説明

グリオキサル化N−ビニルアミン

本発明は、セルロース反応性官能化ポリビニルアミン第1付加物を含む組成物、セルロース反応性官能化ポリビニルアミン第1付加物およびセルロース反応性官能化ポリビニルアミド第2付加物の組み合わせを含む組成物、第1付加物および第2付加物ブレンドの製造法および最後に紙完成紙料中に組み入れるか、または紙もしくは板紙を前記付加物でコーティングすることによって、紙の湿潤強度または乾燥強度を増大させる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参考として本明細書で援用される、2007年11月5日に出願された米国特許仮出願第61/001,817号の利益を享受する。
【0002】
本発明は、セルロース反応性官能化ポリビニルアミン第1付加物を含む組成物、セルロース反応性官能化ポリビニルアミン第1付加物およびセルロース反応性官能化ポリビニルアミド第2付加物の組み合わせを含む組成物、第1付加物および第2付加物ブレンドを製造する方法ならびに最後に完成紙料中に組み入れることによるか、または紙もしくはボードを前記付加物でコーティングすることによって、紙の湿潤強度もしくは乾燥強度を増大させる方法に関する。
【0003】
ポリビニルアミン
ポリビニルアミンおよび製造方法は、文献において周知である。ポリビニルアミンは、典型的には、N−ビニルホルムアミドポリマーを部分加水分解することによって製造される。たとえば、全体的に参考として本明細書で援用される、米国特許第4,421,602号、第6,576,086号、第6,616,807号、第5,290,880号、第6,159,340号、第7,034,068号および第6,797,785号を参照。形成されたポリビニルアミンは、紙の形成において保持および排出を向上させることで知られている。製紙機上のストックの排出が速いと、機械の速度をあげることが可能になり、したがって生産量を増大させることが可能になる。
【0004】
官能化および架橋ポリビニルアミンも文献において周知である。たとえば、全体が参考として本明細書で援用される米国特許第7,090,745号は、第1および/または第2アミンを含む親水性ポリマーならびにアルデヒドまたはヘミアセタールなどの還元性官能基を含む少なくとも1つの糖を記載している。結果として得られるヒドロゲルは、紙の強度を増大させるとされる。
【0005】
米国特許第5,281,307号は、架橋ポリビニルアルコール/ビニルアミンを開示している。架橋コポリマーを、従来の製紙方法のドライエンドステップで添加する。
【0006】
米国特許第6,824,659号は、紙の湿潤強度特性を改善するためのポリビニルアミンと錯化剤との組み合わせを開示している。錯化剤は、グリオキサル化ポリアクリルアミドであってよい。
【0007】
米国公開出願第2006/0065380号および第2004/0118540号も、紙の湿潤強度特性を改善する目的のポリビニルアミンとグリオキサル化ポリアクリルアミドとの組み合わせを開示している。
【0008】
グリオキサル化ビニルアミドポリマー
紙および板紙を補強するための、合成水溶性ポリマーのウェットエンド添加剤としての使用は、広く実施されている。セルロース反応性水溶性ビニルアミドコポリマーの紙補強剤としての使用も一般的である。ビニルアミドポリマー補強助剤の一種には、熱硬化するようにグリオキサールで修飾されるビニルアミドポリマーが含まれる。
【0009】
グリオキサル化ビニルアミドポリマーは、たとえば、全体的に参考として本明細書で援用される、米国出願第3,556,392号、第4,217,425号、第4,605,702号に記載されている。
【0010】
PCT公開出願第2006/016906号は、紙に強度を付与するためにグリオキサールなどのセルロース反応性剤で処理されるカチオン性ビニルアミド架橋ポリマーを記載している。
【0011】
参考として本明細書で援用される米国出願第4,954,538号、第5,041,503号および第5,320,711号は、逆相マイクロエマルジョン重合によって製造される架橋性グリオキサル化ポリビニルアミドの微粒子を教唆し、このマイクロエマルジョンポリマーにグリオキサールを添加して、グリオキサル化ポリマーを形成することを記載している。
【0012】
全体的に参考として本明細書で援用される米国公開出願第2008/0064819号は、グリオキサールなどのセルロース反応性剤のポリビニルアミドとの水性反応を教唆している。この反応は、低ポリビニルアミド濃度で行われる。記載される反応条件によって、紙の湿潤および乾燥強度を改善することが示されるセルロース反応性ポリビニルアミド付加物が得られる。
【0013】
発明者は、ポリビニルアミンの少なくともジアルデヒドとの反応によって、改善された湿潤および/または乾燥強度を有する紙または板紙を与える官能化ポリビニルアミンが産生されることを見いだした。
【0014】
さらに、ポリビニルアミンおよびポリビニルアミドの両方をセルロース反応性剤、たとえばグリオキサールで同時に官能化することによって、少なくとも第1および第2付加物を得、これらは完成紙料に適用されるか、または紙または板紙コーティングとして供給される場合に、予想外の湿潤および/または乾燥強度をもたらすことも見いだされた。
【0015】
さらに、米国公開出願第2008/0064819号で開示されているセルロース反応性官能化ポリビニルアミドは、ポリビニルアミン(非官能化)と組み合わせ、同時に完成紙料に添加(または同時であるが、別々に添加)するか、または紙もしくは板紙上にコーティングした場合も、紙または板紙に湿潤および/または乾燥強度を改善することも見いだされた。
【0016】
米国公開出願第2008/0064819号のポリビニルアミン(非官能化)とグリオキサル化ポリビニルアミド生成物とから形成されるプレ混合物は、特に、多量のアニオン性夾雑物(ピッチ、粘着性物質、白色ピッチ等)を含む製紙システムにおいて、グリオキサル化生成物の性能を増進し得る。
【0017】
製紙方法において完成紙料に添加する前にポリビニルアミン(グリオキサル化もしくは非グリオキサル化)を標準的グリオキサル化ポリビニルアミドと予備混合すること(すなわち、米国出願第3,556,392号、第4,217,425号、第4,605,702号)によっても、多量のアニオン性夾雑物を含む製紙システムにおける性能が増強されることも考えられる。
【0018】
理論によって拘束されることを望まないが、高荷電カチオン性ポリマー(ポリビニルアミン)は、低荷電カチオン性ポリマー(たとえば、カチオン性グリオキサル化ポリビニルアミド)と組み合わせた場合に、製紙システム中のアニオン性夾雑物が低荷電カチオン性ポリマーと干渉することを「阻止」し、したがって、低荷電カチオン性ポリマーはより有効に作用し得る。
【0019】
このように、本発明はいくつかの組成例を包含する:
本発明は、請求項1に記載される特性を有するセルロース反応性ポリビニルアミン第1付加物組成物、請求項7に記載される特性を有するセルロース反応性第1および第2付加物の予備混合ブレンド、少なくとも、請求項9に記載される特性を有する第1および第2付加物のブレンド、請求項15もしくは17に記載される特性を有する紙または板紙、請求項18に記載される特性を有するセルロース反応性官能化ポリビニルアミン第1付加物の製造法、請求項19または20に記載される特性を有する紙または板紙の湿潤強度または乾燥強度を増大させる方法を提供する。さらなる従属クレームは、好適な実施形態を示す。
【0020】
第1に、本発明は、第1付加物を形成するための、出発ポリビニルアミンの少なくともジアルデヒドとの反応生成物を含むセルロース反応性ポリビニルアミン第1付加物である。
【0021】
付加物は、好ましくは、アルデヒドまたはヘミアセタールなどの還元性官能基を含む糖の付加物でない。さらに、出発ポリビニルアミンは、典型的には、少なくとも部分的に加水分解されて、ホルムアミドもしくはアセトアミド基が切断されたN−ビニルホルムアミドもしくはN−ビニルアセトアミドのポリマーまたはコポリマーであり、これらはジアルデヒドとの反応前にポリマーにある程度の第1アミノ官能基を付与する。
【0022】
