説明

グルコース代謝および脂質代謝に関与する治療標的を同定するための方法

RNA結合蛋白質またはmRNP複合体に会合したmRNAおよび蛋白質標的の同定および評価を記載する。特に、本発明は、グルコース代謝および脂質代謝に関与する生理学的経路に関連したRNA結合蛋白質およびそれらのM経路にわたって、協調遺伝子調節を示すmRNAの同定法を提供する。例えば、肥満、糖尿病および低血糖などの異常なグルコース代謝および脂質代謝に関連した疾患などの疾患に関連した疾患の診断または処置にとって有用な候補標的を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、その内容が参照として本明細書に組み込まれている2003年4月7日出願の米国特許出願第60/461,016号に対する優先権および利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、単離されたmRNP複合体に関連した機能関連遺伝子産物を同定および特性化するための方法および組成物を提供する。また、本発明は、グルコース代謝経路または脂質代謝経路などの代謝経路を同定および特性化するための方法および組成物ならびに代謝経路に関連した疾患を処置するための治療標的および処置法を提供する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
グルコース代謝および脂質代謝は、インシュリンの産生、分泌および作用に関与する多数の蛋白質の協調発現によって調節されている。膵臓のβ細胞は、血漿中のグルコース、脂質および他の栄養素の増加を感知し、細胞内反応のカスケードを活性化し、貯蔵顆粒からの調節されたインシュリン放出を導く。次にインシュリンは、インシュリン感受性組織(例えば、骨格筋および脂肪)内へのグルコース取り込み、脂質代謝を刺激し、肝臓のグルコース産生を抑制することにより、血漿中のグルコース濃度および脂質濃度を制御する。
【0004】
糖尿病は、インシュリン作用の障害を特徴とする疾患である。1型糖尿病は、インシュリンを産生する膵臓のβ細胞の無能から生じ、患者は、血糖をコントロールするために、毎日のインシュリン注射を強いられる。2型糖尿病は、患者がインシュリン作用に耐性となり、高血糖症、高脂血症、および高インシュリン血症に至る代謝性疾患である。多くの場合、2型糖尿病は、肥満および座位のライフスタイルに関連している。膵臓のβ細胞の発生、成長および維持の時に活性化される代謝経路を研究するため、成人および胎児の幹細胞の膵臓β細胞系を確立し、膵臓β細胞様の細胞系を操作する努力がなされてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
グルコース代謝および脂質代謝に関与する細胞経路の幾つかは理解されているが、それらの経路の多数の調節状況は、まだ十分に特性化されていない。インシュリン遺伝子発現と同時制御されているRNA類の同定により、膵臓のβ細胞によるインシュリンの産生と分泌の制御に関与する遺伝子調節についての情報が提供されると考えられる。また、共発現されたRNA類の同定により、脂肪細胞におけるインシュリンシグナル伝達経路および他のグルコースおよび/または脂質代謝経路の以前に未知であった成分ならびにグルコース代謝または脂質代謝に関与する他の細胞の同定が促進されると考えられる。グルコースおよび脂質代謝経路成分を同定することにより、糖尿病、肥満およびグルコース代謝または脂質代謝の変化を特徴とする他の疾患のための新たな治療標的が提供される。したがって、そのような機能的に関連した遺伝子、治療標的および処置法を確認するための、高感度で集中した効率的方法に対する必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
本発明は、結合して機能的および構造的関連RNA類の発現を調整するRNA結合蛋白質の能力を利用する。特定のRNA結合蛋白質に結合したRNA類は、機能的関連遺伝子産物の集団を規定し、また、RNA結合蛋白質への結合を媒介する共通の一次および/または二次構造を有し得る。本発明の方法により同定されたRNA結合蛋白質およびRNA類は、インシュリン作用、インシュリン抵抗性、肥満および糖尿病を含むグルコースまたは脂質代謝経路などの生理学的経路または調節経路の解明に有用である。本発明の方法により同定されたRNA類、それらのRNA類をコードする遺伝子および蛋白質は、疾患状態の異常な生理学的、代謝的または調節的経路に関与するか、そうでなければ調整する他の遺伝子を調節するそれらの能力により、推定される治療標的である。
【0007】
本発明は、リボノミック(ribonomic)プロフィル、およびRNA類の発現、RNA結合蛋白質、および特定のmRNP複合体またはmRNP複合体のセットに会合するmRNP複合体会合蛋白質などのリボノミックプロフィルを同定し、特性化する方法を提供する。例えば、グルコースまたは脂質代謝経路に関与する遺伝子は、公知の、または決定された特定のmRNP複合体に会合するmRNA類が、その経路に関与する物質であると特定することにより同定される。本発明により、mRNA類または蛋白質は、構造的および/または機能的関係に基づき、生物学的に関連したサブセットに分類される(例えば、例えば、同じインシュリン産生または分泌経路に関与するもの、または正常または疾患膵臓β細胞における成長および発達時の遺伝子発現を促進するもの)。遺伝子特性化および薬物送達に対する静的なゲノム解析および蛋白質解析とはコントロール的に、この「リボノミックス」法は、例えば、正常または疾患の状態において、またはグルコースもしくは薬物などの環境の影響に対する応答において細胞または組織の寿命のうちの所与の時間における遺伝子情報の動態的なスナップショットを提供する。
【0008】
一態様において、本発明は、mRNP複合体を免疫沈降させ、同定し、例えば、RNA結合蛋白質、mRNA類および他の蛋白質などのmRNP複合体の成分を比較し、それらの蛋白質またはそれらの蛋白質をコードする遺伝子の生理学的過程または経路における生物学的役割を実証することにより、生理学的過程または経路に関連した細胞におけるRNA結合蛋白質、mRNAおよびmRNP複合体の蛋白質成分を同定する方法を提供する。一実施形態において、前記方法はさらに、RNA結合蛋白質を調製し、RNA結合蛋白質を単離し、および/またはRNA結合蛋白質に対する抗体を作製することを含む。
【0009】
一態様において、本発明は、異常なグルコース代謝または脂質代謝などの疾患の処置に関する治療標的を同定する方法を提供する。ある細胞サンプルにおける単離されたmRNAリボヌクレオ蛋白質(mRNP)の少なくとも1つの成分の蛋白質レベルまたはRNAレベルを測定し、第2の細胞サンプルにおける前記成分の蛋白質レベルまたはRNAレベルと比較する。これら2つのサンプルは、1つは正常であり、もう1つは、病態にある点で異なっていてもよい。また、前記細胞サンプルは、1つのサンプルは薬剤により処置されており、もう1つのサンプルは処置されていないという点で異なっていてもよい。例えば、細胞サンプルは、大部分、成熟脂肪細胞、前脂肪細胞、膵臓β細胞、肝細胞、骨格筋細胞、または心筋細胞または、例えば、グルコース代謝またはインシュリン代謝に関与している任意の細胞を含有し得る。もし、第1のサンプル成分の濃度が、第2のサンプル成分の濃度と異なっていれば、その成分、その成分をコードする核酸(その成分が蛋白質の場合)、またはその成分によってコードされる蛋白質(その成分が核酸の場合)は、グルコース代謝または脂質代謝に関する疾患処置にとって治療標的となる可能性がある。一実施形態において、前記成分は、RNA結合蛋白質、RNA、またはmRNP関連蛋白質である。
【0010】
一実施形態において、第1の細胞サンプルは、成熟脂肪細胞の表現型を有し、第2の細胞サンプルは、前成熟脂肪細胞の表現型を有する。これら2つの細胞タイプ間でのmRNP複合体成分の発現の差異は、その成分が、前脂肪細胞から脂肪細胞への分化に関係する経路に関与していることを示している。
【0011】
他の実施形態において、第1の細胞サンプルは、肥満、糖尿病、低血糖症、糖毒性、脂質毒性、インシュリン抵抗性、高脂血症およびリポジストロフィーなどのグルコース代謝または脂質代謝に関する疾患表現型を有し、第2の細胞サンプルは、正常な表現型を有する。
【0012】
