルミキサーに、得られたグラフト共重合体粒子と、メタクリル樹脂(住友化学社製、商品名「スミペックスEXA」、屈折率:1.49)とを質量比(グラフト共重合体粒子:メタクリル樹脂)で50:50の比率で100質量部仕込み、さらにドデシルベンゼンスルホン酸カリウム1.5質量部を添加してヘンシェルミキサーにて混合した。その後、得られた混合粉末をシリンダー径20mmφの平行二軸押出機(東洋精機社製、製品名「ラボプラスミトル」)にて押出成形してペレット状の制電性樹脂組成物を得た。次いで、平板金型(大きさ:100mm×100mm×3mm)を取り付けた射出成形機(東芝機械社製、製品名「IS−80EPN」)に得られた制電性樹脂組成物を投入し、射出成形して制電性樹脂組成物の成形体を作製した。
【0089】
そして、グラフト共重合体粒子の体積抵抗率、表面抵抗率及び制電性、並びにグラフト共重合体粒子を用いて得られた制電性樹脂組成物の体積抵抗率、表面抵抗率、制電性、曇価及び透明性を評価又は測定した。得られた結果を表2に示す。
【0090】
また、実施例2〜7においては、実施例1のグラフト共重合体の単量体の組成を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてグラフト共重合体粒子を得た。そして、実施例2〜7で得られたグラフト共重合体粒子の体積抵抗率及び制電性、並びにグラフト共重合体粒子を用いて得られた制電性樹脂組成物の体積抵抗率、制電性、曇価及び透明性を、実施例1においてこれらの特性を評価又は測定した方法と同様の方法で評価又は測定した。得られた結果を表2に示す。また、実施例2〜3で得られたグラフト共重合体粒子の表面抵抗率及び制電性、並びにグラフト共重合体粒子を用いて得られた制電性樹脂組成物の表面抵抗率及び制電性を、実施例1においてこれらの特性を評価又は測定した方法と同様の方法で評価又は測定した。得られた結果を表2に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
表2に示した結果から明らかなように、本発明のグラフト共重合体粒子(実施例1〜7)を用いて得られた制電性樹脂組成物は、十分な透明性を有し且つ十分な制電性が付与されたものであることが確認された。
【0094】
(実施例8〜14)
実施例1と同様にしてゴム状幹重合体粒子(X)を含有するゴムラテックスを作製した後に、スチレン8.0質量部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.05質量部及びホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート0.05質量部を添加し、窒素雰囲気下において温度50℃にて3時間攪拌して、これらの単量体をグラフト重合せしめてスチレン系重合体粒子含有ゴム状幹重合体粒子(XY)を含有するゴムラテックスを得た。得られたスチレン系重合体粒子含有ゴム状幹重合体粒子(XY)の平均粒子径及び収率を、実施例1において平均粒子径及び収率を測定した方法と同様の方法で測定したところ、平均粒子径は71nmであり、収率は99%であった。
【0095】
得られたスチレン系重合体粒子含有ゴム状幹重合体粒子(XY)を含有するゴムラテックスに、メタクリル酸メチル33質量部、アクリル酸ブチル1.5質量部及びノルマルオクチルメルカプタン0.3質量部を添加し、更に、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.02質量部及びホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート0.02質量部を添加し、窒素雰囲気下において温度50℃にて2時間攪拌して、これらの単量体をグラフト重合せしめてグラフト共重合体粒子を含有するゴムラテックスを得た。得られたグラフト共重合体粒子の平均粒子径及び収率を、実施例1において平均粒子径及び収率を測定した方法と同様の方法で測定したところ、平均粒子径は96nmであり、収率は99%であった。
【0096】
その後、得られたグラフト共重合体粒子を含有するゴムラテックスを取り出し、塩酸水溶液によりグラフト共重合体粒子を析出させ、水酸化ナトリウム水溶液でpHを5.5に調整し、脱水洗浄した後に温度60℃にて一晩乾燥してグラフト共重合体の白色粉末を得た。得られた白色粉末のグラフト共重合体粒子の収率は97%であった。
【0097】
また、実施例9〜14においては、実施例8のグラフト共重合体の単量体の組成を表3に示す記載の通りに変更した以外は実施例8と同様にしてグラフト共重合体粒子を得た。そして、実施例8〜14で得られたグラフト共重合体粒子の体積抵抗率及び制電性、並びにグラフト共重合体粒子を用いて得られた制電性樹脂組成物の体積抵抗率、制電性、曇価及び透明性を、実施例1においてこれらの特性を評価又は測定した方法と同様の方法で評価又は測定した。得られた結果を表4に示す。
【0098】
【表3】