N−ビニルホルムアミドもしくはN−ビニルアセトアミドの部分加水分解されたポリマーまたはコポリマーは、好ましくはビニルアルコールモノマー単位を組み入れない。
【0023】
したがって、部分加水分解された出発ポリビニルアミンは、N−ビニルホルムアミドもしくはN−ビニルアセトアミドのポリマーまたはコポリマーであり、アミン官能基ならびにアミド官能基によって特徴づけられる。少なくとも部分加水分解されたN−ビニルホルムアミドもしくはN−ビニルアセトアミド上のアミド官能基およびアミン官能基を次にジアルデヒドと反応させて、出発ポリビニルアミン上にアミドおよびアミン付加物の複雑な混合物を形成することができる。
【0024】
したがって、本発明のセルロース反応性ポリビニルアミン付加物(第1付加物)という場合、その意味するものは、少なくともジアルデヒドと反応して、複雑な混合物を形成する、少なくとも部分加水分解されたN−ビニルホルムアミドまたはN−ビニルアセトアミドからなる群から選択されるセルロース反応性コポリマーである。
【0025】
第1付加物の形成は、たとえば、第1および第2付加物反応中の任意の段階で、反応混合物の約4質量%未満、好ましくは約3.5質量%未満、最も好ましくは約3質量%未満、特に約2または1.5質量%未満である反応生成物の形成中に出発ポリビニルアミン濃度で行われる。
【0026】
前記の第1付加物組成物は、セルロース反応性官能化ポリビニルアミド第2付加物をさらに含んで、ブレンドを形成することができる。ただし、第1および第2セルロース反応性付加物は異なるとする。
【0027】
加えて、ポリビニルアミン(前記の未処理または第1付加物)およびセルロース反応性ポリビニルアミドをプレミックスとして、好ましくは水性プレミックスとして組み合わせることが想定される。プレミックスをセルロース性完成紙料に添加するか、または湿潤紙または板紙にコーティングとして添加することができる。ポリビニルアミンおよびポリビニルアミドは異なる。
【0028】
したがって、セルロース反応性第1および第2付加物のプレミックスブレンド(ここで、第1付加物は前記で定義のとおり)が本発明に含まれる。さらに具体的には、セルロース反応性第2付加物は、出発ポリビニルアミドと少なくともジアルデヒドとの反応生成物であり、この場合、出発ポリビニルアミドは、少なくとも(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミドもしくはその混合物から形成されるポリマーまたはコポリマーである。
【0029】
好ましくは、この第2付加物は、グリオキサールなどのジアルデヒドと反応させた(メタ)アクリルアミドおよびジアリルジメチルアンモニウムクロリドのコポリマーである。
【0030】
第1および第2付加物を、別々に形成し、次いでプレミックス、好ましくは水性プレミックスに組み合わせることができる。プレミックスブレンドを次いで完成紙料に添加することができるか、またはコーティングとして紙または板紙上に添加することができる。
【0031】
プレミックスブレンドは、たとえば、グリオキサル化ポリビニルアミンおよびグリオキサル化ポリビニルアミドとしてそれぞれ定義することができる第1および第2付加物を含み得る。
【0032】
グリオキサル化ポリビニルアミンは、ジアルデヒド(グリオキサール)を、N−ビニルホルムアミドまたはN−ビニルアセトアミドから形成される出発ポリビニルアミンと反応させることによって形成され、前記ポリビニルアミンは、ジアルデヒド(グリオキサール)との反応前に、ある程度の第1アミノ官能基を付与するために少なくとも部分加水分解されている。グリオキサル化ポリビニルアミドは、ジアルデヒド(グリオキサール)を、エチレン性不飽和アミド、たとえば(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミドまたはこれらの混合物を反応させることによって形成される出発ポリビニルアミドと反応させることによって形成される。
【0033】
セルロース反応性剤は、好ましくはジアルデヒドである。
【0034】
加えて、付加物の前記ブレンドを同時に形成することができる。すなわち、第1および第2付加物反応は、同じ反応混合物内で同時に行うことができる。ポリビニルアミドとポリビニルアミンとはどちらもジアルデヒドと反応性であるので、これらの反応はあわせて(同じポット中で)第1および第2付加物を同時に形成するだけでなく、ポリビニルアミドおよびポリビニルアミンポリマーの架橋生成物を形成する可能性が非常に高く、少なくとも3つの異なる付加物を形成する。
【0035】
本発明の付加物の特に好適な水性ブレンドが形成され、この場合、第1および第2付加物の両方の反応は同時に行われ、反応生成物の形成中の出発ポリビニルアミドおよび出発ポリビニルアミンの両方の濃度は、第1および第2付加物反応中の任意の段階で、反応混合物約4質量%未満、好ましくは約3.5質量%未満、および最も好ましくは約3質量%未満、および特に約2または1.5質量%未満である。たとえば、付加物反応は、ポリビニルアミドおよびポリビニルアミンの合計濃度の2.5、2または1.0質量%で行うことができる。
【0036】
さらに明確に説明するために、50/50質量の出発ポリマー混合物と仮定すると、反応生成物形成中のポリビニルアミドの濃度は2質量%であり、ポリビニルアミドの濃度も2質量%であり、出発ポリマーの合計濃度は4質量%となる。したがって、これらの濃度は、合計濃度を意味し、個々の成分の濃度を意味するのではない。すなわち、3%とは、50/50混合物と仮定した場合、1.5%のポリビニルアミンおよび1.5%のポリビニルアミドを意味する。
【0037】
出発ポリビニルアミドは、たとえば、ジアルデヒドとの反応前の(メタ)アクリルアミドもしくはN−(メタ)アクリルアミドから形成されたポリマーまたはコポリマーとして定義される。
【0038】
出発ポリビニルアミンは、たとえば、ジアルデヒドとの反応前のN−ビニルホルムアミドもしくはN−ビニルアセトアミドの少なくとも部分加水分解されたポリマーまたはコポリマーとして定義される。
【0039】
出発ポリビニルアミンは、出発ポリビニルアミドとは異なる。
【0040】
このように、本発明は、少なくとも第1および第2付加物のブレンドを包含し、この付加物は、ポリビニルアミンおよびポリビニルアミドの混合物をジアルデヒドと反応させることによって形成され、この場合、ポリビニルアミンは、N−ビニルホルムアミドまたはN−ビニルアセトアミドから形成されるポリマーであって、このポリマーは、ジアルデヒドとの反応前にある程度の第1アミノ官能基を付与するために少なくとも部分加水分解され、ポリビニルアミドは、(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリルアミドまたはこれらの混合物などのエチレン性不飽和アミドから形成されるポリマーである。
【0041】
出発ポリビニルアミンと出発ポリビニルアミドポリマーとは互いに異なる。
【0042】
第1付加物または上記付加物のブレンドを製紙方法のウェットエンドにおいて紙または板紙に添加する、前記第1付加物またはブレンドを組み入れた紙または板紙も想定される。
【0043】
本発明は、第1付加物を製造するため、および付加物のブレンドを製造するためのいくつかの方法でもある:
セルロース反応性官能化ポリビニルアミン第1付加物の製造法は、
出発ポリビニルアミンおよびセルロース反応性剤を反応させるステップ、および
第1付加物を形成するステップ(ここで、出発ポリビニルアミンは、少なくとも部分加水分解されたN−ビニルホルムアミドまたはN−ビニルアセトアミド(コ)ポリマーから形成され、セルロース反応性剤は少なくともジアルデヒドである)を含む。
【0044】
部分加水分解されたN−ビニルホルムアミドまたはN−ビニルアセトアミドポリマー(出発ポリビニルアミン)が、部分加水分解されたN−ビニルホルムアミドもしくは部分加水分解されたN−ビニルアセトアミドもしくはこれらの混合物からなる群から形成されるホモポリマーまたはコポリマーであり、ジアルデヒドが糖、単糖または多糖でないことが好適である。
【0045】
a)セルロース性繊維の水性スラリーを提供するステップ;
