説明

グリッド偏光フィルムおよびその製法

【課題】 高温・高湿環境でのグリッド偏光性能の低下が少ないグリッド偏光フィルムおよびその製法を提供する。
【解決手段】 板状の透明樹脂基材と、該透明樹脂基材の少なくとも一方の表面に積層された互いに略平行に延びた複数のグリッド線とを含んでなり、該透明樹脂基材、グリッド線、およびグリッド線の頂点を結ぶ線で囲まれる空間のグリッド線の長手に垂直な方向の平均断面積が、温度65℃、相対湿度95%の環境下に500時間放置した後において、放置前の平均断面積の50%以上である、グリッド偏光フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリッド偏光フィルムおよびその製法に関する。さらに詳細には、高温・高湿環境でのグリッド偏光性能の低下が少ないグリッド偏光フィルムおよびその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
このグリッド偏光フィルムの製法として、出願人は、特許文献1において、モース硬度9以上の材料を高エネルギー線で加工し、先端に幅600nm以下の突起を形成してなる工具を作製し、該工具を使用して金型部材上に、幅50〜600nm、ピッチ50〜1,000nm、高さ50〜800nmの微細格子形状を形成し、該金型部材の微細格子形状を厚さ100nmの紫外線硬化性アクリル樹脂の塗布層に密着させて、紫外線を照射し、微細な直線状の突起の格子形状が転写された透明樹脂基材を得、該透明樹脂基材に導電性反射体を蒸着することを特徴とするグリッド偏光子の製造方法を提案した。この製造方法によって大面積のグリッド偏光フィルムを製造できるようになった。しかしながら、得られたグリッド偏光フィルムを高温・高湿環境で長時間使用するとグリッド偏光性能が低下することがわかった。
【特許文献1】特開2006−17879号公報
【0003】
高温・高湿環境でのグリッド偏光性能の低下を防止する方法として、特許文献2に、グリッド線に腐食防止剤を塗布し、グリッド線に皮膜を形成する方法が開示されている。この方法によってグリッド線の腐食は防止されたが、透明樹脂基材を用いたグリッド偏光フィルムでは、高温・高湿環境での長時間使用によるグリッド偏光性能の低下を十分に抑えることができなかった。
【特許文献2】特表2006−507517
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、高温・高湿環境での長時間使用でもグリッド偏光性能の低下が少ないグリッド偏光フィルムおよびその製法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討した結果、従来の、透明樹脂基材を用いたグリッド偏光フィルムは、高温・高湿環境で長時間使用していると、グリッド線間にある空間が無くなってしまい、透明樹脂基材の表面が変形することに気が付いた。そこで、本発明者は、板状の透明樹脂基材として、80℃の温水に24時間浸漬前後の重量減量が1%以下であるものを用いたところ、高温・高湿環境での長時間使用でもグリッド偏光性能の低下が少ないグリッド偏光フィルムが得られることを見出した。本発明はこの知見に基づいてさらに検討し、完成したものである。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) 板状の透明樹脂基材と、該透明樹脂基材の少なくとも一方の表面に積層された互いに略平行に延びた複数のグリッド線とを含んでなり、
該透明樹脂基材、グリッド線、およびグリッド線の頂点を結ぶ線で囲まれる空間のグリッド線の長手に垂直な方向の平均断面積が、温度65℃、相対湿度95%の環境下に500時間放置した後において、放置前の平均断面積の50%以上である、グリッド偏光フィルム。
(2) 板状の透明樹脂基材と、該透明樹脂基材の少なくとも一方の表面に積層された互いに略平行に延びた複数のグリッド線とを含んでなるグリッド偏光フィルムであって、前記の板状の透明樹脂基材が、100℃で2時間真空乾燥した後の重量W0から、80℃の温水に24時間浸漬し次いで100℃で2時間真空乾燥した後の重量W1への重量減量が、W0の1%以下である、グリッド偏光フィルム。
【0007】
(3) 板状の透明樹脂基材は、100℃で2時間真空乾燥した後の重量W0から、80℃の温水に24時間浸漬し次いで100℃で2時間真空乾燥した後の重量W1への重量減量が、W0の1%以下である(1)に記載のグリッド偏光フィルム。
(4) 透明樹脂基材が硬化性樹脂で形成されたものである、(1)〜(3)のいずれかに記載のグリッド偏光フィルム。
(5) 透明樹脂基材が、少なくとも一方の表面に細長く線状に延び互いに離間した状態で略平行に複数並ぶ凸条を有するものであり、
グリッド線が、前記凸条の頂に在る金属層A及び/又は前記凸条間に形成される溝の底に在る金属層Bによって構成されているものである、(1)〜(4)のいずれかに記載のグリッド偏光フィルム。
【0008】
(6) 80℃の温水によって溶出する成分を板状の透明樹脂基材から除去および/または該透明樹脂基材に固定し若しくは封じ込め、
次いで、グリッド線を形成する、ことを含む、(1)〜(5)のいずれかに記載のグリッド偏光フィルムの製法。
(7) 硬化性樹脂を硬化させて板状の透明樹脂基材を形成することを含む、(6)に記載のグリッド偏光フィルムの製法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のグリッド偏光フィルムは、高温・高湿環境での長時間使用でもグリッド偏光性能の低下が少ない。その結果、液晶表示装置などの表示画質を長期間、良好に維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のグリッド偏光フィルムは、板状の透明樹脂基材と、該透明樹脂基材の少なくとも一方の表面に積層された互いに略平行に延びた複数のグリッド線とを含んでなるものである。
