説明

グリセリン系固形物からグリセリン原料を製造する方法および製造装置

【課題】グリセリン系固形物から燃料として利用可能な液化物を生成する際の残渣をさらに活用し、一層の資源の有効活用を図ること。
【解決手段】グリセリンを含有してなるグリセリン系固形物、油、および酸を混合して、ミキシングタンク21内にpH3〜pH12の液化物EKを得る第1の工程と、ミキシングタンク21内の液化物の下層液EKDをグリセリンストレージタンク22などの他の容器に移し、これをグリセリン原料とする、第2の工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリセリン系固形物からグリセリン原料を製造する方法、製造装置、およびバイオ燃料生成装置に関する。本発明は、例えば植物油からバイオディーゼル燃料を生産する際に副生物として出るグリセリン系固形物からグリセリン原料を製造するのに利用される。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の植物からバイオディーゼル燃料(BDF:Bio Diesel Fuel 、以下「バイオ燃料」ということがある)を生成することが提案され実施されている。例えば、ジャトロファ油、ひまわり油、なたね油、オリーブ油などの植物油に、アルコールおよび水酸化ナトリウムを加えてエステル化反応を行うことによって、バイオ燃料を生成する。
【0003】
このようなバイオ燃料の生成の際に、副生物( 副産物) としてグリセリン(グリセリン含有物)が生成される。バイオ燃料生成の副生物であるグリセリンは、用途がなかったため廃棄物として捨てられていた。
【0004】
これに対して、副生物であるグリセリンを廃棄することなく、資源として有効利用する方法を本願の出願人は先に提案した(特許文献1)。それによると、グリセリン系固形物、油、および酸を混合することによって、pH3〜pH12の液化物を生成する。生成した液化物は、燃焼性能に優れるのでこれを燃料として利用することができ、資源の有効活用が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2011/024989A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の方法で液化物を生成した場合に、液化物中にある程度の残渣(残渣物)が生じる。従来において、この残渣は捨てられていた。資源の有効利用という点からは、できるだけ捨てる物は少ないことが好ましい。
【0007】
本発明は、このような技術的背景に鑑みてなされたものであり、グリセリン系固形物から燃料として利用可能な液化物を生成する際の残渣をさらに活用し、一層の資源の有効活用を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る製造方法は、グリセリンを含有してなるグリセリン系固形物、油、および酸を混合して、第1の容器内にpH3〜pH12の液化物を得る第1の工程と、前記第1の容器内の液化物の下層液を第2の容器に移し、これをグリセリン原料とする、第2の工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
例えば、第1の工程において、第1の容器内にpH3〜pH12の液化物を得る。そして、前記第1の容器内の液化物の下層液を第2の容器に移し、これをグリセリン原料とする。
【0010】
また、例えば、第1の容器の底部を漏斗状としておき、前記第2の工程において、前記底部に設けられた排出管路から前記下層液を排出させることによって前記下層液を前記第2の容器に移し、前記第1の容器には前記下層液が残らないようにする。
【0011】
本発明の一形態に係る製造装置は、グリセリンを含有してなるグリセリン系固形物、油、および酸を混合してpH3〜pH12の液化物を得るための第1の容器と、第2の容器と、前記第1の容器内の液化物の下層液を第2の容器に移すための排出管路および排出ポンプと、前記第2の容器に移される下層液を検出する下層液検出センサと、前記第1の容器内の前記下層液が前記第1の容器内に残らないように第2の容器に排出するよう、前記排出ポンプを制御する制御装置と、を有する。
【0012】
