説明

グルカゴン様ペプチド−2、ならびにその治療への使用

【課題】グルカゴン様ペプチドの提供およびその治療への使用。
【解決手段】脊椎動物のGLP-2および少なくとも1個のアミノ酸の付加、欠失、置換またはN末端もしくはC末端アミノ酸ブロッキング基を有するアミノ酸が組み込まれているという点で脊椎動物のGLP-2と異なっている腸管栄養性の脊椎動物GLP-2類似体から選択されるGLP-2ペプチド、および製剤学的に許容される担体を含んでなり、ただしGLP-2ペプチドがヒトGLP-2である場合、該担体は0.9%食塩水それ自体でない、医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胃腸組織増殖促進特性を有するグルカゴン関連ペプチド、ならびに、胃腸組織、たとえば腸ならびに膵臓の組織の成長不全あるいは消失によって生じる各種の医学的状態を治療するにあたっての、グルカゴン関連ペプチドの治療への使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グルカゴン遺伝子を発現させると、160残基のプログルカゴン生成物からプロセシングされる組織特異的な各種のペプチド生成物が得られる。こうしたペプチドのプログルカゴン前駆物質内での編成状態を、アングラーフィッシュ、ラット、ハムスター及びウシの膵臓由来のプレプログルカゴンのcDNAの分子クローニングによって解明した。こうした分析によって、プレプログルカゴンが、グルカゴン及びグリセンチンの配列のみならず、さらに2種のグルカゴン様ペプチド(GLP−1及びGLP−2)を含んでいることがわかった。このGLP−1及びGLP−2は、2種のスペーサーペプチドあるいは介在ペプチド(IP−IならびにIP−II)によって、グルカゴンから、そして互いに隔てられている。これらのペプチドは、古典的プロホルモン切断部位に特徴的な一対の塩基性アミノ酸によってそれぞれ挟まれており、このことから、プログルカゴンの翻訳後プロセシングの後に、これらのペプチドが放出される可能性が示唆される(Drucker, Pancreas, 1990, 5(4): 484)。
【0003】
脾臓のランゲルハンス島でプログルカゴンから放出されたペプチドを分析すると、たとえば、解放された一次膵臓ペプチドが29マーのグルカゴンであるのに対し、グリセンチン、オキシントモジュリン、IP−II及びグルカゴン様ペプチドは、小腸や大腸中の方に多く見られるということが示唆される。このように、グルカゴン様ペプチドが腸内に見いだされることが実証されたことから、こうした新規に見いだされた腸ペプチドの詳細な構造ならびに推定される機能についての研究がすすむこととなった。そうした研究の大半は、GLP−1を対象としており、これは、いくつかの証拠から、GLP−1が新規で重要な調節ペプチドであることが示唆されたからである。実際に、GLP−1は、膵臓のβ細胞上の受容体との相互作用を介してグルコース依存的に媒介される作用であるインスリンの放出に際して、既知のペプチド刺激では最も有力なものであることがわかった。GLP−1及びその誘導体は、糖尿病の治療への使用をめざして開発途上にある。
【0004】
グリセンチン及びオキシントモジュリンといったいわゆる「腸グルカゴン」の生理学上の役割も研究過程にあり、特に、酸の分泌及び腸細胞の成長の調節に関して研究が進んでいる。オキシントモジュリンは、ペンタガストリンによって刺激される胃酸分泌を用量依存的に阻害しうる。腸の適応の変化及び腸粘膜の成長を媒介するにあたってのグリセンチンの役割も研究されており、グリセンチンの腸管栄養性作用及びその治療への使用が、1994年8月31日に公開されたマツノ(Matsuno)らのEP 612,531に報告されている。
【0005】
こうしたGLP−1や他のグルカゴン関連ペプチドの場合に対し、グルカゴン様ペプチド(GLP−2)の生理学上の役割については、ヒト、ラット、ウシ、ブタ、モルモット、ハムスター及びデグーといった種に由来する各種のGLP−2相同対が単離され、配列決定されているにもかかわらず、ほとんど知見が得られていない。GLP−2が、膵臓抽出物中でなく、主に腸抽出物中に存在することが、合成GLP−2に対して産生させたGLP−2抗血清を使用することにより、さまざまなグループによって測定されている(Mojsovら, J. Biol. Chem., 1986, 261(25): 11880;Orskovら, Endocrinology, 1986, 119(4): 1467、Diabetologia 1987, 30: 874、ならびにFEBS Letters, 1989, 247(2): 193 ;Georgeら, FEBS Letters, 1985, 192(2): 275)。その生物学上の役割については、Hooseinら(FEBS Letters, 1984, 178(1): 83)が、GLP−2が、ラットの肝臓ならびに脳組織との結合についてグルカゴンと競合しているわけではなく、肝臓血漿膜でのアデニレートシクラーゼの産生を刺激しているわけでもないが、なぜか、30−50pMの濃度では、ラットの視床下部及び下垂体膜の双方においてアデニレートシクラーゼを刺激可能であることを報告している。GLP−2が生理学上有している役割の解明が望まれていることは、明らかといえよう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
今回、GLP−2が、栄養性物質として作用して胃腸組織の成長を促進することがわかった。GLP−2の効果は、特に、小腸の成長の増大によって示唆されるので、本明細書では、この効果を「腸管栄養」効果と称することとする。驚くべきことに、GLP−2の成長促進効果は、膵島の成長にもあらわれ、具体的には、膵島が拡大、増殖する。したがって、本発明の、一般的目的は、GLP−2およびGLP−2類似体を、治療目的ならびに治療関連目的で開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
より具体的には、本発明の1つの態様では、調剤し、その後患者に投与するのに適した製剤学的に許容される剤型のGLP−2およびGLP−2類似体が提供される。
【0008】
本発明の別の態様では、GLP−2又はGLP−2類似体、及び製剤学的に許容される担体を含んでなる医薬組成物が提供される。
【0009】
本発明のさらに別の態様では、胃腸組織の成長及び増殖を必要としている患者の胃腸組織、たとえば、小腸ならびに膵島組織の増殖及び成長を促進させるにあたって、胃腸組織の成長を促進するのに有効な量のGLP−2又はGLP−2類似体を患者に送達する工程を含んでなる方法が提供される。
【0010】
本発明の別の態様では、新規な腸管栄養性GLP−2類似体を同定するうえで有用な方法が提供され、この方法は、
1) 少なくとも1個のアミノ酸の置換、欠失、付加、またはブロッキンング基をもつアミノ酸を有する腸管栄養性GLP−2類似体を得、
2) ラットGLP−2のために利用したとき腸管栄養効果を引き出すことができるレジメを用いて、哺乳動物を上記類似体で治療し、そして
3) 偽治療した対照の哺乳動物と比べて、小腸の重さ、および/または陰窩+絨毛の高さおよび/または膵島の大きさに及ぼす上記類自体の効果を判定し、その結果として上記重さおよび/または上記高さおよび/または上記大きさの増加を引き出す類似体として上記腸管栄養性ペプチドを同定する、
工程を含むものである。
【0011】
本発明の別の態様では、脊椎動物GLP−2の腸管栄養性類似体の形態の新規なGLP−2類似体が提供される。こうしたGLP−2類似体は、胃腸組織、たとえば、小腸組織ならびに膵島組織の増殖な及び成長を促進する。
【0012】
本発明の別の態様では、患者を治療して胃腸組織を回復させるための方法であって、(1)上記組織又は上記組織由来の細胞を、組織の成長を促進するのに有効な量のGLP−2又はGLP−2類似体とともに培養し、次に、(2)上記組織又は細胞を治療対象患者に移植する工程によって実施される前記方法が提供される。
【0013】
本発明の関連した態様では、胃腸組織又は上記胃腸組織由来の細胞を成長させる方法であって、上記組織又は細胞を、成長を促進するのに有効な量のGLP−2又はGLP−2類似体を加えた培養培地中で培養する工程を含んでなる前記方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、GLP−2及びGLP類似体の、治療ならびに関連用途への使用、より詳細には、胃腸組織の増殖及び成長の促進への使用、さらに詳細には、小腸の組織又は膵島の増殖ならびに成長の促進への使用に関する。こうした成長は、小腸の組織に関しては、GLP−2によって媒介された小腸の質量及び長さの増大を、未処理の対照と比較測定するのが好都合である。本明細書に提示する結果からもわかるように、GLP−2が小腸に及ぼす効果は、陰窩+絨毛軸の高さの増大としても現れる。本明細書では、こうした活性を、「腸管栄養」の活性と称している。GLP−2に対する応答としては、陰窩細胞の増殖および/または小腸上皮のアポプトシスの低減も検出が可能である。こうした細胞効果は、遠位空腸を含む空腸、特に近位空腸で有意に観察され、遠位回腸でも見られる。標準GLP−2ペプチドに応答する少なくとも1種の脊椎動物の試験動物が、ある化合物で処理した際に(あるいは、そうした化合物をその動物自体が発現するように遺伝子操作を行った場合に)、小腸の重量増加、陰窩+絨毛軸の高さの増加、または陰窩細胞の増殖あるいは小腸上皮のアポプトシスの低減を有意に示した場合には、その化合物は「腸管栄養効果」を有すると考えられる。
【0015】
こうした胃腸の成長を測定するのに適したモデルは、上掲のMatsuno らに記載されており、後述の実施例1でも例示する。GLP−2及びGLP−2類似体が小腸の陰窩+絨毛軸の高さに及ぼす細胞効果についての形態計測学的な分析は、後述の実施例2に記載する。
【0016】
膵島に関しては、こうした成長は、膵島の、未処理の対照と比較した場合における、GLP−2によって媒介される拡大および/または増殖によって例証される。試験化合物が膵島細胞の成長(膵島細胞の大きさの増大と数の増大の両方を含む)に及ぼす効果を調べることによって化合物の腸管栄養効果を測定する方法は、後述の実施例1に例示する。
【0017】
「GLP−2ペプチド」という用語は、本明細書では、脊椎動物で天然に生じているGLP−2と、天然産生型GLP−2の類似体とを総称するものであり、このGLP−2類似体は、腸管栄養効果を生じる物質であるとともに、少なくとも1個のアミノ酸の置換、欠失、付加を生じているか、ブロッキンング基を有するアミノ酸を含んでいることによって、特定の脊椎動物GLP−2に対して構造的変異を生じている物質である。
【0018】
