説明

グリル扉

【課題】使用者が扉の上端部に触れても、使用者が感じる熱さを十分に低減できるグリル扉を提供する。
【解決手段】グリル庫が機器本体の中に収納され、前記グリル庫の外郭上面と前記機器本体との間に断熱用の間隙を有するグリル庫の前面開口部を開閉するグリル扉で、前記グリル扉は、前記グリル庫の前記前面開口部の周縁に当接して該前面開口部を閉塞する扉本体と、前記扉本体の上端から後方に向けて延設される庇部と、前記庇部の上面との間に空隙を保って前記庇部の上面を覆う断熱部材と、を備え、前記グリル扉が前記前面開口部を閉じた閉じ位置に位置するときに前記庇部および前記断熱部材が前記断熱用の間隙に没入する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリル庫の前面開口部を開閉するグリル扉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスコンロなどのグリル庫の前面開口部は、グリル扉により開閉される。グリル扉は、金属製の扉枠に形成された窓開口にガラス板が嵌め込まれて構成される。ここでグリル扉として、グリル庫内に出し入れ自在に収納されるグリル受皿の前端部にグリル扉の下端部が固定され、グリル扉を手前に引き出すことでグリル受皿をグリル庫から引き出すものを対象とする。
【0003】
このようなグリル庫においては、グリル庫内から焼き魚等の調理物を取り出す際に、グリル扉およびグリル受皿を手前に引き出すが、この時、扉枠の上端部が露出して使用者の手が触れ易いものである。扉枠は、グリル庫内の熱源からの輻射熱や伝導熱によって熱くなるので、誤って使用者が扉枠の上端部に手を触れると熱く、使用者に不快感を与えてしまうおそれがあった。
【0004】
この種のグリル扉において、扉枠の上端部にシリコンゴム製の断熱材を設けたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−93242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示されるものにあっては、使用者が扉枠の上端部に触れたときの熱さを緩和することができるが、シリコンゴム製の断熱材は軟質であり、グリル庫への調理物の出し入れの際に使用者の手が触れると外れ易いため、使い勝手が悪い。
【0007】
また、硬質の合成樹脂により形成した上縁部材により扉枠の上端部を覆い、この上縁部材をねじ部材等により扉枠に確実に固定して不用意な外れを防止することが考えられるが、上縁部材の材質を硬質の合成樹脂にしても、誤って使用者が扉枠の上端部に手を触れると使用者が感じる熱さは十分に低減されないものであった。
【0008】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、使用者が扉の上端部に触れても、使用者が感じる熱さを十分に低減できるグリル扉を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、グリル庫が機器本体の中に収納され、前記グリル庫の外郭上面と前記機器本体との間に断熱用の間隙を有するグリル庫の前面開口部を開閉するグリル扉であって、前記グリル扉は、前記グリル庫の前記前面開口部の周縁に当接して該前面開口部を閉塞する扉本体と、前記扉本体の上端から後方に向けて延設される庇部と、前記庇部の上面との間に空隙を保って前記庇部の上面を覆う断熱部材と、を備え、前記グリル扉が前記前面開口部を閉じた閉じ位置に位置するときに前記庇部および前記断熱部材が前記断熱用の間隙に没入することを特徴とする。
【0010】
断熱部材が、庇部の上面との間に空隙を介して設けられているため、庇部からの熱伝導が抑制されて断熱部材の温度が上昇し難く、また、グリル庫において調理を行なう状態においてグリル扉が前面開口部を閉じた閉じ位置に位置するとき、庇部および断熱部材が共に、グリル庫の外郭上面と機器本体との間に設けられた断熱用の間隙に没入するから庇部の温度上昇がさらに抑制される。
【0011】
つまり、グリル庫の外郭上面と機器本体との間に設けられた断熱用の間隙の温度はグリル庫内よりその温度が低いものであり、この断熱用の間隙に没入する庇部の温度上昇が抑制されるのである。また、グリル庫において調理を行なう状態においてグリル扉が前面開口部を閉じた閉じ位置から少し開いた状態になったときには少量の熱気がグリル扉周辺からグリル庫外に溢出することになり、この溢出する熱気によりグリル扉の上端付近の温度が上昇することになるが、庇部および断熱部材が共に上記断熱用の間隙に没入することでグリル扉上端付近からの上記熱気の溢出が抑制されてグリル扉上端付近の温度上昇はさらに抑制される。