【0099】
【表4】

【0100】
表4に示した結果から明らかなように、本発明のグラフト共重合体粒子(実施例8〜14)を用いて得られた制電性樹脂組成物は、十分な透明性を有し且つ十分な制電性が付与されたものであることが確認された。
【0101】
(実施例15〜17)
ステンレス製のオートクレーブに、アルキレンオキサイド基含有単量体(a)としてメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイド基の数:平均約23個)を7質量部、ゴム状幹形成単量体(b)として、アクリル酸ブチル32質量部、1,3−ブタジエン10質量部、スチレン1質量部、更に、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.1質量部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート0.09質量部、Fe−EDTA0.005質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5質量部、ピロリン酸ソーダ0.1質量部及び脱イオン水359質量部を仕込み、塩酸水溶液でpHを7に調整した後に、窒素雰囲気下において温度60℃にて10時間攪拌して、これらの単量体を乳化重合せしめてゴム状幹重合体粒子(X)を含有するゴムラテックスを得た。得られたゴム状幹重合体粒子(X)の平均粒子径及び収率を、実施例1において平均粒子径及び収率を測定した方法と同様の方法で測定したところ、平均粒子径は75nmであり、収率は99%であった。
【0102】
得られたゴム状幹重合体粒子(X)を含有するゴムラテックスに、メタクリル酸メチル33質量部、アクリル酸ブチル1.5質量部及びノルマルオクチルメルカプタン0.3質量部を添加し、更に、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.01質量部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート0.01質量部及び脱イオン水56質量部を添加し、窒素雰囲気下において温度50℃にて3時間攪拌して、これらの単量体をグラフト重合せしめてエチレン系重合体被覆ゴム状幹重合体粒子(XZ)を含有するゴムラテックスを得た。得られたエチレン系重合体付きゴム状幹重合体粒子(XZ)の平均粒子径及び収率を、実施例1において平均粒子径及び収率を測定した方法と同様の方法で測定したところ、平均粒子径は88nmであり、収率は99%であった。
【0103】
得られたエチレン系重合体被覆ゴム状幹重合体粒子(XZ)を含有するゴムラテックスに、スチレン15質量部及びジビニルベンゼン0.015質量部を添加し、更に、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.2質量部及びホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート0.2質量部を添加し、窒素雰囲気下において温度50℃にて4時間攪拌して、これらの単量体をグラフト重合せしめてグラフト共重合体粒子を含有するゴムラテックスを得た。得られたグラフト共重合体粒子の平均粒子径及び収率を、実施例1において平均粒子径及び収率を測定した方法と同様の方法で測定したところ、平均粒子径は90nmであり、収率は99%であった。
【0104】
また、得られたグラフト共重合体粒子を四酸化オスミニウムで染色した後に、透過型電子顕微鏡にて観察した。そして、スチレン系重合体粒子(Y)50個の粒子径を測定し、その平均粒子径を算出したところ20nmであった。また、得られたグラフト共重合体粒子においては、平均粒子径75nmのゴム状幹重合体粒子(X)中に平均粒子径20nmのスチレン系重合体粒子(Y)が内包されていることが確認された。
【0105】
その後、得られたグラフト共重合体粒子を含有するゴムラテックスを取り出し、塩酸水溶液によりグラフト共重合体粒子を析出させ、水酸化ナトリウム水溶液でpHを5.5に調整し、脱水洗浄した後に温度60℃にて一晩乾燥してグラフト共重合体の白色粉末を得た。得られた白色粉末のグラフト共重合体粒子の収率は97%であった。
【0106】
また、グラフト共重合体粒子の制電性、並びにグラフト共重合体粒子を用いて得られる制電性樹脂組成物の制電性及び透明性を評価するために、得られたグラフト共重合体粒子を用いてグラフト共重合体粒子の成形体及び制電性樹脂組成物の成形体を作製した。すなわち、得られたグラフト共重合体粒子100質量部にドデシルベンゼンスルホン酸カリウム1.5質量部を添加したものを表面温度160℃のロールで3分間混錬した後、温度200℃、圧力10MPaにて3分間プレス成形してグラフト共重合体粒子の成形体を作製した。また、ヘンシェルミキサーに、得られたグラフト共重合体粒子と、アクリロニトリル樹脂(三井化学社製、商品名「バレックス♯3000」、屈折率:1.51)とを質量比(グラフト共重合体粒子:アクリロニトリル樹脂)で50:50の比率で100質量部仕込み、さらにドデシルベンゼンスルホン酸カリウム1.5質量部を添加してヘンシェルミキサーにて混合した。その後、得られた混合粉末をシリンダー径20mmφの平行二軸押出機(東洋精機社製、製品名「ラボプラスミトル」)にて押出成形してペレット状の制電性樹脂組成物を得た。次いで、平板金型(大きさ:100mm×100mm×3mm)を取り付けた射出成形機(東芝機械社製、製品名「IS−80EPN」)に得られた制電性樹脂組成物を投入し、射出成形して制電性樹脂組成物の成形体を作製した。
【0107】
そして、グラフト共重合体粒子の体積抵抗率及び制電性、並びにグラフト共重合体粒子を用いて得られた制電性樹脂組成物の体積抵抗率、制電性、曇価及び透明性を評価又は測定した。
【0108】
また、実施例16及び17においては、実施例15のグラフト共重合体の単量体の組成を表5に示す記載の通りに変更した以外は実施例15と同様にしてグラフト共重合体粒子を得た。そして、実施例15〜17で得られたグラフト共重合体粒子の体積抵抗率及び制電性、並びにグラフト共重合体粒子を用いて得られた制電性樹脂組成物の体積抵抗率、制電性、曇価及び透明性を、実施例1においてこれらの特性を評価又は測定した方法と同様の方法で評価又は測定した。得られた結果を表6に示す。
【0109】
【表5】