他の実施形態において、本法は、mRNP複合体成分の蛋白質レベルまたはRNAレベルを測定する前にグルコース代謝経路または脂質代謝経路の少なくとも1つの成分濃度を変化させる薬剤によって、サンプルを処理する追加工程を有する。一実施形態において、前記製剤は、例えば、インシュリン、グルコース、インシュリン様成長因子−1(IGF−1)、β−アドレナリン作動性、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、脂肪酸、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)リガンド、またはインシュリン様成長因子−2(IGF−2)、RNA結合蛋白質、RNA結合蛋白質の過剰発現に対するRNAi、またはRNA結合蛋白質のエンハンサーである。他の実施形態において、前記薬剤は、例えば、核酸、ホルモン、抗体、抗体断片、抗原、サイトカイン、成長因子、薬理学的薬剤(例えば、例えば、化学療法剤、発癌剤または他の細胞)、化学組成物、蛋白質、ペプチドおよび/または小分子(例えば、推定薬物)などの試験処置薬である。
【0013】
一態様において、本発明は、生理学的経路または過程、例えば、グルコース代謝または脂質代謝に関連する細胞におけるRNA結合蛋白質、mRNAおよびmRNP複合体の蛋白質成分を同定する方法を含む。前記方法は、脂肪細胞または前脂肪細胞(例えば、痩せた、または肥満の個体における)などの細胞に豊富なRNA結合蛋白質を同定し、前記細胞を、例えば、インシュリンまたはβ3アゴニストなどの薬剤によって処理し、mRNP複合体の成分(例えば、機能的集団)を同定する工程を含む。一実施形態において、前記方法は、分析に好適なRNA結合蛋白質、例えば、生理学的経路または過程の調節に関与するRNA結合蛋白質を同定する工程をさらに含む。さらなる一実施形態において、前記方法は、前記経路内成分の機能を実証する工程をさらに含む。
【0014】
他の実施形態において、本発明の方法は、前記成分、前記成分をコードする核酸、または前記成分によりコードされる蛋白質を単離するさらなる工程を有する。例えば、本発明の方法は、RNA結合蛋白質および/またはmRNP複合体会合蛋白質をコードするmRNA、RNA結合蛋白質および/またはmRNP複合体会合蛋白質をコードする遺伝子、RNA結合蛋白質および/またはmRNP複合体会合蛋白質を含むmRNP複合体、mRNP複合体に会合するmRNA、およびmRNP複合体に会合するmRNAをコードする遺伝子を同定し、単離することができる。さらに本発明は、mRNP複合体の1つ以上の成分に結合する他の関連RNA類の同定を考慮している。これらのRNA類としては、限定はしないが、マイクロRNA(miRNA)、非コード化RNA(ncRNAまたはsnmRNA)、リボソームRNA(rRNA)、小型妨害RNA(siRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、核内低分子RNA(snoRNA)、小型時間的RNA(stRNA)および転移RNA(tRNA)が挙げられる。
【0015】
一実施形態において、前記成分は、ポリピリミジントラクト結合蛋白質(PTB、RNA結合蛋白質1(RBP1)としても知られている)などのRNA結合蛋白質である。他の実施形態において、RNA結合蛋白質は、図10〜22における同定されたRNA結合蛋白質からなる群から選択される。これらのRNA類は、RNA結合蛋白質遺伝子を含有するマイクロアレイにおける分析に供された。これらの遺伝子およびそれらにコードされた蛋白質は、治療標的の候補、ならびにグルコース代謝および脂質代謝、インシュリン作用、インシュリン抵抗性、例えば、糖尿病および肥満に関与する細胞経路の解明のためのRASTM分析用候補となる。一実施形態において、RNA結合蛋白質は、親和精製を促進するためのタグ(例えば、例えば、HISまたはGST)を有する。
【0016】
一実施形態において、前記成分は、特定のRNA結合蛋白質に関連するmRNAである。前記mRNAは、単独に同定されるか、または、例えば、多数のプローブを含有するアレイを用いてエンマッセ同定される。一実施形態において、前記mRNAは、キナーゼ、トランスポーター、ホスファターゼ、チャネル蛋白質、プロテアーゼ、受容体、転写因子またはトランスフェラーゼをコードする。例えば、前記蛋白質は、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1;核遍在性カゼインキナーゼ2;神経受容体蛋白質−チロシンキナーゼ;MAP−キナーゼ活性化デスドメイン;AMP−活性化プロテインキナーゼβ2調節サブユニット;カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼIV;プロテインキナーゼCβ;アデニル酸キナーゼ3;マイトジェン活性化プロテインキナーゼ;キナーゼ5;6−ホスホフルクト−2−キナーゼ/フルクトース−2,6−ビスホスファターゼ2;ホスファチジルイノシトール4−キナーゼ;グルコキナーゼ;グリコーゲンシンターゼキナーゼ3β;ホスホリラーゼキナーゼ(γ2、精巣);蛋白質チロシンホスファターゼ(非受容体タイプ1);蛋白質チロシンホスファターゼ(非受容体タイプ5);イノシトールポリリン酸5−ホスファターゼD;蛋白質チロシンホスファターゼ(受容体タイプ、ζポリペプチド);二重特異性ホスファターゼ6;蛋白質チロシンホスファターゼ(非受容体タイプ12);グルコース−6−ホスファターゼ(触媒的);6−ホスホフルクト−2−キナーゼ/フルクトース−2,6−ビスホスファターゼ2;プロトン感受性カチオンチャネルDRASIC;ナトリウムチャネル(電位非依存性1、α(上皮));カルシウムチャネル(電位依存性、α2/δサブユニット1);内部に整流するカリウム(チャネル、サブファミリーJ、メンバー6);カリウムチャネル調節因子1;カルシウムチャネル(電位依存性、Tタイプ、α1Gサブユニット);環状ヌクレオチド依存性カチオンチャネル;アミロライド感受性カチオンチャネル1;内部に整流するカリウムチャネルJ14;カリウムコンダクタンスが大きいカルシウム活性化チャネル(サブファミリーM、αメンバー1);カリウム電位依存性チャネル(Shab関連サブファミリー、メンバー2);カリウムチャネルサブユニット(Slack);カリウム中間/小コンダクタンスカルシウム活性化チャネル(サブファミリーN、メンバー1);ナトリウムチャネル(電位依存性、タイプV、αポリペプチド);アミロライド感受性カチオンチャネル2(神経);カリウムチャネル(サブファミリーK、メンバー6(TWIK−2));カチオン−クロリドコトランスポーター6;溶質キャリアファミリー21(有機アニオントランスポーター、メンバー12);アミノ酸トランスポーター系A2;ペプチド/ヒスチジントランスポーター;コリントランスポーター;溶質キャリアファミリー31(銅トランスポーター類、メンバー1);溶質キャリアファミリー13(ナトリウム依存性ジカルボキシレートトランスポーター);溶質キャリアファミリー2(促進化グルコーストランスポーター、メンバー13);溶質キャリアファミリー12(塩化カリウムトランスポーター、メンバー5);溶質キャリアファミリー6(神経伝達物質トランスポーター、セロトニン、メンバー4);溶質キャリアファミリー2A2(グルコーストランスポーター、タイプ2);カルボキシペプチダーゼD;ユビキチン特異的プロテアーゼ2;肥満細胞プロテアーゼ1;前蛋白質転換酵素サブチリシン/ケキシン、タイプ7;ラミニン受容体1(67kD、リボソーム蛋白質SA);蛋白質チロシンホスファターゼ(非受容体タイプ1);カルシウム感受性受容体;神経受容体蛋白質−チロシンキナーゼ;グルタミン酸受容体(向代謝性4);核受容体サブファミリー4(グループA、メンバー2);神経ペプチドY5受容体;蛋白質チロシンホスファターゼ(非受容体タイプ5);インシュリン様成長因子1受容体;蛋白質チロシンホスファターゼ(受容体タイプ、ζポリペプチド);核受容体サブファミリー4(グループA、メンバー3);グルタミン酸受容体(向代謝性1);腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(メンバー1a);インシュリン受容体;γミノ酪酸受容体関連蛋白質;蛋白質チロシンホスファターゼ;非受容体タイプ12;コリン作用性受容体(ニコチン性、βポリペプチド1);嗅覚受容体(U131);γミノ酪酸受容体β2;グリア細胞系由来神経栄養因子ファミリー受容体α1;グリシン受容体β;グルタミン酸受容体相互作用蛋白質2;アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド1受容体1;アシアロ糖蛋白質受容体2;アデノシンA3受容体;線維芽細胞成長因子受容体1;核受容体結合因子2;プリン作動性受容体P2Y(G蛋白結合型1);核受容体サブファミリー1(グループH、メンバー4);ペルオキシソーム増殖因子活性化因子受容体(γ);5ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)受容体4;レチノイドX受容体γ;インシュリン受容体関連受容体;推定N−アセチルトランスフェラーゼカメロ4;レシチン−レチノールアシルトランスフェラーゼ;フェニルエタノールアミンN−メチルトランスフェラーゼ;フコシルトランスフェラーゼ2;シアリルトランスフェラーゼ8(GT3α2,8−シアリルトランスフェラーゼ)C;UDP−グルクロノシルトランスフェラーゼ;α1,3−フコシルトランスフェラーゼFuc−T(マウスFut4に類似);ジアシルグリセロールO−アシルトランスフェラーゼ1;転写3のシグナルトランスデューサーおよび活性化因子3;ISL1転写因子(LIM/ホメオドメイン);およびオリゴデンドロサイト転写因子1であり得る。他の実施形態において、前記蛋白質は、CNCG,CACNA2D1、KCNC3、およびKCNB2からなる群より選択される遺伝子によってコードされる。