【0012】
また請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記断熱部材の上面における左右両端において前後方向に伸びる突条が、前記断熱部材の上面から上方に向けて突設されていることを特徴とするものである。
【0013】
これにより、グリル扉が上記閉じ位置にあるときに多少上方向にずれた場合であっても、前記断熱部材の上面から上方に向けて突設されている突条がスペーサーとして作用し、機器本体と断熱部材上面との間に隙間が確保でき、断熱部材の温度上昇が更に抑制される。
【0014】
つまり、グリル庫の外郭上面と機器本体との間には断熱用の間隙を有するものの、グリル庫の外郭上面の温度上昇に伴って、グリル庫の外郭上面と対向する機器本体の温度は上昇するものである。そして、グリル庫の外郭上面と対向する機器本体の温度が上昇した時にもる上記突条がスペーサーとして作用して断熱部材の上面が直接機器本体と接触することが回避されて断熱部材の温度上昇が更に抑制される。しかも、前後方向に伸びる突条は断熱部材の上面における左右両端において突設されているから、グリル扉の後部に備えることになる焼き網から被調理物を取り出すときに使用者が前後方向に伸びる突条に触れるおそれが少ない。
【0015】
さらに、スペーサーとして作用する突条は断熱部材の上面において前後方向に伸びるものであるから、この突如が機器本体と接触してもグリル扉を滑らかに開閉し易いものとなる。
【0016】
また請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係る発明において、前記断熱部材の前端縁から上方に向けて前端縁突条が突設されていることを特徴とするものである。
【0017】
これにより、断熱部材の上面が直接機器本体と接触することを回避するために機器本体と断熱部材上面との間に隙間を確保したときに、グリル扉上端と上記機器本体との間に形成される帯状の隙間を上記前端縁突条によって埋めるまたは覆うことができ、良好な美観が得られる。
【発明の効果】
【0018】
断熱部材が、庇部の上面との間に空隙を介して設けられているため、庇部から熱が伝導し難く断熱部材の温度が上昇し難く、また、グリル庫において調理を行なう状態においてグリル扉が前面開口部を閉じた閉じ位置に位置するとき、庇部および断熱部材が共に、グリル庫の外郭上面と機器本体との間に設けられた断熱用の間隙に没入するから庇部の温度上昇がさらに抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態のグリル扉を備えたグリル付きガスコンロの全体斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態のグリル扉の前方の斜め上方より見た斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態のグリル扉の側断面図である。
【図4】本発明の一実施形態のグリル扉の拡大側断面図である。
【図5】本発明の一実施形態のグリル扉が閉じ位置にあるときの機器本体と同上のグリル扉との関係を表す側断面図である。
【図6】本発明の一実施形態のグリル扉が閉じ位置から少し開いた位置にあるときの機器本体と同上のグリル扉との関係を表す側断面図である。
【図7】本発明によらないグリル扉が閉じ位置から少し開いた位置にあるときの機器本体とグリル扉との関係を表す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。グリルは、以下に示す実施形態では図1、に示すグリル付きガスドロップインコンロ1が備えるグリルであるが、コンロ部を備えない単独のグリルでもよく、少なくともグリルを備えた加熱調理器であれば特に限定されない。
【0021】
グリル付きガスドロップインコンロ1は、前後左右の側面を有し上方に開口する機器本体11と、機器本体11の後方寄りにおいて上方への開口を閉塞する天板12とでケーシングが構成され、機器本体11の前方寄りにおいて機器本体11は上方に開口しておらず、機器本体前部天面15により上方が覆われている。天板12は本実施形態ではガラス製であるが特に限定されないものであり、天板12にはコンロバーナ13を有するコンロ部が複数設けられている。