【0011】
該板状の透明樹脂基材は、100℃で2時間真空乾燥した後の重量W0から、80℃の温水に24時間浸漬し次いで100℃で2時間真空乾燥した後の重量W1への重量減量がW0の1%以下であることが好ましく、0.8%以下であることがより好ましい。すなわち、本発明に用いられる板状の透明樹脂基材は80℃の温水によって溶出する成分が少ないことが好ましい。
前記重量減量を前記範囲にするための方法としては、80℃の温水によって溶出する成分を該透明樹脂基材から除去する方法と、前記溶出成分を該透明樹脂基材に固定する方法と、前記溶出成分を該透明樹脂基材に封じ込める方法がある。
【0012】
溶出成分を除去する方法としては、透明樹脂基材を高温下または減圧下に置いて溶出成分を蒸発させる方法;透明樹脂基材を温水や有機溶剤に漬けて洗浄する方法;が挙げられる。蒸発条件および洗浄条件は、溶出成分の種類および透明樹脂基材を構成する樹脂の種類に応じて選択できるが、透明樹脂基材が劣化しない条件で行うことが好ましい。
【0013】
溶出成分を固定する方法は、溶出成分が透明樹脂基材を構成する樹脂との反応性を有するものである場合に採用できる。溶出成分を固定する方法としては、透明樹脂基材を高温下において、または紫外線などのエネルギー線を照射して、溶出成分と透明樹脂基材を構成する樹脂等とを反応させて、該樹脂等に溶出成分を結合させる方法が挙げられる。反応条件は溶出成分の種類および透明樹脂基材を構成する樹脂の種類に応じて選択できるが、透明樹脂基材が劣化しない条件で行うことが好ましい。
【0014】
溶出成分を封じ込める方法としては、透明樹脂基材上に溶出成分が透過しない層(バリア層)を形成する方法が挙げられる。バリア層としては無機薄膜からなるものが挙げられる。
無機薄膜の材料としては、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、Mg、La、Cr、Ca、ZrおよびTaからなる群から選ばれる元素を1種以上含む酸化物、窒化物、または酸化窒化物が挙げられる。これらのうち、Si、Ta、およびAlからなる群から選ばれる元素を1種以上含む酸化物、窒化物または酸化窒化物が好ましく、バリア性およびコストの観点から、Siおよび/またはAlを含む酸化物が最も好ましい。無機薄膜の厚さは、バリア性と光学特性の観点から、1〜50nmが好ましく、1〜10nmがさらに好ましい。無機薄膜を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ気相成長法、CVD法などの真空プロセス、ゾルゲル法などのウェットプロセスが挙げられる。
【0015】
上記の除去、固定および/または封じ込めは、前記した重量減量が好ましくは1%以下、より好ましくは0.8%以下となるまで行う。重量減量の確認は、次のようにして行う。すなわち、確認対象となる透明樹脂基材を100℃で2時間真空乾燥した後、重量W0を計測する。次いで、80℃の温水に透明樹脂基材を24時間浸漬する。そして、100℃で2時間真空乾燥し、重量W1を測定する。そして、計算式:(W0−W1)/W0×100[%]で重量減量を求める。重量減量が本発明の規定する範囲に包含されていない場合は、上記の除去、固定および/または封じ込めを行い、重量減量が本発明の規定する範囲になるまで繰り替えし行うことが好ましい。
【0016】
また、透明樹脂基材は、波長550nmで測定したレターデーションReが、50nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましい。また、面内の任意2点のレターデーションReの差(レターデーションむら)は、好ましくは10nm以下であり、より好ましくは5nm以下である。レターデーションReが大きく、またレターデーションむらが大きいと、液晶表示装置に用いた場合に表示面の明るさにバラツキが生じやすくなる。
【0017】
透明樹脂基材を構成する透明樹脂は、加工性の観点からガラス転移温度が60〜200℃であることが好ましく、100〜180℃であることがより好ましい。なお、ガラス転移温度は示差走査熱量分析(DSC)により測定することができる。
【0018】
透明樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよいし、硬化性樹脂を硬化させたものであってもよいが、後述する凸条を容易に形成できると言う点から硬化性樹脂を硬化させたものが好ましい。
透明な熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、脂環式オレフィンポリマーなどが挙げられる。これらのうち、転写性の観点から、脂環式オレフィンポリマーが好適である。
【0019】
前記硬化性樹脂としては、熱硬化性のものと、エネルギー線硬化性のものとがある。なお、エネルギー線とは、可視光線、紫外線、電子線、X線などのことをいう。
【0020】
前記熱硬化性樹脂の具体例としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
【0021】
前記エネルギー線硬化性樹脂としては、ラジカル重合性不飽和基及び/又はカチオン重合性基を有する低分子量化合物、又は樹脂等が挙げられる。なお、ラジカル重合性不飽和基及び/又はカチオン重合性基は、1分子中に2以上含んでいてもよい。
【0022】