【0017】
他の態様において、本発明は、グルコース代謝または脂質代謝の変化に関連した疾患を有する個体のサンプルにおける単離mRNP複合体の少なくとも1つの成分のRNAレベルまたは蛋白質レベルを、健康サンプルにおける成分のRNAレベルまたは蛋白質レベルを比較することにより、グルコース代謝異常または脂質代謝異常などの生理学的または調節的経路に関与する疾患の処置のための治療標的を同定する方法を提供する。もし疾患サンプルにおける成分濃度が、健康サンプルにおける成分濃度と異なっていれば、その成分、その成分をコードする核酸、またはその成分によってコードされる蛋白質は、その疾患処置のための治療標的となる可能性がある。
【0018】
他の態様において、本発明は、細胞におけるグルコースまたは脂質の代謝経路など、生理学的または調節的経路に関与する遺伝子、または遺伝産物を同定する方法を提供する。例えば、グルコース代謝または脂質代謝の経路に関与する少なくとも1つの成分を含有するmRNP複合体が単離され、単離されたmRNP複合体の少なくとも1つの追加成分が同定される。この追加成分もまた、グルコースまたは脂質の代謝経路に関与している可能性が高い。一実施形態において、前記方法は、細胞または生物において、追加成分の発現を阻害することにより、追加成分の活性を確認し、グルコース代謝または脂質代謝に及ぼす阻害効果を決定する工程を含む。阻害は、例えば、RNAi、アンチセンスRNA、リボザイム、PNA、または抗体を用いた追加成分の遺伝子発現阻害など、任意の数の手段により達成できる。
【0019】
他の態様において、本発明は、細胞におけるグルコース代謝または脂質代謝などの生理学的または調節的経路を変化させる薬剤を同定する方法を提供する。ある細胞サンプルをある薬剤で処理し、代謝経路、例えばグルコース代謝または脂質代謝の経路に関与する少なくとも1つの成分を有するmRNP複合体をサンプルから単離し、単離されたmRNP複合体の少なくとも1つの成分のRNAレベルまたは蛋白質レベルを測定し、未処理コントロールサンプルから単離された成分のRNAレベルまたは蛋白質レベルと比較する。未処理コントロールサンプルと比較して、薬剤処理サンプルにおける前記成分の発現に差異があれば、この薬剤がグルコース代謝または脂質代謝を調節しているか、または関与しているかを示している。一実施形態において、前記薬剤は、インシュリン産生経路、脂質生成経路、インシュリン作用経路、脂質代謝経路、もしくはグルコース代謝経路または、グルコース代謝および脂質代謝の態様に関与する任意の経路などの経路のある成分と相互作用するか、または調節する。さらに他の実施形態において、前記薬剤は、ある経路を阻害する。他の実施形態において、前記薬剤は、ある経路を亢進させる。一実施形態において、前記薬剤は、インシュリン、βーアドレナリン作動性アゴニスト、インシュリン様成長因子−1(IGF−1)、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、脂肪酸、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)リガンド類(例えば、チアゾリンジオン類、フィブラート類、ハロゲン化脂肪酸、およびチロシン誘導体)、インシュリン様成長因子−2(IGF−2)、RNA結合蛋白質に対するRNA;RNA結合蛋白質発現のエンハンサーおよび/またはグルコースである。
【0020】
特定の一態様において、本発明は、細胞におけるグルコース代謝を調節する遺伝子産物を同定する方法を提供する。膵臓のβ細胞サンプルの少なくとも1つの遺伝子産物の単離mRNP複合体における発現を測定する。前記遺伝子産物は、RNA結合蛋白質、RNA結合蛋白質に会合するmRNAまたはmRNP複合体会合蛋白質であり得る。膵臓のβ細胞サンプルなどの細胞サンプルは次に、例えば、インシュリン、グルコース、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、脂肪酸、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)リガンドまたはインシュリン様成長因子−2(IGF−2)などの薬剤で処理する。処理後、遺伝子産物の発現を測定する。処理前の遺伝子産物の発現と、処理後の遺伝子産物の発現との比較によって、その遺伝子産物がグルコース代謝調節に関与していることを示すものとなる。
【0021】
他の態様において、本発明は、インシュリン産生を調節する薬剤および/またはアドレナリン作用性アゴニストにおけるその調節された分泌を同定する方法を提供する。プリプロインシュリンmRNAの3’非翻訳領域または5’非翻訳領域に結合する能力のある少なくとも1つのRNA結合蛋白質に結合する能力のある核酸によって、膵臓のβ細胞サンプルを処理する。次に核酸をRNA結合蛋白質から分離し、RNA結合蛋白質を同定する。一実施形態において、前記RNA結合蛋白質は、5’−gaauaaaaccuuugaaagagcacuac−3’,5’−cccaccacuacccuguccaccccucugcaaug−3’、または5’−agccctaagtgaccagctacagtcggaaaccatcagcaagcaggtcattgttccaac−3’を有する核酸に結合する。
【0022】
他の実施形態において、本発明は、mRNP複合体に会合したRNA結合蛋白質の発現を阻害する核酸を細胞サンプルに移入することにより、mRNP複合体の一成分を同定する方法を提供する。次に細胞サンプルおよびコントロールサンプルからの全RNAを単離し、測定する。コントロールサンプルと比較して、核酸移入サンプルにおける発現を変化させたRNA類は、機能的および/または構造的特徴を共有するmRNP複合体のメンバー(例えば、例えば、同じ代謝経路に関与する)であると考えられる。
【0023】
他の態様において、本発明は、単離されたmRNP複合体、例えば、ポリピリミジントラクト結合(PTB)およびPTB蛋白質に関連した少なくとも1つのmRNAを含有するmRNP複合体を提供する。
【0024】
他の態様において、本発明は、膵臓のβ細胞サンプルにおけるRNA結合蛋白質、RNA結合蛋白質に会合したmRNAおよび/またはmRNP複合体会合蛋白質の発現を測定し、インシュリンβーアドレナリン作動性アゴニスト、インシュリン様成長因子−1(IGF−1)、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、脂肪酸、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)リガンド類(例えば、チアゾリンジオン類、フィブラート類、ハロゲン化脂肪酸、およびチロシン誘導体)、インシュリン様成長因子−2(IGF−2)、インシュリン産生または分泌に関与するRNA結合蛋白質に対するRNAi、RNA結合蛋白質発現のエンハンサーおよび/またはグルコースなどの薬剤によって、前記膵臓のβ細胞サンプルを処理し、処理後、RNA結合蛋白質、mRNAおよび/またはmRNP複合体会合蛋白質の発現レベルを測定することにより、インシュリン産生を調節する蛋白質および/またはその調節された分泌を同定する方法を提供する。処理前の発現と、処理後のRNA結合蛋白質、RNA結合蛋白質に会合したmRNAおよび/またはmRNP複合体会合蛋白質の発現との比較による差異によって、RNA結合蛋白質、RNA結合蛋白質に会合したmRNAおよび/またはmRNP複合体会合蛋白質が、インシュリン産生における調節を示すものとなる。
【0025】
他の態様において、本発明は、RNA結合蛋白質、またはグルコース代謝もしくは脂質代謝に関与していることが公知のmRNAに結合するmRNP複合体結合蛋白質を単離し、mRNP複合体の少なくとも1つの追加成分(例えば、mRNA、RNA結合蛋白質および/またはmRNP複合体結合蛋白質)を同定することにより、グルコースまたは脂質の代謝経路に関与している、例えば、プリプロインシュリンmRNAなどのmRNAにより同時調節されている遺伝子産物を同定する方法を提供する。
【0026】