【0110】
【表6】

【0111】
表6に示した結果から明らかなように、本発明のグラフト共重合体粒子(実施例15〜17)を用いて得られた制電性樹脂組成物は、十分な透明性を有し且つ十分な制電性が付与されたものであることが確認された。
【0112】
(比較例1〜2)
ステンレス製のオートクレーブに、アルキレンオキサイド基含有単量体(a)として、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイド基の数:平均約23個)を8質量部、ゴム状幹形成単量体(b)として、アクリル酸ブチル46質量部、並びにスチレン10質量部及びアリルメタクリレート0.3質量部を仕込み、更に、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.1質量部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート0.1質量部、Fe−EDTA0.005質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.9質量部、ピロリン酸ソーダ0.1質量部及び脱イオン水359質量部を仕込み、塩酸水溶液でpHを7に調整した後に、窒素雰囲気下において温度50℃にて2時間攪拌して、これらの単量体を乳化重合せしめてゴム状幹重合体粒子を含有するゴムラテックスを得た。得られたゴム状幹重合体粒子の平均粒子径及び収率を、実施例1において平均粒子径及び収率を測定した方法と同様の方法で測定したところ、平均粒子径は71nmであり、収率は99%であった。
【0113】
得られたゴム状幹重合体粒子を含有するゴムラテックスに、メタクリル酸メチル33質量部、アクリル酸ブチル1.5質量部及びノルマルオクチルメルカプタン0.3質量部を添加し、更に、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.01質量部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート0.01質量部及び脱イオン水80質量部を添加し、窒素雰囲気下において温度50℃にて2時間攪拌して、これらの単量体をグラフト重合せしめてグラフト共重合体粒子を含有するゴムラテックスを得た。得られたグラフト共重合体粒子の平均粒子径及び収率を、実施例1において平均粒子径及び収率を測定した方法と同様の方法で測定したところ、平均粒子径は85nmであり、収率は99%であった。
【0114】
また、得られたグラフト共重合体粒子をリンタングステン酸及び四酸化ルテニウムで染色した後に、透過型電子顕微鏡にて観察した(透過型電子顕微鏡写真を図2に示す。)。そして、ゴム状幹重合体粒子中にはスチレン系重合体粒子が形成されていないことが確認された。
【0115】
その後、得られたグラフト共重合体粒子を含有するゴムラテックスを取り出し、塩酸水溶液によりグラフト共重合体粒子を析出させ、水酸化ナトリウム水溶液でpHを5.5に調整し、脱水洗浄した後に温度60℃にて一晩乾燥して比較用のグラフト共重合体の白色粉末を得た。得られた白色粉末のグラフト共重合体粒子の収率は97%であった。
【0116】
また、得られたグラフト共重合体粒子をリンタングステン酸及び四酸化ルテニウムで染色した後に、透過型電子顕微鏡にて観察した(透過型電子顕微鏡写真を図2に示す。)。そして、ゴム状幹重合体粒子中にはスチレン系重合体粒子が形成されていないことが確認された。
【0117】
また、比較例2においては、比較例1のグラフト共重合体の単量体の組成を表7に示す記載の通りに変更した以外は比較例1と同様にしてグラフト共重合体粒子を得た。そして、比較例1及び2で得られたグラフト共重合体粒子の体積抵抗率及び制電性、並びにグラフト共重合体粒子を用いて得られた制電性樹脂組成物の体積抵抗率、制電性、曇価及び透明性を、実施例1においてこれらの特性を評価又は測定した方法と同様の方法で評価又は測定した。得られた結果を表8に示す。
【0118】
【表7】

