グリコシル化G−CSF
本願は、新たに記載するG−CSF糖鎖付加パターンを有する遺伝子導入トリによって生み出された卵から入手される顆粒球コロニー刺激因子に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願情報
本出願は、2006年3月17日出願の米国仮特許出願第60/783,6482006号;および2006年8月25日出願の米国仮特許出願第60/840,291号の恩典を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、鳥類細胞への外因性の遺伝的材料の導入および鳥類細胞における外因性の遺伝物質の発現に関する。本発明は、詳細には、遺伝子導入のトリ種(ニワトリ、ウズラおよびシチメンチョウを含む)、ならびに医薬用タンパク質などの外因性タンパク質を含む卵を産むトリに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
多数の天然または合成タンパク質が、診断および治療に応用されており;ほかの多くのタンパク質が開発中であるか、または臨床試験中である。最新のタンパク質の産生方法としては、天然の供給源からの単離、および細菌および哺乳動物細胞中での組換え産生が挙げられる。しかし、これらのタンパク質産生方法の複雑性および高い費用が原因で、代替法を開発する取り組みが進行中である。例えば、ブタ、ヒツジ、ヤギおよびウシの乳汁中で外因性タンパク質を産生する方法が報告されている。これらのアプローチは、ファウンダー(founder)および作製した遺伝子導入群の間の長い発生期間、畜産および獣医にかかる膨大な費用、およびゲノムでの導入遺伝子の挿入部位に対する位置効果が原因である発現レベルの変動を含む、特定の制限を有する。タンパク質はまた、粉砕およびマルティング(malting)プロセスを使用して、オオムギおよびライムギから産生されている。しかし、植物の翻訳後修飾は動物の翻訳後修飾とは異なり、これはしばしば医薬用タンパク質などの外因性タンパク質の機能に対して重大な効果を有する。
【0004】
組織培養物および乳腺バイオリアクターのように、トリ輸卵管は、バイオリアクターとして強力に役立ち得る。高いレベルの外因性タンパク質が輸卵管中で分泌され、卵中に包まれるようにトリの遺伝物質を改変する、うまくいく方法は、安価なタンパク質の大量製造であろう。そのようなアプローチのいくつかの利点は、a)短い発生時間;b)フロックサイズ(flock size)を増加させることによって製造物を容易に増減させて、製造物の必要を満たし;c)発現されるタンパク質の翻訳後修飾;4)自動化されている給餌および卵の回収;d)天然に無菌の卵白;ならびにe)卵白中の高濃度のタンパク質に起因する、処理費用の低減であろう。
【0005】
ニワトリの生殖器系を含むトリ生殖器系は、よく記載されている。雌鳥の卵は、輸卵管中の通過の間に卵黄の上に分泌されるいくつかの層からなる。卵の産生は、雌鳥の卵巣での大きな卵黄の形成と一緒に開始する。次いで、未受精の卵母細胞が、卵黄嚢の上端に位置する。排卵または輸卵管からの卵黄の放出に際して、卵母細胞は、輸卵管の卵管漏斗へと移動し、精子が存在する場合、ここで卵母細胞は受精される。次いで、卵母細胞は、管状腺と繋がっている輸卵管の筒部へと移動する。これらの細胞は、卵白アルブミン、リゾチーム、オボムコイド、コンアルブミンおよびオボムチンを含む卵白タンパク質を、卵管漏斗の管腔(ここで、これらのタンパク質がトリ胚および卵黄状に沈着する)へと分泌する。
【0006】
卵白アルブミン遺伝子は、輸卵管の卵管漏斗の管状腺細胞において特異的に発現する45kDのタンパク質である(Beato Cell 56:335-344(1989))。卵白アルブミンは、もっとも多い卵白タンパク質であって、管状腺細胞によって産生される全タンパク質の50%超、または大型のグレードAの卵1つあたりに約4g含まれる(Gilbert, ”Egg albumen and its formation” in Physiology and Biochemistry of the Domestic Fowl, Bell and Freeman, eds., Academic Press, London, N.Y., pp. 1291-1329)。卵白アルブミン遺伝子および両側の隣接領域20kb超がクローニングされ、分析されている(Lai et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75:2205-2209 (1978);Gannon et al., Nature 278:428-424 (1979);Roop et al., Cell 19:63-68 (1980);およびRoyal et al., Nature 279:125-132 (1975))。
【0007】
卵白アルブミンの調節に、多くの注意が払われている。遺伝子は、エストロゲン、グルココルチコイドおよびプロゲステロンなどのステロイドホルモンに応答し、未成熟のヒヨコの管状細胞あたり約70,000個の卵白アルブミンmRNA転写物、および成熟の産卵鶏の管状腺細胞あたり100,000個の卵白アルブミンmRNA転写物の蓄積を誘導する(Palmiter, J. Biol. Chem. 248:8260-8270 (1973); Palmiter, Cell 4:189-197 (1975))。形質移入した管状腺細胞でのDNAse過敏性分析およびプロモーター−レポーター遺伝子アッセイによって、卵白アルブミン遺伝子の発現に必要とされる配列を含む7.4kbの領域が決定されている。この5’隣接領域は、転写開始部位から−0.25、−0.8、−3.2および−6.0に集中している4つのDNAse I−過感受性部位を含む。これらの部位は、HS−I、−II、−IIIおよび−IVとそれぞれ呼ばれている。これらの領域は、クロマチン構造における変化を反映しており、輸卵管細胞での卵白アルブミン遺伝子の発現と特異的に関連している(Kaye et al., EMBO 3:1137-1144 (1984))。HS−IIおよび−IIIの過感受性は、エストロゲン誘導性であって、卵白アルブミン遺伝子の発現のホルモン誘導でのこれらの領域の役割を指令している。
【0008】
HS−IおよびHS−IIはともに、卵白アルブミン遺伝子の転写のステロイド誘導に必要とされ、これらのエレメントを含む5’側の領域1.4kbが、外植管状腺細胞におけるステロイド依存性の卵白アルブミンの発現を駆動させることに十分である(Sanders and McKnight, Biochemistry 27: 6550-6557 (1988))。HS−Iは、ホルモンがない場合に卵白アルブミンの発現を抑圧する負の調節エレメントをいくつか含むので、負の応答エレメント(”NRE”)といわれる(Haekers et al., Mol. Endo. 9:1113-1126 (1995))。タンパク質因子は、輸卵管核においてのみ見出されるいくつかの因子を含むタンパク質因子はこれらのエレメントに結合しており、組織特異的な発現における役割を示唆している。HS−IIは、転写のステロイドを促進することに必要とされるので、ステロイド依存性応答エレメント(”SDRE”)といわれる。HS−IIは、Chirp−Iとして知られるタンパク質またはタンパク質複合体に結合する。Chirp−Iはエストロゲンによって誘導され、シクロヘキサミドの存在下で迅速に代謝回転する(Dean et al., Mol. Cell. Biol. 16:2015-2024 (1996))。外植の管状腺細胞培養系を使用する実験によって、NFκB様因子を含む、ステロイド依存性の様式でSDREに結合する因子のさらなるセットが決定されている(Nordstrom et al., J. Biol. Chem. 268:13193-13202 (1993); Schweers and Sanders, J. Biol. Chem. 266: 10490-10497 (1991))。
【0009】
HS−IIIおよび−IVの機能については、あまり知られていない。HS−IIIは、機能性のエストロゲン応答エレメントを含んでおり、エストロゲン受容体cDNAをHeLa細胞に同時形質導入した場合、エストロゲン誘導能を卵白アルブミン近位プロモーターまたは異種プロモーターのいずれかに与える。これらのデータは、HS−IIIが卵白アルブミンの全体の調節において、機能性の役割を担い得ることを暗示している。HS−IVについては、機能性のエストロゲン応答エレメントを含まないこと以外は、全く知られていない(Kato et al., Cell 68: 731-742 (1992))。
【0010】
外来性の遺伝物質の導入および/または特定の遺伝子の破壊によって真核生物のゲノムを改変することへの関心は高い。特定の真核生物の細胞は、外因性の真核生物タンパク質の産生に優れた宿主であることが解っている。特定のタンパク質をコードする遺伝子の導入はまた、経済的価値の増した新たな表現型の作製を可能にする。さらに、遺伝的に欠損した細胞がこれらの細胞ではさもなければ産生し得ないタンパク質を発現することを可能にする外来性遺伝子の導入によって、遺伝的に引き起こされるいくつかの疾患状態が治療され得る。遂に、遺伝物質の挿入または除去による動物ゲノムの改変は、遺伝子機能の基礎研究を可能にし、最終的には、疾患状態を治療するか、または動物の表現型の改善をもたらすために使用され得る遺伝子の導入を可能にし得る。
【0011】
遺伝子組換えは、いくつかの異なる方法によって哺乳動物において成し遂げられている。まず、マウス、ブタ、ヤギ、ヒツジおよびウシを含む哺乳動物において、導入遺伝子は受精卵の前核にマイクロインジェクトされ、次いで、フォスターマザー(foster mother)の子宮に入れ、ここで生殖系列中に導入遺伝子を担持するファウンダー動物を生じさせる。導入遺伝子は操作されて、外来性タンパク質の発現を特定の細胞型に指令する特定の調節配列を有するプロモーターを担持する。導入遺伝子はゲノムにランダムに挿入されるので、ゲノムへの導入遺伝子の挿入部位に対する位置効果は、導入遺伝子の発現レベルの減少を可変的に引き起こし得る。この取り組みはまた、所望の細胞型において導入遺伝子の発現を指令することに必要な配列を決定し、かつ導入遺伝子ベクター中に含まれるようなプロモーターの特徴付けを必要とする(Hogan et al. Manipulating the Mouse Embryo, Cold Spring Harbor Laboratory, NY (1988))。
【0012】
動物の遺伝子組換えをもたらす第2の方法は、標的遺伝子の破壊であって、ここで、選択可能なマーカー遺伝子に隣接する標的遺伝子の配列を含む標的化ベクターは胚性幹(”ES”)細胞に導入される。相同組換えによって、標的化ベクターは染色体座で標的遺伝子配列を置換するか、または標的遺伝子産物の発現を抑制する内部配列に挿入する。適切に破壊された遺伝子を有するES細胞のクローンを選択し、次いで、初期の胚盤胞に注入してキメラのファウンダー動物を生じ、そのうちのいくつかは、生殖細胞にて導入遺伝子を有する。導入遺伝子が標的遺伝子座を欠失させる場合、導入遺伝子は、遺伝子座を導入遺伝子ベクターが有する外来性DNA(培養物中の形質導入されたES細胞を検出することに有用な選択可能なマーカーをコードするDNAからなり、次いで、標的遺伝子のプロモーターが外来性遺伝子の発現を駆動させるように、欠失した遺伝子の場所に挿入される外来性タンパク質をコードするDNA配列をさらに含み得る)と置換する(米国特許第5,464,764号および第5,487,992号(M. P. Capecchi and K. R. Thomas))。このアプローチは、ES細胞がヤギ、ウシ、ヒツジおよびブタを含む多くの哺乳動物において利用可能でないという制限を受けている。さらに、この方法は、欠失される遺伝子が生物または細胞型の生存または適切な発達に必要とされる場合に有用でない。
【0013】
トリの遺伝子組換えにおける近年の発達は、トリゲノムの改変を可能にしている。生殖細胞遺伝子導入ニワトリは、新鮮な生み立ての卵において、ニワトリの胚盤葉の胚下腔中に複製欠損のレトロウイルスを注入することによって産生され得る(米国特許第5,162,215号; Bosselman et al., Science 243:533-534 (1989); Thoraval et al., Transgenic Research 4:369-36 (1995))。外来性遺伝子を担持するレトロウイルスの核酸は、胚細胞の染色体にランダムに挿入されて、遺伝子導入動物を生じ、そのうちのいくつかはそれらの生殖細胞中に導入遺伝子を有する。挿入部位に対する位置効果を乗り越えるために融合遺伝子構築物の5’または3’領域に挿入されたインスレーター配列の使用が記載されている(Chim et al., Cell 74:504-514 (1993))。
【0014】
別のアプローチにおいて、導入遺伝子は、受精卵の胚盤中に微量注入されて、遺伝子がF1世代に渡り得る、安定した形質導入ファウンダートリを産生する(Love et al., Bio/Technology 12:60-63 (1994))。しかし、この方法は、いくつかの不利点を有する。受精卵を収集するために雌鳥を犠牲にしなければならず、形質導入ファウンダーの割合は小さく、注入された卵は、代理の殻におけるインビトロでの重労働な培養を必要とする。
【0015】
別のアプローチにおいて、仮定的な始原生殖細胞(”PGC”)を含む胚盤葉細胞をドナーの卵から切除し、導入遺伝子を形質導入し、レシピエントの胚の胚下腔に導入する。形質導入したドナー細胞をレシピエントの胚に組み込み、形質導入胚を発生させ、そのいくつかは生殖細胞中に導入遺伝子を有すると期待される。導入遺伝子は、非相同組換えによって、ランダムな染色体部位に挿入される。しかし、この方法によって、形質導入ファウンダートリは生じていない。
【0016】
Lui, Poult. Sci. 68:999-1010 (1995)では、ビテロゲニン遺伝子の隣接DNA配列を含む標的化ベクターを使用して、培養物中のニワトリ胚盤葉細胞中の常在性の遺伝子の部分を欠失させている。しかし、これらの細胞が生殖細胞に寄与し、形質導入胚を産生し得ることは示されていない。さらに、この方法は、欠失される遺伝子が生物または細胞型の生存または適切な発達に必要とされる場合に有用でない。
従って、適切なプロモーターに作動可能に連結されている外来性DNAからなりDNAをトリゲノムに導入して、外因性遺伝子の発現が達成され得る方法の必要があることが理解されるだろう。さらに、輸卵管において外因性遺伝子を発現し、発現された外因性タンパク質を卵中に分泌する、生殖細胞が改変されている形質導入トリを作り出す必要がある。
【0017】
インターフェロンが1957年に発見された際に、インターフェロンは重要な抗ウイルス剤として歓迎された。1970年代後半、インターフェロンは、組換え遺伝子技術と関連づけられた。現在、インターフェロンは、ガンの生物学的プロセスの複雑性の象徴であって、かつ、この複雑性に対処する耐久性および持続性の価値である。
【0018】
ガンを引き起こす異常な遺伝子は、少なくとも3つの型を含む:第1に、ガン遺伝子であって、ガン遺伝子が変化した場合、ガンを特徴付ける異常な増殖および分化を促す。第2に、ガン抑制遺伝子であって、ガン抑制遺伝子が変化した場合、この異常な増殖および分化が制御できない。第3に、DNA修復遺伝子であって、DNA修復遺伝子が変化した場合、ガンを誘導し得る変異を修復できない。研究者らは、体の中に約30〜40個のガン抑制遺伝子が存在し、各遺伝子はタンパク質を産生すると考えている。これらのタンパク質は、Rb(網膜芽細胞腫に最初に関連する)やp53(多くの異なる腫瘍に関連する)などの”主要な”ガン抑制タンパク質によって制御され得る。研究結果から、これらのガン抑制遺伝子のわずか1つを正常な機能に戻すことで、悪性腫瘍の侵襲性がおよそ低減され得ることが示唆されている。
【0019】
インターフェロンが細胞増殖を抑制することが発見されたことで、科学者はインターフェロンに興味を示すようになった。さらに、インターフェロンは、インターフェロンは、免疫系に対して特定の陽性効果を有することが見出されている。インターフェロンは現在、ガン抑制タンパク質に類似していると考えられている:インターフェロンは細胞、特に悪性細胞の増殖を抑制し;インターフェロンは、多くのガン遺伝子および増殖因子の効果をブロックし;他の生物学的薬剤とは異なり、インターフェロンは転移プロセスに重要な細胞の運動性を抑制する。
【0020】
細胞間情報伝達は、メッセージが伝達される組織の全ての構造成分(マトリックス、細胞膜、細胞骨格、および細胞自体)の正常な機能に依存している。ガンにおいて、細胞間の情報伝達ネットワークは、破壊されている。細胞骨格が破壊されている場合、メッセージは核に到達せず、核は異常に機能し始める。核はガン遺伝子またはガン抑制遺伝子のスイッチがオンまたはオフになる部位であるので、細胞は、この異常な機能は悪性腫瘍を導き得る。これが発生した場合、細胞は不規則に増殖し始め、分化しない。これらの細胞はまた、移動を開始し、他の細胞を破壊し始める。インターフェロンは、おそらく他の細胞外および細胞性物質に呼応して、均衡および恒常性を回復し、メッセージが正常に到達することを確実にしている。インターフェロンは、接着分子を介して、増殖を停止させ、運動性を停止させ、かつ細胞の能力を増強して、その環境に応答する。インターフェロンはまた、細胞骨格上の欠損および傷害を是正する。インターフェロンは、血管新生、悪性腫瘍の増殖に必要な新たな血管の形成におけるの最初のステップをブロックすることが見出されている。さらに、インターフェロンは線維症、多くの異なる種類の細胞を刺激し、細胞増殖を促す傷害への応答をブロックする(Kathryn L. Hale, Oncolog, Interferon: The Evolution of a Biological Therapy, Taking a New Look at Cytokine Biology)。
【0021】
インターフェロンは、動物細胞がウイルスに侵入された場合に産生され、血流または細胞間液に放出され、健康な細胞を誘導して、感染に対抗する酵素を作る。長年、研究用のインターフェロンの供給は、割高な抽出技術によって制限されていた。しかし、1980年、タンパク質は遺伝子工学によって高い品質で利用可能になった(すなわち、タンパク質の組換え形態)。科学者らはまた、体が3つの異なる型のインターフェロン(α−(アルファ)、β−(ベータ)、およびγ−(ガンマ)インターフェロンという)を作ることを決定した。インターフェロンは最初、高度に種特異的であると考えられていたが、現在では、それぞれのインターフェロンは、他の種において異なる範囲の活性を有し得ることが知られている。アルファインターフェロン(α−IFN)は、ヘアリーセル白血病、C型肝炎に対する治療上の使用に承認されている。α−IFNはまた、B型慢性肝炎、肝ガンおよび肝硬変の主要な原因、ならびに性器疣贅およびいくつかの稀な血液および骨髄のガンの治療に有効であることが見出されている。α−IFNを含む点鼻薬は、ライノウイルスによって引き起こされる風邪に対する防御をいくらか提供する。ヒトα−IFNは、抗ウイルス、抗増殖および免疫調節性活性を有する細胞外情報伝達タンパク質のファミリーに分類される。IFN−αタンパク質は、ヒト染色体9上に密集する13遺伝子を含む多重遺伝子ファミリーによってコードされている。IFN−α遺伝子の大半は、センダイウイルスによって誘導される白血球においてmRNAレベルで発現される。さらに、少なくとも9個の異なる亜型もタンパク質レベルで産生されることが示されている。いくつかの類似のIFN−αタンパク質の発現の生物学的な重要性が知られているものの、これらのIFN−αタンパク質は、定量的に異なるパターンの抗ウイルス、増殖抑制およびキラー細胞刺激活性を有していると考えられている。現在、2つのIFN−αバリアント、IFN−α 2aおよびIFN−α 2bが組換え技術によって大腸菌で大量に産生され、薬物として市販されている。
【0022】
天然のIFN−αと異なり、これらの組換えIFN−α製品は、何人かの患者において免疫原性であることが示されており、これはIFN−αタンパク質の不自然な形態に起因している可能性がある。従って、IFN−α薬物の開発には、正常なヒト白血球において発現されるIFN−α亜型およびバリアントを同定するだけでなく、それらの考え得る翻訳後修飾を特徴付ける必要がある(Nyman et al. (1998) Eur. J. Biochem. 253:485-493)。
【0023】
Nymanら(上記)は、天然のヒトINF−αの糖鎖付加を研究している。彼らは、センダイウイルスの誘導後に白血球が産生する9つの亜型のうち2つ、すなわちIFN−α14cおよびINF−α 2bがグリコシル化されることを見出しており、これは初期の研究と一致している。IFN−α14は、考え得るN−糖鎖付加部位、Asn2およびAsn72を有する唯一のIFN−α亜型であって、Asn72のみが実際にグリコシル化される。IFN−α 2は、スレオニン106(Thr106)でO−グリコシル化される。興味深いことに、他のIFN−α亜型はこの位置にThrを含まない。この研究において、Nymanらは、オリゴ糖鎖を遊離させ、単離し、質量分析および特異的グリコシダーゼ消化によって分析した。IFN−α 2bおよびIFN−α14cの両方が逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)において3つのピークに分解された。RP−HPLC由来のIFN−α 2b画分のエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)分析は、それらの分子量における差異を明らかにし、これらが異なるグリコフォームを示すことを示唆した。このことは、各フラクションの遊離O−グリカンの質量分析によって確認されている。IFN−α 2bは、約20%のコア型−2五糖、および50%の二シアル酸付加および30%の一シアル酸付加コア型−1グリカンを含むと推定された。Nymanらのデータは、従前のINF−α 2b糖鎖付加の部分的な特徴付けと一致している(Adolf et al. (1991) Biochem. J. 276:511-518)。INF−α 14cおよびINF−α 2bにおける糖鎖付加の役割は、明らかには確立されていない。Nymanら(上記)によると、糖鎖は、生物学的活性に必要ではないが、糖鎖付加はタンパク質の薬物動態および安定性に対して効果を有し得る。
【0024】
ヒトゲノム中においてIFN−αファミリーのタンパク質をコードする少なくとも15個の機能性遺伝子が存在する。アミノ酸配列の類似性は一般に約90%の範囲であり、従って、これらの分子は構造上密接に関連している。IFN−αタンパク質は166アミノ酸(165アミノ酸を有するIFN−α 2は例外として)を含み、2つのジスルフィド架橋を形成する4つの保存されたシステイン残基を特徴として含む。IFN−α種は、特徴としていくぶん酸性であって、アスパラギンに結合した糖鎖付加についての認識部位を欠いている(アスパラギンに結合した糖鎖付加についての認識部位を含むINF−α 14は例外として)。位置23および34でアミノ酸が異なるIFN−α 2の3つのバリアントが知られている:IFN−α 2a(Lys−23、His−34);IFN−α 2b(Arg−23、His−34);およびIFN−α 2c(Arg−23、Arg−34)。IFN−α 2aおよびIFN−α 2cは、IFN−α 2bの対立遺伝子バリアントである。Gewert et al (1993) J. Interferon Res. vol 13, p 227-231を参照のこと。INF−α種のアミノ酸含量におけるわずかな差異は、インターフェロンの糖鎖付加をもたらすことを期待されない。すなわち、糖鎖付加パターンは、INF−α 2a、2bおよび2cのそれぞれで本質的に同じである。2つの他のヒトIFN種、すなわちIFN−ω1およびIFN−βはN−グリコシル化されており、IFN−αと遠縁にあたる:IFN−α、−βおよび−ωはまとめてクラスI IFNといわれ、同じ高親和性細胞膜受容体に結合する(Adolf et al. (1991) Biochem. J. 276:511-518)。
【0025】
Adolfら(上記)は、ヒト白血球IFN由来の天然のIFN−α 2の単離に、モノクローナル抗体の特性を使用した。彼らは、IFN−αの期待された抗ウイルス活性が確認された免疫アフィニティークロマトグラフィーによって95%の純度のタンパク質を得た。逆相HPLCによる天然のIFN−α 2の分析は、天然のタンパク質が2つの成分に分解され得、両方とも大腸菌由来のIFN−α 2より親水性であることを示した。SDS/PAGEは、タンパク質の分子量が不均一であって、3つのバンドをもたらし、その全てが等価の大腸菌由来のタンパク質より低い電気泳動移動度を有することを明らかにした。
【0026】
Adolfら(上記)はまた、天然のIFN−α 2はOに結合した炭水化物残基を担持していると推測していた。彼らの仮説は、アルカリを用いた推定上のペプチド−炭水化物結合の開裂によって確認され;得られたタンパク質は相同であって、組換えタンパク質と同じ分子量を示した。得られたフラグメントの分離および分析に続く、タンパク質分解性の開裂による天然および組換えタンパク質のさらなる比較は、候補グリコペプチドの決定を可能にした。このペプチドの配列分析は、O−糖鎖付加部位としてThr−106を同定した。公開されている全てのIFN−α 2種のアミノ酸配列の比較は、このスレオニン残基がIFN−α 2に特有であることを明らかにした。全ての他のタンパク質では、グリシン、イソロイシンまたはグルタミン酸が対応する位置(107)に存在している。
【0027】
大腸菌において産生されるINF−α 2の調製物は、O−糖鎖付加を欠いており、多くの国で薬物として登録されている。しかし、治療上適用される大腸菌由来のIFN−α 2の免疫原性は、糖鎖付加の欠如によって影響を受けているに違いない。研究は、酵母において産生された組換えのヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を受けた16人の患者のうち4人がこのタンパク質に対する抗体を発達させたことを示している。興味深いことに、これらの抗体は、内因性のヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子においてOに結合した糖鎖付加によって保護されているが、組換え体の因子においては露出しているエピトープと反応することが見出されている(Adolfら、上記)。
【0028】
同様に、患者の処置を延長した後での組換えの大腸菌由来のINF−α 2に対する抗体の誘導について記載されており、天然のINF−α 2は、組換えのINF−α 2タンパク質より免疫原性が低くなり得ることが推測されている(Galton et al. (1989) Lancet 2:572-573)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
必要なことは、インターフェロン、G−CSFおよびエリスロポエチンを含む抗体およびサイトカインなどの治療または医薬用タンパク質を産生するための改善された方法が必要とされていることである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
発明の概要
本発明は、外因性配列を発現させて、トリの表現型を変化させるか、あるいは所望のタンパク質を発現させることを目的として、トリのゲノムに外因性の核酸配列を安定的に導入するためのベクターおよび方法を提供する。特に、その輸卵管において外因性の配列を発現し、医薬用タンパク質などの外因性タンパク質を卵中に沈着する遺伝子導入トリが作製される。そのような外因性タンパク質を含むトリの卵は、本発明に含まれる。本発明はさらに、形質導入のトリの輸卵管において効率的に発現され、トリの卵に沈着する、インターフェロン、G−CSF、G−MCSFおよびエリスロポエチンを含む治療用タンパク質(例えば、ヒトサイトカイン)の新規の形態を提供する。
【0031】
本発明の1つの態様は、トリの特定の組織において外因性タンパク質を産生する方法を提供する。外因性タンパク質を、トリの輸卵管、血液および/または他の細胞および組織において発現させてもよい。1つの実施態様において、例えばステージX付近の胚性胚盤葉細胞に導入遺伝子を導入して、遺伝子導入トリを作製し、目的のタンパク質を輸卵管の筒部の管状腺細胞において発現させて、管腔に分泌させ、固い殻の卵の卵白中に沈着させる。このように作製した遺伝子導入トリは、その生殖細胞中に導入遺伝子を担持する。従って、外因性遺伝子は、トリ胚細胞への外因性遺伝子の人工的な導入、およびメンデルの法則に従った様式でのトリの子孫への外因性遺伝子の安定した伝達の両方によって、トリに伝達され得る。
【0032】
本発明は、トリの輸卵管において外因性タンパク質を産生する方法を含む。方法は、第1の工程として、コード配列およびコード配列と作動可能に連結された(プロモーターがトリの輸卵管において核酸の発現をもたらし得るように)プロモーターを含むベクターを提供する工程を含む。次いで、形質導入の細胞および/または組織を産生してもよい(ここで、ベクターは、培養物中で新たに単離したか、胚中のトリの胚性胚盤葉細胞に導入される)。ベクター配列を、例えばトリのゲノムにランダムに挿入するなど、挿入する。最後に、輸卵管において外因性タンパク質を発現する成熟形質導入トリを、形質導入細胞および/または組織から得てもよい。この方法はまた、輸卵管において発現させた外因性タンパク質を輸卵管管腔に分泌させ、卵中(例えば、固い卵の卵白中)に沈着させた場合に、医薬用タンパク質(例えば、サイトカイン)などの外因性タンパク質を含むトリの卵を産生するために使用され得る。
【0033】
1つの態様において、トリゲノムへのベクターの染色体挿入による遺伝子導入トリの作製は、所望により、胚性胚盤葉細胞のDNA形質導入を含んでもよく、次いで、その細胞を、レシピエントの胚盤葉の真下の胚下腔に注入する。そのような方法において使用されるベクターは、外因性のコード配列に融合されているプロモーターを有してもよく、輸卵管の管状腺細胞中でコード配列の発現を指令する。
【0034】
本発明の別の態様において、ランダムな染色体挿入および遺伝子導入トリの作製は、レトロウイルスレクター(rector)の5’および3’LTRの間に導入遺伝子の遺伝暗号を担持する、複製欠損または複製コンピテントなレトロウイルス粒子での胚性胚盤葉細胞の形質導入によって達成される。例えば、プロモーター領域のセグメントの下流に挿入されている外因性遺伝子を含む改変pNLBプラスミドを含むトリの白血球ウイルス(ALV)レトロウイルスベクターまたはマウスの白血球ウイルス(MLV)レトロウイルスベクターを使用してもよい。ウイルス粒子にパッケージされている改変レトロウイルスベクターのRNAコピーは、遺伝子導入トリに発達する胚性胚盤葉に感染させるために使用してもよい。あるいは、レトロウイルス形質導入粒子を産生するヘルパー細胞を胚性胚盤葉に送達してもよい。
【0035】
本発明の別の態様は、コード配列がトリ輸卵管において発現されるような作動および位置関係にあるコード配列およびプロモーター配列を含むベクターを提供する。そのようなベクターとしては、限定するものではないが、トリの白血球ウイルス(ALV)レトロウイルスベクター、マウスの白血球ウイルス(MLV)レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターが挙げられる。さらに、ベクターは、トリの白血球ウイルス(ALV)レトロウイルスベクター、マウスの白血球ウイルス(MLV)レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターのLTRを含む核酸配列であってもよい。プロモーターは、トリ輸卵管のコード配列の発現をもたらすことに十分である。コード配列は、固い殻の卵の卵白に沈着される外因性タンパク質をコードする。または、コード配列は、インターフェロン−α 2b(TPD IFN−α 2b)および遺伝子導入家禽由来のエリスロポイエチン(TPD EPO)および遺伝子導入家禽由来の顆粒球コロニー刺激因子などの遺伝子導入家禽由来のタンパク質などの外因性タンパク質をコードする。1つの実施態様において、本発明の方法で使用されるベクターは、トリおよびその卵における外因性タンパク質の発現に特に適しているプロモーターを含む。または、外因性コード配列の発現は、遺伝子導入トリの輸卵管および血液トリの卵の卵白において生じ得る。プロモーターとしては、限定するものではないが、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、MDOTプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、β−アクチンプロモーター(例えば、ニワトリβ−アクチンプロモーター)、マウス白血球ウイルス(MLV)プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、卵白アルブミンプロモーター、リゾチームプロモーター、コンアルブミンプロモーター、オボムコイドプロモーター、オボムチンプロモーターおよびオボトランスフェリンプロモーターが挙げられる。所望により、プロモーターは、オバルブミン−、リゾチーム−、コンアルブミン−、オボムコイド−、およびオボトランスフェリンプロモーター領域のセグメントなどの、少なくとも1つのプロモーター領域のセグメントであってもよい。1つの実施態様において、プロモーターは、オバルブミン−、リゾチーム−、コンアルブミン−、オボムコイド−、およびオボトランスフェリンプロモーターなどの1つ以上のプロモーターの組合せまたは融合体または1つ以上のプロモーターの部分の融合である。
【0036】
本発明の1つの態様は、輸卵管の筒部の管状腺細胞での発現に必要とされるエレメントを保持するものの、ベクター中に容易に組み込まれ得るのに十分に小さくなるように、オバルブミンプロモーターを切り詰めることおよび/またはオバルブミンプロモーターの重要な調節エレメントを凝縮することを含む。例えば、オバルブミンプロモーター領域のセグメントを使用してもよい。このセグメントは、オバルブミン遺伝子の5’隣接領域を含む。オバルブミンプロモーターセグメントの全長は、約0.88kb〜約7.4kbの長さであって、好ましくは約0.88kb〜約1.4kbの長さである。セグメントは好ましくは、オバルブミン遺伝子のステロイド依存性調節エレメントおよび陰性制御エレメントの両方を含む。セグメントはまた、所望により、オバルブミン遺伝子の5’非翻訳領域(5’UTR)由来の残基を含む。あるいは、プロモーターは、リゾチーム−、コンアルブミン−、オボムコイド−、およびオボトランスフェリン遺伝子のプロモーター領域のセグメントであってもよい。そのようなプロモーターの例としては、オボムコイド(MD)およびオボトランスフェリン(OT)プロモーター由来のエレメントからなる合成MDOTプロモーターである。
【0037】
本発明の別の態様において、トリゲノムに組込まれるベクターは、外因性コード配列に作動可能に連結されている構成的プロモーターを含む(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターおよびマウス白血病ウイルス(MLV)プロモーター)。あるいは、マウス乳ガンウイルス(MMTV)などの非構成的プロモーターを使用してもよい。
【0038】
本発明の他の態様は、生殖細胞組織の遺伝物質中に導入遺伝子を担持する遺伝子導入トリを提供する。さらに詳細には、導入遺伝子は作動および位置関係にある外因性遺伝子およびプロモーターを含んで、外因性遺伝子を発現する。外因性遺伝子は、トリ輸卵管および遺伝子導入トリの血液中で発現させてもよい。外因性遺伝子は、TPD IFN−α(例えば、IFN−α 2)およびTPD EPOおよびTPD G−CSFなどのサイトカインを含む医薬用タンパク質などの外因性タンパク質をコードする。外因性タンパク質は、固い殻の卵の卵白中に沈着する。
【0039】
本発明の別の態様は、トリ種に外因性であるタンパク質を含むトリ卵を提供する。本発明の使用は、輸卵管筒部の管腔へのタンパク質の分泌およびトリ卵の卵白への沈着を伴う輸卵管細胞での外因性タンパク質の発現を可能にする。卵中に内包されているタンパク質は、1gまでまたはそれ以上の量で存在してもよい。外因性タンパク質としては、限定するものではないが、TPD IFN−α 2およびTPD EPOおよびTPD G−CSFが挙げられる。
【0040】
本発明のさらに別の態様は、ヒトインターフェロン−α 2b(IFN−α 2b)の最適化されたコード配列、すなわち、遺伝子導入家禽由来のインターフェロン−α 2b(TPD IFN−α 2b)をコードする遺伝子導入家禽由来のインターフェロン−α 2bをコードする組換えの配列を含む、単離されたポリヌクレオチド配列を提供する。本発明はまた、TPD IFN−α 2bのポリヌクレオチド配列を含む単離されたタンパク質を含み、ここで、タンパク質はThr−106にてN-アセチル-ガラクトースアミン、ガラクトース、N-アセチル-グルコサミン、シアル酸およびその組合せを用いてO−グリコシル化されている。
【0041】
本発明はさらに、TPD IFN−α 2bのポリペプチド配列を含む医薬組成物を意図し、ここで、タンパク質はThr−106にてN−アセチル−ガラクトースアミン、ガラクトース、N−アセチル−グルコサミン、シアル酸およびその組合せを用いてO−グリコシル化されている。
【0042】
本発明の1つの態様は、本明細書にて開示するように作製した外因性タンパク質のコード配列を提供し、ここで、コード配列はトリ、例えば、ニワトリにおける発現に最適化されているコドンである。コドンの最適化は、トリ細胞において発現されるタンパク質の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上のコドン使用から決定してもよい。例えば、コドン使用は、ニワトリのオバルブミン、リゾチーム、オボムチンおよびオボトランスフェリンなどのタンパク質をコードする核酸配列から決定してもよい。例えば、外因性遺伝子のDNAコード配列は、ニワトリ(Gallus gallus)のオバルブミン、リゾチーム、オボムコイドおよびオボトランスフェリンタンパク質から作製したコドン使用頻度表と一緒にWisconsin PackageのBACKTRANSLATE(登録商標)プログラム, version 9.1 (Genetics Computer Group, Inc., Madison, WI)を使用して、最適化したコドンであってもよい。
【0043】
本発明の1つの態様は、ヒトエリスロポイエチン(EPO)の最適化されたコード配列、すなわち、遺伝子導入家禽由来のエリスロポイエチン(TPD EPO)をコードする遺伝子導入家禽由来のエリスロポイエチンをコードする組換えの配列を含む単離されたポリペプチド配列を提供する。
【0044】
本発明の別の態様は、第1および第2のコード配列、および第1および第2のコード配列に対して作動および位置関係にあるプロモーターを含むベクターを提供して、トリ輸卵管において第1および第2のコード配列を発現する。この態様において、ベクターは、第1と第2のコード配列の間に位置する配列内リボソーム進入部位(IRES)エレメントを含んでもよく、ここで、第1のコード配列はタンパク質Xをコードし、第2のコード配列はタンパク質Yをコードし、ここで、タンパク質Xおよびタンパク質Yの一方または両方は、固い殻の卵の卵(例えば、卵白)中に沈着される。
【0045】
例えば、タンパク質Xは、モノクローナル抗体の軽鎖(LC)であってもよく、タンパク質Yは、モノクローナル抗体の重鎖(HC)であってもよい。あるいは、第2のコード配列にコードされるタンパク質(例えば、酵素)は、第1のコード配列にコードされるタンパク質の翻訳後修飾を提供可能である。ベクターは所望により、ベクター中の各コード配列がIRESエレメントによって他方のコード配列から分離されるように、さらなるコード配列およびさらなるIRESエレメントを含む。本発明における使用が意図されるIRESを用いている他の例は、例えば、2005年1月31日に出願の米国特許出願11/047,184において開示されている(開示全体を出典明示により援用する)。
【0046】
本発明はまた、モノクローナル抗体、酵素および他のタンパク質を含む医薬用タンパク質などのタンパク質を含むトリの卵を産生する方法を意図している。そのような方法は、プロモーター、コード配列、および少なくとも1つのIRESエレメントを有するベクターを提供し;トリ胚性胚盤葉細胞にベクターを導入することによって遺伝子導入細胞または組織を作製し、ここで、ベクターの配列はトリゲノムにランダムに挿入されており;遺伝子導入細胞または組織からトリを得る。そのようにして得られた遺伝子導入トリは、輸卵管においてコード配列を発現し得、輸卵管管腔に分泌された得られたタンパク質は固い殻の卵の卵白中に沈着される。さらに、本発明は、組換えタンパク質を含む卵を産生する遺伝子導入トリの子孫を含む。典型的には、子孫は、トリの本質的に全ての細胞に導入遺伝子を含んでいるか、あるいは子孫のトリの細胞は導入遺伝子を全く含んでいないかのいずれかである。
【0047】
本発明の1つの重要な態様は、限定するものではないが、医薬用タンパク質を含む外因性ペプチドまたはタンパク質を含むトリの固い殻の卵(例えば、ニワトリの固い殻の卵)に関する。外因性ペプチドまたはタンパク質は、遺伝子導入トリの導入遺伝子によってコードされてもよい。1つの実施態様において、外因性ペプチドまたはタンパク質(例えば、医薬用タンパク質)はグリコシル化されている。タンパク質は、任意の有用な量で存在してもよい。1つの実施態様において、タンパク質は、約0.01μg/固い殻の卵〜約1g/固い殻の卵の間の範囲の量で存在する。別の実施態様において、タンパク質は、約1μg/固い殻の卵〜約1g/固い殻の卵の間の範囲の量で存在する。例えば、タンパク質は、約10μg/固い殻の卵〜約1g/固い殻の卵の間の範囲の量(例えば、約10μg/固い殻の卵〜約400mg/固い殻の卵の間の範囲)で存在してもよい。
【0048】
1つの実施態様において、外因性タンパク質(例えば、外因性医薬用タンパク質)は、卵の卵白中に存在する。1つの実施態様において、タンパク質は、約1ng/ml卵白〜約0.2g/ml卵白の間の範囲の量で存在する。例えば、タンパク質は、約0.1μg/ml卵白〜約0.2g/ml卵白の間の範囲の量で存在してもよい(例えば、タンパク質は、約1μg/ml卵白〜約100mg/ml卵白の間の範囲の量で存在してもよい)。1つの実施態様において、タンパク質は、約1μg/ml卵白〜約50mg/ml卵白の間の範囲の量で存在する。例えば、タンパク質は、約1μg/ml卵白〜約10mg/ml卵白の間の範囲の量で存在してもよい(タンパク質は、約1μg/ml卵白〜約1mg/ml卵白の間の範囲の量で存在してもよい)。
【0049】
本発明は、1つ以上の医薬用タンパク質を含む任意の有用なタンパク質を含む固い殻の卵の産生を意図する。そのようなタンパク質としては、限定するものではないが、ホルモン、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの部分、サイトカイン(例えば、GM−CSF、G−CSF、エリスロポイエチンおよびインターフェロン)ならびにCTLA4が挙げられる。本発明はまた、限定するものではないが、特定の有用なペプチド配列に融合させた免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの部分を含む融合タンパク質を含む固い殻の卵の産生を含む。1つの実施態様において、本発明は、抗体のFcフラグメントを含む固い殻の卵の産生を提供する。例えば、卵は、本発明によるFc−CTLA4融合タンパク質を含み得る。ベクターが導入された胚盤葉細胞から発生したトリは、G0世代であって、「ファウンダー」という。ファウンダートリは典型的に、挿入された各導入遺伝子についてのキメラである。すなわち、G0の遺伝子導入トリの細胞のいくつかだけが導入遺伝子を含む。また、G0世代を非遺伝子導入動物と交配させて、導入遺伝子についてヘミ接合性であり、本質的に全てのトリ細胞中に導入遺伝子を含むG1遺伝子導入の子孫を生じさせてもよい。G1ヘミ接合性子孫を非遺伝子導入動物と交配させて、G2ヘミ接合性子孫を生じさせてもよく、または導入遺伝子についてホモ接合性のG2子孫をともに生じさせてもよい。G1の子孫から得られ、導入遺伝子について陽性であるトリの実質的に全ての細胞が、導入遺伝子を含む。1つの実施態様において、同じ系統由来のヘミ接合性G2子孫を交配させて、導入遺伝子についてホモ接合性であるG3子孫を生じさせる。1つの実施態様において、ヘミ接合性G0動物同士を交配させて、動物の各細胞に2コピーの導入遺伝子を含むホモ接合性のG1子孫を生じさせる。これらは、特定の有用な育種法の単なる例に過ぎず、本発明は、当業者に公知の任意の育種法などのいずれの有用な育種法の利用も意図している。
【0050】
本発明の1つの態様は、ニワトリ由来の糖鎖付加パターンなどの家禽由来の糖鎖付加パターンを有する、本発明により産生されたタンパク質を含む組成物に関する。例えば、本発明は、本明細書にて開示する糖鎖付加パターンの1つ以上など、家禽由来の糖鎖付加パターンを有する医薬用タンパク質を含む。本発明はまた、本明細書にて開示する糖鎖付加パターンの1つ以上など、家禽由来の糖鎖付加パターンを有する医薬用ヒトタンパク質を含む。
【0051】
1つの態様において、本発明はG−CSF(ここで、G−CSFは家禽由来の糖鎖付加パターン、すなわち、遺伝子導入家禽由来のG−CSFまたはTPD G−CSF)を含む。1つ実施態様において、糖鎖付加パターンはヒト細胞および/またはCHO細胞において産生されるG−CSFの糖鎖付加パターン以外のものである。すなわち、組成物は、家禽由来の糖鎖(すなわち、糖鎖付加構造)を有するG−CSF分子を有しており、その糖鎖または糖鎖付加構造は、ヒト細胞および/またはCho細胞から得られたG−CSF上では見出されない。しかし、組成物はまた、CHO細胞および/またはヒト細胞から得られたG−CSF上で見出されるものと同じである糖鎖付加構造を有するG−CSF分子を含んでもよい。CHO細胞において産生されたヒトG−CSFの糖鎖付加が、以下において開示されている:Holloway, C.J., European J. of Cancer (1994) vol 30A, pS2-S6(出典明示により開示全体を援用する);Oheda et al (1988) J. Biochem., v 103, p 544-546(出典明示により開示全体を援用する)、およびAndersen et al (1994) Glycobiology, vol 4, p 459-467(出典明示により開示全体を援用する)。実施例20にて示すAおよびGなどの構造は、CHO細胞において産生されるG−CSFについて報告されている糖鎖付加構造と同じであるか、あるいは類似であり得るようである。1つの実施態様において、TPD G−CSFの糖鎖付加パターンは、哺乳動物細胞において産生されたG−CSFのパターン以外のものである。