他の態様において、グルコース代謝および/または脂質代謝の変化に関連した疾患を有する個人を処置するための処置薬としての薬剤の有効性を評価するための方法を提供する。前記方法は、疾患を有する個人のサンプルを、薬剤に接触させ、薬剤処理サンプルにおけるRNA結合蛋白質、RNA結合蛋白質に結合したmRNAまたはmRNP複合体結合蛋白質の発現レベルを、コントロールサンプルにおけるRNA結合蛋白質、RNA結合蛋白質に会合したmRNAまたはmRNP複合体会合蛋白質の発現レベルと比較する工程を含み、発現における差異は、その薬剤が、その疾患を処置することのできる処置薬候補であることを示している。また、本発明の方法は、薬剤の有効性または毒性をモニターするためにも用いられる。
【0027】
他の態様において、特異的RNA結合蛋白質の活性に影響を受ける遺伝子を同定する方法を提供する。特異的RNA結合蛋白質の発現を阻害するために、RNAi媒介遺伝子サイレンシングが用いられる。コントロールRNAi処理細胞または組織ならびにRNA結合蛋白質特異的RNAi処理細胞または組織および遺伝子からRNAサンプルを単離し、差異的に発現する遺伝子を同定する。
【0028】
本発明の前述および他の目的、特徴および利点は、以下の図面および本発明の好ましい実施形態の詳細な説明からより明らかにされるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(詳細な説明)
本発明は、例えば、インシュリン作用、インシュリン産生および分泌、グルコース代謝および脂質代謝などの調節経路に関与している細胞における細胞リボノームを得て、特性化する方法を提供する。それにより得られるリボノミックプロフィルは、前記経路を変更または調節するため、可能性のある治療標的としての遺伝子およびmRNA類ならびにそれがコードする蛋白質のサブセットを提供する。
【0030】
本発明の方法は、mRNP複合体成分を同定し測定することを含む。差異的に発現されたmRNP複合体成分は、治療標的となる可能性があり、また可能性のある処置薬の有効性または毒性を評価するために有用である。また、本発明は、構造的および/または機能的に関連した遺伝子産物を同定し、特性化する方法、ならびに生物学的経路または他の細胞機能の特徴を解明する方法も提供する。同定されたmRNP複合体成分は、また、細胞または生物の代謝または疾患状態を診断、モニタリングおよび評価する上で有用である。
【0031】
一般に、mRNP複合体成分は、限定はしないが、少なくとも1つのRNA結合蛋白質および少なくとも1つの会合または結合mRNAを含む。また、mRNP複合体は、少なくとも1つの会合または結合蛋白質(すなわち、mRNP複合体会合蛋白質)または他の会合または結合分子(例えば、炭水化物、脂質、ビタミン類など)を含み得る。ある成分がmRNP複合体に結合、そうでなければ付加している場合、それは、約10−5から約10−12のKdで、mRNP複合体に結合している。一実施形態において、前記成分は、前記複合体に約10−7から約10−9のKdで会合している。他の実施形態において、前記成分は、前記複合体に約10−8から約10−9のKdで会合している。
【0032】
mRNP複合体を細胞から単離し、好ましくはmRNP複合体の成分ならびにそれら成分の遺伝子前駆体および遺伝子産物を同定することにより、リボノミックプロフィルが生成される。会合または結合RNAは、特定のRNA結合蛋白質、mRNP複合体会合蛋白質、mRNAとの会合、または他の共通の構造的または機能的特徴に基づいてサブユニットに分類される。限定はしないが、細胞の種または組織タイプ、細胞の発達段階、細胞の(例えば、悪性の)分化段階、細胞の病原性(例えば、細胞が感染しているか、有害な遺伝子を発現しているか、特定の遺伝子を欠如しているか、特定の遺伝子を発現していない、または不十分な発現をしているか、または特定の遺伝子を過剰発現しているかどうか)、細胞に影響を与える種々の条件(例えば、処置薬による処置、アポトーシスまたはストレス状態、およびmRNP複合体を単離するために用いられる特異的リガンド、ならびに当業界の実践者に公知の他の因子などの種々の因子に依って、リボノミックプロフィルは細胞サンプル間で異なる。したがって、このプロフィルは、治療標的の同定、および正常または疾患細胞における細胞経路の成分を解明するために使用できる細胞サンプルの遺伝子発現のフットプリントを提供する。
【0033】
(mRNP複合体およびRNA結合蛋白質の同定および単離)
特定の様式、経路または疾患状態に関与しているRNA結合蛋白質は、当業界における種々の方法によって同定される。例えば、正常サンプルと疾患サンプルまたは正常サンプルと薬剤処理サンプルとの間で差異的に発現するRNA結合蛋白質の発現は、ノーザンブロット、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(QRT−PCR)、ウェスタンブロット、マイクロアッセイ分析、遺伝子発現の連続分析(SAGE)、クローニングおよび配列決定などの方法または当業技術者に公知の他の方法を用いて評価できる。
【0034】
あるいは、差異的に発現したRNA結合蛋白質は、RIBOCHIPTMなどのマイクロアレイを用いても効率的に同定できる。RIBOCHIPTM(MWG Biotech、High Point、ノースカロライナ州)は、多数のRNA結合蛋白質に関する発現レベルをアッセイするために用いられるマイクロアッセイである。RIBOCHIPTMは、50量体のオリゴヌクレオチドとなっている遺伝子を含有し、その蛋白質産物は、RNA結合性を有するか、またはRNA結合モチーフを含有していると報告されている。これらの遺伝子には、図10〜22で同定され、実施例1〜5に記載されたものが含まれる。また、アレイに関しては、特異性、標識化およびハイブリダイゼーションの効率、感受性および実験間の正規化についての情報を提供するコントロール特徴(合計17)も含まれる。
【0035】
一実施形態において、サンプル中のRNA結合蛋白質の発現を検出および/または測定する目的で、多数のRNA結合蛋白質の少なくとも一部をコードする核酸配列を含有するマイクロアレイを探索するため、RNA結合蛋白質をコードするmRNAを含有する細胞サンプルが用いられる。サンプルのmRNAは、例えば、コントロール、薬剤処理、正常、または疾患状態の細胞系または組織から調製される。前記薬剤は、遺伝子発現を変化させる任意の薬剤、例えば、グルコース、インシュリンβーアドレナリン作動性アゴニスト、例えば、BRL−37433、インシュリン様成長因子−1(IGF−1)、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、脂肪酸、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)リガンド類(例えば、チアゾリンジオン類、フィブラート類、ハロゲン化脂肪酸、およびチロシン誘導体)、インシュリン様成長因子−2(IGF−2)であり得る。また、前記薬剤は、RNA結合蛋白質を阻害するRNAi、RNA結合蛋白質発現のエンハンサー、核酸、ホルモン、抗体、抗体断片、抗原、サイトカイン、成長因子、薬理学的薬剤(例えば、化学療法剤、発癌剤)、化学組成物、蛋白質、ペプチドおよび/または小分子であり得る。mRNAサンプルは、必要ならば、増幅し、マイクロアレイハイブリダイゼーションのために処理する。
【0036】
マイクロアレイ分析は、単独の実験において、プロフィル化された千もの遺伝子の中から、独特なまたは差異的発現プロフィルを有するRNA結合蛋白質遺伝子を迅速に同定し、機能的または構造的種類に集団分けすることを可能にする。マイクロアレイ分析の幾つかの具体的な例、ならびに関連したRNA結合蛋白質遺伝子および差異的に発現するコードされたたんぱく質の一覧は、実施例3〜5に提供されている。これらの差異的に発現したRNA結合蛋白質遺伝子は、例えば、肥満、脂肪細胞の分化、インシュリン作用、インシュリン産生および分泌、糖尿病、PPARリガンド作用の機構、インシュリン抵抗性、グルコース代謝、脂質代謝、低血糖性、糖毒性、脂質毒性、インシュリン抵抗性、高脂血症およびリポジストロフィーに関与している。
【0037】
膵臓のβ細胞系または新鮮に調製された小島は、グルコース応答性および内分泌膵臓機能を検討するための生理学的に関連するエクスビボモデル系である。発現の変化を受けるRNA結合蛋白質を同定するために、細胞を種々の期間、低グルコース(例えば、3mM)または高グルコース(例えば、15mM)の条件下で温置する。全mRNAは、標準的方法に従って調製する。サンプルが限られている幾つかの場合、標準的なRT−PCR法またはRIBOAMPTMキット(Arcturus、Mountain View、カリフォルニア州)により、mRNAを増幅することが必要であり得る。マイクロアレイ分析によって同定された差異的に発現したRNA結合蛋白質遺伝子は、グルコースによって発現が調節されるRNA結合蛋白質を表す。
【0038】