本発明の一形態に係るバイオ燃料生成装置は、第1の容器と、第2の容器と、植物油からバイオディーゼル燃料を生産する際に副生物として出るグリセリン系固形物を収容する第3の容器と、植物油から作られたメタノールまたはエタノールを収容する第4の容器と、酸を含んだ添加剤を収容する第5の容器と、前記第3の容器に収容されたグリセリン系固形物を前記第1の容器に投入するための第1のポンプ装置と、前記第4の容器に収容されたメタノールまたはエタノールを前記第1の容器に投入するための第2のポンプ装置と、前記第5の容器に収容された添加剤を前記第1の容器に投入するための第3のポンプ装置と、前記第1の容器内に投入された原料を混合する攪拌装置と、前記第1の容器内に投入され混合されることにより得られた液化物を、その下層液を第2の容器に移すための排出管路および排出ポンプ装置と、前記第2の容器に移される下層液を検出する下層液検出センサと、前記第1の容器内の前記下層液が前記第1の容器内に残らないように第2の容器に排出するよう、前記排出ポンプ装置を制御する制御装置と、を有する。
【0013】
前記下層液検出センサとして、液化物の色または透明度を検出する光学センサを用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、グリセリン系固形物から燃料として利用可能な液化物を生成する際の残渣をさらに活用し、一層の資源の有効活用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態のバイオ燃料生成装置の平面図である。
【図2】図1のバイオ燃料生成装置の立面図である。
【図3】バイオ燃料生成装置の構成の例を示すブロック図である。
【図4】バイオ燃料生成装置のミキシングタンクの内部状態の例を示す断面図である。
【図5】ミキシングタンク内から下層液を排出する方法の他の例を示す断面図である。
【図6】バイオ燃料生成装置における処理操作の流れの例を示すフローチャートである。
【図7】下層液の移送操作の例を示すフローチャートである。
【図8】残渣である下層液の分析結果の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1および図2には、一実施形態のバイオ燃料生成装置1の正面図および立面図が示されており、図3にはバイオ燃料生成装置1の構成例のブロック図が示されている。
【0017】
これらの図において、バイオ燃料生成装置1は建屋TYの中に設置される。バイオ燃料生成装置1は、グリセリンサージタンク11、油サージタンク12、添加剤サービスタンク13、制御装置14、および2系統の製造ラインSLa、SLbからなる。
【0018】
各製造ラインSLa、SLbは、互いに同様な構成および機能を有するので、以下においては一方の製造ラインSLaのみについて説明する。
【0019】
製造ラインSLaは、ミキシングタンク21、グリセリンストレージタンク22、水分補集タンク23、コンデンサ24、ポンプP1〜6、管路KL1〜7、およびフィルタFT1〜4などからなる。
【0020】
また、ミキシングタンク21には、攪拌機31、バーナー32、温度センサ33、検出センサSE1、2などが取り付けられている。また、図示しない流量計なども必要に応じて設けられる。
【0021】
グリセリンサージタンク11は、グリセリンを含有してなるグリセリン系固形物GKを収容する。グリセリン系固形物GKには、グリセリンのみからなる固形物、グリセリンを含有し、かつグリセリン以外の成分例えば水酸化ナトリウムなどを含有するものが含まれる。グリセリン系固形物GKは、通常は粘性を有するものであり、粘稠なゼリー状物であってもよい。
【0022】
グリセリン系固形物GKとして、植物油からバイオ燃料を生産する際に副生物として出るグリセリン含有物を用いてもよい。グリセリンは、単独では、常温で粘稠なゼリー状のような性状を呈するものであり、少なくとも固まった状態にはならないのであるが、植物油からバイオ燃料を生産する際に副生物として出るグリセリン含有物は、通常、固まった状態になる。その理由は次のように考えられる。植物油からバイオ燃料を生産する際には、例えば植物油にメタノールなどのアルコールおよび水酸化ナトリウム( 触媒) を加えてエステル化反応を行う。このバイオ燃料を含む生成物からバイオ燃料を分離した後に残った副生グリセリンには、遊離脂肪酸や水酸化ナトリウムが残存していると考えられるので、これらの影響によって固形物になると推測されるのである。
【0023】
なお、グリセリン系固形物GKは、管路、ポンプ、コンベア、またはホッパなどの適当な搬送手段によってグリセリンサージタンク11に供給し、または投入することができる。また作業者が手で投入してもよい。
【0024】
油サージタンク12には、油ABが収容される。油ABとして、鉱物油、動物油、または植物油を用いることができる。
【0025】
鉱物油として石油などがあげられる。石油は燃焼性がよく、液化物の燃焼性能をより向上させることができる。石油( 原油を含む) として、灯油、軽油、重油、ガソリン、バイオ燃料(BDF)、ケロシン(ジェット燃料、ロケット燃料など) などがあげられる。これらを混合したものでもよい。
【0026】
動物油として、牛油、豚油、鳥油などがあげられる。植物油として、ジャトロファ油、ひまわり油、なたね油、オリーブ油、ヤシ油などがあげられる。