【0052】
1つの実施態様において、本発明は単離されるべきG−CSFを提供する。すなわち、組成物中に含まれるG−CSFは、単離されたG−CSFであってもよい。例えば、G−CSFは卵白から単離されてもよい。単離されたG−CSFは、G−CSF分子のうち異なる糖鎖付加構造を有するG−CSF分子であってもよく、あるいは、単離されたG−CSFは、G−CSF分子種のうち唯一の特定の糖鎖付加構造を有する単離されたそれぞれのG−CSF種であってもよい。
【0053】
1つの実施態様において、本発明の組成物のG−CSFは、固い殻の卵の中に存在する。例えば、G−CSFは、本発明の遺伝子導入トリによって産卵された固い殻の卵の卵白中に存在する。すなわち、1つの実施態様において、本発明は、本発明のG−CSFを含むトリ(例えば、ニワトリ)の卵白に関する。1つの実施態様において、G−CSFは、約1μg/ml卵白を超える量で卵白中に存在する。例えば、G−CSFは、約2μg/ml卵白より多い量で卵白中に存在する(例えば、卵白1mlあたり約2μg〜約200μgの量で存在する)。
【0054】
本発明の1つの特定の態様において、G−CSFは、トリの輸卵管細胞においてグリコシル化される(例えば、ニワトリの輸卵管細胞においてグリコシル化される)。例えば、G−CSFは、輸卵管細胞において産生され、グリコシル化され得る。1つの実施態様において、G−CSFは管状腺細胞においてグリコシル化される(例えば、G−CSFは管状腺細胞において産生され、グリコシル化される)。
【0055】
G−CSFはスレオニン133にてグリコシル化されると考えられている。しかし、本発明は、G−CSF分子上のいずれの特定の部位での糖鎖付加に限定されるものではない。
【0056】
典型的には、本発明のG−CSFは、ヒトG−CSFである。1つの実施態様において、成熟G−CSFは図18Cのアミノ酸配列を有する。
【0057】
1つの実施態様において、本発明の組成物は、以下:
【化1】
でグリコシル化されているG−CSFを含む。
【0058】
本発明はまた、詳細には、これらの特定の糖鎖付加構造の1つを有するG−CSF分子を含む組成物に関する。そのような組成物はまた、1つ以上の他の糖鎖付加構造を有する1つ以上のG−CSF分子を含んでもよい。
【0059】
すなわち、1つの実施態様において、本発明は、詳細には、以下:
【化2】
を有するG−CSF分子を含む組成物、および以下:
【化3】
を有するG−CSF分子を含む組成物、および以下:
【化4】
を有するG−CSF分子を含む組成物、および以下:
【化5】
を有するG−CSF分子を含む組成物、および以下:
【化6】
を有するG−CSF分子を含む組成物、および以下:
【化7】
を有するG−CSF分子を含む組成物、および以下:
【化8】
[式中、Gal=ガラクトース、
NAcGal=N−アセチル−ガラクロサミン、
NAcGlu=N−アセチル−ガラクトサミンおよび
SA=シアル酸]
を有するG−CSF分子を含む組成物に関する。
【0060】
本発明はまた、治療有効量のTPD G−CSFを患者に投与する工程を包含する、患者において白血球カウントを増加させる方法に関する。典型的には、治療有効量は、所望の量によって患者において白血球カウントを増加させるTOD G−CSF量である。
【0061】
関連、本願明細書および当業者の知識から明らかなそのような任意の組合せにおいて含まれる特徴が互いに矛盾しないという条件で、本願明細書に記載の特徴のいずれの有用な組合せが本発明の範囲内に含まれる。
【0062】
さらに、本発明の目的および態様は、以下で説明する詳細な説明を、添付の図面(以下で簡単に説明する)と合わせて概観することでより明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
詳細な説明
特定の定義を本明細書において説明して、本発明を本明細書に記載するために使用する種々の用語の定義および範囲を示し、かつ定義する。
【0064】
「核酸またはポリヌクレオチド」としては、限定するものではないが、天然のヌクレオシド塩基アデニン、グアニン、シトシン、チミジンおよびウラシルを含む、真核生物のmRNA、cDNA、ゲノムDNA、ならびに合成DNAおよびRNA配列が挙げられる。用語はまた、1つ以上の修飾塩基を有する配列を含む。
【0065】
「治療用タンパク質」または「医薬用タンパク質」としては、全体または部分において薬物を構成するアミノ酸配列が挙げられる。「コード配列」または「読み取り枠」は、適切な調節配列の制御下に置かれた場合に、インビトロまたはインビボにおいて、ポリペプチドに、転写および翻訳され得る(DNAの場合)か、翻訳され得る(mRNAの場合)ポリヌクレオチドまたは核酸配列をいう。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の翻訳開始コドンおよび3’(カルボキシル)末端の翻訳終止コドンによって決定される。転写終結配列は通常、コード配列の3’側に位置する。コード配列は、非翻訳領域に5’側および/または3’側で隣接し得る。
【0066】
「エキソン」は、遺伝子が核転写物に転写される場合に、核スプライシングによってイントロンまたは反転配列が除去された後で、細胞質のmRNA上で発現される遺伝子の部分をいう。
【0067】
核酸「制御配列」または「調節配列」は、定義の宿主細胞において所定のコード配列の転写および翻訳に必要かつ十分である、プロモーター配列、転写開始および終止コドン、リボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、上流調節ドメイン、エンハンサーなどをいう。真核生物細胞に適切な制御配列の例は、プロモーター、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーである。所望の遺伝子の転写および翻訳に必要かつ十分である限り、これらの制御配列の全てが組換えベクター上に存在することが必要である。
【0068】
「作動可能または作動可能に連結された」とは、所望の機能が実施されるような、コードおよび制御配列の配置をいう。従って、コード配列に作動可能に連結された制御配列は、コード配列の発現をもたらすことができる。DNAポリメラーゼがプロモーター配列に結合し、コードされたタンパク質に転写され得るmRNAにコード配列が転写される場合、コード配列は細胞において転写調節領域の制御に作動可能に連結されているか、または制御下にある。制御配列がその発現を指令する限り、制御配列は、コード配列に近接する必要がある。従って、例えば、反転で翻訳されず、さらに転写もされない配列がプロモーター配列とコード配列の間に存在しており、プロモーター配列はまだ、コード配列に「作動可能に連結されている」と考えられ得る。
【0069】
用語「異種」および「外因性」は、これらの用語がコード配列および制御配列などの核酸配列と関連する場合に、組換え構築物の領域または特定の染色体座とは通常関連しない、および/または特定の細胞とは関連しない配列を示す。従って、核酸構築物の「外因性」領域は、天然の他の分子とは関連が見出されない別の核酸分子内にあるか、または結合している核酸セグメントと同一であるといえる。例えば、構築物の外因性領域は、天然のコード配列との関連は見出されない配列に隣接するコード配列を含む。外因性コード配列の別の例は、コード配列自体が天然には見出されない構築物である(例えば、天然の遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)。同様に、本発明の目的について、宿主細胞中では通常存在しない構築物または核酸で形質転換した宿主細胞も外因性であると考えられる。
【0070】
本明細書で使用する「外因性タンパク質」は、特定の組織または細胞中に天然では存在しないタンパク質、外因性発現構築物または導入遺伝子の発現産物であるタンパク質、または特定の組織または細胞では所定の量で天然には存在しないタンパク質をいう。卵に外因性であるタンパク質は、卵では通常見出されないタンパク質である。例えば、卵に外因性であるタンパク質は、産卵する動物の導入遺伝子中に存在するコード配列の発現の結果として卵中に存在するタンパク質であり得る。
【0071】
「内因性遺伝子」とは、特定の細胞と通常関連する天然の遺伝子またはそのフラグメントをいう。
【0072】
本明細書に記載の発現産物は、定義する化学構造を有するタンパク質性の物質からなり得る。しかし、タンパク質構造は多数の因子、特に、タンパク質に共通する化学修飾に依存している。例えば、全てのタンパク質は、イオン化可能なアミノおよびカルボキシル基を含むので、タンパク質は、酸性または塩基性塩の形態、あるいは中性塩の形態で得ることができる。一次アミノ酸配列は、糖分子(糖鎖付加)を使用するか、または、例えば、脂質、リン酸、アセチル基などとの共有またはイオン結合を含む、他の化学誘導体によって、誘導体化され得、しばしば糖類との関連によって生じる。これらの修飾は、インビトロまたはインビボで生じ得、ビボでは、翻訳後プロセッシング系を通じて宿主細胞によって実施される。そのような修飾は、分子の生物学的な活性を増加または減少させ得、そのように化学的に修飾された分子がまた本発明の範囲内になることが意図されている。
【0073】
クローニング、増幅、発現および精製の代替方法は、当業者に明らかである。代表的な方法が、Sambrook, Fritsch, and Maniatis, Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory (1989)にて開示されている。
【0074】
「ベクター」は、単鎖、二重鎖、管状またはスーパーコイル状DNAまたはRNAからなるポリヌクレオチドである。典型的なベクターは、以下の機能性遺伝子の発現に適切な距離で作動可能に連結された以下のエレメントからなり得る:複製起点、プロモーター、エンハンサー、5’mRNAリーダー配列、リボソーム結合部位、核酸カセット、終結およびポリアデニル化部位、ならびに選択可能なマーカー配列。1つ以上のこれらのエレメントが特定の適用において省略され得る。核酸カセットは、発現されるべき核酸配列の挿入のための制限部位を含み得る。機能性ベクターにおいて、核酸カセットは、翻訳開始および終結部位を含む、発現されるべき核酸配列を含む。イントロンは、所望により、構築物中、例えば、コード配列の5’側に含まれ得る。特定のコード配列が適切な調節配列を有するベクター中に配置されるように、ベクターは構築される。制御配列に関するコード配列の位置および配向は、コード配列が制御または調節配列の「制御」下で転写されるようになっている。目的の特定のタンパク質をコードする配列の改変は、本発明の目的を達成するために望ましい。例えば、いくつかの場合、配列を適切な配向とともに制御配列に結合させ得るように配列を改変するか;あるいは、読み枠を維持することが必要であり得る。制御配列および他の調節配列は、ベクターへの挿入より前にコード配列に連結され得る。あるいは、コード配列は、制御配列の調節性の制御を有しかつ調節性の制御下にあり、制御配列、および読み枠内にある適切な制限部位を既に含む発現ベクターに、直接クローニングされ得る。
【0075】
「プロモーター」は、RNAポリメラーゼが結合して遺伝子の転写を開始するDNA上の部位である。いくつかの実施態様において、プロモーターは配列の付加または欠失によって改変されるか、または天然および合成配列ならびに天然と合成配列の組合せであり得る配列を含む、別の配列で置換される。多くの真核生物プロモーターは、2つの型の認識配列、TATAボックスおよび上流プロモーター配列を含む。転写開始部位の上流に配置された上流プロモーターエレメントは、転写速度を決定し、TATAボックスの上流にあることが明らかな一方で、RNAポリメラーゼの正確な部位での転写の開始を指令することに関与している。エンハンサーエレメントはまた、連結されているプロモーターから転写を刺激され得るが、多くは特定の細胞型においてもっぱら機能している。SV40プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターおよびマウス白血病ウイルス(MLV)プロモーターなどのウイルス由来の多くのエンハンサー/プロモーターエレメントは、幅広い細胞型において全くの活性であって、「遍在性」といわれる。あるいは、マウス乳ガンウイルス(MMTV)プロモーターなどの構成的プロモーターもまた、本発明において使用され得る。コード配列が目的のポリペプチドをコードする場合、コード配列は適切なmRNA分子の産生をブロックし得る潜在性のスプライス部位を欠く、および/または異常にスプライスされたか異常であるmRNA分子を産生するという条件で、クローニング部位に挿入される核酸配列は目的のポリペプチドをコードする任意の読み取り枠を有し得る。
【0076】
用語「家禽由来」は、家禽で産生されるか家禽から得られた組成物または物質をいう。「家禽」は、限定するものではないが、ニワトリ、アヒル、シチメンチョウ、ウズラおよび走禽類を含む、家畜として飼育され得るトリをいう。例えば、「家禽由来」は、ニワトリ由来、シチメンチョウ由来および/またはウズラ由来をいい得る。
【0077】
「マーカー遺伝子」は、正確に形質導入された細胞の同定および単離を可能にするタンパク質をコードする遺伝子である。適切なマーカー配列としては、限定するものではないが、緑色、黄色および青色蛍光タンパク質の遺伝子(それぞれGFP、YFPおよびBFP)が挙げられる。他の適切なマーカーとしては、チミジンキナーゼ(tk)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)およびアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)遺伝子が挙げられる。後者は、カナマイシン、ネオマイシンおよびギェネテシンなどのアミノグリコシド系抗生物質に対する抵抗を与える。これらのマーカー遺伝子、およびクロラムフェニコールアセチル基転移酵素(CAT)、β−ラクタマーゼ、β−ガラクトシダーゼ(β−gal)をコードするマーカー遺伝子など他のマーカー遺伝子が、所望のタンパク質を発現する遺伝子とともに主要な核酸カセットに組み込まれ得るか、あるいは選択マーカーが別々のベクター上に含まれて、同時形質導入され得る。
【0078】
「レポーター遺伝子」は、レポーター遺伝子がコードするタンパク質の存在によって細胞中でのその活性を「報告」するマーカー遺伝子である。
【0079】
「レトロウイルス粒子」、「形質導入用粒子」または「形質導入粒子」は、非ウイルスDNAまたはRNAを細胞に形質導入できる、複製欠損または複製コンピテントウイルスをいう。
【0080】
用語「形質転換」、「形質導入」および「形質移入」は全て、ポリヌクレオチドのトリの胚盤葉細胞への導入を示す。「筒部」は、卵の卵白タンパク質を合成し、分泌する管状腺細胞を含む、卵管漏斗と峡部との間の輸卵管の部分である。
【0081】
本明細書で使用する「MDOTプロモーター」は、組織のうちとりわけ輸卵管の筒部の管状腺細胞において活性である合成プロモーターである。MDOTは、オボムコイド(MD)およびオボトランスフェリンプロモーター由来のエレメントからなる(図13)。
【0082】
用語「最適化」は「最適化されたコード配列」に関連して使用され、ここで、卵白タンパク質オバルブミン、リゾチーム、オボムコイドおよびオボトランスフェリン中に見出される特定の各アミノ酸について最も頻繁に使用されるコドンは、本発明のベクターに挿入されている、最適化されたヒトインターフェロン−α 2b(IFN−α 2b)の設計において使用される。さらに詳細には、最適化されたヒトIFN−α 2bについてのDNA配列は、雌鳥の輸卵管のコドンの使用頻度に基づいており、ニワトリ(Gallus gallus)のオバルブミン、リゾチーム、オボムコイドおよびオボトランスフェリンタンパク質から作製したコドン使用頻度表と一緒にWisconsin PackageのBACKTRANSLATE(登録商標)プログラム, version 9.1(Genetics Computer Group, Inc., Madison, WI)を使用して、作製される。例えば、4つの卵白タンパク質におけるアミノ酸アラニンの4つのコドンの使用頻度の割合は、GCUについて34%、GCCについて31%、GCAについて26%、およびGCGについて8%である。従って、GCUは、最適化されたヒトIFN−α 2bコード配列において、大部分のアラニンについてコドンとして使用されている。最適化されたヒトIFN−α 2bについての遺伝子を含むベクターは、家禽の組織および卵において形質導入された家禽由来のIFN−α 2b(TPD IFN−α 2b)を発現する形質導入トリを産生するために使用される。同様に、上記の方法は、本発明によって産生され得るヒトエリスロポイエチン(EPO)または他のタンパク質などの他のコード配列タンパク質の設計に用いられる。
【0083】
本発明の方法によって、導入遺伝子はトリの胚性細胞に導入されて、生殖系列の組織の遺伝物質中に導入遺伝子を担持する、遺伝子導入ニワトリ、遺伝子導入シチメンチョウ、遺伝子導入ウズラおよび他のトリ種を産生できる。胚盤葉細胞は、代表的には、ステージVII〜XIIの細胞またはその等価物であって、1つの実施態様において、ステージX付近である。本発明において有用な細胞はとしては、胚性胚(EG)細胞、胚性幹(ES)細胞、および始原生殖細胞(PGC)が挙げられる。胚性胚盤葉細胞は新たに単離され、培養物中で維持されるか、あるいは胚中に存在してもよい。
【0084】
本発明の方法を実施することに有用なベクターを本明細書に記載する。これらのベクターは、外因性コード配列のトリゲノムへの安定導入に使用され得る。あるいは、ベクターは、トリの特定の組織、例えば、トリの輸卵管組織において外因性タンパク質を産生するために使用され得る。ベクターはまた方法において使用されて、外因性タンパク質を含むトリの卵を産生し得る。1つの実施態様において、コード配列およびプロモーターはともに、胚盤葉細胞への導入前に、5’および3’LTRの間に位置する。1つの実施態様において、ベクターはレトロウイルス性であって、コード配列およびプロモーターはともに、レトロウイルスベクターの5’および3’LTRの間に位置する。1つの有用な実施態様において、LTRまたはレトロウイルスベクターは、トリ白血病ウイルス(ALV)、マウス白血病ウイルス(MLV)またはレンチウイルスに由来する。
【0085】
1つの実施態様において、ベクターはコード配列に作動可能に連結されているシグナルペプチドコード配列を含んでおり、細胞での翻訳に際して、シグナルペプチドはベクターによって発現された外因性タンパク質の固い殻の卵の卵白への分泌を指令する。ベクターは、マーカー遺伝子(ここで、マーカー遺伝子はプロモーターに作動可能に連結されている)を含み得る。
【0086】
いくつかの場合において、本発明のベクターの胚性胚盤葉細胞への導入は、新たに単離されたか、培養中であるかのいずれかである胚性胚盤葉細胞を用いて実施される。次いで、遺伝子導入細胞は、代表的には、卵中のレシピエント胚盤葉の下の胚下腔に注入される。いくつかの場合において、しかし、ベクターは胚盤葉胚の細胞に直接送達される。
【0087】
本発明の1つの実施態様において、胚盤葉細胞を形質移入し、トリゲノムへの安定した組込みを生じるために使用されるベクターは、トリ輸卵管の筒部の管状腺細胞においてコード配列を発現するような作動および位置関係にあるコード配列およびプロモーターを含み、ここで、コード配列は、固い殻の卵の卵白に沈着される外因性タンパク質をコードする。プロモーターは、所望により、管状腺細胞におけるコード配列の発現を指令するために十分大きなオバルブミンプロモーターの領域のセグメントであってもよい。本発明は、配列がベクター中に容易に組み込まれ得るために十分小さい一方、輸卵管の筒部の管状腺細胞における発現に必要とされる配列を保持するように、オバルブミンプロモーターを切断すること、および/またはオバルブミンプロモーターの重要な調節エレメントを凝縮することを含む。1つの実施態様において、オバルブミンプロモーター領域のセグメントが使用され得る。このセグメントは、オバルブミン遺伝子の5’隣接領域を含む。オバルブミンプロモーターセグメントの全長は、約0.88kb〜約7.4kbの長さであってもよく、好ましくは、約0.88kb〜約1.4kbの長さである。セグメントは、好ましくは、オバルブミン遺伝子のステロイド依存性調節エレメントおよび陰性調節エレメントの両方を含む。セグメントはまた、所望により、オバルブミン遺伝子の5’非翻訳領域(5’UTR)由来の残基を含む。従って、プロモーターは、オバルブミン−、リゾチーム−、コンアルブミン−、オボムコイド−、オボトランスフェリン−またはオボムコイド遺伝子由来のプロモーター領域に由来してもよい(図14)。そのようなプロモーターの例は、オボムコイドおよびオボトランスフェリンプロモーター由来のエレメントからなる合成MDOTプロモーターである(図13)。プロモーターはまた、リゾチームプロモーターなどの、筒部に対してかなりではあるものの完全にではなく特異的なプロモーターであり得る。プロモーターはまた、マウス乳ガンウイルス(MMTV)プロモーターであってもよい。あるいは、プロモーターは、構成的プロモーター(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、MDOTプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、マウス白血球ウイルス(MLV)プロモーターなど)であってもよい。本発明の好ましい実施態様において、プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、MDOTプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、マウス白血病ウイルス(MLV)プロモーター、マウス乳ガンウイルス(MMTV)プロモーター、オバルブミンプロモーター、リゾチームプロモーター、コンアルブミンプロモーター、オボムコイドプロモーター、オボムチンプロモーター、およびオボトランスフェリンプロモーターである。所望により、プロモーターは、プロモーターは、オバルブミン−、リゾチーム−、コンアルブミン−、オボムコイド−およびオボトランスフェリン−プロモーター領域のセグメントなど、少なくとも1つのプロモーター領域のセグメントであり得る。1つの実施態様において、プロモーターは、CMVプロモーターである。
【0088】
図1Aおよび1Bは、オバルブミンプロモーター発現ベクターの例を示している。遺伝子Xは、外因性タンパク質をコードするコード配列である。湾曲した矢印は、転写開始部位を示す。1つの例において、ベクターは、オバルブミン遺伝子の5’隣接領域の1.4kbを含む(図1A)。図1Aの「1.4kbのプロモーター」の配列は、オバルブミン転写開始部位の約1.4kb上流(1.4kb)から開始し、オバルブミン遺伝子の5’非翻訳領域に約9残基伸びる配列に対応している。約1.4kbの長さのセグメントは、2つの重要な調節配列、ステロイド依存性調節エレメント(SDRE)および陰性調節エレメント(NRE)を有している。NREは、ホルモン(例えば、エストロゲン)の非存在下で遺伝子の発現をブロックするいくつかの陰性調節エレメントを含むので、NREといわれる。0.88kbより短いセグメントがまた、両方のエレメントを含む。別の例において、ベクターは、オバルブミン遺伝子の5’隣接領域約7.4kbを含み、さらなるエレメント(HS−IIIおよびHS−IV、一方はエストロゲンによる遺伝子の誘導が可能な機能性エレメントを含むことが知られている)を有する(図IB)。6kbより短いセグメントはまた、4つのエレメント全てを含み、所望により、本発明において使用してもよい。本発明によるランダムな組込みに使用される各ベクターは、好ましくは、ゲノムの挿入部位にて活性化および不活化の両方から遺伝子を絶縁するニワトリβ−グロビン遺伝子座由来の1.2kbのエレメント少なくとも1つを含む。1つの実施態様において、2つのインスレーター配列がオバルブミン構築物の一方の末端に付加される。β−グロビン遺伝子座において、インスレーター配列は遠位性の遺伝子座調節領域(LCR)がグロビン遺伝子ドメインの上流遺伝子を活性化するのを阻害する働きをする。インスレーター配列は遺伝子導入ハエにおいて位置効果を克服することが示されており、挿入部位に対する陽性および陰性効果両方から守り得ることを示している。導入遺伝子は複数または直列のコピーで組み込まれ得、隣接する導入遺伝子のインスレーターに隣接する一連の遺伝子を作り出すので、インスレーター配列は、遺伝子の5’側または3’側のいずれかにおいてのみ必要とされる。別の実施態様において、インスレーター配列は、ベクターに連結されるが、ベクターと一緒に同時に形質移入される。この場合、ベクター及び配列は、ゲノムへのランダムな組込みプロセスによって細胞中で直列に繋げられる。
【0089】
各ベクターはまた所望によりマーカー遺伝子を含み、発現ベクターを安定して組込んでいる細胞クローンの同定および濃縮を可能にし得る。マーカー遺伝子の発現は、広範な細胞型において高レベルの発現を駆動させる遍在性プロモーターによって駆動される。本発明の1つの実施態様において、マーカー遺伝子はリゾチームプロモーターによって駆動されるヒトインターフェロンである。別の実施態様において、緑色蛍光タンパク質(GFP)レポーター遺伝子(Zolotukhin et al., J. Virol 70:4646-4654 (1995))が、ツメガエル伸長因子1−α(ef−1−α)プロモーターによって駆動される(Johnson and Krieg, Gene 147:223-26 (1994))。ツメガエルef−1−αプロモーターは、広範な細胞型において発現される強力なプロモーターである。GFPは、その蛍光を増強する変異を含んでおり、ヒト化されているか、あるいは、コドンがヒト遺伝子のコドン使用頻度プロフィールに調和するように改変されている。トリのコドン使用頻度はヒトのコドン使用頻度と事実上同じなので、遺伝子のヒト化形態もまたトリの胚盤葉細胞において高度に発現される。別の実施態様において、マーカー遺伝子は、遍在性プロモーター、HSV tk、CMV、β−アクチンまたはRSVの1つに作動可能に連結される。
【0090】
ヒトおよびトリのコドン使用頻度がよく調和されている一方で、非脊椎動物の遺伝子が導入遺伝子におけるコード配列として使用される場合、非脊椎動物の遺伝子配列は改変されて、コドンの使用頻度がヒトおよびトリのものに類似するように適切なコドンに変化させる。
【0091】
胚盤葉細胞の形質移入は、当業者に公知のいくつもの方法によって媒介されてもよい。ベクターの細胞への導入は、まず核酸を細胞膜の通過を容易にすることに役立つポリリシンまたは陽イオン性脂質と混合することによって促進され得る。しかし、ベクターの細胞への導入は、好ましくは、リポソームまたはウイルスなどの送達ビヒクルの使用によって達成される。本発明のベクターを胚盤葉細胞に導入するために使用され得るウイルスとしては、限定するものではないが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、単純ヘルペスウイルスおよびワクシニアウイルスが挙げられる。胚盤葉細胞を形質移入する1つの方法において、パッケージされたレトロウイルスに基づくベクターが使用されて、ベクターを胚性胚盤葉細胞に送達され、ベクターがトリゲノムに組込まれる。
【0092】
レトロウイルス性形質導入粒子を胚中の胚性胚盤葉細胞に送達するための別法として、レトロウイルスを産生するヘルパー細胞が胚盤葉に送達され得る。導入遺伝子のトリゲノムへのランダムな導入に有用なレトロウイルスは、複製欠損トリ白血病ウイルス(ALV)、複製欠損マウス白血病ウイルス(MLV)またはレンチウイルスである。適切なレトロウイルスベクターを作製するために、pNLBベクターが、オバルブミンプロモーターおよびレトロウイルスゲノムの5’および3’末端反復配列(LTR)の間の1つ以上の外因性遺伝子の領域を挿入することによって改変される。本発明は、管状腺細胞において活性であるプロモーターの下流に入れられた任意のコード配列が、管状腺細胞において発現されることを意図している。例えば、オバルブミンプロモーターがオバルブミンタンパク質の発現を駆動させ、輸卵管管状腺細胞において活性であるので、オバルブミンプロモーターは輸卵管筒部の管状腺細胞において発現される。培養輸卵管管状腺細胞においてアッセイした場合、7.4kbのオバルブミンプロモーターが最も活性な構築物を作り出すことが見出されている一方、レトロウイルス性ベクターにおける使用のために、好ましくは、オバルブミンプロモーターは短縮される。1つの実施態様において、レトロウイルス性ベクターは、1.4kbのオバルブミンプロモーターセグメントを含み;0.88kbのセグメントもまた十分である。
【0093】
本発明のベクターのいずれもまた、所望により、輸卵管の管状腺細胞からベクターのコード配列によって発現されるタンパク質の分泌を指令するシグナルペプチドをコードするコード配列を含んでもよい。本発明のこの態様は、本発明の方法を使用してトリの卵中に沈着され得る外因性タンパク質の範囲を有効に広げる。外因性タンパク質が分泌されない場合、コード配列を含むベクターは改変されて、リゾチーム由来のシグナルペプチドをコードする約60bpを含むDNA配列を含む。シグナルペプチドがDNAによってコードされるタンパク質のN末端に位置するように、シグナルペプチドをコードするDNA配列は挿入される。
【0094】
図2A〜2Dは、適切なレトロウイルス性ベクター構築物の例を示している。ベクター構築物は、5’および3’隣接LTRとともにトリゲノムに挿入される。Neoは、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子である。湾曲した矢印は転写開始部位を示す。図2Aおよび2Bはリゾチームシグナルペプチド(LPS)をコードする配列を有するLTRおよび輸卵管転写物を示す一方、図2Cおよび2Dは、そのような配列を有していない転写物を示している。レトロウイルス性ベクターのストラテジーには2つの部分がある。真核生物のシグナルペプチドを含むいずれのタンパク質も、図2Bおよび2Dで示すベクターにクローニングされ得る。通常分泌されないいずれのタンパク質も、図2Aおよび2Bに示すベクターにクローニングされ、管状腺細胞からの分泌が可能になり得る。
【0095】
図2Eは、外因性遺伝子をリゾチームシグナルペプチドベクターにクローニングするためのストラテジーを示す。2つの酵素を用いた消化の後に、増幅された遺伝子のプラスミドへの挿入を可能にする制限酵素部位を含むオリゴヌクレオチドプライマーの対を使用して、コード配列、遺伝子Xのコピーを増幅するために、ポリメラーゼ連鎖反応法が使用される。5’側および3’側オリゴヌクレオチドは、それぞれBsu36IおよびXbaI制限部位を含む。本発明の別の態様は、本発明の任意のベクターにおける配列内リボソーム進入部位(IRES)エレメントの使用を含み、ジシストロニックまたはポリシストロニックなmRNA由来の2つ以上のタンパク質の翻訳を可能にする(実施例15)。コード配列はIRESによってもう一方のコード配列から分離されるように、IRES単位は、1つ以上のさらなるコード配列の5’末端に融合され、次いで、ベクターの最初のコード配列の末端に挿入される(図2F、15Aおよび15D)。一方のコード配列は他方のコード配列の産物を修飾可能な酵素をコードし得るので、本発明のこの態様に従うことで産物の翻訳後修飾が容易になる。例えば、第1のコード配列はヒドロキシル化されるコラーゲンをコードしてもよく、第2のコード配列によってコードされる酵素によって活性化される。図2Fのレトロウイルス性ベクターの例において、配列内リボソーム進入部位(IRES)エレメントは、外因性コード配列(遺伝子Xおよび遺伝子Y)の間に位置する。IRESは、オバルブミンプロモーターなどのプロモーターによって転写が指令される転写物から、タンパク質Xおよびタンパク質Yの両方が翻訳されることを可能にする。湾曲した矢印は、転写開始部位を示している。遺伝子Xによってコードされるタンパク質の発現は、管状腺細胞において最も高いことが期待され、遺伝子Xは特異的に発現されるが、分泌されない。遺伝子Yによってコードされるタンパク質もまた、管状腺細胞において特異的に発現されるが、効率的に分泌されるので、タンパク質Yは卵中にパッケージされる。図15Aおよび15Dのレトロウイルス性ベクターにおいて、ヒトモノクローナル抗体の軽鎖(LC)および重鎖(HL)が脳心筋炎ウイルス(EMCV)由来でIRESの配置による単一のベクター、pCMV−LC−emcvIRES−HCから発現される。転写はCMVプロモーターによって駆動される(Murakami et al. (1997) ”High-level expression of exogenous genes by replication-competent retrovirus vectors with an internal ribosomal entry site” Gene 202:23-29;Chen et al. (1999) ”Production and design of more effective avian replication-incompetent retroviral vectors” Dev. Biol. 214:370-384;Noel et al. (2000) ”Sustained systemic delivery of monoclonal antibodies by genetically modified skin fibroblasts” J. Invest. Dermatol. 115:740-745を参照のこと)。
【0096】
本発明の別の態様において、産生されるRNAに安定性を与えるために、本発明の任意の方法において使用されるベクターのコード配列には3’非翻訳領域(3’UTR)が提供される。3’UTRがレトロウイルス性ベクターに付加される場合、3’UTRの付加がゲノムRNA全長の転写に干渉しないように、プロモーター、遺伝子Xおよび3’UTRの配向は構築物において反転されていなければならない。1つの実施態様において、3’UTRはオバルブミンまたはリゾチーム遺伝子のものであるか、または筒部細胞、すなわち、SV40の後半領域において機能性である任意の3’UTRであってもよい。
【0097】
本発明の別の実施態様において、構成的プロモーター(例えば、CMV)は、トリの筒部において導入遺伝子のコード配列を発現させるために使用される。この場合、発現は筒部に限定されず;発現はまた、トリ内の他の組織(例えば、血液)においても生じる。構成的プロモーターおよびコード配列を含むそのような導入遺伝子の使用は、輸卵管でのタンパク質の発現、および続くタンパク質の卵白への分泌をもたらすか、または駆動させるために特に適切である(例えば、ニワトリにおけるIFN−α 2bの発現用pNLB−CMV−IFNベクターなどのCMV駆動構築物の例である図8Aを参照のこと)。
【0098】
図3Aは、複製欠損トリ白血病ウイルス(ALV)ベースのベクターpNLB、本発明における使用に適切なベクターの略図を示している。pNLBベクターにおいて、ALVベクターゲノムの大部分は、ネオマイシン耐性遺伝子(Neo)およびβ−ガラクトシダーゼをコードするlacZ遺伝子によって置換される。図3Bは、lacZがCMVプロモーターおよびβ−ガラクタマーゼコード配列(β−LaまたはBL)によって置換されているベクターpNLB−CMV−BLを示している。ベクターの構築は、詳細な実施例において報告している(実施例1、下記参照)。β−ラクタマーゼタンパク質は、天然のシグナルペプチドであって;従って、血液および卵白において見出される。
【0099】
トリ胚にpNLB−CMV−BLベクターが形質移入される(実施例2、下記参照)。得られた安定形質移入雌鳥由来の卵の卵白は、卵1個あたり、分泌され、活性であるβ−ラクタマーゼ60マイクログラム(μg)までを含む(実施例2および3、下記参照)。
【0100】
図8Aおよび8Bは、それぞれインターフェロン−α 2b(IFN−α 2b)を発現するために使用されるpNLB−CMV−IFNベクター、およびエリスロポイエチン(EPO)を発現するために使用されるpNLB−MDOT−EPOベクターを示す。両方の外因性タンパク質(EPO、IFN)が、トリ、好ましくはニワトリおよびシチメンチョウにおいて発現される。
【0101】
pNLB−MDOT−EPOベクターが、BLコード配列をEPOコード配列と置換することで作製される(実施例10、下記参照)。1つの実施態様において、MDOTと呼ばれる合成プロモーターが、EPOの発現を駆動させるために用いられる。MDOTは、オボムコイドおよびオボトランスフェリンプロモーター両方由来のエレメントを含む。ヒトEPOについてのDNA配列は、ニワトリ(Gallus gallus)のオバルブミン、リゾチーム、オボムコイドおよびオボトランスフェリンタンパク質から作製したコドン使用頻度表と一緒にWisconsin PackageのBACKTRANSLATE(登録商標)プログラム, version 9.1 (Genetics Computer Group, Inc., Madison, WI)を使用して作製された、雌鳥輸卵管に最適化されたコドン使用頻度に基づく。EPOのDNA配列は合成され、ベクターにクローニングされ、得られたプラスミドがpNLB−MDOT−EPOである(pAVIJCR−A145.27.2.2ともいう)。1つの実施態様において、形質移入用粒子(すなわち、形質移入粒子)がベクター用に作製され、これらの形質移入粒子は、胚に注入するために使用され得る適切な濃度を決定するために用量設定される。次いで、卵に形質移入用粒子が注入され、卵は21日後に孵化する。
【0102】
次いで、孵化後1週間のヒヨコから収集した血清サンプルのELISAアッセイによって、EPOレベルなどの外因性タンパク質レベルが測定され得る。交配のためにオスのトリを選択され、ここで、血清中にEPO導入遺伝子を含むG0雄鳥についてトリがスクリーニングされる。好ましくは、血清サンプル中に最も高いレベルの導入遺伝子を有する雄鳥を、人工授精によって非遺伝子導入雌鳥と交配させる。導入遺伝子の存在について、血液DNAサンプルをスクリーニングする。通常、多数のヒヨコが遺伝子導入体(G1トリ)であることが見出される。ヒトEPOの存在について、ヒヨコの血清が試験される(例えば、ELISAアッセイ)。ヒトEPOの存在について、G1の雌鳥由来の卵の卵白もまた試験される。本発明の卵中に存在するEPO(すなわち、ヒトEPOの最適化されたコード配列由来)は、生物学的に活性である(実施例11)。
【0103】
同様に、BLコード配列をIFNコード配列と置換することによってpNLB−CMV−IFNベクター(図8A)が作製される(実施例12、下記参照)。1つの実施態様において、構成的サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターが、IFNの発現を駆動させるために用いられる。さらに詳細には、IFNコード配列は、サイトメガロウイルス(CMV)媒介即時型プロモーターおよびSV40ポリA部位によって制御される。図8Aは、ニワトリおよびシチメンチョウなどのトリにおいてIFNを発現させるために使用されるpNLB−CMV−IFNを示している。ヒトIFN−α 2bに最適化されたコード配列を作製し、ここで、卵白タンパク質、オバルブミン、リゾチーム、オボムコイドおよびオボトランスフェリンにおいて見出される特定の各アミノ酸で最も頻繁に使用されるコドンを、本発明のベクターに挿入するヒトIFN−α 2b配列の設計において使用する。より詳細には、最適化されたヒトIFN−α 2bについてのDNA配列(図11A)は雌鳥の輸卵管の最適化されたコドン使用頻度に基づいており、ニワトリ(Gallus gallus)のオバルブミン、リゾチーム、オボムコイドおよびオボトランスフェリンタンパク質から作製したコドン使用頻度表と一緒にWisconsin PackageのBACKTRANSLATE(登録商標)プログラム, version 9.1 (Genetics Computer Group, Inc., Madison, WI)を使用して、作製される。例えば、4つの卵白タンパク質におけるアミノ酸アラニンの4つのコドンの使用頻度の割合は、GCUについて34%、GCCについて31%、GCAについて26%、およびGCGについて8%である。従って、GCUは、最適化されたヒトIFN−α 2bコード配列において、大部分のアラニンについてコドンとして使用されている。最適化されたヒトIFN−α 2b配列についての遺伝子を含むベクターは、組織および卵においてTPD IFN−α 2bを発現する遺伝子導入トリを作製するために使用する。
【0104】
ベクター用に形質移入用粒子(すなわち、形質移入粒子)を作製し、胚に注入するために使用し得る適切な濃度を決定するために、用量設定をする(実施例2、下記参照)。上記のように、キメラトリを作製した(実施例13も参照のこと、下記参照)。Speksnijder手順(米国特許第5,897,998号)に従ってトリ卵に窓を作り、形質移入用粒子を卵に注入する。注入後約21日で卵は孵化する。孵化1週間後にヒヨコから収集した血清サンプルから、hIFNレベルを測定した(例えば、ELISAアッセイ)。EPOと同様に(上記)、交配のためにオスの鳥を選択する。血清中にIFN導入遺伝子を含むG0雄鳥についてスクリーニングするために、雄鳥の血清サンプルからDNAが抽出される。血清サンプル中に最も高いレベルの導入遺伝子を有する雄鳥を、人工授精によって非遺伝子導入雌鳥と交配させる。導入遺伝子の存在について、血液DNAサンプルがスクリーニングされる。hIFNの存在について、遺伝子導入雄鳥の血清が試験される(すなわち、ELISAアッセイ)。外因性タンパク質が確認される場合、非遺伝子導入雌鳥の精子が人工授精に使用される。ここで、特定の割合の子孫は導入遺伝子を含む(例えば、50%以上)。IFN(すなわち、ヒトIFNの最適化されたコード配列由来)が本発明の卵中に存在する場合、IFNは生物学活性について試験される。EPOと同様に、そのような卵は通常、TPD IFN−α 2bなどの生物学的に活性なIFNを含む(図11B)。
【0105】
トリ輸卵管における外因性タンパク質の産生および外因性タンパク質を含む卵の産生を提供する本発明の方法は、適切なベクターの提供およびベクターの胚性胚盤葉細胞への導入に続き、ベクターがトリゲノムに組込まれるようにさらなる工程を含む。続く工程は、前の工程において産生された遺伝子導入胚盤葉細胞から成熟遺伝子導入トリを得ることを含む。所望により、遺伝子導入胚盤葉細胞からを得ることは、遺伝子導入胚盤葉細胞を胚に移し、胚が完全に発生することを可能にし、結果として胚が発生可能になることで、細胞はトリに組込まれることになる。上記のように、得られたヒヨコは成長して成熟する。1つの実施態様において、胚盤葉胚の細胞は、胚の中で直接ベクターを形質移入または形質導入される(実施例2)。得られた胚は発生させられ、ヒヨコは成熟される。
【0106】
いずれにせよ、遺伝子導入胚盤葉細胞から作製した遺伝子導入トリは、ファウンダーとして知られている。いくつかのファウンダーは、輸卵管の筒部における管状腺細胞に導入遺伝子を担持する。これらのトリは、輸卵管において導入遺伝子によってコードされた外因性タンパク質を発現する。外因性タンパク質はまた、輸卵管に加えて他の組織(例えば、血液)において発現され得る。外因性タンパク質が適切なシグナル配列を含む場合、外因性タンパク質は輸卵管の管腔および卵の卵白に分泌される。いくつかのファウンダーは生殖系列ファウンダーである(実施例8および9)。生殖系列ファウンダーは、生殖系列組織の遺伝物質中に導入遺伝子を担持し、また、外因性タンパク質を発現する輸卵管筒部の管状腺細胞中に導入遺伝子を担持し得る。従って、本発明によれば、遺伝子導入トリ外因性タンパク質を発現する管状腺細胞を有し、遺伝子導入トリの子孫もまた、外因性タンパク質を発現する輸卵管筒部の管状腺細胞を有する。あるいは、子孫は、トリの特定の組織において外因性遺伝子を発現することによって決定される表現型を表す(実施例6、表2)。本発明の実施態様において、遺伝子導入トリは、ニワトリまたはシチメンチョウである。
【0107】
本発明は、ヒトおよび動物の医薬品、診断薬および家畜の飼料添加物として使用するタンパク質を含む、所望のタンパク質を低コストで大規模に発現させるために使用され得る。例えば、本発明は、タンパク質、および卵白にタンパク質を含む遺伝子導入トリによって産卵される卵を産卵する遺伝子導入トリを含む。本発明は、タンパク質のコード配列が、本発明によって輸卵管細胞に導入され得るという要件で、医薬用タンパク質を含む任意の所望タンパク質の産生における使用を意図する。実際、インターフェロン−α 2b、GM−CSF、インターフェロンβ、エリスロポイエチン、G−CSF、CTLA4−Fc融合タンパク質およびβ−ラクタマーゼを含む、本発明による異種性の作製についてこれまでに試験した全てのタンパク質は、本明細書において開示する方法を用いてうまく産生されている。
【0108】
本明細書において開示するヒトタンパク質の産生は、特定の目的を有する。本明細書にて開示する、ヒト形態が存在する各タンパク質のヒト形態は、本発明による産生に意図される。
【0109】
本明細書にて開示する製造について意図されるタンパク質としては、限定するものではないが、ヒト成長ホルモン、インターフェロン、リゾチーム、およびβ−カゼイン、アルブミン、α−1アンチトリプシン、アンチトロンビンIII、コラーゲン、第VIII因子、第IX、第X因子(など)、フィブリノゲン、インスリン、ラクトフェリン、プロテインC、エリスロポイエチン(EPO)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子融合タンパク質(GM−CSF)、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ソマトトロンビンおよびキモトリプシンを含む、成長ホルモン、サイトカイン、構造タンパク質および酵素が挙げられる。ヒト腫瘍細胞上の表面抗原に結合し、それらを破壊する免疫毒素を含む、改変免疫グロブリンおよび抗体が、本明細書に開示するように製造され得る。
【0110】