他の実施形態において、例えば、その細胞タイプに特有な遺伝子発現の機構を特性化するために、α細胞系、α−TC1.6、ラット膵臓のβ細胞系のINS1細胞(Beta−gene、テキサス州ダラス所在)およびマウス膵臓のβ細胞系のMIN−6細胞などの細胞系において、mRNAおよびRNA結合蛋白質の蛋白質レベルが決定される。例えばα−TC1.6細胞は、NKx6.1mRNAを発現するが、NKx6.1蛋白質は発現しない。コントロール的にINS1細胞は、NKx6.1mRNAとNKx6.1蛋白質の双方を発現する。小島発達時のこの制限的発現におけるRNA結合蛋白質に関する役割は、現在証拠により支持されている。
【0039】
他の実施形態において、ヒトの前脂肪細胞また脂肪細胞が、痩せ型または肥満患者から単離され、RNA結合蛋白質の差異的発現が、マイクロアレイ分析により得られる。これらのRNA結合蛋白質遺伝子およびそれらの遺伝子産物は、例えば、脂肪細胞の分化、脂肪細胞の機能、インシュリン作用、インシュリン抵抗性、肥満ならびにグルコースおよび脂質の代謝に機能を果たしている。
【0040】
(RIBOTRAPTM
マイクロアレイ分析が、RNA結合蛋白質発現の同時分析を可能にする一方、RIBOTRAPTMは、対象の核酸と相互作用する未知のRNA結合蛋白質またはRNA結合蛋白質のセットを単離または「捕捉」するために、生化学的アプローチと分子生物学的アプローチを組合わせる。これは、1)RNA結合蛋白質のインビトロ単離のため、親和性試薬として、親和性標識化またはエピトープ−タグ化したRNA結合要素、および2)インビボでタグ化mRNAに結合したRNA結合蛋白質の単離のため、細胞培養モデルにおける親和性標識化またはエピトープ−タグ化mRNAの発現または形質転換の利用など、幾つかの異なったアプローチを含む。特定のmRNA上のRNA結合蛋白質を最初に同定することが必要な場合、RIBOTRAPTMは有用である。RIBOTRAPTM法は、実施例2に詳細に記載されている。
【0041】
図1は、標準的方法により、細胞抽出物中に存在するRNA結合蛋白質を同定し、単離するためにストレプトアビジン−アガロース支持体に結合したビオチン化mRNAを用いるインビトロRIBOTRAPTM法の一例を示している。
【0042】
図2は、新規のRNA結合蛋白質(ヘキサゴン)を捕捉するために、「おとり」として、対象のmRNAまたはmRNAの一部、「RNA Y」が使用される本発明の一実施形態を示している。RNA Yは、標準的な分子生物学的方法を用いて、先ず、cDNAに変換され、引き続いて、リガンド(蛋白質「X」)に結合する配列をコードするDNAタグ(点線)に、3’端または5’端において結合させる。得られた融合RNAを、内因性RNA結合蛋白質がRNA Yと結合し、相互作用できる細胞内で発現させる。次に、前記細胞を溶解し、細胞の無い抽出物を溶解し、細胞の無い抽出物を調整し、固体支持体に固定した蛋白質「X」に接触させる。温置後、蛋白質「X」および結合したRNA融合分子ならびにその会合RNA結合蛋白質を洗浄して、残りの細胞物質を除く。洗浄後、新たに単離したRNA結合蛋白質を、RNA−蛋白質複合体から除去し、蛋白質マイクロシークエンシングまたはウェスタンブロッティングにより同定する。有用なリガンドとしては、mRNP複合体に特異的な抗体または蛋白質(例えば、自己免疫疾患、または癌を有する対象から得られる)が挙げられる。このRNA結合蛋白質は、RNA Yによってコードされる蛋白質の翻訳を調節するその能力に関して、さらに試験され、また、薬物標的としての検証のために試験される。
【0043】
一実施形態において、RNA結合蛋白質は、小島、膵臓β細胞、脂肪細胞、前脂肪細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、肝細胞または細胞の集団などの天然の生体サンプルから、RIBOTRAPTMにより単離される。細胞集団は、単一の細胞タイプを含有し得る。あるいは、細胞集団は、一次培養または二次培養からの、もしくは、小島または腫瘍などの複合組織からの異なった細胞タイプの混合物を含有し得る。
【0044】
一実施形態において、mRNP複合体の成分またはその前駆体の発現が変更された、例えば、サンプル内への導入により、または他の遺伝子変更により、またはグルコース、インシュリン、βーアドレナリン作動性アゴニスト、例えば、BRL−37433、インシュリン様成長因子−1(IGF−1)、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、脂肪酸、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)リガンド類(例えば、チアゾリンジオン類、フィブラート類、ハロゲン化脂肪酸、およびチロシン誘導体)、インシュリン様成長因子−2(IGF−2)、RNA結合蛋白質に対するRNAi、RNA結合蛋白質発現のエンハンサー、核酸、ホルモン、抗体、抗体断片、抗原、サイトカイン、成長因子、薬理学的薬剤(例えば、化学療法剤、発癌剤)、化学組成物、蛋白質、ペプチドおよび/または小分子などの薬剤により、細胞または組織を処理後、例えば、導入されたか、阻害されたか、または過剰発現された細胞サンプルから、RNA結合蛋白質が単離される。前記化合物が、核酸である場合、この核酸は、例えば、DNA、RNA、PNA、アンチセンス核酸、リボソーム、RNAi、miRNA、ncRNA、rRNA、siRNA、snRNA、snoRNA、stRNA、tRNA、アプタマー、デコイ核酸または競合核酸であり得る。一実施形態において、前記化合物は、競合的結合によってmRNP複合成分の発現を変化させ得る。化合物は、RNA結合蛋白質とRNAとの間、RNA結合蛋白質とmRNP複合体会合蛋白質との間、RNAとmRNP複合体会合蛋白質との間、または2種のRNA間、RBP間、mRNP複合体会合蛋白質間など、2種以上のmRNP複合体成分間の結合を阻害し得る。他の実施形態において、1種以上のmRNP複合体成分の発現を変化させるために、前記細胞サンプルを、例えば、ウィルス、細菌、プリオン、真菌、寄生虫または酵母などの病原体に感染させる。1種以上のmRNP複合体成分をコードする核酸の導入は、感染、形質転換または当業界に公知の類似の方法により達成できる。一実施形態において、1種以上のmRNP複合体成分を発現する発現ベクターを細胞に移入する。好適なベクターとしては、限定はしないが、プラスミドベクターまたはウィルスベクターなどの組換えベクターが挙げられる。前記成分をコードする核酸は、細胞内での発現のために、適切なプロモーター配列および/またはエンハンサー配列に、操作可能に結合されることが好ましい。本発明の一実施形態において、特定の細胞タイプが、RNA結合蛋白質の発現を駆動させる細胞タイプ特異的または誘導可能な遺伝子プロモーターを含有するように操作される。
【0045】
あるいは、mRNP複合体成分を発現しないか、またはその成分発現レベルを減少させるノックアウト細胞系またはノックアウト生物を作製できる。このノックアウト細胞系またはノックアウト生物は、特定のRNA結合蛋白質、mRNAおよび/またはmRNP複合体と会合したmRNP複合体会合蛋白質を発現しないことが好ましい。
【0046】
好ましい一実施形態において、前記成分の分離および/または検出、および/または測定を促進させるため、mRNP複合体成分をコードする核酸はタグ化される。アクセス可能なエピトープを使用できるか、または前記成分上のエピトープがアクセスできないか、もしくは不明瞭である場合、異所的に発現された組換え蛋白質上のエピトープタグが使用できる。好適なタグとしては、限定はしないが、ビオチン、MS2蛋白質結合部位配列、U1snRNA 70k結合部位配列、U1snRNA A結合部位配列、g10結合部位配列(Novagen社、ウィスコンシン州マジソン所在)およびFLAG−TAG(登録商標)(Sigma Chemcal、ミズーリ州セントルイス所在)が挙げられる。例えば、タグ化RNA結合蛋白質とタグに特異的な抗体または抗体断片などのリガンドの発現を指令するベクターを移入した細胞を用いて、形質転換細胞を含有する組織抽出物から、タグ化RNA結合蛋白質を、その会合したmRNAと共に免疫沈降させる。
【0047】
1種以上のmRNP複合体成分の発現は、細胞サンプルを、公知の化合物または試験化合物に接触させるか、またはそれによって処理することにより変化させ得る。前記化合物は、限定はしないが、蛋白質、核酸、ペプチド、抗体、抗体断片、小分子、酵素、グルコース、βーアドレナリン作動性アゴニスト、例えば、BRL−37433、インシュリン様成長因子−1(IGF−1)、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、脂肪酸、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)リガンド類(例えば、チアゾリンジオン類、フィブラート類、ハロゲン化脂肪酸、およびチロシン誘導体)、インシュリン様成長因子−2(IGF−2)、RNA結合蛋白質に対するRNA、RNA結合蛋白質発現のエンハンサーおよび/または小分子(例えば、推定上の薬物)であり得る。