【0119】
【表8】

【0120】
(比較例3〜4)
ステンレス製のオートクレーブに、アルキレンオキサイド基含有単量体(a)としてメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイド基の数:平均約23個)を7質量部、ゴム状幹形成単量体(b)として、アクリル酸ブチル32質量部、1,3−ブタジエン10質量部、並びに第2のエチレン系不飽和単量体(c)として、スチレン16質量部を仕込み、更に、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.1質量部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート0.1質量部、Fe−EDTA0.005質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.9質量部、ピロリン酸ソーダ0.1質量部及び脱イオン水359質量部を仕込み、塩酸水溶液でpHを7に調整した後に、窒素雰囲気下において温度60℃にて10時間攪拌して、これらの単量体を乳化重合せしめてゴム状幹重合体粒子(X)を含有するゴムラテックスを得た。得られたゴム状幹重合体粒子(X)の平均粒子径及び収率を、実施例1において平均粒子径及び収率を測定した方法と同様の方法で測定したところ、平均粒子径は78nmであり、収率は99%であった。
【0121】
得られたゴム状幹重合体粒子(X)を含有するゴムラテックスに、メタクリル酸メチル33質量部、アクリル酸ブチル1.5質量部及びノルマルオクチルメルカプタン0.3質量部を添加し、更に、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.01質量部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート0.01質量部及び脱イオン水80質量部を添加し、窒素雰囲気下において温度50℃にて3時間攪拌して、これらの単量体をグラフト重合せしめてエチレン系重合体被覆ゴム状幹重合体粒子(XZ)を含有するゴムラテックスを得た。得られたエチレン系重合体付きゴム状幹重合体粒子(XZ)の平均粒子径及び収率を、実施例1において平均粒子径及び収率を測定した方法と同様の方法で測定したところ、平均粒子径は87nmであり、収率は99%であった。
【0122】
その後、得られたグラフト共重合体粒子を含有するゴムラテックスを取り出し、塩酸水溶液によりグラフト共重合体粒子を析出させ、水酸化ナトリウム水溶液でpHを5.5に調整し、脱水洗浄した後に温度60℃にて一晩乾燥してグラフト共重合体の白色粉末を得た。得られた白色粉末のグラフト共重合体粒子の収率は98%であった。
【0123】
また、比較例4においては、比較例3のグラフト共重合体の単量体の組成を表9に示す記載の通りに変更した以外は比較例3と同様にしてグラフト共重合体粒子を得た。そして、比較例3及び4で得られたグラフト共重合体粒子の体積抵抗率及び制電性、並びにグラフト共重合体粒子を用いて得られた制電性樹脂組成物の体積抵抗率、制電性、曇価及び透明性を、実施例15においてこれらの特性を評価又は測定した方法と同様の方法で評価又は測定した。得られた結果を表10に示す。
【0124】
【表9】