前記ラジカル重合性不飽和基を有する低分子量化合物としては、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン化合物;スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、ピニルナフタレン、4−ビニルピリジン等のラジカル反応性芳香族化合物;アクリル酸、メタクリル酸、フマール酸、マレイン酸、エンド−ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,8−ジカルボン酸(エンディック酸)、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和カルボン酸;アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、マレイン酸クロライド等の前記不飽和カルボン酸のハライド;アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド等の、前記不飽和カルボン酸のアミド若しくはイミド誘導体;無水マレイン酸、無水エンディック酸、無水シトラコン酸等の前記不飽和カルボン酸の無水物;マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、(メタ)アクリル酸アミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アリル(メク)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フエノキシエチル(メタ)アクリレート、へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールへキサ(メタ)アクリレート等の前記不飽和カルボン酸のエステル誘導体; ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシトリエトキシシラン等のラジカル反応不飽和基を有するシラン化合物;等が挙げられる。
【0023】
前記カチオン重合性基を有する低分子量化合物としては、ジシクロペンタジエンジオキサイド、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アセタール、エチレングリコールのビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)エーテル、エチレングリコールの3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸ジエステル等の脂環式エポキシ基を含有する化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ジグリセリンテトラグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、スピログリコールジグリシジルエーテル等のグリシジル基を含有するエポキシ化合物;3−エチル−3−メトキシメチルオキセタン、3−エチル−3−エトキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ブトキシメチルオキセタン、3−エチル−3−アリルオキシメチルオキセタン、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2’−ヒドロキシエチル)オキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2’−ヒドロキシ−3’−フェノキシプロピル)オキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2’−ヒドロキシ−3’−ブトキシプロピル)オキシメチルオキセタン、3−エチル−3−[2’−(2”−エトキシエチル)オキシメチル]オキセタン等のオキセタン環を含有する化合物;等が挙げられる。
【0024】
前記ラジカル重合性不飽和基又はカチオン重合性基を有する樹脂としては、低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等の側鎖にラジカル重合性不飽和基又はカチオン重合性基を有する樹脂が挙げられる。
【0025】
エネルギー線として紫外線や可視光線を用いる場合には、硬化性樹脂の中に光重合開始剤、光増感剤などを含ませる。光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類等が挙げられる。光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等が挙げられる。
【0026】
前記透明樹脂は、前記重量減量の範囲を満たすものであれば、顔料や染料のごとき着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、溶剤などの配合剤が適宜配合されたものであってもよい。
【0027】
本発明に用いられる透明樹脂基材は、前記透明樹脂を公知の方法で成形することによって得られる。成形法としては、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。
【0028】
透明樹脂基材の平均厚さは、取り扱い性の観点から通常5μm〜10mm、好ましくは20〜500μmである。透明樹脂基材は、波長400〜700nmの可視光線領域の光の透過率が80%以上であるものが好ましい。
【0029】
本発明に用いられるグリッド偏光フィルムを製造するにあたって、透明樹脂基材として長尺状のものが好ましく用いられる。長尺とは、幅に対し少なくとも5倍程度以上の長さを有するものを言い、好ましくは10倍もしくはそれ以上の長さを有するものを言い、具体的にはロール状に巻回されて保管または運搬される程度の長さを有するものを言う。
【0030】
長尺状の透明樹脂基材の幅は、好ましくは500mm以上、より好ましくは1000mm以上である。透明樹脂基材は、その製造工程の途中において、任意に、その幅方向の両端を切り落とす(トリミング)ことがある。この場合、前記透明樹脂基材の幅は、両端を切り落とした後の寸法とすることができる。
【0031】