【0048】
(RASTM
RNA結合蛋白質の部分的配列が得られたら、cDNAおよびゲノム配列の公知のデータベースから同定できるか、またはcDNAおよびゲノムライブラリーから単離し、当業界で公知の方法により配列決定する。遺伝子を単離し、蛋白質を発現させることが好ましい。
【0049】
対象のRNA結合蛋白質が同定されたら、公知の方法を用いて、組換えRNA結合蛋白質に対する抗体を作出する。次にこの抗体を用いて、内因性RNA結合蛋白質を回収し、その同一性を確認する。引き続き、前記抗体をリボノミック分析システム(RASTM)に使用でき、これによって、RNA結合蛋白質を含有するmRNP複合体が単離され、mRNP複合体およびRNA結合蛋白質に会合している細胞RNAのサブユニットがマイクロアレイ分析により同定される。マイクロアレイ分析は、図3に示されており、下記により詳細に記載されている。
【0050】
本発明において、mRNP複合体またはその成分の単離のために、任意の方法が使用できるが、本明細書に記載された方法または米国特許第6,635,422号または同時係属米国特許出願第10/238,306号および第10/309,788号に開示されている方法が好ましい。例えば、mRNP複合体を単離するインビボの方法は、RNA結合蛋白質などのmRNP複合体の成分と特異的に結合するリガンドを有する少なくとも1つのmRNP複合体を含む。例えば、前記リガンドは、前記複合体成分と特異的に結合する抗体、核酸または他の任意の化合物または分子であり得る。
【0051】
他の実施形態において、前記リガンド(ここでは、mRNP複合体に結合している)を、そのリガンドに特異的結合する結合分子に結合させることにより、mRNP複合体を分離する。前記結合分子は、前記リガンドに直接結合できる(例えば、リガンドに特異的な結合パートナー)か、または前記リガンドに間接的に結合できる(例えば、リガンドリガンド上のタグに特異的な結合パートナー)。好適な結合分子としては、限定はしないが、蛋白質A、蛋白質G、およびストレプトアビジンが挙げられる。また、結合分子は、自己免疫疾患または癌などの疾患を患っている対象の血清を使用して得ることもできる。一実施形態において、前記リガンドは、そのFab領域を介してmRNP複合体の成分に結合する抗体であり、結合分子は、抗体のFc領域に結合する。
【0052】
他の実施形態において、前記結合分子を、ベッド、ウェル、ピン、プレートまたはカラムなどの固体支持体に結合させる。したがって、mRNP複合体は、リガンドおよび結合分子を介して、前記支持体に結合する。次いでmRNP複合体を前記支持体から除去することにより、mRNP複合体を回収できる(例えば、洗浄により、または、それを好適な溶媒および当業技術者に公知の条件を用いて前記支持体から溶出させることにより)。
【0053】
一定の実施形態において、mRNP複合体は、それに対してリガンドを結合させる前に、架橋によって安定化させる。一般に、架橋は、共有結合(例えば、mRNP複合体成分同士の共有結合)を含む。架橋は、物理的手段(例えば、加熱または紫外線照射により)または化学的手段(例えば、前記複合体を、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、または他の公知の架橋剤に接触させることにより)によって実施でき、それらは当業者に公知である。他の実施形態において、リガンドをmRNP複合体に結合後、mRNP複合体に架橋させる。さらなる実施形態において、前記結合分子をリガンドに結合後、リガンドに架橋させる。さらに他の実施形態において、前記結合分子を前記支持体に架橋させる。
【0054】
本発明の方法は、複数のmRNP複合体を同時に、(例えば「エンマッセ」)単離および特性化することを可能にする。例えば、各々が異なるmRNP複合体に特異的な複数のリガンドに生体サンプルを接触させる。そのサンプルの複数のmRNP複合体は、適切な特異的リガンドに結合する。次に適切な結合分子を用いて複数のmRNP複合体を分離し、それにより複数のmRNP複合体を単離する。次いでmRNP複合体およびmRNP複合体内に含有されたmRNA類を、本明細書に記載された方法および当業界に公知の方法により特性化、および/または同定する。あるいは、本発明の方法を、あるサンプルについて多数回実施し、各々の反復ごとに異なったリガンドを用いて、連続様式でmRNP複合体を特性化し、同定する。
【0055】
mRNP複合体の単離後、mRNP複合体に会合している少なくとも1種のmRNAの発現レベルを測定する。ある特定のmRNP複合体上のmRNA類をRNA結合蛋白質およびmRNP複合体会合蛋白質と共に回収することにより、機能的に関連した遺伝子産物のサブセットの遺伝子発現を示しているリボノミックプロフィルが提供される。前述のとおり、リボノミックプロフィルは、細胞によって異なることは理解されよう。したがって、ある1つの細胞タイプのリボノミックプロフィルが、その細胞タイプにとっての識別子として使用でき、他の細胞のリボノミックプロフィルと比較することができる。
【0056】
図4は、mRNP複合体に会合した機能的および/または構造的関連mRNA類を同定するために、RIBOTRAPTM法と関連させてRASTM法を用いる本発明の一実施形態を示している。図4は、先ず特定のRNA結合蛋白質を単離するためにRIBOTRAPTMを用い、引き続き会合mRNA類を同定するためにRASTMを用いて得られたデータと比較して、全RNAの伝統的分析を用いて得られたデータの比較を示している。RIBOTRAPTMおよびRASTMの使用により、ある特定のRNA結合蛋白質に会合し、機能的に関連している可能性の高いRNAのサブセットの豊富な、より高感度のアッセイが提供される。それに較べて全RNAのマイクロアレイ分析は、同レベルの感度と機能性を提供することなく、より複雑なデータセットを提供する。
【0057】
本発明の方法により単離されたmRNAおよび/またはそのmRNAから得られたcDNAの増幅は、必要ではなく、本発明に要求されない。しかしながら、当業技術者は、当業界に周知の多数の核酸増幅法(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(QRT−PCR)、回転サークル増幅(RCA)または鎖置換分析(SDA))のいずれかにより、同定されている核酸を増幅することを選択できる。
【0058】
RASTMアッセイの1つの目標は、機能的な関係を有する蛋白質をコードするmRNA類を同定することである。予想される関連機能の中でも、a)共通の代謝経路におけるコード化蛋白質の関与、b)一時的に同時調節されているコード化蛋白質、c)細胞内または細胞上に同様に局在化しているコード化蛋白質、d)生体機械(例えば、リボソーム)の形成または調節において、ある役割を演じているコード化蛋白質がある。機能的関連蛋白質のセットの発現から得られる複雑な特徴および表現型の同定には、認識、細胞特異的活性化、炎症または分化などの過程が含まれると考えられる。これらの複雑な過程に関与していることが知られている蛋白質は、他の研究から公知であるが、その機能の大多数は概して未知のままである。本発明の価値の1つは、これらの過程に関与する代替の薬物標的として、または代理マーカーとして役立ち得るより多数の蛋白質のセットを発見することに関与している。
【0059】
また、mRNP複合体に存在しているmRNAの亜集団を、5’または3’非翻訳領域などの共通の配列要素または共通の機能的特徴の存在に関して同定または検査することができる。次いでそれらのRNA結合蛋白質に会合したRNAの独特なサブセットを同定するために、RASTMを用いることができる。調節に関する非翻訳配列要素コード(USERコード)を同定するために、一次配列の計算分析を単独で、または二次構造分析と組合わせて使用できる。さらに、mRNAの亜集団を、機能的関連に関して調べることができる。例えば、遺伝子注釈により、また、機能的ゲノムデータベース(例えば、Locus Link(NCBI、メリーランド州ベセスダ所在)、GO Database(Gene Ontology)TMConsortium)、Proteome BioKnowledge(登録商標)Library(Incyte Genomics社、カリフォルニア州パロアルト所在))において公知の機能により、各mRNAを分類することができる。例えば、RNA結合蛋白質またはmRNP複合体が、免疫調節に関与しているならば、同じmRNP複合体に見られる他のmRNA類を、免疫調節におけるそれらの役割に関して分析することができる。しかし、mRNAは、mRNP複合体において異なるRNA結合蛋白質またはRNAを介して、間接的に結合され得る(例えば、RNA結合蛋白質またはRNA結合蛋白質に関する他の公知の結合部位を認識するUTRにおけるUSERコード要素の存在に関して評価される)。