各種の脊髄動物型GLP−2としては、ラットGLP−2、ならびにその相同体、たとえば、オウシGLP−2、ブタGLP−2、デグーGLP−2、ウシGLP−2、モルモットGLP−2、ハムスターGLP−2、ヒトGLP−2、ニジマスGLP−2、ならびにニワトリGLP−2があり、それらの配列は、多くの執筆者、たとえば、Buhlら(J. Biol. Chem., 1988, 263(18): 8621) 、Nishiと Steiner(Mol. Endocrinol., 1990, 4: 1192-8) 、Irwin と Wong(Mol. Endocrinol., 1995, 9(3): 267-77) によって報告されている。これらの執筆者によって報告された配列も、本明細書に参考として組み込むものである。
【0019】
脊椎動物GLP−2の類似体は、ペプチド化学の標準的な方法を使用して生成させ、腸管栄養活性について検定することができ、生成ならびに検定の双方とも、本明細書の記載にしたがって実施すればよい。本発明の特に好適な類似体は、以下のヒトGLP−2の配列:
His-Ala-Asp-Gly-Ser-Phe-Ser-Asp-Glu-Met-Asn-Thr-Ile-Leu-Asp-Asn-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Asn-Trp-Leu-Ile-Gln-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp を基本とし、配列中の1個以上のアミノ酸残基の別のアミノ酸残基への保存的な置換が、類似体がなおも腸管栄養活性(たとえば、小腸の成長、膵島の成長、および/または陰窩/絨毛の高さ)を保持するようなかたちで生じているものである。
【0020】
天然生成型GLP−2、好ましくはヒトGLP−2の配列の保存的置換は、以下の5グループのいずれかの内の置換として定義される。
I. Ala, Ser, Thr (Pro, Gly)
II. Asn, Asp, Glu, Gln
III. His, Arg, Lys
IV. Met, Leu, Ile, Val (Cys)
V. Phe, Tyr, Trp
【0021】
本発明は、非保存的置換が生じているのが、異なった種から単離されたGLP−2同士で変異があることがわかっているアミノ酸位置である場合については、どの脊髄動物GLP−2配列であっても、そうしたアミノ酸で非保存的置換が生じている場合も包含するものである。非保存残基の位置は、既知の脊髄動物GLP−2配列をすべて整列させてみれば容易にそれとわかる。たとえば、Buhlら, J. Biol. Chem., 1988, 263(18): 8621では、ヒト、ブタ、ラット、ハムスター、モルモット及びウシのGLP−2の配列が比較され、13、16、19、27及び28の位置が非保存的であることが見いだされている(位置の番号は、ヒトGLP−2配列での類似の位置の番号である)。Nishi と Steiner, Mol. Endocrinol., 1990, 4: 1192-8 は、GLP−2コード配列内の別の位置、すなわち上掲のヒト配列中の残基20も、南米固有種の齧歯類デグーでは変異していることを見いだした。したがって、こうした標準にしたがうと、哺乳動物の種によって変異しているアミノ酸位置であって、非保存残基によって置換されていてもなおも好ましいのは、13、16、19、20、27及び28の位置であることになる。脊髄動物の種によって変異しており、非保存残基によって置換されていてもかまわないさらに別のアミノ酸残基としては、2、5、7、8、9、10、12、17、21、22、23、24、26、29、30、31、32及び33の位置のアミノ酸残基がある。
【0022】
また、アミノ酸残基をアラニンで置換しても腸管栄養活性がなんら損なわれることがないという点で、アラニン走査変異誘発によって変異に対するある程度の許容性が示された任意の位置についても、非保存的置換を行うことができる。アラニン走査変異誘発の方法については、CunninghamとWells, Science, 1989, 244: 1081 に記載されており、この文献は、その全体を、本発明に参考として組み込むものである。大半のGLP−2配列は、約33個のアミノ酸のみから構成されているので(ヒトGLP−2の場合、アラニンはすでに4つの位置で生じている)、当業者は、後述の実施例の記載にしたがって、残りの位置のアラニン類似体のそれぞれを、腸管栄養効果について容易に調べることができる。
【0023】
脊椎動物GLP−2の各種既知配列を整列させることによって、こうした各種GLP−2間の有意な配列ホモロジー、ならびに種による変異が既知の残基を考慮にいれた一般式を構築した。この式は、置換、付加、欠失又はアミノ酸ブロッキンング基の付加による修飾を行ううえで好適な特定の非保存残基を選ぶ際のガイドとして使用することができる。本発明の一態様で念頭においている脊椎動物GLP−2の特定の類似体は、配列番号1として以下に示す一般式に一致する各種のGLP−2ならびにGLP−2類似体である。
【0024】
R1-[Y]m-His-Ala-Asp-Gly-Ser-Phe-Ser-Asp-Glu-Met-Asn-Thr-aa1-Leu-Asp-aa2-Leu-Ala-aa3-aa4-Asp-Phe-Ile-Asn-Trp-Leu-aa5-aa6-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-[X]n-R2
式中、aaは任意のアミノ酸残基を表し、aa1からaa6は、異なった種から得られたGLP−2配列同士での変異が公知の残基位置であり、そして
Xは、グループIIIから選ばれる1又は2個のアミノ酸、たとえば、Arg、Lys又はArg-Argであり、
Yは、グループIIIから選ばれる1又は2個のアミノ酸、たとえば、Arg、Lys又はArg-Argであり、
mは、0又は1であり、
nは、0又は1であり、
R1は、H又はN末端ブロッキング基であり、
R2は、OH又はC末端ブロッキング基である。
【0025】
本発明の実施態様のいくつかでは、 aa1からaa6は、以下のように、
aa1は、グループIVから選ばれ、
aa2は、グループI又はIIから選ばれ、
aa3は、グループIから選ばれ、
aa4は、グループIIIから選ばれ、
aa5は、グループIVから選ばれ、
aa6は、グループII又はIIIから選ばれる
ものとして定義される。
【0026】
本発明の特に好適な実施態様では、aa1からaa6は、異なった種から単離された各種GLP−2のその残基の位置で生じていることが公知の一群の残基の群から、以下のようにして、すなわち
aa1は、Ile又はValであり、
aa2は、Asn又はSerであり、
aa3は、Ala又はThrであり、
aa4は、Lys又はArgであり、
aa5は、Ile又はLeuであり、
aa6は、Gln又はHisである
として選ばれるものである。
【0027】
ヒトおよびラットのGLP−2は、互いに、19の位置のアミノ酸残基のみが異なる。ヒトの配列では、この残基はアラニンであり、ラットGLP−2では、19の位置はトレオニンである。したがって、本発明で想定している特定のGLP−2あるいはGLP−2類似体は、位置19に変異しうる残基を含んでいる。本発明のこうした実施態様では、GLP−2ペプチドは、以下に示す配列番号2と一致する。
【0028】
R1-[Y]m-His-Ala-Asp-Gly-Ser-Phe-Ser-Asp-Glu-Met-Asn-Thr-Ile-Leu-Asp-Asn-Leu-Ala-aa3-Arg-Asp-Phe-Ile-Asn-Trp-Leu-Ile-Gln-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-[X]n-R2
式中、aa3、Y、m、X、n、R1およびR2は、上記定義のとおりである。
【0029】
本発明の特定の実施態様では、GLP−2ペプチドは、以下のものから選ばれる。
【0030】
1)下記の配列番号3を有するラットGLP−2:
His-Ala-Asp-Gly-Ser-Phe-Ser-Asp-Glu-Met-Asn-Thr-Ile-Leu-Asp-Asn-Leu-Ala-Thr-Arg-Asp-Phe-Ile-Asn-Trp-Leu-Ile-Gln-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp、
2)Thr19 がAla19 となっているラットGLP−2の均等配列である下記のヒトGLP−2:
His-Ala-Asp-Gly-Ser-Phe-Ser-Asp-Glu-Met-Asn-Thr-Ile-Leu-Asp-Asn-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Asn-Trp-Leu-Ile-Gln-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp、
3)[Ile13 がVal13 に、Asn16 がHis16 に、Lys20 がArg20 となっている]ラットGLP−2の均等配列であるデグーGLP−2、ならびに
4)N末端ブロッキング基を有するおよび/または、N末端が、たとえばArg又はArg-Argによって伸長しているおよび/または、C末端ブロッキング基を有するおよび/または、C末端が、たとえばArg又はArg-Argによって伸長しているGLP−2ならびにGLP−2類似体。
【0031】
R1及びR2によって表される「ブロッキング基」は、生化学的安定性ならびにエキソペプチダーゼによる消化に対する抵抗性を付与する場合に、ペプチド化学の分野で日常的に使用される化学基である。適当なN末端保護基としては、たとえば、C1-5 アルカノイル基、たとえばアセチルがある。N末端保護基としては、アミノ官能性を欠いたアミノ酸類似体も適当である。適当なC末端保護基としては、C末端カルボキシルの炭素原子でケトンあるいはアミドを形成する基、またはカルボキシルの酸素原子でエステルを形成する基が挙げられる。ケトンならびにエステル形成性の基としては、アルキル基、特に枝分かれ又は非枝分かれのC1-5 アルキル基、たとえば、メチル、エチル及びプロピル基があり、一方、アミド形成性の基としては、アミノ官能性の基、たとえば、第一アミン、あるいはアルキルアミノ官能基、たとえば、モノ−C1-5 アルキルアミノならびにジ−C1-5 アルキルアミノ基、たとえばメチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ基などがある。アミノ酸類似体も、本発明の化合物のC末端を保護するうえで適当であり、たとえば、脱カルボキシル化アミノ酸類似体、たとえばアグマチンがある。
【0032】