b)セルロース反応性ポリビニルアミン第1付加物または第1および第2付加物のブレンドを水性スラリーに添加するステップ;
c)ステップb)で形成された水性スラリーからウェブを形成するステップ;
および
d)ウェブを乾燥するステップ
を含む、紙または板紙の湿潤強度または乾燥強度を増大させる方法。
【0046】
紙または板紙の湿潤強度または乾燥強度を増大させる方法は、
a)前記の第1付加物または第1および第2付加物のブレンドを湿潤ウェブ、紙もしくは板紙上に噴霧、コーティング、または他の方法で適用し;および
b)コーティングされた湿潤ウェブ、紙または板紙を乾燥することによっても達成することができる。
【0047】
第1および第2付加物またはブレンドは、ウェットエンドで添加されるか、またはコーティングとして紙上に適用されるかどうかにかかわらず、プレミックスとして添加することができる。したがって、両付加物を、物理的に組み合わせてブレンド(プレミックス)にすることができるか、または別々であるが同時に製紙方法のウェットエンドで、またはコーティングとして紙または板紙上に添加することができる。
【0048】
本発明の目的に関して、ポリビニルアミンのアミン基とグリオキサールとの反応またはポリビニルアミドのアミド基の反応は、本出願においては、「グリオキサル化反応」または単に「グリオキサル化」と称する。前記グリオキサル化反応の生成物は、グリオキサル化ポリビニルアミン第1付加物またはグリオキサル化ポリビニルアミド第2付加物またはただ単に付加物と称する。
【0049】
「触媒されたグリオキサル化反応」という用語は、物理的または化学的条件によって、反応が中程度から加速速度で進行するような環境で行われるグリオキサル反応を意味し、所望の反応は、約12時間未満、またはさらに好ましくは6時間未満、3時間未満またはさらには約1時間未満で得られる。好ましくは、ポリビニルアミドのグリオキサル化反応は、アルカリ性条件下または塩基もしくは塩基性緩衝液を添加して行われる。
【0050】
グリオキサールとのポリビニルアミン反応は、塩基性、中性、または酸性条件下で行うことができる。
【0051】
ポリビニルアミンおよび/またはポリビニルアミド間のグリオキサル反応は、逆エマルジョン、マイクロエマルジョンまたは実質的に水性反応混合物中で起こり得る。付加物形成の好適な方法は、実質的に水性溶液中である。
【0052】
逆エマルジョンまたはマイクロエマルジョン技術による製造は、当該技術分野で周知であり、全体が参考として本明細書で援用される米国出願第4,954,538号、第5,041,503号および第5,320,711号で詳細に記載されている。
【0053】
このような逆エマルジョンまたはマイクロエマルジョンは、約25nm〜約2000nmの範囲の粒子サイズを示す。
【0054】
本発明に関して「水性反応混合物」という用語は、付加物形成が有機油状物の実質的非存在下で行われ得ることを意味する。たとえば、油相と水相との両方を含む逆マイクロエマルジョン中で、ビニルアミドポリマーをグリオキサル化することは既知である。油相は、少なくとも1つの炭化水素を含む。典型的には、油相は、鉱油、トルエン、燃料油、灯油、無臭の石油スピリット、または混合物などを含む。これらの従来技術の方法における油状物の質量は、多くの場合、形成されるポリマーの質量を超える。したがって、本発明に関して、付加物形成は、有機油状物の存在がビニルアミドまたはビニルアミンポリマーの質量を超えず、好ましくは油状物質量が、ビニルアミドまたはビニルアミンポリマーの50質量%を越えず、最も好ましくは第1もしくは第2付加物形成中に有意な量の油状物は存在しない、「実質的水性反応混合物」中で行うことができる。実質的水性とは、油状物がビニルアミドまたはビニルアミンポリマーの20質量%以下を構成し、好ましくは10質量%未満、または約5質量%未満、または約1、0.5もしくは0.1質量%未満であることを意味する。
【0055】
付加物形成は、典型的には、完成紙料および/または紙基体の非存在下で起こる。換言すれば、付加物形成は、製紙方法のウェットエンドまたはドライエンドにおいて適用する前に起こり得る。
【0056】
本発明に関する分子量は、質量平均分子量(M)を意味する。
【0057】
水中に可溶性または混和性である他の物質が、第1付加物および/または第2付加物を形成するための水性反応混合物中にさらに存在してもよい。キレート剤、電解質、たとえば塩化ナトリウム、界面活性剤および極性溶媒、たとえばメタノールが反応混合物中に存在してもよい。低分子量カチオン性ポリマーも反応混合物中に存在してもよく、たとえば、ポリDADMACが存在してもよい。無機カチオン性凝集剤、たとえば、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウムおよびアルミニウムクロロハイドレートなどが存在してもよい。
【0058】
「ポリビニルアミン」および「ポリビニルアミド」という用語は、セルロース反応性剤を用いた官能化前の出発ポリマーを意味する。官能化前の出発ポリビニルアミンまたはポリビニルアミドは、ホモポリマーまたはコポリマーであり得る。
【0059】
出発ポリビニルアミンは、すでに説明したようなアミドおよびアミン官能基を含む。明確にするために、出発ポリビニルアミンは部分加水分解されたN−ビニルホルムアミドまたはN−ビニルアセトアミドから形成され、出発ポリビニルアミドは(メタ)アクリルアミドまたはN−アルキル(メタ)アクリルアミドから形成されるので、出発ポリビニルアミンは出発ポリアミドから区別される。このように、2つの出発ポリマーは異なる。
【0060】
本発明に関するコポリマーは、2以上のモノマーから形成されるポリマーである。
【0061】
本発明に関して「モノマー」という用語は、重合させることができるエチレン性不飽和化合物を意味する。
【0062】
本発明に関して「モノマー単位」という用語は、重合後にポリマー中に組み入れられたモノマーを意味する。
【0063】
「第1付加物」という用語が本出願内で言及される場合、これは、少なくともジアルデヒドとポリビニルアミンとの反応生成物を意味する。
【0064】
「第2付加物」という用語が本出願内で言及される場合、これは、少なくともジアルデヒドとポリビニルアミドとの反応生成物を意味する。
【0065】
「ブレンド」は、少なくともジアルデヒドとポリビニルアミンとの反応生成物、および少なくともジアルデヒドとポリビニルアミドまたはポリビニルアミンのブレンドとの反応生成物、および少なくともジアルデヒドとポリビニルアミドとの反応生成物のブレンドを意味する。
【0066】
本発明に関して前混合されたブレンドとは、第1および第2付加物の両方の直接混合物、または製紙方法に添加する前のポリビニルアミン(非官能化)および第2付加物のブレンドを意味する。前混合されたブレンドを次いで完成紙料に直接添加するか(ウェットエンド添加)、あるいは紙または板紙のコーティング(ドライエンド添加)中に組み入れるかのいずれかで添加することができる。
【0067】
ポリビニルアミン
出発ポリビニルアミンは、数モル%のホルミルまたはアセトアミド基が加水分解されてポリビニルアミンが形成された、N−ビニルホルムアミドもしくはN−ビニルアセトアミドのホモポリマーまたはコポリマーであり得る。加水分解の程度は、約1〜約100モル%または約5〜約95モル%またはさらには約10〜約90モル%で変化し得る。たとえば、ホルミル基の30モル%が加水分解された商業的N−ビニルホルムアミドポリマーが入手可能である。ポリビニルアミンは、最も典型的には、ポリビニルアミンを得るために加水分解されたN−ビニルホルムアミドポリマーであり、この場合、アミンのモル%は約1〜約100モル%、約10〜約100モル%、約20〜約100モル%、約30〜約100モル%、約40〜約95モル%または約50〜約95モル%の範囲である。
【0068】
ポリビニルアミンのアミン含有物は、セルロース反応性剤またはグリオキサール置換基が結合した部位を提供する。ポリビニルアミン上の残りの未加水分解アミド部位を官能化することも可能である。
【0069】
部分加水分解されたN−ビニルホルムアミドポリマーがコポリマーであることも可能である。
【0070】