本発明に用いられる好適な透明樹脂基材は、少なくとも一方の表面に細長く線状に延び互いに離間した状態で略平行に複数並ぶ凸条を有するものである。さらに該凸条が可視光線の波長よりも短いピッチ間隔で並び格子に形成されたものが好ましい。該凸条は、細長く略直線状に延びる畝状のものである。凸条の垂直断面形状は特に限定されないが、矩形、台形、菱形、山形などが挙げられる。
【0032】
凸条の高さHは、好ましくは5〜3000nm、より好ましくは20〜1000nm、特に好ましくは50〜300nmである。
凸条間に形成される溝の幅は、好ましくは200nm以下、好ましくは20〜100nmである。
凸条の幅は、好ましくは25〜300nmであり、凸条(稜線)の長さは、好ましくは800nm以上である。
また、凸条の中心間距離(ピッチ)は、好ましくは20〜500nm、より好ましくは30〜300nmである。
凸条のアスペクト比(凸条の高さ/凸条の幅)は、好ましくは0.1〜5.0、より好ましくは0.4〜3.0、特に好ましくは0.8〜2.0である。
【0033】
偏光分離性能などの光学特性を考慮すると、凸条が略平行に周期的に(同一ピッチで)並んだものが好ましい。なお、本発明において、略平行とは、平行方向から±5°の範囲内にあることをいう。
【0034】
上記のような凸条を有する透明樹脂基材は、リソグラフィー法と現像エッチング法との組み合わせによって、または転写型または転写ロールを用いた転写法によって、得ることができる。具体的には、エネルギー線硬化性樹脂を流延して塗膜を得、該塗膜に凸条に対応するパターンでエネルギー線を照射して、該パターンを現像することによって凸条を有する透明樹脂基材を得ることができる。また、エネルギー線硬化性樹脂を流延して塗膜を得、該塗膜に凸条に対応した凹凸を有する金型またはロールを、塗膜に押し当て、該押し当てている状態でエネルギー線を照射し、エネルギー線硬化性樹脂を硬化させることによって凸条を有する透明樹脂基材を得ることができる。
【0035】
本発明のグリッド偏光フィルムを構成するグリッド線は、前記透明樹脂基材の少なくとも一方の表面に積層された互いに略平行に延びた線状金属層である。
金属層(グリッド線)に用いる材料としては、導電性のものが好ましく、具体的には、アルミニウム、インジウム、マグネシウム、ロジウム、スズ等の金属が挙げられる。
金属層は、前記材料を物理蒸着(PVD法)することによって形成することができる。PVD法は、蒸着材料を蒸発・イオン化し、被膜を形成させる方法である。具体的には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング(イオンめっき)法、イオンビームデポジション法等の中から適宜選択することができる。これらのうち真空蒸着法が好適である。真空蒸着法は、真空にした容器の中で、蒸着材料を加熱し気化もしくは昇華して、離れた位置に置かれた基材の表面に付着させ、薄膜を形成する方法である。蒸着材料、基材の種類により、抵抗加熱、電子ビーム、高周波誘導、レーザーなどの方法で加熱される。
【0036】
凸条を有する透明樹脂基材にPVD法による金属層を形成させた場合、前記凸条の頂および/または前記凸条間に形成される溝の底に金属層が形成される(図1、図2、図4参照)。
凸条の長手方向に垂直な断面における凸条の頂に形成された金属層Aの形状は特に制限されず、通常は矩形、台形、円形、山形などである。金属層Aの厚さは、特に制限されないが、通常20〜500nm、好ましくは30〜300nm、より好ましくは40〜200nmである。金属層Aの幅および長さは、通常、凸条の頂面の形状にしたがってほぼ決まる。
【0037】
凸条の長手方向に垂直な断面における凸条間に形成される溝の底に形成された金属層Bの形状は、特に制限されず、通常は矩形、台形、円形、山形などである。金属層Bの厚さは、通常20〜500nm、好ましくは30〜300nmである。金属層Bの幅および長さは、通常、溝の底面の形状にしたがってほぼ決まる。
【0038】
前記のような凹凸面に形成された金属層の一部は、湿式エッチングによって除去することが好ましい。除去される金属層の一部とは、凸条の側壁に形成された部分、凸条の頂の幅からはみ出した部分などである。湿式エッチングは、金属層にエッチング液を接触させる工程と、リンス液で洗浄する工程、およびリンス液を除去する工程を少なくとも含む。
【0039】
金属層にエッチング液を接触させる工程の前に、除去されないようにしたい部分の金属層の上にマスク層を設けてもよい。マスク層には、通常、無機化合物膜が用いられる。このマスク層によって金属層の厚さの減少を少なくして金属層の幅を狭くすることができる。
【0040】
マスキング用の無機化合物は、後述の湿式エッチングに耐えるものであれば特に限定されず、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素または窒化酸化ケイ素などの化合物が挙げられる。これらの中では特に酸化ケイ素が好ましい。積層される無機化合物膜の厚さは、特に制限されないが、通常1〜100nm、好ましくは2〜50nm、より好ましくは3〜20nmである。無機化合物膜はPVD法によって形成できる。
【0041】
金属層にエッチング液を接触させる工程の前に、略平行に並んだ凸条に直交する方向に延伸することができる。この延伸によって凸条の中心間距離が広がり、金属層A間のピッチ間隔が広がり、結果として光線透過率が高くなる。また溝の底面に形成されていた金属層Bの端が、延伸によって、凸条の基部から離れ、隙間ができる。後述する湿式エッチング液がこの隙間に入り込み、金属層Bの両端を優先的に除去し、図4のように、中央よりも両端を薄くすることができる。
【0042】
延伸方法は特に限定されないが、凸条に直交する方向の延伸倍率を好ましくは1.05〜5倍、より好ましくは1.1〜3倍、凸条に平行な方向の延伸倍率を好ましくは0.9〜1.1倍、より好ましくは0.95〜1.05倍にするとよい。このような延伸を行うために、テンター延伸機による連続的な横一軸延伸が好適である。
【0043】