【0060】
mRNAの機能的集団を単離するための代表的な方法は、インビボRASTMであり、これによって、インビボで特定のRNA結合蛋白質に会合しているmRNAの独特なレパートリーが同定される。あるいは、RNA結合蛋白質とmRNAがインビトロで会合し、分析されるインビトロRASTMが使用できる。例えば、内因性RNA:蛋白質複合体を単離するためのRIBOTRAPTM法が、例えば、未処理内因性複合体の免疫沈降にとって親和剤が効果的でないために、実行できない場合にインビトロ法は有用である。
【0061】
(インビトロRASTM
実施例5は、インビトロRASTMを実施する方法の例を提供している。簡略に述べると、RNA結合蛋白質をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりクローン化し、配列を確認し、大腸菌において、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)融合蛋白質として発現させる。精製後、GST−RNA結合蛋白質をグルタチオンセファロースビーズに結合させ、RNA調製液に曝露させて、独特のmRNAプールを選択的に保持するその能力を評価した。個々のGST−RNA結合蛋白質により保持されたメッセンジャーRNAは、標準的方法に従って、マイクロアレイ分析とQRT−PCR分析との組合せによりプロフィル化した。保持されたmRNAプールにおける明白なコンセンサス要素を探索するやめに、メッセンジャーRNA非翻訳領域(UTR)配列を整列させ、ビオチン化オリゴヌクレオチド親和性クロマトグラフィにより、直接的結合を確認するため、最初に少数(例えば、5〜10UTRs)を評価する(RIBOTRAPTMに関して記載されたとおり)。
【0062】
一般に、精製細胞質RNAおよび清澄化細胞質ライセートの2つのタイプのmRNA調製物が使用される。精製細胞質RNAは、RNA結合蛋白質に関するシス結合要素をコードするmRNAを直接同定するために使用される。RNAと蛋白質の双方を含有する細胞ライセートは、例えば、結合を調整する補助的因子が存在しているため、RNA結合蛋白質:RNA相互作用の改善された特異性を有し得る。
【0063】
さらなるグルコースおよび/または脂質調節RNA結合蛋白質に関して、グルコース、βーアドレナリン作動性アゴニスト、例えば、BRL−37433、インシュリン様成長因子−1(IGF−1)、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、脂肪酸、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)リガンド類(例えば、チアゾリンジオン類、フィブラート類、ハロゲン化脂肪酸、およびチロシン誘導体)、インシュリン様成長因子−2(IGF−2)、RNA結合蛋白質に対するRNA、RNA結合蛋白質発現のエンハンサーおよび/または小分子(例えば、推定上の薬物)などの薬剤によって処理された細胞または組織から調製された精製RNAまたは細胞質ライセートを用いて、保持されたmRNAプール間の比較がなされる。
【0064】
実施例6は、インビトロRASTMの一例を記載している。要約すると、ヒトPTBをグルタチオンSトランスフェラーゼベクター内へクローン化し、組換え蛋白質(GST−PTB)を当業者に公知のとおり精製した。GST−PTBをグルタチオンセファロースビーズに固定し、膵臓β細胞から調製した清澄化細胞質ライセートまたは精製RNAと共に温置した。基質を結合性緩衝液によって完全に洗浄し、GST−PTBに結合したRNAを精製した。コントロールとして、GST蛋白質単独または他のGST−RNA結合性蛋白質を含有するグルタチオン結合基質と共に同じRNA調製物を温置した。各カラムからの精製RNAをマイクロアレイ分析またはQRT−PCRにより同定した。
【0065】
(インビボRASTM
本発明の他の実施形態において、細胞または組織の内因性mRNP複合体は、細胞ライセートからの内因性mRNP複合体の免疫沈降およびmRNA内容物の特性化により、プロフィル化される。個々のRNA結合蛋白質または他のmRNP複合体成分に対する結合パートナー(例えば、抗体)を用いてmRNP複合体
を単離し、例えば、任意の所与の疾患状態時、または一定の実験条件下、会合したmRNA類を同定し、特性化する。インビトロRASTMに関して記載されたタグ化RNA結合蛋白質法とはコントロール的に、内因性mRNP複合体は、分析前にトランスフェクションや、タグ化RNA結合蛋白質を発現している細胞系の選択を必要としない。しかし、ながら、インビボRASTM分析は、無処理のmRNP複合体を免疫沈降できる個々のRNA結合蛋白質または他のmRNP複合体成分に特異的な抗体を必要とする。RNA結合蛋白質などのmRNP複合体成分に特異的なポリクローナル抗ペプチドおよび/または完全長蛋白質抗体、モノクローナル抗体または組換え抗体ライブラリーが使用できる。例えば、INS−1細胞から、mRNP複合体を効率的に免疫沈降するためにRNA結合蛋白質PTBに対する市販の抗体(Zymed、カリフォルニア州サウスサンフランシスコ所在)が使用された。
【0066】
mRNP複合体に結合する抗体およびその断片は、当業界に周知の方法を用いて作出される。そのような抗体としては、限定はしないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、Fab断片およびFal発現ライブラリーにより産生された断片が挙げられる。また、抗体およびその断片は、当業界に公知の抗体ファージ発現法を用いても作出できる。
【0067】
抗体生産のために、限定はしないが、ヤギ、ブタ、ウサギ、ラット、ニワトリ、マウスおよびヒトなどの種々の宿主を、免疫原生を有する任意の断片またはその成分のmRNP複合体の注射により免疫化する。宿主種に依っては、免疫応答を高めるためにアジュバントが用いられる。このようなアジュバントとしては、限定はしないが、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムなどの無機物ゲル類、ならびにリソレシチン、プルロニック(pluronic)ポリオール類、ポリアニオン類、ペプチド類、油乳液、キーホールカサガイヘモシアニン、およびジニトロフェノールなどの界面活性物質が挙げられる。ヒトに用いられるアジュバントの中でも、カルメット・ゲラン桿菌、およびコリネバクテリウム・パルブムが好ましい。
【0068】
mRNP複合体の成分に対するモノクローナル抗体は、培養細胞系による抗体分子の生産を提供する任意の方法を用いて調製される。これらには、限定はしないが、ハイブリドーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法、およびEBV−ハイブリドーマ法が含まれる。一般に、ある動物を、mRNP複合体または免疫原生断片(1つまたは複数)またはその共役体(1つまたは複数)により免疫化する。次いで、前記免疫化した動物からリンパ系細胞(例えば、脾臓リンパ球)を得て、不死化細胞(例えば、骨髄腫または異種骨髄腫)に融合させ、ハイブリッド細胞を生産する。このハイブリッド細胞をスクリーニングして、所望の抗体を生産するものを同定する。
【0069】
また、抗体は、リンパ球集団におけるインビボ生産の誘導により、または免疫グロブリンライブラリー、または当業界に公知の高特異性結合剤の一群のスクリーニングによっても生産できる。
【0070】
mRNP複合体に対する特異的な結合部位を含有する抗体断片もまた作出できる。例えば、そのような断片としては、限定はしないが、抗体分子のペプシン消化によって生産できるF(ab’)断片およびF(ab’)断片のジスルフィド架橋を還元することにより作出できるFab断片が挙げられる。あるいは、所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速で容易な同定を可能にするため、Fab発現ライブラリーが構築される。
【0071】
mRNP複合に対して所望の特異性を有する抗体を同定するために、種々の免疫アッセイが用いられる。確立された特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれかを用いる競合的結合アッセイまたは免疫放射線アッセイに関する多数のプロトコルは当業界に周知である。そのような免疫アッセイは、mRNP複合体の成分とその特異的抗体との間の複合体形成の測定を典型的に含む。2つの非妨害エピトープに反応性のモノクローナル抗体を利用する免疫アッセイが好ましいが、競合的結合アッセイもまた使用できる。
