説明

グリル装置の前扉

【課題】グリル装置の前扉に設けた把手の突出量を少なく抑え、かつ、前扉の部品点数を
削減する。
【解決手段】誘導加熱調理器1に設けたグリル装置20の前面に形成した開口23に対し
て開閉可能に設置される前扉30において、該前扉30の把手部45を前カバー41の前
面41aに一体形成した。把手部45を前カバー41に一体形成したことで、把手部45
が前扉30の前面30aから手前側へ突出する突出量を少なく抑えることが可能となる。
したがって、把手部45が調理者の身体に接触し難くなり、調理作業の邪魔にならずに済
むようになる。また、前扉30の部品点数を少なく抑えることができるので、グリル装置
20の部品点数の削減及び組立工程の簡素化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱調理器などの各種調理器に内蔵されたグリル装置を開閉するための
前扉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示すように、調理容器を載置する天板と、該天板の下方に配
置した調理容器を加熱する誘導加熱コイルとを備えてなる誘導加熱調理器(いわゆるIH
クッキングヒーター)がある。この種の誘導加熱調理器は、ガスを使わずに大きな火力で
揚げ物や煮物あるいは焼き物などの調理が行えるため、近年、各家庭において広く普及し
ている。
【0003】
上記のような誘導加熱調理器をはじめとする各種調理器は、魚焼きなどの調理を行うた
めのグリル装置を内蔵している。グリル装置は、グリルケース(加熱室)と、グリルケー
スの前面に設けた開口を開閉するための前扉(フロントパネル)とを備えている。前扉の
後面側には、グリルケース内を前後方向に移動することで出し入れされる受皿と、該受皿
に載置されて加熱室内に設置される食品載置用の網棚とが取り付けられている。一方、前
扉の前面には、手で握ることで前扉を前後に移動させるための把手が取り付けられている
。把手を握って手前側に引くことで、前扉を手前側に引き出すことができる。前扉が手前
側へ引き出されることにより、グリルケースの開口が開かれると共に、前扉に取り付けた
受皿及び網棚が手前側へスライド移動してグリルケースから取り出されるようになってい
る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−190024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような前扉の把手は、従来、前扉本体とは別体の把手部品を前扉の前
面に取り付けることで形成されていた。したがって、把手が前扉の前面から大きく前側に
突出した状態になっていた。しかしながら、グリル装置の前扉は、調理器の前に立った調
理者の腰辺りの高さ位置にあるのが通常である。そのため、前扉に取り付けた把手が前扉
の前面から大きく突出していると、把手が調理者の身体に接触し易くなり、調理作業の邪
魔になるおそれがあった。また、従来のグリル装置のように、把手が前扉本体と別部品で
あると、その分、前扉の部品点数が多くなる上、前扉の組立工程の数が増えるため、調理
器の製造コスト低減の妨げになるという問題もあった。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、前扉の前面に設けた把手
の突出量を少なく抑えることができ、かつ、前扉の部品点数を削減できるグリル装置の前
扉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、調理器(1)に設けたグリル装置(20)の前面
に形成した開口部(23)に対して開閉可能に設置されるグリル装置(20)の前扉(3
0)であって、前扉(30)は、本体部(31)と、本体部(31)の前面(31a)の
少なくとも一部を覆う前カバー(41)と、該本体部(41)の前面(41a)に設けた
該前扉(30)を手前側へ引き出す際に用いる把手部(45)と、を備え、把手部(45
)は、前カバー(41)に一体形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明にかかるグリル装置の前扉によれば、従来は前扉の本体部と別部品で構成してい
た把手部を前カバーに一体形成したので、把手部が前扉の前面から手前側へ突出する突出
量を少なく抑えることが可能となる。したがって、把手部が調理者の身体に接触し難くな
り、調理作業の邪魔にならずに済むようになる。また、把手部の突出量を少なく抑えなが
らも把手部を掴み易くすることができる。また、前扉の部品点数を少なく抑えることがで
きる。したがって、グリル装置の部品点数の削減及び組立工程の簡単化を図ることができ
、調理器の製造コストを低減できる。
【0009】
また、上記の前扉(40)では、前カバー(41)は、合成樹脂製の成型品とし、把手
部(45)は、前カバー(41)に形成した本体部(31)側に向かって窪む凹部(44
)を有するようにしてよい。これによれば、従来は使用されていなかった前扉内の本体部
側の空間(隙間)を有効に活用できるようになる。これにより、前扉前面の突出量を抑え
ることができ、グリル装置の小型化を図ることができる。また、把手部が調理者の邪魔に
なることをより効果的に防止できる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態における構成要素の符号を本発明の一
例として示したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかるグリル装置の前扉によれば、該前扉の前面に設けた把手部の突出量を少