【0027】
油ABは、液化反応のための溶媒的な意味合いで加えるものであるが、これ自体燃焼性がよいので、得られた液化物の燃焼性能を阻害しないという利点もある。
【0028】
なお、グリセリン系固形物GKとして、植物油からバイオディーゼル燃料を生産する際に副生物として出るグリセリン系固形物を用い、油ABとして、植物油から作られたメタノールまたはエタノールなどを用いるのが好ましい。この場合には、原料の全体が植物性となり、再生可能な資源(バイオマス資源)のみでバイオ燃料を生産することができる。したがって、炭酸ガスなどの温室効果ガスの削減による地球温暖化の防止に貢献する。また、バイオ燃料を生産した後の残渣が少なくなる。
【0029】
なお、その場合に、油サージタンク12にはメタノールまたはエタノールなどが収容されることとなる。
【0030】
添加剤サービスタンク13には、添加剤TZが収容される。添加剤TZは酸を含んでいる。酸は酸化剤としても作用する。添加剤TZを他の原料に混入することによって、混合物KBの粘度および引火点を下げることができる。酸として無機酸を用いることが可能である。無機酸として塩酸を用いることが可能である。添加剤TZとして、過酸化水素(H2 O2 )を用いることが可能である。また、添加剤TZとして、氷酢酸を用いることが可能である。
【0031】
これら、グリセリン系固形物GK、油AB、添加剤TZなどの原料は、それぞれが収容されたグリセリンサージタンク11、油サージタンク12、添加剤サービスタンク13から、ポンプP1、P2、P3によってミキシングタンク21に移送される。
【0032】
ミキシングタンク21は、例えばステンレス鋼板などを用いて形成される。図4に示すように、ミキシングタンク21の底部21aは、円錐面から構成される漏斗形状となっており、底部21aの中心部(頂部)に管路(排出管路)KL5が接続されている。これにより、ミキシングタンク21内の残渣物(残渣液)は、管路KL5から容易に排出し、他の容器に移送することができる。
【0033】
ミキシングタンク21の容量は大小種々のものが可能である。例えば、ミキシングタンク21の容量を700リットルとして場合に、例えば合計500リットル程度の原料が投入される。ミキシングタンク21において、移送され投入された原料が混合されて混合物KBとなり、これによってpH3〜pH12の液化物EKが得られる。
【0034】
ミキシングタンク21の中の状態は、例えば、温度が60〜80度℃程度、圧力は大気圧程度である。温度は、バーナー32および温度センサ33を用いて調整する。この状態で、例えば数十分ないし数時間程度、例えば30分程度、攪拌機31によって攪拌する。混合物KBに泡ができて、その泡が収まるまで待つ。これにより、混合物KBは液化物EKとなる。
【0035】
これらを混合する際に、先に油ABと添加剤TZとを混合して混合液とし、その後でグリセリン系固形物GKとを混合するようにしてもよい。
【0036】
また、混合の際に、グリセリン系固形物GKと油ABの合計容量に対するグリセリン系固形物GKの含有率が50〜90容量%になるように混合し、グリセリン系固形物GKと油ABとの合計100容量部に対して添加剤TZを2〜10容量部混合してもよい。
【0037】
また、混合の際に、先にグリセリン系固形物GKと添加剤TZとを混合した後、油ABを混合してもよい。
【0038】
また、混合の際に、グリセリン系固形物GKの100容量部に対し、酸化剤である添加剤TZを35質量%濃度の酸化剤溶液に換算して0.1〜20容量部、油ABを0.1〜40容量部、混合してもよい。
【0039】
また、混合の際に、先にグリセリン系固形物GKと酸化剤(添加剤)とを混合した後、さらに油ABを混合し、次いで酸(添加剤)を混合してもよい。
【0040】
また、混合の際に、グリセリン系固形物GKの100容量部に対し、酸化剤を5質量%濃度の酸化剤溶液に換算して0.1〜20容量部、油ABを0.1〜40容量部、酸を0.1〜10容量部、混合してもよい。
【0041】
また、液化物EKがpH4〜pH11の範囲となるように添加剤TZを混合してもよい。
【0042】
混合により得られた液化物EKは、温度を例えば30度℃程度以下に冷却する。例えば5度℃程度に冷却してもよい。これにより、液化物EKは、上層液EKUと下層液EKDとに分離する。
【0043】
上層液EKUは、バイオ燃料として用いることが可能なもの(グリセリン燃料)である。上層液EKUは、例えば薄い茶色であり、透明に近く、粘度は比較的低い。上層液EKUは、液化物EKの90〜95%程度である。
【0044】
下層液EKDは、生成されたバイオ燃料の残渣物であるが、グリセリンを含んでいる。下層液EKDは、濃い茶色または焦げ茶色であり、透明性が悪く、粘度は比較的高い。下層液EKDは、液化物EKの5〜10%程度である。