胃腸組織の成長促進の目的で選んだ特定の形態のGLP−2は、ペプチド生成物製造で周知の各種の方法によって調製することができる。脊椎動物型GLP−2は、タンパク質の単離法を適切なかたちで組み合わせることにより、天然ソースから抽出することによっても、もちろん得ることができる。上掲のBuhlらにも記載されているように、ブタGLP−2は、回腸の粘膜の酸−エタノール抽出物から単離ならびに精製が行われ、その際には、サイズ選択ならびにHPLCにもとづいた分画が組み合わされ、さらに、得られた生成物を監視する目的で、合成プログルカゴン126−159に対して生成した抗体が使用されている。脊椎動物のGLP−2であるにせよ、その類似体であるにせよ、L−アミノ酸のみを含むようなかたちのGLP−2であれば、GLP−2を抽出するのでなく、組換えDNA技術を利用することによって、商業量を生成することができる。こうした場合は、所望のGLP−2又はGLP−2類似体をコードするDNAを発現ベクターに組み込み、微生物、たとえば酵母又は他の細胞性宿主を形質転換し、次に、GLP−2の発現に適した条件下でこの微生物を培養する。こうした目的には各種の遺伝子発現システムが適応されており、こうした発現システムでは、通常、選んだ宿主が天然状態で使用している発現制御配列から所望の遺伝子を発現させるようになっている。GLP−2は、翻訳後グリコシル化を経ずとも活性を呈するので、細菌宿主、たとえば大腸菌(E.coli)で産生させるのが最も好都合である。そうした方法で産生させる際には、選んだGLP−2ペプチドをコードするDNAを、大腸菌のlac、trp又はPL遺伝子の発現制御下におくのが有用である。GLP−2自体をコードしているDNAを発現させるのでなく、宿主を、GLP−2がキャリアタンパク質との融合タンパク質として発現されるようなものとすることもできる。すなわち、この融合タンパク質では、発現生成物の単離を容易とし、発現生成物の安定性を高めるようなキャリアタンパク質に、GLP−2が、遊離可能なかたちで連結されている。
【0033】
選んだGLP−2又はGLP−2類似体を生成する際に一般に使用が可能な方法であって、また、非遺伝的にコードされたアミノ酸を含んでいたり、N及びC末端を誘導化した型のGLP−2ペプチドを生成する際には必然的に使用せざるをえない方法でもある方法が、すでに十分確立されている技術である自動ペプチド合成法である。こうした方法の一般的記載は、たとえば、J.M. StewartとJ.D. Young, Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd Edition, 1984, Pierce Chemical Company, Rockford, Illinois、M. BodanszkyとA. Bodanszky, The practice of Peptide Synthesis, 1984, Springer-Verlag, New York、ならびにApplied Biosystems 430A Users Manual, 1987, ABI Inc. Foster City, Californiaを参照されたい。これらの方法では、たとえば上掲のOrskovら(1989)に記載されているようなFmocあるいはtBocプロトコールのいずれかを使用して、樹脂にコンジュゲートさせたC末端の残基に、適切なかたちで保護を行ったアミノ酸を逐次付加していくことによって、GLP−2ペプチドをC末端から成長させる。
【0034】
Nおよび/またはC末端のブロッキング基を取り込む際には、固相ペプチド合成法で従来から使用されているプロトコールを適用することもできる。C末端のブロッキング基を取り込む際には、たとえば、所望のC末端ブロッキング基を有するGLP−2ペプチドが樹脂からの切断時に得られるよう化学的に修飾した樹脂製支持体を固相として使用することによって、所望のペプチドの合成を行うのが代表的である。C末端が一次アミノブロッキング基を有するようなペプチドを生成するにあたっては、たとえば、p−メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂を使用することによって合成を行い、ペプチド合成の終了時にフッ化水素酸で処理すると、所望のC末端アミド化ペプチドが遊離されるようにする。同様に、C末端へのN−メチルアミンブロッキング基の導入は、HFで処理するとN−メチルアミド化されたC末端を有するペプチドを遊離するN−メチルアミノエチル誘導化DVB樹脂を使用することによって行う。エステル化によるC末端の保護も、通常の方法を使用することによって行うことができる。この方法では、側鎖が保護されたペプチドが樹脂から遊離され、その後所望のアルコールとの反応が生じてエステル官能基が形成されるようにした樹脂/ブロッキング基の組み合わせを使用する。この目的では、FMOC保護基を、メトキシアルコキシベンジルアルコール又は同等のリンカーで誘導化したDVB樹脂と組み合わせたものを使用することができ、この場合、支持体からの切断は、TFAのジクロロメタン溶液を使用して行う。次に、所望のアルコールを加えることによって、適切に活性化されたカルボキシル官能基の、たとえばDCCを用いたエステル化を進め、その後脱保護化し、エステル化されたGLP−2ペプチドを単離する。
【0035】
N末端ブロッキング基の取り込みは、合成したGLP−2ペプチドが樹脂に結合している間に、たとえば、適当な無水物及びニトリルで処理することによって行うことができる。アセチルブロッキング基をN末端に取り込む際には、たとえば、樹脂に結合したペプチドを、20%無水酢酸のアセトニトリル溶液で処理することができ、次に、N末端がブロッキングされたGLP−2ペプチドを樹脂から切断し、脱保護化し、その後単離する。
【0036】
所望のGLP−2ペプチドを合成し、樹脂から切り出し完全に脱保護した後、選択したアミノ酸配列をもつ単一のオリゴペプチドの回収を確実にするためにペプチドを精製する。精製はいかなる標準法を用いてもよく、アルキル化シリカカラム、例えばC4−、C8−又はC18−シリカカラム上の逆相高圧液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)を含む。このようなカラム分画は、TFAやTEAなどの少量の(例えば0.1%)対になる薬剤(pairing agent) を通常含む水性緩衝液中で、アセトニトリルなどの有機溶媒濃度を例えば10−90%で増加していく直線状グラジエントで流すことによって一般に実施できる。あるいは、荷電性を利用してイオン交換HPLCを用いてペプチドを分離できる。カラム画分を回収し、場合によっては所望の又は必要な純度のペプチドを含む画分を集める。本発明の一態様では、次に分解性の酸(例えばTFA)を薬学的に許容しうる酸、例えば酢酸、塩酸、リン酸、マレイン酸、酒石酒、コハク酸などで置換する公知の方法でGLP−2ペプチドを処理し、ペプチドの薬学的に許容しうる酸付加塩を製造する。
【0037】
患者に投与するには、本発明の一面においては、GLP−2ペプチド又はその塩は薬学的に許容しうる形態、例えば0.22μフィルターなどで滅菌濾過し、実質的に発熱物質不含な調製物として提供される。好ましくは、調製すべきGLP−2ペプチドはHPLC上で単一又は区別されたピークとして移動し、その分析において均一で真正のアミノ酸組成および配列を示し、あるいは医薬品の品質を管理する種々の国家機関により定められた基準に合致するものである。
【0038】
治療用途には、選択されたGLP−2又はGLP−2類似体を、薬学的に許容でき、かつ選択された投与経路によりペプチドを送達するのに適した担体とともに製剤化する。適当な薬学的に許容しうる担体は、希釈剤、賦形剤などのペプチド医薬に慣用的に用いられる担体である。医薬製剤の一般的なガイダンスについては、"Remington's Pharmaceutical Sciences", 17th Ed. Mack Publishing Company, Easton, Penn., 1985を参照されたい。本発明の一態様では、化合物は、例えば全身非経口栄養治療を受けている患者に液体栄養補充物として使用する場合には灌流により投与するように、あるいは例えば皮下、筋肉内又は静脈内などの注射により投与するように製剤化され、従って滅菌かつ発熱物質不含形態の水溶液で用いられ、場合によりやや酸性又は生理的pHなどの生理的に耐え得るpHに緩衝化される。従って、化合物は蒸留水又はより好ましくは食塩水、リン酸緩衝化食塩水又は5%デキストロース溶液などのビヒクル中の形で投与される。所望する場合には、酢酸などの溶解度増強剤を含めることによりGLP−2又はGLP−2類似体の水溶性を増強できる。
【0039】
水性担体又はビヒクルには、注射部位又はその付近にGLP−2又はGLP−2類似体を貯蔵して所望の作用部位で徐放する作用をする一定量のゼラチンを注射可能な形で補充することができる。貯蔵(デポ)効果を達成するために有効なゼラチン濃度は10−20%の範囲にあることが予想される。あるいはヒアルロン酸などのゲル化剤をデポ剤として用いることもできる。
【0040】
本発明のGLP−2又はGLP−2類似体は、GLP−2を長時間持続して投与するための徐放性移植装置として製剤化することもできる。このような持続性徐放製剤には、生物適合性ポリマー、例えばポリ(乳酸)、ポリ(乳酸−グリコール酸)、メチルセルロース、ヒアルロン酸、コラーゲンなどの複合材料が含まれる。医薬送達ビヒクル中の分解可能なポリマーの構造、選択及び使用についてはいくつかの出版物に総説があり、A. Domb et al., Polymers for Advanced Technologies 3:279-292, 1992を含む。医薬製剤中のポリマーの選択及び使用についてのさらなるガイダンスは、M. Chasin and R. Langer (編集), "Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems", Vol. 45, "Drugs and the Pharmaceutical Science", M. Dekker, New York, 1990に見られる。GLP−2又はGLP−2類似体の持続性放出にはリポソームも使用できる。興味のある医薬のリポソーム製剤をいかに使用し製造するかについての詳細はとりわけ、米国特許第4,944,948号;米国特許第5,008,050号;米国特許第4,921,706号;米国特許第4,927,637号;米国特許第4,452,747号;米国特許第4,016,100号;米国特許第4,311,712号;米国特許第4,370,349号;米国特許第4,372,949号;米国特許第4,529,561号;米国特許第5,009,956号;米国特許第4,725,442号;米国特許第4,737,323号;米国特許第4,920,016号に見られる。持続性放出製剤は、例えば糖尿病において膵臓の成長を促進するために膵臓付近にGLP−2又はGLP−2類似体の高い局所濃度を提供することが好ましいような場合には特に関心がもたれる。
【0041】
ヒトを含む哺乳動物における小腸の成長又は膵島細胞の増殖と増加を刺激する用途には、本発明は一面において、組織成長促進量のGLP−2又はGLP−2類似体を単回投与量又は複数回投与量で含む滅菌充填したバイアル又はアンプルの形でのパッケージを提供し、このパッケージにはこのような成長促進への内容物の使用を説明するラベルを入れる。本発明の一態様では、パッケージにはGLP−2又はGLP−2類似体と所望の担体をすぐ投与できる製剤として含む。あるいは、本発明の別の態様では、パッケージはリン酸緩衝化食塩水などの適当な担体中に用時調製するのに適した凍結乾燥剤形としてGLP−2又はGLP−2類似体を提供する。