【0125】
【表10】

【0126】
(比較例5〜7)
比較例5〜7においては、実施例1のグラフト共重合体の単量体の組成を表11に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてグラフト共重合体粒子を得た。そして、比較例5〜7で得られたグラフト共重合体粒子の体積抵抗率及び制電性、並びにグラフト共重合体粒子を用いて得られた制電性樹脂組成物の体積抵抗率、制電性、曇価及び透明性を、実施例1においてこれらの特性を評価又は測定した方法と同様の方法で評価又は測定した。得られた結果を表12に示す。
【0127】
【表11】

【0128】
【表12】

【0129】
(実施例18〜20、比較例8〜10)
ヘンシェルミキサーに、実施例1で得られたグラフト共重合体粒子と、メタクリル樹脂(住友化学社製、商品名「スミペックスEXA」、屈折率:1.49)とを質量比(グラフト共重合体粒子:メタクリル樹脂)で30:70の比率で100質量部仕込み、ヘンシェルミキサーにて混合した。その後、得られた混合粉末をシリンダー径20mmφの平行二軸押出機(東洋精機社製、製品名「ラボプラスミトル」)にて押出成形してペレット状の制電性樹脂組成物を得た。次いで、平板金型(大きさ:100mm×100mm×3mm)を取り付けた射出成形機(東芝機械社製、製品名「IS−80EPN」)に得られた制電性樹脂組成物を投入し、射出成形して制電性樹脂組成物の成形体を得た。
【0130】
また、実施例19〜20及び比較例8〜10においては、実施例18の制電制樹脂組成物の配合組成を表13に示すように変更した以外は、実施例18と同様にして、ペレット状の制電性樹脂組成物及び制電性樹脂組成物の成形体を得た。そして、実施例18〜20及び比較例8〜10で得られた制電性樹脂組成物の体積抵抗率、制電性、曇価及び透明性を、実施例1においてこれらの特性を評価又は測定した方法と同様の方法で評価又は測定した。得られた結果を表13に示す。
【0131】
【表13】

【0132】
表13に示した結果から明らかなように、本発明のグラフト共重合体粒子を用いて得られた制電性樹脂組成物(実施例18〜20)は、十分な透明性を有し且つ制電性が付与されたものであることが確認され、特に実施例19及び20で得られた制電性樹脂組成物の制電性が優れることが確認された。
【0133】
(実施例21〜23、比較例11〜13)
実施例21においては、実施例15で得られたグラフト共重合体粒子と、アクリロニトリル樹脂(三井化学社製、商品名「バレックス♯3000」、屈折率:1.51)とを質量比(グラフト共重合体粒子:アクリロニトリル樹脂)で30:70の比率で100質量部仕込んだ以外は実施例18と同様にして、ペレット状の制電性樹脂組成物及び制電性樹脂組成物の成形体を得た。
【0134】
また、実施例22〜23及び比較例11〜13においては、実施例21の制電制樹脂組成物の配合組成を表14に示すように変更した以外は、実施例21と同様にして、ペレット状の制電性樹脂組成物及び制電性樹脂組成物の成形体を得た。そして、実施例21〜23及び比較例11〜13で得られた制電性樹脂組成物の体積抵抗率、制電性、曇価及び透明性を、実施例1においてこれらの特性を評価又は測定した方法と同様の方法で評価又は測定した。得られた結果を表14に示す。
【0135】
【表14】