たとえば、好適なモノエチレン性不飽和モノマーを、N−ビニルカルボキサミドと共重合させることができる。これらの好適なモノエチレン性不飽和モノマーは、1〜6個の炭素原子を有する飽和カルボン酸のビニルエステル、たとえばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルおよび酪酸ビニル、ならびにビニルエーテル、たとえばC−C−アルキルビニルエーテル、たとえばメチルもしくはエチルビニルエーテルからなる群から選択することができる。
【0071】
部分加水分解されたN−ビニルホルムアミドまたはN−ビニルアセトアミドがポリビニルアルコールモノマー単位を含まないのが好適である。
【0072】
ビニルアルコール単位は、典型的には、ポリビニルアルコールを得るために加水分解された酢酸ビニル(プロピオン酸ビニル等)から形成されるポリマーから誘導される。
【0073】
さらなる好適なコモノマーは、エチレン性不飽和C−Cカルボン酸、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸およびビニルエステル酸、ならびにこれらのアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩、前記カルボン酸のエステル、アミドおよびニトリル、たとえば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレートおよびエチルメタクリレートである。さらなる好適なカルボン酸エステルは、それぞれの場合で1つのOH基だけがエステル化されたグリコールまたはポリアルキレングリコールから誘導され、たとえば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートおよび500〜10,000のモル質量を有するポリアルキレングリコールのアクリル酸モノエステルである。さらなる好適なコモノマーは、エチレン性不飽和カルボン酸のアミノアルコールとのエステル、たとえば、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジエチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノブチルアクリレートおよびジエチルアミノブチルアクリレートである。塩基性アクリレートを、遊離塩基の形態、鉱酸、たとえば、塩酸、硫酸もしくは硝酸との塩の形態、有機酸、たとえばギ酸、酢酸もしくはプロピオン酸との塩の形態、またはスルホン酸の塩の形態、あるいは四級化形態で用いることができる。好適な四級化剤は、たとえば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、塩化メチル、塩化エチルおよび塩化ベンジルである。
【0074】
N−ビニルホルムアミドに関して行われる加水分解反応は、酸、塩基または酵素の作用により、既知方法によって行われる。たとえば、米国出願第4,421,602号、第5,290,880号および第6,797,785号を参照。
【0075】
ポリビニルアミン(グリオキサル化前)の平均分子量は、1,000〜10,000,000、好ましくは10,000〜5,000,000ダルトンである(光散乱によって測定)。これは、たとえば、5〜300、好ましくは10〜250のK値(5%強度の水性塩化ナトリウム溶液中、25℃、0.5質量%のポリマー濃度で、H. Fikentscherにしたがって測定)に対応する。
【0076】
ジアルデヒドとの反応前の出発ポリビニルアミンの平均分子量は、25,000超であり得る。
【0077】
ポリビニルアミン(グリオキサル化前)の典型的なMwは、約25,000〜約500,000で変化し得る。たとえば、約200,000〜約400,000または150,000〜約400,000の範囲であり得る。ポリビニルアミンのMwは、約25,000〜約400,000で変化し得る。
【0078】
出発ポリビニルアミンポリマーまたは形成された第1付加物は、架橋、分岐もしくは他の構造または直鎖であり得る。たとえば、出発ビニルアミンポリマーまたは形成されたビニルアミンポリマー付加物は、直鎖、架橋、連鎖移動、または架橋および連鎖移動(構造)であり得る。
【0079】
可能な架橋剤は、たとえば以下に記載するものである。
【0080】
ポリビニルアミド
ポリビニルアミドは、通常、アミド官能基を含有するモノマーから形成される。好適なビニルアミドモノマーは、(メタ)アクリルアミド、C1−4一置換(メタ)アクリルアミド、たとえばN−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミドである。最も好適なビニルモノマーは、アクリルアミドおよびメタクリルアミドである。
【0081】
(メタ)アクリルアミドという用語は、アクリルアミドとメタクリルアミドとの両方を包含する。
【0082】
本発明のポリマーのビニルアミド含有物は、セルロース反応性剤またはジアルデヒドが結合する部位を提供する。存在するビニルアミド単位の最低割合は、グリオキサル化ポリマーが熱硬化し、その結果、グリオキサル化ポリマーが水溶液からガラス板上に載せて5分間約105℃で加熱した場合に水不溶性フィルムが形成されるために十分でなければならない。
【0083】
このように、ビニルアミドポリマー(グリオキサル化前)は、少なくとも約10質量%ビニルアミドモノマーから形成されなければならない。好ましくは、ビニルアミドポリマーは、少なくとも約20〜約100質量%のビニルアミドモノマーから形成される。たとえば、ビニルアミドポリマーは、少なくとも約20〜約99質量%、少なくとも約25〜約90質量%ビニルアミドモノマー、または少なくとも約50質量%。最も好ましくは少なくとも約70質量%ビニルアミドモノマーから形成される。質量%は、ビニルアミドポリマーを形成するために添加されるモノマーの合計質量に基づく。
【0084】
モノマーは一旦重合すると、ポリマー中に組み入れられた単位となる。
【0085】
したがって、本発明のポリマー中には、このポリマーにイオン特性を付与し得る単位、あるいは希釈剤もしくはスペーサーとして作用するか、または特別な特性、たとえば改善された水溶性もしくは低水溶性を付与するものが存在し得る。
【0086】
ビニルアミドモノマーと併せて使用できるイオン性コモノマーは、カチオン性、潜在的カチオン性、アニオン性、潜在的アニオン性または両性であり得る。カチオン性コモノマーを使用する場合、1以上のカチオン性モノマーを使用でき、カチオン性モノマーの合計量は、ビニルアミドコポリマーのグリオキサール付加物が水性懸濁液中、セルロース繊維に対して自己持続的であるようなものでなければならない。
【0087】
カチオン性電荷はセルロース繊維に対して持続性を与えるので、カチオン性コモノマーが特に好適である。
【0088】
好適なカチオン性モノマーもしくは潜在的カチオン性モノマーとしては、ジアリルジアルキルアミン、2−ビニルピリジン、2−(ジアルキルアミノ)アルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド(その酸付加塩および第四アンモニウム塩を含む)が挙げられる。かかるカチオン性モノマーもしくは潜在的カチオン性モノマーの具体例は、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、塩化メチル第四級塩)、2−ビニル−N−メチルピリジニウムクロリド、(p−ビニルフェニル)−トリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリレート2−エチルトリメチルアンモニウムクロリド、1−メタクリロイル−4−メチルピペラジン、マンニッヒポリアクリルアミド、すなわちN−(ジメチルアミノメチル)および(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドを得るためにジメチルアミンホルムアルデヒド付加物と反応させたポリアクリルアミドである。
【0089】
潜在的カチオン性モノマーは、たとえば、潜在的カチオン性モノマー上のアミン官能基がプロトン化されている場合などの酸性条件下で、カチオン性電荷を与えるモノマーであり得る。