【0045】
このように、上層液EKUと下層液EKDとの境界は比較的明確であり、目視によっても確認することができる。また、適当なセンサによって検出し、上層液EKUであること、または下層液EKDであることを認識することができる。
【0046】
例えば、光学センサ(光電式センサ)を用い、液化物EKにおける透過光または反射光の強さ、またはその変化によって、上層液EKUまたは下層液EKDであることを検出することが可能である。また、色差計などを用い、液化物EKの色または色の変化によって、上層液EKUまたは下層液EKDを検出することが可能である。
【0047】
従来において、下層液EKDは捨てられていたのであるが、本実施形態においては、これを捨てることなく、別の容器(タンク)に移し、グリセリン原料とする。
【0048】
すなわち、残渣物である下層液EKDの利用を考えた本発明者は、下層液EKDの分析によってグリセリンが十分に含まれていることを発見し、これをグリセリン原料とすべく、以下に説明するような操作または処理を行った。なお、下層液EKDについて、所定の機関において分析を行った結果が図8に示されている。
【0049】
ミキシングタンク21内の液化物EKから下層液EKDを抜き取るために、図4に示すように、漏斗状の底部21aに設けられた管路KL5から下層液EKDを排出させ、例えばグリセリンストレージタンク22に移送する。つまり、バルブVL1を開き、ポンプP5を作動させて下層液EKDを排出する。そのとき、フィルタFT3によって不純物が取り除かれる。
【0050】
このとき、ミキシングタンク21内に下層液EKDが残らないようにする。つまり、上層液EKUの一部が下層液EKDとともに排出されることを許容し、下層液EKDがミキシングタンク21内に残らないようにする。これは、上層液EKUによるバイオ燃料の純度を高くするためである。
【0051】
なお、光電式の検出センサSE1によって、管路KL5を流れる液化物EKが下層液EKDであるか上層液EKUであるかを検出する。下層液EKDが検出されている間はバルブVL1を開き、ポンプP5を作動させる。上層液EKUが検出されると、バルブVL1を閉じ、ポンプP5を停止させる。
【0052】
また、図5に示すように、ミキシングタンク21の底部21aの中央下方に、適当な容量の容器25を配置した状態で、バルブVL2を手動または自動で開くことによって下層液EKDを管路KL5から下方に排出してもよい。この場合には、下層液EKDは、容器25に移送されることとなる。管路KL5に光電式の検出センサSE2を設けておき、バルブVL2の開閉を制御装置14により自動的に行うようにしてもよい。
【0053】
このようにして、ミキシングタンク21内の下層液EKDは、グリセリンストレージタンク22または容器25に移送されて収容される。
【0054】
グリセリンストレージタンク22または容器25に収容された下層液EKDは、グリセリン原料として用いられる。例えば、下層液EKDを蒸留などによって精製することにより、純粋なグリセリンとすることができる。このようにして得られたグリセリンは、例えば、化粧品、スポーツ用品などとして利用することが可能である。
【0055】
このようにして、ミキシングタンク21内の液化物EKから下層液EKDが取り除かれる。
【0056】
ミキシングタンク21内に残った上層液EKUは、例えば蒸留によって水分を除去する。すなわち、バーナー32によってミキシングタンク21内の温度を高温にし、水分を蒸発させる。蒸発した水分(水蒸気)は、管路KL7を通り、コンデンサ24によって冷却され、水となって水分補集タンク23に集められる。
【0057】
このとき、ミキシングタンク21内の温度を、例えば、150〜230度℃程度とすればよい。なお、水分を除去した後は、ミキシングタンク21内の温度を常温に冷やせばよい。
【0058】
このようにして、ミキシングタンク21内に、水分が除去された上層液EKUであるグリセリン燃料が得られる。得られたグリセリン燃料は、管路KL4からポンプP4によって外部の容器などに移送される。移送の際に、フィルタFT1、2によって不純物が除去される。
【0059】
また、グリセリンストレージタンク22に収容された下層液EKDは、管路KL6からポンプP6によって外部の容器などに移送される。移送の際に、フィルタFT4によって不純物が除去される。
【0060】
なお、フィルタFT1〜4には、適当なメッシュのものが用いられる。例えば、フィルタFT1、3には50μm程度のもの、フィルタFT2、4には1μm程度のものが用いられる。
【0061】