金属層にエッチング液を接触させる工程の前に、金属層の表面改質処理を行うことが好ましい。表面改質処理としては、プラズマ処理、コロナ放電処理、UV照射処理および有機溶剤処理からなる群から選ばれる少なくとも一つの処理が好適なものとして挙げられる。金属層の表面改質処理を行うことによって、光学性能のバラツキが小さくなる。
【0044】
湿式エッチングに用いられるエッチング液は、透明樹脂フィルムを腐食等させずに金属層の一部を除去できる液であれば良く、マスク層(無機化合物膜)、金属層、透明樹脂フィルムの材質に応じて適宜選択される。エッチング液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物を含有する溶液;硫酸、燐酸、硝酸、酢酸、フッ化水素、塩酸などを含有する溶液;過硫酸アンモニウム、過酸化水素、フッ化アンモニウム等やそれらの混合液からなる溶液などが挙げられる。また、エッチング液には界面活性剤などの添加剤が含まれていても良い。
【0045】
金属層にエッチング液を接触させる方法は、特に制限されないが、ディップ法、スプレー法およびコーティング法からなる群から選ばれる少なくとも一つの方法が好ましい。
【0046】
湿式エッチングに用いられるリンス液は、エッチング液を金属層に接触させたときに発生する残渣を取り除く液である。残渣が残ると金属層の表面が荒れ、光学性能に影響を及ぼすことがある。また、残渣が透明樹脂フィルムの好ましく無い場所に付着することがある。
リンス液としては、水(例えば、純水など)、界面活性剤を含有する溶液、などが挙げられる。
リンス液で金属層を洗浄する方法は、金属層に接触したエッチング液およびエッチング残渣を取り除くことができる方法であれば、特に制限されない。
【0047】
リンス液で洗浄した後、リンス液を除去する。リンス液の除去方法は特に制限されないが、エアーブローによる方法が好ましい。
【0048】
本発明のグリッド偏光フィルムは、グリッド線に腐食防止処理を施しても良い。腐食防止処理膜は、グリッド偏光性能の観点から、単分子膜もしくはそれに準じる厚さ、具体的には、100nm以下の厚さが好ましい。
【0049】
本発明のグリッド偏光フィルムは、金属層を形成した側の面に直接または他の層を介して保護層が積層されていてもよい。
保護層は、その材質によって特に制限されないが、透明材料からなるものが好ましい。透明材料としては、ガラス、無機酸化物、無機窒化物、多孔質物質、透明樹脂などが挙げられる。これらのうち、特に透明樹脂からなるものが好ましい。透明樹脂は、前述の透明樹脂基材を構成するものとして示したものから適宜選択して用いることができる。
透明樹脂からなる保護層は、前述の透明樹脂基材同様に、前記同様の方法で測定した重量減量が1%以下であることが好ましく、0.8%以下であることがより好ましい。
保護層の平均厚さは、取り扱い性の観点から通常5μm〜1mm、好ましくは20〜200μmである。保護層は、波長400〜700nmの可視光線領域の光の透過率が80%以上であるものが好ましい。
【0050】
また、保護層は、波長550nmで測定したレターデーションReが、50nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましい。また、面内の任意2点のレターデーションReの差(レターデーションむら)は、好ましくは10nm以下であり、より好ましくは5nm以下である。レターデーションReが大きく、またレターデーションむらが大きいと、液晶表示装置に用いた場合に表示面の明るさにバラツキが生じやすくなる。
【0051】
保護層を積層させるために接着剤(粘着剤を含む)を用いることができる。接着剤からなる層(接着層)の平均厚さは、通常0.01μm〜30μm、好ましくは0.1μm〜15μmである。保護層を接着剤で貼り付ける場合には、グリッド線間の空間に接着剤が入り込まないようにし、グリッド線間の空間に空気が残るようにすることが偏光分離性能を高める点で好ましい。
また、接着層は、前述の透明樹脂基材同様に、80℃の温水に24時間浸漬した前後の重量減量が1%以下、好ましくは0.8%以下であることが好ましい。
【0052】
本発明のグリッド偏光フィルムは、前記グリッド線の間に空気または不活性ガスが含まれる空間がある。図1のような平らな透明樹脂基材310の表面にグリッド線311が形成されているグリッド偏光フィルムでは、空間312がグリッド線間に形成される。図2および図3のような凸条を有する透明樹脂基材310の表面にグリッド線311および311’が形成されているグリッド偏光フィルムでは、空間312が凸条とその上に積層されたグリッド線311の間に形成される。グリッド線間には通常空気が含まれているが、不活性ガスが含まれていてもよい。不活性ガスとしては屈折率の小さいものが好ましく、窒素、ヘリウムなどが挙げられる。
【0053】
本発明のグリッド偏光フィルムは、該透明樹脂基材、グリッド線、およびグリッド線の頂点を結ぶ線で囲まれる空間(グリッド線間の空間)のグリッド線の長手に垂直な方向の平均断面積が、温度65℃、相対湿度95%の環境下に500時間放置した後において、放置前の平均断面積の50%以上、好ましくは70%以上である。なお断面積の平均は、少なくとも10箇所以上のグリッド線間の空間を計測して求める。
グリッド線間には空間が設けられている。そのグリッド線間の空間が、温度65℃、相対湿度95%の環境下に放置することによって、平均断面積として50%を超えて減少する場合には、グリッド偏光フィルムの耐環境性が低くなり、苛酷な環境下での長時間使用によって、グリッド偏光フィルムの偏光性能が低下してくる。
【0054】
グリッド線間の空間が減少する原因は定かではないが、透明樹脂基材およぶ/または保護層を構成する樹脂に含有する成分が滲み出てきて、グリッド線間を埋めるのではないかと考えられる。このことは、偏光性能が低下したグリッド偏光フィルムの凸条の幅が細くなっていることが電子顕微鏡によって観察されることからも推定される。