本明細書で開示するように産生され得る治療用タンパク質の他の詳細な例としては、限定するものではないが、第VIII因子、bドメイン欠失第VIII因子、活性化第VII因子、第IX因子、抗凝固薬;ヒルジン、アルテプラーゼ、tpa、レテプラーゼ、tpa、5つのドメインのうち3つを欠失させたtpa、インスリン、インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングラルギン、長時間作用性インスリンアナログ、hgh、グルカゴン、tsh、フォリトロピン−β、fsh、gm−csf、pdgh、IFN−α 2、IFN−α 2a、IFN−α 2b、inf−α、inf−β 1b、ifn−β 1a、ifn−γ1b、il−2、il−11、hbsag、ospa、Tリンパ球抗原に対するマウスmab、tag−72に対するマウスmab、腫瘍付随糖タンパク質、血小板表面受容体gpII(b)/III(a)に対するキメラmab由来のfabフラグメント、腫瘍付随抗原ca125に対するマウスmabフラグメント、ヒトガン胎児抗原に対するマウスmabフラグメント、cea、ヒト心筋ミオシンに対するマウスmabフラグメント、腫瘍表面抗原psmaに対するマウスmabフラグメント、hmw−maaに対するマウスmabフラグメント(fab/fab2混合)、カルシノーマ付随抗原に対するマウスmabフラグメント(fab)、nca 90に対するmabフラグメント(fab)、表面顆粒球非特異性交差反応性抗原、Bリンパ球の表面上に見出されるcd20抗原由来のキメラmab、il2受容体のα鎖に対するヒト化mab、il2受容体のα鎖に対するキメラmab、tnf−αに対するキメラmab、呼吸器多核体ウイルスの表面上のエピトープに対するヒト化mab、her 2に対するヒト化mab、ヒト上皮増殖因子受容体2、サイトケラチン腫瘍付随抗原、抗ctla4に対するヒトmab、bリンパ球のcd 20表面抗原ドルナーゼ−αに対するキメラmab、βグルコセレブロシダーゼ、tnf−α、il−2−ジフテリア毒素融合タンパク質、tnfr−lggフラグメント融合タンパク質ラロニダーゼ、ディーエヌエーアーゼ(dnaase)、アレファセプト、ダルベポエチンアルファ(コロニー刺激因子)、トシツモマブ、マウスmab、アレムツズマブ、ラスブリカーゼ、アガルシダーゼベータ、テリパラチド、副甲状腺ホルモン誘導体、アダリムマブ(lgg1)、アナキンラ、生物学的な改変体、ネシリチド、ヒトB型ナトリウム利尿ペプチド(hbnp)、コロニー刺激因子、ペグビソマント、ヒト成長ホルモン受容体アンタゴニスト、組換え活性型プロテインC、オマリズマブ、免疫グロブリンe(lge)ブロッカー、イブリツモマブチウキセタン、ACTH、グルカゴン、ソマトスタチン、成長ホルモン、チモシン、副甲状腺ホルモン、色素性ホルモン、ソマトメジン、エリスロポイエチン、黄体ホルモン、絨毛性ゴナドトロピン、視床下部放出因子、エタネルセプト、抗利尿ホルモン、プロラクチンおよび甲状腺刺激ホルモンが挙げられる。
【0111】
本発明は、抗体のような免疫グロブリンおよびその抗原結合フラグメントを含む、多量体タンパク質の製造方法を含む。従って、本発明の1つの実施態様において、多量体タンパク質は免疫グロブリンであって、第1および第2の異種性ポリペプチドは、それぞれ免疫グロブリン重鎖および軽鎖である。
【0112】
特定の実施態様において、少なくとも1つの発現ベクターの転写単位によってコードされる免疫グロブリンポリペプチドは、可変領域を含む免疫グロブリン重鎖ポリペプチドまたはその変異体であってもよく、D領域、J領域、C領域またはその組合せをさらに含んでもよい。発現ベクターによってコードされる免疫グロブリンポリペプチドは、可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドまたはその変異体であってもよく、J領域およびC領域をさらに含んでもよい。本発明はまた、限定するものではないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギおよびニワトリを含む、同じ動物種または種の混合体由来の複数の免疫グロブリン領域を意図する。特定の実施態様において、抗体は、ヒトであるか、またはヒト化されている。
【0113】
別の実施態様において、少なくとも1つの発現ベクターによってコードされる免疫グロブリンポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖可変領域、免疫グロブリン軽鎖可変領域、および抗原に選択的に結合可能な一本鎖抗体を形成させるリンカーペプチドを含む。
【0114】
本発明の方法において産生され得る治療用タンパク質の例としては、限定するものではないが、HERCEPTIN(商標)(トラスツズマブ)(Genentech,CA)(これは、転移性乳ガンを有する患者の治療のためのヒト化抗−HER2モノクローナル抗体である);REOPRO(商標)(アブシキシマブ)(Centocor)(これは、血餅形成を抑制するための、血小板上の糖タンパク質IIb/IIIa受容体に対するものである);ZENAPAX(商標)(ダクリズマブ)(Roche Pharmaceuticals,Switzerland)(これは、急性の同種移植拒絶を抑制するための、免疫抑制性ヒト化抗CD25モノクローナル抗体である);PANOREX(商標)(これは、マウス抗l7−IA細胞表面抗原IgG2a抗体である)(Glaxo Wellcome/Centocor);BEC2(これは、マウス抗イディオタイプ(GD3エピトープ)IgG抗体(ImClone System)である);IMC−C225(これは、キメラ抗EGFR IgG抗体(ImClone System)である);VITAXIN(商標)(これは、ヒト化抗αVβ3インテグリン抗体である)(Applied Molecular Evolution/MedImmune);Campath;Campath 1H/LDP−03(これは、ヒト化抗CD52 IgG1抗体である)(Leukosite);Smart M195(これは、ヒト化抗CD33 IgG抗体である)(Protein Design Lab/Kanebo);RITUXAN(商標)(これは、キメラ抗CD2O IgG1抗体である)(IDEC Pharm/Genentech, Roche/Zettyaku);LYMPHOCIDE(商標)(これは、ヒト化抗CD22 IgG抗体である)(Immunomedics);ICM3はヒト化抗ICAM3抗体であり(ICOS Pharm);IDEC−114は、霊長類抗−CD80抗体であり(IDEC Pharm/Mitsubishi);ZEVALIN(商標)は放射標識したマウス抗CD20抗体であり(IDEC/Schering AG);IDEC−13lはヒト化抗CD40L抗体であり(IDEC/Eisai);IDEC−151は霊長類化抗CD4抗体であり(IDEC);IDEC−152は霊長類化抗CD23抗体であり(IDEC/Seikagaku);SMART抗CD3はヒト化抗CD3 IgGであり(Protein Design Lab);5G1.lはヒト化抗補体因子5(CS)抗体であり(Alexion Pharm);D2E7はヒト化抗TNF−α抗体であり(CATIBASF);CDP870はヒト化抗TNF−α Fabフラグメントであり(Celltech);IDEC−151は霊長類化抗CD4 IgG1抗体であり(IDEC Pharm/SmithKline Beecham);MDX−CD4はヒト抗CD4 IgG抗体であり(Medarex/Eisai/Genmab);CDP571はヒト化抗TNF−α IgG4抗体であり(Celltech);LDP−02はヒト化抗α4β7抗体であり(LeukoSite/Genentech);OrthoClone OKT4Aはヒト化抗CD4 IgG抗体であり(Ortho Biotech);ANTOVA(商標)はヒト化抗CD40L IgG抗体であり(Biogen);ANTEGREN(商標)はヒト化抗VLA−4 IgG抗体であり(Elan);CAT−152、ヒト抗TGF−β2抗体(Cambridge Ab Tech);Cetuximab(BMS)はモノクローナル抗EGF受容体(EGFr)抗体であり;Bevacizuma(Genentech)gは抗VEGFヒトモノクローナル抗体であり;Infliximab(Centocore, JJ)は自己免疫障害を処置するために使用されるキメラ(マウスおよびヒト)モノクローナル抗体であり;Gemtuzumab ozogamicin(Wyeth)は化学療法に使用されるモノクローナル抗体であり;そして、Ranibizumab(Genentech)は黄斑変性症を処置するために使用されるキメラ(マウスおよびヒト)モノクローナル抗体である、が挙げられる。
【0115】
1つの態様において、本発明は家禽において産生されるG−CSFを含む。1つの態様において、本発明は、家禽由来の糖鎖付加パターンを有するG−CSF(TPD G−CSF)を含み、ここで、G−CSFはニワトリ、ウズラまたはシチメンチョウのトリ細胞などのトリ細胞から得られる。家禽において産生され、単離または精製されたG−CSFなどのサイトカイン含むヒトタンパク質、家禽において産生されたG−CSFなどのサイトカインを含む、医薬組成物中に存在するヒトタンパク質もまた本発明に含まれる。G−CSFを含むタンパク質の単離は、当該分野に容易に明らかなやり方によって達成され得る。医薬物の製造に有用な処方物の製法もまた、当該分野で周知である。
【0116】
本発明は、トリに由来する家禽由来の糖鎖付加パターンを有する、家禽由来の治療用または医薬用タンパク質を含む。例えば、本発明は、トリ由来のインターフェロン−α 2(TPD IFN−α 2)を含む。TPD IFN−α 2は、ヒト末梢血白血球由来のインターフェロン−α 2(PBL IFN−α 2b)では通常見られない新たな糖鎖付加パターンを示しており、新たなグリコフォームを含む(バンド4および5はα−Galが伸長された二糖であり;図9を参照のこと)。TPD IFN−α 2bはまた、ヒトPBL IFN−α 2bに類似し、ニワトリにおいてヒト形態より効率的に産生されるO結合型糖鎖構造を含む。
【0117】
本発明は、本明細書で開示するように製造されるタンパク質の最適化されたポリヌクレオチド配列を含む、単離されたポリペプチドを意図する。例えば、本発明は、ヒトIFN−α 2bについて最適化されたトリコード配列、すなわち、遺伝子導入家禽由来の組換えインターフェロン−α 2b(TPD IFN−α 2b)(配列番号1)を含む。最適化ヒトIFN−α 2bについてのコード配列は、498ヌクレオチドおよび165アミノ酸を含む(配列番号1および図11Aを参照のこと)。同様に、天然のヒトIFN−α 2bについてのコード配列は、498ヌクレオチド(NCBIアクセッション番号AF405539およびGI:15487989)、165アミノ酸(NCBIアクセッション番号AAL01040およびGI:15487990)を含む。卵白タンパク質オバルブミン、リゾチーム、オボムコイドおよびオボトランスフェリンにおいて見出される特定の各アミノ酸について最も頻繁に使用されるコドンは、本発明のベクターに挿入される最適化されたヒトIFN−α 2bコード配列の設計において使用される。より詳細には、最適化されたヒトIFN−α 2bについてのDNA配列は、雌鳥の輸卵管のコドンの使用頻度に基づいており、ニワトリ(Gallus gallus)のオバルブミン、リゾチーム、オボムコイドおよびオボトランスフェリンタンパク質から作製したコドン使用頻度表と一緒にWisconsin PackageのBACKTRANSLATE(登録商標)プログラム, version 9.1 (Genetics Computer Group, Inc., Madison, WI)を使用して、作製される。例えば、4つの卵白タンパク質におけるアミノ酸アラニンの4つのコドンの使用頻度の割合は、GCUについて34%、GCCについて31%、GCAについて26%、およびGCGについて8%である。従って、GCUは、最適化されたヒトIFN−α 2bコード配列において、大部分のアラニンについてコドンとして使用されている。最適化されたヒトIFN−α 2bについての遺伝子を含むベクターは、家禽の組織および卵において形質導入された家禽由来のIFN−α 2b(TPD IFN−α 2b)を発現する形質導入トリを産生するために使用される。
【0118】
実施例13(下記参照)にて考察するように、TPD IFN−α 2bはニワトリにおいて産生される。しかし、TPD IFN−α 2bはまた、シチメンチョウおよびウズラなどの他のトリ種においても産生され得る。本発明の好ましい実施態様において、TPD IFN−α 2bは、ニワトリおよびシチメンチョウならびにそれらの固い殻の卵において発現される。単糖分析およびFACE分析を含む炭水化物分析(実施例14、下記参照)によって、タンパク質の糖構造または新規の糖鎖付加パターンが明らかにされる。あるいは、TPD IFN−α 2bは、以下の単糖残基を示す:N−アセチル−ガラクトサミン(NAcGal)、ガラクトース(Gal)、N−アセチル−グルコサミン(NAcGlu)およびシアル酸(SA)。しかし、TPD IFN−α 2b中にはN結合型糖鎖付加は存在しない。代わりに、TPD IFN−α 2bは、Thr−106にてO−グリコシル化される。この型の糖鎖付加はヒトIFN−α 2に類似しており、106位のThr残基はIFN−α 2に特有である。天然のIFN−αに類似であるTPD IFN−α 2bは、マンノース残基を有していない。FACE分析は種々の糖残基を表す6つのバンド(図9)を明らかにし、ここで、バンド1、2および3は、それぞれ非シアル酸付加、シアル酸付加および二シアル酸付加されている(図10)。シアル酸(CA)結合はガラクトース(Gal)に対してアルファ2−3であり、N−アセチル−ガラクトサミン(NAcGal)に対してアルファ2−6である。バンド6は、非シアル酸付加四糖を表している。バンド4および5は、ヒトPBL IFN−α 2bまたは天然のヒトIFN(天然hIFN)において見られないアルファ−ガラクトース(アルファ−Gal)伸長型二糖である。図10は、TPD IFN−α 2b(卵白hIFN)とヒトPBL IFN−α 2b(天然hIFN)の比較を示す。微小のバンドがTPD IFN−α 2bにおけるバンド3と4との間、およびバンド4と5との間に存在している(下記参照)。
【0119】
本発明は、TPD IFN−α 2bの単離されたポリペプチド配列(配列番号2)(図11Bも参照のこと)およびその医薬組成物を意図し、ここで、タンパク質は、本明細書で開示する以下の糖鎖構造の1つ以上とともに、Thr−106にてO−グリコシル化されている:
式(i):
【化9】
式(ii):
【化10】
式(iii):
【化11】
式(iv):
【化12】
式(v):
【化13】
式(vi):
【化14】
[式中、Gal=ガラクトース、
NAcGal=N−アセチル−ガラクトサミン、
NAcGlu=N−アセチル−グルコサミンおよび
SA=シアル酸]。
【0120】
本発明の1つの実施態様において、割合は、
式(i):
式(i):
【化15】
が約20%であって;
式(ii):
【化16】
が約29%であって;
式(iii):
【化17】
が約9%であって;
式(iv):
【化18】
が約6%であって;
式(v):
【化19】
が約20%であって;
式(vi):
【化20】
が約12%である。
【0121】
微小のバンドがバンド3と4との間、およびバンド4と5との間に存在し、TPD IFN−α 2bにおいて約17%を占める。
【0122】
1つの実施態様において、本発明は、家禽由来の糖鎖付加パターンを有するヒトタンパク質に関する。1つの実施態様において、家禽由来の糖鎖付加パターンは、トリ輸卵管細胞、例えば、管状腺細胞から入手される。例えば、本発明によってニワトリの輸卵管細胞において産生されたヒトタンパク質上に存在することが示された糖鎖付加パターンが、本明細書にて開示される。
【0123】
1つの実施態様において、本発明は、家禽由来の糖鎖付加パターンを有する、ニワトリ、シチメンチョウおよびウズラなどのトリ(例えば、トリ輸卵管細胞)において産生されたヒトG−CSFに関する。成熟hG−CSFアミノ酸配列を図18Cに示す。G−CSFを製造するために本明細書で使用するヌクレオチド配列を、図18AおよびNCBIアクセッションNM172219に示す。トリ(例えば、ニワトリ)のコドン使用頻度について最適化されたヌクレオチド配列を、G−CSF、および本発明によって製造されたヒトタンパク質などの他のタンパク質を製造するための使用についても意図している。
【0124】
本発明は、以下:
【化21】
で表す糖鎖付加構造1つ以上を含む本発明のG−CSF分子を含む、卵および卵を産むトリ(例えば、ニワトリ、シチメンチョウおよびウズラ)を含む:
【0125】
1つの実施態様において、本発明は、G−CSF分子の混合物を含み、ここで、混合物は構造A、構造B、構造C、構造D、構造E、構造Fおよび構造Gの1つ以上から選択される糖鎖付加構造を有するG−CSF分子を含む。本発明はまた、G−CSF分子の混合物を含み、ここで、混合物は構造A、構造B、構造C、構造D、構造E、構造Fおよび構造Gの1つ以上から選択される糖鎖付加構造を有するG−CSF分子を含み、混合物は単離または精製されており、例えば、本発明によって産生された卵または卵白から精製される。また、G−CSF分子の混合物が含まれ、ここで、混合物は構造A、構造B、構造C、構造D、構造E、構造Fおよび/または構造Gのうち2つ、3つ、4つ、5つまたは6つを有するG−CSF分子を含む。また、G−CSF分子の混合物が含まれ、ここで、混合物は構造A、構造B、構造C、構造D、構造E、構造Fおよび/または構造Gのうち2つ、3つ、4つ、5つまたは6つを有するG−CSF分子を含み、混合物は単離または精製されており、例えば、本発明によって産生された卵または卵白から精製される。
【0126】
本発明はまた、構造Aを含む個別のG−CSF分子を含む。本発明はまた、構造Bを含む個別のG−CSF分子を含む。本発明はまた、構造Cを含む個別のG−CSF分子を含む。本発明はまた、構造Dを含む個別のG−CSF分子を含む。本発明はまた、構造Eを含む個別のG−CSF分子を含む。本発明はまた、構造Fを含む個別のG−CSF分子を含む。本発明はまた、構造Gを含む個別のG−CSF分子を含む。本発明はまた、構造Aを含む個別のG−CSF分子を含む。1つの実施態様において、それぞれのG−CSF分子は、単離または精製したG−CSF分子の混合物であり得るG−CSF混合物(混合物は本発明によって産生された卵または卵白から精製される)中に存在し得る。1つの実施態様において、それぞれのG−CSF分子は単離または精製され、例えば、本明細書で開示するように精製される(例えば、実施例20にて開示するHPLCによって)。
【0127】
G−CSF、例えば、G−CSF分子の混合物および個別のG−CSF分子(上の2段落)に関して本明細書で詳述する本発明の実施態様はまた、一般に、本発明によって産生されたほかのタンパク質、およびそれらに対応する家禽由来の糖鎖付加構造について適用可能である。
【0128】
本発明の1つのタンパク質上に存在することが示されている糖鎖付加構造が、本発明の別のタンパク質上に存在し得ることもまた意図される。例えば、TPD G−CSF上に存在することが示されている糖鎖付加構造もまた、TPD GM−CSF、TPD EPO、TPD IFNおよび/または他のTPDタンパク質上に存在し得る。別の例において、TPD IFNα2条に存在することが示されている糖鎖付加構造が、TPD G−CSF、TPD GM−CSF、TPD EPOおよび/または他の遺伝子導入家禽由来の(TPD)タンパク質上に存在し得ることが意図される。詳細には、本発明はまた、一般に、本明細書で開示するTPD糖鎖付加構造1つ以上を有するヒトタンパク質を意図する。
【0129】
治療での使用のために、本発明によって産生される治療用タンパク質をそのままの形態で投与してもよいが、治療用タンパク質を医薬処方物の部分として投与することが好ましい。
【0130】
従って、本発明はさらに、1つ以上の医薬上許容される担体および、所望により、他の治療用および/または予防用成分と一緒に、家禽由来のグリコシル化された治療用タンパク質またはその医薬上許容される誘導体を含む医薬処方物、ならびにそのような医薬処方物を投与する方法を提供する。担体は、処方物の他の成分と適合性であって、そのレシピエントに有害でないという意味において、許容されるものでなければならない。本発明の医薬組成物を使用して患者を治療する方法(例えば、投与する医薬用タンパク質の量、投与の頻度および処置の持続時間)は、当業者に公知で標準的なやり方を使用して決定され得る。
【0131】
医薬処方物は、経口、直腸内、経鼻、局所(頬側および舌下を含む)、膣内または非経口に適切なものを含む。医薬処方物は、筋肉内、皮下および静脈内投与を含む注射による投与に適切なものを含む。医薬処方物はまた、吸入またはガス注入による投与のためのものを含む。処方物は、必要に応じて、分離した投与量単位で好適に存在し得、当該分野で周知の任意の方法によって調製され得る。医薬処方物を製造する方法は典型的に、治療用タンパク質を、液体担体もしくは細かく分割した固体担体または両方に加え、次いで、必要であれば生成物を所望の処方物に形成する工程を包含する。
【0132】
経口投与に適切な医薬処方物は、好適に、事前に計量した量の有効成分をそれぞれ含む、カプセル、カシェット(cachet)または錠剤などの分離した単位として;散剤または顆粒として;溶液として;懸濁物として;または乳濁液として存在し得る。有効成分はまた、ボーラス、舐剤またはペーストとして存在し得る。経口投与のための錠剤およびカプセルは、結合剤、充填剤、潤滑剤、崩壊剤または湿潤剤などの従来の賦形剤を含み得る。錠剤は、当該分野で公知の方法に従ってコーティングされ得る。経口の液体調製物は、水溶液、油性懸濁物、溶液、乳濁液、シロップまたはエリキシル剤などの形態であってもよく、あるいは、使用前に水または他の適切なビヒクルでの構成用の乾燥した製品として調製してもよい。そのような液体調製物は、懸濁剤、乳化剤、非水ビヒクル(食用油を含む)または保存料などの従来の添加剤を含んでもよい。
【0133】
本発明の治療用タンパク質はまた、非経口投与のために処方され得(例えば、ボーラス注射または持続点滴などの注射によって)、アンプル、事前に充填されたシリンジ、少量の点滴での単位用量、または保存料を添加した複数回投与容器中に調製され得る。治療用タンパク質は、例えば、皮下注射、筋肉内注射および静脈内点滴または注射によって注射され得る。
【0134】
医療用タンパク質は、油性または水性ビヒクル中の懸濁物、溶液または乳濁物などの形態をなし得、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの処方用薬剤を含み得る。治療用タンパク質は、散剤形態であって、滅菌固体の滅菌単離または溶液の凍結乾燥によって入手され、滅菌で発熱物質を含まない水などの適切なビヒクルでの構築用であってもよい。
【0135】
表皮への局所投与のために、本発明によって産生された治療用タンパク質は、軟膏、クリームもしくはローション、または経皮パッチとして処方され得る。例えば、軟膏およびクリームは、増粘剤および/またはゲル化剤に加えて、水性または油性基剤を用いて処方され得る。ローションは、水性または油性基剤を用いて処方され得、一般に、乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤または着色料のうち1つ以上を含む。
【0136】
口中での局所投与に適切な処方物は、通常スクロースおよびアラビアゴムまたはトラガントといった風味付けした基剤中に有効成分を含む薬用キャンディー;ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアラビアゴムなどの不活性な基剤中に有効成分を含むトローチ;ならびに、適切な液体担体中に有効成分を含む口腔洗浄薬を含む。
【0137】
直腸内投与に適切な医薬処方物(担体は固体である)は、単位用量坐薬として最も好ましくは表される。適切な担体は、ココアバターおよび当該分野にて一般に使用される他の材料を含み、坐薬を、有効化合物と軟化させたかあるいは融かした担体との混合物によって好適に形成してもよく、型の中で冷却し成形する。
【0138】
膣内投与に適切な処方物は、有効成分に加えて、当該分野で適切であると知られているそのような担体を含む、膣坐薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡またはスプレーとして与えてもよい。
【0139】
鼻腔内投与のために、本発明の治療用タンパク質を液体スプレーまたは分散性散剤として、またはドロップの形態で使用してもよい。
【0140】
ドロップは、1つ以上の分散剤、可溶化剤または懸濁剤を含む水性または非水性基剤と一緒に処方してもよい。液体スプレーは、加圧パックから好適に送達される。
【0141】
吸入による投与のために、本発明による治療用タンパク質は、吸入器、噴霧器または加圧パックまたはエアロゾルスプレーを送達する従来の手段から好適に送達され得る。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切な気体などの適切な噴霧剤を含み得る。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、計量した量を送達するためのバルブを与えることによって決定され得る。
【0142】
吸入またはガス注入による投与のために、本発明による治療用タンパク質は、化合物、およびラクトースまたはデンプンなどの適切な散剤基剤の散剤混合物などの乾燥散剤組成物の形態をなし得る。散剤組成物は、カプセルもしくはカートリッジなどの中の単位投与量形態、あるいは、例えば、吸入器または噴霧器を用いて散剤を投与し得るゼラチンまたはブリスターパック形態で与えられ得る。
【0143】
必要に応じて、有効成分の徐放を与えるように適応させた上記の処方物を用いてもよい。
【0144】
本発明による医薬組成物はまた、抗菌剤または保存料などの他の有効成分を含んでもよい。
【0145】
さらに、本発明の治療用タンパク質は、他の治療剤と組み合わせて使用してもよい。
【0146】
本発明の組成物または化合物は、種々の状態を処置するために使用され得る。例えば、その治療方法が当業者に公知で、細胞培養物(例えば、CHO細胞)から入手した治療用タンパク質を用いる多くの状態が存在する。本発明は、家禽由来の糖鎖付加パターンを含む、トリ系において産生された治療用タンパク質をそのような状態を処置するために用いてもよいことを意図する。すなわち、本発明は、本発明によって製造される治療用タンパク質を使用することによって、従来産生されている治療用タンパク質によって処置可能であることが知られている状態の処置を意図する。当該分野で理解されるように、例えば、本発明によって製造されるエリスロポイエチンを、貧血および腎臓障害(例えば、慢性腎不全)などのヒトの状態を処置するために使用してもよく、本発明によって製造されるG−CSFを、ガン患者を処置するために使用してもよい。
【0147】
一般に、投与される投与量は、レシピエントの年齢、健康および体重、併用の処置の型、処理の頻度などに依存して変動する。通常、有効成分の投与量は、約0.0001〜約10mg/kg体重であり得る。正確な投与量、投与の頻度、処置の期間は、各治療用タンパク質の投与分野の当業者によって決定され得る。
【0148】
以下の詳細な実施例は本発明を説明することを意図し、本発明の範囲を制限するように構成されていない。
【実施例】
【0149】
実施例1
ベクターの構築
pNLBのlacZ遺伝子、複製欠損のトリ白血病ウイルス(ALV)ベースのベクター(Cosset et al., 1991)を、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターおよびレポーター遺伝子、β−ラクタマーゼからなる発現カセットで置換する。pNLBおよびpNLB−CMV−BLベクター構築物を、図3Aおよび3Bにてそれぞれ略図で示す。
【0150】
pNLBのlacZ遺伝子を導入遺伝子と効率的に置換するために、まず中間体アダプタープラスミド、pNLBAdapterを作製した。pNLBのchewed back ApaI/ApaIフラグメントをpBluescriptKS(−)のchewed−back KpnI/SacI部位に挿入することによって、pNLBAdapterを作製した(pNLBにおいて、5‘側ApaIはlacZの上流289bpに存在し、3’側ApaIは3‘LTRおよびGagセグメントの3’側に存在する)(Cosset et al., J. Virol. 65:3388-94 (1991))。pCMV−BLのフィルインしたMluI/XbaIフラグメント(Moore et al., Anal.Biochem. 247: 203-9 (1997))をpNLB−Adapterのchewed−back KpnI/NdeI部位に挿入し、lacZをCMVプロモーターおよびBL遺伝子で置換し(pNLBにおいて、KpnIはlacZの上流67bpに存在し、NdeIはlacZ終止コドンの上流100bpに存在する)、それによってpNLB−Adapter−CMV−BLを作製した。pNLB−CMV−BLを作製するために、 pNLBのHindIII/BlpIの挿入部分(lacZを含む)をpNLB−Adapter−CMV−BLのHindIII/BlpI挿入部分で置換した。未知の理由で、平滑末端フラグメントのpNLBのHindIII/BlpI部位への直接のライゲーションは大部分が再編成されたサブクローンを生じるので、この2段階のクローニングは必要である。
【0151】
実施例2
pNLB−CMV−BLファウンダー群の作製
SentasおよびIsoldesを、F10(Gibco)、5%新生牛血清(Gibco)、1%ニワトリ血清(Gibco)、50μg/mlフレオマイシン(Cayla Laboratories)および50μg/mlハイグロマイシン(Sigma)中で培養した。以下の例外を用いて、Cosset et al.,1993(出典明示によって本明細書にて援用する)に記載のように、形質導入粒子を作製した。レトロウイルスベクターpNLB−CMV−BL(実施例1から、上記)の9×105のSentasに形質移入した2日後、ウイルスを6〜16時間新たな培地中に回収し、濾過した。全ての培地を使用して、最終濃度4マイクロg/mlまで加えたポリブレンを用いて、3枚の100mmプレート上で3×106のIsoldesに形質導入した。翌日、50μg/mlフレオマイシン、50μg/mlハイグロマイシンおよび200μg/ml G418(Sigma)を含む培地で培地を交換した。10〜12日後に、G418耐性の単一コロニーを単離し、24ウェルプレートに移した。7〜10日後に、Sentasの形質導入によって、各コロニー由来の力価を決定し、G418選択を行った。典型的に、60コロニーのうち2コロニーが1〜3×105の力価であった。Allioli et al.,Dev.Biol.165:30−7(1994)(出典明示によって本願明細書で援用する)に記載のように、これらのコロニーを拡大させ、ウイルスを2〜7×106まで濃縮した。NLB−CMV−BL形質導入粒子で形質導入した細胞の培地中でβ−ラクタマーゼについてアッセイすることによって、CMV−BL発現カセットのインテグリティー(integrity)を確認した。
【0152】
形質導入ベクター、pNLB−CMV−BLを546個の非インキュベートSPF白色レグホン胚の胚下腔に注入した。そのうち126個からヒヨコが孵化し、β−ラクタマーゼ(ラクタマーゼ)の血中への分泌についてアッセイした。未知のサンプル中の活性型ラクタマーゼ濃度を測定するために、ラクタマーゼによってPADAC(紫色の物質)が黄色の化合物に特異的に転換される動態比色分析を用いた。標準的な反応時間の間でのOD570の減少をモニターすることによって、ラクタマーゼの活性を定量化し、精製したラクタマーゼレベルを変動させた検量線と比較した(「ラクタマーゼアッセイ」という)。一晩または数日間、試験サンプル中の紫色から黄色への転換について目視でスコア化することによって、サンプル中のラクタマーゼの有無も決定した(「一晩ラクタマーゼアッセイ」)。後者の方法は、非常に低いレベルのラクタマーゼの検出または多数のサンプルをスクリーニングすることに適切であった。1〜4週齢で、ラクタマーゼの存在についてヒヨコ血清サンプルを試験した。27羽のヒヨコは血清中にラクタマーゼが非常に低いレベルで、一晩ラクタマーゼアッセイ後のみ検出可能であり、これらのトリが成熟すると、ラクタマーゼはもはや検出不可能であった。下記の表1および図4Aにて示すように、さらなるトリ(3羽のオスおよび6羽のメス)は、孵化後6〜7か月で11.9〜173.4ng/mlの範囲のラクタマーゼ血清レベルであった。
【0153】
【表1】
【0154】
実施例3
G0の雌鳥の卵白におけるβ−ラクタマーゼの発現
pNLB−CMV−BLレトロウイルスベクターを形質導入した若い雌鳥57羽を性的に成熟するまで飼育し、月齢8か月で、活性型β−ラクタマーゼ(ラクタマーゼ)について各雌鳥由来の卵白を試験した。57羽のトリのうち、6羽が56.3〜250.0ng/mlの範囲の有意なラクタマーゼレベルを有していた(表1、上記)。数日間PADACをサンプルとインキュベートした後でも、この群のほかの雌鳥は卵白中に検出可能なレベルのラクタマーゼを有していなかった。偽の注入をした24羽の雌鳥由来の卵白、およびラクタマーゼ導入遺伝子を担持していないNLBベクターを形質導入した42羽の雌鳥では、ラクタマーゼを検出できなかった。最初のアッセイから6か月後でなお、6羽の発現している雌鳥の卵白にて、安定した発現が検出可能であった(表1、上記)。
【0155】
抗β−ラクタマーゼ抗体を用いたウェスタンブロットアッセイによって、6羽の雌鳥全ての卵白におけるラクタマーゼを検出した。卵白のラクタマーゼは、標準品として使用した、細菌で産生し、精製したラクタマーゼと同じ大きさであった。ウェスタン分析によって卵白にて検出した量は、酵素アッセイによって決定した量と一致し、卵白のラクタマーゼの有意な割合が生物学的に活性であることが示された。雌鳥によって産生され、4℃で保存した卵白中のラクタマーゼの活性は損なわれておらず、数か月間の貯蔵の後でも分子量の変化を示さなかった。この観察は、分析まで延長した期間の間、ラクタマーゼを含む卵の貯蔵を可能にした。
【0156】
実施例4
G1およびG2遺伝子導入ニワトリにおける、β−ラクタマーゼの生殖細胞系伝達および血清発現
56羽のG0雄鳥から回収した精子からDNAを抽出し、56羽のトリのうち、定量的PCRによって測定し、精子DNAにおいて有意なレベルの導入遺伝子を有していた3羽を、飼育するために選択した。これらの雄鳥は、血中のβ−ラクタマーゼ(ラクタマーゼ)レベルが最も高いことが同じ3羽であった(雄鳥2395、2421および2428)。雄鳥2395が3羽のG1の遺伝子導入子孫(422羽の子孫のうち)を生じた一方、残りの2羽は遺伝子導入の子孫を生じなかった(合計650羽の子孫のうち)。3羽のG1遺伝子導入ニワトリそれぞれ由来の血液DNAをサザン分析することによって、導入遺伝子がインタクトであって、特有で無作為の遺伝子座に組込まれていることを確認した。比かご6〜11週目で、G1遺伝子導入ヒヨコ、5308、5657および4133の血清は、それぞれ0.03、2.0および6.0μg/mlのラクタマーゼを含んでいた。月齢6〜7か月でニワトリを再度アッセイした場合、ラクタマーゼレベルは0.03、1.1および5.0μg/mlのレベルに低下していた(図4A)。
【0157】
雌鳥5657および雄鳥4133を非遺伝子導入ニワトリと交配させ、導入遺伝子についてヘミ接合性である子孫を入手した。雄鳥4133および雌鳥5657に由来する遺伝子導入ニワトリの系統、およびその後の世代を図5にて示す。遺伝子導入雄鳥5308も交配させたが、このトリの子孫は、血清および卵白において非常に低いかまたは検出できないかのいずれかであるラクタマーゼの濃度を示した。無作為に選択したG2遺伝子導入ヒヨコの血清中の活性型ラクタマーゼの濃度を、孵化後3〜90日目に測定した。雌鳥5657から生まれたG0遺伝子導入体の5羽の全てが、1.9〜2.3μg/mlの濃度の活性型ラクタマーゼを有していた(親の発現1.1μg/mlと比較して、図4B)。同じ期間にサンプル全てを回収した。従って、雌鳥5657での濃度は成熟するのに比例して低下しているので、子孫の血清中のラクタマーゼ濃度は親の濃度より高いことが期待された。同様に、雄鳥4133から生まれた遺伝子導入ヒヨコから無作為に選択した5羽は全て、親と類似しているがより高い血清ラクタマーゼ濃度を有していた(図4B)。
【0158】
実施例5
遺伝子導入雌鳥の卵白におけるβ−ラクタマーゼの発現
G1雌鳥5657由来の卵、卵白1mlあたり活性型β−ラクタマーゼ(ラクタマーゼ)130ngを含んでいた(図6A)。ラクタマーゼの濃度は、最初に産卵されたいくつかの卵においてより高く、次いで少なくとも9か月間安定な安定期に達した。雌鳥5357および非遺伝子導入雄鳥から生まれた遺伝子導入雌鳥由来の卵は親と類似したラクタマーゼ濃度を有していた(図6A)。雌鳥6978は、G2雌鳥8617および兄弟G2雄鳥8839から生まれ、定量的PCRおよびサザン分析によって、導入遺伝子についてホモ接合性であることを決定した。期待したように、トリ6978の卵におけるラクタマーゼ濃度は、ヘミ接合性の親よりほぼ2倍高かった(図6B)。雌鳥6978は雌鳥5657のヒヨコの中で唯一のメスであってので、雌鳥5657から生まれたG3雌鳥はほかに分析していない。雌鳥8867、8868および8869由来の卵は、11か月離れて回収されており、類似したラクタマーゼ濃度を有しており、卵白中の発現レベルが産卵期間を通じて一致していることが示されたことに留意することが重要である。雄鳥4133を非遺伝子導入トリと交配させて、ヘミ接合性のG2雌鳥を入手した。分析した15羽の遺伝子導入雌鳥の全てが、卵白中に0.47〜1.34μg/mlの範囲の濃度でラクタマーゼを有していた。4羽の代表的な雌鳥を図7Aにて示す。6か月後にアッセイした場合、平均発現レベルは約1.0μg/ml〜0.8μg/mlに低下していた(図7A)。発現レベルは最初の卵において高く、数か月間にわたって安定であった。その後に、卵中のラクタマーゼレベルは一定のままであった。
【0159】
G2雌鳥および兄弟G2雄鳥8191を交配させ、ヘミ接合性およびホモ接合性G3雌鳥を生じさせた。全ての遺伝子導入のG3雌鳥が0.52〜1.65μg/mlの範囲の濃度で卵白においてラクタマーゼを発現させていた(図7B)。ホモ接合性であるG3雌鳥についての平均発現は、ヘミ接合性であるG2雌鳥およびG3雌鳥より47%高かった。雄鳥4133およびその子孫から生まれたG2およびG3雌鳥由来の卵中のラクタマーゼ量は有意に変動したが(図7Aおよび7B)、その群の任意で所定の雌鳥由来の卵におけるレベルは比較的一定であった。ラクタマーゼの発現平均は、ホモ接合性遺伝子型の2倍であることが期待された。ウェスタンブロット分析によって、導入遺伝子はG2遺伝子導入体の卵においてインタクトなラクタマーゼを正確に産生していることが確認された。ウェスタンブロットで検出されたラクタマーゼレベルはまた、酵素活性アッセイによって決定されたものと相互で密接に関連しており、卵白ラクタマーゼの重要な部分が生理活性であることを示している。従って、レトロウイルスベクターをうまく用いて、ニワトリにおける導入遺伝子の安定で信頼性のある発現を実施することができる。
【0160】
卵黄におけるラクタマーゼの沈着は検出可能であるものの、卵白のものより低かった。雄鳥4133系統のG2またはG3雌鳥7羽を分析したが、卵黄において107〜375ng/mlの範囲の濃度であって、卵白における濃度の約20%であった。所定の雌鳥の卵黄と卵白のラクタマーゼレベルの間に関連はなかった(Harvey et al., ”Expression of exogenous protein in egg white of transgenic chickens” (April 2002) Nat. Biotechnol. 20:396-399)。
【0161】
実施例6
メスのファウンダーの作製
pNLB−CMV−BL形質導入のために、新たに生まれた受精白色レグホン卵を使用した。7〜10μlの濃縮粒子を窓を作った卵の胚下腔に注入し、窓をシールした後でヒヨコに孵化させた。546個の卵に注入した。血液DNAを抽出し、Taqmanアッセイを介してneo耐性を検出するように設計したプローブプライマーセットを使用して、導入遺伝子の存在について分析した。下記の表3にて理解されるように、全ヒヨコの約25%が血液DNAにおいて検出可能なレベルの導入遺伝子を有していた。
【0162】
【表2】
【0163】
【表3】
【0164】
実施例7
導入遺伝子の生殖細胞系伝達の割合
挿入されたベクター配列の組込みおよびインテグリティーを確認するために、G1およびG2遺伝子組換え由来のDNAに対してサザンブロット分析を実施した。血液DNAをHindIIIを用いて消化し、neo耐性プローブに対してハイブリダイズさせて、pNLB−CMV−BLベクター中に見出した内部のHindIII部位、および組込み部位に隣接するゲノムの部位によって作製された接合部フラグメントを検出した(図3B)。NLB−CMV−BLを担持するG1トリ3羽それぞれが、特有の大きさの接合部フラグメントを有しており、導入遺伝子は3つの異なるゲノムの部位に組込まれていることが示唆された。G1を非遺伝子導入雌鳥と交配させ、ヘミ接合性のG2を入手した。表2(上記)にて理解されるように、組込まれた単一の導入遺伝子のメンデル型分離について予測されるように、のNLB−CMV−BLを有するG1雄鳥由来の子孫の50.8%が遺伝痔導入であった。G2子孫由来で、HindIIIで消化したDNAのサザン分析によって、遺伝子導入の親から生じたものとサイズが類似している接合部フラグメントが検出され、導入遺伝子がインタクトに伝達されていたことが示された。
【0165】
実施例9
導入遺伝子についてホモ接合性のG3子孫についてのスクリーニング
導入遺伝子についてホモ接合性である遺伝子導入ニワトリを入手するために、同じ部位に組込まれたNLB−CMV−BLを有するG2ヘミ接合性のトリ(例えば、同じG1オスの子孫)を交配させた。2つのグループが生まれた:第1のグループはG1 4133から生じた雌鳥および雄鳥であって、第2のグループはG1 5677雌鳥由来のものである。Taqmanアッセイを使用して、検量線を使用し、G3子孫においてneo耐性導入遺伝子を定量的に検出した。サザン分析によって決定されている、導入遺伝子についてヘミ接合性であるG1遺伝子導入体4133オス由来で既知のゲノムDNA量を使用して、検量線を構築した。検量線は、導入遺伝子の合計コピー数103〜1.6×104の範囲であるか、あるいは二倍体ゲノムあたりの導入遺伝子コピー数0.2〜3.1の範囲であった。対数期の間は反応成分が限定されているので、増幅は非常に効率的であって、所定のコピー数について再現可能な値を与えた。コピー数が互いに2倍異なる検量線の間で、再現可能な1サイクルの差異が存在した。
【0166】
G3子孫における導入遺伝子アレルの数を決定するために、DNAを増幅し、標準品と比較した。非遺伝子組換え由来のDNAは、増幅しなかった。導入遺伝子アレルについてホモ接合性であるトリは、アレルについてヘミ接合性であるものより1サイクル早く増幅が開始するプロットを生じた。配列検出プログラムは、サンプルの増幅プロットが有意な増加を示す検量線およびサイクル閾値(Ct)に基づいて、未知のサンプル中のアレル数を産出可能である。データを下記の表3にて示す。
【0167】
Taqmanコピー数分析を確認するために、PstIで消化したDNA、およびneo耐性遺伝子に相補的なプローブを使用するサザンブロッティングによって、選択したトリのDNAを分析して、0.9kbのフラグメントを検出した。小さなDNAのゲルからメンブランへの移動はより定量的であるので、小さなフラグメントの検出も選択した。0.9kbのバンドのシグナル強度は、Taqmanアッセイによって決定したG3遺伝子導入トリのコピー数によく対応した。サザンブロッティングによって分析した、さらに18羽のG3遺伝子導入トリのコピー数もまた、Taqmanによって決定したものと一致した。4133系統について、33羽の全子孫を分析し、9羽(27.3%)が非遺伝子導入体であって、16羽(48.5%)がヘミ接合性であって、8羽(24.2%)がホモ接合性であった。5657系統について、10羽の全子孫を分析し、5羽(50.0%)が非遺伝子導入体であって、1羽(10.0%)がヘミ接合性であって、4羽(40.0%)がホモ接合性であった。4133系統G3子孫について、非遺伝子組換え、ヘミ接合体およびホモ接合体の観察された割合は、χ2試験によって決定した1:2:1の期待された比率とは実質的に異なっていた(Pは0.05以下である)。5657系統の子孫は、期待した分布を有していなかったが、これは試験した子孫の数が少ないことに起因したといえる(Harvey et al., "Consistent production of transgenic chickens using replication deficient retroviral vectors and high-throughput screening procedures" (February 2002) Poultry Science 81:202-212)。
【0168】
【表4】
【0169】
実施例10
pNLB−MDOT−EPOベクターのためのベクター構築
本明細書の実施例1(ベクター構築)の教示に従って、EPOコード配列をBLコード配列に置換し、pNLB−MDOT−EPOベクターを作製した(図8B)。CMVプロモーターを使用する代わりに、MDOTを使用した(図13)。MDOTは、オボムコイド(MD)およびオボトランスフェリン(TO)プロモーター両方由来のエレメントを含む合成プロモーターである(pNLB−MDOT−EPOベクター、別名をpAVIJCR−A145.27.2.2という)。
【0170】