【0042】
一態様では、パッケージは水性ビヒクル中に溶解した有効で腸管栄養的量のGLP−2又はGLP−2類似体を含有する注射溶液を含む滅菌充填したバイアル又はアンプルである。
【0043】
注射可能な製剤に代わるものとして、GLP−2又はGLP−2類似体はその他の経路で投与するために調製できる。標準的製剤技術により錠剤、カプセルなどの経口投与剤形を調製できる。
【0044】
本発明によると、GLP−2又はGLP−2類似体は胃腸組織の成長によって恩恵を受ける患者の治療のために投与される。一面においては、患者となりうるのは小腸組織の成長によって恩恵を受ける患者である。本明細書で示す結果で実証されるように小腸組織に及ぼすGLP−2ペプチドの効果は劇的であり、潰瘍及び炎症性障害;吸収不良症候群を含む先天性又は後天性の消化吸収障害;特に長期の非経口栄養摂取を受けている患者、あるいは手術の結果として腸の制限を受けたり、短胃腸症候群及び盲管症候群に苦しむ患者において腸粘膜機能の消失によって引き起こされる疾患及び状態を含む、小腸管粘膜の異常を特徴とする疾患及び症状に苦しむ患者には明らかに恩恵を与えるであろう。腸管粘膜機能の低下と関連するこれらの患者の症状を軽減又は除去するために、GLP−2ペプチドによる治療処置を行う。例えば、炎症性の腸症状をもつ患者に、腸の不快とこの症状によって引き起こされる下痢を改善するために十分な量のGLP−2又はGLP−2類似体を投与する。さらに、吸収不良障害の患者に、栄養吸収を増強し、これによって患者の栄養状態を改良するために、GLP−2又はGLP−2類似体を投与する。
【0045】
一般に、小腸重量の増加とその結果としての小腸粘膜機能の増加によって恩恵を受けそうな患者が、GLP−2又はGLP−2類似体による治療の候補者である。GLP−2で治療できる特定の症状には、小麦由来のα−グリアジンとの毒性反応によって引き起こされ、激しい腸絨毛の消失を特徴とするセリアックスプルー;感染によって引き起こされ、絨毛の部分的偏平化を特徴とする熱帯性スプルー;普遍的な種々の免疫不全患者又は低ガンマグロブリン血症によく見られ、絨毛の高さが有意に減少することを特徴とする低ガンマグロブリン血症性スプルーを含む種々の形態のスプルーを含む。GLP−2治療の治療有効性は、絨毛の形態を試験する腸生検によって、栄養吸収の生化学的評価によって、患者体重の増加によって、あるいはこれらの状態と関連する症状の改善によってモニターすることができる。GLP−2又はGLP−2類似体で治療できるその他の症状、あるいはGLP−2又はGLP−2類似体が予防的に有用な症状には、放射線腸炎、感染性又は感染後腸炎、限局性腸炎(クローン病)、毒性又はその他の化学療法剤による小腸の損傷、及び短腸症候群の患者を含む。
【0046】
別の面では、GLP−2又はGLP−2類似体による治療の患者となりうるのは、膵島細胞の成長により、そして特に膵島細胞の拡大又は増殖又は再生により恩恵を受ける患者である。このような患者には、膵島細胞の欠失又は減少、あるいは膵島機能の低下を特徴とする疾患又は状態に苦しむ患者を含む。特定の患者候補者は、1型及び2型の糖尿病に苦しむ患者、並びに膵臓の浸潤、炎症又は破壊による糖尿病の二次形態をもつ患者である。これらの患者に、少なくとも部分的膵臓機能を回復し、内在性インシュリン濃度を増加し、そして症状を改善するために十分な量のGLP−2又はGLP−2類似体を投与する。
【0047】
患者の治療に最も適した治療量及び治療法は勿論治療すべき疾患又は状態により、また患者の体重やその他のパラメーターにより変わりうる。以下に示す結果は、約2.5mg/kg(又はそれ以下、下記参照)と均等なGLP−2又はGLP−2類似体の投与量を1日2回、10日投与すると、小腸重量と、特に近位空腸の陰窩(crypt)/絨毛の高さとを顕著に増加させることを示している。これよりもはるかに少ない投与量、例えばμg/kg範囲で、かつより短いか長い治療期間又は治療頻度でも、治療的に有用な結果、すなわち特に小腸重量の統計的に有意な増加をもたらすであろう。ヒトに最も適した投与量と投与法は本明細書に示す結果から導かれ、また適切に設計した臨床試験で確認できる。
【0048】
有効投与量及び治療プロトコルは慣用的手段で決定することができ、最初は実験動物で低投与量から始め、次に投与量を増加しながら効果をモニターし、投与量処方を体系的に変更する。特定の被験者にとっての最適投与量を決定する際には臨床医は多くの要因を考慮に入れる。その中で主なものは、血漿中を普通循環するGLP−2の量であり、これは静止状態では151pmol/mLのオーダーであり、健康な成人が栄養摂取を行った後には225pmol/mLに上昇する。Orskow, C. および Helst, J.J., 1987, Scand. J. Clin. Lav. Invest. 47:165参照。付加的要因には、患者の体重、患者の年齢、患者の一般的状態、治療すべき特定の疾患、疾患の重症度、患者が用いているその他の医薬、GLP−2ペプチドのin vivo活性などを含む。試験投与量は動物実験や臨床文献の結果を考慮した後に選択する。投与量を計算する際にはin vitroのGLP−2結合競合アッセイから得られる結合定数やKiなどの情報を用いることも当業者には理解できるであろう。
【0049】
GLP−2ペプチドの典型的なヒト投与量は、約10μg/kg体重/日から約10mg/kg/日であり、好ましくは50μg/kg/日から約5mg/kg/日であり、より好ましくは約100μg/kg/日から1mg/kg/日である。
【0050】
本発明の別の面では、GLP−2又はGLP−2類似体で予めin vitro又はin vivoでインキュベーション又は処置されてコンディショニングされているか、あるいはこれを生産するように予め遺伝子操作されている移植細胞を用いる同定されたばかりの患者候補者の治療を本発明は提供する。ex vivoでの細胞のコンディショニングは、移植すべき細胞又は組織を成長促進的量のGLP−2又はGLP−2類似体を補充した培地中、あるいはこれらの細胞の培養に適した培養中で単に生育させることによって達成できる。適当なコンディショニング期間の後、細胞を患者に直接移植するか、あるいは確立された細胞カプセル化技術を用いてカプセル化した後に移植する。
【0051】
本発明のさらに別の面では、小腸組織の成長を促進するか、あるいは膵島細胞の大きさ又は数を増加するために、GLP−2ペプチドで動物をin vivo処置することを包含する。小腸及び/又は膵島細胞が拡大した後、これらの組織を異種間移植法に用いる。移植する器官又は組織のサイズがこのような方法の成功を妨げることがあるので、非ヒト動物由来の組織をヒトに異種間移植する前にこのようなGLP−2ペプチド処置を行うことは有利である。例えば、ブタ小腸組織をこの器官を必要とするヒトに異種間移植する前に、小腸のサイズを増加するためにブタのドナー動物をGLP−2ペプチドで処置することができる。
【0052】
あるいは、移植すべき細胞を、グルカゴン遺伝子又はより直接的にはGLP−2のみをコードするDNAを発現又は過剰発現するように予め遺伝子操作された細胞からin vitroで樹立することができる。遺伝的にコードされたアミノ酸を含むGLP−2形のみがこの方法で生産できるという制限の下で、このようなDNA配列は選択したGLP−2のアミノ酸配列から容易に決定することができる。ヒト細胞に遺伝情報を導入するのに適した種々のウイルスベクターを用いることができ、宿主細胞中で機能的な発現制御下に、GLP−2をコードするDNAを導入する。遺伝的に変更した後、遺伝子操作した細胞を当業界で確立した方法を用いて移植できる。
【実施例1】
【0053】
小腸の成長に及ぼすグリセンチン(glicentin)の効果を研究するために設計した最初の実験では、1群6匹のマウス(8週、Charles River Laboratoriesから入手のCD1雌)からなる2群を以下のように処置した。各マウスに12時間ごとに41.5μgを10日間注射した。注射は16%ゼラチンの最終容量で皮下に行い、12時間ごとに0.5ccを皮下注射した。グリセンチン(ラット)は水10mlに容易に溶解した。対照マウスには12時間ごとに16%ゼラチン溶液0.5ccのみを与え、ペプチドは与えなかった。マウスは殺す12時間前までは飼料及び水に自由にアクセスできる状態で標準的ラット飼料を与え、それ以後は飼料を与えず、水のみを与えた。小腸全体を切り出して、胃(近位末端)と垂/盲腸/大腸(遠位末端)を除去して、小腸の重量を測定した。残る小腸を食塩水で洗浄して糞便を除去し、重量を測定した。結果を以下に示す。
【0054】

【0055】
これらの結果は、グリセンチンの腸栄養効果はわずかなものであることを示していたので、GLP−1及びGLP−2を含むその他のプログルカゴン遺伝子由来の生産物の効果を調べるために同じプロトコルを用いて第2の実験を行った。この目的のために、配列番号3のラットGLP−2及びヒトGLP−1(7−36アミド)を、tBocを用いる固相法を応用して合成した。ラットGLP−2の分析の結果、分析HPLC(1.0mg/mlで20μL試料;5μVydac C18カラム;1.5ml/分で20分かけて0.1%TFA/20−60%CH3CN)で95%純度を示した。
【0056】
注射用GLP−2調製物は以下のようにして調製した:16%の重量比となるようにゼラチンを温水に溶解し、この溶液50mLをオートクレーブにかけ、室温まで冷却した。5mgのGLP−2と10mLよりもやや少ない容量の水を混合し、これにペプチドを完全に溶解するのに十分な容量(10−20μL)の1N酢酸を加えることにより、ペプチド溶液を別途調製した。等量の1N NaOH(10−20μL)を加えてpHを約7.0に調整し、次に蒸留水を加えて溶液量を10mLに調整した。注射用調製物を調製するには、ペプチド溶液10mLと16%ゼラチン溶液50mLを混合して組み合わせ、注射用アリコートを0.5mLインスリン注射器に取った。同じ方法を用いてGLP−1を調製したが、これは比較的水によく溶解するため、酸/塩基の調整は必要でない点で異なる。
【0057】
マウスに、ペプチド(62.5μg/1回)含有又は不含の16%ゼラチン溶液0.5mLを注射した。1群4匹のマウス(8週、Charles River Laboratoriesから入手のCD1雌)からなる4群に、1日2回、10日間注射した。結果を以下に示す。
【0058】

【0059】
これらの結果は、約2.5mg/kg(640nmole/kg)の投与量で、GLP−2はペプチドを注射しなかった対照群並びに別のグルカゴン関連ペプチドであるGLP−1を注射した群のいずれと比較しても、1日2回、10日間の処置の後に、小腸重量が統計的に有意に増加した(p<0.05)ことを示す。グリセンチンで示した結果と比較しても、GLP−2が主要な腸組織成長因子を構成することが明らかである。