【実施例】
【0055】
以下に実施例、比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
実施例1
8mm×8mm×60mmのSUS製シャンクにろう付けされた寸法0.2mm×1mm×1mmの直方体単結晶ダイヤモンドの0.2mm×1mmの面に、集束イオンビーム加工装置SMI3050(セイコーインスツルメンツ社製)を用いてアルゴンイオンビームによる集束イオンビーム加工を行い、長さ1mmの辺に平行な幅90nm、深さ80nmの矩形の溝をピッチ180nmで彫り込み、切削工具を作製した。
【0057】
直径200mmで長さ150mmのステンレス鋼SUS430製円筒の曲面全面に、厚さ100μmのニッケル−リン無電解メッキを施した。次いで、先に作製した切削工具と、精密円筒研削盤S30−1(スチューダ社製)を用いて、ニッケル−リン無電解メッキ面に切削加工し、円筒の円周端面に平行な幅90nmで高さ80nmの断面矩形の凸条がピッチ180nmで円筒の曲面全面に形成された転写ロールを得た。なお、集束イオンビーム加工による切削工具の作製と、ニッケル−リン無電解メッキ面の切削加工は、振動制御システム(昭和サイエンス社製)により0.5Hz以上の振動の変位が10μm以下に管理された、温度20.0±0.2℃の恒温低振動室内で行った。
【0058】
イソボルニルアクリレート86.6重量部、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート9.6重量部および光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュアー184)3.8重量部からなる塗布液を、コロナ放電による表面処理を施した厚さ100μmのシクロオレフィンポリマーフィルム(ZF−14、オプテス社製)面に5μmの厚さで塗布した。該塗布面に前記転写ロールを接触させ、該接触している状態においてフィルム側から紫外線を1J/cm2照射し塗布膜を硬化させて、転写ロール面の形状を塗布膜に転写した。得られた転写フィルムはロール状に巻き取った。
転写フィルムから硬化膜(透明樹脂基材)を剥がし、該硬化膜を10cm×10cmの大きさに切り出した。切り出された硬化膜を100℃で2時間真空乾燥し重量を計測後、80℃の水に24時間浸漬した。浸漬後、100℃で2時間真空乾燥し、重量を計測し重量減量を算出した。硬化膜の浸漬前後の重量減量は0.02%であった。
【0059】
前記の転写フィルムの凹凸面側に、法線方向からアルミニウムを真空蒸着し成膜した。次いで、上記アルミニウム蒸着フィルムを、硝酸5.2重量%、リン酸73.0重量%、酢酸3.4重量%、及び残部が水からなる組成(酸成分相当濃度:81.6重量%)で、温度33℃のエッチング液に30秒間浸漬し、次いで水で洗浄し、120℃で5分間乾燥して、長尺のグリッド偏光フィルムを作製した。
【0060】
このグリッド偏光フィルムをアルミノホスホネート水溶液(濃度0.0002容量%、80℃)に20分間浸漬し、蒸留水で1分間洗浄し、120℃で20分間乾燥した(防食処理)。
【0061】
防食処理されたグリッド偏光フィルムは、図4のような構造をしており、グリッド線間の空間の平均断面積が10567nm2であることが、透過電子顕微鏡H−7500(日立製作所社製)によって観察された。また、温度65℃、相対湿度95%の環境下に500時間放置した後の防食処理されたグリッド偏光フィルムはグリッド線間の空間の平均断面積が10419nm2であることが、透過電子顕微鏡H−7500(日立製作所社製)によって観察された。なお、前記透過電子顕微鏡による断面観察用試料は、集束イオンビーム加工観察装置FB−2100(日立製作所社製)のマイクロサンプリング装置を使用して作成した。平均断面積は電子顕微鏡観察像を画像解析ソフト(SoftImaging System社製、AnlySIS)によって計算して求めた。
【0062】
実施例2
イソボルニルアクリレート86.6重量部、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート9.6重量部および光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュアー184)3.8重量部からなる塗布液を、コロナ放電による表面処理を施した厚さ100μmのシクロオレフィンポリマーフィルム(ZF−14、オプテス社製)面に5μmの厚さで塗布した。該塗布面に前記転写ロールを接触させ、該接触している状態においてフィルム側から紫外線を500mJ/cm2照射し塗布膜を硬化させて、転写ロール面の形状を塗布膜に転写した。得られた転写フィルムはロール状に巻き取った。
転写フィルムから硬化膜(透明樹脂基材)を剥がし、該硬化膜を10cm×10cmの大きさに切り出した。切り出された硬化膜を100℃で2時間真空乾燥し重量を計測後、80℃の水に24時間浸漬した。浸漬後、100℃で2時間真空乾燥し、重量を計測し重量減量を算出した。硬化膜の浸漬前後の重量減量は5.3%であった。
【0063】
該転写フィルムを、80℃の温水に浸漬し、超音波を掛けて洗浄した。次いで120℃で乾燥した。洗浄後の転写フィルムから硬化膜(透明樹脂基材)を剥がし、該硬化膜を10cm×10cmの大きさに切り出した。切り出された硬化膜を100℃で2時間真空乾燥し重量を計測後、80℃の水に24時間浸漬した。浸漬後、100℃で2時間真空乾燥し、重量を計測し重量減量を算出した。硬化膜の浸漬前後の重量減量は0.7%であった。
【0064】
前記洗浄後の転写フィルムを用いた他は実施例1と同様にして、防食処理されたグリッド偏光フィルムを得た。