ニワトリ(Gallus gallus)のオバルブミン、リゾチーム、オボムコイドおよびオボトランスフェリンタンパク質から作製したコドン使用頻度表と一緒にWisconsin PackageのBACKTRANSLATE(登録商標)プログラム, version 9.1 (Genetics Computer Group, Inc., Madison, WI)を使用して、雌鳥輸卵管の最適化されたコドン使用頻度に基づくヒトEPOについてのDNA配列を作製した。DNA配列を合成し、契約ベースのIntegrated DNA Technologies,Coralville,IowaによってpCRII−TOPO(Invitrogen)の3’側突出Tにクローニングした。次いで、Hind IIIおよびFse Iを用いてpEpoMMからEPOコード配列を除去し、0.8%アガロース−TAEゲルから精製し、Hind IIIおよびFse Iで消化し、アルカリホスファターゼで処理したpCMV−IFNMMにライゲーションした。得られたプラスミドはpAVIJCR−A137.43.2.2であって、サイトメガロウイルス即時型プロモーター/エンハンサーおよびSV40ポリA部位によって制御されるEPOコード配列を含む。プラスミドpAVIJCR−A137.43.2.2をNcoIおよびFseIを用いて消化し、適切なフラグメントをNcoIおよびFseIで消化したpMDOTIFNのフラグメントにライゲーションし、MDOTプロモーターによって駆動するEPOを含むpAVIJCR−A137.87.2.1を入手した。MDOTプロモーターによって制御されるEPOコード配列をNLBレトロウイルスプラスミドにクローニングするために、プラスミドpALVMDOTIFNおよびpAVIJCR−A137.87.2.1をKpnIおよびFseIを用いて消化した。0.8%アガロース−TAEゲルから適切なDNAフラグメントを精製し、次いで、ライゲーションし、DH5 α細胞に形質転換した。得られたプラスミドは、pNLB−MDOT−EPOである(別名をpAVIJCR−A145.27.2.2という)。
【0171】
実施例11
EPOを発現する遺伝子導入ニワトリおよび完全遺伝子導入G1ニワトリの作製
NLB-CMV-BL(実施例2を参照のこと)について記載するように、NLB−MDOT−EPO形質移入粒子の作製を実施した。Speksnijder手順(米国特許第5,897,998号)に従って約300個の白色レグホン卵に窓を作り、次いで、卵1個あたり約7×104の形質導入粒子を注入した。注入から21日後に卵が孵化した。孵化から1週間後のヒヨコから血清サンプルを収集し、EPOレベルをEPO ELISAによって測定した。精子中にEPO導入遺伝子を含むG0雄鳥についてスクリーニングするために、Chelex−100 extraction (Walsh et al., 1991)によって雄鳥血清サンプルからDNAを抽出した。次いで、”neo for−1”(5’−TGGATTGCACGCAGGTTCT−3’;配列番号5)および”neo rev−1”(5’−TGCCCAGTCATAGCCGAAT−3’;配列番号6)プライマーならびにFAM標識化NEO−PROBE1(5’−CCTCTCCACCCAAGCGGCCG−3’;配列番号7)を使用して、DNAサンプルを7700 Sequence Detector(Perkin Elmer)上でTaqman(登録商標)分析に供して、導入遺伝子を検出した。精子サンプルにおける最も高い導入遺伝子レベルを有するG0雄鳥8羽を、非遺伝子導入SPAFAS(白色レグホン)雌鳥と人工受精によって交配させた。上記のTaqman(登録商標)分析によって、導入遺伝子の存在について血液DNAサンプルをスクリーニングした。
【0172】
1054羽の子孫のうち、16羽のヒヨコが遺伝子導入体(G1トリ)であることを見出した。ヒトEPOの存在について、EPO ELISAによってニワトリ血清を試験した。EPOは約70ng/ml存在した。ヒトEPOの存在について、EPO ELISAによってG1雌鳥由来の卵の卵白も試験し、約70ng/mlのヒトEPOを含むことを見出した。細胞培養アッセイにおいて、ヒトEPO応答性細胞株(HCD57マウス赤血球細胞)を試験した場合、卵中に存在するEPO(すなわち、ヒトEPOについての最適化されたコード配列由来)が生物学的に活性であることを見出した。
【0173】
実施例12
pNLB−CMV−IFNのためのベクター構築
実施例1の教示に従って、IFNコード配列を実施例1のBLコード配列に置換し、pNLB−CMV−IFNベクターを作製した。
【0174】
最適化されたコード配列を作製し、ここで、卵白タンパク質オバルブミン、リゾチーム、オボムコイドおよびオボトランスフェリンにおいて見出される特定のアミノ酸それぞれについて最も頻繁に使用されるコドンを、本発明のベクターに挿入する最適化されたヒトIFN−α 2bコード配列の設計において使用した。より詳細には、最適化されたヒトIFN−α 2bについてのDNAコード配列は、雌鳥輸卵管の最適化されたコドン使用頻度に基づいており、ニワトリ(Gallus gallus)のオバルブミン、リゾチーム、オボムコイドおよびオボトランスフェリンタンパク質から作製したコドン使用頻度表と一緒にWisconsin PackageのBACKTRANSLATE(登録商標)プログラム, version 9.1 (Genetics Computer Group, Inc., Madison, WI)を使用して作製した。例えば、4つの卵白タンパク質におけるアミノ酸アラニンの4つのコドンの使用頻度の割合は、GCUについて34%、GCCについて31%、GCAについて26%、およびGCGについて8%であった。従って、GCUを、最適化されたヒトIFN−α 2bコード配列において、大部分のアラニンについてコドンとして使用した。最適化されたヒトIFN−α 2bについての遺伝子を含むベクターを、家禽の組織および卵において形質導入された家禽由来のIFN−α 2b(TPD IFN−α 2b)を発現する形質導入トリを産生するために使用した。
【0175】
Pfuポリメラーゼ(Stratagene, La Jolla,Calif.)を用いたPCR(94℃、1分間;50℃、30分間;および72℃、1分間を20サイクル、ならびに10秒)によって、下記の表4にて列挙した鋳型およびプライマーオリゴヌクレオチドを増幅した。12%ポリアクリルアミド−TBEゲルから、「粉砕および浸漬」法(Maniatis et al.1982)によってPCR産物を精製し、次いで、プライマーとしてIFN−1およびIFN−8(表4を参照のこと)のみを使用する増幅反応中に鋳型として組み入れた。Hind IIIおよびXba Iを用いて得られたPCR産物を消化し、2%アガロース−TAEゲルから精製し、次いで、Hind IIIおよびXba Iで消化し、アルカリホスファターゼで処理したpBluescript KS(Stratagene)にライゲーションし、プラスミドpBluKSP−IFNMagMaxを生じさせた。ユニバーサルT7およびT3プライマーを使用して、ABI PRISM 377 DNAシークエンサー(Perkin−Elmer, Foster City, Calif.)上でのサイクル配列決定によって、両方の鎖を配列決定した。元のオリゴヌクレオチドプライマー鋳型に由来するpBluKSP−IFN上の変異を、Transformer Site−Directed Mutagenesis Kit (Clontech, Palo Alto, Calif.)を用いた部位特異的変異誘発によって訂正した。次いで、Hind IIIおよびXba 1を用いて、IFNコード配列を訂正したpBluKSP−IFNから除去し、0.8%アガロース−TAEゲルから精製し、Hind IIIおよびXba Iで消化し、アルカリホスファターゼで処理したpCMV−BetaLa−3B−dHにライゲーションした。得られたプラスミドはpCMV−IFNであって、サイトメガロウイルス(CMV)媒介即時型プロモーターおよびSV40ポリA部位によって制御されるIFNコード配列を含んでいた。CMVプロモーター/エンハンサーによって制御されるIFNコード配列をNLBレトロウイルスプラスミドにクローニングするために、ClaIおよびXbaIを用いてpCMV−IFNをまず消化し、次いで、DNAポリメラーゼのクレノウフラグメント(New England BioLabs,Beverly,Mass.)を用いて両方の末端を埋めた。NdeIおよびKpnIを用いてpNLB−adapterを消化し、T4ポリメラーゼ(New England BioLabs)によって両方の末端を平滑にした。0.8%アガロース−TAEゲル上で適切なフラグメントを精製し、次いで、ライゲーションし、DH5 α細胞に形質転換した。得られたプラスミドがpNLB−adapter−CMV−IFNである。次いで、MluIを用いてこのプラスミドを消化し、BlpIを用いて部分的に消化し、適切なフラグメントをゲル精製した。MluIおよびBlpIを用いてpNLB−CMV−EGFPを消化し、次いで、アルカリホスファターゼ処理し、ゲル精製した。pNLB−adapter−CMV−IFNのMluI/BlpI部分フラグメントをpNLB−CMV−EGFPのMluI/BlpI消化由来の大きなフラグメントにライゲーションし、pNLB−CMV−IFNを作製した。
【0176】
【表5】
【0177】
【表6】
【0178】
実施例13
IFNを発現する遺伝子導入ニワトリおよび完全遺伝子導入G1ニワトリの作製
実施例2の手順に従って、pNLB−CMV−IFN の形質導入粒子を作製した。Speksnijder手順(米国特許第5,897,998号)に従って、約300個の白色レグホン(系統0)卵に窓を作り、次いで、卵1個あたり7×104の形質導入粒子を注入した。卵は注入から21日後に孵化した。孵化から1週間後のヒヨコから血清サンプルを収集し、ヒトIFNレベルをIFN ELISAによって測定した。
【0179】
精子中にEPO導入遺伝子を含むG0雄鳥についてスクリーニングするために、Chelex−100 extraction (Walsh et al., 1991)によって雄鳥血清サンプルからDNAを抽出した。次いで、”neo for−1”(5’−TGGATTGCACGCAGGTTCT−3’;配列番号5)および”neo rev−1”(5’−TGCCCAGTCATAGCCGAAT−3’;配列番号6)プライマーならびにFAM標識化NEO−PROBE1(5’−CCTCTCCACCCAAGCGGCCG−3’;配列番号7)を使用して、DNAサンプルを7700 Sequence Detector(Perkin Elmer)上でTaqman(登録商標)分析に供して、導入遺伝子を検出した。精子サンプルにおける最も高い導入遺伝子レベルを有するG0雄鳥8羽を、非遺伝子導入SPAFAS(白色レグホン)雌鳥と人工受精によって交配させた。
【0180】
上記のTaqman(登録商標)分析によって、導入遺伝子の存在について、血液DNAサンプルをスクリーニングした。1597羽の子孫のうち、1羽の雄鳥が遺伝子導入体(別名を「Alphie」という)であることを見出した。hIFNの存在についてAlphieをhIFN ELISAによって試験し、hIFNが200ng/mlで存在した。
【0181】
非遺伝子導入SPAFAS(白色レグホン)雌鳥の人工授精のために、Alphieの精子を使用した。Tagman(登録商標)分析によって、202羽の子孫のうち106羽が導入遺伝子を含んでいることを検出した。メンデルの遺伝様式に従っており、Alphieが遺伝子導入体であることを示した。
【0182】
実施例14
遺伝子導入家禽由来のインターフェロン−α 2b(TPD IFN−α 2b)の炭水化物分析
実験的な証拠によって、トリ由来のインターフェロン−α 2b(すなわち、TPD IFN−α 2b)において新たな糖鎖付加パターンが明らかになった。TPD IFN−α 2は、ヒト末梢血白血球由来のインターフェロン−α 2(PBL IFN−α 2b)または天然のヒトインターフェロン−α 2(天然hIFN)では通常見られない新たな糖鎖付加パターンを示しており、新たなグリコフォームを含む(バンド4および5はα−Galが伸長された二糖であり;図9を参照のこと)。TPD IFN−α 2bはまた、ヒトPBL IFN−α 2bに類似し、ニワトリにおいてヒト形態より効率的に産生されるO結合型糖鎖構造を含む。では通常見られない新たな糖鎖付加パターンを示しており、新たなグリコフォームを含む(バンド4および5はα−Galが伸長された二糖であり;図9を参照のこと)。TPD IFN−α 2bはまた、ヒトPBL IFN−α 2bに類似し、ニワトリにおいてヒト形態より効率的に産生されるO結合型糖鎖構造を含むことを見出した。
【0183】
ヒトIFN−α 2bについてのコード配列を最適化し(実施例12、上記)、組換えIFN−α 2bコード配列を生じさせた。次いで、ニワトリにおいてTPD IFN−α 2bを産生させた(実施例13、上記)。単糖分析およびFACE分析を含む炭水化物分析によって、糖構造およびタンパク質の糖鎖付加パターンが明らかになった。あるいは、TPD IFN−α 2bは、以下の単糖残基を示す:N−アセチル−ガラクトサミン(NAcGal)、ガラクトース(Gal)、N−アセチル−グルコサミン(NAcGlu)およびシアル酸(SA)。しかし、TPD IFN−α 2b中にはN結合型糖鎖付加は存在しない。代わりに、TPD IFN−α 2bは、Thr−106にてO−グリコシル化される。この型の糖鎖付加はヒトIFN−α 2に類似しており、106位のThr残基はIFN−α 2に特有である。天然のIFN−αに類似であるTPD IFN−α 2bは、マンノース残基を有していない。FACE分析は種々の糖残基を表す6つのバンド(図9)を明らかにし、ここで、バンド1、2および3は、それぞれ非シアル酸付加、シアル酸付加および二シアル酸付加されている(図10)。シアル酸(CA)結合はガラクトース(Gal)に対してアルファ2−3であり、N−アセチル−ガラクトサミン(NAcGal)に対してアルファ2−6である。バンド6は、非シアル酸付加四糖を表している。バンド4および5は、ヒトPBL IFN−α 2bまたは天然のヒトIFN(天然hIFN)において見られないアルファ−ガラクトース(アルファ−Gal)伸長型二糖である。図10は、TPD IFN−α 2b(卵白hIFN)とヒトPBL IFN−α 2b(天然hIFN)の比較を示す。微小のバンドがTPD IFN−α 2bにおけるバンド3と4との間、およびバンド4と5との間に存在している(下記参照)。
【0184】
タンパク質がThr−106にて以下の特定の残基でO−グリコシル化されていることを見出した:
式(i):
【化22】
式(ii):
【化23】
式(iii):
【化24】
式(iv):
【化25】
式(v):
【化26】
式(vi):
【化27】
[式中、Gal=ガラクトース、
NAcGal=N−アセチル−ガラクトサミン、
NAcGlu=N−アセチル−グルコサミンおよび
SA=シアル酸]。
【0185】
割合は、
式(i):
【化28】
が約20%であって;
式(ii):
【化29】
が約29%であって;
式(iii):
【化30】
が約9%であって;
式(iv):
【化31】
が約6%であって;
式(v):
【化32】
が約20%であって;
式(vi):
【化33】
が約12%であった。
【0186】
微小のバンドがバンド3と4との間、およびバンド4と5との間に存在し、TPD IFN−α 2bにおいて約17%を占めた。
【0187】
実施例15
トリ細胞における、EMCV IRESを使用したプラスミド形質移入およびレトロウイルス形質導入からのMAbsの発現
脳心筋炎ウイルス(EMCV)由来のIRESをLCおよびHCコード配列の間に配置することによってヒトモノクローナル抗体の軽鎖(LC)および重鎖(HC)を単一のベクター、pCMV−LC−emcvIRES−HCから発現させた(Jang et al. (1988) ”A segment of the 5' nontranslated region of encephalomyocarditis virus RNA directs internal entry of ribosomes during in vitro translation” J. Virol. 62:2636-2643も参照のこと)。
【0188】
2つの別々のベクターからのモノクローナル抗体の発現を試験するために、CMVプロモーターに連結したLCまたはHCをLMH/2a細胞、エストロゲン応答性のニワトリ肝細胞株に同時形質移入した(Binder et al. (1990) "Expression of endogenous and transfected apolipoprotein II and vitellogenin II genes in an estrogen responsive chicken liver cell line" Mol. Endocrinol. 4:201-208も参照のこと)。pCMV−LCおよびpCMV−HCの同時形質移入が392 ng/mlのMAbsを生じた一方、pCMV−LC−emcvIRES−HCの形質移入が185 ng/mlのMAbを生じたことを、MAb ELISAによって検出した。
【0189】
モロニーマウス白血病ウイルス(MLV)に基づくレトロウイルスベクターに、CMV−LC−emcv−HCカセットを挿入し、pL−CMV−LC−emcvIRES−HC−RN−BGを作製した。LMH細胞(Kawaguchi et al. (1987) "Establishment and characterization of a chicken hepatocellular carcinoma cell line, LMH" Cancer Res. 47:4460-4464も参照のこと)、LMH/2aの親株を標的細胞として使用したが、これはこれらの細胞がネオマイシン耐性でないからである。LMH細胞をL−CMV−LC−emcvIRES−HC−RN−BGレトロウイルスベクターで形質導入し、ネオマイシンを用いて選択し、数週間継代した。LMH細胞を別々に形質導入し、親のMLVベクター、LXRHを用いてネオマイシン選択した。LXRH細胞由来の培地はMAbについて陰性であったが、L−CMV−LC−emcvIRES−HC−RN−BGを形質導入した細胞由来の培地は、22ng/mlのMAbを含んでいた。
【0190】
実施例16
MAbを発現する形質導入ニワトリおよび完全形質導入G1ニワトリの作製
実施例15のCMV−LC−emcv−HCカセットを、実施例1のpNLB−CMV−BLのCMV−BLカセットに置換することによって、pNLB−CMV−LC−emcv−HCベクターを作製した。
【0191】
実施例2の手順に従って、pNLB−CMV−LC−emcv−HCの形質導入粒子を作製した。Speksnijder手順(米国特許第5,897,998号)に従って約300個の白色レグホン卵に窓を作り、次いで、卵1個あたり約7×104の形質導入粒子を注入した。注入から21日後に卵が孵化した。孵化から1週間後のヒヨコから血清サンプルを収集し、EPOレベルをEPO ELISAによって測定した。
【0192】
Taqman(登録商標)分析によって、精子中にEPO導入遺伝子を含むG0雄鳥を同定した。血清サンプル中に最も高いレベルの導入遺伝子を有する雄鳥を、人工授精によって非遺伝子導入SPAFAS(白色レグホン)雌鳥と交配させた。
【0193】
1000羽の子孫についてスクリーニングし、10羽超のヒヨコが遺伝子導入体(G1トリ)であることを見出した。MAbの存在について、ヒヨコ血清をELISAによって試験した。MAbが10μg/ml血清より多い量で存在することを見出す。MAbの存在について、G1雌鳥由来の卵白もELISAによって試験し、10μg/ml血清より多い量で存在することを見出す。
【0194】
実施例17
pNLB−CMV−hG−CSFの構築
このベクターは、実施例12のpNLB−CMV−IFNベクターのIFNコード領域をG−CSFのコード配列で効率的に置換する。プライマー5’GCSF (ggggggaagctttcaccatggctggacctgcca;配列番号32)および3’GCSF (actagacttttcagggctgggcaaggtggcg;配列番号33)を用いて、pORF9−hG−CSFb(カタログ番号porf−hgcsfb,Invivogen,San Diego,CA)からhG−CSF ORF(ヒト顆粒球コロニー刺激因子読み取り枠)を増幅して、642塩基対(bp)のPCR産物を作製した。pNLB−CMV−IFN alpha−2bにおいて見出されるものと一致するG−CSFコード配列の3’側コード配列を有するpNLB−CMV−hG−CSF構築物を提供するために、プライマー5’GCSF−NLB(ccagccctgaaaagtctagtatggggattggtg;配列番号34)および3’GCSF−NLB (gggggggctcagctggaattccgcc;配列番号35)を使用するPCRによって、pNLB−CMV−IFN alpha−2bの86bpフラグメント(IFNコード配列の3’末端に隣接して存在する)を増幅した。2つのPCR産物(642bpおよび86bp)を混合し、プライマー5’GCSFおよび3’GCSF−NLBを用いたPCR増幅によって融合させた。説明書に従って、PCR産物をpCR(登録商標)4Blunt−TOPO(登録商標)プラスミドベクター(Invitrogen)にクローニングし、DH5α−E細胞にエレクトロポレーションし、pFusion−hG−CSF−NLBを作製した。Hind IIIおよびBlp Iを用いてpFusion−hG−CSF−NLBを消化し、、690bpのG−CSFフラグメントをゲル精製した。Blp Iを用いて消化することによって、pNLB−CMV−IFN alpha−2bからIFN alpha−2bコード配列を除去した。次いで、ベクターを再度消化し、IFNをコードする挿入部分を欠損したクローンを選択し、pNLB−CMV−delta hIFN alpha−2bを作製した。Blp Iを用いてpNLB−CMV−delta IFN alpha−2bを消化し、Hind IIIを用いて部分的に消化し、8732bpのBlp I−Hind IIIベクターフラグメントをゲル精製した。690bpのHind III/Blp I G−CSFフラグメントに、8732bpのフラグメントをライゲーションし、pNLB−CMV−G−CSFを作製した。配列決定することによって、G−CSF ORFを確認した。
【0195】
実施例18
ヒト顆粒球コロニー刺激因子(hG−CSF)を発現する遺伝子導入ニワトリの作製
実施例2においてNLB−CMV−BLについて記載したように、NLB−CMV−hG−CSF形質導入粒子の作製を実施した。ステージXの卵277個の胚に、7μlのNLB−CMV−hG−CSF形質導入粒子を注入した(力価は2.1×107〜6.9×107であった)。86羽のヒヨコが孵化し、性的に成熟するまで飼育した。60羽のヒヨコがG−CSFについて陽性であって、性別に分けた:30羽のオスおよび30羽のメス。hG−CSFについて、21羽の雌鳥由来の卵白をELISAによってアッセイした。5羽の雌鳥が0.05μg/ml〜0.5μg/mlの範囲の有意なレベルのhG−CSFタンパク質を有していることを見出した。
【0196】
Chelex−100 extraction (Walsh et al., 1991)によって雄鳥血清サンプルからDNAを抽出した。次いで、プライマーSJ−G−CSF(cagagcttcctgctcaagtgctta)およびSJ−G−CSF rev(ttgtaggtggcacacagcttct)ならびにSJ−G−CSFプローブ(agcaagtgaggaagatccagggcg)を使用して、DNAサンプルを7700 Sequence Detector (Perkin Elmer)上でTaqman(登録商標)分析に供して、導入遺伝子を検出した。精子サンプルにおける最も高い導入遺伝子レベルを有するG0雄鳥8羽を、非遺伝子導入SPAFAS(白色レグホン)雌鳥と人工受精によって交配させた。
【0197】
上記のTaqman(登録商標)分析によって、導入遺伝子の存在について、血液DNAサンプルをスクリーニングした。2264羽の子孫のうち、13羽の雄鳥が遺伝子導入体であることを見出し、それぞれがG−CSFの存在について陽性であって、ELISAによって測定したところ、ある雌鳥は血清において約136.5ng/mlのG−CSF、卵白において5.6μg/mlのG−CSFを有していた。
【0198】
XGF498と同じ系統である2羽のG1雄鳥(QGF910およびDD9027)(従って、ゲノム中、同一の位置に挿入された同一の導入遺伝子を有する)を非遺伝子導入雌鳥と交配させ、家禽由来のG−CSFを含む卵を産むメスの子孫を作製した。QGF910およびDD9027子孫の卵から卵白を収集し、ミリグラムの分量のG−CSFを精製した。実施例20において開示したように得られた家禽由来のG−CSFの代表的な糖鎖付加パターンを決定した。
【0199】
実施例19
ヒト細胞傷害性抗原4−Fc融合タンパク質(CTLA4−Fc)を発現する遺伝子導入ニワトリの作製
2005年1月31日に出願された米国特許第11/047,184号(出典明示によってその全体を本願明細書にて援用する)にて開示されているように、pNLB−1.8OM−CTLA4Fc and pNLB−3.9OM−CTLA4Fcを構築した。実施例2においてpNLB−CMV−BLについて記載するように、pNLB−1.8OM−CTLA4FcおよびpNLB−3.9OM−CTLA4Fc形質導入粒子の作製を実施した。7μlのpNLB−1.8OM−CTLA4Fc形質導入粒子を193個の白色レグホン卵に注入し(力価は〜4×106であった)、72羽のヒヨコが孵化した。7μlのpNLB−3.9OM−CTLA4Fc形質導入粒子を199個の白色レグホン卵に注入し(力価は〜4×106であった)、20羽のヒヨコが孵化した。
【0200】
CTLA4−Fcの存在について、pNLB−1.8OM−CTLA4Fc粒子を用いて作製した30羽の雌鳥由来の卵白をELISAによってアッセイした。1羽の雌鳥が、0.132μg/mlの平均レベル(5個の卵をアッセイした)で、卵白において有意なCTLA4−Fcタンパク質レベルを有していることを見出した。CTLA4−Fcの存在について、pNLB−3.9OM−CTLA4Fc粒子を用いて作製した7羽の雌鳥由来の卵白をELISAによってアッセイした。2羽の雌鳥が、一方の雌鳥について0.164μg/mlの平均レベル(5個の卵をアッセイした)、もう一方の陽性の雌鳥について0.123μg/mlの平均レベル(5個の卵をアッセイした)で、卵白において有意なCTLA4−Fcタンパク質レベルを有していることを見出した。
【0201】
実施例20
遺伝子導入家禽由来G−CSFの炭水化物分析
当業者に周知である以下の分析技術を用いることによって、TPD G−CSFのオリゴ糖構造を決定した。ペプチド骨格から遊離させた後に、オリゴ糖に対して、MALDI−TOF−MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析)分析およびESI MS/MS(エレクトロスプレーイオン化タンデム質量分析)を実施した。O結合型オリゴ糖をタンパク質から化学的に遊離させ、無水DMSO下でのヨウ化メチルとの反応を含むNaOH法を使用して、パーメチル化(permethylated)させ、分析の直前にクロロホルムによって抽出した。インタクトでグリコシル化されたG−CSFに対して直接質量分析を実施した。HPLC分析を使用して、多糖構造に対しても分析を実施した。つまり、タンパク質骨格からの遊離の後に、HPLCを使用して構造を分離した。特定の酵素を用いて各多糖種のサンプルを消化し、消化産物をHPLCによって分析し、当業者に理解される構造決定を提供した。
【0202】
決定した構造は以下:
【化34】
である。興味深いことに、構造Cおよび構造Dは、図において示す構造Eの前駆体形態であり得る。限定するものではないが、構造Aは家禽由来のグリコシル化されたG−CSF上に約20%〜約40%の確率で存在し、構造Bは家禽由来のグリコシル化されたG−CSF上に約5%〜約25%の確率で存在し、構造Cは家禽由来のグリコシル化されたG−CSF上に約10%〜約20%の確率で存在し、構造Dは家禽由来のグリコシル化されたG−CSF上に約5%〜約15%の確率で存在し、構造Eは家禽由来のグリコシル化されたG−CSF上に約1%〜約5%の確率で存在し、構造Fは家禽由来のグリコシル化されたG−CSF上に約10%〜約25%の確率で存在し、構造Gは家禽由来のグリコシル化されたG−CSF上に約20%〜約30%の確率で存在すると推定された。
【0203】
当業者に容易に利用可能な方法を使用して、アルビトール(内部標準)を用いてスパイクし、加水分解し、N−アセチル化し、かつTMS誘導体化した家禽由来のG−CSFに対して、GC/MS(ガスクロマトグラフィー質量分析)によって単糖分析を実施した。誘導体化したサンプルを同様に誘導体化したサンプルの標準混合物と比較した。ケトデオキシノヌロソン酸でスパイクし、凍結乾燥させ、次いで加水分解し、脱塩し、再度凍結乾燥させた後で、家禽由来のG−CSFのシアル酸分析を実施した。適切な標準品を使用するDionex BioLCシステム上で、サンプルの分析を実施した。表5にて理解されるように、これらの分析によって、ガラクトース、グルコース、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルグルコサミンおよびシアル酸(N−アセチルアセチルノイラミン酸)の存在が示された。表5におけるデータは、HPAEC−PAD分析によって得られた予備的なデータ(かなりの割合のN−アセチルグルコサミンが存在すると決定していた)に取って代わるものである。
【0204】
【表7】
【0205】
TFA中で加水分解し、ボロジュウテリウム化ナトリウム中で還元した家禽由来のG−CSFのパーメチル化グルカンサンプルに対して、結合分析を実施した。メタノール:氷酢酸(9:1)を3回添加することによってホウ酸を除去し、凍結乾燥、次いで、無水酢酸によってアセチル化した。クロロホルムを用いた抽出によって精製した後で、サンプルをGC/MSによって試験した。同じ条件下で、標準品混合物も流した。結合を以下のように決定した:
i.シアル酸結合は、ガラクトースに対して2〜3個、N−アセチルガラクトサミンに対して2〜4個である;
ii.ガラクトース結合は、N−アセチルガラクトサミンに対して2〜3個、N−アセチルグルコサミンに対して2〜4個である;
iii.N−アセチルグルコサミン結合は、N−アセチルガラクトサミンに対して2〜6個である。
【0206】
実施例21
家禽由来G−CSF(TPD G−CSF)のインビトロにおける細胞増殖活性
NFS−60細胞増殖アッセイを使用して、TPD G−CSFのインビトロでの生物学的活性を示した。つまり、GM−CSFを含む培地中で、NFS−60細胞を維持した。コンフルエントな細胞を回収し、洗浄し、培地のみを含むウェル1つあたり105の細胞密度でプレーティングした。TPD G−CSFおよび細菌由来のヒトG−CSF(すなわち、Neupogen(登録商標))を培地中に段階希釈し、3連のセパレートウェルに添加した。3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)の代謝還元によって細胞増殖を決定し、分光測定によって定量化した。Neupogen(登録商標)のED50を精製したトリ由来のG−CSFと比較することによって、トリ由来のG−CSFの特異的な活性を決定した。14日間にわたって、TPD G−CSFの特異的な活性を、細菌由来のG−CSF Neupogen(登録商標)の活性を十分に上回ることを決定した。図17を参照のこと。
【0207】
本明細書に記載の全ての文献(例えば、米国特許、米国特許出願、刊行物)を、出典明示によって援用する。本発明の種々の修飾および変動は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者に明らかである。本発明を、本発明の好ましい実施態様と関連させて記載しているが、権利を主張する本発明は、そのような特定の実施態様に限定されるものではない。さらに、本明細書に記載し、当業者に明らかな本発明を実施する態様の種々の改変も、上記の特許請求の範囲に含まれることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0208】
【図1】図1Aおよび1Bは、オバルブミンプロモーターセグメントおよびコード配列、遺伝子X(これは、外因性タンパク質Xをコードする)を含む、オバルブミンプロモーター発現ベクターを示す。Xは、目的の外因性遺伝子または外因性タンパク質のいずれかを示す。
【図2−1】図2A、2B、2Cおよび2Dは、オバルブミンプロモーターおよびコード配列、遺伝子X(これは、外因性タンパク質Xをコードする)を含む、レトロウイルスベクターを示す。Xは、目的の外因性遺伝子または外因性タンパク質のいずれかを示す。
【図2−2】図2Eは、2Aおよび2Bのベクターへの挿入用の外因性遺伝子を増幅するための方法を示す。
【図2−3】図2Fは、コード配列、遺伝子Xの発現を制御するオバルブミンプロモーター、および第2のコード配列、遺伝子Yの発現を可能にする配列内リボソーム進入部位(IRES)エレメントを含むレトロウイルスベクターを示し、遺伝子XおよびYは任意の目的の遺伝子を示す。
【図3】図3Aおよび3Bは、それぞれALV由来のベクター、pNLBおよびpNLB−CMV−BLの略図を示す。NLBは全体が配列決定されていないので、bp(塩基対)の測定値は、公開されているデータ(Cosset et al., 1991; Thoraval et al., 1995) および本明細書で考察するデータからの推定されるものである。ベクターはこれら図から明らかな一方、ニワトリゲノムに組み込まれている。
【図4−1】図4Aおよび4Bは、キメラおよび遺伝子導入ニワトリの血清中のβ−ラクタマーゼ(ラクタマーゼ)の量を示す。図4Aにおいて、NLB−CMV−BL導入遺伝子で形質導入したG0ニワトリの血清中の生理活性ラクタマーゼの濃度を、パッチ後8ヶ月目に測定した。世代、性別およびウィングバンド数を示す。ラクタマーゼの血清濃度を、G1遺伝子導入ニワトリについてパッチ後6〜7ヶ月に測定した。矢印は、雄鳥2395から生まれたG1ニワトリを示す。図4Bにおいて、ラクタマーゼの血清濃度を、G1およびG2遺伝子導入ニワトリについて測定した。矢印は、雌鳥5657または雄鳥4133から生まれたG2を示す。ニワトリ4133、5308および5657からのサンプルは、図4Aに記載のものと同じである。5657から生まれたG2のトリ由来のサンプルは、パッチ後3〜60日目で収集した。4133から生まれたG2のトリ由来のサンプルは、パッチ後3ヶ月目で収集した。
【図4−2】図4Aおよび4Bは、キメラおよび遺伝子導入ニワトリの血清中のβ−ラクタマーゼ(ラクタマーゼ)の量を示す。図4Aにおいて、NLB−CMV−BL導入遺伝子で形質導入したG0ニワトリの血清中の生理活性ラクタマーゼの濃度を、パッチ後8ヶ月目に測定した。世代、性別およびウィングバンド数を示す。ラクタマーゼの血清濃度を、G1遺伝子導入ニワトリについてパッチ後6〜7ヶ月に測定した。矢印は、雄鳥2395から生まれたG1ニワトリを示す。図4Bにおいて、ラクタマーゼの血清濃度を、G1およびG2遺伝子導入ニワトリについて測定した。矢印は、雌鳥5657または雄鳥4133から生まれたG2を示す。ニワトリ4133、5308および5657からのサンプルは、図4Aに記載のものと同じである。5657から生まれたG2のトリ由来のサンプルは、パッチ後3〜60日目で収集した。4133から生まれたG2のトリ由来のサンプルは、パッチ後3ヶ月目で収集した。
【図5】図5は、雌鳥5657(図5A)または雄鳥4133(図5B)が有する導入遺伝子座を含むニワトリの系図を示す。2395は多重導入遺伝子座を担持する雄鳥であった。2395を非遺伝子導入雌鳥と交配させて、ニワトリゲノムの特有の位置に導入遺伝子をそれぞれ担持する3羽の子孫を生じさせた。単純にするために、発現データが示されなかった遺伝子導入の子孫および非遺伝子導入の子孫は、系図から除いている。バンド数は、以下の記号を示す:○ 雌鳥;□ 雄鳥;● NLB-CMV-BL導入遺伝子を担持する雌鳥;■ NLB-CMV-BLを担持する雄鳥。
【図6】図6は、雌鳥5657およびその子孫の卵白中のβ−ラクタマーゼ(ラクタマーゼ)を示す。図6Aにおいて、雌鳥5657およびその遺伝子導入の子孫由来の卵白を活性ラクタマーゼについてアッセイしている。コントロールは、未処理の雌鳥であって、交配相手は雌鳥5657から生まれた非遺伝子導入体G2である。2000年3月に収集した。矢印は雌鳥5657から生まれたG2を示している。図6Bにおいて、導入遺伝子(ヘミ接合性)1コピーを担持するG2の遺伝子導入雌鳥由来の卵白サンプルを、2コピー(ホモ接合性)を有するG3の雌鳥6978と比較している。2001年2月に卵を回収した。世代およびウィングバンド数を左に示している。
【図7】図7は、雄鳥4133から生まれたG2およびG3雌鳥の卵中のβ−ラクタマーゼ(ラクタマーゼ)を示す。図7Aにおいて、雄鳥4133から生まれたヘミ接合性遺伝子導入雌鳥の代表的な4羽由来の卵白を活性ラクタマーゼについてアッセイしている。1999年10月および2001年2月に卵を収集し、各セットを収集した後に、雌鳥1羽あたり最低4個の卵をアッセイした。コントロールは、未処理の雌鳥由来の卵白を示す。バンド数を左に示す。各期間の4羽の雌鳥の平均を計算している。図7Bにおいて、ヘミ接合性のG2遺伝子導入雌鳥由来の卵白を、ヘミ接合性およびホモ接合性の遺伝子導入G3雌鳥の卵白と比較した。2001年2月に卵を収集した。世代数および導入遺伝子のコピー数を、各雌鳥についてのデータバーにて示す。1または2コピーを担持する雌鳥についての平均濃度を表の下方に示す。
【図8】図8Aおよび8Bは、ニワトリでのIFN−α 2b発現用pNLB−CMV−IFNベクター;およびニワトリでのエリスロポイエチン(EPO)発現用pNLB−MDOT−EPOwpそれぞれ示す。
【図9】図9は、6バンド全てを含む、遺伝子導入家禽由来のインターフェロン−α 2b(TPD IFN−α 2b)の新規の糖鎖付加パターンを表す。
【図10】図10は、ヒト末梢血白血球由来のインターフェロン−α 2b(PBL IFN−α 2bまたは天然のhIFN)と遺伝子導入家禽由来のインターフェロン−α 2b(TPD IFN−α 2bまたは卵白hIFN)との比較を示す。
【図11】図11Aは、最適化されたヒトインターフェロン−α 2b(IFN−α 2b)、すなわち、組換えTPD IFN−α 2b(配列番号1)の合成核酸配列(cDNA、残基1〜498)を表す。図11Bは、遺伝子導入家禽由来のインターフェロン−α 2b(TPD IFN−α 2b)(配列番号2)の合成アミノ酸配列(残基1〜165)を表す。
【図12】図12Aは、最適化されたヒトエリスロポイエチン(EPO)、すなわち、組換えTPD EPO(配列番号3)の合成核酸配列(cDNA、残基1〜579)を表す。図12Bは、遺伝子導入家禽由来のエリスロポイエチン(TPD EPO)(配列番号4)の合成アミノ酸配列(残基1〜193)を表す(天然のヒトEPOについて、NCBIアクセッション番号NP000790も参照のこと)。
【図13】図13は、IFN−MM CDSに連結された合成MDOTプロモーターを示す。MDOTプロモーターは、−435〜166bpの範囲のニワトリオボムコイド遺伝子(オボムコイドプロモーター)、および−251〜+29bpの範囲のニワトリコンアルブミン遺伝子(オボトランスフェリンプロモーター)由来のエレメントを含む(NCBIアクセッション番号Y00497、M11862およびX01205を参照のこと)。
【図14】図14は、主要な卵白タンパク質の概要を提供する。
【図15】図15Aおよび15Dは、pCMV−LC−emcvIRES−HCベクターを示し、ここで、モノクローナル抗体の発現を試験するために、脳心筋炎ウイルス(EMCV)由来のIRESの配置によってヒトモノクローナル抗体の軽鎖(LC)および重鎖(HC)をこの単一のベクターから発現させた。比較として、図15Bおよび15Cは、別々のベクターpCMV−HCおよびpCMV−LCをそれぞれ示し、ここで、これらのベクターもモノクローナル抗体の発現を試験するために使用した。
【図16】図16は、Neupogen(登録商標)(レーンA)およびTPD G−CSF(レーンB)の銀染色したSDS PAGEを示す。
【図17】図17は、14日間にわたる、細菌由来のヒトG−CSFと比較したTPD G−CSFの好中球絶対数の増加を表す。
【図18】図18A(配列番号39)は、図18Bのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を示す。図18B(配列番号40)(NCBIアクセッション番号NP7577373に対応する)は、細胞の分泌の間に成熟G−CSFを形成するために切り離される天然のシグナル配列を含む、G−CSFのアミノ酸配列を示す。図18C(配列番号41)は、本発明によって産生される成熟G−CSFタンパク質のアミノ酸配列を示す。
【技術分野】
【0001】
関連出願情報
本出願は、2006年3月17日出願の米国仮特許出願第60/783,6482006号;および2006年8月25日出願の米国仮特許出願第60/840,291号の恩典を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、鳥類細胞への外因性の遺伝的材料の導入および鳥類細胞における外因性の遺伝物質の発現に関する。本発明は、詳細には、遺伝子導入のトリ種(ニワトリ、ウズラおよびシチメンチョウを含む)、ならびに医薬用タンパク質などの外因性タンパク質を含む卵を産むトリに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
多数の天然または合成タンパク質が、診断および治療に応用されており;ほかの多くのタンパク質が開発中であるか、または臨床試験中である。最新のタンパク質の産生方法としては、天然の供給源からの単離、および細菌および哺乳動物細胞中での組換え産生が挙げられる。しかし、これらのタンパク質産生方法の複雑性および高い費用が原因で、代替法を開発する取り組みが進行中である。例えば、ブタ、ヒツジ、ヤギおよびウシの乳汁中で外因性タンパク質を産生する方法が報告されている。これらのアプローチは、ファウンダー(founder)および作製した遺伝子導入群の間の長い発生期間、畜産および獣医にかかる膨大な費用、およびゲノムでの導入遺伝子の挿入部位に対する位置効果が原因である発現レベルの変動を含む、特定の制限を有する。タンパク質はまた、粉砕およびマルティング(malting)プロセスを使用して、オオムギおよびライムギから産生されている。しかし、植物の翻訳後修飾は動物の翻訳後修飾とは異なり、これはしばしば医薬用タンパク質などの外因性タンパク質の機能に対して重大な効果を有する。
【0004】
組織培養物および乳腺バイオリアクターのように、トリ輸卵管は、バイオリアクターとして強力に役立ち得る。高いレベルの外因性タンパク質が輸卵管中で分泌され、卵中に包まれるようにトリの遺伝物質を改変する、うまくいく方法は、安価なタンパク質の大量製造であろう。そのようなアプローチのいくつかの利点は、a)短い発生時間;b)フロックサイズ(flock size)を増加させることによって製造物を容易に増減させて、製造物の必要を満たし;c)発現されるタンパク質の翻訳後修飾;4)自動化されている給餌および卵の回収;d)天然に無菌の卵白;ならびにe)卵白中の高濃度のタンパク質に起因する、処理費用の低減であろう。
【0005】
ニワトリの生殖器系を含むトリ生殖器系は、よく記載されている。雌鳥の卵は、輸卵管中の通過の間に卵黄の上に分泌されるいくつかの層からなる。卵の産生は、雌鳥の卵巣での大きな卵黄の形成と一緒に開始する。次いで、未受精の卵母細胞が、卵黄嚢の上端に位置する。排卵または輸卵管からの卵黄の放出に際して、卵母細胞は、輸卵管の卵管漏斗へと移動し、精子が存在する場合、ここで卵母細胞は受精される。次いで、卵母細胞は、管状腺と繋がっている輸卵管の筒部へと移動する。これらの細胞は、卵白アルブミン、リゾチーム、オボムコイド、コンアルブミンおよびオボムチンを含む卵白タンパク質を、卵管漏斗の管腔(ここで、これらのタンパク質がトリ胚および卵黄状に沈着する)へと分泌する。
【0006】
卵白アルブミン遺伝子は、輸卵管の卵管漏斗の管状腺細胞において特異的に発現する45kDのタンパク質である(Beato Cell 56:335-344(1989))。卵白アルブミンは、もっとも多い卵白タンパク質であって、管状腺細胞によって産生される全タンパク質の50%超、または大型のグレードAの卵1つあたりに約4g含まれる(Gilbert, ”Egg albumen and its formation” in Physiology and Biochemistry of the Domestic Fowl, Bell and Freeman, eds., Academic Press, London, N.Y., pp. 1291-1329)。卵白アルブミン遺伝子および両側の隣接領域20kb超がクローニングされ、分析されている(Lai et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75:2205-2209 (1978);Gannon et al., Nature 278:428-424 (1979);Roop et al., Cell 19:63-68 (1980);およびRoyal et al., Nature 279:125-132 (1975))。
【0007】
卵白アルブミンの調節に、多くの注意が払われている。遺伝子は、エストロゲン、グルココルチコイドおよびプロゲステロンなどのステロイドホルモンに応答し、未成熟のヒヨコの管状細胞あたり約70,000個の卵白アルブミンmRNA転写物、および成熟の産卵鶏の管状腺細胞あたり100,000個の卵白アルブミンmRNA転写物の蓄積を誘導する(Palmiter, J. Biol. Chem. 248:8260-8270 (1973); Palmiter, Cell 4:189-197 (1975))。形質移入した管状腺細胞でのDNAse過敏性分析およびプロモーター−レポーター遺伝子アッセイによって、卵白アルブミン遺伝子の発現に必要とされる配列を含む7.4kbの領域が決定されている。この5’隣接領域は、転写開始部位から−0.25、−0.8、−3.2および−6.0に集中している4つのDNAse I−過感受性部位を含む。これらの部位は、HS−I、−II、−IIIおよび−IVとそれぞれ呼ばれている。これらの領域は、クロマチン構造における変化を反映しており、輸卵管細胞での卵白アルブミン遺伝子の発現と特異的に関連している(Kaye et al., EMBO 3:1137-1144 (1984))。HS−IIおよび−IIIの過感受性は、エストロゲン誘導性であって、卵白アルブミン遺伝子の発現のホルモン誘導でのこれらの領域の役割を指令している。
【0008】