【0090】
カチオン性コモノマーの量は、約0%〜約90質量%,約0.1〜約50質量%、約0.1〜約40、約0.1〜約30、約0.1〜約25質量%または約0.1〜約15もしくは約10質量%の範囲であり得る。質量%は、ビニルアミドポリマーを形成するために添加されるモノマーの合計質量に基づく。
【0091】
さらに、ビニルアミドモノマーを、ビニル第三アミン、たとえばジメチルアミノエチルアクリレートもしくはビニルピリジンと共重合させることができる。第三アミン基を次に、塩化メチル、硫酸ジメチル、もしくは塩化ベンジルとの反応によって第四アンモニウム基に変換して、カチオン性ポリマーを生成させることができる。さらに、ポリアクリルアミドを、グリシジルジメチルアンモニウムクロリドとの反応によって、部分的にカチオン性にすることができる。
【0092】
好適なアニオン性モノマーは、ビニル酸性物質、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、イタコン酸、フマル酸、潜在的アニオン性モノマー、たとえば無水マレイン酸および無水イタコン酸ならびにこれらのアルカリ金属およびアンモニウム塩、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸およびその塩、スチレンスルホン酸ナトリウムなどから選択することができる。あるいは、出発ビニルアミドポリマーがポリアクリルアミドであるならば、部分的に加水分解して、ある程度のアニオン性特性を得、次いでセルロース反応性剤を用いて官能化することができる。
【0093】
潜在的アニオン性モノマーは、たとえばアクリルアミドであり得、これは、部分的に加水分解される場合、塩基性条件下でポリマーにアニオン性特性を付与し得る酸を形成する。あるいは、潜在的アニオン性モノマーは、例えば無水マレイン酸もしくは無水イタコン酸などの無水モノマーであってよく、これを加水分解して、対応する酸を形成できる。
【0094】
前述のように、ポリビニルアミドポリマーは両性であり得る。すなわち、ポリマーは、アニオン性およびカチオン性官能基を含み得る。両性ビニルアミドポリマーは、アニオン性モノマーとカチオン性モノマーとの両方から、あるいは双性イオン性モノマーから形成することができる。様々なモノマー(アニオン性、カチオン性および/または双性イオン性)を任意の質量比で反応させて、両性ビニルアミドポリマーを形成することができる。形成された両性ビニルアミドポリマー上の主要な電荷がカチオン性であることが好適である。したがって、カチオン性モノマーのモル%は、両性ビニルアミドポリマー中に組み入れられたアニオン性モノマーのモル%を支配する。
【0095】
ビニルアミド以外の好適な非イオン性モノマーは、(メタ)アクリルエステル、たとえばオクタデシル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレート;N−アルキルアクリルアミド、N−オクチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、例えばN,N’−ジメチルアクリルアミド;スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシアルキルアクリレートおよびメタクリレート、たとえば2−ヒドロキシエチルアクリレートおよびアクリロニトリルからなる群から選択することができる。
【0096】
出発ポリビニルアミドポリマーまたは形成される第2付加物は、架橋、分岐もしくは他の構造または直線状であり得る。たとえば、出発ビニルアミドポリマーまたは形成されるビニルアミドポリマー付加物は、直線状、架橋、連鎖移動、または架橋&連鎖移動(構造)であり得る。
【0097】
架橋剤は、通常、ポリエチレン性不飽和架橋剤である。例は、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルアンモニウムクロリド;テトラアリルアンモニウムクロリド、ポリエチレングリコールジアクリレート;ポリエチレングリコールジメタクリレート;N−ビニルアクリルアミド;ジビニルベンゼン;テトラ(エチレングリコール)ジアクリレート;ジメチルアリルアミノエチルアクリレートアンモニウムクロリド;ジアリルオキシ酢酸、ナトリウム塩;ジアリルオクチルアミド;トリメチルプロパンエトキシレートトリアクリレート;N−アリルアクリルアミドN−メチルアリルアクリルアミド、ペンタエリトリトールトリアクリレートおよびこれらの組み合わせである。他の架橋系をこのかわりに、またはこれに加えて用いることができる。例えば、ペンダント基を介した共有結合性架橋は、例えばエチレン性不飽和エポキシまたはシランモノマーを使用するか、または、多官能性架橋剤、たとえばシラン、エポキシ、多価金属化合物または他の既知架橋系を使用することによって得ることができる。
【0098】
連鎖移動剤を用いて、出発ビニルアミドまたはビニルアミンポリマーを合成することができる。好適な連鎖移動剤は、2−メルカプトエタノール;低分子量有機酸、たとえば乳酸、ギ酸、リンゴ酸または酪酸;イソプロピルアルコール;チオ酸および次亜リン酸塩である。
【0099】
その後グリオキサル化することができるポリビニルアミドを合成した後、ビニルアミドモノマーおよび場合によって1以上のイオン性コモノマーまたは非イオン性コモノマーのフリーラジカルまたはレドックス触媒重合によってグリオキサル化する。複数の重合性ビニル官能基を有する架橋剤も配合物中に含めて、骨格ポリマーに構造を付与することができる。連鎖移動剤、たとえば次亜リン酸ナトリウムを用いて、ポリマー分子の分子量を制御し、また分岐を導入することができる。
【0100】
水溶性出発ポリビニルアミドポリマーは、任意の好適な重合方法によって形成することができる。
【0101】
ジアルデヒドを用いた処理前のポリビニルアミドの平均分子量は、500〜約5,000,000の範囲であるか、またはさらには10,000,000ダルトンであり得る。たとえば、平均分子量は、25,000超であり得、さらに好ましくは約50,000〜約200,000、約25,000〜約100,000、200,000、300,000、400,000または500,000であり得る。
【0102】
ブレンド
本発明に含まれるいくつかのブレンドがある:
前記定義の第1付加物および第2付加物のブレンド。付加物を別々に作製し、次いで合して水性プレミックスにすることができる。付加物は、同時に作製し、水性プレミックスとしてセルロース性完成紙料に添加するか、またはコーティングとして紙または板紙に添加することもできる。
【0103】
非官能化ポリビニルアミンのグリオキサル化ポリビニルアミドと組み合わせたブレンドも可能である。
【0104】
非官能化ポリビニルアミンは、付加物を形成するためにジアルデヒドで処理されていないポリビニルアミンである。
【0105】
第1および第2付加物は、いくつかの共通のモノマーから形成することができるが、典型的には、第1および第2付加物は、前述のように異なるポリマーから形成される。第1および第2付加物の質量比は、1:10〜10:1まで変化し得る。しかし、最も典型的には、付加物の質量比は、約1:5〜5:1、約1:4〜4:1、約1:3〜3:1および約2:1〜1:2で変化する。
【0106】
ポリビニルアミン(グリオキサル化もしくは非グリオキサル化)のグリオキサル化ポリビニルアミドとのブレンドを、付加物ブレンドについて示唆されているようにして合することができる。
【0107】
セルロース性反応性ポリビニルアミンおよびポリビニルアミドのブレンド、出発ポリビニルアミン(ジアルデヒドでの処理前)および出発ポリビニルアミド(ジアルデヒドでの処理前)の平均分子量に関して、各ポリマーは独立して異なる分子量によって特徴づけることができる。たとえば、ポリビニルアミンは、約200,000〜約500,000の平均分子量を有し、ポリビニルアミドは約50,000〜約150,000の平均分子量を有し得る。
【0108】
ポリビニルアミンは、ポリビニルアミドよりも平均分子量が低くてもよいし、または高くてもよい。
【0109】
セルロース反応性剤