防食処理されたグリッド偏光フィルムは、図4のような構造をしており、グリッド線間の空間の平均断面積が10297nm2であることが、透過電子顕微鏡H−7500(日立製作所社製)によって観察された。また、温度65℃、相対湿度95%の環境下に500時間放置した後の防食処理されたグリッド偏光フィルムは、グリッド線間の空間の平均断面積が7397nm2であることが、透過電子顕微鏡H−7500(日立製作所社製)によって観察された。なお、前記透過電子顕微鏡による断面観察用試料は実施例1と同様にして作成し、平均断面積は実施例1と同様にして求めた。
【0065】
実施例3
イソボルニルアクリレート86.6重量部、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート9.6重量部および光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュアー184)3.8重量部からなる塗布液を、コロナ放電による表面処理を施した厚さ100μmのシクロオレフィンポリマーフィルム(ZF−14、オプテス社製)面に5μmの厚さで塗布し、該塗布面に前記転写ロールを接触させ、該接触している状態においてフィルム側から紫外線を500mJ/cm2照射し塗布膜を硬化させて、転写ロール面の形状を塗布膜に転写した。得られた転写フィルムはロール状に巻き取った。
【0066】
転写フィルムから硬化膜(透明樹脂基材)を剥がし、該硬化膜を10cm×10cmの大きさに切り出した。切り出された硬化膜を100℃で2時間真空乾燥し重量を計測後、80℃の水に24時間浸漬した。浸漬後、100℃で2時間真空乾燥し、重量を計測し重量減量を算出した。硬化膜の浸漬前後の重量減量は5.3%であった。
【0067】
該転写フィルムに、紫外線を800mJ/cm2照射した。紫外線800mJ/cm2照射後の転写フィルムから硬化膜(透明樹脂基材)を剥がし、該硬化膜を10cm×10cmの大きさに切り出した。切り出された硬化膜を100℃で2時間真空乾燥し重量を計測後、80℃の水に24時間浸漬した。浸漬後、100℃で2時間真空乾燥し、重量を計測し重量減量を算出した。硬化膜の浸漬前後の重量減量は0.2%であった。
【0068】
前記紫外線800mJ/cm2照射後の転写フィルムを用いた他は実施例1と同様にして、防食処理されたグリッド偏光フィルムを得た。
防食処理されたグリッド偏光フィルムは、図4のような構造をしており、グリッド線間の空間の平均断面積が12836nm2であることが、透過電子顕微鏡H−7500(日立製作所社製)によって観察された。また、温度65℃、相対湿度95%の環境下に500時間放置した後の防食処理されたグリッド偏光フィルムは、グリッド線間の空間の平均断面積が11679nm2であることが、透過電子顕微鏡H−7500(日立製作所社製)によって観察された。なお、前記透過電子顕微鏡による断面観察用試料は実施例1と同様にして作成し、平均断面積は実施例1と同様にして求めた。
【0069】
実施例4
イソボルニルアクリレート86.6重量部、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート9.6重量部および光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュアー184)3.8重量部からなる塗布液を、コロナ放電による表面処理を施した厚さ100μmのシクロオレフィンポリマーフィルム(ZF−14、オプテス社製)面に5μmの厚さで塗布した。該塗布面に前記転写ロールを接触させ、該接触している状態においてフィルム側から紫外線を500mJ/cm2照射し塗布膜を硬化させて、転写ロール面の形状を塗布膜に転写した。得られた転写フィルムはロール状に巻き取った。
転写フィルムから硬化膜(透明樹脂基材)を剥がし、該硬化膜を10cm×10cmの大きさに切り出した。切り出された硬化膜を100℃で2時間真空乾燥し重量を計測後、80℃の水に24時間浸漬した。浸漬後、100℃で2時間真空乾燥し、重量を計測し重量減量を算出した。硬化膜の浸漬前後の重量減量は5.3%であった。
該転写フィルムに、アルゴンガス存在下にてフィルムの法線方向から畝状凸部形成面にSiO2を出力400Wでスパッタリングしてバリア層を成膜した。厚さは2nmであった。
【0070】
バリア層形成後の転写フィルムから硬化膜(透明樹脂基材)を剥がし、該硬化膜を10cm×10cmの大きさに切り出した。切り出された硬化膜を100℃で2時間真空乾燥し重量を計測後、80℃の水に24時間浸漬した。浸漬後、100℃で2時間真空乾燥し、重量を計測し重量減量を算出した。硬化膜の浸漬前後の重量減量は0.65%であった。
【0071】
前記バリア層形成後の転写フィルムを用いた他は実施例1と同様にして、防食処理されたグリッド偏光フィルムを得た。
防食処理されたグリッド偏光フィルムは、図4のような構造をしており、グリッド線間の空間の平均断面積が10073nm2であることが、透過電子顕微鏡H−7500(日立製作所社製)によって観察された。また、温度65℃、相対湿度95%の環境下に500時間放置した後の防食処理されたグリッド偏光フィルムは、グリッド線間の空間の平均断面積が8569nm2であることが、透過電子顕微鏡H−7500(日立製作所社製)によって観察された。なお、前記透過電子顕微鏡による断面観察用試料は実施例1と同様にして作成し、平均断面積は実施例1と同様にして求めた。
【0072】
比較例
イソボルニルアクリレート86.6重量部、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート9.6重量部および光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュアー184)3.8重量部からなる塗布液を、コロナ放電による表面処理を施した厚さ100μmのシクロオレフィンポリマーフィルム(ZF−14、オプテス社製)面に5μmの厚さで塗布し、該塗布面に前記転写ロールを接触させ、該接触している状態においてフィルム側から紫外線を500mJ/cm2照射し塗布膜を硬化させて、転写ロール面の形状を塗布膜に転写した。得られた転写フィルムはロール状に巻き取った。