HS−IおよびHS−IIはともに、卵白アルブミン遺伝子の転写のステロイド誘導に必要とされ、これらのエレメントを含む5’側の領域1.4kbが、外植管状腺細胞におけるステロイド依存性の卵白アルブミンの発現を駆動させることに十分である(Sanders and McKnight, Biochemistry 27: 6550-6557 (1988))。HS−Iは、ホルモンがない場合に卵白アルブミンの発現を抑圧する負の調節エレメントをいくつか含むので、負の応答エレメント(”NRE”)といわれる(Haekers et al., Mol. Endo. 9:1113-1126 (1995))。タンパク質因子は、輸卵管核においてのみ見出されるいくつかの因子を含むタンパク質因子はこれらのエレメントに結合しており、組織特異的な発現における役割を示唆している。HS−IIは、転写のステロイドを促進することに必要とされるので、ステロイド依存性応答エレメント(”SDRE”)といわれる。HS−IIは、Chirp−Iとして知られるタンパク質またはタンパク質複合体に結合する。Chirp−Iはエストロゲンによって誘導され、シクロヘキサミドの存在下で迅速に代謝回転する(Dean et al., Mol. Cell. Biol. 16:2015-2024 (1996))。外植の管状腺細胞培養系を使用する実験によって、NFκB様因子を含む、ステロイド依存性の様式でSDREに結合する因子のさらなるセットが決定されている(Nordstrom et al., J. Biol. Chem. 268:13193-13202 (1993); Schweers and Sanders, J. Biol. Chem. 266: 10490-10497 (1991))。
【0009】
HS−IIIおよび−IVの機能については、あまり知られていない。HS−IIIは、機能性のエストロゲン応答エレメントを含んでおり、エストロゲン受容体cDNAをHeLa細胞に同時形質導入した場合、エストロゲン誘導能を卵白アルブミン近位プロモーターまたは異種プロモーターのいずれかに与える。これらのデータは、HS−IIIが卵白アルブミンの全体の調節において、機能性の役割を担い得ることを暗示している。HS−IVについては、機能性のエストロゲン応答エレメントを含まないこと以外は、全く知られていない(Kato et al., Cell 68: 731-742 (1992))。
【0010】
外来性の遺伝物質の導入および/または特定の遺伝子の破壊によって真核生物のゲノムを改変することへの関心は高い。特定の真核生物の細胞は、外因性の真核生物タンパク質の産生に優れた宿主であることが解っている。特定のタンパク質をコードする遺伝子の導入はまた、経済的価値の増した新たな表現型の作製を可能にする。さらに、遺伝的に欠損した細胞がこれらの細胞ではさもなければ産生し得ないタンパク質を発現することを可能にする外来性遺伝子の導入によって、遺伝的に引き起こされるいくつかの疾患状態が治療され得る。遂に、遺伝物質の挿入または除去による動物ゲノムの改変は、遺伝子機能の基礎研究を可能にし、最終的には、疾患状態を治療するか、または動物の表現型の改善をもたらすために使用され得る遺伝子の導入を可能にし得る。
【0011】
遺伝子組換えは、いくつかの異なる方法によって哺乳動物において成し遂げられている。まず、マウス、ブタ、ヤギ、ヒツジおよびウシを含む哺乳動物において、導入遺伝子は受精卵の前核にマイクロインジェクトされ、次いで、フォスターマザー(foster mother)の子宮に入れ、ここで生殖系列中に導入遺伝子を担持するファウンダー動物を生じさせる。導入遺伝子は操作されて、外来性タンパク質の発現を特定の細胞型に指令する特定の調節配列を有するプロモーターを担持する。導入遺伝子はゲノムにランダムに挿入されるので、ゲノムへの導入遺伝子の挿入部位に対する位置効果は、導入遺伝子の発現レベルの減少を可変的に引き起こし得る。この取り組みはまた、所望の細胞型において導入遺伝子の発現を指令することに必要な配列を決定し、かつ導入遺伝子ベクター中に含まれるようなプロモーターの特徴付けを必要とする(Hogan et al. Manipulating the Mouse Embryo, Cold Spring Harbor Laboratory, NY (1988))。
【0012】
動物の遺伝子組換えをもたらす第2の方法は、標的遺伝子の破壊であって、ここで、選択可能なマーカー遺伝子に隣接する標的遺伝子の配列を含む標的化ベクターは胚性幹(”ES”)細胞に導入される。相同組換えによって、標的化ベクターは染色体座で標的遺伝子配列を置換するか、または標的遺伝子産物の発現を抑制する内部配列に挿入する。適切に破壊された遺伝子を有するES細胞のクローンを選択し、次いで、初期の胚盤胞に注入してキメラのファウンダー動物を生じ、そのうちのいくつかは、生殖細胞にて導入遺伝子を有する。導入遺伝子が標的遺伝子座を欠失させる場合、導入遺伝子は、遺伝子座を導入遺伝子ベクターが有する外来性DNA(培養物中の形質導入されたES細胞を検出することに有用な選択可能なマーカーをコードするDNAからなり、次いで、標的遺伝子のプロモーターが外来性遺伝子の発現を駆動させるように、欠失した遺伝子の場所に挿入される外来性タンパク質をコードするDNA配列をさらに含み得る)と置換する(米国特許第5,464,764号および第5,487,992号(M. P. Capecchi and K. R. Thomas))。このアプローチは、ES細胞がヤギ、ウシ、ヒツジおよびブタを含む多くの哺乳動物において利用可能でないという制限を受けている。さらに、この方法は、欠失される遺伝子が生物または細胞型の生存または適切な発達に必要とされる場合に有用でない。
【0013】
トリの遺伝子組換えにおける近年の発達は、トリゲノムの改変を可能にしている。生殖細胞遺伝子導入ニワトリは、新鮮な生み立ての卵において、ニワトリの胚盤葉の胚下腔中に複製欠損のレトロウイルスを注入することによって産生され得る(米国特許第5,162,215号; Bosselman et al., Science 243:533-534 (1989); Thoraval et al., Transgenic Research 4:369-36 (1995))。外来性遺伝子を担持するレトロウイルスの核酸は、胚細胞の染色体にランダムに挿入されて、遺伝子導入動物を生じ、そのうちのいくつかはそれらの生殖細胞中に導入遺伝子を有する。挿入部位に対する位置効果を乗り越えるために融合遺伝子構築物の5’または3’領域に挿入されたインスレーター配列の使用が記載されている(Chim et al., Cell 74:504-514 (1993))。
【0014】
別のアプローチにおいて、導入遺伝子は、受精卵の胚盤中に微量注入されて、遺伝子がF1世代に渡り得る、安定した形質導入ファウンダートリを産生する(Love et al., Bio/Technology 12:60-63 (1994))。しかし、この方法は、いくつかの不利点を有する。受精卵を収集するために雌鳥を犠牲にしなければならず、形質導入ファウンダーの割合は小さく、注入された卵は、代理の殻におけるインビトロでの重労働な培養を必要とする。
【0015】
別のアプローチにおいて、仮定的な始原生殖細胞(”PGC”)を含む胚盤葉細胞をドナーの卵から切除し、導入遺伝子を形質導入し、レシピエントの胚の胚下腔に導入する。形質導入したドナー細胞をレシピエントの胚に組み込み、形質導入胚を発生させ、そのいくつかは生殖細胞中に導入遺伝子を有すると期待される。導入遺伝子は、非相同組換えによって、ランダムな染色体部位に挿入される。しかし、この方法によって、形質導入ファウンダートリは生じていない。
【0016】
Lui, Poult. Sci. 68:999-1010 (1995)では、ビテロゲニン遺伝子の隣接DNA配列を含む標的化ベクターを使用して、培養物中のニワトリ胚盤葉細胞中の常在性の遺伝子の部分を欠失させている。しかし、これらの細胞が生殖細胞に寄与し、形質導入胚を産生し得ることは示されていない。さらに、この方法は、欠失される遺伝子が生物または細胞型の生存または適切な発達に必要とされる場合に有用でない。
従って、適切なプロモーターに作動可能に連結されている外来性DNAからなりDNAをトリゲノムに導入して、外因性遺伝子の発現が達成され得る方法の必要があることが理解されるだろう。さらに、輸卵管において外因性遺伝子を発現し、発現された外因性タンパク質を卵中に分泌する、生殖細胞が改変されている形質導入トリを作り出す必要がある。
【0017】
インターフェロンが1957年に発見された際に、インターフェロンは重要な抗ウイルス剤として歓迎された。1970年代後半、インターフェロンは、組換え遺伝子技術と関連づけられた。現在、インターフェロンは、ガンの生物学的プロセスの複雑性の象徴であって、かつ、この複雑性に対処する耐久性および持続性の価値である。
【0018】
ガンを引き起こす異常な遺伝子は、少なくとも3つの型を含む:第1に、ガン遺伝子であって、ガン遺伝子が変化した場合、ガンを特徴付ける異常な増殖および分化を促す。第2に、ガン抑制遺伝子であって、ガン抑制遺伝子が変化した場合、この異常な増殖および分化が制御できない。第3に、DNA修復遺伝子であって、DNA修復遺伝子が変化した場合、ガンを誘導し得る変異を修復できない。研究者らは、体の中に約30〜40個のガン抑制遺伝子が存在し、各遺伝子はタンパク質を産生すると考えている。これらのタンパク質は、Rb(網膜芽細胞腫に最初に関連する)やp53(多くの異なる腫瘍に関連する)などの”主要な”ガン抑制タンパク質によって制御され得る。研究結果から、これらのガン抑制遺伝子のわずか1つを正常な機能に戻すことで、悪性腫瘍の侵襲性がおよそ低減され得ることが示唆されている。
【0019】
インターフェロンが細胞増殖を抑制することが発見されたことで、科学者はインターフェロンに興味を示すようになった。さらに、インターフェロンは、インターフェロンは、免疫系に対して特定の陽性効果を有することが見出されている。インターフェロンは現在、ガン抑制タンパク質に類似していると考えられている:インターフェロンは細胞、特に悪性細胞の増殖を抑制し;インターフェロンは、多くのガン遺伝子および増殖因子の効果をブロックし;他の生物学的薬剤とは異なり、インターフェロンは転移プロセスに重要な細胞の運動性を抑制する。
【0020】
細胞間情報伝達は、メッセージが伝達される組織の全ての構造成分(マトリックス、細胞膜、細胞骨格、および細胞自体)の正常な機能に依存している。ガンにおいて、細胞間の情報伝達ネットワークは、破壊されている。細胞骨格が破壊されている場合、メッセージは核に到達せず、核は異常に機能し始める。核はガン遺伝子またはガン抑制遺伝子のスイッチがオンまたはオフになる部位であるので、細胞は、この異常な機能は悪性腫瘍を導き得る。これが発生した場合、細胞は不規則に増殖し始め、分化しない。これらの細胞はまた、移動を開始し、他の細胞を破壊し始める。インターフェロンは、おそらく他の細胞外および細胞性物質に呼応して、均衡および恒常性を回復し、メッセージが正常に到達することを確実にしている。インターフェロンは、接着分子を介して、増殖を停止させ、運動性を停止させ、かつ細胞の能力を増強して、その環境に応答する。インターフェロンはまた、細胞骨格上の欠損および傷害を是正する。インターフェロンは、血管新生、悪性腫瘍の増殖に必要な新たな血管の形成におけるの最初のステップをブロックすることが見出されている。さらに、インターフェロンは線維症、多くの異なる種類の細胞を刺激し、細胞増殖を促す傷害への応答をブロックする(Kathryn L. Hale, Oncolog, Interferon: The Evolution of a Biological Therapy, Taking a New Look at Cytokine Biology)。
【0021】
インターフェロンは、動物細胞がウイルスに侵入された場合に産生され、血流または細胞間液に放出され、健康な細胞を誘導して、感染に対抗する酵素を作る。長年、研究用のインターフェロンの供給は、割高な抽出技術によって制限されていた。しかし、1980年、タンパク質は遺伝子工学によって高い品質で利用可能になった(すなわち、タンパク質の組換え形態)。科学者らはまた、体が3つの異なる型のインターフェロン(α−(アルファ)、β−(ベータ)、およびγ−(ガンマ)インターフェロンという)を作ることを決定した。インターフェロンは最初、高度に種特異的であると考えられていたが、現在では、それぞれのインターフェロンは、他の種において異なる範囲の活性を有し得ることが知られている。アルファインターフェロン(α−IFN)は、ヘアリーセル白血病、C型肝炎に対する治療上の使用に承認されている。α−IFNはまた、B型慢性肝炎、肝ガンおよび肝硬変の主要な原因、ならびに性器疣贅およびいくつかの稀な血液および骨髄のガンの治療に有効であることが見出されている。α−IFNを含む点鼻薬は、ライノウイルスによって引き起こされる風邪に対する防御をいくらか提供する。ヒトα−IFNは、抗ウイルス、抗増殖および免疫調節性活性を有する細胞外情報伝達タンパク質のファミリーに分類される。IFN−αタンパク質は、ヒト染色体9上に密集する13遺伝子を含む多重遺伝子ファミリーによってコードされている。IFN−α遺伝子の大半は、センダイウイルスによって誘導される白血球においてmRNAレベルで発現される。さらに、少なくとも9個の異なる亜型もタンパク質レベルで産生されることが示されている。いくつかの類似のIFN−αタンパク質の発現の生物学的な重要性が知られているものの、これらのIFN−αタンパク質は、定量的に異なるパターンの抗ウイルス、増殖抑制およびキラー細胞刺激活性を有していると考えられている。現在、2つのIFN−αバリアント、IFN−α 2aおよびIFN−α 2bが組換え技術によって大腸菌で大量に産生され、薬物として市販されている。
【0022】
天然のIFN−αと異なり、これらの組換えIFN−α製品は、何人かの患者において免疫原性であることが示されており、これはIFN−αタンパク質の不自然な形態に起因している可能性がある。従って、IFN−α薬物の開発には、正常なヒト白血球において発現されるIFN−α亜型およびバリアントを同定するだけでなく、それらの考え得る翻訳後修飾を特徴付ける必要がある(Nyman et al. (1998) Eur. J. Biochem. 253:485-493)。
【0023】
Nymanら(上記)は、天然のヒトINF−αの糖鎖付加を研究している。彼らは、センダイウイルスの誘導後に白血球が産生する9つの亜型のうち2つ、すなわちIFN−α14cおよびINF−α 2bがグリコシル化されることを見出しており、これは初期の研究と一致している。IFN−α14は、考え得るN−糖鎖付加部位、Asn2およびAsn72を有する唯一のIFN−α亜型であって、Asn72のみが実際にグリコシル化される。IFN−α 2は、スレオニン106(Thr106)でO−グリコシル化される。興味深いことに、他のIFN−α亜型はこの位置にThrを含まない。この研究において、Nymanらは、オリゴ糖鎖を遊離させ、単離し、質量分析および特異的グリコシダーゼ消化によって分析した。IFN−α 2bおよびIFN−α14cの両方が逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)において3つのピークに分解された。RP−HPLC由来のIFN−α 2b画分のエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)分析は、それらの分子量における差異を明らかにし、これらが異なるグリコフォームを示すことを示唆した。このことは、各フラクションの遊離O−グリカンの質量分析によって確認されている。IFN−α 2bは、約20%のコア型−2五糖、および50%の二シアル酸付加および30%の一シアル酸付加コア型−1グリカンを含むと推定された。Nymanらのデータは、従前のINF−α 2b糖鎖付加の部分的な特徴付けと一致している(Adolf et al. (1991) Biochem. J. 276:511-518)。INF−α 14cおよびINF−α 2bにおける糖鎖付加の役割は、明らかには確立されていない。Nymanら(上記)によると、糖鎖は、生物学的活性に必要ではないが、糖鎖付加はタンパク質の薬物動態および安定性に対して効果を有し得る。
【0024】
ヒトゲノム中においてIFN−αファミリーのタンパク質をコードする少なくとも15個の機能性遺伝子が存在する。アミノ酸配列の類似性は一般に約90%の範囲であり、従って、これらの分子は構造上密接に関連している。IFN−αタンパク質は166アミノ酸(165アミノ酸を有するIFN−α 2は例外として)を含み、2つのジスルフィド架橋を形成する4つの保存されたシステイン残基を特徴として含む。IFN−α種は、特徴としていくぶん酸性であって、アスパラギンに結合した糖鎖付加についての認識部位を欠いている(アスパラギンに結合した糖鎖付加についての認識部位を含むINF−α 14は例外として)。位置23および34でアミノ酸が異なるIFN−α 2の3つのバリアントが知られている:IFN−α 2a(Lys−23、His−34);IFN−α 2b(Arg−23、His−34);およびIFN−α 2c(Arg−23、Arg−34)。IFN−α 2aおよびIFN−α 2cは、IFN−α 2bの対立遺伝子バリアントである。Gewert et al (1993) J. Interferon Res. vol 13, p 227-231を参照のこと。INF−α種のアミノ酸含量におけるわずかな差異は、インターフェロンの糖鎖付加をもたらすことを期待されない。すなわち、糖鎖付加パターンは、INF−α 2a、2bおよび2cのそれぞれで本質的に同じである。2つの他のヒトIFN種、すなわちIFN−ω1およびIFN−βはN−グリコシル化されており、IFN−αと遠縁にあたる:IFN−α、−βおよび−ωはまとめてクラスI IFNといわれ、同じ高親和性細胞膜受容体に結合する(Adolf et al. (1991) Biochem. J. 276:511-518)。
【0025】
Adolfら(上記)は、ヒト白血球IFN由来の天然のIFN−α 2の単離に、モノクローナル抗体の特性を使用した。彼らは、IFN−αの期待された抗ウイルス活性が確認された免疫アフィニティークロマトグラフィーによって95%の純度のタンパク質を得た。逆相HPLCによる天然のIFN−α 2の分析は、天然のタンパク質が2つの成分に分解され得、両方とも大腸菌由来のIFN−α 2より親水性であることを示した。SDS/PAGEは、タンパク質の分子量が不均一であって、3つのバンドをもたらし、その全てが等価の大腸菌由来のタンパク質より低い電気泳動移動度を有することを明らかにした。
【0026】
Adolfら(上記)はまた、天然のIFN−α 2はOに結合した炭水化物残基を担持していると推測していた。彼らの仮説は、アルカリを用いた推定上のペプチド−炭水化物結合の開裂によって確認され;得られたタンパク質は相同であって、組換えタンパク質と同じ分子量を示した。得られたフラグメントの分離および分析に続く、タンパク質分解性の開裂による天然および組換えタンパク質のさらなる比較は、候補グリコペプチドの決定を可能にした。このペプチドの配列分析は、O−糖鎖付加部位としてThr−106を同定した。公開されている全てのIFN−α 2種のアミノ酸配列の比較は、このスレオニン残基がIFN−α 2に特有であることを明らかにした。全ての他のタンパク質では、グリシン、イソロイシンまたはグルタミン酸が対応する位置(107)に存在している。
【0027】
大腸菌において産生されるINF−α 2の調製物は、O−糖鎖付加を欠いており、多くの国で薬物として登録されている。しかし、治療上適用される大腸菌由来のIFN−α 2の免疫原性は、糖鎖付加の欠如によって影響を受けているに違いない。研究は、酵母において産生された組換えのヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を受けた16人の患者のうち4人がこのタンパク質に対する抗体を発達させたことを示している。興味深いことに、これらの抗体は、内因性のヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子においてOに結合した糖鎖付加によって保護されているが、組換え体の因子においては露出しているエピトープと反応することが見出されている(Adolfら、上記)。
【0028】
同様に、患者の処置を延長した後での組換えの大腸菌由来のINF−α 2に対する抗体の誘導について記載されており、天然のINF−α 2は、組換えのINF−α 2タンパク質より免疫原性が低くなり得ることが推測されている(Galton et al. (1989) Lancet 2:572-573)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
必要なことは、インターフェロン、G−CSFおよびエリスロポエチンを含む抗体およびサイトカインなどの治療または医薬用タンパク質を産生するための改善された方法が必要とされていることである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
発明の概要
本発明は、外因性配列を発現させて、トリの表現型を変化させるか、あるいは所望のタンパク質を発現させることを目的として、トリのゲノムに外因性の核酸配列を安定的に導入するためのベクターおよび方法を提供する。特に、その輸卵管において外因性の配列を発現し、医薬用タンパク質などの外因性タンパク質を卵中に沈着する遺伝子導入トリが作製される。そのような外因性タンパク質を含むトリの卵は、本発明に含まれる。本発明はさらに、形質導入のトリの輸卵管において効率的に発現され、トリの卵に沈着する、インターフェロン、G−CSF、G−MCSFおよびエリスロポエチンを含む治療用タンパク質(例えば、ヒトサイトカイン)の新規の形態を提供する。
【0031】
本発明の1つの態様は、トリの特定の組織において外因性タンパク質を産生する方法を提供する。外因性タンパク質を、トリの輸卵管、血液および/または他の細胞および組織において発現させてもよい。1つの実施態様において、例えばステージX付近の胚性胚盤葉細胞に導入遺伝子を導入して、遺伝子導入トリを作製し、目的のタンパク質を輸卵管の筒部の管状腺細胞において発現させて、管腔に分泌させ、固い殻の卵の卵白中に沈着させる。このように作製した遺伝子導入トリは、その生殖細胞中に導入遺伝子を担持する。従って、外因性遺伝子は、トリ胚細胞への外因性遺伝子の人工的な導入、およびメンデルの法則に従った様式でのトリの子孫への外因性遺伝子の安定した伝達の両方によって、トリに伝達され得る。
【0032】
本発明は、トリの輸卵管において外因性タンパク質を産生する方法を含む。方法は、第1の工程として、コード配列およびコード配列と作動可能に連結された(プロモーターがトリの輸卵管において核酸の発現をもたらし得るように)プロモーターを含むベクターを提供する工程を含む。次いで、形質導入の細胞および/または組織を産生してもよい(ここで、ベクターは、培養物中で新たに単離したか、胚中のトリの胚性胚盤葉細胞に導入される)。ベクター配列を、例えばトリのゲノムにランダムに挿入するなど、挿入する。最後に、輸卵管において外因性タンパク質を発現する成熟形質導入トリを、形質導入細胞および/または組織から得てもよい。この方法はまた、輸卵管において発現させた外因性タンパク質を輸卵管管腔に分泌させ、卵中(例えば、固い卵の卵白中)に沈着させた場合に、医薬用タンパク質(例えば、サイトカイン)などの外因性タンパク質を含むトリの卵を産生するために使用され得る。
【0033】
1つの態様において、トリゲノムへのベクターの染色体挿入による遺伝子導入トリの作製は、所望により、胚性胚盤葉細胞のDNA形質導入を含んでもよく、次いで、その細胞を、レシピエントの胚盤葉の真下の胚下腔に注入する。そのような方法において使用されるベクターは、外因性のコード配列に融合されているプロモーターを有してもよく、輸卵管の管状腺細胞中でコード配列の発現を指令する。
【0034】
本発明の別の態様において、ランダムな染色体挿入および遺伝子導入トリの作製は、レトロウイルスレクター(rector)の5’および3’LTRの間に導入遺伝子の遺伝暗号を担持する、複製欠損または複製コンピテントなレトロウイルス粒子での胚性胚盤葉細胞の形質導入によって達成される。例えば、プロモーター領域のセグメントの下流に挿入されている外因性遺伝子を含む改変pNLBプラスミドを含むトリの白血球ウイルス(ALV)レトロウイルスベクターまたはマウスの白血球ウイルス(MLV)レトロウイルスベクターを使用してもよい。ウイルス粒子にパッケージされている改変レトロウイルスベクターのRNAコピーは、遺伝子導入トリに発達する胚性胚盤葉に感染させるために使用してもよい。あるいは、レトロウイルス形質導入粒子を産生するヘルパー細胞を胚性胚盤葉に送達してもよい。
【0035】
本発明の別の態様は、コード配列がトリ輸卵管において発現されるような作動および位置関係にあるコード配列およびプロモーター配列を含むベクターを提供する。そのようなベクターとしては、限定するものではないが、トリの白血球ウイルス(ALV)レトロウイルスベクター、マウスの白血球ウイルス(MLV)レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターが挙げられる。さらに、ベクターは、トリの白血球ウイルス(ALV)レトロウイルスベクター、マウスの白血球ウイルス(MLV)レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターのLTRを含む核酸配列であってもよい。プロモーターは、トリ輸卵管のコード配列の発現をもたらすことに十分である。コード配列は、固い殻の卵の卵白に沈着される外因性タンパク質をコードする。または、コード配列は、インターフェロン−α 2b(TPD IFN−α 2b)および遺伝子導入家禽由来のエリスロポイエチン(TPD EPO)および遺伝子導入家禽由来の顆粒球コロニー刺激因子などの遺伝子導入家禽由来のタンパク質などの外因性タンパク質をコードする。1つの実施態様において、本発明の方法で使用されるベクターは、トリおよびその卵における外因性タンパク質の発現に特に適しているプロモーターを含む。または、外因性コード配列の発現は、遺伝子導入トリの輸卵管および血液トリの卵の卵白において生じ得る。プロモーターとしては、限定するものではないが、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、MDOTプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、β−アクチンプロモーター(例えば、ニワトリβ−アクチンプロモーター)、マウス白血球ウイルス(MLV)プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、卵白アルブミンプロモーター、リゾチームプロモーター、コンアルブミンプロモーター、オボムコイドプロモーター、オボムチンプロモーターおよびオボトランスフェリンプロモーターが挙げられる。所望により、プロモーターは、オバルブミン−、リゾチーム−、コンアルブミン−、オボムコイド−、およびオボトランスフェリンプロモーター領域のセグメントなどの、少なくとも1つのプロモーター領域のセグメントであってもよい。1つの実施態様において、プロモーターは、オバルブミン−、リゾチーム−、コンアルブミン−、オボムコイド−、およびオボトランスフェリンプロモーターなどの1つ以上のプロモーターの組合せまたは融合体または1つ以上のプロモーターの部分の融合である。
【0036】
本発明の1つの態様は、輸卵管の筒部の管状腺細胞での発現に必要とされるエレメントを保持するものの、ベクター中に容易に組み込まれ得るのに十分に小さくなるように、オバルブミンプロモーターを切り詰めることおよび/またはオバルブミンプロモーターの重要な調節エレメントを凝縮することを含む。例えば、オバルブミンプロモーター領域のセグメントを使用してもよい。このセグメントは、オバルブミン遺伝子の5’隣接領域を含む。オバルブミンプロモーターセグメントの全長は、約0.88kb〜約7.4kbの長さであって、好ましくは約0.88kb〜約1.4kbの長さである。セグメントは好ましくは、オバルブミン遺伝子のステロイド依存性調節エレメントおよび陰性制御エレメントの両方を含む。セグメントはまた、所望により、オバルブミン遺伝子の5’非翻訳領域(5’UTR)由来の残基を含む。あるいは、プロモーターは、リゾチーム−、コンアルブミン−、オボムコイド−、およびオボトランスフェリン遺伝子のプロモーター領域のセグメントであってもよい。そのようなプロモーターの例としては、オボムコイド(MD)およびオボトランスフェリン(OT)プロモーター由来のエレメントからなる合成MDOTプロモーターである。
【0037】
本発明の別の態様において、トリゲノムに組込まれるベクターは、外因性コード配列に作動可能に連結されている構成的プロモーターを含む(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターおよびマウス白血病ウイルス(MLV)プロモーター)。あるいは、マウス乳ガンウイルス(MMTV)などの非構成的プロモーターを使用してもよい。
【0038】
本発明の他の態様は、生殖細胞組織の遺伝物質中に導入遺伝子を担持する遺伝子導入トリを提供する。さらに詳細には、導入遺伝子は作動および位置関係にある外因性遺伝子およびプロモーターを含んで、外因性遺伝子を発現する。外因性遺伝子は、トリ輸卵管および遺伝子導入トリの血液中で発現させてもよい。外因性遺伝子は、TPD IFN−α(例えば、IFN−α 2)およびTPD EPOおよびTPD G−CSFなどのサイトカインを含む医薬用タンパク質などの外因性タンパク質をコードする。外因性タンパク質は、固い殻の卵の卵白中に沈着する。
【0039】
本発明の別の態様は、トリ種に外因性であるタンパク質を含むトリ卵を提供する。本発明の使用は、輸卵管筒部の管腔へのタンパク質の分泌およびトリ卵の卵白への沈着を伴う輸卵管細胞での外因性タンパク質の発現を可能にする。卵中に内包されているタンパク質は、1gまでまたはそれ以上の量で存在してもよい。外因性タンパク質としては、限定するものではないが、TPD IFN−α 2およびTPD EPOおよびTPD G−CSFが挙げられる。
【0040】
本発明のさらに別の態様は、ヒトインターフェロン−α 2b(IFN−α 2b)の最適化されたコード配列、すなわち、遺伝子導入家禽由来のインターフェロン−α 2b(TPD IFN−α 2b)をコードする遺伝子導入家禽由来のインターフェロン−α 2bをコードする組換えの配列を含む、単離されたポリヌクレオチド配列を提供する。本発明はまた、TPD IFN−α 2bのポリヌクレオチド配列を含む単離されたタンパク質を含み、ここで、タンパク質はThr−106にてN-アセチル-ガラクトースアミン、ガラクトース、N-アセチル-グルコサミン、シアル酸およびその組合せを用いてO−グリコシル化されている。
【0041】
本発明はさらに、TPD IFN−α 2bのポリペプチド配列を含む医薬組成物を意図し、ここで、タンパク質はThr−106にてN−アセチル−ガラクトースアミン、ガラクトース、N−アセチル−グルコサミン、シアル酸およびその組合せを用いてO−グリコシル化されている。
【0042】
本発明の1つの態様は、本明細書にて開示するように作製した外因性タンパク質のコード配列を提供し、ここで、コード配列はトリ、例えば、ニワトリにおける発現に最適化されているコドンである。コドンの最適化は、トリ細胞において発現されるタンパク質の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上のコドン使用から決定してもよい。例えば、コドン使用は、ニワトリのオバルブミン、リゾチーム、オボムチンおよびオボトランスフェリンなどのタンパク質をコードする核酸配列から決定してもよい。例えば、外因性遺伝子のDNAコード配列は、ニワトリ(Gallus gallus)のオバルブミン、リゾチーム、オボムコイドおよびオボトランスフェリンタンパク質から作製したコドン使用頻度表と一緒にWisconsin PackageのBACKTRANSLATE(登録商標)プログラム, version 9.1 (Genetics Computer Group, Inc., Madison, WI)を使用して、最適化したコドンであってもよい。
【0043】
本発明の1つの態様は、ヒトエリスロポイエチン(EPO)の最適化されたコード配列、すなわち、遺伝子導入家禽由来のエリスロポイエチン(TPD EPO)をコードする遺伝子導入家禽由来のエリスロポイエチンをコードする組換えの配列を含む単離されたポリペプチド配列を提供する。
【0044】
本発明の別の態様は、第1および第2のコード配列、および第1および第2のコード配列に対して作動および位置関係にあるプロモーターを含むベクターを提供して、トリ輸卵管において第1および第2のコード配列を発現する。この態様において、ベクターは、第1と第2のコード配列の間に位置する配列内リボソーム進入部位(IRES)エレメントを含んでもよく、ここで、第1のコード配列はタンパク質Xをコードし、第2のコード配列はタンパク質Yをコードし、ここで、タンパク質Xおよびタンパク質Yの一方または両方は、固い殻の卵の卵(例えば、卵白)中に沈着される。
【0045】
例えば、タンパク質Xは、モノクローナル抗体の軽鎖(LC)であってもよく、タンパク質Yは、モノクローナル抗体の重鎖(HC)であってもよい。あるいは、第2のコード配列にコードされるタンパク質(例えば、酵素)は、第1のコード配列にコードされるタンパク質の翻訳後修飾を提供可能である。ベクターは所望により、ベクター中の各コード配列がIRESエレメントによって他方のコード配列から分離されるように、さらなるコード配列およびさらなるIRESエレメントを含む。本発明における使用が意図されるIRESを用いている他の例は、例えば、2005年1月31日に出願の米国特許出願11/047,184において開示されている(開示全体を出典明示により援用する)。
【0046】
本発明はまた、モノクローナル抗体、酵素および他のタンパク質を含む医薬用タンパク質などのタンパク質を含むトリの卵を産生する方法を意図している。そのような方法は、プロモーター、コード配列、および少なくとも1つのIRESエレメントを有するベクターを提供し;トリ胚性胚盤葉細胞にベクターを導入することによって遺伝子導入細胞または組織を作製し、ここで、ベクターの配列はトリゲノムにランダムに挿入されており;遺伝子導入細胞または組織からトリを得る。そのようにして得られた遺伝子導入トリは、輸卵管においてコード配列を発現し得、輸卵管管腔に分泌された得られたタンパク質は固い殻の卵の卵白中に沈着される。さらに、本発明は、組換えタンパク質を含む卵を産生する遺伝子導入トリの子孫を含む。典型的には、子孫は、トリの本質的に全ての細胞に導入遺伝子を含んでいるか、あるいは子孫のトリの細胞は導入遺伝子を全く含んでいないかのいずれかである。
【0047】
本発明の1つの重要な態様は、限定するものではないが、医薬用タンパク質を含む外因性ペプチドまたはタンパク質を含むトリの固い殻の卵(例えば、ニワトリの固い殻の卵)に関する。外因性ペプチドまたはタンパク質は、遺伝子導入トリの導入遺伝子によってコードされてもよい。1つの実施態様において、外因性ペプチドまたはタンパク質(例えば、医薬用タンパク質)はグリコシル化されている。タンパク質は、任意の有用な量で存在してもよい。1つの実施態様において、タンパク質は、約0.01μg/固い殻の卵〜約1g/固い殻の卵の間の範囲の量で存在する。別の実施態様において、タンパク質は、約1μg/固い殻の卵〜約1g/固い殻の卵の間の範囲の量で存在する。例えば、タンパク質は、約10μg/固い殻の卵〜約1g/固い殻の卵の間の範囲の量(例えば、約10μg/固い殻の卵〜約400mg/固い殻の卵の間の範囲)で存在してもよい。
【0048】
1つの実施態様において、外因性タンパク質(例えば、外因性医薬用タンパク質)は、卵の卵白中に存在する。1つの実施態様において、タンパク質は、約1ng/ml卵白〜約0.2g/ml卵白の間の範囲の量で存在する。例えば、タンパク質は、約0.1μg/ml卵白〜約0.2g/ml卵白の間の範囲の量で存在してもよい(例えば、タンパク質は、約1μg/ml卵白〜約100mg/ml卵白の間の範囲の量で存在してもよい)。1つの実施態様において、タンパク質は、約1μg/ml卵白〜約50mg/ml卵白の間の範囲の量で存在する。例えば、タンパク質は、約1μg/ml卵白〜約10mg/ml卵白の間の範囲の量で存在してもよい(タンパク質は、約1μg/ml卵白〜約1mg/ml卵白の間の範囲の量で存在してもよい)。
【0049】
本発明は、1つ以上の医薬用タンパク質を含む任意の有用なタンパク質を含む固い殻の卵の産生を意図する。そのようなタンパク質としては、限定するものではないが、ホルモン、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの部分、サイトカイン(例えば、GM−CSF、G−CSF、エリスロポイエチンおよびインターフェロン)ならびにCTLA4が挙げられる。本発明はまた、限定するものではないが、特定の有用なペプチド配列に融合させた免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの部分を含む融合タンパク質を含む固い殻の卵の産生を含む。1つの実施態様において、本発明は、抗体のFcフラグメントを含む固い殻の卵の産生を提供する。例えば、卵は、本発明によるFc−CTLA4融合タンパク質を含み得る。ベクターが導入された胚盤葉細胞から発生したトリは、G0世代であって、「ファウンダー」という。ファウンダートリは典型的に、挿入された各導入遺伝子についてのキメラである。すなわち、G0の遺伝子導入トリの細胞のいくつかだけが導入遺伝子を含む。また、G0世代を非遺伝子導入動物と交配させて、導入遺伝子についてヘミ接合性であり、本質的に全てのトリ細胞中に導入遺伝子を含むG1遺伝子導入の子孫を生じさせてもよい。G1ヘミ接合性子孫を非遺伝子導入動物と交配させて、G2ヘミ接合性子孫を生じさせてもよく、または導入遺伝子についてホモ接合性のG2子孫をともに生じさせてもよい。G1の子孫から得られ、導入遺伝子について陽性であるトリの実質的に全ての細胞が、導入遺伝子を含む。1つの実施態様において、同じ系統由来のヘミ接合性G2子孫を交配させて、導入遺伝子についてホモ接合性であるG3子孫を生じさせる。1つの実施態様において、ヘミ接合性G0動物同士を交配させて、動物の各細胞に2コピーの導入遺伝子を含むホモ接合性のG1子孫を生じさせる。これらは、特定の有用な育種法の単なる例に過ぎず、本発明は、当業者に公知の任意の育種法などのいずれの有用な育種法の利用も意図している。
【0050】
本発明の1つの態様は、ニワトリ由来の糖鎖付加パターンなどの家禽由来の糖鎖付加パターンを有する、本発明により産生されたタンパク質を含む組成物に関する。例えば、本発明は、本明細書にて開示する糖鎖付加パターンの1つ以上など、家禽由来の糖鎖付加パターンを有する医薬用タンパク質を含む。本発明はまた、本明細書にて開示する糖鎖付加パターンの1つ以上など、家禽由来の糖鎖付加パターンを有する医薬用ヒトタンパク質を含む。
【0051】
1つの態様において、本発明はG−CSF(ここで、G−CSFは家禽由来の糖鎖付加パターン、すなわち、遺伝子導入家禽由来のG−CSFまたはTPD G−CSF)を含む。1つ実施態様において、糖鎖付加パターンはヒト細胞および/またはCHO細胞において産生されるG−CSFの糖鎖付加パターン以外のものである。すなわち、組成物は、家禽由来の糖鎖(すなわち、糖鎖付加構造)を有するG−CSF分子を有しており、その糖鎖または糖鎖付加構造は、ヒト細胞および/またはCho細胞から得られたG−CSF上では見出されない。しかし、組成物はまた、CHO細胞および/またはヒト細胞から得られたG−CSF上で見出されるものと同じである糖鎖付加構造を有するG−CSF分子を含んでもよい。CHO細胞において産生されたヒトG−CSFの糖鎖付加が、以下において開示されている:Holloway, C.J., European J. of Cancer (1994) vol 30A, pS2-S6(出典明示により開示全体を援用する);Oheda et al (1988) J. Biochem., v 103, p 544-546(出典明示により開示全体を援用する)、およびAndersen et al (1994) Glycobiology, vol 4, p 459-467(出典明示により開示全体を援用する)。実施例20にて示すAおよびGなどの構造は、CHO細胞において産生されるG−CSFについて報告されている糖鎖付加構造と同じであるか、あるいは類似であり得るようである。1つの実施態様において、TPD G−CSFの糖鎖付加パターンは、哺乳動物細胞において産生されたG−CSFのパターン以外のものである。
【0052】
1つの実施態様において、本発明は単離されるべきG−CSFを提供する。すなわち、組成物中に含まれるG−CSFは、単離されたG−CSFであってもよい。例えば、G−CSFは卵白から単離されてもよい。単離されたG−CSFは、G−CSF分子のうち異なる糖鎖付加構造を有するG−CSF分子であってもよく、あるいは、単離されたG−CSFは、G−CSF分子種のうち唯一の特定の糖鎖付加構造を有する単離されたそれぞれのG−CSF種であってもよい。
【0053】
1つの実施態様において、本発明の組成物のG−CSFは、固い殻の卵の中に存在する。例えば、G−CSFは、本発明の遺伝子導入トリによって産卵された固い殻の卵の卵白中に存在する。すなわち、1つの実施態様において、本発明は、本発明のG−CSFを含むトリ(例えば、ニワトリ)の卵白に関する。1つの実施態様において、G−CSFは、約1μg/ml卵白を超える量で卵白中に存在する。例えば、G−CSFは、約2μg/ml卵白より多い量で卵白中に存在する(例えば、卵白1mlあたり約2μg〜約200μgの量で存在する)。
【0054】
本発明の1つの特定の態様において、G−CSFは、トリの輸卵管細胞においてグリコシル化される(例えば、ニワトリの輸卵管細胞においてグリコシル化される)。例えば、G−CSFは、輸卵管細胞において産生され、グリコシル化され得る。1つの実施態様において、G−CSFは管状腺細胞においてグリコシル化される(例えば、G−CSFは管状腺細胞において産生され、グリコシル化される)。
【0055】
G−CSFはスレオニン133にてグリコシル化されると考えられている。しかし、本発明は、G−CSF分子上のいずれの特定の部位での糖鎖付加に限定されるものではない。
【0056】
典型的には、本発明のG−CSFは、ヒトG−CSFである。1つの実施態様において、成熟G−CSFは図18Cのアミノ酸配列を有する。
【0057】
1つの実施態様において、本発明の組成物は、以下:
【化1】
でグリコシル化されているG−CSFを含む。
【0058】
本発明はまた、詳細には、これらの特定の糖鎖付加構造の1つを有するG−CSF分子を含む組成物に関する。そのような組成物はまた、1つ以上の他の糖鎖付加構造を有する1つ以上のG−CSF分子を含んでもよい。
【0059】
すなわち、1つの実施態様において、本発明は、詳細には、以下:
【化2】
を有するG−CSF分子を含む組成物、および以下:
【化3】
を有するG−CSF分子を含む組成物、および以下:
【化4】
を有するG−CSF分子を含む組成物、および以下:
【化5】
を有するG−CSF分子を含む組成物、および以下:
【化6】
を有するG−CSF分子を含む組成物、および以下:
【化7】
を有するG−CSF分子を含む組成物、および以下:
【化8】
[式中、Gal=ガラクトース、
NAcGal=N−アセチル−ガラクロサミン、
NAcGlu=N−アセチル−ガラクトサミンおよび
SA=シアル酸]
を有するG−CSF分子を含む組成物に関する。
【0060】
本発明はまた、治療有効量のTPD G−CSFを患者に投与する工程を包含する、患者において白血球カウントを増加させる方法に関する。典型的には、治療有効量は、所望の量によって患者において白血球カウントを増加させるTOD G−CSF量である。
【0061】
関連、本願明細書および当業者の知識から明らかなそのような任意の組合せにおいて含まれる特徴が互いに矛盾しないという条件で、本願明細書に記載の特徴のいずれの有用な組合せが本発明の範囲内に含まれる。
【0062】
さらに、本発明の目的および態様は、以下で説明する詳細な説明を、添付の図面(以下で簡単に説明する)と合わせて概観することでより明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
詳細な説明
特定の定義を本明細書において説明して、本発明を本明細書に記載するために使用する種々の用語の定義および範囲を示し、かつ定義する。
【0064】
「核酸またはポリヌクレオチド」としては、限定するものではないが、天然のヌクレオシド塩基アデニン、グアニン、シトシン、チミジンおよびウラシルを含む、真核生物のmRNA、cDNA、ゲノムDNA、ならびに合成DNAおよびRNA配列が挙げられる。用語はまた、1つ以上の修飾塩基を有する配列を含む。
【0065】
「治療用タンパク質」または「医薬用タンパク質」としては、全体または部分において薬物を構成するアミノ酸配列が挙げられる。「コード配列」または「読み取り枠」は、適切な調節配列の制御下に置かれた場合に、インビトロまたはインビボにおいて、ポリペプチドに、転写および翻訳され得る(DNAの場合)か、翻訳され得る(mRNAの場合)ポリヌクレオチドまたは核酸配列をいう。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の翻訳開始コドンおよび3’(カルボキシル)末端の翻訳終止コドンによって決定される。転写終結配列は通常、コード配列の3’側に位置する。コード配列は、非翻訳領域に5’側および/または3’側で隣接し得る。
【0066】
「エキソン」は、遺伝子が核転写物に転写される場合に、核スプライシングによってイントロンまたは反転配列が除去された後で、細胞質のmRNA上で発現される遺伝子の部分をいう。
【0067】
核酸「制御配列」または「調節配列」は、定義の宿主細胞において所定のコード配列の転写および翻訳に必要かつ十分である、プロモーター配列、転写開始および終止コドン、リボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、上流調節ドメイン、エンハンサーなどをいう。真核生物細胞に適切な制御配列の例は、プロモーター、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーである。所望の遺伝子の転写および翻訳に必要かつ十分である限り、これらの制御配列の全てが組換えベクター上に存在することが必要である。
【0068】
「作動可能または作動可能に連結された」とは、所望の機能が実施されるような、コードおよび制御配列の配置をいう。従って、コード配列に作動可能に連結された制御配列は、コード配列の発現をもたらすことができる。DNAポリメラーゼがプロモーター配列に結合し、コードされたタンパク質に転写され得るmRNAにコード配列が転写される場合、コード配列は細胞において転写調節領域の制御に作動可能に連結されているか、または制御下にある。制御配列がその発現を指令する限り、制御配列は、コード配列に近接する必要がある。従って、例えば、反転で翻訳されず、さらに転写もされない配列がプロモーター配列とコード配列の間に存在しており、プロモーター配列はまだ、コード配列に「作動可能に連結されている」と考えられ得る。