なく抑えることができ、かつ、前扉の部品点数の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態にかかる誘導加熱調理器の全体構成を示す斜視図である。
【図2】前扉を示す図で、(a)は、正面図、(b)は、斜視図である。
【図3】図2(a)のA−A矢視断面図である。
【図4】前扉の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実
施形態にかかるグリル装置20を備えた誘導加熱調理器1の外観構成を示す斜視図である
。同図に示す誘導加熱調理器1は、システムキッチンなどにドロップイン方式で組み込ま
れて設置される調理器であり、略矩形状の筐体に収納された本体部11と、本体部11の
上面に装着された耐熱ガラスを備えてなる天板12と、本体部11の内部における天板1
2の下方に設置された熱源となる左右一対の誘導加熱コイル13,14と、それらの中央
奥側に配置されたラジエントヒーター15とを備えている。なお、本実施形態の説明で手
前側又は奥側というときは、誘導加熱調理器1の本体部11における前側又は後側を示し
、左右又は横方向というときは、本体部11を手前側から見た場合の左右及び横方向を示
すものとする。
【0013】
誘導加熱コイル13,14は、略円盤状の外形を有しており、天板12の手前側の左右
にそれぞれ1個ずつ配置されている。また、天板12の外周を囲む天板枠12aの前端辺
には、操作窓17が穿孔されており、操作窓17内には、非接触式のタッチキーで構成さ
れた操作部17aが配置されている。操作部17aには、火力キー、湯沸しキー、揚げ物
キーなどのタッチ領域が印刷により形成されている。また、天板枠12aの後端辺には、
左右一対の吸排気カバー16,16が着脱自在に装着されている。
【0014】
本体部11の前面11aにおける右側には、操作パネル19が配置されている。操作パ
ネル19には、シーソー式の電源スイッチ19a、ランプ類19b、プッシュプッシュ式
の操作つまみ19cなどが配設されている。操作つまみ19cは、プッシュ操作により引
き出されることで、誘導加熱コイル13,14やラジエントヒーター15や後述するグリ
ル装置20の運転を開始できる一方、押し込まれることで、それらの運転が停止されるよ
うになっている。また、操作つまみ19cを引き出し位置で回転操作することで、誘導加
熱コイル13,14やラジエントヒーター15やグリル装置20による火力や調理時間、
調理温度などの各種設定が行えるようになっている。
【0015】
本体部11内の左側下部には、魚などの焼物用のグリル装置20が設けられている。グ
リル装置20は、誘導加熱コイル13の下側において略直方体状の箱型に形成された加熱
室22と、加熱室22内に設置したヒーターユニット(図示せず)とを備えている。加熱
室22の前面には、本体部11の前面11aの左側に位置する開口23が設けられている
。開口23は、横長の略長方形状に形成されており、該開口23には、手前側へ引き出し
可能な前扉(フロントパネル)30が設置されている。前扉30の奥側には、受皿(図示
せず)が一体に取り付けられており、該受皿の上には、網棚(図示せず)が載置されてい
る。受皿と網棚は、加熱室22内に収納されており、前扉30の開閉に伴い加熱室22に
対して出し入れされるようになっている。
【0016】
図2乃至図4は、前扉30を示す図で、図2(a)は、正面図、図2(b)は、斜視図
、図3は、図2(a)のA−A矢視断面図、図4は、分解斜視図である。これらの図に示
すように、前扉30は、該前扉30の本体部を構成する背板31と、背板31の前面31
aの上部に取り付けられるガラス板35と、背板31の前面31aの下部に取り付けられ
る前カバー41と、前カバー41の開口46(図3参照)に取り付けられる蓋板51の各
部品を備えて構成されている。
【0017】
背板31は、耐熱性を有するステンレスなどの金属材料で形成された平板状の部材で、
加熱室22の開口23の外形に沿う横長の略長方形状に形成されている。背板31の中央
近傍には、横長の長方形状の貫通穴からなる透窓32が形成されている。図3に示すよう
に、透窓32の外周部33は、その全周に渡って背板31の前面側に突出する突起状に形
成されている。また、透窓32の下側には、後述するビス40を挿通するための貫通穴3
4が形成されている。貫通穴34は、透窓32の下端辺に沿って所定間隔で複数個が形成
されている。また、背板31の上端辺に沿う位置には、手前側及び下側に向かって略L字
型に突出する突出部31bが形成されている。突出部31bは、背板31の前面31aと
の隙間に後述するガラス板35の上端辺35cを保持するための部分である。
【0018】
ガラス板35は、耐熱ガラスで形成されており、背板31の前面31aに当接した状態
で設置される平板状の部材で、透窓32の外形よりも一回り大きな横長の長方形状に形成
されている。ガラス板35の背面35bは、その全体が塗料で着色された着色部36にな
っており、着色部36の中央付近における透窓32に対応する位置には、塗料が塗布され
ていない透明部37が設けられている。透明部37は、その外形が透窓32と略等しい形
状に形成されている。
【0019】
前カバー41は、合成樹脂製の成型品であり、前扉30の前面30aの一部を覆うよう
に取り付けられる略平板状の部材からなる。前カバー41は、横長の長方形状に形成され
ており、背板31の前面31aの下側略半分を覆うように、幅寸法が背板31の幅寸法に
等しくなっており、高さ寸法が背板31の略半分の寸法になっている。図3に示すように
、前カバー41の断面形状は、上段側に配置されて手前側に突出している上段部42と、