【0022】
グリル付きガスドロップインコンロ1内には、熱源としてグリルバーナ(図示せず)を有するグリル庫が設けてある。グリル庫は、前方に向けて開口する筐体からなり、本実施形態では、前記前方に向けた開口は機器本体11の前面の左右方向の略中央部に形成された略同形状の開口と接続され、グリル付きガスドロップインコンロ1の前方に連通する前面開口部10となる。前面開口部10は、グリル扉2により開閉自在に閉塞されるもので、グリル扉2については後述する。図示しないが、グリル庫内の下部の後方にグリル受皿を設けると共に、グリル受皿上に、調理物を載置するための焼き網を設置して、焼き網に載置された調理物をグリルバーナにて加熱するように構成されている。グリル庫の後方側には、グリルバーナの燃焼排ガスをグリル庫外に排気させる排気通路が上側に延びるように後方側に連設され、その排気通路にてグリルバーナの燃焼排ガスを天板12の後部に形成された排気出口14に導くように構成されている。グリルバーナは、グリル庫の上部に配設され焼き網に載置される調理物の上面を加熱する上バーナと、グリル庫の下部に配設され調理物の下面を加熱する左右一対の下バーナとの上下バーナからなるものや、上下一方のバーナからなるものでもよく、特に限定されない。なお、熱源としては、グリルバーナの他に、通電により輻射熱を放射するヒータのように、燃焼によらないものでもよい。
【0023】
機器本体11の前面のグリル扉2の両側には、コンロバーナ13およびグリルバーナの操作部7が設けられる。
【0024】
以下、グリル扉2について図2乃至図7に基づいて説明する。グリル扉2は、金属性の扉本体21と、扉本体21の上端から後方に向けて延設される金属製の庇部22と、庇部22の上面との間に空隙24を保って庇部22の上面を覆う樹脂製の断熱部材23とで主体が構成される。なお、断熱部材23は庇部22と共に扉本体21の上端部にネジによって固定されている。また、扉本体21、庇部22、断熱部材23の材質は本実施例で用いられている一例を示すもので、本発明の構成が上記材質に限定されるものではない。
【0025】
断熱部材23の上面の左右両端には、前後方向に伸びる突条25が上方に突設され、断熱部材23の前端縁から上方に向けて前端縁突条3が突設されている。
【0026】
図4から図6に示すように、扉本体21の上端には後方に向けて金属性の庇部22がネジ止めされて延設され、この庇部22の上面との間に空隙24を保って断熱部材23が庇部22と共にネジ止めされており、扉本体21がグリル庫の前面開口部10の周縁4と当接した時には、庇部22および断熱部材23は共にグリル庫の外郭上面31と機器本体前部天面15との間に形成されている断熱用の間隙16に没入する。
【0027】
上記断熱用の間隙16は、グリルを使用した際に高温となるグリル庫の外郭上面31の熱によって機器本体前部天面15が温度上昇することを抑制するものであり、この断熱用の間隙16は、グリル庫内より温度が低くなっている。
【0028】
グリルを使用した際にはグリル庫内の温度上昇により扉本体21の温度が上昇するものであるが、グリルでの調理が完了した際などに被調理物である魚などを取り出すときに使用者が誤って触れてしまうおそれがあるグリル扉2の上端の後方側は、庇部22の上面との間に空隙24を保って樹脂製の断熱部材23に覆われているから、扉本体21の熱がグリル扉2の上端の後方側、つまり、断熱部材23の後方に伝わりにくく使用者が感じる熱さが低減される。
【0029】
グリルを使用する際に、扉本体21がグリル庫の前面開口部10の周縁4と当接せず扉本体21とグリル庫の前面開口部10の周縁4との間に多少の隙間41が存在する場合には、グリル庫内の熱気がこの隙間41から漏れ出ることになるが、庇部22および断熱部材23は共に断熱用の間隙16に没入しているため、隙間41から溢出した熱気は庇部22の下方を一旦断熱用の間隙16の後方側に流れて、その後、断熱部材23の後方側から断熱部材23の上面側に回り込み、その後グリル付きガスドロップインコンロ1の前方に排出される。
【0030】