【0069】
用語「異種」および「外因性」は、これらの用語がコード配列および制御配列などの核酸配列と関連する場合に、組換え構築物の領域または特定の染色体座とは通常関連しない、および/または特定の細胞とは関連しない配列を示す。従って、核酸構築物の「外因性」領域は、天然の他の分子とは関連が見出されない別の核酸分子内にあるか、または結合している核酸セグメントと同一であるといえる。例えば、構築物の外因性領域は、天然のコード配列との関連は見出されない配列に隣接するコード配列を含む。外因性コード配列の別の例は、コード配列自体が天然には見出されない構築物である(例えば、天然の遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)。同様に、本発明の目的について、宿主細胞中では通常存在しない構築物または核酸で形質転換した宿主細胞も外因性であると考えられる。
【0070】
本明細書で使用する「外因性タンパク質」は、特定の組織または細胞中に天然では存在しないタンパク質、外因性発現構築物または導入遺伝子の発現産物であるタンパク質、または特定の組織または細胞では所定の量で天然には存在しないタンパク質をいう。卵に外因性であるタンパク質は、卵では通常見出されないタンパク質である。例えば、卵に外因性であるタンパク質は、産卵する動物の導入遺伝子中に存在するコード配列の発現の結果として卵中に存在するタンパク質であり得る。
【0071】
「内因性遺伝子」とは、特定の細胞と通常関連する天然の遺伝子またはそのフラグメントをいう。
【0072】
本明細書に記載の発現産物は、定義する化学構造を有するタンパク質性の物質からなり得る。しかし、タンパク質構造は多数の因子、特に、タンパク質に共通する化学修飾に依存している。例えば、全てのタンパク質は、イオン化可能なアミノおよびカルボキシル基を含むので、タンパク質は、酸性または塩基性塩の形態、あるいは中性塩の形態で得ることができる。一次アミノ酸配列は、糖分子(糖鎖付加)を使用するか、または、例えば、脂質、リン酸、アセチル基などとの共有またはイオン結合を含む、他の化学誘導体によって、誘導体化され得、しばしば糖類との関連によって生じる。これらの修飾は、インビトロまたはインビボで生じ得、ビボでは、翻訳後プロセッシング系を通じて宿主細胞によって実施される。そのような修飾は、分子の生物学的な活性を増加または減少させ得、そのように化学的に修飾された分子がまた本発明の範囲内になることが意図されている。
【0073】
クローニング、増幅、発現および精製の代替方法は、当業者に明らかである。代表的な方法が、Sambrook, Fritsch, and Maniatis, Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory (1989)にて開示されている。
【0074】
「ベクター」は、単鎖、二重鎖、管状またはスーパーコイル状DNAまたはRNAからなるポリヌクレオチドである。典型的なベクターは、以下の機能性遺伝子の発現に適切な距離で作動可能に連結された以下のエレメントからなり得る:複製起点、プロモーター、エンハンサー、5’mRNAリーダー配列、リボソーム結合部位、核酸カセット、終結およびポリアデニル化部位、ならびに選択可能なマーカー配列。1つ以上のこれらのエレメントが特定の適用において省略され得る。核酸カセットは、発現されるべき核酸配列の挿入のための制限部位を含み得る。機能性ベクターにおいて、核酸カセットは、翻訳開始および終結部位を含む、発現されるべき核酸配列を含む。イントロンは、所望により、構築物中、例えば、コード配列の5’側に含まれ得る。特定のコード配列が適切な調節配列を有するベクター中に配置されるように、ベクターは構築される。制御配列に関するコード配列の位置および配向は、コード配列が制御または調節配列の「制御」下で転写されるようになっている。目的の特定のタンパク質をコードする配列の改変は、本発明の目的を達成するために望ましい。例えば、いくつかの場合、配列を適切な配向とともに制御配列に結合させ得るように配列を改変するか;あるいは、読み枠を維持することが必要であり得る。制御配列および他の調節配列は、ベクターへの挿入より前にコード配列に連結され得る。あるいは、コード配列は、制御配列の調節性の制御を有しかつ調節性の制御下にあり、制御配列、および読み枠内にある適切な制限部位を既に含む発現ベクターに、直接クローニングされ得る。
【0075】
「プロモーター」は、RNAポリメラーゼが結合して遺伝子の転写を開始するDNA上の部位である。いくつかの実施態様において、プロモーターは配列の付加または欠失によって改変されるか、または天然および合成配列ならびに天然と合成配列の組合せであり得る配列を含む、別の配列で置換される。多くの真核生物プロモーターは、2つの型の認識配列、TATAボックスおよび上流プロモーター配列を含む。転写開始部位の上流に配置された上流プロモーターエレメントは、転写速度を決定し、TATAボックスの上流にあることが明らかな一方で、RNAポリメラーゼの正確な部位での転写の開始を指令することに関与している。エンハンサーエレメントはまた、連結されているプロモーターから転写を刺激され得るが、多くは特定の細胞型においてもっぱら機能している。SV40プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターおよびマウス白血病ウイルス(MLV)プロモーターなどのウイルス由来の多くのエンハンサー/プロモーターエレメントは、幅広い細胞型において全くの活性であって、「遍在性」といわれる。あるいは、マウス乳ガンウイルス(MMTV)プロモーターなどの構成的プロモーターもまた、本発明において使用され得る。コード配列が目的のポリペプチドをコードする場合、コード配列は適切なmRNA分子の産生をブロックし得る潜在性のスプライス部位を欠く、および/または異常にスプライスされたか異常であるmRNA分子を産生するという条件で、クローニング部位に挿入される核酸配列は目的のポリペプチドをコードする任意の読み取り枠を有し得る。
【0076】
用語「家禽由来」は、家禽で産生されるか家禽から得られた組成物または物質をいう。「家禽」は、限定するものではないが、ニワトリ、アヒル、シチメンチョウ、ウズラおよび走禽類を含む、家畜として飼育され得るトリをいう。例えば、「家禽由来」は、ニワトリ由来、シチメンチョウ由来および/またはウズラ由来をいい得る。
【0077】
「マーカー遺伝子」は、正確に形質導入された細胞の同定および単離を可能にするタンパク質をコードする遺伝子である。適切なマーカー配列としては、限定するものではないが、緑色、黄色および青色蛍光タンパク質の遺伝子(それぞれGFP、YFPおよびBFP)が挙げられる。他の適切なマーカーとしては、チミジンキナーゼ(tk)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)およびアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)遺伝子が挙げられる。後者は、カナマイシン、ネオマイシンおよびギェネテシンなどのアミノグリコシド系抗生物質に対する抵抗を与える。これらのマーカー遺伝子、およびクロラムフェニコールアセチル基転移酵素(CAT)、β−ラクタマーゼ、β−ガラクトシダーゼ(β−gal)をコードするマーカー遺伝子など他のマーカー遺伝子が、所望のタンパク質を発現する遺伝子とともに主要な核酸カセットに組み込まれ得るか、あるいは選択マーカーが別々のベクター上に含まれて、同時形質導入され得る。
【0078】
「レポーター遺伝子」は、レポーター遺伝子がコードするタンパク質の存在によって細胞中でのその活性を「報告」するマーカー遺伝子である。
【0079】
「レトロウイルス粒子」、「形質導入用粒子」または「形質導入粒子」は、非ウイルスDNAまたはRNAを細胞に形質導入できる、複製欠損または複製コンピテントウイルスをいう。
【0080】
用語「形質転換」、「形質導入」および「形質移入」は全て、ポリヌクレオチドのトリの胚盤葉細胞への導入を示す。「筒部」は、卵の卵白タンパク質を合成し、分泌する管状腺細胞を含む、卵管漏斗と峡部との間の輸卵管の部分である。
【0081】
本明細書で使用する「MDOTプロモーター」は、組織のうちとりわけ輸卵管の筒部の管状腺細胞において活性である合成プロモーターである。MDOTは、オボムコイド(MD)およびオボトランスフェリンプロモーター由来のエレメントからなる(図13)。
【0082】
用語「最適化」は「最適化されたコード配列」に関連して使用され、ここで、卵白タンパク質オバルブミン、リゾチーム、オボムコイドおよびオボトランスフェリン中に見出される特定の各アミノ酸について最も頻繁に使用されるコドンは、本発明のベクターに挿入されている、最適化されたヒトインターフェロン−α 2b(IFN−α 2b)の設計において使用される。さらに詳細には、最適化されたヒトIFN−α 2bについてのDNA配列は、雌鳥の輸卵管のコドンの使用頻度に基づいており、ニワトリ(Gallus gallus)のオバルブミン、リゾチーム、オボムコイドおよびオボトランスフェリンタンパク質から作製したコドン使用頻度表と一緒にWisconsin PackageのBACKTRANSLATE(登録商標)プログラム, version 9.1(Genetics Computer Group, Inc., Madison, WI)を使用して、作製される。例えば、4つの卵白タンパク質におけるアミノ酸アラニンの4つのコドンの使用頻度の割合は、GCUについて34%、GCCについて31%、GCAについて26%、およびGCGについて8%である。従って、GCUは、最適化されたヒトIFN−α 2bコード配列において、大部分のアラニンについてコドンとして使用されている。最適化されたヒトIFN−α 2bについての遺伝子を含むベクターは、家禽の組織および卵において形質導入された家禽由来のIFN−α 2b(TPD IFN−α 2b)を発現する形質導入トリを産生するために使用される。同様に、上記の方法は、本発明によって産生され得るヒトエリスロポイエチン(EPO)または他のタンパク質などの他のコード配列タンパク質の設計に用いられる。
【0083】
本発明の方法によって、導入遺伝子はトリの胚性細胞に導入されて、生殖系列の組織の遺伝物質中に導入遺伝子を担持する、遺伝子導入ニワトリ、遺伝子導入シチメンチョウ、遺伝子導入ウズラおよび他のトリ種を産生できる。胚盤葉細胞は、代表的には、ステージVII〜XIIの細胞またはその等価物であって、1つの実施態様において、ステージX付近である。本発明において有用な細胞はとしては、胚性胚(EG)細胞、胚性幹(ES)細胞、および始原生殖細胞(PGC)が挙げられる。胚性胚盤葉細胞は新たに単離され、培養物中で維持されるか、あるいは胚中に存在してもよい。
【0084】
本発明の方法を実施することに有用なベクターを本明細書に記載する。これらのベクターは、外因性コード配列のトリゲノムへの安定導入に使用され得る。あるいは、ベクターは、トリの特定の組織、例えば、トリの輸卵管組織において外因性タンパク質を産生するために使用され得る。ベクターはまた方法において使用されて、外因性タンパク質を含むトリの卵を産生し得る。1つの実施態様において、コード配列およびプロモーターはともに、胚盤葉細胞への導入前に、5’および3’LTRの間に位置する。1つの実施態様において、ベクターはレトロウイルス性であって、コード配列およびプロモーターはともに、レトロウイルスベクターの5’および3’LTRの間に位置する。1つの有用な実施態様において、LTRまたはレトロウイルスベクターは、トリ白血病ウイルス(ALV)、マウス白血病ウイルス(MLV)またはレンチウイルスに由来する。
【0085】
1つの実施態様において、ベクターはコード配列に作動可能に連結されているシグナルペプチドコード配列を含んでおり、細胞での翻訳に際して、シグナルペプチドはベクターによって発現された外因性タンパク質の固い殻の卵の卵白への分泌を指令する。ベクターは、マーカー遺伝子(ここで、マーカー遺伝子はプロモーターに作動可能に連結されている)を含み得る。
【0086】
いくつかの場合において、本発明のベクターの胚性胚盤葉細胞への導入は、新たに単離されたか、培養中であるかのいずれかである胚性胚盤葉細胞を用いて実施される。次いで、遺伝子導入細胞は、代表的には、卵中のレシピエント胚盤葉の下の胚下腔に注入される。いくつかの場合において、しかし、ベクターは胚盤葉胚の細胞に直接送達される。
【0087】
本発明の1つの実施態様において、胚盤葉細胞を形質移入し、トリゲノムへの安定した組込みを生じるために使用されるベクターは、トリ輸卵管の筒部の管状腺細胞においてコード配列を発現するような作動および位置関係にあるコード配列およびプロモーターを含み、ここで、コード配列は、固い殻の卵の卵白に沈着される外因性タンパク質をコードする。プロモーターは、所望により、管状腺細胞におけるコード配列の発現を指令するために十分大きなオバルブミンプロモーターの領域のセグメントであってもよい。本発明は、配列がベクター中に容易に組み込まれ得るために十分小さい一方、輸卵管の筒部の管状腺細胞における発現に必要とされる配列を保持するように、オバルブミンプロモーターを切断すること、および/またはオバルブミンプロモーターの重要な調節エレメントを凝縮することを含む。1つの実施態様において、オバルブミンプロモーター領域のセグメントが使用され得る。このセグメントは、オバルブミン遺伝子の5’隣接領域を含む。オバルブミンプロモーターセグメントの全長は、約0.88kb〜約7.4kbの長さであってもよく、好ましくは、約0.88kb〜約1.4kbの長さである。セグメントは、好ましくは、オバルブミン遺伝子のステロイド依存性調節エレメントおよび陰性調節エレメントの両方を含む。セグメントはまた、所望により、オバルブミン遺伝子の5’非翻訳領域(5’UTR)由来の残基を含む。従って、プロモーターは、オバルブミン−、リゾチーム−、コンアルブミン−、オボムコイド−、オボトランスフェリン−またはオボムコイド遺伝子由来のプロモーター領域に由来してもよい(図14)。そのようなプロモーターの例は、オボムコイドおよびオボトランスフェリンプロモーター由来のエレメントからなる合成MDOTプロモーターである(図13)。プロモーターはまた、リゾチームプロモーターなどの、筒部に対してかなりではあるものの完全にではなく特異的なプロモーターであり得る。プロモーターはまた、マウス乳ガンウイルス(MMTV)プロモーターであってもよい。あるいは、プロモーターは、構成的プロモーター(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、MDOTプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、マウス白血球ウイルス(MLV)プロモーターなど)であってもよい。本発明の好ましい実施態様において、プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、MDOTプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、マウス白血病ウイルス(MLV)プロモーター、マウス乳ガンウイルス(MMTV)プロモーター、オバルブミンプロモーター、リゾチームプロモーター、コンアルブミンプロモーター、オボムコイドプロモーター、オボムチンプロモーター、およびオボトランスフェリンプロモーターである。所望により、プロモーターは、プロモーターは、オバルブミン−、リゾチーム−、コンアルブミン−、オボムコイド−およびオボトランスフェリン−プロモーター領域のセグメントなど、少なくとも1つのプロモーター領域のセグメントであり得る。1つの実施態様において、プロモーターは、CMVプロモーターである。
【0088】
図1Aおよび1Bは、オバルブミンプロモーター発現ベクターの例を示している。遺伝子Xは、外因性タンパク質をコードするコード配列である。湾曲した矢印は、転写開始部位を示す。1つの例において、ベクターは、オバルブミン遺伝子の5’隣接領域の1.4kbを含む(図1A)。図1Aの「1.4kbのプロモーター」の配列は、オバルブミン転写開始部位の約1.4kb上流(1.4kb)から開始し、オバルブミン遺伝子の5’非翻訳領域に約9残基伸びる配列に対応している。約1.4kbの長さのセグメントは、2つの重要な調節配列、ステロイド依存性調節エレメント(SDRE)および陰性調節エレメント(NRE)を有している。NREは、ホルモン(例えば、エストロゲン)の非存在下で遺伝子の発現をブロックするいくつかの陰性調節エレメントを含むので、NREといわれる。0.88kbより短いセグメントがまた、両方のエレメントを含む。別の例において、ベクターは、オバルブミン遺伝子の5’隣接領域約7.4kbを含み、さらなるエレメント(HS−IIIおよびHS−IV、一方はエストロゲンによる遺伝子の誘導が可能な機能性エレメントを含むことが知られている)を有する(図IB)。6kbより短いセグメントはまた、4つのエレメント全てを含み、所望により、本発明において使用してもよい。本発明によるランダムな組込みに使用される各ベクターは、好ましくは、ゲノムの挿入部位にて活性化および不活化の両方から遺伝子を絶縁するニワトリβ−グロビン遺伝子座由来の1.2kbのエレメント少なくとも1つを含む。1つの実施態様において、2つのインスレーター配列がオバルブミン構築物の一方の末端に付加される。β−グロビン遺伝子座において、インスレーター配列は遠位性の遺伝子座調節領域(LCR)がグロビン遺伝子ドメインの上流遺伝子を活性化するのを阻害する働きをする。インスレーター配列は遺伝子導入ハエにおいて位置効果を克服することが示されており、挿入部位に対する陽性および陰性効果両方から守り得ることを示している。導入遺伝子は複数または直列のコピーで組み込まれ得、隣接する導入遺伝子のインスレーターに隣接する一連の遺伝子を作り出すので、インスレーター配列は、遺伝子の5’側または3’側のいずれかにおいてのみ必要とされる。別の実施態様において、インスレーター配列は、ベクターに連結されるが、ベクターと一緒に同時に形質移入される。この場合、ベクター及び配列は、ゲノムへのランダムな組込みプロセスによって細胞中で直列に繋げられる。
【0089】
各ベクターはまた所望によりマーカー遺伝子を含み、発現ベクターを安定して組込んでいる細胞クローンの同定および濃縮を可能にし得る。マーカー遺伝子の発現は、広範な細胞型において高レベルの発現を駆動させる遍在性プロモーターによって駆動される。本発明の1つの実施態様において、マーカー遺伝子はリゾチームプロモーターによって駆動されるヒトインターフェロンである。別の実施態様において、緑色蛍光タンパク質(GFP)レポーター遺伝子(Zolotukhin et al., J. Virol 70:4646-4654 (1995))が、ツメガエル伸長因子1−α(ef−1−α)プロモーターによって駆動される(Johnson and Krieg, Gene 147:223-26 (1994))。ツメガエルef−1−αプロモーターは、広範な細胞型において発現される強力なプロモーターである。GFPは、その蛍光を増強する変異を含んでおり、ヒト化されているか、あるいは、コドンがヒト遺伝子のコドン使用頻度プロフィールに調和するように改変されている。トリのコドン使用頻度はヒトのコドン使用頻度と事実上同じなので、遺伝子のヒト化形態もまたトリの胚盤葉細胞において高度に発現される。別の実施態様において、マーカー遺伝子は、遍在性プロモーター、HSV tk、CMV、β−アクチンまたはRSVの1つに作動可能に連結される。
【0090】
ヒトおよびトリのコドン使用頻度がよく調和されている一方で、非脊椎動物の遺伝子が導入遺伝子におけるコード配列として使用される場合、非脊椎動物の遺伝子配列は改変されて、コドンの使用頻度がヒトおよびトリのものに類似するように適切なコドンに変化させる。
【0091】
胚盤葉細胞の形質移入は、当業者に公知のいくつもの方法によって媒介されてもよい。ベクターの細胞への導入は、まず核酸を細胞膜の通過を容易にすることに役立つポリリシンまたは陽イオン性脂質と混合することによって促進され得る。しかし、ベクターの細胞への導入は、好ましくは、リポソームまたはウイルスなどの送達ビヒクルの使用によって達成される。本発明のベクターを胚盤葉細胞に導入するために使用され得るウイルスとしては、限定するものではないが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、単純ヘルペスウイルスおよびワクシニアウイルスが挙げられる。胚盤葉細胞を形質移入する1つの方法において、パッケージされたレトロウイルスに基づくベクターが使用されて、ベクターを胚性胚盤葉細胞に送達され、ベクターがトリゲノムに組込まれる。
【0092】
レトロウイルス性形質導入粒子を胚中の胚性胚盤葉細胞に送達するための別法として、レトロウイルスを産生するヘルパー細胞が胚盤葉に送達され得る。導入遺伝子のトリゲノムへのランダムな導入に有用なレトロウイルスは、複製欠損トリ白血病ウイルス(ALV)、複製欠損マウス白血病ウイルス(MLV)またはレンチウイルスである。適切なレトロウイルスベクターを作製するために、pNLBベクターが、オバルブミンプロモーターおよびレトロウイルスゲノムの5’および3’末端反復配列(LTR)の間の1つ以上の外因性遺伝子の領域を挿入することによって改変される。本発明は、管状腺細胞において活性であるプロモーターの下流に入れられた任意のコード配列が、管状腺細胞において発現されることを意図している。例えば、オバルブミンプロモーターがオバルブミンタンパク質の発現を駆動させ、輸卵管管状腺細胞において活性であるので、オバルブミンプロモーターは輸卵管筒部の管状腺細胞において発現される。培養輸卵管管状腺細胞においてアッセイした場合、7.4kbのオバルブミンプロモーターが最も活性な構築物を作り出すことが見出されている一方、レトロウイルス性ベクターにおける使用のために、好ましくは、オバルブミンプロモーターは短縮される。1つの実施態様において、レトロウイルス性ベクターは、1.4kbのオバルブミンプロモーターセグメントを含み;0.88kbのセグメントもまた十分である。
【0093】
本発明のベクターのいずれもまた、所望により、輸卵管の管状腺細胞からベクターのコード配列によって発現されるタンパク質の分泌を指令するシグナルペプチドをコードするコード配列を含んでもよい。本発明のこの態様は、本発明の方法を使用してトリの卵中に沈着され得る外因性タンパク質の範囲を有効に広げる。外因性タンパク質が分泌されない場合、コード配列を含むベクターは改変されて、リゾチーム由来のシグナルペプチドをコードする約60bpを含むDNA配列を含む。シグナルペプチドがDNAによってコードされるタンパク質のN末端に位置するように、シグナルペプチドをコードするDNA配列は挿入される。
【0094】
図2A〜2Dは、適切なレトロウイルス性ベクター構築物の例を示している。ベクター構築物は、5’および3’隣接LTRとともにトリゲノムに挿入される。Neoは、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子である。湾曲した矢印は転写開始部位を示す。図2Aおよび2Bはリゾチームシグナルペプチド(LPS)をコードする配列を有するLTRおよび輸卵管転写物を示す一方、図2Cおよび2Dは、そのような配列を有していない転写物を示している。レトロウイルス性ベクターのストラテジーには2つの部分がある。真核生物のシグナルペプチドを含むいずれのタンパク質も、図2Bおよび2Dで示すベクターにクローニングされ得る。通常分泌されないいずれのタンパク質も、図2Aおよび2Bに示すベクターにクローニングされ、管状腺細胞からの分泌が可能になり得る。
【0095】
図2Eは、外因性遺伝子をリゾチームシグナルペプチドベクターにクローニングするためのストラテジーを示す。2つの酵素を用いた消化の後に、増幅された遺伝子のプラスミドへの挿入を可能にする制限酵素部位を含むオリゴヌクレオチドプライマーの対を使用して、コード配列、遺伝子Xのコピーを増幅するために、ポリメラーゼ連鎖反応法が使用される。5’側および3’側オリゴヌクレオチドは、それぞれBsu36IおよびXbaI制限部位を含む。本発明の別の態様は、本発明の任意のベクターにおける配列内リボソーム進入部位(IRES)エレメントの使用を含み、ジシストロニックまたはポリシストロニックなmRNA由来の2つ以上のタンパク質の翻訳を可能にする(実施例15)。コード配列はIRESによってもう一方のコード配列から分離されるように、IRES単位は、1つ以上のさらなるコード配列の5’末端に融合され、次いで、ベクターの最初のコード配列の末端に挿入される(図2F、15Aおよび15D)。一方のコード配列は他方のコード配列の産物を修飾可能な酵素をコードし得るので、本発明のこの態様に従うことで産物の翻訳後修飾が容易になる。例えば、第1のコード配列はヒドロキシル化されるコラーゲンをコードしてもよく、第2のコード配列によってコードされる酵素によって活性化される。図2Fのレトロウイルス性ベクターの例において、配列内リボソーム進入部位(IRES)エレメントは、外因性コード配列(遺伝子Xおよび遺伝子Y)の間に位置する。IRESは、オバルブミンプロモーターなどのプロモーターによって転写が指令される転写物から、タンパク質Xおよびタンパク質Yの両方が翻訳されることを可能にする。湾曲した矢印は、転写開始部位を示している。遺伝子Xによってコードされるタンパク質の発現は、管状腺細胞において最も高いことが期待され、遺伝子Xは特異的に発現されるが、分泌されない。遺伝子Yによってコードされるタンパク質もまた、管状腺細胞において特異的に発現されるが、効率的に分泌されるので、タンパク質Yは卵中にパッケージされる。図15Aおよび15Dのレトロウイルス性ベクターにおいて、ヒトモノクローナル抗体の軽鎖(LC)および重鎖(HL)が脳心筋炎ウイルス(EMCV)由来でIRESの配置による単一のベクター、pCMV−LC−emcvIRES−HCから発現される。転写はCMVプロモーターによって駆動される(Murakami et al. (1997) ”High-level expression of exogenous genes by replication-competent retrovirus vectors with an internal ribosomal entry site” Gene 202:23-29;Chen et al. (1999) ”Production and design of more effective avian replication-incompetent retroviral vectors” Dev. Biol. 214:370-384;Noel et al. (2000) ”Sustained systemic delivery of monoclonal antibodies by genetically modified skin fibroblasts” J. Invest. Dermatol. 115:740-745を参照のこと)。
【0096】
本発明の別の態様において、産生されるRNAに安定性を与えるために、本発明の任意の方法において使用されるベクターのコード配列には3’非翻訳領域(3’UTR)が提供される。3’UTRがレトロウイルス性ベクターに付加される場合、3’UTRの付加がゲノムRNA全長の転写に干渉しないように、プロモーター、遺伝子Xおよび3’UTRの配向は構築物において反転されていなければならない。1つの実施態様において、3’UTRはオバルブミンまたはリゾチーム遺伝子のものであるか、または筒部細胞、すなわち、SV40の後半領域において機能性である任意の3’UTRであってもよい。
【0097】
本発明の別の実施態様において、構成的プロモーター(例えば、CMV)は、トリの筒部において導入遺伝子のコード配列を発現させるために使用される。この場合、発現は筒部に限定されず;発現はまた、トリ内の他の組織(例えば、血液)においても生じる。構成的プロモーターおよびコード配列を含むそのような導入遺伝子の使用は、輸卵管でのタンパク質の発現、および続くタンパク質の卵白への分泌をもたらすか、または駆動させるために特に適切である(例えば、ニワトリにおけるIFN−α 2bの発現用pNLB−CMV−IFNベクターなどのCMV駆動構築物の例である図8Aを参照のこと)。
【0098】
図3Aは、複製欠損トリ白血病ウイルス(ALV)ベースのベクターpNLB、本発明における使用に適切なベクターの略図を示している。pNLBベクターにおいて、ALVベクターゲノムの大部分は、ネオマイシン耐性遺伝子(Neo)およびβ−ガラクトシダーゼをコードするlacZ遺伝子によって置換される。図3Bは、lacZがCMVプロモーターおよびβ−ガラクタマーゼコード配列(β−LaまたはBL)によって置換されているベクターpNLB−CMV−BLを示している。ベクターの構築は、詳細な実施例において報告している(実施例1、下記参照)。β−ラクタマーゼタンパク質は、天然のシグナルペプチドであって;従って、血液および卵白において見出される。
【0099】
トリ胚にpNLB−CMV−BLベクターが形質移入される(実施例2、下記参照)。得られた安定形質移入雌鳥由来の卵の卵白は、卵1個あたり、分泌され、活性であるβ−ラクタマーゼ60マイクログラム(μg)までを含む(実施例2および3、下記参照)。
【0100】
図8Aおよび8Bは、それぞれインターフェロン−α 2b(IFN−α 2b)を発現するために使用されるpNLB−CMV−IFNベクター、およびエリスロポイエチン(EPO)を発現するために使用されるpNLB−MDOT−EPOベクターを示す。両方の外因性タンパク質(EPO、IFN)が、トリ、好ましくはニワトリおよびシチメンチョウにおいて発現される。
【0101】
pNLB−MDOT−EPOベクターが、BLコード配列をEPOコード配列と置換することで作製される(実施例10、下記参照)。1つの実施態様において、MDOTと呼ばれる合成プロモーターが、EPOの発現を駆動させるために用いられる。MDOTは、オボムコイドおよびオボトランスフェリンプロモーター両方由来のエレメントを含む。ヒトEPOについてのDNA配列は、ニワトリ(Gallus gallus)のオバルブミン、リゾチーム、オボムコイドおよびオボトランスフェリンタンパク質から作製したコドン使用頻度表と一緒にWisconsin PackageのBACKTRANSLATE(登録商標)プログラム, version 9.1 (Genetics Computer Group, Inc., Madison, WI)を使用して作製された、雌鳥輸卵管に最適化されたコドン使用頻度に基づく。EPOのDNA配列は合成され、ベクターにクローニングされ、得られたプラスミドがpNLB−MDOT−EPOである(pAVIJCR−A145.27.2.2ともいう)。1つの実施態様において、形質移入用粒子(すなわち、形質移入粒子)がベクター用に作製され、これらの形質移入粒子は、胚に注入するために使用され得る適切な濃度を決定するために用量設定される。次いで、卵に形質移入用粒子が注入され、卵は21日後に孵化する。
【0102】
次いで、孵化後1週間のヒヨコから収集した血清サンプルのELISAアッセイによって、EPOレベルなどの外因性タンパク質レベルが測定され得る。交配のためにオスのトリを選択され、ここで、血清中にEPO導入遺伝子を含むG0雄鳥についてトリがスクリーニングされる。好ましくは、血清サンプル中に最も高いレベルの導入遺伝子を有する雄鳥を、人工授精によって非遺伝子導入雌鳥と交配させる。導入遺伝子の存在について、血液DNAサンプルをスクリーニングする。通常、多数のヒヨコが遺伝子導入体(G1トリ)であることが見出される。ヒトEPOの存在について、ヒヨコの血清が試験される(例えば、ELISAアッセイ)。ヒトEPOの存在について、G1の雌鳥由来の卵の卵白もまた試験される。本発明の卵中に存在するEPO(すなわち、ヒトEPOの最適化されたコード配列由来)は、生物学的に活性である(実施例11)。
【0103】
同様に、BLコード配列をIFNコード配列と置換することによってpNLB−CMV−IFNベクター(図8A)が作製される(実施例12、下記参照)。1つの実施態様において、構成的サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターが、IFNの発現を駆動させるために用いられる。さらに詳細には、IFNコード配列は、サイトメガロウイルス(CMV)媒介即時型プロモーターおよびSV40ポリA部位によって制御される。図8Aは、ニワトリおよびシチメンチョウなどのトリにおいてIFNを発現させるために使用されるpNLB−CMV−IFNを示している。ヒトIFN−α 2bに最適化されたコード配列を作製し、ここで、卵白タンパク質、オバルブミン、リゾチーム、オボムコイドおよびオボトランスフェリンにおいて見出される特定の各アミノ酸で最も頻繁に使用されるコドンを、本発明のベクターに挿入するヒトIFN−α 2b配列の設計において使用する。より詳細には、最適化されたヒトIFN−α 2bについてのDNA配列(図11A)は雌鳥の輸卵管の最適化されたコドン使用頻度に基づいており、ニワトリ(Gallus gallus)のオバルブミン、リゾチーム、オボムコイドおよびオボトランスフェリンタンパク質から作製したコドン使用頻度表と一緒にWisconsin PackageのBACKTRANSLATE(登録商標)プログラム, version 9.1 (Genetics Computer Group, Inc., Madison, WI)を使用して、作製される。例えば、4つの卵白タンパク質におけるアミノ酸アラニンの4つのコドンの使用頻度の割合は、GCUについて34%、GCCについて31%、GCAについて26%、およびGCGについて8%である。従って、GCUは、最適化されたヒトIFN−α 2bコード配列において、大部分のアラニンについてコドンとして使用されている。最適化されたヒトIFN−α 2b配列についての遺伝子を含むベクターは、組織および卵においてTPD IFN−α 2bを発現する遺伝子導入トリを作製するために使用する。
【0104】
ベクター用に形質移入用粒子(すなわち、形質移入粒子)を作製し、胚に注入するために使用し得る適切な濃度を決定するために、用量設定をする(実施例2、下記参照)。上記のように、キメラトリを作製した(実施例13も参照のこと、下記参照)。Speksnijder手順(米国特許第5,897,998号)に従ってトリ卵に窓を作り、形質移入用粒子を卵に注入する。注入後約21日で卵は孵化する。孵化1週間後にヒヨコから収集した血清サンプルから、hIFNレベルを測定した(例えば、ELISAアッセイ)。EPOと同様に(上記)、交配のためにオスの鳥を選択する。血清中にIFN導入遺伝子を含むG0雄鳥についてスクリーニングするために、雄鳥の血清サンプルからDNAが抽出される。血清サンプル中に最も高いレベルの導入遺伝子を有する雄鳥を、人工授精によって非遺伝子導入雌鳥と交配させる。導入遺伝子の存在について、血液DNAサンプルがスクリーニングされる。hIFNの存在について、遺伝子導入雄鳥の血清が試験される(すなわち、ELISAアッセイ)。外因性タンパク質が確認される場合、非遺伝子導入雌鳥の精子が人工授精に使用される。ここで、特定の割合の子孫は導入遺伝子を含む(例えば、50%以上)。IFN(すなわち、ヒトIFNの最適化されたコード配列由来)が本発明の卵中に存在する場合、IFNは生物学活性について試験される。EPOと同様に、そのような卵は通常、TPD IFN−α 2bなどの生物学的に活性なIFNを含む(図11B)。
【0105】
トリ輸卵管における外因性タンパク質の産生および外因性タンパク質を含む卵の産生を提供する本発明の方法は、適切なベクターの提供およびベクターの胚性胚盤葉細胞への導入に続き、ベクターがトリゲノムに組込まれるようにさらなる工程を含む。続く工程は、前の工程において産生された遺伝子導入胚盤葉細胞から成熟遺伝子導入トリを得ることを含む。所望により、遺伝子導入胚盤葉細胞からを得ることは、遺伝子導入胚盤葉細胞を胚に移し、胚が完全に発生することを可能にし、結果として胚が発生可能になることで、細胞はトリに組込まれることになる。上記のように、得られたヒヨコは成長して成熟する。1つの実施態様において、胚盤葉胚の細胞は、胚の中で直接ベクターを形質移入または形質導入される(実施例2)。得られた胚は発生させられ、ヒヨコは成熟される。
【0106】
いずれにせよ、遺伝子導入胚盤葉細胞から作製した遺伝子導入トリは、ファウンダーとして知られている。いくつかのファウンダーは、輸卵管の筒部における管状腺細胞に導入遺伝子を担持する。これらのトリは、輸卵管において導入遺伝子によってコードされた外因性タンパク質を発現する。外因性タンパク質はまた、輸卵管に加えて他の組織(例えば、血液)において発現され得る。外因性タンパク質が適切なシグナル配列を含む場合、外因性タンパク質は輸卵管の管腔および卵の卵白に分泌される。いくつかのファウンダーは生殖系列ファウンダーである(実施例8および9)。生殖系列ファウンダーは、生殖系列組織の遺伝物質中に導入遺伝子を担持し、また、外因性タンパク質を発現する輸卵管筒部の管状腺細胞中に導入遺伝子を担持し得る。従って、本発明によれば、遺伝子導入トリ外因性タンパク質を発現する管状腺細胞を有し、遺伝子導入トリの子孫もまた、外因性タンパク質を発現する輸卵管筒部の管状腺細胞を有する。あるいは、子孫は、トリの特定の組織において外因性遺伝子を発現することによって決定される表現型を表す(実施例6、表2)。本発明の実施態様において、遺伝子導入トリは、ニワトリまたはシチメンチョウである。
【0107】
本発明は、ヒトおよび動物の医薬品、診断薬および家畜の飼料添加物として使用するタンパク質を含む、所望のタンパク質を低コストで大規模に発現させるために使用され得る。例えば、本発明は、タンパク質、および卵白にタンパク質を含む遺伝子導入トリによって産卵される卵を産卵する遺伝子導入トリを含む。本発明は、タンパク質のコード配列が、本発明によって輸卵管細胞に導入され得るという要件で、医薬用タンパク質を含む任意の所望タンパク質の産生における使用を意図する。実際、インターフェロン−α 2b、GM−CSF、インターフェロンβ、エリスロポイエチン、G−CSF、CTLA4−Fc融合タンパク質およびβ−ラクタマーゼを含む、本発明による異種性の作製についてこれまでに試験した全てのタンパク質は、本明細書において開示する方法を用いてうまく産生されている。
【0108】
本明細書において開示するヒトタンパク質の産生は、特定の目的を有する。本明細書にて開示する、ヒト形態が存在する各タンパク質のヒト形態は、本発明による産生に意図される。
【0109】
本明細書にて開示する製造について意図されるタンパク質としては、限定するものではないが、ヒト成長ホルモン、インターフェロン、リゾチーム、およびβ−カゼイン、アルブミン、α−1アンチトリプシン、アンチトロンビンIII、コラーゲン、第VIII因子、第IX、第X因子(など)、フィブリノゲン、インスリン、ラクトフェリン、プロテインC、エリスロポイエチン(EPO)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子融合タンパク質(GM−CSF)、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ソマトトロンビンおよびキモトリプシンを含む、成長ホルモン、サイトカイン、構造タンパク質および酵素が挙げられる。ヒト腫瘍細胞上の表面抗原に結合し、それらを破壊する免疫毒素を含む、改変免疫グロブリンおよび抗体が、本明細書に開示するように製造され得る。
【0110】
本明細書で開示するように産生され得る治療用タンパク質の他の詳細な例としては、限定するものではないが、第VIII因子、bドメイン欠失第VIII因子、活性化第VII因子、第IX因子、抗凝固薬;ヒルジン、アルテプラーゼ、tpa、レテプラーゼ、tpa、5つのドメインのうち3つを欠失させたtpa、インスリン、インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングラルギン、長時間作用性インスリンアナログ、hgh、グルカゴン、tsh、フォリトロピン−β、fsh、gm−csf、pdgh、IFN−α 2、IFN−α 2a、IFN−α 2b、inf−α、inf−β 1b、ifn−β 1a、ifn−γ1b、il−2、il−11、hbsag、ospa、Tリンパ球抗原に対するマウスmab、tag−72に対するマウスmab、腫瘍付随糖タンパク質、血小板表面受容体gpII(b)/III(a)に対するキメラmab由来のfabフラグメント、腫瘍付随抗原ca125に対するマウスmabフラグメント、ヒトガン胎児抗原に対するマウスmabフラグメント、cea、ヒト心筋ミオシンに対するマウスmabフラグメント、腫瘍表面抗原psmaに対するマウスmabフラグメント、hmw−maaに対するマウスmabフラグメント(fab/fab2混合)、カルシノーマ付随抗原に対するマウスmabフラグメント(fab)、nca 90に対するmabフラグメント(fab)、表面顆粒球非特異性交差反応性抗原、Bリンパ球の表面上に見出されるcd20抗原由来のキメラmab、il2受容体のα鎖に対するヒト化mab、il2受容体のα鎖に対するキメラmab、tnf−αに対するキメラmab、呼吸器多核体ウイルスの表面上のエピトープに対するヒト化mab、her 2に対するヒト化mab、ヒト上皮増殖因子受容体2、サイトケラチン腫瘍付随抗原、抗ctla4に対するヒトmab、bリンパ球のcd 20表面抗原ドルナーゼ−αに対するキメラmab、βグルコセレブロシダーゼ、tnf−α、il−2−ジフテリア毒素融合タンパク質、tnfr−lggフラグメント融合タンパク質ラロニダーゼ、ディーエヌエーアーゼ(dnaase)、アレファセプト、ダルベポエチンアルファ(コロニー刺激因子)、トシツモマブ、マウスmab、アレムツズマブ、ラスブリカーゼ、アガルシダーゼベータ、テリパラチド、副甲状腺ホルモン誘導体、アダリムマブ(lgg1)、アナキンラ、生物学的な改変体、ネシリチド、ヒトB型ナトリウム利尿ペプチド(hbnp)、コロニー刺激因子、ペグビソマント、ヒト成長ホルモン受容体アンタゴニスト、組換え活性型プロテインC、オマリズマブ、免疫グロブリンe(lge)ブロッカー、イブリツモマブチウキセタン、ACTH、グルカゴン、ソマトスタチン、成長ホルモン、チモシン、副甲状腺ホルモン、色素性ホルモン、ソマトメジン、エリスロポイエチン、黄体ホルモン、絨毛性ゴナドトロピン、視床下部放出因子、エタネルセプト、抗利尿ホルモン、プロラクチンおよび甲状腺刺激ホルモンが挙げられる。
【0111】
本発明は、抗体のような免疫グロブリンおよびその抗原結合フラグメントを含む、多量体タンパク質の製造方法を含む。従って、本発明の1つの実施態様において、多量体タンパク質は免疫グロブリンであって、第1および第2の異種性ポリペプチドは、それぞれ免疫グロブリン重鎖および軽鎖である。
【0112】
特定の実施態様において、少なくとも1つの発現ベクターの転写単位によってコードされる免疫グロブリンポリペプチドは、可変領域を含む免疫グロブリン重鎖ポリペプチドまたはその変異体であってもよく、D領域、J領域、C領域またはその組合せをさらに含んでもよい。発現ベクターによってコードされる免疫グロブリンポリペプチドは、可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドまたはその変異体であってもよく、J領域およびC領域をさらに含んでもよい。本発明はまた、限定するものではないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギおよびニワトリを含む、同じ動物種または種の混合体由来の複数の免疫グロブリン領域を意図する。特定の実施態様において、抗体は、ヒトであるか、またはヒト化されている。
【0113】
別の実施態様において、少なくとも1つの発現ベクターによってコードされる免疫グロブリンポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖可変領域、免疫グロブリン軽鎖可変領域、および抗原に選択的に結合可能な一本鎖抗体を形成させるリンカーペプチドを含む。
【0114】
本発明の方法において産生され得る治療用タンパク質の例としては、限定するものではないが、HERCEPTIN(商標)(トラスツズマブ)(Genentech,CA)(これは、転移性乳ガンを有する患者の治療のためのヒト化抗−HER2モノクローナル抗体である);REOPRO(商標)(アブシキシマブ)(Centocor)(これは、血餅形成を抑制するための、血小板上の糖タンパク質IIb/IIIa受容体に対するものである);ZENAPAX(商標)(ダクリズマブ)(Roche Pharmaceuticals,Switzerland)(これは、急性の同種移植拒絶を抑制するための、免疫抑制性ヒト化抗CD25モノクローナル抗体である);PANOREX(商標)(これは、マウス抗l7−IA細胞表面抗原IgG2a抗体である)(Glaxo Wellcome/Centocor);BEC2(これは、マウス抗イディオタイプ(GD3エピトープ)IgG抗体(ImClone System)である);IMC−C225(これは、キメラ抗EGFR IgG抗体(ImClone System)である);VITAXIN(商標)(これは、ヒト化抗αVβ3インテグリン抗体である)(Applied Molecular Evolution/MedImmune);Campath;Campath 1H/LDP−03(これは、ヒト化抗CD52 IgG1抗体である)(Leukosite);Smart M195(これは、ヒト化抗CD33 IgG抗体である)(Protein Design Lab/Kanebo);RITUXAN(商標)(これは、キメラ抗CD2O IgG1抗体である)(IDEC Pharm/Genentech, Roche/Zettyaku);LYMPHOCIDE(商標)(これは、ヒト化抗CD22 IgG抗体である)(Immunomedics);ICM3はヒト化抗ICAM3抗体であり(ICOS Pharm);IDEC−114は、霊長類抗−CD80抗体であり(IDEC Pharm/Mitsubishi);ZEVALIN(商標)は放射標識したマウス抗CD20抗体であり(IDEC/Schering AG);IDEC−13lはヒト化抗CD40L抗体であり(IDEC/Eisai);IDEC−151は霊長類化抗CD4抗体であり(IDEC);IDEC−152は霊長類化抗CD23抗体であり(IDEC/Seikagaku);SMART抗CD3はヒト化抗CD3 IgGであり(Protein Design Lab);5G1.lはヒト化抗補体因子5(CS)抗体であり(Alexion Pharm);D2E7はヒト化抗TNF−α抗体であり(CATIBASF);CDP870はヒト化抗TNF−α Fabフラグメントであり(Celltech);IDEC−151は霊長類化抗CD4 IgG1抗体であり(IDEC Pharm/SmithKline Beecham);MDX−CD4はヒト抗CD4 IgG抗体であり(Medarex/Eisai/Genmab);CDP571はヒト化抗TNF−α IgG4抗体であり(Celltech);LDP−02はヒト化抗α4β7抗体であり(LeukoSite/Genentech);OrthoClone OKT4Aはヒト化抗CD4 IgG抗体であり(Ortho Biotech);ANTOVA(商標)はヒト化抗CD40L IgG抗体であり(Biogen);ANTEGREN(商標)はヒト化抗VLA−4 IgG抗体であり(Elan);CAT−152、ヒト抗TGF−β2抗体(Cambridge Ab Tech);Cetuximab(BMS)はモノクローナル抗EGF受容体(EGFr)抗体であり;Bevacizuma(Genentech)gは抗VEGFヒトモノクローナル抗体であり;Infliximab(Centocore, JJ)は自己免疫障害を処置するために使用されるキメラ(マウスおよびヒト)モノクローナル抗体であり;Gemtuzumab ozogamicin(Wyeth)は化学療法に使用されるモノクローナル抗体であり;そして、Ranibizumab(Genentech)は黄斑変性症を処置するために使用されるキメラ(マウスおよびヒト)モノクローナル抗体である、が挙げられる。