下段側に配置されて奥側に窪んでいる下段部43とを備えた形状になっている。上段部4
2の下端42aと下段部43の上端43aは、前後方向で段違いに配置されており、上段
部42の下端42aと下段部43の上端43aとの隙間には、手を差し入れて握るための
把手部45が形成されている。すなわち、上段部42は、前カバー41の上端辺41cか
ら下側に向かって庇状に延びており、その途中が手前側に凸となるように若干湾曲しなが
ら突出している。これにより、上段部42の後側には手を差し込むための凹部44が形成
されている。一方、下段部43は、凹部44の奥側の面を形成するもので、奥側に凸とな
るように若干湾曲しながら上方へ延びている。
【0020】
前カバー41の凹部44の奥側には、横長の長方形状の開口46が形成されており、該
開口46の後面側には、蓋板51が取り付けられている。蓋板51は、合成樹脂製の成型
品で、開口を46塞ぐ横長の長方形状に形成されている。図4に示すように、蓋板51に
は、後述するボルト40を挿通するための貫通穴54が形成されている。また、蓋板51
の上下端辺には、蓋板51を前カバー41の後面に固定するためのボルト(図示せず)を
挿通するための貫通穴52が形成されている。貫通穴52は、蓋板51の上端辺と下端辺
に沿って所定間隔で複数個が形成されている。
【0021】
次に、前扉30の組立手順について説明する。前扉30を組み立てるには、まず、前カ
バー41の開口46に蓋板51を取り付ける。蓋板51の取り付けは、図示しないボルト
の締結で行う。続いて、背板31の前面31aにおける透窓32に対応する位置にガラス
板35を取り付け、透窓32の下側に前カバー41を取り付ける。前カバー41の背板3
1への固定は、ビス40の締結によって行う。この状態で、ガラス板35の上端辺35c
が背板31の突出部31bと前面31aとの隙間に保持され、ガラス板35の下端辺35
dが透窓32の下側の外周部33と前カバー41の上端辺41cとの隙間に保持される。
これにより、ガラス板35が背板31の前面30aに固定される。以上により、前扉の組
立が完了する。
【0022】
前扉30の使用においては、図3に示すように、前カバー41の把手部45に形成した
凹部44に手を差し込むことで、上段部42の下端42aを手で握る。その状態で把手部
45を手前側に引けば、前扉30を手前側に引き出すことができ、加熱室22の開口23
を開いて受皿及び網棚を加熱室22から取り出すことができる。
【0023】
本実施形態のグリル装置20が備える前扉30では、前扉30の前面30aの一部を覆
っている前カバー41に把手部45を一体形成している。したがって、従来のように前扉
の本体部とは別部品で構成していた把手を備える場合と比較して、前扉30の前面30a
から突出する把手部45の突出量を少なく抑えることができる。特に、把手部45は、前
扉30の背板31(本体部)側に向かって窪む凹部44を有しているので、把手部45の
突出量をより少なく抑えることができる。また、従来は使用していなかった前扉30内部
の空間(背板31内の隙間)を有効に活用できるようになる。これにより、グリル装置2
0の小型化(前扉30の突出寸法の小型化)を図ることができる。
【0024】
また、本実施形態のグリル装置20が備える前扉30では、把手部45が前カバー41
に一体形成されているので、その分、前扉30の部品点数を少なく抑えることができる。
したがって、グリル装置20の部品点数の削減、及び組立工程の簡素化を図ることができ
るので、誘導加熱調理器1の製造コストの低減を図ることができる。
【0025】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく
、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変
形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であって
も、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
【符号の説明】
【0026】
1 誘導加熱調理器(調理器)
11 本体部
20 グリル装置
22 加熱室
23 開口
30 前扉(フロントパネル)
30a 前面
31 背板(本体部)
31a 前面
32 透窓
35 ガラス板
41 前カバー
41a 前面
42 上段部
43 下段部
44 凹部
45 把手部
51 蓋板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器に設けたグリル装置の前面に形成した開口部に対して開閉可能に設置されるグリ
ル装置の前扉であって、
前記前扉は、
本体部と、前記本体部の前面の少なくとも一部を覆う前カバーと、前記本体部の前面に
設けた該前扉を手前側へ引き出す際に用いる把手部と、を備え、
前記把手部は、前記前カバーに一体形成されている
ことを特徴とするグリル装置の前扉。
【請求項2】
前記前カバーは、合成樹脂製の成型品であり、
前記把手部は、該前カバーに形成した前記本体部側に向かって窪む凹部を有してなる
ことを特徴とする請求項1に記載のグリル装置の前扉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−207338(P2010−207338A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55108(P2009−55108)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(302071092)テガ三洋工業株式会社 (244)
【Fターム(参考)】