【0073】
転写フィルムから硬化膜(透明樹脂基材)を剥がし、該硬化膜を10cm×10cmの大きさに切り出した。切り出された硬化膜を100℃で2時間真空乾燥し重量を計測後、80℃の水に24時間浸漬した。浸漬後、100℃で2時間真空乾燥し、重量を計測し重量減量を算出した。硬化膜の浸漬前後の重量減量は5.3%であった。
【0074】
該転写フィルムを用いた他は実施例1と同様にして、防食処理されたグリッド偏光フィルムを得た。
防食処理されたグリッド偏光フィルムは、図4のような構造をしており、グリッド線間の空間の平均断面積が10398nm2であることが、透過電子顕微鏡H−7500(日立製作所社製)によって観察された。また、温度65℃、相対湿度95%の環境下に500時間放置した後の防食処理されたグリッド偏光フィルムはグリッド線間の空間の平均断面積が2894nm2であることが、透過電子顕微鏡H−7500(日立製作所社製)によって観察された。なお、前記透過電子顕微鏡による断面観察用試料は実施例1と同様にして作成し、平均断面積は実施例1と同様にして求めた。
【0075】
グリッド偏光フィルムの偏光特性は、下記に示す輝度向上率を、温度65℃、相対湿度95%の環境下に500時間放置した前後において、それぞれ測定することによって評価した。
【0076】
(輝度向上率測定)
入射端面側に冷陰極管が配置され、かつ裏面側に光反射シートが設けられた導光板の出射面側に、順次光拡散シート、吸収型偏光板を置いて、偏光光源装置Aを作製した。前記偏光光源装置Aの上に、透過型のTN液晶セルを載せ、その上に別の吸収型偏光板を(偏光透過軸が前記吸収型偏光板のものと直交するように)載せて、液晶表示装置Aを得た。得られた液晶表示装置Aを白表示にし、正面輝度(A)を輝度計(BM−7、トプコン製)を用いて測定した。
【0077】
入射端面側に冷陰極管が配置され、かつ裏面側に光反射シートが設けられた導光板の出射面側に、順次光拡散シート、下記で得られたグリッド偏光子を置き、さらにその上に吸収型偏光板をその偏光透過軸がグリッド偏光子の偏光透過軸と平行になるように載置して偏光光源装置Bを作製した。前記偏光光源装置Bの上に、透過型のTN液晶セルを載せ、その上に別の吸収型偏光板を(偏光透過軸が前記吸収型偏光板のものと直交するように)載せて、液晶表示装置Bを得た。得られた液晶表示装置Bを白表示にし、正面輝度(B)を輝度計(BM−7、トプコン製)を用いて測定した。そして輝度向上率を下式で求めた。
(輝度向上率)=正面輝度(B)/正面輝度(A)×100 (%)
【0078】
【表1】

【0079】
表1に示すように、80℃の温水に24時間浸漬前後の重量減量が1%を超える板状の透明樹脂基材を用いた比較例のグリッド偏光フィルムは、500時間の高温高湿環境下での放置によって、グリッド線間の空間の断面積が大幅に減少し、輝度向上率が大幅に低下していることがわかる。
一方、80℃の温水に24時間浸漬前後の重量減量が1%以下の板状の透明樹脂基材を用いた実施例のグリッド偏光フィルムは、グリッド線間の空間の断面積が50%以上残っており、輝度向上率が500時間の高温高湿環境下に放置しても輝度向上率がほとんど低下しないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】グリッド偏光フィルムの一実施態様を示す斜視概念図である。
【図2】グリッド偏光フィルムの他の実施態様を示す斜視概念図である。
【図3】図2のグリッド偏光フィルムの断面を示す概念図である。
【図4】グリッド偏光フィルムの他の実施態様を示す斜視概念図である。
【符号の説明】
【0081】
310 : 透明樹脂基材
311 : 金属層A
311’: 金属層B
312 : 金属層間の空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の透明樹脂基材と、該透明樹脂基材の少なくとも一方の表面に積層された互いに略平行に延びた複数のグリッド線とを含んでなり、
該透明樹脂基材、グリッド線、およびグリッド線の頂点を結ぶ線で囲まれる空間のグリッド線の長手に垂直な方向の平均断面積が、温度65℃、相対湿度95%の環境下に500時間放置した後において、放置前の平均断面積の50%以上である、グリッド偏光フィルム。
【請求項2】
板状の透明樹脂基材は、100℃で2時間真空乾燥した後の重量W0から、80℃の温水に24時間浸漬し次いで100℃で2時間真空乾燥した後の重量W1への重量減量がW0の1%以下である請求項1に記載のグリッド偏光フィルム。
【請求項3】
透明樹脂基材が硬化性樹脂で形成されたものである、請求項1または2に記載のグリッド偏光フィルム。
【請求項4】
透明樹脂基材が、少なくとも一方の表面に細長く線状に延び互いに離間した状態で略平行に複数並ぶ凸条を有するものであり、
グリッド線が、前記凸条の頂に在る金属層A及び/又は前記凸条間に形成される溝の底に在る金属層Bによって構成されているものである、請求項1〜3のいずれかに記載のグリッド偏光フィルム。
【請求項5】
80℃の温水によって溶出する成分を板状の透明樹脂基材から除去および/または該透明樹脂基材に固定し若しくは封じ込め、
次いでグリッド線を形成する、ことを含む、請求項1〜4のいずれかに記載のグリッド偏光フィルムの製法。
【請求項6】
硬化性樹脂を硬化させて板状の透明樹脂基材を形成することを含む、請求項5に記載のグリッド偏光フィルムの製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−86040(P2009−86040A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252489(P2007−252489)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】