セルロース反応性剤は、少なくともジアルデヒド官能基を有する化合物を含む。
【0110】
セルロース反応性試薬は、グリオキサール、グルタルアルデヒド、フランジアルデヒド、2−ヒドロキシアジポアルデヒド、スクシンアルデヒド、ジアルデヒドデンプン、ジエポキシ化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0111】
グリオキサールが好適なセルロース反応性試薬である。
【0112】
アミド(ポリビニルアミドポリマー基準)のセルロース反応性剤に対するモル比は、約12:1〜約2:1、たとえば、約10:1〜約2.5:1、約6:1〜約2.5:1および約6:1〜約3:1で変化する。
【0113】
アミン(ポリビニルアミンポリマー上)のセルロース反応性剤に対するモル比は、約1:4〜15:1まで変化する。さらに典型的には、2:1〜10:1モル比のアミン対セルロース反応性剤比が想定される。
【0114】
反応条件
第1および第2付加物形成両方の反応条件は、好ましくは実質的に水性である。しかし、逆エマルジョンも想定される。
【0115】
塩基添加、すなわちpHを7より高くすることは、ポリビニルアミドのグリオキサル化反応を触媒する最も一般的な方法である。好ましくは、7〜13のpH範囲が一般的に反応の触媒的環境であると見なされる。たとえば、8〜12のpH範囲が特に適切である。
【0116】
ポリビニルアミンポリマーは、広いpH範囲にわたってグリオキサールと反応し、塩基触媒されることを必要とし得ない。したがって、ポリビニルアミンの反応は、塩基性、酸性または中性条件下で行うことができる。
【0117】
あるいは、濃縮pH緩衝液を添加して、pHを維持することができる。
【0118】
ポリビニルアミンポリマーは中程度の温度でグリオキサールと反応して、数時間以内に付加物を形成する。典型的には、第1付加物は、50℃または40℃より低い温度、最も典型的には、ほぼ室温で形成することができる。したがって、第1付加物を5℃〜約40℃の範囲の温度で形成することができる。これらの温度で、第1付加物形成は、約1分〜約90分以内、さらに典型的には、5分〜約1時間以内で完了する。
【0119】
ポリビニルアミドポリマーおよびポリビニルアミンは、グリオキサル化前に形成することができる。第2付加物の形成(ポリビニルアミドのグリオキサル化)は、通常、低ポリビニルアミド濃度で行われるが、約5〜約25質量%の範囲の濃度で行うこともできる。
【0120】
グリオキサル化ポリビニルアミドを製造するための低濃度法は、全体が参考として本明細書で援用される同時係属中の米国公開出願第2008/0064819号に開示されている。この「低濃度」は、出発ポリビニルアミドの平均分子量に大きく依存する。たとえば、セルロース反応性ポリビニルアミドを形成するための濃度は、出発ビニルアミドポリマーの質量基準で、ポリビニルアミドポリマーの0.2%〜約4.5質量%、約0.3質量%〜4.0質量%未満、約0.5〜約3.5または1.0〜約3.0または約1.5〜約2.5質量%で変化し得る。
【0121】
第1付加物の形成(ポリビニルアミンのグリオキサル化)は、反応物が過度の粘稠性またはゲルにならないならば、ほとんど全ての濃度で行うことができる。典型的には、ポリビニルアミンのグリオキサル化は、N−ビニルホルムアミドの加水分解の程度およびポリマーのMwによって影響を受ける。たとえば、約350,000のMwを有し、30%加水分解されたN−ビニルホルムアミドポリマーを、約0.1〜約4質量%、約0.5〜約3.5質量%または約1〜約3.0質量%の濃度(ポリビニルアミンポリマー)で実施することができる。たとえば、付加物形成中のビニルアミンポリマー濃度は、約4質量%未満、約3.5もしくは3.0質量%未満または約2質量%もしくは1.5質量%未満、またはさらには約1.0質量%である。
【0122】
しかし、第1および第2付加物が同時に形成される場合、出発ポリビニルアミドおよび出発ポリビニルアミンの濃度は、典型的には「低く」保たれる。すなわち、たとえば、出発ポリビニルアミドと出発ポリビニルアミンとの両方の合計濃度は、反応混合物の合計質量基準で、両出発ポリマー(合計出発ポリマー固形分)の0.1%〜約4.5質量%、約0.3質量%〜4.0質量%未満、約0.5〜約3.5または1.0〜約3.0、約1.0〜約2.0、または約1.5〜約2.5質量%で変化し得る。
【0123】
ビニルアミンまたはビニルアミドポリマーの濃度は、付加物形成中の任意の時点で、反応混合物の約4質量%未満であるか、または約3質量%未満であるか、または2質量%未満であり得る。
【0124】
ポリビニルアミドの典型的なグリオキサル化は、8〜12質量%で実施される。
【0125】
組成物および方法に関連する利点は、グリオキサル化方法を典型的な濃度よりも有意に低い濃度で行う場合に見いだされている。
【0126】
低濃度でのグリオキサル化の利点の1つは、グリオキサル化付加物が早期ゲル化することなく比較的高い平均分子量ビニルアミドポリマーをグリオキサル化できることである。たとえば、ほとんどの文献は、出発ビニルアミドポリマーが、8〜12質量%のビニルアミドポリマー濃度で5,000〜約10,000の範囲の平均分子量を有するグリオキサル化反応を例示している。これらの濃度(8〜12)で、比較的高分子量の出発ビニルアミドポリマー(=>25,000)のグリオキサル化反応は、時期尚早にゲル化し、出発ポリマーの不完全なグリオキサル化の原因となり、不溶性ゲルを生じる。低濃度でのグリオキサル化とは、比較的高分子量(=>25,000または>50,000)の出発ポリビニルアミドをグリオキサル化するために利用可能な手段であり、ポリビニルアミドは次に紙または板紙上で良好な性能をもたらす。
【0127】
さらに、この反応を低濃度で実施する場合、高粘稠溶液を形成することなく、「二重グリオキサル化」を実施することも可能である。たとえば、ポリビニルアミドおよびポリビニルアミンを含む反応混合物を同時にグリオキサル化することができる。この二重グリオキサル化は、典型的なポリビニルアミド濃度では可能でなかった。反応(二重付加物形成)を出発ポリマー固形分(ポリビニルアミドおよびポリビニルアミン)の合計質量の約4質量%未満、3質量%未満または2質量%未満で実施することによって、形成される付加物の粘度は処理可能な粘度に保たれ、改善された湿潤および/または乾燥強度樹脂が産生される。
【0128】
付加物形成のモニタリング
従来技術の方法においては、長時間にわたって反応の粘度を測定することによって、ビニルアミドポリマーとグリオキサールとの間の付加物形成をモニターする。特定のビニルアミドポリマーに関して一旦粘度が増加すると、希釈および/または酸の添加によって反応をクエンチする。
【0129】
しかし、ポリビニルアミドおよび/またはポリビニルアミンの現濃度では、粘度の中程度の増加、粘度の若干の減少が見られるか、または増加は全く見られない。本発明者は、本発明の方法の間、ビニルアミドポリマーのグリオキサル化が進行するにつれ、反応溶液の濁度が増加することを見いだした。したがって、本発明の方法は、濁度計または粘度計を用いてグリオキサル化を追跡できる。
【0130】
したがって、付加物形成は、反応の開始時、すなわちTおよびあらかじめ決められた終点T(T−T)での水性反応の濁度もしくは粘度における変化を測定することによって決定することができる。
【0131】
あらかじめ決められた終点は、たとえば、特定のビニルアミドもしくはビニルアミンポリマーの濁度(グリオキサル化の尺度)における所望の増加である。したがって、たとえば、100,000平均分子量のビニルアミドポリマーは、反応開始時(T)で0〜5NTU(比濁単位)の濁度を与え、あらかじめ決められた終点で2〜1000NTUの濁度変化を与える。反応混合物の濁度が約2〜1000NTU増加したら、反応をクエンチして、さらなる反応を防止することができる。
【0132】
粘度計および濁度計は、当該技術分野で周知である。たとえば、SURFACE SCATTER 7SC濁度計は、流体中の濁度を測定するために設計された連続モニター装置である。装置の設計は、比濁原理に基づき、この場合、流体中に懸濁された粒子によって散乱される光を測定して、流体中の粒状物質の相対量を決定する。