【0060】
上記マウスへのGLP−2ペプチド投与の効果を、4匹のGLP−2処置マウスと4匹の対照マウスの胃腸管を切片にし、パラフィン固定切片と標準的組織病理学的方法を用いて調べた。膵島領域を形態測定分析によって測定した。定量にはヘマトキシリン及びエオシン染色した切片を用いた。各切片の全膵臓領域及び全膵島領域を測定した。得られたデータによると、対照群では全膵臓領域のうち平均で0.31%が膵島領域であった。一方、GLP−2処置群の膵島領域は全膵臓領域の0.76%を構成し、GLP−2処置群では膵島領域の増加が2倍以上であることを示す。膵島の大きさに加えて、膵島細胞の数の増加も観察された。
【実施例2】
【0061】
小腸成長に及ぼすGLP−2ペプチドの効果をさらに検討し、特に投与量、時間、投与経路及び頻度、製剤形、並びに許容者の性別及び年齢の関数としての組織応答性を評価した。これらの効果を小腸重量の増加との関係のみでなく、陰窩及び絨毛の高さの増加との関係において測定した。
【0062】
これらの目的のために、ラットGLP−2を実施例3に記載の方法で調製した。ラットGLP−2をリン酸緩衝化塩溶液又はゼラチン含有デポ製剤として調製した。リン酸緩衝化塩溶液を調製するには、GLP−2ペプチドを以下のようにして調製した:80gのNaCl(BDH ACS 783)、2gのKCl(BDH ACS 645)、11.5gのNa2HPO4(Anachemia AC-8460)、及び2gのKH2PO4(Malinckrodt AR7100)を用いて10XストックPBS溶液をまず調製し、これを滅菌蒸留水で全量1リットルにした。ストック溶液を滅菌蒸留水で10:1希釈し、必要ならば10N NaOH(水酸化ナトリウム)数μLでpH7.3−7.4に調製して最終使用溶液を得た。次に使用溶液を30分オートクレーブにかけた。最終使用PBS溶液中の濃度は、137mM NaCl、2.7mM KCl、4.3mM Na2HPO4・7H2O、及び1.4mM KH2PO4であった。
【0063】
PBS調製化GLP−2ペプチドを作るには、所望のペプチド濃度をもつ調製物に必要な粉末ペプチドを使用PBS溶液に加えた。例えば、130mg/LのペプチドのPBS溶液を作るには、4.2mgのGLP−2をPBS40mlに溶解して130μg/mlのGLP−2濃度を得る。マウスに2.5mg/kgの投与量を与えるためには、この溶液約0.5mlを1日2回注射する。
【0064】
ゼラチンベースの調製物を作るには、ゼラチン12g(Sigma,ブタ皮膚由来のG-8150ロット番号54H07241 Type A [9000-70-8]-300 Bloom)を蒸留水100mlに溶解することによってまずゼラチン溶液を調製した。ゼラチン溶液をオートクレーブにかけ、37℃に暖め、上述のリン酸緩衝化塩溶液に予め溶解しておいたGLP−2ペプチドを加えて、特定の所望ペプチド濃度を得た。次に、PBS調製化GLP−2を上述のゼラチン溶液と混合することによって、ゼラチンベースのGLP−2調製物を所望のGLP−2濃度で得た。例えば、130mg/L濃度でGLP−2のゼラチンベースPBS溶液を作るには、4.2mgのGLP−2で調製したPBS溶液10mlを上述の20%使用ゼラチン溶液30mlで希釈した。溶液をゆっくりピペットで混合して、15%ゼラチンを含むPBS中の130mg/L GLP−2の最終溶液を得た。
【0065】
実施例1と同様に、許容者はCharles River Laboratories(Ontario, Canada)から入手したCD1マウスであった。特記しない限り、CD1マウスは注射時に同年齢、すなわち6週齢の雌(1群当たり3−4匹)であった。各実験を始める前に、少なくとも24時間、動物を実験室設備に環境順応させた。動物は耳に穴をあけて識別した。実験中、マウスの飼料や活動は制限しなかった。明暗サイクルは午後6時と午前6時の12時間であった。多くの注射は12%ゼラチン又はPBSをビヒクルとして用いた。対照は年齢及び性別が同じ動物(3−4匹)であり、PBS又はゼラチン調製物を注射した。各ペプチドは0.5ccのビヒクルに溶解して特定濃度に調製した。ペプチドを皮下注射し、実験室設備でマウスを毎日モニターした。注射の14日後に動物を殺し、殺す20−24時間前は飼料を与えなかった。
【0066】
マウスをCO2で麻酔し、心臓穿孔により瀉血した。血液をTED(Trasysol; EDTA (5000 KIU/ml: 1.2mg/ml; Diprotin-A)75μL中に回収し、血液を14kxgで5分遠心し、血漿を分析前は−70℃で貯蔵した。腹腔から、幽門から盲腸までの小腸を摘出し、洗浄し重量を測り、測定した。比較の目的で、各動物から同じ解剖学的部位由来の切片を得た。近位空腸、遠位空腸、及び遠位回腸を表す組織形態学測定のために、各1.5−2.0cmの長さの断片を幽門から8±2cm、18±2cm、32±2cmで得た。各小腸断片を組織ブロック中の抗腸間隙(antimesentric)境界で縦方向に開き、10%ホルマリン(v/v)上に一晩置き、次に70%EtOHに移した。
【0067】
顕微鏡及び形態測定的分析のために、そして特に陰窩/絨毛の高さに及ぼすGLP−2の効果を評価するために、5μm厚さの切片を切り出し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。コンピュータモニターと接続したビデオカメラ付きの顕微鏡(Leitz, Wetzar, Germany)を用いて腸の顕微測定を行った。顕微鏡は4x,10x,25xの倍率に調節し、全ての評価に同じ顕微鏡を用いた。陰窩+絨毛高さは、近位空腸、遠位空腸、及び遠位回腸の各スライド由来の陰窩の根元から絨毛の先端までの、少なくとも20の縦方向の絨毛を試験することによって測定し、μm+S.E.M.(標準偏差)で表した。
【0068】
種々の分析結果を図1−7及び9に示し、これらの図を参照して下記にまとめた。
【0069】
用量応答性: 図1は、小腸重量として(BW−パネルA)、及び近位空腸(PJ−パネルB)、遠位空腸(DJ−パネルC)、及び遠位回腸(DI−パネルD)における陰窩+絨毛高さとして測定したラットGLP−2に対する応答を、皮下投与した12%ゼラチン調製物(すなわちPBS中のGLP−2)中のラットGLP−2用量の関数として示す。ラットGLP−2ペプチドは皮下投与した。結果は、12%ゼラチンのみをビヒクルとして注射した対照の変化%として表した。星印は対照と比較した統計的有意差を表す(*=p<0.005、**=p<0.01、***=p<0.001)。図1に示す結果から、GLP−2ペプチドの注射が1.0から5.0μgの用量で小腸重量に統計的に有意な増加をもたらすことが理解できよう。陰窩/絨毛高さに及ぼす所望の効果は0.25μgという低用量でも認められる。
【0070】
調製物の効果: 図2は、2.5μgのGLP−2用量で1日2回皮下投与したときの、ゼラチンベースの調製物(G)又はPBS調製物(PBS)を用いて得られた結果を示す。パネルAはグラムで表した小腸重量の効果の差を示し、パネルBは近位空腸(PJ)、遠位空腸(DJ)、及び遠位回腸(DI)で観察されるμmで表した陰窩/絨毛高さの効果の差を示す。どちらの調製物も統計的に有意な増加を引き出したことが理解できよう。多分注射部位からGLP−2をより持続して放出できるために、ゼラチンベースの調製物はPBS調製物よりもやや大きな応答を引き出した。
【0071】
投与経路の効果: 図3は、ラットGLP−2を1日2回2.5μgの用量で、リン酸緩衝塩溶液ビヒクル中で皮下(SC)、筋肉内(IM)又は腹腔内(IP)注射したときの、小腸重量(BW)の増加率を示す。PBSビヒクルのみを皮下投与した対照群と比較して、選択した投与経路にかかわらず、GLP−2ペプチドに対する有意な応答を引き出したことが理解できよう。皮下注射が最大応答を与えた。
【0072】
投与頻度の効果: 図4は、GLP−2投与頻度の関数として、小腸重量及び陰窩/絨毛高さを評価した結果を示す。GLP−2を表示の用量で、12時間ごと(q12h)、1日1回(qd)又は1日おき(qod)に皮下投与した。図示した結果から、PBSのみを注射した対照群と比較して、全ての投与頻度で小腸重量の変化率に有意な増加を引き出したことが理解できよう。小腸重量及び陰窩/絨毛高さにとって、最大の増加は最も頻度の高い投与スケジュール、すなわち12時間ごとの投与によって引き出された。
【0073】
長期間投与の効果: 10%ゼラチン調製物中のラットGLP−2を、5μgの1回量で1日1回、4週間(パネルA)、8週間(パネルB)又は12週間(パネルC)連続して皮下投与した。図5は、10%ゼラチンのみを注射した対照群(C)と比較した、処置群(T)における小腸重量(BW)並びに陰窩+絨毛の高さ(PJ,DJ及びDI)に及ぼすGLP−2媒介の効果を示す。小腸重量の結果は、GLP−2媒介の小腸重量増加が試験した投与期間にわたって誘導され持続したことを示しており、また近位空腸の陰窩/絨毛高さについても同様であった。全ての動物は殺した時点で完全な剖検を行ったが、いずれの動物においても組織学的な異常は認められなかった。
【0074】
経時評価: 図6は、PBSのみ(対照)又はPBS中の2.5μgラットGLP−2で1日2回、図示する日数の間連続して、皮下投与処置したCD1マウスにおいて測定した小腸重量の変化率を示す。結果から、投与4日目以後に有意な結果が得られ、またこの効果は投与を続けている間持続することが明らかである。別の研究では、GLP−2投与で獲得した小腸重量の増加が処置の10日後に後戻りすることも明らかである。しかしながら、絨毛増生に及ぼすGLP−2の効果は完全には後戻りせず、特により加齢した(24カ月齢)マウスでは後戻りせず、これはより加齢した許容者では腸組織の交替速度がより遅いことを示唆する。従って、GLP−2治療の間は許容者を維持投薬レジメに保つことが適切である。
【0075】
許容者の性別及び年齢評価: 図7は、小腸重量及び組織学の両方についての各対照と比較した、4−16週齢の2.5μgのGLP−2で1日2回処置した同性のCD1マウスを用いて得られた結果を示す。図示した結果から、小腸に及ぼすGLP−2の効果は許容者の性別とは関係なく引き出されることが理解されよう。関連の実験では、GLP−2で処置した6カ月から2年齢の雌C57BLKマウス(Charler River, U.S)で評価したところ、GLP−2は6カ月から2年齢マウスで小腸成長を促進するのに有効であることが見いだされた。
【0076】
小腸長さに及ぼすGLP−2の効果の評価: 図9は、小腸長さに及ぼすGLP−2投与の効果を示す。CD1マウスをPBS(対照)又はPBS中のラットGLP−2(2.5μg、1日2回)で10日間処置した後、マウスを殺して胃から回盲部バルブまでの小腸長さをセンチメーターで測定した。
【0077】