ポンプP1〜6は、種々の形式のポンプとその駆動装置とが組み合わされ、電源を供給することにより流体または流動体を移送することができるものである。このようなポンプP1〜6として、例えば、交流モータで回転駆動されるギヤポンプなどを用いることができる。交流モータの回転速度を制御してポンプP1〜6の吐出流量を制御することが可能である。温度センサ33として、例えば熱電対または半導体センサなどを用いることができる。
【0062】
上に述べたような制御は、制御装置14によって行われる。制御装置14は、CPU、MPU、ROM、RAM、その他の周辺素子、および種々のインタフェ−スなどを備えたコンピュータ、モータおよびバルブの駆動のための回路、センサのための入力回路、その他の駆動回路または制御回路などを備えておけばよい。このような制御装置14は、例えば、シーケンサ、またはシーケンサと適当なパワー制御回路などを組み合わせて実現することが可能である。
【0063】
次に、図6および図7に示すフローチャートを参照して、バイオ燃料生成装置1における制御装置14による制御または処理操作の流れを説明する。
【0064】
図6において、まず、ミキシングタンク21に原料が供給され、混合され(#11)、液化物EKが得られる(#12)。液化物EKは、上層液EKUと下層液EKDとに分離する(#13)。下層液EKDをグリセリンストレージタンク22に移送する(#14)。グリセリンストレージタンク22には下層液EKDが収容され(#21)、ミキシングタンク21には上層液EKUが残る(#15)。
【0065】
ミキシングタンク21において、上層液EKUを蒸留して水分を除去し(#16)、グリセリン燃料を得る(#17)。得られたグリセリン燃料は製品として出荷される(#18)。
【0066】
グリセリンストレージタンク22に収容された下層液EKDは、グリセリン原料となる(#21)。グリセリン原料は、グリセリンストレージタンク22において、または適当な装置に移送された後、精製され(#22)、グリセリン製品として出荷される(#23、24)。
【0067】
図7に示すように、ステップ#14の下層液EKDの移送の処理操作では、ミキシングタンク21内に液化物EKが存在する場合に(#31でイエス)、バルブVL1を開き、ポンプP5を作動させる(#32、33)。検出センサSE1によって下層液EKDが検出されている間において、ステップ#32、33を続行する(#34)。下層液EKDが検出されなくなると、ポンプP5を停止し(#35)、バルブVL1を閉じる(#36)。
【0068】
なお、フローチャートにおいて、ステップ#11〜13が第1の工程の例であり、ステップ#14、21が第2の工程の例である。第2の工程において、ステップ#22以下を追加してもよい。
【0069】
このようにして、グリセリン系固形物GKからバイオ燃料およびグリセリン原料が生成される。従来において残渣として廃棄されていた下層液EKDがグリセリン原料として利用されるので、残渣物がさらに活用され、一層の資源の有効活用を図ることができる。
【0070】
上に述べた実施形態において、ミキシングタンク21、グリセリンストレージタンク22、水分補集タンク23などは、例えばステンレス鋼板などの金属材料を用いて作製することができる。ミキシングタンク21の底部21aを円錐面としたが、球面または滑らかな曲面などとしてもよい。また、底部21aを平面としてもよく、その場合には下層液EKDの管路KL5からの排出が容易なように傾斜を設けておくのが好ましい。
【0071】
上に述べた実施形態において、ミキシングタンク21内の下層液EKDを容器25に移送した場合には、蒸留した後の上層液EKUをグリセリンストレージタンク22に移送するようにしてもよい。このようにすると、蒸留済みの上層液EKUつまりグリセリン燃料がグリセリンストレージタンク22に収容されることとなり、その後のミキシングタンク21を次の液化物EKの生成のために使用することができる。
【0072】
また、容器25に代えて別途適当なストレージタンクを設け、そのストレージタンクにミキシングタンク21の下層液EKDを移送するようにしてもよい。
【0073】
また、ミキシングタンク21の下層液EKDをグリセリンストレージタンク22に移送し、グリセリンストレージタンク22に収容された下層液EKDを外部に移送した後、グリセリンストレージタンク22にミキシングタンク21の上層液EKUを移送するようにしてもよい。
【0074】
その他、ミキシングタンク21、グリセリンストレージタンク22、製造ラインSLa、バイオ燃料生成装置1の各部または全体の構成、構造、形状、寸法、個数、配置、材質、回路、処理操作の内容またはタイミング、温度、圧力などは、本発明の主旨に沿って適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 バイオ燃料生成装置