【0133】
粘度変化(増加または減少)が起こるポリビニルアミドまたはポリビニルアミンのグリオキサル化中、反応の程度を、粘度における変化によってモニターすることができる。
【0134】
粘度は、典型的には、BROOKFIELD LVシリーズ粘度計のULアダプターを用いて反応中に測定する。ULアダプターはスピンドル数を有さない。唯一の設定が可能である。アダプターキャップのベースを除去し、アセンブリを直接反応混合物中に入れる。粘度測定値は、触媒反応の間、毎秒ごとに自動的に記録される。粘度計を60rpmの速度に設定し、反応混合物の温度を25℃に維持する。
【0135】
バッチまたは連続様式
セルロース反応性ポリビニルアミンポリマーおよび/またはポリビニルアミドを、バッチまたは連続様式で合成することができる。本発明の方法は、製紙部位でのpH測定機能を有する連続反応器中で実行するために特に好ましい。
【0136】
連続反応器は、管状反応器であってよい。
【0137】
グリオキサル化の速度に影響を及ぼす他の変数としては、これらに限定されないが、pH、温度,ビニルアミドポリマー分子量、ビニルアミンポリマー分子量、反応混合物濃度、ビニルアミドポリマーとグリオキサールとの間のモル比、ビニルアミドポリマーのモルアミド、ポリビニルアミンのモルアミン粘稠度および反応を妨害する物質の存在が挙げられる。
【0138】
反応は、通常、周囲温度で実施される。しかし、反応は、本発明の方法により広い温度範囲にわたって実施できる。
【0139】
反応の長さは、濃度、温度およびpH、ならびに他の因子に応じて変わるであろう。
【0140】
グリオキサル化反応に添加できる他の通常の添加剤は、重合阻害剤を除去するためのキレート剤、pH調節剤、開始剤緩衝液、界面活性剤および他の通常の添加剤である。
【0141】
ポリマー付加物の適用
付加物または付加物のブレンドを、製紙において希水溶液として用いることができる。水溶液をあらかじめ形成された紙に、タブもしくは含浸法によるか、または溶液を製紙繊維状懸濁液に、湿潤および乾燥強度樹脂がまず適用される製紙方法の任意の時点で直接添加することによって、適用することができる。
【0142】
付加物のブレンドを、製紙方法においてパルプ繊維に添加する前に形成されたブレンドとして同時に、または製紙方法のウェットエンドに別々であるが同時に添加するかのいずれかによって適用することができる。
【0143】
セルロース反応性ポリビニルアミドおよび/またはポリビニルアミン付加物を、製紙方法のウェットエンドにおいて適用または組み入れることができるか、または湿潤紙に適用することができる。
【0144】
付加物を、製紙方法のウェットエンドにおいて添加する前に形成するか、または湿潤もしくは乾燥紙に適用する。
【0145】
グリオキサル化付加物を、シックもしくはシンストック中に添加することができる。シンストックに添加する場合、ファンポンプ前またはファンポンプ後に添加することができる。
【0146】
完成紙料の乾燥繊維質量基準で約0.05質量%程度のグリオキサル化ポリビニルアミドまたはグリオキサル化ポリビニルアミンの場合に、実質的な程度の湿潤強度または乾燥強度が付与される。
【0147】
たとえば、乾燥完成紙料1トンあたり、約0.1〜約20(0.05〜10kg/メートルトン)ポンドの乾燥ポリマー、約1〜約12、(0.5〜6kg/メートルトン)、約1〜約9(0.5〜4.5kg/メートルトン)、約1〜約8(0.5〜4kg/メートルトン)ポンドの乾燥ポリマーの、合計グリオキサル化ポリビニルアミドおよびグリオキサル化ポリビニルアミンの投与量が想定される。さらに典型的には、乾燥完成紙料1トンあたり、1.5〜約6(1.0〜3kg/メートルトン)ポンドの乾燥ポリマーの範囲が想定される。
【0148】
第1付加物または第1付加物および第2付加物のブレンドの紙または板紙への適用は、任意の従来法によって達成することができる。例としては、これらに限定されないが、サイズプレス、パディング、スプレー、含浸、印刷またはカーテンコーティングが挙げられる。
【0149】
第1付加物または第1付加物および第2付加物のブレンドは、約3.5〜約8の範囲のpH値で製紙繊維によって吸収される。
【0150】
以下の実施例は、本発明のある実施形態を説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0151】
実施例
実施例1
アクリルアミドおよびジアリルジメチルアンモニウムクロリド(90/10質量比)から形成されたMw100,000のビニルアミドポリマーを、2質量%固形分、約1.7質量%のビニルアミドポリマー濃度でグリオキサル化する。グリオキサル化反応のアミド:グリオキサールモル比は4:1である。グリオキサル化前の出発粘度は、4.05cpsである。グリオキサル化後の粘度は、4.75cpsである。濁度をモニターすることによって、反応を追跡する。出発濁度は4.4NTUであり、最終濁度は13.1NTUである。
【0152】
NTU単位は、HACH2100P濁度計を用いて測定する。
【0153】
実施例2
市販のN−ビニルホルムアミド(Mw=350,000)30モル%を加水分解してポリビニルアミンにする。
【0154】
実施例3
30%加水分解N−ビニルホルムアミドポリマー(Mw=350,000)の12%水溶液70.8グラムを、425グラムの脱イオン水と合し、均一になるまで混合する。次に、3.75グラムの40%水性グリオキサールをポリマー溶液に添加する。混合物の初期pHは8.3である。反応溶液のpHは、5%水性水酸化ナトリウムを滴下すると9.8まで増加し、9.8で30分間維持する。次に、反応溶液のpHを5.0まで減少させ、溶液を脱イオン水で固体濃度0.25%に希釈する。
【0155】
実施例4
6質量部の実施例1の処理付加物の水溶液を4質量部の30%加水分解N−ビニルホルムアミドポリマー(実施例2)とブレンドする。N−ビニルホルムアミドポリマーの固体濃度を2.0%に調節した後、実施例1から得られる水溶液とブレンドする。ブレンドされたポリマー溶液のpHを5.5に調節する。
【0156】
実施例5
開始するために、6「乾燥」部のポリマーAを4「乾燥」部のポリマーBの水溶液とブレンドする。ポリマーAは、アクリルアミドおよびDADMACの90/10質量比でのフリーラジカル重合によって合成される水溶液ビニルアミドポリマーであり、100,000のMwを有する。ポリマーBは、ペンダントホルミル基の30%が分離し、第1アミノ基によって置換されるように加水分解され、350,000のMwを有する水溶液N−ビニルホルムアミドポリマーである。ポリマーAおよびBをブレンドした後、混合物を脱イオン水で希釈して、1.7%の合計固体濃度にする。次に、40%水性グリオキサールを添加して、85部の「乾燥」ポリマーにつき15部の「乾燥」グリオキサールが混合物中に存在する用にする。反応混合物を断続的に混合し、濁度レベルの変化についてモニターする。グリオキサール添加後の反応混合物の出発濁度は、0.26NTUである。pH9.5に到達するまで、5%水性水酸化ナトリウムを滴下することによって、溶液のpHを上昇させる。濁度6NTUに達するまで、5%水酸化ナトリウムを間欠的に添加することによって、pHを9.5で維持する。この時点で、pHを5.5まで下げるために、5%の水性硫酸を滴下する。このポリマー付加物を次いで、ハンドシート研究において使用するために、脱イオン水で合計固形分0.25%まで希釈する。
【0157】
ハンドシート
前記実施例の乾燥強度寄与を評価するために、ハンドシート研究を実施する。それぞれの投与量条件について作製した4つの別個のハンドシートを用いて、紙スラリー質量に基づき、1トンあたり2.5ポンドで樹枝を評価する。
【0158】
研究中で試験した強度パラメータとしては、ショートスパン圧縮試験法(STFI)、破裂強度指数および引張エネルギー吸収量(TEA)が挙げられる。
【0159】
MESSMER−BUECHEL Model K455を用い、TAPPI T 826法に従ってSTFIを決定する。
【0160】
TAPPI T−403によって紙の破裂強度を決定する。Instron Model 5565、PATPAC D.34によってTEAを決定する。