GLP−2に応答して観察される絨毛伸長は、細胞増殖に及ぼすGLP−2の効果に由来するのか、あるいは老衰阻害に及ぼすGLP−2の効果に由来するのかも知れない。これらの2つの可能性を試験するために、刺激した組織又は対照組織由来の小腸のパラフィン切片を試験して、増殖性細胞核抗原(PCNA)を検出して増殖を測定し、またアポトーシス分析のためのTUNEL法を用いてアポトーシス細胞を検出した。GLP−2処置したマウスの近位空腸における増殖速度は対照マウスと比較して増加(124%)した(対照では46.0±1.2%;処置マウスでは57±5.5%)。対照マウスでは、増殖は小腸の陰窩部分に限定され;絨毛はPCNA−陽性細胞を含んでいなかった。GLP−2処置群では、絨毛、及び陰窩−絨毛軸の結合部で増殖細胞が観察された。GLP−2処置マウスの近位空腸におけるアポトーシス速度は、対照マウスよりも低かった。対照マウスにおけるアポトーシス細胞は主に絨毛の先端又は末端で観察され;腸の陰窩部分では全く観察されなかった。GLP−2処置マウスでは、アポトーシス細胞の分布は同様であったが、その数は少なかった。
【実施例3】
【0078】
マウス許容者においてラットGLP−2で観察された結果に基づき、ラットGLP−2の種々の脊椎動物相同体及び類似体も腸管栄養効果を媒介することが推測できる。この目的のために、種々のGLP−2及びGLP−2類似体を合成し、下記のようにして評価した。
【0079】
クロロメチル(Merrifield)樹脂(C末端遊離酸ペプチド用)6gを、1g当たり0.5ミリ当量(meq)の置換で用いて、300mL容器中、3mmoleスケールの手動法で、固相ペプチド合成(SPPS)を行った。アミノ酸はアミノ末端をt−ブチルオキシカルボニル(tBoc)基で保護した。アミノ酸の側鎖は、ベンジル(Bz、セリン及びスレオニン用)、ベンジルオキシメチル(BOM、ヒスチジン用)、2−ブロモベンジルオキシカルボニル(2−BrZ、チロシン用)、2−クロロベンジルオキシカルボニル(2−ClZ、リシン用)、シクロヘキシル(cHex、アスパラギン酸及びグルタミン酸用)、及びトシル(Ts、アルギニン用)側鎖保護基、並びにクロロメチル(Merrifield)樹脂で保護した。最初のアミノ酸を、フッ化カリウム(KF)の存在下に、保護アミノ酸のエステル化によってクロロメチル樹脂に結合した。C末端アミドペプチドは、3mmoleスケールの4−メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂6g上で、0.5ミリ当量/gの置換を行って、合成した。最初のアミノ酸をペプチド伸長のための文献記載の方法によりMBHA樹脂と結合した。
【0080】
アミノ基の脱保護はCH2Cl2中の50%トリフルオル酢酸(TFA)を用いて行い、次いでCH2Cl2中の10%トリエチルアミン(Et3N)による2回の洗浄により中和した。CH2Cl2/ジメチルホルムアミド(DMF)中のN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド/1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(DCC/HOBt)を用いてペプチド伸長を行った。各伸長工程の後に、伸びて行くペプチド鎖をジクロロメタン(CH2Cl2)中の20%無水酢酸(Ac2O)でキャッピングした。各伸長、キャッピングおよび脱保護の後にペプチド−樹脂をイソプロパノール(iPrOH)とメタノール(MeOH)により洗浄した。洗浄は1回繰り返した。CH2Cl2中の20%Ac2Oで末端アミノ基をアセチル化して、N末端アセチルペプチドを調製した。樹脂結合生成物を、ジメチルスルフィド(DMS)及びp−クレソールをスカベンジャーとして含むフッ化水素(HF)を用いて、高低法(low-high procedure)によりルーチンに切断した。
【0081】
粗ペプチドを分離用高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により、Vydac
C18、15−20μm幅孔、2インチx12インチ、逆相シリカカラムで、アセトニトリル修飾した水中の0.1%TFAのグラジエント溶出を用いて精製した。溶出は220ナノメーター(nm)でモニターした。回収した各分画を、分析用HPLCにより、Vydac C18、5μm、4.6x254ミリメーター(mm)、逆相シリカカラムで、アセトニトリル修飾した水中の0.1%TFAのグラジエント溶出を用いて、215nmでモニターしながら純度を分析した。95%以上の純度を示す分画を集めて凍結乾燥した。必要な場合にはアセトニトリルを添加して溶解を助けることにより、凍結乾燥した粉末を水中に溶解し、TFA塩からペプチドの酢酸塩を調製した。溶液をプロトン化Bio-Rex 70カチオン交換樹脂を通した。樹脂を5ベッド容量の水で洗浄し、樹脂結合ペプチドを水中の50%酢酸で溶出した。溶出物を水で希釈し凍結乾燥した。
【0082】
最終の凍結乾燥粉末を、Vydac C18、5μmカラム、4.6x254mmの逆相シリカカラムを用いて、分析用逆相HPLC法により純度を分析した。使用した2つの溶媒系は、アセトニトリル修飾した、リン酸トリエチルアミンでpH2.25に調整した水のグラジエントと、アセトニトリル修飾した水中の0.1%TFAのグラジエントであった。カラム溶出物を215nmでモニターした。各生成物の同定はアミノ酸分析及び電子スプレーマススペクトルによって確認した。
【0083】
この方法によって、以下のGLP−2又はGLP−2類似体を酢酸塩として合成した:
a)配列番号3のラットGLP−2;
b)N−アセチルラットGLP−2、これはラットGLP−2のアミノ末端がアセチル基でブロックされている;
c)[Arg+1]ラットGLP−2、これはアミノ末端にArg残基が1個付加することによって修飾されたラットGLP−2である;
d)C−アミドラットGLP−2、これはカルボキシル末端にアミド基が付加したラットGLP−2である(1mgの溶解は1%酢酸(110μL)中で達成でき、5N NaOHを450μLで中和する);
e)[Arg+1,+2]ラットGLP−2、これはアミノ末端にArg残基が2個付加することによって修飾されたラットGLP−2である;
f)[Arg+34]ヒトGLP−2、これは残基33の後にArg残基が付加されたヒトGLP−2である;及び
g)degu GLP−2。
これらのペプチドは特記しない限り、室温で水によく溶解する。
【0084】
これらのGLP−2及びGLP−2類似体の腸管栄養効果を実施例2で記載した方法で評価した。特定すると、ペプチドを0.5ml注射当たり、2.5μg用量でPBS中に調製し、12時間ごとに10日間又は14日間、雌CD1マウスに皮下投与した。小腸重量及び陰窩/絨毛高さを偽処置したマウス(PBSのみ)と比較した。
【0085】
これらの実験結果を図8に示す。アミノ末端に化学基を付加することによりGLP−2から修飾されたペプチド、特に[N−アセチル]−GLP−2、又は[Arg+1]−GLP−2などのようなN末端に付加アミノ酸を含むペプチドは、14日間のマウス実験において、(食塩水処置の対照と比較して)小腸成長の促進及び陰窩+絨毛高さの増加における有効性で示されるように、GLP−2誘導体において、in vivoで小腸成長因子特性を示した(図8、パネルA−F)。さらに、有効な小腸成長因子様性質をもつGLP−2関連分子は、種々の種由来の関連GLP−2様分子の配列から得られる情報を用いて調製できる。例えば、degu GLP−2配列もマウスの10日間実験で小腸成長因子様活性を示し、ラットGLP−2で得られたのとほぼ同じ小腸重量の増加を示した(いずれのペプチドも1日2回2.5μgで皮下投与した)。このデータは、ここに例示するようなGLP−2ペプチド構造の修飾が、天然GLP−2様の性質をin vivoで示す分子を生じることを示している。これとは対照的に、分子のカルボキシル末端領域にアミノブロッキング基を付加して修飾すると、得られるペプチド、[C−アミド]−GLP−2はin vivoで有意なGLP−2の生物活性を示さなかった(図8、C−D)。
【0086】
均等物
上述の明細書は当業者が本発明を実施するのに十分である。実際、分子生物学、医学又は関連分野の当業者にとって自明な、本発明を実施するための上述の手段を様々に修飾したものは、以下の請求の範囲内に入ることを意図するものである。
【0087】




【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、GLP−2を用いた場合の用量−応答の結果を示す。ラットGLP−2を注射した動物での、小腸の重量(BW−パネルA)、ならびに、近位空腸(PJ−パネルB)、遠位空腸(DJ−パネルC)及び遠位回腸(DI−パネルD)における陰窩+絨毛の高さにGLP−2が及ぼす効果の測定値を、それぞれ、ラットGLP−2の用量に対する関数としてプロットしてある。
【図2】図2は、GLP−2の腸管栄養活性に調剤用ビヒクルが及ぼす効果を図示する。小腸の重量(BW)、ならびに近位空腸(PJ)、遠位空腸(DJ)及び遠位回腸(DI)における陰窩+絨毛の高さを、それぞれ、ゼラチン(G)又は生理食塩水(PBS)への溶液としたラットGLP−2の投与量の関数として測定した。ラットGLP−2を含まないゼラチン溶液を、対照(C)として使用した。
【図3】図3は、GLP−2の腸管栄養活性に投与経路が及ぼす効果を示す。皮下注射(SC)、筋内注射(IM)、腹腔内注射(IP)によってラットGLP−2を投与した後、小腸の重量の変化率(%)を測定した。Tと表示した棒は、GLP−2で治療したラットの試料について、Cと表示した棒は、生理食塩水を注射した対照ラットの試料について示したものである。
【図4】図4は、GLP−2活性に投与頻度が及ぼす効果を示す。X軸に示すように、動物の皮下に、PBSを12時間おきに、2.5μgのラットGLP−2を12時間おきに(q12h)、5μgのラットGLP−2を毎日(qd)、あるいは10μgのラットGLP−2を一日おきに(qod)を注射した。各投与プロトコールについて、小腸の重量(BW)、ならびに近位空腸(PJ)、遠位空腸(DJ)、遠位回腸(DI)における陰窩+絨毛の高さを測定した。
【図5】図5は、GLP−2投与効果の持続状況を、活性の関数として示す。動物は、5μgのラットGLP−2の10%ゼラチンへの溶液、あるいは10%ゼラチンのみを、4週間にわたって(パネルA)、8週間にわたって(パネルB)、あるいは12週間にわたって(パネルC)1日1回注射してから、死亡させた。GLP−2を用いた場合の対照に対する治療の効果を、小腸の重量(BW)、ならびに近位空腸(PJ)、遠位空腸(DJ)、遠位回腸(DI)における陰窩+絨毛の高さについて測定した。
【図6】図6は、GLP−2の腸管栄養効果の時間的経過を示す。2.5μgのラットGLP−2のPBS溶液を1日2回注射した雌のマウスを、治療開始後各種の日数の経過後に死亡させ、小腸の重量を、PBSのみを注射した対照動物に対して検定した。