【0115】
1つの態様において、本発明は家禽において産生されるG−CSFを含む。1つの態様において、本発明は、家禽由来の糖鎖付加パターンを有するG−CSF(TPD G−CSF)を含み、ここで、G−CSFはニワトリ、ウズラまたはシチメンチョウのトリ細胞などのトリ細胞から得られる。家禽において産生され、単離または精製されたG−CSFなどのサイトカイン含むヒトタンパク質、家禽において産生されたG−CSFなどのサイトカインを含む、医薬組成物中に存在するヒトタンパク質もまた本発明に含まれる。G−CSFを含むタンパク質の単離は、当該分野に容易に明らかなやり方によって達成され得る。医薬物の製造に有用な処方物の製法もまた、当該分野で周知である。
【0116】
本発明は、トリに由来する家禽由来の糖鎖付加パターンを有する、家禽由来の治療用または医薬用タンパク質を含む。例えば、本発明は、トリ由来のインターフェロン−α 2(TPD IFN−α 2)を含む。TPD IFN−α 2は、ヒト末梢血白血球由来のインターフェロン−α 2(PBL IFN−α 2b)では通常見られない新たな糖鎖付加パターンを示しており、新たなグリコフォームを含む(バンド4および5はα−Galが伸長された二糖であり;図9を参照のこと)。TPD IFN−α 2bはまた、ヒトPBL IFN−α 2bに類似し、ニワトリにおいてヒト形態より効率的に産生されるO結合型糖鎖構造を含む。
【0117】
本発明は、本明細書で開示するように製造されるタンパク質の最適化されたポリヌクレオチド配列を含む、単離されたポリペプチドを意図する。例えば、本発明は、ヒトIFN−α 2bについて最適化されたトリコード配列、すなわち、遺伝子導入家禽由来の組換えインターフェロン−α 2b(TPD IFN−α 2b)(配列番号1)を含む。最適化ヒトIFN−α 2bについてのコード配列は、498ヌクレオチドおよび165アミノ酸を含む(配列番号1および図11Aを参照のこと)。同様に、天然のヒトIFN−α 2bについてのコード配列は、498ヌクレオチド(NCBIアクセッション番号AF405539およびGI:15487989)、165アミノ酸(NCBIアクセッション番号AAL01040およびGI:15487990)を含む。卵白タンパク質オバルブミン、リゾチーム、オボムコイドおよびオボトランスフェリンにおいて見出される特定の各アミノ酸について最も頻繁に使用されるコドンは、本発明のベクターに挿入される最適化されたヒトIFN−α 2bコード配列の設計において使用される。より詳細には、最適化されたヒトIFN−α 2bについてのDNA配列は、雌鳥の輸卵管のコドンの使用頻度に基づいており、ニワトリ(Gallus gallus)のオバルブミン、リゾチーム、オボムコイドおよびオボトランスフェリンタンパク質から作製したコドン使用頻度表と一緒にWisconsin PackageのBACKTRANSLATE(登録商標)プログラム, version 9.1 (Genetics Computer Group, Inc., Madison, WI)を使用して、作製される。例えば、4つの卵白タンパク質におけるアミノ酸アラニンの4つのコドンの使用頻度の割合は、GCUについて34%、GCCについて31%、GCAについて26%、およびGCGについて8%である。従って、GCUは、最適化されたヒトIFN−α 2bコード配列において、大部分のアラニンについてコドンとして使用されている。最適化されたヒトIFN−α 2bについての遺伝子を含むベクターは、家禽の組織および卵において形質導入された家禽由来のIFN−α 2b(TPD IFN−α 2b)を発現する形質導入トリを産生するために使用される。
【0118】
実施例13(下記参照)にて考察するように、TPD IFN−α 2bはニワトリにおいて産生される。しかし、TPD IFN−α 2bはまた、シチメンチョウおよびウズラなどの他のトリ種においても産生され得る。本発明の好ましい実施態様において、TPD IFN−α 2bは、ニワトリおよびシチメンチョウならびにそれらの固い殻の卵において発現される。単糖分析およびFACE分析を含む炭水化物分析(実施例14、下記参照)によって、タンパク質の糖構造または新規の糖鎖付加パターンが明らかにされる。あるいは、TPD IFN−α 2bは、以下の単糖残基を示す:N−アセチル−ガラクトサミン(NAcGal)、ガラクトース(Gal)、N−アセチル−グルコサミン(NAcGlu)およびシアル酸(SA)。しかし、TPD IFN−α 2b中にはN結合型糖鎖付加は存在しない。代わりに、TPD IFN−α 2bは、Thr−106にてO−グリコシル化される。この型の糖鎖付加はヒトIFN−α 2に類似しており、106位のThr残基はIFN−α 2に特有である。天然のIFN−αに類似であるTPD IFN−α 2bは、マンノース残基を有していない。FACE分析は種々の糖残基を表す6つのバンド(図9)を明らかにし、ここで、バンド1、2および3は、それぞれ非シアル酸付加、シアル酸付加および二シアル酸付加されている(図10)。シアル酸(CA)結合はガラクトース(Gal)に対してアルファ2−3であり、N−アセチル−ガラクトサミン(NAcGal)に対してアルファ2−6である。バンド6は、非シアル酸付加四糖を表している。バンド4および5は、ヒトPBL IFN−α 2bまたは天然のヒトIFN(天然hIFN)において見られないアルファ−ガラクトース(アルファ−Gal)伸長型二糖である。図10は、TPD IFN−α 2b(卵白hIFN)とヒトPBL IFN−α 2b(天然hIFN)の比較を示す。微小のバンドがTPD IFN−α 2bにおけるバンド3と4との間、およびバンド4と5との間に存在している(下記参照)。
【0119】
本発明は、TPD IFN−α 2bの単離されたポリペプチド配列(配列番号2)(図11Bも参照のこと)およびその医薬組成物を意図し、ここで、タンパク質は、本明細書で開示する以下の糖鎖構造の1つ以上とともに、Thr−106にてO−グリコシル化されている:
式(i):
【化9】
式(ii):
【化10】
式(iii):
【化11】
式(iv):
【化12】
式(v):
【化13】
式(vi):
【化14】
[式中、Gal=ガラクトース、
NAcGal=N−アセチル−ガラクトサミン、
NAcGlu=N−アセチル−グルコサミンおよび
SA=シアル酸]。
【0120】
本発明の1つの実施態様において、割合は、
式(i):
式(i):
【化15】
が約20%であって;
式(ii):
【化16】
が約29%であって;
式(iii):
【化17】
が約9%であって;
式(iv):
【化18】
が約6%であって;
式(v):
【化19】
が約20%であって;
式(vi):
【化20】
が約12%である。
【0121】
微小のバンドがバンド3と4との間、およびバンド4と5との間に存在し、TPD IFN−α 2bにおいて約17%を占める。
【0122】
1つの実施態様において、本発明は、家禽由来の糖鎖付加パターンを有するヒトタンパク質に関する。1つの実施態様において、家禽由来の糖鎖付加パターンは、トリ輸卵管細胞、例えば、管状腺細胞から入手される。例えば、本発明によってニワトリの輸卵管細胞において産生されたヒトタンパク質上に存在することが示された糖鎖付加パターンが、本明細書にて開示される。
【0123】
1つの実施態様において、本発明は、家禽由来の糖鎖付加パターンを有する、ニワトリ、シチメンチョウおよびウズラなどのトリ(例えば、トリ輸卵管細胞)において産生されたヒトG−CSFに関する。成熟hG−CSFアミノ酸配列を図18Cに示す。G−CSFを製造するために本明細書で使用するヌクレオチド配列を、図18AおよびNCBIアクセッションNM172219に示す。トリ(例えば、ニワトリ)のコドン使用頻度について最適化されたヌクレオチド配列を、G−CSF、および本発明によって製造されたヒトタンパク質などの他のタンパク質を製造するための使用についても意図している。
【0124】
本発明は、以下:
【化21】
で表す糖鎖付加構造1つ以上を含む本発明のG−CSF分子を含む、卵および卵を産むトリ(例えば、ニワトリ、シチメンチョウおよびウズラ)を含む:
【0125】
1つの実施態様において、本発明は、G−CSF分子の混合物を含み、ここで、混合物は構造A、構造B、構造C、構造D、構造E、構造Fおよび構造Gの1つ以上から選択される糖鎖付加構造を有するG−CSF分子を含む。本発明はまた、G−CSF分子の混合物を含み、ここで、混合物は構造A、構造B、構造C、構造D、構造E、構造Fおよび構造Gの1つ以上から選択される糖鎖付加構造を有するG−CSF分子を含み、混合物は単離または精製されており、例えば、本発明によって産生された卵または卵白から精製される。また、G−CSF分子の混合物が含まれ、ここで、混合物は構造A、構造B、構造C、構造D、構造E、構造Fおよび/または構造Gのうち2つ、3つ、4つ、5つまたは6つを有するG−CSF分子を含む。また、G−CSF分子の混合物が含まれ、ここで、混合物は構造A、構造B、構造C、構造D、構造E、構造Fおよび/または構造Gのうち2つ、3つ、4つ、5つまたは6つを有するG−CSF分子を含み、混合物は単離または精製されており、例えば、本発明によって産生された卵または卵白から精製される。
【0126】
本発明はまた、構造Aを含む個別のG−CSF分子を含む。本発明はまた、構造Bを含む個別のG−CSF分子を含む。本発明はまた、構造Cを含む個別のG−CSF分子を含む。本発明はまた、構造Dを含む個別のG−CSF分子を含む。本発明はまた、構造Eを含む個別のG−CSF分子を含む。本発明はまた、構造Fを含む個別のG−CSF分子を含む。本発明はまた、構造Gを含む個別のG−CSF分子を含む。本発明はまた、構造Aを含む個別のG−CSF分子を含む。1つの実施態様において、それぞれのG−CSF分子は、単離または精製したG−CSF分子の混合物であり得るG−CSF混合物(混合物は本発明によって産生された卵または卵白から精製される)中に存在し得る。1つの実施態様において、それぞれのG−CSF分子は単離または精製され、例えば、本明細書で開示するように精製される(例えば、実施例20にて開示するHPLCによって)。
【0127】
G−CSF、例えば、G−CSF分子の混合物および個別のG−CSF分子(上の2段落)に関して本明細書で詳述する本発明の実施態様はまた、一般に、本発明によって産生されたほかのタンパク質、およびそれらに対応する家禽由来の糖鎖付加構造について適用可能である。
【0128】
本発明の1つのタンパク質上に存在することが示されている糖鎖付加構造が、本発明の別のタンパク質上に存在し得ることもまた意図される。例えば、TPD G−CSF上に存在することが示されている糖鎖付加構造もまた、TPD GM−CSF、TPD EPO、TPD IFNおよび/または他のTPDタンパク質上に存在し得る。別の例において、TPD IFNα2条に存在することが示されている糖鎖付加構造が、TPD G−CSF、TPD GM−CSF、TPD EPOおよび/または他の遺伝子導入家禽由来の(TPD)タンパク質上に存在し得ることが意図される。詳細には、本発明はまた、一般に、本明細書で開示するTPD糖鎖付加構造1つ以上を有するヒトタンパク質を意図する。
【0129】
治療での使用のために、本発明によって産生される治療用タンパク質をそのままの形態で投与してもよいが、治療用タンパク質を医薬処方物の部分として投与することが好ましい。
【0130】
従って、本発明はさらに、1つ以上の医薬上許容される担体および、所望により、他の治療用および/または予防用成分と一緒に、家禽由来のグリコシル化された治療用タンパク質またはその医薬上許容される誘導体を含む医薬処方物、ならびにそのような医薬処方物を投与する方法を提供する。担体は、処方物の他の成分と適合性であって、そのレシピエントに有害でないという意味において、許容されるものでなければならない。本発明の医薬組成物を使用して患者を治療する方法(例えば、投与する医薬用タンパク質の量、投与の頻度および処置の持続時間)は、当業者に公知で標準的なやり方を使用して決定され得る。
【0131】
医薬処方物は、経口、直腸内、経鼻、局所(頬側および舌下を含む)、膣内または非経口に適切なものを含む。医薬処方物は、筋肉内、皮下および静脈内投与を含む注射による投与に適切なものを含む。医薬処方物はまた、吸入またはガス注入による投与のためのものを含む。処方物は、必要に応じて、分離した投与量単位で好適に存在し得、当該分野で周知の任意の方法によって調製され得る。医薬処方物を製造する方法は典型的に、治療用タンパク質を、液体担体もしくは細かく分割した固体担体または両方に加え、次いで、必要であれば生成物を所望の処方物に形成する工程を包含する。
【0132】
経口投与に適切な医薬処方物は、好適に、事前に計量した量の有効成分をそれぞれ含む、カプセル、カシェット(cachet)または錠剤などの分離した単位として;散剤または顆粒として;溶液として;懸濁物として;または乳濁液として存在し得る。有効成分はまた、ボーラス、舐剤またはペーストとして存在し得る。経口投与のための錠剤およびカプセルは、結合剤、充填剤、潤滑剤、崩壊剤または湿潤剤などの従来の賦形剤を含み得る。錠剤は、当該分野で公知の方法に従ってコーティングされ得る。経口の液体調製物は、水溶液、油性懸濁物、溶液、乳濁液、シロップまたはエリキシル剤などの形態であってもよく、あるいは、使用前に水または他の適切なビヒクルでの構成用の乾燥した製品として調製してもよい。そのような液体調製物は、懸濁剤、乳化剤、非水ビヒクル(食用油を含む)または保存料などの従来の添加剤を含んでもよい。
【0133】
本発明の治療用タンパク質はまた、非経口投与のために処方され得(例えば、ボーラス注射または持続点滴などの注射によって)、アンプル、事前に充填されたシリンジ、少量の点滴での単位用量、または保存料を添加した複数回投与容器中に調製され得る。治療用タンパク質は、例えば、皮下注射、筋肉内注射および静脈内点滴または注射によって注射され得る。
【0134】
医療用タンパク質は、油性または水性ビヒクル中の懸濁物、溶液または乳濁物などの形態をなし得、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの処方用薬剤を含み得る。治療用タンパク質は、散剤形態であって、滅菌固体の滅菌単離または溶液の凍結乾燥によって入手され、滅菌で発熱物質を含まない水などの適切なビヒクルでの構築用であってもよい。
【0135】
表皮への局所投与のために、本発明によって産生された治療用タンパク質は、軟膏、クリームもしくはローション、または経皮パッチとして処方され得る。例えば、軟膏およびクリームは、増粘剤および/またはゲル化剤に加えて、水性または油性基剤を用いて処方され得る。ローションは、水性または油性基剤を用いて処方され得、一般に、乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤または着色料のうち1つ以上を含む。
【0136】
口中での局所投与に適切な処方物は、通常スクロースおよびアラビアゴムまたはトラガントといった風味付けした基剤中に有効成分を含む薬用キャンディー;ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアラビアゴムなどの不活性な基剤中に有効成分を含むトローチ;ならびに、適切な液体担体中に有効成分を含む口腔洗浄薬を含む。
【0137】
直腸内投与に適切な医薬処方物(担体は固体である)は、単位用量坐薬として最も好ましくは表される。適切な担体は、ココアバターおよび当該分野にて一般に使用される他の材料を含み、坐薬を、有効化合物と軟化させたかあるいは融かした担体との混合物によって好適に形成してもよく、型の中で冷却し成形する。
【0138】
膣内投与に適切な処方物は、有効成分に加えて、当該分野で適切であると知られているそのような担体を含む、膣坐薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡またはスプレーとして与えてもよい。
【0139】
鼻腔内投与のために、本発明の治療用タンパク質を液体スプレーまたは分散性散剤として、またはドロップの形態で使用してもよい。
【0140】
ドロップは、1つ以上の分散剤、可溶化剤または懸濁剤を含む水性または非水性基剤と一緒に処方してもよい。液体スプレーは、加圧パックから好適に送達される。
【0141】
吸入による投与のために、本発明による治療用タンパク質は、吸入器、噴霧器または加圧パックまたはエアロゾルスプレーを送達する従来の手段から好適に送達され得る。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切な気体などの適切な噴霧剤を含み得る。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、計量した量を送達するためのバルブを与えることによって決定され得る。
【0142】
吸入またはガス注入による投与のために、本発明による治療用タンパク質は、化合物、およびラクトースまたはデンプンなどの適切な散剤基剤の散剤混合物などの乾燥散剤組成物の形態をなし得る。散剤組成物は、カプセルもしくはカートリッジなどの中の単位投与量形態、あるいは、例えば、吸入器または噴霧器を用いて散剤を投与し得るゼラチンまたはブリスターパック形態で与えられ得る。
【0143】
必要に応じて、有効成分の徐放を与えるように適応させた上記の処方物を用いてもよい。
【0144】
本発明による医薬組成物はまた、抗菌剤または保存料などの他の有効成分を含んでもよい。
【0145】
さらに、本発明の治療用タンパク質は、他の治療剤と組み合わせて使用してもよい。
【0146】
本発明の組成物または化合物は、種々の状態を処置するために使用され得る。例えば、その治療方法が当業者に公知で、細胞培養物(例えば、CHO細胞)から入手した治療用タンパク質を用いる多くの状態が存在する。本発明は、家禽由来の糖鎖付加パターンを含む、トリ系において産生された治療用タンパク質をそのような状態を処置するために用いてもよいことを意図する。すなわち、本発明は、本発明によって製造される治療用タンパク質を使用することによって、従来産生されている治療用タンパク質によって処置可能であることが知られている状態の処置を意図する。当該分野で理解されるように、例えば、本発明によって製造されるエリスロポイエチンを、貧血および腎臓障害(例えば、慢性腎不全)などのヒトの状態を処置するために使用してもよく、本発明によって製造されるG−CSFを、ガン患者を処置するために使用してもよい。
【0147】
一般に、投与される投与量は、レシピエントの年齢、健康および体重、併用の処置の型、処理の頻度などに依存して変動する。通常、有効成分の投与量は、約0.0001〜約10mg/kg体重であり得る。正確な投与量、投与の頻度、処置の期間は、各治療用タンパク質の投与分野の当業者によって決定され得る。
【0148】
以下の詳細な実施例は本発明を説明することを意図し、本発明の範囲を制限するように構成されていない。
【実施例】
【0149】
実施例1
ベクターの構築
pNLBのlacZ遺伝子、複製欠損のトリ白血病ウイルス(ALV)ベースのベクター(Cosset et al., 1991)を、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターおよびレポーター遺伝子、β−ラクタマーゼからなる発現カセットで置換する。pNLBおよびpNLB−CMV−BLベクター構築物を、図3Aおよび3Bにてそれぞれ略図で示す。
【0150】
pNLBのlacZ遺伝子を導入遺伝子と効率的に置換するために、まず中間体アダプタープラスミド、pNLBAdapterを作製した。pNLBのchewed back ApaI/ApaIフラグメントをpBluescriptKS(−)のchewed−back KpnI/SacI部位に挿入することによって、pNLBAdapterを作製した(pNLBにおいて、5‘側ApaIはlacZの上流289bpに存在し、3’側ApaIは3‘LTRおよびGagセグメントの3’側に存在する)(Cosset et al., J. Virol. 65:3388-94 (1991))。pCMV−BLのフィルインしたMluI/XbaIフラグメント(Moore et al., Anal.Biochem. 247: 203-9 (1997))をpNLB−Adapterのchewed−back KpnI/NdeI部位に挿入し、lacZをCMVプロモーターおよびBL遺伝子で置換し(pNLBにおいて、KpnIはlacZの上流67bpに存在し、NdeIはlacZ終止コドンの上流100bpに存在する)、それによってpNLB−Adapter−CMV−BLを作製した。pNLB−CMV−BLを作製するために、 pNLBのHindIII/BlpIの挿入部分(lacZを含む)をpNLB−Adapter−CMV−BLのHindIII/BlpI挿入部分で置換した。未知の理由で、平滑末端フラグメントのpNLBのHindIII/BlpI部位への直接のライゲーションは大部分が再編成されたサブクローンを生じるので、この2段階のクローニングは必要である。
【0151】
実施例2
pNLB−CMV−BLファウンダー群の作製
SentasおよびIsoldesを、F10(Gibco)、5%新生牛血清(Gibco)、1%ニワトリ血清(Gibco)、50μg/mlフレオマイシン(Cayla Laboratories)および50μg/mlハイグロマイシン(Sigma)中で培養した。以下の例外を用いて、Cosset et al.,1993(出典明示によって本明細書にて援用する)に記載のように、形質導入粒子を作製した。レトロウイルスベクターpNLB−CMV−BL(実施例1から、上記)の9×105のSentasに形質移入した2日後、ウイルスを6〜16時間新たな培地中に回収し、濾過した。全ての培地を使用して、最終濃度4マイクロg/mlまで加えたポリブレンを用いて、3枚の100mmプレート上で3×106のIsoldesに形質導入した。翌日、50μg/mlフレオマイシン、50μg/mlハイグロマイシンおよび200μg/ml G418(Sigma)を含む培地で培地を交換した。10〜12日後に、G418耐性の単一コロニーを単離し、24ウェルプレートに移した。7〜10日後に、Sentasの形質導入によって、各コロニー由来の力価を決定し、G418選択を行った。典型的に、60コロニーのうち2コロニーが1〜3×105の力価であった。Allioli et al.,Dev.Biol.165:30−7(1994)(出典明示によって本願明細書で援用する)に記載のように、これらのコロニーを拡大させ、ウイルスを2〜7×106まで濃縮した。NLB−CMV−BL形質導入粒子で形質導入した細胞の培地中でβ−ラクタマーゼについてアッセイすることによって、CMV−BL発現カセットのインテグリティー(integrity)を確認した。
【0152】
形質導入ベクター、pNLB−CMV−BLを546個の非インキュベートSPF白色レグホン胚の胚下腔に注入した。そのうち126個からヒヨコが孵化し、β−ラクタマーゼ(ラクタマーゼ)の血中への分泌についてアッセイした。未知のサンプル中の活性型ラクタマーゼ濃度を測定するために、ラクタマーゼによってPADAC(紫色の物質)が黄色の化合物に特異的に転換される動態比色分析を用いた。標準的な反応時間の間でのOD570の減少をモニターすることによって、ラクタマーゼの活性を定量化し、精製したラクタマーゼレベルを変動させた検量線と比較した(「ラクタマーゼアッセイ」という)。一晩または数日間、試験サンプル中の紫色から黄色への転換について目視でスコア化することによって、サンプル中のラクタマーゼの有無も決定した(「一晩ラクタマーゼアッセイ」)。後者の方法は、非常に低いレベルのラクタマーゼの検出または多数のサンプルをスクリーニングすることに適切であった。1〜4週齢で、ラクタマーゼの存在についてヒヨコ血清サンプルを試験した。27羽のヒヨコは血清中にラクタマーゼが非常に低いレベルで、一晩ラクタマーゼアッセイ後のみ検出可能であり、これらのトリが成熟すると、ラクタマーゼはもはや検出不可能であった。下記の表1および図4Aにて示すように、さらなるトリ(3羽のオスおよび6羽のメス)は、孵化後6〜7か月で11.9〜173.4ng/mlの範囲のラクタマーゼ血清レベルであった。
【0153】
【表1】
【0154】
実施例3
G0の雌鳥の卵白におけるβ−ラクタマーゼの発現
pNLB−CMV−BLレトロウイルスベクターを形質導入した若い雌鳥57羽を性的に成熟するまで飼育し、月齢8か月で、活性型β−ラクタマーゼ(ラクタマーゼ)について各雌鳥由来の卵白を試験した。57羽のトリのうち、6羽が56.3〜250.0ng/mlの範囲の有意なラクタマーゼレベルを有していた(表1、上記)。数日間PADACをサンプルとインキュベートした後でも、この群のほかの雌鳥は卵白中に検出可能なレベルのラクタマーゼを有していなかった。偽の注入をした24羽の雌鳥由来の卵白、およびラクタマーゼ導入遺伝子を担持していないNLBベクターを形質導入した42羽の雌鳥では、ラクタマーゼを検出できなかった。最初のアッセイから6か月後でなお、6羽の発現している雌鳥の卵白にて、安定した発現が検出可能であった(表1、上記)。
【0155】
抗β−ラクタマーゼ抗体を用いたウェスタンブロットアッセイによって、6羽の雌鳥全ての卵白におけるラクタマーゼを検出した。卵白のラクタマーゼは、標準品として使用した、細菌で産生し、精製したラクタマーゼと同じ大きさであった。ウェスタン分析によって卵白にて検出した量は、酵素アッセイによって決定した量と一致し、卵白のラクタマーゼの有意な割合が生物学的に活性であることが示された。雌鳥によって産生され、4℃で保存した卵白中のラクタマーゼの活性は損なわれておらず、数か月間の貯蔵の後でも分子量の変化を示さなかった。この観察は、分析まで延長した期間の間、ラクタマーゼを含む卵の貯蔵を可能にした。
【0156】
実施例4
G1およびG2遺伝子導入ニワトリにおける、β−ラクタマーゼの生殖細胞系伝達および血清発現
56羽のG0雄鳥から回収した精子からDNAを抽出し、56羽のトリのうち、定量的PCRによって測定し、精子DNAにおいて有意なレベルの導入遺伝子を有していた3羽を、飼育するために選択した。これらの雄鳥は、血中のβ−ラクタマーゼ(ラクタマーゼ)レベルが最も高いことが同じ3羽であった(雄鳥2395、2421および2428)。雄鳥2395が3羽のG1の遺伝子導入子孫(422羽の子孫のうち)を生じた一方、残りの2羽は遺伝子導入の子孫を生じなかった(合計650羽の子孫のうち)。3羽のG1遺伝子導入ニワトリそれぞれ由来の血液DNAをサザン分析することによって、導入遺伝子がインタクトであって、特有で無作為の遺伝子座に組込まれていることを確認した。比かご6〜11週目で、G1遺伝子導入ヒヨコ、5308、5657および4133の血清は、それぞれ0.03、2.0および6.0μg/mlのラクタマーゼを含んでいた。月齢6〜7か月でニワトリを再度アッセイした場合、ラクタマーゼレベルは0.03、1.1および5.0μg/mlのレベルに低下していた(図4A)。
【0157】
雌鳥5657および雄鳥4133を非遺伝子導入ニワトリと交配させ、導入遺伝子についてヘミ接合性である子孫を入手した。雄鳥4133および雌鳥5657に由来する遺伝子導入ニワトリの系統、およびその後の世代を図5にて示す。遺伝子導入雄鳥5308も交配させたが、このトリの子孫は、血清および卵白において非常に低いかまたは検出できないかのいずれかであるラクタマーゼの濃度を示した。無作為に選択したG2遺伝子導入ヒヨコの血清中の活性型ラクタマーゼの濃度を、孵化後3〜90日目に測定した。雌鳥5657から生まれたG0遺伝子導入体の5羽の全てが、1.9〜2.3μg/mlの濃度の活性型ラクタマーゼを有していた(親の発現1.1μg/mlと比較して、図4B)。同じ期間にサンプル全てを回収した。従って、雌鳥5657での濃度は成熟するのに比例して低下しているので、子孫の血清中のラクタマーゼ濃度は親の濃度より高いことが期待された。同様に、雄鳥4133から生まれた遺伝子導入ヒヨコから無作為に選択した5羽は全て、親と類似しているがより高い血清ラクタマーゼ濃度を有していた(図4B)。
【0158】
実施例5
遺伝子導入雌鳥の卵白におけるβ−ラクタマーゼの発現
G1雌鳥5657由来の卵、卵白1mlあたり活性型β−ラクタマーゼ(ラクタマーゼ)130ngを含んでいた(図6A)。ラクタマーゼの濃度は、最初に産卵されたいくつかの卵においてより高く、次いで少なくとも9か月間安定な安定期に達した。雌鳥5357および非遺伝子導入雄鳥から生まれた遺伝子導入雌鳥由来の卵は親と類似したラクタマーゼ濃度を有していた(図6A)。雌鳥6978は、G2雌鳥8617および兄弟G2雄鳥8839から生まれ、定量的PCRおよびサザン分析によって、導入遺伝子についてホモ接合性であることを決定した。期待したように、トリ6978の卵におけるラクタマーゼ濃度は、ヘミ接合性の親よりほぼ2倍高かった(図6B)。雌鳥6978は雌鳥5657のヒヨコの中で唯一のメスであってので、雌鳥5657から生まれたG3雌鳥はほかに分析していない。雌鳥8867、8868および8869由来の卵は、11か月離れて回収されており、類似したラクタマーゼ濃度を有しており、卵白中の発現レベルが産卵期間を通じて一致していることが示されたことに留意することが重要である。雄鳥4133を非遺伝子導入トリと交配させて、ヘミ接合性のG2雌鳥を入手した。分析した15羽の遺伝子導入雌鳥の全てが、卵白中に0.47〜1.34μg/mlの範囲の濃度でラクタマーゼを有していた。4羽の代表的な雌鳥を図7Aにて示す。6か月後にアッセイした場合、平均発現レベルは約1.0μg/ml〜0.8μg/mlに低下していた(図7A)。発現レベルは最初の卵において高く、数か月間にわたって安定であった。その後に、卵中のラクタマーゼレベルは一定のままであった。
【0159】
G2雌鳥および兄弟G2雄鳥8191を交配させ、ヘミ接合性およびホモ接合性G3雌鳥を生じさせた。全ての遺伝子導入のG3雌鳥が0.52〜1.65μg/mlの範囲の濃度で卵白においてラクタマーゼを発現させていた(図7B)。ホモ接合性であるG3雌鳥についての平均発現は、ヘミ接合性であるG2雌鳥およびG3雌鳥より47%高かった。雄鳥4133およびその子孫から生まれたG2およびG3雌鳥由来の卵中のラクタマーゼ量は有意に変動したが(図7Aおよび7B)、その群の任意で所定の雌鳥由来の卵におけるレベルは比較的一定であった。ラクタマーゼの発現平均は、ホモ接合性遺伝子型の2倍であることが期待された。ウェスタンブロット分析によって、導入遺伝子はG2遺伝子導入体の卵においてインタクトなラクタマーゼを正確に産生していることが確認された。ウェスタンブロットで検出されたラクタマーゼレベルはまた、酵素活性アッセイによって決定されたものと相互で密接に関連しており、卵白ラクタマーゼの重要な部分が生理活性であることを示している。従って、レトロウイルスベクターをうまく用いて、ニワトリにおける導入遺伝子の安定で信頼性のある発現を実施することができる。
【0160】
卵黄におけるラクタマーゼの沈着は検出可能であるものの、卵白のものより低かった。雄鳥4133系統のG2またはG3雌鳥7羽を分析したが、卵黄において107〜375ng/mlの範囲の濃度であって、卵白における濃度の約20%であった。所定の雌鳥の卵黄と卵白のラクタマーゼレベルの間に関連はなかった(Harvey et al., ”Expression of exogenous protein in egg white of transgenic chickens” (April 2002) Nat. Biotechnol. 20:396-399)。
【0161】
実施例6
メスのファウンダーの作製
pNLB−CMV−BL形質導入のために、新たに生まれた受精白色レグホン卵を使用した。7〜10μlの濃縮粒子を窓を作った卵の胚下腔に注入し、窓をシールした後でヒヨコに孵化させた。546個の卵に注入した。血液DNAを抽出し、Taqmanアッセイを介してneo耐性を検出するように設計したプローブプライマーセットを使用して、導入遺伝子の存在について分析した。下記の表3にて理解されるように、全ヒヨコの約25%が血液DNAにおいて検出可能なレベルの導入遺伝子を有していた。
【0162】
【表2】
【0163】
【表3】
【0164】
実施例7
導入遺伝子の生殖細胞系伝達の割合
挿入されたベクター配列の組込みおよびインテグリティーを確認するために、G1およびG2遺伝子組換え由来のDNAに対してサザンブロット分析を実施した。血液DNAをHindIIIを用いて消化し、neo耐性プローブに対してハイブリダイズさせて、pNLB−CMV−BLベクター中に見出した内部のHindIII部位、および組込み部位に隣接するゲノムの部位によって作製された接合部フラグメントを検出した(図3B)。NLB−CMV−BLを担持するG1トリ3羽それぞれが、特有の大きさの接合部フラグメントを有しており、導入遺伝子は3つの異なるゲノムの部位に組込まれていることが示唆された。G1を非遺伝子導入雌鳥と交配させ、ヘミ接合性のG2を入手した。表2(上記)にて理解されるように、組込まれた単一の導入遺伝子のメンデル型分離について予測されるように、のNLB−CMV−BLを有するG1雄鳥由来の子孫の50.8%が遺伝痔導入であった。G2子孫由来で、HindIIIで消化したDNAのサザン分析によって、遺伝子導入の親から生じたものとサイズが類似している接合部フラグメントが検出され、導入遺伝子がインタクトに伝達されていたことが示された。
【0165】
実施例9
導入遺伝子についてホモ接合性のG3子孫についてのスクリーニング
導入遺伝子についてホモ接合性である遺伝子導入ニワトリを入手するために、同じ部位に組込まれたNLB−CMV−BLを有するG2ヘミ接合性のトリ(例えば、同じG1オスの子孫)を交配させた。2つのグループが生まれた:第1のグループはG1 4133から生じた雌鳥および雄鳥であって、第2のグループはG1 5677雌鳥由来のものである。Taqmanアッセイを使用して、検量線を使用し、G3子孫においてneo耐性導入遺伝子を定量的に検出した。サザン分析によって決定されている、導入遺伝子についてヘミ接合性であるG1遺伝子導入体4133オス由来で既知のゲノムDNA量を使用して、検量線を構築した。検量線は、導入遺伝子の合計コピー数103〜1.6×104の範囲であるか、あるいは二倍体ゲノムあたりの導入遺伝子コピー数0.2〜3.1の範囲であった。対数期の間は反応成分が限定されているので、増幅は非常に効率的であって、所定のコピー数について再現可能な値を与えた。コピー数が互いに2倍異なる検量線の間で、再現可能な1サイクルの差異が存在した。
【0166】
G3子孫における導入遺伝子アレルの数を決定するために、DNAを増幅し、標準品と比較した。非遺伝子組換え由来のDNAは、増幅しなかった。導入遺伝子アレルについてホモ接合性であるトリは、アレルについてヘミ接合性であるものより1サイクル早く増幅が開始するプロットを生じた。配列検出プログラムは、サンプルの増幅プロットが有意な増加を示す検量線およびサイクル閾値(Ct)に基づいて、未知のサンプル中のアレル数を産出可能である。データを下記の表3にて示す。
【0167】
Taqmanコピー数分析を確認するために、PstIで消化したDNA、およびneo耐性遺伝子に相補的なプローブを使用するサザンブロッティングによって、選択したトリのDNAを分析して、0.9kbのフラグメントを検出した。小さなDNAのゲルからメンブランへの移動はより定量的であるので、小さなフラグメントの検出も選択した。0.9kbのバンドのシグナル強度は、Taqmanアッセイによって決定したG3遺伝子導入トリのコピー数によく対応した。サザンブロッティングによって分析した、さらに18羽のG3遺伝子導入トリのコピー数もまた、Taqmanによって決定したものと一致した。4133系統について、33羽の全子孫を分析し、9羽(27.3%)が非遺伝子導入体であって、16羽(48.5%)がヘミ接合性であって、8羽(24.2%)がホモ接合性であった。5657系統について、10羽の全子孫を分析し、5羽(50.0%)が非遺伝子導入体であって、1羽(10.0%)がヘミ接合性であって、4羽(40.0%)がホモ接合性であった。4133系統G3子孫について、非遺伝子組換え、ヘミ接合体およびホモ接合体の観察された割合は、χ2試験によって決定した1:2:1の期待された比率とは実質的に異なっていた(Pは0.05以下である)。5657系統の子孫は、期待した分布を有していなかったが、これは試験した子孫の数が少ないことに起因したといえる(Harvey et al., "Consistent production of transgenic chickens using replication deficient retroviral vectors and high-throughput screening procedures" (February 2002) Poultry Science 81:202-212)。
【0168】
【表4】
【0169】
実施例10
pNLB−MDOT−EPOベクターのためのベクター構築
本明細書の実施例1(ベクター構築)の教示に従って、EPOコード配列をBLコード配列に置換し、pNLB−MDOT−EPOベクターを作製した(図8B)。CMVプロモーターを使用する代わりに、MDOTを使用した(図13)。MDOTは、オボムコイド(MD)およびオボトランスフェリン(TO)プロモーター両方由来のエレメントを含む合成プロモーターである(pNLB−MDOT−EPOベクター、別名をpAVIJCR−A145.27.2.2という)。
【0170】
ニワトリ(Gallus gallus)のオバルブミン、リゾチーム、オボムコイドおよびオボトランスフェリンタンパク質から作製したコドン使用頻度表と一緒にWisconsin PackageのBACKTRANSLATE(登録商標)プログラム, version 9.1 (Genetics Computer Group, Inc., Madison, WI)を使用して、雌鳥輸卵管の最適化されたコドン使用頻度に基づくヒトEPOについてのDNA配列を作製した。DNA配列を合成し、契約ベースのIntegrated DNA Technologies,Coralville,IowaによってpCRII−TOPO(Invitrogen)の3’側突出Tにクローニングした。次いで、Hind IIIおよびFse Iを用いてpEpoMMからEPOコード配列を除去し、0.8%アガロース−TAEゲルから精製し、Hind IIIおよびFse Iで消化し、アルカリホスファターゼで処理したpCMV−IFNMMにライゲーションした。得られたプラスミドはpAVIJCR−A137.43.2.2であって、サイトメガロウイルス即時型プロモーター/エンハンサーおよびSV40ポリA部位によって制御されるEPOコード配列を含む。プラスミドpAVIJCR−A137.43.2.2をNcoIおよびFseIを用いて消化し、適切なフラグメントをNcoIおよびFseIで消化したpMDOTIFNのフラグメントにライゲーションし、MDOTプロモーターによって駆動するEPOを含むpAVIJCR−A137.87.2.1を入手した。MDOTプロモーターによって制御されるEPOコード配列をNLBレトロウイルスプラスミドにクローニングするために、プラスミドpALVMDOTIFNおよびpAVIJCR−A137.87.2.1をKpnIおよびFseIを用いて消化した。0.8%アガロース−TAEゲルから適切なDNAフラグメントを精製し、次いで、ライゲーションし、DH5 α細胞に形質転換した。得られたプラスミドは、pNLB−MDOT−EPOである(別名をpAVIJCR−A145.27.2.2という)。
【0171】
実施例11
EPOを発現する遺伝子導入ニワトリおよび完全遺伝子導入G1ニワトリの作製
NLB-CMV-BL(実施例2を参照のこと)について記載するように、NLB−MDOT−EPO形質移入粒子の作製を実施した。Speksnijder手順(米国特許第5,897,998号)に従って約300個の白色レグホン卵に窓を作り、次いで、卵1個あたり約7×104の形質導入粒子を注入した。注入から21日後に卵が孵化した。孵化から1週間後のヒヨコから血清サンプルを収集し、EPOレベルをEPO ELISAによって測定した。精子中にEPO導入遺伝子を含むG0雄鳥についてスクリーニングするために、Chelex−100 extraction (Walsh et al., 1991)によって雄鳥血清サンプルからDNAを抽出した。次いで、”neo for−1”(5’−TGGATTGCACGCAGGTTCT−3’;配列番号5)および”neo rev−1”(5’−TGCCCAGTCATAGCCGAAT−3’;配列番号6)プライマーならびにFAM標識化NEO−PROBE1(5’−CCTCTCCACCCAAGCGGCCG−3’;配列番号7)を使用して、DNAサンプルを7700 Sequence Detector(Perkin Elmer)上でTaqman(登録商標)分析に供して、導入遺伝子を検出した。精子サンプルにおける最も高い導入遺伝子レベルを有するG0雄鳥8羽を、非遺伝子導入SPAFAS(白色レグホン)雌鳥と人工受精によって交配させた。上記のTaqman(登録商標)分析によって、導入遺伝子の存在について血液DNAサンプルをスクリーニングした。
【0172】
1054羽の子孫のうち、16羽のヒヨコが遺伝子導入体(G1トリ)であることを見出した。ヒトEPOの存在について、EPO ELISAによってニワトリ血清を試験した。EPOは約70ng/ml存在した。ヒトEPOの存在について、EPO ELISAによってG1雌鳥由来の卵の卵白も試験し、約70ng/mlのヒトEPOを含むことを見出した。細胞培養アッセイにおいて、ヒトEPO応答性細胞株(HCD57マウス赤血球細胞)を試験した場合、卵中に存在するEPO(すなわち、ヒトEPOについての最適化されたコード配列由来)が生物学的に活性であることを見出した。
【0173】
実施例12
pNLB−CMV−IFNのためのベクター構築
実施例1の教示に従って、IFNコード配列を実施例1のBLコード配列に置換し、pNLB−CMV−IFNベクターを作製した。
【0174】
最適化されたコード配列を作製し、ここで、卵白タンパク質オバルブミン、リゾチーム、オボムコイドおよびオボトランスフェリンにおいて見出される特定のアミノ酸それぞれについて最も頻繁に使用されるコドンを、本発明のベクターに挿入する最適化されたヒトIFN−α 2bコード配列の設計において使用した。より詳細には、最適化されたヒトIFN−α 2bについてのDNAコード配列は、雌鳥輸卵管の最適化されたコドン使用頻度に基づいており、ニワトリ(Gallus gallus)のオバルブミン、リゾチーム、オボムコイドおよびオボトランスフェリンタンパク質から作製したコドン使用頻度表と一緒にWisconsin PackageのBACKTRANSLATE(登録商標)プログラム, version 9.1 (Genetics Computer Group, Inc., Madison, WI)を使用して作製した。例えば、4つの卵白タンパク質におけるアミノ酸アラニンの4つのコドンの使用頻度の割合は、GCUについて34%、GCCについて31%、GCAについて26%、およびGCGについて8%であった。従って、GCUを、最適化されたヒトIFN−α 2bコード配列において、大部分のアラニンについてコドンとして使用した。最適化されたヒトIFN−α 2bについての遺伝子を含むベクターを、家禽の組織および卵において形質導入された家禽由来のIFN−α 2b(TPD IFN−α 2b)を発現する形質導入トリを産生するために使用した。
【0175】