【0136】
表14に示した結果から明らかなように、本発明のグラフト共重合体粒子を用いて得られた制電性樹脂組成物(実施例21〜23)は、十分な透明性を有し且つ制電性が付与されたものであることが確認され、特に実施例22及び23で得られた制電性樹脂組成物の制電性が優れることが確認された。
【0137】
(実施例24〜26、比較例14〜15)
ヘンシェルミキサーに、実施例1で得られたグラフト共重合体粒子と、メタクリル樹脂(住友化学社製、商品名「スミペックスEXA」、屈折率:1.49)とを質量比(グラフト共重合体粒子:メタクリル樹脂)で50:50の比率で100質量部仕込み、更にドデシルベンゼンスルホン酸カリウム0.5部を添加してヘンシェルミキサーにて混合した。その後、得られた混合粉末をシリンダー径20mmφの平行二軸押出機(東洋精機社製、製品名「ラボプラスミトル」)にて押出成形してペレット状の制電性樹脂組成物を得た。次いで、平板金型(大きさ:100mm×100mm×3mm)を取り付けた射出成形機(東芝機械社製、製品名「IS−80EPN」)に得られた制電性樹脂組成物を投入し、射出成形して制電性樹脂組成物の成形体を得た。
【0138】
また、実施例25〜26及び比較例14〜15においては、実施例24の制電制樹脂組成物の配合組成を表15に示すように変更した以外は、実施例24と同様にして、ペレット状の制電性樹脂組成物及び制電性樹脂組成物の成形体を得た。そして、実施例24〜26及び比較例14〜15で得られた制電性樹脂組成物の体積抵抗率、制電性、曇価及び透明性を、実施例1においてこれらの特性を評価又は測定した方法と同様の方法で評価又は測定した。得られた結果を表15に示す。
【0139】
【表15】

【0140】
表15に示した結果から明らかなように、本発明のグラフト共重合体粒子を用いて得られた制電性樹脂組成物(実施例24〜26)は、十分な透明性を有し且つ十分な制電性が付与されたものであることが確認された。
【0141】
(実施例27〜29、比較例16〜17)
実施例27においては、実施例15で得られたグラフト共重合体粒子と、アクリロニトリル樹脂(三井化学社製、商品名「バレックス♯3000」、屈折率:1.51)とを質量比(グラフト共重合体粒子:アクリロニトリル樹脂)で50:50の比率で100質量部仕込んだ以外は実施例24と同様にして、ペレット状の制電性樹脂組成物及び制電性樹脂組成物の成形体を得た。
【0142】
また、実施例28〜29及び比較例16〜17においては、実施例27の制電制樹脂組成物の配合組成を表16に示すように変更した以外は、実施例27と同様にして、ペレット状の制電性樹脂組成物及び制電性樹脂組成物の成形体を得た。そして、実施例27〜29及び比較例16〜17で得られた制電性樹脂組成物の体積抵抗率、制電性、曇価及び透明性を、実施例1においてこれらの特性を評価又は測定した方法と同様の方法で評価又は測定した。得られた結果を表16に示す。
【0143】
【表16】