これに対し、上記断熱用の間隙16に没入する庇部22および断熱部材23を備えない場合において、グリルを使用する際に、扉本体21がグリル庫の前面開口部10の周縁4と当接せず扉本体21とグリル庫の前面開口部10の周縁4との間に多少の隙間41が存在する場合には、上記のように、隙間41から溢出した熱気は庇部22の下方を一旦断熱用の間隙16の後方側に流れて、その後、断熱部材23の後方側から断熱部材23の上面側に回り込むことによる溢出した熱気の通過抵抗の増加が無いから、上記断熱用の間隙16に没入する庇部22および断熱部材23を備える場合に比べて溢出する熱気の溢出量が多くなりグリル扉2の上端における温度が高くなってしまう。
【0031】
つまり、上記断熱用の間隙16に没入する庇部22および断熱部材23を備える場合には、上記断熱用の間隙16に没入する庇部22および断熱部材23を備えない場合に比べてグリル扉2上端における温度が低減される。
【0032】
また、上記グリル庫の前面開口部10の周縁4との間の隙間41から溢出する熱気は、先ず庇部22にぶつかり、その後庇部22の下方を一旦断熱用の間隙16の後方側に流れる間に溢出する熱気は温度が下がり、その後断熱部材23の上面側に回り込むから、断熱部材23を一般的に耐熱温度が低い樹脂などの材料よって構成しても耐熱性に関する問題が生じない。
【0033】
さらに、一般的に、グリル用の熱源はグリル庫の前面開口部10の周縁4の後方側に備えるものであり、グリル庫の前面開口部10の周縁4の後方側においてグリル庫の外郭上面31から機器本体天面に伝播した熱が熱伝導により機器本体前部天面15の温度は高くなるが、 また、断熱部材23の上面における左右両端において前後方向に伸びる突条25が、断熱部材23の上面から上方に向けて突設されているから、製作バラツキなどにより、グリル扉が上記閉じ位置にあるときに多少上方向にずれた場合であっても、前後方向に伸びる突条25がスペーサーとして作用して断熱部材23の左右方向中央付近の上面が直接機器本体前部天面15と接触することが回避されて断熱部材23の左右方向中央付近の温度上昇が更に抑制される。
【0034】
断熱部材23の前端縁から上方に向けて前端縁突条3が突設されている。断熱部材23の上面が直接機器本体前部天面15と接触することを回避するために機器本体前部天面15と断熱部材23の上面との間に隙間を確保したときに、グリル扉2の上端と機器本体前部天面15との間に生じる帯状の隙間を前端縁突条3によって埋めるまたは覆うことができ、上述のようにグリル扉2上端の温度低減を図れると共に良好な美観が得られる。
【符号の説明】
【0035】
1 グリル付きガスドロップインコンロ
10 前面開口部
11 機器本体
12 天板
13 コンロバーナ
14 排気出口
15 機器本体前部天面
16 断熱用の間隙
2 グリル扉
21 扉本体
22 庇部
23 断熱部材
24 空隙
25 前後方向に伸びる突条
3 前端縁突条
31 グリル庫の外郭上面
4 グリル庫の前面開口部の周縁
41 扉本体とグリル庫の前面開口部の周縁との間の隙間
7 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリル庫が機器本体の中に収納され、前記グリル庫の外郭上面と前記機器本体との間に断熱用の間隙を有するグリル庫の前面開口部を開閉するグリル扉であって、前記グリル扉は、前記グリル庫の前記前面開口部の周縁に当接して該前面開口部を閉塞する扉本体と、前記扉本体の上端から後方に向けて延設される庇部と、前記庇部の上面との間に空隙を保って前記庇部の上面を覆う断熱部材と、を備え、前記グリル扉が前記前面開口部を閉じた閉じ位置に位置するときに前記庇部および前記断熱部材が前記断熱用の間隙に没入することを特徴とするグリル扉。
【請求項2】
前記断熱部材の上面における左右両端において前後方向に伸びる突条が、前記断熱部材の上面から上方に向けて突設されていることを特徴とする請求項1記載のグリル扉。
【請求項3】
前記断熱部材の前端縁から上方に向けて前端縁突条が突設されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のグリル扉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−50225(P2013−50225A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186785(P2011−186785)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(301071893)株式会社ハーマン (94)
【Fターム(参考)】