【図7−1】図7は、投与対象動物の週齢ならびに性別の、GLP−2の腸管栄養活性への効果を示す。パネルAからDでは、4週齢から8週齢までの性別を一致させたGLP−2処理動物(CD1マウス)を、小腸の重量(BW)、ならびに近位空腸(PJ)、遠位空腸(DJ)、遠位回腸(DI)における陰窩+絨毛の高さの双方について、ラットGLP−2での処理後に、それぞれの対照と比較した。
【図7−2】図7は、投与対象動物の週齢ならびに性別の、GLP−2の腸管栄養活性への効果を示す。パネルEからHでは、12週齢から16週齢までの性別を一致させたGLP−2処理動物(CD1マウス)を、小腸の重量(BW)、ならびに近位空腸(PJ)、遠位空腸(DJ)、遠位回腸(DI)における陰窩+絨毛の高さの双方について、ラットGLP−2での処理後に、それぞれの対照と比較した。
【図8】図8は、いくつかの異なったGLP−2及びGLP−2類似体の腸管栄養効果を、対照と比較して示す。パネルA、C、E及びGは、小腸の重量(BW)の変化を示し、パネルB、D及びFは、近位空腸(PJ)における陰窩+絨毛の高さの変化を示す。類似体の略称は、N−アセチル(アミノ末端がアセチル基でブロッキングされたラットGLP−2ペプチド)、Arg+1(アミノ末端にArg残基をさらに有しているラットGLP−2)、Arg+34(カルボキシ末端にArg残基をさらに有しているラットGLP−2)、C−アミド(カルボキシ末端にアミドブロッキング基を有しているラットGLP−2)、Arg+1+2(アミノ末端にArg残基2個をさらに有しているもの)である。さらに、デグーのGLP−2(デグー)の効果についても、マウスでの腸管栄養効果を調べた。
【図9】図9は、ラットGLP−2が小腸の長さに及ぼす腸管栄養効果を示す。GLP−2で10日間処理した後に、小腸の長さの増大を対照動物に対して測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊椎動物のGLP-2および少なくとも1個のアミノ酸の付加、欠失、置換またはN末端もしくはC末端アミノ酸ブロッキング基を有するアミノ酸が組み込まれているという点で脊椎動物のGLP-2と異なっている腸管栄養性の脊椎動物GLP-2類似体から選択されるGLP-2ペプチド、および製剤学的に許容される担体を含んでなり、ただしGLP-2ペプチドがヒトGLP-2である場合、該担体は0.9%食塩水それ自体でない、医薬組成物。
【請求項2】
脊椎動物のGLP-2および少なくとも1個のアミノ酸の付加、欠失、置換またはN末端もしくはC末端アミノ酸ブロッキング基を有するアミノ酸が組み込まれているという点で脊椎動物のGLP-2と異なっている腸管栄養性の脊椎動物GLP-2類似体から選択されるGLP-2ペプチド、および製剤学的に許容される担体を含んでなる、発熱性物質の存在しない医薬組成物。
【請求項3】
脊椎動物のGLP-2および少なくとも1個のアミノ酸の付加、欠失、置換またはN末端もしくはC末端アミノ酸ブロッキング基を有するアミノ酸が組み込まれているという点で脊椎動物のGLP-2と異なっている腸管栄養性の脊椎動物GLP-2類似体から選択されるGLP-2ペプチド、および製剤学的に許容される担体を含んでなる、濾過滅菌されている医薬組成物。
【請求項4】
GLP-2ペプチドが次式:


(式中、aa1、aa2、aa3、aa4、aa5およびaa6は任意のアミノ酸残基を表し、
XはHis、ArgおよびLysから選択される1または2個のアミノ酸であり、
YはHis、ArgおよぴLysから選択される1または2個のアミノ酸であり・
mは0または1であり、
nはOまたは1であり、
RlはHまたはN末端ブロッキング基であり、そして
R2はOHまたはC末端ブロッキング基である)
で表される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
aa1がMet、Leu、lle、Va1およびCysから選択され、
aa2がA1a、Ser、Thr、Pro、Gly、Asn、Asp、GluおよびGlnから選択され、
aa3がA1a、Ser、Thr、ProおよびGlyから選択され、
aa4がHis、ArgおよびLysから選択され、
aa5がMet、Leu、lle、ValおよびCysから選択され、
aa6がAsn、Asp、Glu、G1n、His、ArgおよびLysから選択される、
請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
GLP-2ぺプチドが次のアミノ酸配列:


を有する、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
GLP-2ペプチドが脊椎動物のGLP-2である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
GLP-2ペプチドが哺乳動物のGLP-2である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
GLP-2ペプチドがラットGLP-2である、請求項8に記載の医薬組成物.
【請求項10】
GLP-2がヒトGLP-2または、ヒトGLP-2に対して、少なくとも1個のアミノ酸の付加、欠失、置換またはN末端もしくはC末端ブロッキング基が組み込まれている腸管栄養性のヒトGLP-2類似体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
GLP-2ペプチドがヒトGLP-2である、請求項10に記載の医薬組成物.
【請求項12】
脊椎動物のGLP-2ペプチドに対して、少なくとも1個のアミノ酸の置換、欠失、付加、またはN末端もしくはC末端ブロッキング基が組み込まれている腸管栄養性の脊椎動物GLP-2ペプチド類似体、および製剤学的に許容される担体を含んでなる医薬組成物。
【請求項13】
注射または注入により投与するのに適した液体形態にある、請求項1〜12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
医薬組成物の投与後に該GLP-2ペプチドの遅延放出を引き起こすために製剤化された、請求項1〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
経口送達用に製剤化された、諸求項1〜14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
GLP-2が胃腸組織の成長を促進させるのに有効な量で存在する、請求項I〜15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
GLP-2ペプチドが膵島の成長を促進させるのに有効な量で存在する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
製剤学的に許容されるGLP-2ペプチドの酸付加塩。
【請求項19】
GLP-2ペプチドが哺乳動物のGLP-2ペプチドである、請求項18に記載の製剤学的に許容されるGLP-2ペプチドの酸付加塩。
【請求項20】
GLP-2ペプチドがヒトGLP-2である、請求項19に記載の製剤学的に許容されるGLP-2ペプチドの酸付加塩。
【請求項21】
新規な腸管栄養性ペプチドを同定する方法であって、
a) 少なくとも1個のアミノ酸の置換、欠失、付加、またはブロッキング基をもつアミノ酸を有する、腸管栄養性の脊椎動物GLP-2ペプチドの類似体を取得し、
b) ラットGLP-2のために利用したとき腸管栄養効果を引き出すことができるレジメを用いて、哺乳動物を上記類似体で治療し、そして
c) 偽治療した対照の哺乳動物と比べて、小腸の重さおよび/または陰窩+絨毛の高さおよび/または膵島の大きさに及ぼす上記類似体の効果を判定し、その結果として上記重さおよび/または上記高さおよび/または上記大きさの増加を引き出す類似体として上記腸管栄養性ペプチドを同定する、
ことを含んでなる方法。
【請求項22】
胃腸組織の成長および/または機能を促進させる、請求項1〜16のいずれか1項に記載の医薬組成物を製造するためのGLP-2ペプチドの使用。
【請求項23】
前記医薬組成物が小腸組織の成長および/または機能を促進させるためのものである、請求項22に記載のGLP-2ペプチドの使用。
【請求項24】
前記医薬組成物が胃腸の症状、障害または疾病を予防または治療するためのものである、請求項22に記載のGLP-2ペプチドの使用。
【請求項25】
前記医薬組成物が潰瘍、消化障害、吸収不良症候群、短胃腸症候群、盲腸症候群、炎症性腸疾患、セリアックスプルー、熱帯性スプルー、低ガンマグロブリン血症スプルー、腸炎、限局性腸炎(クローン病)、毒性の薬剤または他の化学療法剤による小腸損傷、および短腸症候群よリ成る群がら選ばれる胃腸の疾病、障害、または症状を治療するためのものである、請求項24に記載のGLP-2ペプチドの使用。
【請求項26】
前記医薬組成物が短腸症候群を治療するためのものである、請求項25に記載のGLP-2ペプチドの使用。
【請求項27】
前記医薬組成物が潰瘍、消化障害、吸収不良症候群、短胃腸症候群、盲腸症候群、炎症性腸疾患、セリアックスプルー、熱帯性スプルー、低ガンマグロブリン血症スプルー、腸炎、限局性腸炎(クローン病)、毒性の薬剤または他の化学療法剤による小腸損傷、および短腸症候群より成る群がら選ばれる胃腸の疾病、障害、または症状を予防するためのものである、請求項24に記載のGLP-2ペプチドの使用。
【請求項28】
前記医薬組成物が化学療法剤による小腸損傷を予防するためのものである、請求項27に記載のGLP-2ペプチドの使用。
【請求項29】
膵島の成長を促進する、請求項1〜15および17のいずれか1項に記載の医薬組成物を製造するためのGLP-2ペプチドの使用。
【請求項30】
糖尿病治療用の、請求項17に記載の医薬組成物を製造するためのGLP-2ペプチドの使用。
【請求項31】
哺乳動物のGLP-2に対して、少なくとも1個のアミノ酸の付加、欠失、置換またはN末端もしくはC末端にブロッキング基が組み込まれており、かつ腸管栄養活性を有するGLP-2ペプチド類似体。
【請求項32】
ヒトGLP-2類似体である、請求項33に記載のGLP-2ペプチド類似体。
【請求項33】
胃腸組織のアポトーシスを抑制する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の医薬組成物を製造するためのGLP-2ペプチドの使用。
【請求項34】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の医薬組成物を含有するバイアルまたはアンプル、および胃腸障害または疾病を治療するためにその内容物を投与するための説明書を含んでなる包装品。
【請求項35】