【0144】
表16に示した結果から明らかなように、本発明のグラフト共重合体粒子を用いて得られた制電性樹脂組成物(実施例27〜29)は、十分な透明性を有し且つ十分な制電性が付与されたものであることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0145】
以上説明したように、本発明によれば、制電性樹脂組成物に用いた場合において、十分な透明性を有し且つ十分な制電性が付与された制電性樹脂組成物を得ることが可能なグラフト共重合体粒子、それを効率よく且つ確実に製造することが可能なグラフト共重合体粒子の製造方法、並びに、それを用いた制電性樹脂組成物を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】実施例1で得られたグラフト共重合体粒子をリンタングステン酸/四酸化ルテニウムで染色した状態を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【図2】比較例1で得られたグラフト共重合体粒子をリンタングステン酸/四酸化ルテニウムで染色した状態を示す透過型電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキレンオキサイド基を有し且つエチレン系不飽和結合を有するアルキレンオキサイド基含有単量体(a)1〜50質量%と、共役ジエン及びアクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つのゴム状幹形成単量体(b)50〜99質量%とを含有する単量体組成物を共重合せしめて得られるゴム状幹重合体粒子(X)100質量部、前記ゴム状幹重合体粒子(X)に内包されている、スチレン系不飽和単量体(d)からなるスチレン系重合体粒子(Y)1〜100質量部、並びに
前記ゴム状幹重合体粒子(X)の表面に偏在している、第1のエチレン系不飽和単量体(e)からなるエチレン系重合体(Z)1〜500質量部、
を備えるグラフト共重合体粒子であり、且つ前記ゴム状幹重合体粒子(X)の平均粒子径x、前記スチレン系重合体粒子(Y)の平均粒子径y及び前記グラフト共重合体粒子の平均粒子径zが下記数式(F1)〜(F4):
20nm ≦ x ≦ 500nm ・・(F1)
5nm ≦ y ≦ 50nm ・・(F2)
50nm ≦ z ≦ 550nm ・・(F3)
y < x < z ・・(F4)
で表される条件を満たすことを特徴とするグラフト共重合体粒子。
【請求項2】
前記ゴム状幹重合体粒子(X)が、前記アルキレンオキサイド基含有単量体(a)1〜50質量%と、前記ゴム状幹形成単量体(b)50〜99質量%と、前記アルキレンオキサイド基含有単量体(a)及び前記ゴム状幹形成単量体(b)と共重合可能な第2のエチレン系不飽和単量体(c)0.05〜10質量%とを含有する単量体組成物を共重合せしめて得られるものであることを特徴とする請求項1に記載のグラフト共重合体粒子。
【請求項3】
アルキレンオキサイド基を有し且つエチレン系不飽和結合を有するアルキレンオキサイド基含有単量体(a)1〜50質量%と、共役ジエン及びアクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つのゴム状幹形成単量体(b)50〜99質量%とを含有する単量体組成物を共重合せしめてゴム状幹重合体粒子(X)を得る工程と、
前記ゴム状幹重合体粒子(X)に、前記ゴム状幹重合体粒子(X)100質量部に対して1〜500質量部の第1のエチレン系不飽和単量体(e)をグラフト共重合せしめることにより、前記ゴム状幹重合体粒子(X)の表面にエチレン系重合体(Z)を形成させてエチレン系重合体被覆ゴム状幹重合体粒子(XZ)を得る工程と、
前記エチレン系重合体被覆ゴム状幹重合体粒子(XZ)に、前記ゴム状幹重合体粒子(X)100質量部に対して1〜100質量部のスチレン系不飽和単量体(d)をグラフト共重合せしめることにより、前記ゴム状幹重合体粒子(X)の内部にスチレン系重合体粒子(Y)を形成させてグラフト共重合体粒子を得る工程と、
を含むことを特徴とするグラフト共重合体粒子の製造方法。
【請求項4】
アルキレンオキサイド基を有し且つエチレン系不飽和結合を有するアルキレンオキサイド基含有単量体(a)1〜50質量%と、共役ジエン及びアクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つのゴム状幹形成単量体(b)50〜99質量%とを含有する単量体組成物を共重合せしめてゴム状幹重合体粒子(X)を得る工程と、
前記ゴム状幹重合体粒子(X)に、前記ゴム状幹重合体粒子(X)100質量部に対して1〜100質量部のスチレン系不飽和単量体(d)をグラフト共重合せしめることにより、前記ゴム状幹重合体粒子(X)の内部にスチレン系重合体粒子(Y)を形成させてスチレン系重合体粒子含有ゴム状幹重合体粒子(XY)を得る工程と、
前記スチレン系重合体粒子含有ゴム状幹重合体粒子(XY)に、前記ゴム状幹重合体粒子(X)100質量部に対して1〜500質量部の第1のエチレン系不飽和単量体(e)をグラフト共重合せしめることにより、前記スチレン系重合体粒子含有ゴム状幹重合体粒子(XY)の表面にエチレン系重合体(Z)を形成させてグラフト共重合体粒子を得る工程と、
を含むことを特徴とするグラフト共重合体粒子の製造方法。
【請求項5】
前記ゴム状幹重合体粒子(X)を得るにあたり、前記アルキレンオキサイド基含有単量体(a)1〜50質量%と、前記ゴム状幹形成単量体(b)50〜99質量%と、前記アルキレンオキサイド基含有単量体(a)及び前記ゴム状幹形成単量体(b)と共重合可能な第2のエチレン系不飽和単量体(c)0.05〜10質量%とを含有する単量体組成物を共重合せしめることを特徴とする請求項3又は4に記載のグラフト共重合体粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のグラフト共重合体粒子と、該グラフト共重合体に対し相溶性を有する熱可塑性樹脂及び/又はアニオン系界面活性剤とを含有することを特徴とする制電性樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−106204(P2010−106204A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281960(P2008−281960)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】