【0161】
実験の詳細
完成紙料:水道水中で作製した50/50(Hardwood/Softwood)実験室用ストック
ろ水度: 360CSF
シックストック pH:7.1
「ウェットエンド」温度:125F(Stockを電子レンジで加熱)
樹脂希釈:全紙料に0.5%活性成分を添加する。
【0162】
投与プロトコル:樹脂を、2.5%固体粘稠度を有する繊維スラリーに添加し、このスラリーを次に10秒間混合し、続いて水道水で0.75%スラリー固形分になるまで希釈する。スラリーをさらに10秒間混合した後、シートを形成する。8インチ×8インチのハンドシートを、Noble and Woodハンドシートマシンを用いて作製する。シートをプレスし、ドラム乾燥機上で240°Fで乾燥する。
【0163】
目標ハンドシート質量:150グラム/平方メートル
下記の各データ点は、12回の試験結果の平均である。すなわち、4枚のハンドシートにつき、シート1枚あたり各試験を3回繰り返す。
【0164】
ハンドシート結果を表1に記載する。
【0165】
指数という用語は、実際の試験結果をハンドシートの実際の基本質量で割って、個々の二重ハンドシート基本質量によって導入される誤差を除去する方法をさす。
【0166】
第1表 ハンドシート結果
【表1】

【0167】
ブランクは、ポリマーを添加しない以外は他の紙料(1〜5)と同じ方法によって作製された紙である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発ポリビニルアミンの少なくとも1種のジアルデヒドとの反応生成物を含むセルロース反応性ポリビニルアミン第1付加物組成物であって、出発ポリビニルアミンが、N−ビニルホルムアミドまたはN−ビニルアセトアミドから形成されるポリマーであり、前記ポリマーが、ジアルデヒドとの反応前に、ある程度の第1アミノ官能基を付与するために少なくとも部分的に加水分解されている、セルロース反応性ポリビニルアミン第1付加物組成物。
【請求項2】
部分加水分解されたポリマーが、約1〜約100モル%、好ましくは約5〜約95モル%および最も好ましくは約10〜約90モル%加水分解されている、請求項1に記載のセルロース反応性ポリビニルアミン付加物。
【請求項3】
ジアルデヒドが、グリオキサール、グルタルアルデヒド、フランジアルデヒド、2−ヒドロキシアジポアルデヒドおよびスクシンアルデヒド、好ましくはグリオキサールからなる群から選択される、請求項1に記載のセルロース反応性ポリビニルアミン付加物。
【請求項4】
反応生成物を形成する間の出発ポリビニルアミンの濃度が、付加物形成中の任意の時点での反応混合物の約4質量%未満、さらに好ましくは約3.5または3.0質量%未満、または、最も好ましくは約2質量%未満または約1.5質量%未満である、請求項1から3までのいずれか1項に記載のセルロース反応性ポリビニルアミン付加物。
【請求項5】
付加物の形成が、逆エマルジョン、マイクロエマルジョンまたは実質的水溶液中で行われる、請求項1から4までのいずれか1項に記載のセルロース反応性ポリビニルアミン付加物。
【請求項6】
逆エマルジョンまたはマイクロエマルジョンが、約25nm〜約2000nmの範囲の粒子サイズを有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載のセルロース反応性ポリビニルアミン付加物。
【請求項7】
第1付加物が、請求項1から6までのいずれか1項に記載の第1付加物を含み、第2付加物がジアルデヒドの出発ポリビニルアミドとの反応生成物を含む(ただし、第1および第2セルロース反応性付加物は異なるものとする)、セルロース反応性第1および第2付加物の前混合されたブレンド。
【請求項8】
出発ポリビニルアミドが、少なくとも(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミドまたはこれらの混合物から形成されるポリマーまたはコポリマーである、請求項7に記載の前混合されたブレンド。
【請求項9】
少なくとも第1および第2付加物のブレンドであって、前記付加物が出発ポリビニルアミンおよび出発ポリビニルアミドの混合物とジアルデヒドとの反応によって同時に形成され、ポリビニルアミンが、N−ビニルホルムアミドまたはN−ビニルアセトアミドから形成されるポリマーであり、前記ポリマーが、ジアルデヒドとの反応前にある程度の第1アミノ官能基を付与するために少なくとも部分加水分解されており、ポリビニルアミドが、エチレン性不飽和アミド、たとえば(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミドまたはこれらの混合物から形成される前記ブレンド。
【請求項10】
出発ポリビニルアミンおよび出発ポリビニルアミドの合計濃度が、第1および第2付加物反応中の任意の段階での反応混合物の約4質量%未満、好ましくは約3.5質量%未満、最も好ましくは約3質量%未満、特に約2または1.5質量%未満である、請求項9に記載のブレンド。
【請求項11】
出発ポリビニルアミンおよび出発ポリビニルアミド両方の平均分子量が、独立して、25,000ダルトン超、好ましくは約25,000〜約500,000の範囲である、請求項9または10に記載のブレンド。
【請求項12】
出発ポリビニルアミンの平均分子量が、約200,000〜約500,000の範囲である、請求項11に記載のブレンド。
【請求項13】
出発ポリビニルアミドの分子量が、50,000〜約200,000の範囲である、請求項11または12に記載のブレンド。
【請求項14】
第1および第2付加物がそれぞれグリオキサル化ポリビニルアミンおよびグリオキサル化ポリビニルアミドとして定義される、請求項7から13までのいずれか1項に記載のブレンド。
【請求項15】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の第1付加物を組み入れた紙または板紙。
【請求項16】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の第1付加物を組み入れた紙または板紙であって、第1付加物を製紙方法のウェットエンドにおいて紙または板紙に添加する、紙または板紙。
【請求項17】
請求項7から14までのいずれか1項に記載の付加物のブレンドを組み入れた紙または板紙。
【請求項18】
請求項1から6までのいずれか1項に記載のセルロース反応性官能化ポリビニルアミン第1付加物を製造する方法であって、
出発ポリビニルアミンとセルロース反応性剤とを反応させるステップと、
前記第1付加物を形成するステップと、
を含む前記方法。
【請求項19】
紙または板紙の湿潤強度または乾燥強度を増大させる方法であって:
a)セルロース性繊維の水性スラリーを提供するステップと、
b)請求項1から6までのいずれか1項に記載のセルロース反応性官能化ポリビニルアミン第1付加物または請求項7から14までのいずれか1項に記載のブレンドを水性セルロース性スラリーに添加するステップと、
c)ステップb)で形成された水性スラリーからウェブを形成するステップと、
d)ウェブを乾燥するステップと、
を含む前記方法。
【請求項20】
紙または板紙の湿潤強度または乾燥強度を増大させる方法であって:
a)請求項1から6までのいずれか1項に記載の得られた第1付加物または請求項7から14までのいずれか1項に記載のブレンドを、湿潤ウェブ、紙または板紙上にスプレー、コーティング、または他の方法で適用するステップと、
b)コーティングされた湿潤ウェブ、紙または板紙を乾燥するステップと、
を含む前記方法。

【公表番号】特表2011−503271(P2011−503271A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532479(P2010−532479)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009208
【国際公開番号】WO2009/059725
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】