請求項18〜20のいずれか1項に記載の製剤学的に許容されるGLP-2の塩および製剤学的に許容される担体を含んでなる医薬組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたはラットのGLP−2、および該GLP−2に対して、2、5、7、8、9、10、12、13、16、17、19、20、21、23、24、26、27、28、30、31および33位からなる群より選択された位置に1個または2個のアミノ酸の付加、欠失もしくは置換、またはN末端もしくはC末端アミノ酸ブロッキング基を有するアミノ酸が組み込まれているという点でヒトまたはラットのGLP−2と異なっている腸管栄養性のヒトまたはラットGLP−2類似体から選択されるGLP−2ペプチドと、製剤学的に許容される担体とを含んでなり、ただしGLP−2ペプチドがヒトGLP−2である場合、該担体は0.9%食塩水それ自体でない、胃腸疾患の治療または予防用の医薬組成物。
【請求項2】
ヒトまたはラットのGLP−2、および該GLP−2に対して、2、5、7、8、9、10、12、13、16、17、19、20、21、23、24、26、27、28、30、31および33位からなる群より選択された位置に1個または2個のアミノ酸の付加、欠失もしくは置換、またはN末端もしくはC末端アミノ酸ブロッキング基を有するアミノ酸が組み込まれているという点でヒトまたはラットのGLP−2と異なっている腸管栄養性のヒトまたはラットGLP−2類似体から選択されるGLP−2ペプチドと、製剤学的に許容される担体とを含んでなり、発熱性物質を含まない、胃腸疾患の治療または予防用の医薬組成物。
【請求項3】
ヒトまたはラットのGLP−2、および該GLP−2に対して、2、5、7、8、9、10、12、13、16、17、19、20、21、23、24、26、27、28、30、31および33位からなる群より選択された位置に1個または2個のアミノ酸の付加、欠失もしくは置換、またはN末端もしくはC末端アミノ酸ブロッキング基を有するアミノ酸が組み込まれているという点でヒトまたはラットのGLP−2と異なっている腸管栄養性のヒトまたはラットGLP−2類似体から選択されるGLP−2ペプチドと、製剤学的に許容される担体とを含んでなり、濾過滅菌されている、胃腸疾患の治療または予防用の医薬組成物。
【請求項4】
GLP−2ペプチドが次式:

(式中、aa1、aa2、aa3、aa4、aa5およびaa6は任意のアミノ酸残基を表し、
X はHis、ArgおよびLysから選択される1または2個のアミノ酸であり、
Y はHis、ArgおよびLysから選択される1または2個のアミノ酸であり、
m は0または1であり、
n は0または1であり、
R1はHまたはN末端ブロッキング基であり、そして
R2はOHまたはC末端ブロッキング基である)
で表される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
aa1 がMet、Leu、Ile、ValおよびCysから選択され、
aa2 がAla、Ser、Thr、Pro、Gly、Asn、Asp、GluおよびGlnから選択され、
aa3 がAla、Ser、Thr、ProおよびGlyから選択され、
aa4 がHis、ArgおよびLysから選択され、
aa5 がMet、Leu、Ile、ValおよびCysから選択され、
aa6 がAsn、Asp、Glu、Gln、His、ArgおよびLysから選択される、
請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
GLP−2ペプチドが次のアミノ酸配列:

を有する、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
GLP−2ペプチドがラットGLP−2である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
GLP−2がヒトGLP−2、またはヒトGLP−2に対して、2、5、7、8、9、10、12、13、16、17、19、20、21、23、24、26、27、28、30、31および33位からなる群より選択された位置に1個または2個のアミノ酸の付加、欠失もしくは置換、またはN末端もしくはC末端アミノ酸ブロッキング基が組み込まれている腸管栄養性のヒトGLP−2類似体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
GLP−2ペプチドがヒトGLP−2である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
ヒトまたはラットのGLP−2ペプチドに対して、2、5、7、8、9、10、12、13、16、17、19、20、21、23、24、26、27、28、30、31および33位からなる群より選択された位置に1個または2個のアミノ酸の付加、欠失もしくは置換、またはN末端もしくはC末端アミノ酸ブロッキング基が組み込まれている腸管栄養性のヒトまたはラットGLP−2ペプチド類似体と、製剤学的に許容される担体とを含んでなる、胃腸疾患の治療または予防用の医薬組成物。
【請求項11】
注射または注入により投与するための液体形態にある、請求項1〜10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
医薬組成物の投与後に該GLP−2ペプチドの遅延放出を引き起こすように製剤化された、請求項1〜11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
経口送達用に製剤化された、請求項1〜12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
GLP−2が胃腸組織の成長を促進させるのに有効な量で存在する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
GLP−2ペプチドが膵島の成長を促進させるのに有効な量で存在する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
ヒトまたはラットのGLP−2に対して、2、5、7、8、9、10、12、13、16、17、19、20、21、23、24、26、27、28、30、31および33位からなる群より選択された位置に1個または2個のアミノ酸の付加、欠失もしくは置換、またはN末端もしくはC末端アミノ酸ブロッキング基を有するアミノ酸が組み込まれているという点でヒトまたはラットのGLP−2と異なっている腸管栄養性のヒトまたはラットGLP−2類似体から選択されるGLP−2ペプチドの製剤学的に許容される酸付加塩。
【請求項17】
GLP−2ペプチドがヒトGLP−2類似体である、請求項16に記載の製剤学的に許容される酸付加塩。
【請求項18】
新規な腸管栄養性ペプチドを同定する方法であって、
a)1個または2個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加、またはブロッキング基をもつアミノ酸を有する、腸管栄養性のヒトまたはラットGLP−2類似体を取得し、
b)ラットGLP−2のために利用したとき腸管栄養効果を引き出すことができるレジメを用いて、非ヒト哺乳動物を上記類似体で治療し、そして
c)偽治療した対照の非ヒト哺乳動物と比べて、小腸の重さおよび/または陰窩+絨毛の高さおよび/または膵島の大きさに及ぼす上記類似体の効果を判定し、その結果として上記重さおよび/または上記高さおよび/または上記大きさの増加を引き出す類似体上記腸管栄養性ペプチドとして同定する、
ことを含んでなる方法。
【請求項19】
胃腸組織の成長および/または機能を促進させるための請求項1〜14のいずれか1項に記載の医薬組成物の製造におけるGLP−2ペプチドの使用。
【請求項20】
前記医薬組成物が小腸組織の成長および/または機能を促進させるためのものである、請求項19に記載のGLP−2ペプチドの使用。
【請求項21】
前記医薬組成物が胃腸の症状、障害または疾病を予防または治療するためのものである、請求項19に記載のGLP−2ペプチドの使用。
【請求項22】
前記医薬組成物が潰瘍、消化障害、吸収不良症候群、短胃腸症候群、盲腸症候群、炎症性腸疾患、セリアックスプルー、熱帯性スプルー、低ガンマグロブリン血症スプルー、腸炎、限局性腸炎(クローン病)、毒性の薬剤または他の化学療法剤による小腸損傷、および短腸症候群よりなる群から選ばれる胃腸の疾病、障害、または症状を治療するためのものである、請求項21に記載のGLP−2ペプチドの使用。
【請求項23】
前記医薬組成物が短腸症候群を治療するためのものである、請求項22に記載のGLP−2ペプチドの使用。
【請求項24】
前記医薬組成物が潰瘍、消化障害、吸収不良症候群、短胃腸症候群、盲腸症候群、炎症性腸疾患、セリアックスプルー、熱帯性スプルー、低ガンマグロブリン血症スプルー、腸炎、限局性腸炎(クローン病)、毒性の薬剤または他の化学療法剤による小腸損傷、および短腸症候群よりなる群から選ばれる胃腸の疾病、障害、または症状を予防するためのものである、請求項21に記載のGLP−2ペプチドの使用。
【請求項25】
前記医薬組成物が化学療法剤による小腸損傷を予防するためのものである、請求項24に記載のGLP−2ペプチドの使用。
【請求項26】
膵島の成長を促進させるための請求項1〜13および15のいずれか1項に記載の医薬組成物の製造におけるGLP−2ペプチドの使用。
【請求項27】
糖尿病治療用の請求項15に記載の医薬組成物の製造におけるGLP−2ペプチドの使用。
【請求項28】
ヒトまたはラットのGLP−2に対して、2、5、7、8、9、10、12、13、16、17、19、20、21、23、24、26、27、28、30、31および33位からなる群より選択された位置に1個または2個のアミノ酸の付加、欠失もしくは置換、またはN末端もしくはC末端アミノ酸ブロッキング基を有するアミノ酸が組み込まれており、かつ腸管栄養活性を有するGLP−2類似体。
【請求項29】
ヒトGLP−2類似体である、請求項28に記載のGLP−2類似体。
【請求項30】
胃腸組織のアポトーシスを抑制するための請求項1〜14のいずれか1項に記載の医薬組成物の製造におけるGLP−2ペプチドの使用。
【請求項31】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の医薬組成物を含有するバイアルまたはアンプル、および胃腸障害または疾病を治療するためにその内容物を投与するための説明書を含んでなる包装品。
【請求項32】
請求項16または17に記載の製剤学的に許容されるGLP−2ペプチドの塩および製剤学的に許容される担体を含んでなる、胃腸疾患の治療または予防用の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−342172(P2006−342172A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185610(P2006−185610)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【分割の表示】特願平8−530606の分割
【原出願日】平成8年4月12日(1996.4.12)
【出願人】(506191057)1149336 オンタリオ インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】