11 グリセリンサージタンク(第3の容器)
12 油サージタンク(第4の容器)
13 添加剤サービスタンク(第5の容器)
14 制御装置
21 ミキシングタンク(第1の容器)
21a 底部
22 グリセリンストレージタンク(第2の容器)
25 容器(第2の容器)
31 攪拌機(攪拌装置)
GK グリセリン系固形物
AB 油
TZ 添加剤(酸)
EK 液化物
EKU 上層液
EKD 下層液
KL5 管路(排出管路)
P1 ポンプ(第1のポンプ装置)
P2 ポンプ(第2のポンプ装置)
P3 ポンプ(第3のポンプ装置)
P5 ポンプ(排出ポンプ)
SE1,2 検出センサ(下層液検出センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリンを含有してなるグリセリン系固形物、油、および酸を混合して、第1の容器内にpH3〜pH12の液化物を得る第1の工程と、
前記第1の容器内の液化物の下層液を第2の容器に移し、これをグリセリン原料とする、第2の工程と、
を有することを特徴とするグリセリン原料の製造方法。
【請求項2】
植物油からバイオディーゼル燃料を生産する際に副生物として出るグリセリン系固形物、油、および、酸を含んだ添加剤を混合して、第1の容器内にpH3〜pH12の液化物を得る第1の工程と、
前記第1の容器内の液化物の下層液を第2の容器に移し、これをグリセリン原料とする、第2の工程と、
を有することを特徴とするグリセリン系固形物からグリセリン原料を製造する方法。
【請求項3】
前記第1の容器の底部を漏斗状としておき、
前記第2の工程において、前記底部に設けられた排出管路から前記下層液を排出させることによって前記下層液を前記第2の容器に移し、
前記第1の容器には前記下層液が残らないようにする、
請求項2記載のグリセリン系固形物からグリセリン原料を製造する方法。
【請求項4】
植物油からバイオディーゼル燃料を生産する際に副生物として出るグリセリン系固形物、植物油から作られたメタノールまたはエタノール、および、酸を含んだ添加剤を混合して、第1の容器内にpH3〜pH12の液化物を得る第1の工程と、
前記第1の容器内の液化物の下層液を、前記第1の容器内に残らないように第2の容器に移し、前記第2の容器に移された下層液をグリセリン原料とする、第2の工程と、
を有することを特徴とするグリセリン系固形物からグリセリン燃料およびグリセリン原料を製造する方法。
【請求項5】
グリセリンを含有してなるグリセリン系固形物、油、および酸を混合してpH3〜pH12の液化物を得るための第1の容器と、
第2の容器と、
前記第1の容器内の液化物の下層液を第2の容器に移すための排出管路および排出ポンプと、
前記第2の容器に移される下層液を検出する下層液検出センサと、
前記第1の容器内の前記下層液が前記第1の容器内に残らないように第2の容器に排出するよう、前記排出ポンプを制御する制御装置と、
を有することを特徴とするグリセリン原料の製造装置。
【請求項6】
第1の容器と、
第2の容器と、
植物油からバイオディーゼル燃料を生産する際に副生物として出るグリセリン系固形物を収容する第3の容器と、
植物油から作られたメタノールまたはエタノールを収容する第4の容器と、
酸を含んだ添加剤を収容する第5の容器と、
前記第3の容器に収容されたグリセリン系固形物を前記第1の容器に投入するための第1のポンプ装置と、
前記第4の容器に収容されたメタノールまたはエタノールを前記第1の容器に投入するための第2のポンプ装置と、
前記第5の容器に収容された添加剤を前記第1の容器に投入するための第3のポンプ装置と、
前記第1の容器内に投入された原料を混合する攪拌装置と、
前記第1の容器内に投入され混合されることにより得られた液化物を、その下層液を第2の容器に移すための排出管路および排出ポンプ装置と、
前記第2の容器に移される下層液を検出する下層液検出センサと、
前記第1の容器内の前記下層液が前記第1の容器内に残らないように第2の容器に排出するよう、前記排出ポンプ装置を制御する制御装置と、
を有するバイオ燃料生成装置。
【請求項7】
前記下層液検出センサは、液化物の色または透明度を検出する光学センサである、
請求項6記載のバイオ燃料生成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−10699(P2013−10699A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142892(P2011−142892)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(500104211)
【出願人】(509172402)株式会社ワンワールド (3)
【Fターム(参考)】