Pfuポリメラーゼ(Stratagene, La Jolla,Calif.)を用いたPCR(94℃、1分間;50℃、30分間;および72℃、1分間を20サイクル、ならびに10秒)によって、下記の表4にて列挙した鋳型およびプライマーオリゴヌクレオチドを増幅した。12%ポリアクリルアミド−TBEゲルから、「粉砕および浸漬」法(Maniatis et al.1982)によってPCR産物を精製し、次いで、プライマーとしてIFN−1およびIFN−8(表4を参照のこと)のみを使用する増幅反応中に鋳型として組み入れた。Hind IIIおよびXba Iを用いて得られたPCR産物を消化し、2%アガロース−TAEゲルから精製し、次いで、Hind IIIおよびXba Iで消化し、アルカリホスファターゼで処理したpBluescript KS(Stratagene)にライゲーションし、プラスミドpBluKSP−IFNMagMaxを生じさせた。ユニバーサルT7およびT3プライマーを使用して、ABI PRISM 377 DNAシークエンサー(Perkin−Elmer, Foster City, Calif.)上でのサイクル配列決定によって、両方の鎖を配列決定した。元のオリゴヌクレオチドプライマー鋳型に由来するpBluKSP−IFN上の変異を、Transformer Site−Directed Mutagenesis Kit (Clontech, Palo Alto, Calif.)を用いた部位特異的変異誘発によって訂正した。次いで、Hind IIIおよびXba 1を用いて、IFNコード配列を訂正したpBluKSP−IFNから除去し、0.8%アガロース−TAEゲルから精製し、Hind IIIおよびXba Iで消化し、アルカリホスファターゼで処理したpCMV−BetaLa−3B−dHにライゲーションした。得られたプラスミドはpCMV−IFNであって、サイトメガロウイルス(CMV)媒介即時型プロモーターおよびSV40ポリA部位によって制御されるIFNコード配列を含んでいた。CMVプロモーター/エンハンサーによって制御されるIFNコード配列をNLBレトロウイルスプラスミドにクローニングするために、ClaIおよびXbaIを用いてpCMV−IFNをまず消化し、次いで、DNAポリメラーゼのクレノウフラグメント(New England BioLabs,Beverly,Mass.)を用いて両方の末端を埋めた。NdeIおよびKpnIを用いてpNLB−adapterを消化し、T4ポリメラーゼ(New England BioLabs)によって両方の末端を平滑にした。0.8%アガロース−TAEゲル上で適切なフラグメントを精製し、次いで、ライゲーションし、DH5 α細胞に形質転換した。得られたプラスミドがpNLB−adapter−CMV−IFNである。次いで、MluIを用いてこのプラスミドを消化し、BlpIを用いて部分的に消化し、適切なフラグメントをゲル精製した。MluIおよびBlpIを用いてpNLB−CMV−EGFPを消化し、次いで、アルカリホスファターゼ処理し、ゲル精製した。pNLB−adapter−CMV−IFNのMluI/BlpI部分フラグメントをpNLB−CMV−EGFPのMluI/BlpI消化由来の大きなフラグメントにライゲーションし、pNLB−CMV−IFNを作製した。
【0176】
【表5】
【0177】
【表6】
【0178】
実施例13
IFNを発現する遺伝子導入ニワトリおよび完全遺伝子導入G1ニワトリの作製
実施例2の手順に従って、pNLB−CMV−IFN の形質導入粒子を作製した。Speksnijder手順(米国特許第5,897,998号)に従って、約300個の白色レグホン(系統0)卵に窓を作り、次いで、卵1個あたり7×104の形質導入粒子を注入した。卵は注入から21日後に孵化した。孵化から1週間後のヒヨコから血清サンプルを収集し、ヒトIFNレベルをIFN ELISAによって測定した。
【0179】
精子中にEPO導入遺伝子を含むG0雄鳥についてスクリーニングするために、Chelex−100 extraction (Walsh et al., 1991)によって雄鳥血清サンプルからDNAを抽出した。次いで、”neo for−1”(5’−TGGATTGCACGCAGGTTCT−3’;配列番号5)および”neo rev−1”(5’−TGCCCAGTCATAGCCGAAT−3’;配列番号6)プライマーならびにFAM標識化NEO−PROBE1(5’−CCTCTCCACCCAAGCGGCCG−3’;配列番号7)を使用して、DNAサンプルを7700 Sequence Detector(Perkin Elmer)上でTaqman(登録商標)分析に供して、導入遺伝子を検出した。精子サンプルにおける最も高い導入遺伝子レベルを有するG0雄鳥8羽を、非遺伝子導入SPAFAS(白色レグホン)雌鳥と人工受精によって交配させた。
【0180】
上記のTaqman(登録商標)分析によって、導入遺伝子の存在について、血液DNAサンプルをスクリーニングした。1597羽の子孫のうち、1羽の雄鳥が遺伝子導入体(別名を「Alphie」という)であることを見出した。hIFNの存在についてAlphieをhIFN ELISAによって試験し、hIFNが200ng/mlで存在した。
【0181】
非遺伝子導入SPAFAS(白色レグホン)雌鳥の人工授精のために、Alphieの精子を使用した。Tagman(登録商標)分析によって、202羽の子孫のうち106羽が導入遺伝子を含んでいることを検出した。メンデルの遺伝様式に従っており、Alphieが遺伝子導入体であることを示した。
【0182】
実施例14
遺伝子導入家禽由来のインターフェロン−α 2b(TPD IFN−α 2b)の炭水化物分析
実験的な証拠によって、トリ由来のインターフェロン−α 2b(すなわち、TPD IFN−α 2b)において新たな糖鎖付加パターンが明らかになった。TPD IFN−α 2は、ヒト末梢血白血球由来のインターフェロン−α 2(PBL IFN−α 2b)または天然のヒトインターフェロン−α 2(天然hIFN)では通常見られない新たな糖鎖付加パターンを示しており、新たなグリコフォームを含む(バンド4および5はα−Galが伸長された二糖であり;図9を参照のこと)。TPD IFN−α 2bはまた、ヒトPBL IFN−α 2bに類似し、ニワトリにおいてヒト形態より効率的に産生されるO結合型糖鎖構造を含む。では通常見られない新たな糖鎖付加パターンを示しており、新たなグリコフォームを含む(バンド4および5はα−Galが伸長された二糖であり;図9を参照のこと)。TPD IFN−α 2bはまた、ヒトPBL IFN−α 2bに類似し、ニワトリにおいてヒト形態より効率的に産生されるO結合型糖鎖構造を含むことを見出した。
【0183】
ヒトIFN−α 2bについてのコード配列を最適化し(実施例12、上記)、組換えIFN−α 2bコード配列を生じさせた。次いで、ニワトリにおいてTPD IFN−α 2bを産生させた(実施例13、上記)。単糖分析およびFACE分析を含む炭水化物分析によって、糖構造およびタンパク質の糖鎖付加パターンが明らかになった。あるいは、TPD IFN−α 2bは、以下の単糖残基を示す:N−アセチル−ガラクトサミン(NAcGal)、ガラクトース(Gal)、N−アセチル−グルコサミン(NAcGlu)およびシアル酸(SA)。しかし、TPD IFN−α 2b中にはN結合型糖鎖付加は存在しない。代わりに、TPD IFN−α 2bは、Thr−106にてO−グリコシル化される。この型の糖鎖付加はヒトIFN−α 2に類似しており、106位のThr残基はIFN−α 2に特有である。天然のIFN−αに類似であるTPD IFN−α 2bは、マンノース残基を有していない。FACE分析は種々の糖残基を表す6つのバンド(図9)を明らかにし、ここで、バンド1、2および3は、それぞれ非シアル酸付加、シアル酸付加および二シアル酸付加されている(図10)。シアル酸(CA)結合はガラクトース(Gal)に対してアルファ2−3であり、N−アセチル−ガラクトサミン(NAcGal)に対してアルファ2−6である。バンド6は、非シアル酸付加四糖を表している。バンド4および5は、ヒトPBL IFN−α 2bまたは天然のヒトIFN(天然hIFN)において見られないアルファ−ガラクトース(アルファ−Gal)伸長型二糖である。図10は、TPD IFN−α 2b(卵白hIFN)とヒトPBL IFN−α 2b(天然hIFN)の比較を示す。微小のバンドがTPD IFN−α 2bにおけるバンド3と4との間、およびバンド4と5との間に存在している(下記参照)。
【0184】
タンパク質がThr−106にて以下の特定の残基でO−グリコシル化されていることを見出した:
式(i):
【化22】
式(ii):
【化23】
式(iii):
【化24】
式(iv):
【化25】
式(v):
【化26】
式(vi):
【化27】
[式中、Gal=ガラクトース、
NAcGal=N−アセチル−ガラクトサミン、
NAcGlu=N−アセチル−グルコサミンおよび
SA=シアル酸]。
【0185】
割合は、
式(i):
【化28】
が約20%であって;
式(ii):
【化29】
が約29%であって;
式(iii):
【化30】
が約9%であって;
式(iv):
【化31】
が約6%であって;
式(v):
【化32】
が約20%であって;
式(vi):
【化33】
が約12%であった。
【0186】
微小のバンドがバンド3と4との間、およびバンド4と5との間に存在し、TPD IFN−α 2bにおいて約17%を占めた。
【0187】
実施例15
トリ細胞における、EMCV IRESを使用したプラスミド形質移入およびレトロウイルス形質導入からのMAbsの発現
脳心筋炎ウイルス(EMCV)由来のIRESをLCおよびHCコード配列の間に配置することによってヒトモノクローナル抗体の軽鎖(LC)および重鎖(HC)を単一のベクター、pCMV−LC−emcvIRES−HCから発現させた(Jang et al. (1988) ”A segment of the 5' nontranslated region of encephalomyocarditis virus RNA directs internal entry of ribosomes during in vitro translation” J. Virol. 62:2636-2643も参照のこと)。
【0188】
2つの別々のベクターからのモノクローナル抗体の発現を試験するために、CMVプロモーターに連結したLCまたはHCをLMH/2a細胞、エストロゲン応答性のニワトリ肝細胞株に同時形質移入した(Binder et al. (1990) "Expression of endogenous and transfected apolipoprotein II and vitellogenin II genes in an estrogen responsive chicken liver cell line" Mol. Endocrinol. 4:201-208も参照のこと)。pCMV−LCおよびpCMV−HCの同時形質移入が392 ng/mlのMAbsを生じた一方、pCMV−LC−emcvIRES−HCの形質移入が185 ng/mlのMAbを生じたことを、MAb ELISAによって検出した。
【0189】
モロニーマウス白血病ウイルス(MLV)に基づくレトロウイルスベクターに、CMV−LC−emcv−HCカセットを挿入し、pL−CMV−LC−emcvIRES−HC−RN−BGを作製した。LMH細胞(Kawaguchi et al. (1987) "Establishment and characterization of a chicken hepatocellular carcinoma cell line, LMH" Cancer Res. 47:4460-4464も参照のこと)、LMH/2aの親株を標的細胞として使用したが、これはこれらの細胞がネオマイシン耐性でないからである。LMH細胞をL−CMV−LC−emcvIRES−HC−RN−BGレトロウイルスベクターで形質導入し、ネオマイシンを用いて選択し、数週間継代した。LMH細胞を別々に形質導入し、親のMLVベクター、LXRHを用いてネオマイシン選択した。LXRH細胞由来の培地はMAbについて陰性であったが、L−CMV−LC−emcvIRES−HC−RN−BGを形質導入した細胞由来の培地は、22ng/mlのMAbを含んでいた。
【0190】
実施例16
MAbを発現する形質導入ニワトリおよび完全形質導入G1ニワトリの作製
実施例15のCMV−LC−emcv−HCカセットを、実施例1のpNLB−CMV−BLのCMV−BLカセットに置換することによって、pNLB−CMV−LC−emcv−HCベクターを作製した。
【0191】
実施例2の手順に従って、pNLB−CMV−LC−emcv−HCの形質導入粒子を作製した。Speksnijder手順(米国特許第5,897,998号)に従って約300個の白色レグホン卵に窓を作り、次いで、卵1個あたり約7×104の形質導入粒子を注入した。注入から21日後に卵が孵化した。孵化から1週間後のヒヨコから血清サンプルを収集し、EPOレベルをEPO ELISAによって測定した。
【0192】
Taqman(登録商標)分析によって、精子中にEPO導入遺伝子を含むG0雄鳥を同定した。血清サンプル中に最も高いレベルの導入遺伝子を有する雄鳥を、人工授精によって非遺伝子導入SPAFAS(白色レグホン)雌鳥と交配させた。
【0193】
1000羽の子孫についてスクリーニングし、10羽超のヒヨコが遺伝子導入体(G1トリ)であることを見出した。MAbの存在について、ヒヨコ血清をELISAによって試験した。MAbが10μg/ml血清より多い量で存在することを見出す。MAbの存在について、G1雌鳥由来の卵白もELISAによって試験し、10μg/ml血清より多い量で存在することを見出す。
【0194】
実施例17
pNLB−CMV−hG−CSFの構築
このベクターは、実施例12のpNLB−CMV−IFNベクターのIFNコード領域をG−CSFのコード配列で効率的に置換する。プライマー5’GCSF (ggggggaagctttcaccatggctggacctgcca;配列番号32)および3’GCSF (actagacttttcagggctgggcaaggtggcg;配列番号33)を用いて、pORF9−hG−CSFb(カタログ番号porf−hgcsfb,Invivogen,San Diego,CA)からhG−CSF ORF(ヒト顆粒球コロニー刺激因子読み取り枠)を増幅して、642塩基対(bp)のPCR産物を作製した。pNLB−CMV−IFN alpha−2bにおいて見出されるものと一致するG−CSFコード配列の3’側コード配列を有するpNLB−CMV−hG−CSF構築物を提供するために、プライマー5’GCSF−NLB(ccagccctgaaaagtctagtatggggattggtg;配列番号34)および3’GCSF−NLB (gggggggctcagctggaattccgcc;配列番号35)を使用するPCRによって、pNLB−CMV−IFN alpha−2bの86bpフラグメント(IFNコード配列の3’末端に隣接して存在する)を増幅した。2つのPCR産物(642bpおよび86bp)を混合し、プライマー5’GCSFおよび3’GCSF−NLBを用いたPCR増幅によって融合させた。説明書に従って、PCR産物をpCR(登録商標)4Blunt−TOPO(登録商標)プラスミドベクター(Invitrogen)にクローニングし、DH5α−E細胞にエレクトロポレーションし、pFusion−hG−CSF−NLBを作製した。Hind IIIおよびBlp Iを用いてpFusion−hG−CSF−NLBを消化し、、690bpのG−CSFフラグメントをゲル精製した。Blp Iを用いて消化することによって、pNLB−CMV−IFN alpha−2bからIFN alpha−2bコード配列を除去した。次いで、ベクターを再度消化し、IFNをコードする挿入部分を欠損したクローンを選択し、pNLB−CMV−delta hIFN alpha−2bを作製した。Blp Iを用いてpNLB−CMV−delta IFN alpha−2bを消化し、Hind IIIを用いて部分的に消化し、8732bpのBlp I−Hind IIIベクターフラグメントをゲル精製した。690bpのHind III/Blp I G−CSFフラグメントに、8732bpのフラグメントをライゲーションし、pNLB−CMV−G−CSFを作製した。配列決定することによって、G−CSF ORFを確認した。
【0195】
実施例18
ヒト顆粒球コロニー刺激因子(hG−CSF)を発現する遺伝子導入ニワトリの作製
実施例2においてNLB−CMV−BLについて記載したように、NLB−CMV−hG−CSF形質導入粒子の作製を実施した。ステージXの卵277個の胚に、7μlのNLB−CMV−hG−CSF形質導入粒子を注入した(力価は2.1×107〜6.9×107であった)。86羽のヒヨコが孵化し、性的に成熟するまで飼育した。60羽のヒヨコがG−CSFについて陽性であって、性別に分けた:30羽のオスおよび30羽のメス。hG−CSFについて、21羽の雌鳥由来の卵白をELISAによってアッセイした。5羽の雌鳥が0.05μg/ml〜0.5μg/mlの範囲の有意なレベルのhG−CSFタンパク質を有していることを見出した。
【0196】
Chelex−100 extraction (Walsh et al., 1991)によって雄鳥血清サンプルからDNAを抽出した。次いで、プライマーSJ−G−CSF(cagagcttcctgctcaagtgctta)およびSJ−G−CSF rev(ttgtaggtggcacacagcttct)ならびにSJ−G−CSFプローブ(agcaagtgaggaagatccagggcg)を使用して、DNAサンプルを7700 Sequence Detector (Perkin Elmer)上でTaqman(登録商標)分析に供して、導入遺伝子を検出した。精子サンプルにおける最も高い導入遺伝子レベルを有するG0雄鳥8羽を、非遺伝子導入SPAFAS(白色レグホン)雌鳥と人工受精によって交配させた。
【0197】
上記のTaqman(登録商標)分析によって、導入遺伝子の存在について、血液DNAサンプルをスクリーニングした。2264羽の子孫のうち、13羽の雄鳥が遺伝子導入体であることを見出し、それぞれがG−CSFの存在について陽性であって、ELISAによって測定したところ、ある雌鳥は血清において約136.5ng/mlのG−CSF、卵白において5.6μg/mlのG−CSFを有していた。
【0198】
XGF498と同じ系統である2羽のG1雄鳥(QGF910およびDD9027)(従って、ゲノム中、同一の位置に挿入された同一の導入遺伝子を有する)を非遺伝子導入雌鳥と交配させ、家禽由来のG−CSFを含む卵を産むメスの子孫を作製した。QGF910およびDD9027子孫の卵から卵白を収集し、ミリグラムの分量のG−CSFを精製した。実施例20において開示したように得られた家禽由来のG−CSFの代表的な糖鎖付加パターンを決定した。
【0199】
実施例19
ヒト細胞傷害性抗原4−Fc融合タンパク質(CTLA4−Fc)を発現する遺伝子導入ニワトリの作製
2005年1月31日に出願された米国特許第11/047,184号(出典明示によってその全体を本願明細書にて援用する)にて開示されているように、pNLB−1.8OM−CTLA4Fc and pNLB−3.9OM−CTLA4Fcを構築した。実施例2においてpNLB−CMV−BLについて記載するように、pNLB−1.8OM−CTLA4FcおよびpNLB−3.9OM−CTLA4Fc形質導入粒子の作製を実施した。7μlのpNLB−1.8OM−CTLA4Fc形質導入粒子を193個の白色レグホン卵に注入し(力価は〜4×106であった)、72羽のヒヨコが孵化した。7μlのpNLB−3.9OM−CTLA4Fc形質導入粒子を199個の白色レグホン卵に注入し(力価は〜4×106であった)、20羽のヒヨコが孵化した。
【0200】
CTLA4−Fcの存在について、pNLB−1.8OM−CTLA4Fc粒子を用いて作製した30羽の雌鳥由来の卵白をELISAによってアッセイした。1羽の雌鳥が、0.132μg/mlの平均レベル(5個の卵をアッセイした)で、卵白において有意なCTLA4−Fcタンパク質レベルを有していることを見出した。CTLA4−Fcの存在について、pNLB−3.9OM−CTLA4Fc粒子を用いて作製した7羽の雌鳥由来の卵白をELISAによってアッセイした。2羽の雌鳥が、一方の雌鳥について0.164μg/mlの平均レベル(5個の卵をアッセイした)、もう一方の陽性の雌鳥について0.123μg/mlの平均レベル(5個の卵をアッセイした)で、卵白において有意なCTLA4−Fcタンパク質レベルを有していることを見出した。
【0201】
実施例20
遺伝子導入家禽由来G−CSFの炭水化物分析
当業者に周知である以下の分析技術を用いることによって、TPD G−CSFのオリゴ糖構造を決定した。ペプチド骨格から遊離させた後に、オリゴ糖に対して、MALDI−TOF−MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析)分析およびESI MS/MS(エレクトロスプレーイオン化タンデム質量分析)を実施した。O結合型オリゴ糖をタンパク質から化学的に遊離させ、無水DMSO下でのヨウ化メチルとの反応を含むNaOH法を使用して、パーメチル化(permethylated)させ、分析の直前にクロロホルムによって抽出した。インタクトでグリコシル化されたG−CSFに対して直接質量分析を実施した。HPLC分析を使用して、多糖構造に対しても分析を実施した。つまり、タンパク質骨格からの遊離の後に、HPLCを使用して構造を分離した。特定の酵素を用いて各多糖種のサンプルを消化し、消化産物をHPLCによって分析し、当業者に理解される構造決定を提供した。
【0202】
決定した構造は以下:
【化34】
である。興味深いことに、構造Cおよび構造Dは、図において示す構造Eの前駆体形態であり得る。限定するものではないが、構造Aは家禽由来のグリコシル化されたG−CSF上に約20%〜約40%の確率で存在し、構造Bは家禽由来のグリコシル化されたG−CSF上に約5%〜約25%の確率で存在し、構造Cは家禽由来のグリコシル化されたG−CSF上に約10%〜約20%の確率で存在し、構造Dは家禽由来のグリコシル化されたG−CSF上に約5%〜約15%の確率で存在し、構造Eは家禽由来のグリコシル化されたG−CSF上に約1%〜約5%の確率で存在し、構造Fは家禽由来のグリコシル化されたG−CSF上に約10%〜約25%の確率で存在し、構造Gは家禽由来のグリコシル化されたG−CSF上に約20%〜約30%の確率で存在すると推定された。
【0203】
当業者に容易に利用可能な方法を使用して、アルビトール(内部標準)を用いてスパイクし、加水分解し、N−アセチル化し、かつTMS誘導体化した家禽由来のG−CSFに対して、GC/MS(ガスクロマトグラフィー質量分析)によって単糖分析を実施した。誘導体化したサンプルを同様に誘導体化したサンプルの標準混合物と比較した。ケトデオキシノヌロソン酸でスパイクし、凍結乾燥させ、次いで加水分解し、脱塩し、再度凍結乾燥させた後で、家禽由来のG−CSFのシアル酸分析を実施した。適切な標準品を使用するDionex BioLCシステム上で、サンプルの分析を実施した。表5にて理解されるように、これらの分析によって、ガラクトース、グルコース、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルグルコサミンおよびシアル酸(N−アセチルアセチルノイラミン酸)の存在が示された。表5におけるデータは、HPAEC−PAD分析によって得られた予備的なデータ(かなりの割合のN−アセチルグルコサミンが存在すると決定していた)に取って代わるものである。
【0204】
【表7】
【0205】
TFA中で加水分解し、ボロジュウテリウム化ナトリウム中で還元した家禽由来のG−CSFのパーメチル化グルカンサンプルに対して、結合分析を実施した。メタノール:氷酢酸(9:1)を3回添加することによってホウ酸を除去し、凍結乾燥、次いで、無水酢酸によってアセチル化した。クロロホルムを用いた抽出によって精製した後で、サンプルをGC/MSによって試験した。同じ条件下で、標準品混合物も流した。結合を以下のように決定した:
i.シアル酸結合は、ガラクトースに対して2〜3個、N−アセチルガラクトサミンに対して2〜4個である;
ii.ガラクトース結合は、N−アセチルガラクトサミンに対して2〜3個、N−アセチルグルコサミンに対して2〜4個である;
iii.N−アセチルグルコサミン結合は、N−アセチルガラクトサミンに対して2〜6個である。
【0206】
実施例21
家禽由来G−CSF(TPD G−CSF)のインビトロにおける細胞増殖活性
NFS−60細胞増殖アッセイを使用して、TPD G−CSFのインビトロでの生物学的活性を示した。つまり、GM−CSFを含む培地中で、NFS−60細胞を維持した。コンフルエントな細胞を回収し、洗浄し、培地のみを含むウェル1つあたり105の細胞密度でプレーティングした。TPD G−CSFおよび細菌由来のヒトG−CSF(すなわち、Neupogen(登録商標))を培地中に段階希釈し、3連のセパレートウェルに添加した。3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)の代謝還元によって細胞増殖を決定し、分光測定によって定量化した。Neupogen(登録商標)のED50を精製したトリ由来のG−CSFと比較することによって、トリ由来のG−CSFの特異的な活性を決定した。14日間にわたって、TPD G−CSFの特異的な活性を、細菌由来のG−CSF Neupogen(登録商標)の活性を十分に上回ることを決定した。図17を参照のこと。
【0207】
本明細書に記載の全ての文献(例えば、米国特許、米国特許出願、刊行物)を、出典明示によって援用する。本発明の種々の修飾および変動は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者に明らかである。本発明を、本発明の好ましい実施態様と関連させて記載しているが、権利を主張する本発明は、そのような特定の実施態様に限定されるものではない。さらに、本明細書に記載し、当業者に明らかな本発明を実施する態様の種々の改変も、上記の特許請求の範囲に含まれることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0208】
【図1】図1Aおよび1Bは、オバルブミンプロモーターセグメントおよびコード配列、遺伝子X(これは、外因性タンパク質Xをコードする)を含む、オバルブミンプロモーター発現ベクターを示す。Xは、目的の外因性遺伝子または外因性タンパク質のいずれかを示す。
【図2−1】図2A、2B、2Cおよび2Dは、オバルブミンプロモーターおよびコード配列、遺伝子X(これは、外因性タンパク質Xをコードする)を含む、レトロウイルスベクターを示す。Xは、目的の外因性遺伝子または外因性タンパク質のいずれかを示す。
【図2−2】図2Eは、2Aおよび2Bのベクターへの挿入用の外因性遺伝子を増幅するための方法を示す。
【図2−3】図2Fは、コード配列、遺伝子Xの発現を制御するオバルブミンプロモーター、および第2のコード配列、遺伝子Yの発現を可能にする配列内リボソーム進入部位(IRES)エレメントを含むレトロウイルスベクターを示し、遺伝子XおよびYは任意の目的の遺伝子を示す。
【図3】図3Aおよび3Bは、それぞれALV由来のベクター、pNLBおよびpNLB−CMV−BLの略図を示す。NLBは全体が配列決定されていないので、bp(塩基対)の測定値は、公開されているデータ(Cosset et al., 1991; Thoraval et al., 1995) および本明細書で考察するデータからの推定されるものである。ベクターはこれら図から明らかな一方、ニワトリゲノムに組み込まれている。
【図4−1】図4Aおよび4Bは、キメラおよび遺伝子導入ニワトリの血清中のβ−ラクタマーゼ(ラクタマーゼ)の量を示す。図4Aにおいて、NLB−CMV−BL導入遺伝子で形質導入したG0ニワトリの血清中の生理活性ラクタマーゼの濃度を、パッチ後8ヶ月目に測定した。世代、性別およびウィングバンド数を示す。ラクタマーゼの血清濃度を、G1遺伝子導入ニワトリについてパッチ後6〜7ヶ月に測定した。矢印は、雄鳥2395から生まれたG1ニワトリを示す。図4Bにおいて、ラクタマーゼの血清濃度を、G1およびG2遺伝子導入ニワトリについて測定した。矢印は、雌鳥5657または雄鳥4133から生まれたG2を示す。ニワトリ4133、5308および5657からのサンプルは、図4Aに記載のものと同じである。5657から生まれたG2のトリ由来のサンプルは、パッチ後3〜60日目で収集した。4133から生まれたG2のトリ由来のサンプルは、パッチ後3ヶ月目で収集した。
【図4−2】図4Aおよび4Bは、キメラおよび遺伝子導入ニワトリの血清中のβ−ラクタマーゼ(ラクタマーゼ)の量を示す。図4Aにおいて、NLB−CMV−BL導入遺伝子で形質導入したG0ニワトリの血清中の生理活性ラクタマーゼの濃度を、パッチ後8ヶ月目に測定した。世代、性別およびウィングバンド数を示す。ラクタマーゼの血清濃度を、G1遺伝子導入ニワトリについてパッチ後6〜7ヶ月に測定した。矢印は、雄鳥2395から生まれたG1ニワトリを示す。図4Bにおいて、ラクタマーゼの血清濃度を、G1およびG2遺伝子導入ニワトリについて測定した。矢印は、雌鳥5657または雄鳥4133から生まれたG2を示す。ニワトリ4133、5308および5657からのサンプルは、図4Aに記載のものと同じである。5657から生まれたG2のトリ由来のサンプルは、パッチ後3〜60日目で収集した。4133から生まれたG2のトリ由来のサンプルは、パッチ後3ヶ月目で収集した。
【図5】図5は、雌鳥5657(図5A)または雄鳥4133(図5B)が有する導入遺伝子座を含むニワトリの系図を示す。2395は多重導入遺伝子座を担持する雄鳥であった。2395を非遺伝子導入雌鳥と交配させて、ニワトリゲノムの特有の位置に導入遺伝子をそれぞれ担持する3羽の子孫を生じさせた。単純にするために、発現データが示されなかった遺伝子導入の子孫および非遺伝子導入の子孫は、系図から除いている。バンド数は、以下の記号を示す:○ 雌鳥;□ 雄鳥;● NLB-CMV-BL導入遺伝子を担持する雌鳥;■ NLB-CMV-BLを担持する雄鳥。
【図6】図6は、雌鳥5657およびその子孫の卵白中のβ−ラクタマーゼ(ラクタマーゼ)を示す。図6Aにおいて、雌鳥5657およびその遺伝子導入の子孫由来の卵白を活性ラクタマーゼについてアッセイしている。コントロールは、未処理の雌鳥であって、交配相手は雌鳥5657から生まれた非遺伝子導入体G2である。2000年3月に収集した。矢印は雌鳥5657から生まれたG2を示している。図6Bにおいて、導入遺伝子(ヘミ接合性)1コピーを担持するG2の遺伝子導入雌鳥由来の卵白サンプルを、2コピー(ホモ接合性)を有するG3の雌鳥6978と比較している。2001年2月に卵を回収した。世代およびウィングバンド数を左に示している。
【図7】図7は、雄鳥4133から生まれたG2およびG3雌鳥の卵中のβ−ラクタマーゼ(ラクタマーゼ)を示す。図7Aにおいて、雄鳥4133から生まれたヘミ接合性遺伝子導入雌鳥の代表的な4羽由来の卵白を活性ラクタマーゼについてアッセイしている。1999年10月および2001年2月に卵を収集し、各セットを収集した後に、雌鳥1羽あたり最低4個の卵をアッセイした。コントロールは、未処理の雌鳥由来の卵白を示す。バンド数を左に示す。各期間の4羽の雌鳥の平均を計算している。図7Bにおいて、ヘミ接合性のG2遺伝子導入雌鳥由来の卵白を、ヘミ接合性およびホモ接合性の遺伝子導入G3雌鳥の卵白と比較した。2001年2月に卵を収集した。世代数および導入遺伝子のコピー数を、各雌鳥についてのデータバーにて示す。1または2コピーを担持する雌鳥についての平均濃度を表の下方に示す。
【図8】図8Aおよび8Bは、ニワトリでのIFN−α 2b発現用pNLB−CMV−IFNベクター;およびニワトリでのエリスロポイエチン(EPO)発現用pNLB−MDOT−EPOwpそれぞれ示す。
【図9】図9は、6バンド全てを含む、遺伝子導入家禽由来のインターフェロン−α 2b(TPD IFN−α 2b)の新規の糖鎖付加パターンを表す。
【図10】図10は、ヒト末梢血白血球由来のインターフェロン−α 2b(PBL IFN−α 2bまたは天然のhIFN)と遺伝子導入家禽由来のインターフェロン−α 2b(TPD IFN−α 2bまたは卵白hIFN)との比較を示す。
【図11】図11Aは、最適化されたヒトインターフェロン−α 2b(IFN−α 2b)、すなわち、組換えTPD IFN−α 2b(配列番号1)の合成核酸配列(cDNA、残基1〜498)を表す。図11Bは、遺伝子導入家禽由来のインターフェロン−α 2b(TPD IFN−α 2b)(配列番号2)の合成アミノ酸配列(残基1〜165)を表す。
【図12】図12Aは、最適化されたヒトエリスロポイエチン(EPO)、すなわち、組換えTPD EPO(配列番号3)の合成核酸配列(cDNA、残基1〜579)を表す。図12Bは、遺伝子導入家禽由来のエリスロポイエチン(TPD EPO)(配列番号4)の合成アミノ酸配列(残基1〜193)を表す(天然のヒトEPOについて、NCBIアクセッション番号NP000790も参照のこと)。
【図13】図13は、IFN−MM CDSに連結された合成MDOTプロモーターを示す。MDOTプロモーターは、−435〜166bpの範囲のニワトリオボムコイド遺伝子(オボムコイドプロモーター)、および−251〜+29bpの範囲のニワトリコンアルブミン遺伝子(オボトランスフェリンプロモーター)由来のエレメントを含む(NCBIアクセッション番号Y00497、M11862およびX01205を参照のこと)。
【図14】図14は、主要な卵白タンパク質の概要を提供する。
【図15】図15Aおよび15Dは、pCMV−LC−emcvIRES−HCベクターを示し、ここで、モノクローナル抗体の発現を試験するために、脳心筋炎ウイルス(EMCV)由来のIRESの配置によってヒトモノクローナル抗体の軽鎖(LC)および重鎖(HC)をこの単一のベクターから発現させた。比較として、図15Bおよび15Cは、別々のベクターpCMV−HCおよびpCMV−LCをそれぞれ示し、ここで、これらのベクターもモノクローナル抗体の発現を試験するために使用した。
【図16】図16は、Neupogen(登録商標)(レーンA)およびTPD G−CSF(レーンB)の銀染色したSDS PAGEを示す。
【図17】図17は、14日間にわたる、細菌由来のヒトG−CSFと比較したTPD G−CSFの好中球絶対数の増加を表す。
【図18】図18A(配列番号39)は、図18Bのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を示す。図18B(配列番号40)(NCBIアクセッション番号NP7577373に対応する)は、細胞の分泌の間に成熟G−CSFを形成するために切り離される天然のシグナル配列を含む、G−CSFのアミノ酸配列を示す。図18C(配列番号41)は、本発明によって産生される成熟G−CSFタンパク質のアミノ酸配列を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家禽由来の糖鎖付加パターンを有するG−CSFを含む組成物であって、ここで、糖鎖付加パターンはCHO細胞において産生されるG−CSFの糖鎖付加パターン以外のものである、組成物。
【請求項2】
G−CSFが単離されている、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
G−CSFが固い殻の卵の中に存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
G−CSFがトリの輸卵管細胞においてグリコシル化されている、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
輸卵管細胞が管状腺細胞である、請求項5記載の組成物。
【請求項6】
G−CSFがニワトリの輸卵管細胞においてグリコシル化されている、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
G−CSFがスレオニン133にてグリコシル化されている、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
組成物が医薬組成物である、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
G−CSFが配列番号41のアミノ酸配列を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
糖鎖付加パターンがヒト細胞において産生されるG−CSFの糖鎖付加パターン以外のものである、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
G−CSFを含む組成物であって、ここで、G−CSFは、以下:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
でグリコシル化されている、組成物。
【請求項12】
G−CSFが固い殻の卵から入手される、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
G−CSFが単離されている、請求項11記載の組成物。
【請求項14】
G−CSFがスレオニン133にてグリコシル化されている、請求項11記載の組成物。
【請求項15】
G−CSFが配列番号41のアミノ酸配列を有する、請求項11記載の組成物。
【請求項16】
以下:
【化8】
でグリコシル化されているG−CSF分子を含む組成物。
【請求項17】
G−CSFが固い殻の卵の中に存在する、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
G−CSFが単離されている、請求項16記載の組成物。
【請求項19】
スレオニン133にてグリコシル化されている、請求項16記載の組成物。
【請求項20】
G−CSFが配列番号41のアミノ酸配列を有する、請求項16記載の組成物。
【請求項21】
以下:
【化9】
でグリコシル化されているG−CSF分子を含む組成物。
【請求項22】
G−CSFが固い殻の卵の中に存在する、請求項21記載の組成物。
【請求項23】
G−CSFが単離されている、請求項21記載の組成物。
【請求項24】
スレオニン133にてグリコシル化されている、請求項21記載の組成物。
【請求項25】
G−CSFが配列番号41のアミノ酸配列を有する、請求項21記載の組成物。
【請求項26】
以下:
【化10】
でグリコシル化されているG−CSF分子を含む組成物。
【請求項27】
G−CSFが固い殻の卵の中に存在する、請求項26記載の組成物。
【請求項28】
G−CSFが単離されている、請求項26記載の組成物。
【請求項29】
スレオニン133にてグリコシル化されている、請求項26記載の組成物。
【請求項30】
G−CSFが配列番号41のアミノ酸配列を有する、請求項26記載の組成物。
【請求項31】
以下:
【化11】
でグリコシル化されているG−CSF分子を含む組成物。
【請求項32】
G−CSFが固い殻の卵の中に存在する、請求項31記載の組成物。
【請求項33】
G−CSFが単離されている、請求項31記載の組成物。
【請求項34】
スレオニン133にてグリコシル化されている、請求項31記載の組成物。
【請求項35】
G−CSFが配列番号41のアミノ酸配列を有する、請求項31記載の組成物。
【請求項36】
以下:
【化12】
でグリコシル化されているG−CSF分子を含む組成物。
【請求項37】
G−CSFが固い殻の卵の中に存在する、請求項36記載の組成物。
【請求項38】
G−CSFが単離されている、請求項36記載の組成物。
【請求項39】
スレオニン133にてグリコシル化されている、請求項36記載の組成物。
【請求項40】
G−CSFが配列番号41のアミノ酸配列を有する、請求項36記載の組成物。
【請求項41】
糖鎖付加パターンを含むG−CSFを含む組成物であって、ここで、糖鎖付加パターンはCHO細胞において産生されるG−CSFの糖鎖付加パターン以外のものであり、かつG−CSFはニワトリの輸卵管細胞において産生される、組成物。
【請求項42】
G−CSFが単離されている、請求項42記載の組成物。
【請求項43】
輸卵管細胞が管状腺細胞である、請求項41記載の組成物。
【請求項44】
患者に治療有効量のTPD G−CSFを投与する工程を包含する、患者において白血球カウントを増加させる方法。
【請求項45】
治療有効量が、患者にて白血球カウントを所望の量によって増加させる量である、請求項44記載の方法。
【請求項1】
家禽由来の糖鎖付加パターンを有するG−CSFを含む組成物であって、ここで、糖鎖付加パターンはCHO細胞において産生されるG−CSFの糖鎖付加パターン以外のものである、組成物。
【請求項2】
G−CSFが単離されている、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
G−CSFが固い殻の卵の中に存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
G−CSFがトリの輸卵管細胞においてグリコシル化されている、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
輸卵管細胞が管状腺細胞である、請求項5記載の組成物。
【請求項6】
G−CSFがニワトリの輸卵管細胞においてグリコシル化されている、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
G−CSFがスレオニン133にてグリコシル化されている、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
組成物が医薬組成物である、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
G−CSFが配列番号41のアミノ酸配列を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
糖鎖付加パターンがヒト細胞において産生されるG−CSFの糖鎖付加パターン以外のものである、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
G−CSFを含む組成物であって、ここで、G−CSFは、以下:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
でグリコシル化されている、組成物。
【請求項12】
G−CSFが固い殻の卵から入手される、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
G−CSFが単離されている、請求項11記載の組成物。
【請求項14】
G−CSFがスレオニン133にてグリコシル化されている、請求項11記載の組成物。
【請求項15】
G−CSFが配列番号41のアミノ酸配列を有する、請求項11記載の組成物。
【請求項16】
以下:
【化8】
でグリコシル化されているG−CSF分子を含む組成物。
【請求項17】
G−CSFが固い殻の卵の中に存在する、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
G−CSFが単離されている、請求項16記載の組成物。
【請求項19】
スレオニン133にてグリコシル化されている、請求項16記載の組成物。
【請求項20】
G−CSFが配列番号41のアミノ酸配列を有する、請求項16記載の組成物。
【請求項21】
以下:
【化9】
でグリコシル化されているG−CSF分子を含む組成物。
【請求項22】
G−CSFが固い殻の卵の中に存在する、請求項21記載の組成物。
【請求項23】
G−CSFが単離されている、請求項21記載の組成物。
【請求項24】
スレオニン133にてグリコシル化されている、請求項21記載の組成物。
【請求項25】
G−CSFが配列番号41のアミノ酸配列を有する、請求項21記載の組成物。
【請求項26】
以下:
【化10】
でグリコシル化されているG−CSF分子を含む組成物。
【請求項27】
G−CSFが固い殻の卵の中に存在する、請求項26記載の組成物。
【請求項28】
G−CSFが単離されている、請求項26記載の組成物。
【請求項29】
スレオニン133にてグリコシル化されている、請求項26記載の組成物。
【請求項30】
G−CSFが配列番号41のアミノ酸配列を有する、請求項26記載の組成物。
【請求項31】
以下:
【化11】
でグリコシル化されているG−CSF分子を含む組成物。
【請求項32】
G−CSFが固い殻の卵の中に存在する、請求項31記載の組成物。
【請求項33】
G−CSFが単離されている、請求項31記載の組成物。
【請求項34】
スレオニン133にてグリコシル化されている、請求項31記載の組成物。
【請求項35】
G−CSFが配列番号41のアミノ酸配列を有する、請求項31記載の組成物。
【請求項36】
以下:
【化12】
でグリコシル化されているG−CSF分子を含む組成物。
【請求項37】
G−CSFが固い殻の卵の中に存在する、請求項36記載の組成物。
【請求項38】
G−CSFが単離されている、請求項36記載の組成物。
【請求項39】
スレオニン133にてグリコシル化されている、請求項36記載の組成物。
【請求項40】
G−CSFが配列番号41のアミノ酸配列を有する、請求項36記載の組成物。
【請求項41】
糖鎖付加パターンを含むG−CSFを含む組成物であって、ここで、糖鎖付加パターンはCHO細胞において産生されるG−CSFの糖鎖付加パターン以外のものであり、かつG−CSFはニワトリの輸卵管細胞において産生される、組成物。
【請求項42】
G−CSFが単離されている、請求項42記載の組成物。
【請求項43】
輸卵管細胞が管状腺細胞である、請求項41記載の組成物。
【請求項44】
患者に治療有効量のTPD G−CSFを投与する工程を包含する、患者において白血球カウントを増加させる方法。
【請求項45】
治療有効量が、患者にて白血球カウントを所望の量によって増加させる量である、請求項44記載の方法。
【図1】
【図2−1】
【図2−2】
【図2−3】
【図3】
【図4−1】
【図4−2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図2−1】
【図2−2】
【図2−3】
【図3】
【図4−1】
【図4−2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【公表番号】特表2009−530377(P2009−530377A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501426(P2009−501426)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/004371
【国際公開番号】WO2007/108882
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(500176090)シナジェバ・バイオファーマ・コーポレイション (7)
【氏名又は名称原語表記】Synageva Biopharma Corp.
【出願人】(500182460)ユニバーシティ・オブ・ジョージア・リサーチ・ファウンデイション・インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/004371
【国際公開番号】WO2007/108882
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(500176090)シナジェバ・バイオファーマ・コーポレイション (7)
【氏名又は名称原語表記】Synageva Biopharma Corp.
【出願人】(500182460)ユニバーシティ・オブ・ジョージア・リサーチ・ファウンデイション・インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】
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