【0072】
前記抗体は、公知の方法に従って診断アッセイに好適な支持体(例えば、ラテックスまたはポリスチレンなどの材料から形成されたビーズ、プレート、スライドまたはウェル)に共役できる。さらに、抗体は、公知の方法に従って放射標識(例えば、35S、125I、131I)、酵素標識(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)および蛍光組織(例えば、フルオレセイン)などの検出可能な基に共役できる。このような装置は、抗体とRNA結合蛋白質との間の結合を検出するために特異的な少なくとも1つの試剤を含むことが好ましい。前記試剤はまた、緩衝剤および蛋白質安定化剤(例えば、多糖類など)などの補助剤を含み得る。前記装置は、必要な場合は、試験における背景妨害を減少させる試剤、コントロール試剤、試験実施のための器具などをさらに含み得る。前記装置は、任意の好適な様式でパッケージでき、典型的には全ての要素を1つの容器にパッケージし、その試験の実施に関する印刷された説明書を付ける。
【0073】
一実施形態において、細菌発現、精製および抗体生産のため、適切なcDNAライブラリーからRNA結合蛋白質遺伝子をPCRにより増幅し、発現ベクター(例えば、pGEXまたはpDEST17 6X−His)内へクローン化する。抗体を親和性精製し、特性化し、蛋白質およびそれに会合したRNA結合蛋白質またはmRNP複合体の免疫沈降のために最適化する。抗体がRNA類を沈降させる能力は、一般に2100BioAnalyzer(Agilent、カリフォルニア州パロアルト所在)を用いた高速ハイスループット分析によって決定される。先に特性化したRNA結合蛋白質抗体などの非免疫コントロールを、各々陰性コントロール、陽性コントロールとして並行して操作する。さらなる分析に、RNA結合蛋白質および/またはmRNP複合体を免疫沈降させることのできる特異的抗血清を用いる。
【0074】
任意に抗原決定のためのソフトウェア(Antheprot、フランス国リオン所在;Parker and Wellingtonアルゴリズムを用いる)を用い、蛋白質配列の分析に基づいて、1種超のペプチド抗原を選択し、その後、NCBIにおいてBlast P探索を行ってデザインしたペプチドが、他の蛋白質に有意に相同性ではないことを確認してもよい。ペプチドは、RNA結合ドメインの外に位置すると考えられる領域から選択し、mRNP複合体において、より曝露され易いエピトープに対して豊富にする。一実施形態において、15〜25アミノ酸ペプチドを、標準的な方法に従って合成し、キーホールカサガイヘモシアニン(KLH)に共役してから、ポリクローナル抗体生産のため、ウサギを免疫化する。
【0075】
RNA結合蛋白質またはmRNP複合体は、以下のとおり免疫沈降できる。一実施形態において、ある特定のRNA結合蛋白質/mRNP複合体に特異的な抗体を蛋白質Aビーズに前結合させ、ウシ血清アルブミンでブロックし、広範に洗浄する。リーシス緩衝液中で最終的に洗浄後、細胞抽出物を加える。種々の実験条件(例えば、低および高グルコース)に曝露した細胞(または組織)からの核の無い細胞質抽出物を、本質的に記載したとおり調製する。温置時間と温度は、各々の抗RNA結合蛋白質抗体に対して最適化する。複合体を核の無い条件下で洗浄する。次いで抗体−mRNP複合体をチアシアン酸グアニジンを含有する変性緩衝液RLT(Quiagen社、カリフォルニア州バレンシア所在)によって破壊し、QuiagenRNA単離用カラムクロマトグラフィ(Quiagen社、カリフォルニア州バレンシア所在)を用いてmRNAを精製する。次いで、精製mRNAを、例えば、最新のゲノム内容(例えば、Affymetrix、カリフォルニア州サンタクララ;Agilent、カリフォルニア州パロアルトまたはMWG Biotech社、マイクロアレイ)を表す特徴(例えば、10,000〜40,000遺伝子)からなるヒトまたはげっ歯類のマイクロアレイ(細胞源または組織源に依る)上でのマイクロアレイ分析のために処理する。各実験において存在する「検出可能な」レベルで認められる遺伝子は、その遺伝子が会合しているmRNP複合体の一成分であると考えられ、全RNAマイクロアレイ分析より上のその相対的濃縮倍数が決定される。ルーチン的に局所背景より上のレベルで発現した遺伝子は、その集団のメンバーであると考えられる。候補となる遺伝子の存在および全RNAより上の相対的濃縮倍数を検証し、配列特異的プラーマーを用いてQRT−PCRにより、より正確に定量化する。
【0076】
一実施形態において、mRNP複合体プールを地図にし、選択されたmRNP複合体のRNA含量を正確に規定するために、インビトロおよびインビボRASTMに基づいたアプローチの組合せが使用できる。
【0077】
mRNP複合体の多成分性は、反応性ポリペプチドエピトープの接近不可能性により、効率的な免疫沈降を妨害し得る。適切な親和性試剤が無い場合、または内因性複合体が単離できない場合、細胞内の個々のDNA結合蛋白質に会合したmRNA類は、例えば、Flag、AU1、またはT7などの幾つかの一般的なエピトープの1つによりタグ化されたRNA結合蛋白質を用いることによって同定される。結合性エピトープは、RNA結合蛋白質のN末端またはC末端上に発現され、発現のため、適切な細胞系に導入される。選択(例えば、ゼオシン中)によりプールした細胞系を作出し、タグ化RNA結合蛋白質の安定した発現のためにスクリーンする。偽処理またはグルコース処理後、細胞、例えばINS−1細胞からmRNP複合体を免疫沈降させるため、商品として入手できる抗体(例えば、α−T7、Novagen、ウィスコン州マジソン所在)が使用される。陽性コントロールとして、殆ど全てのポリアデニル化mRNA類と結合することが知られているタグ化ポリA結合蛋白質(PABP1)を構築し、mRNP複合体の並行免疫沈降のため、INS−1細胞に移入する。個々のINS−1細胞系(プールされた系)の低および高グルコース処理後に単離されたメッセンジャーRNAプールを、マイクロアレイ分析および選択的QRT−PCR確認により評価する。タグ化RNA結合蛋白質に会合した機能的集団を、RNA結合蛋白質に対する、商品入手可能なモノクローナル抗体を用いて単離されたものと直接比較できる点で、タグ化RNA結合蛋白質の使用は有利である。これにより、内因性RNA結合蛋白質集団の検証ならびにタグ化RNA結合蛋白質のmRNA結合特性の評価が可能となる。
【0078】
mRNAプールは、アミノアリルcDNA類に変換され、マイクロアレイのプローブとして使用するために、シアニン色素で標識化した。実施例1に記載されたとおり、DeRisi(www.microarray.org.;「Reverse Transcription and aa−UTP labeling of RNA」)および(www.tigr.org; Protocol M005)によるプロトコル変更に基づき、RNA調製物からアミノアリルcDNA(aa−cDNA)を合成した。精製aa−cDNAをシアニン色素(Amersham Biosciences;ニュージャージー州ピスカタウェイ所在;カタログ番号PA23001(Cy3)またはPA25001(Cy5))に結合し、精製し、実施例1に記載されたとおり分析した。
【0079】
各マイクロアレイに対し、1つのCy3標識反応および1つのCy5標識反応からの物質をプールし、高速減圧で乾燥させた。製造元(MWG Biotech;ノースカロライナ州ハイポイント所在)により提案された一般的指針に従って処理されたマイクロアレイおよびスライドに、プールしたサンプルをハイブリダイズした。
【0080】
Axon 4000BスキャナーおよびGenePix版4.0ソフトウェア(Axon;カリフォルニア州ユニオンシティー所在)を用いて、マイクロアレイを走査し、得られた画像ファイルを実施例1に記載されたとおり定量化した。
【0081】
単離されたmRNP複合体を、全体としてその成分の発現をある程度決定するために検査するか、または、その個々の成分へと分解できる。mRNP複合体を全体として、リガンドから分離するか、または、mRNAをリガンド−mRNP複合体から分離した後、リガンドからRNA結合蛋白質を分離することができる。あるいは、mRNAがリガンドに結合している場合は、RNA結合蛋白質をリガンド−mRNA複合体から分離してから、mRNAをリガンドから分離できる。当業界の実践者は、洗浄および化学反応など、成分を分離させる標準的方法を認識している。分離後、mRNP複合体の各成分を検査することができ、好ましくは、それらの身元、量または他の識別因子を将来の参考のために記録する(例えば、コンピュータデータベースに)。
【0082】
分離されたmRNP複合体上の相補的mRNA類を同定するために、本明細書に記載された方法に従い、cDNA類およびオリゴヌクレオチド類を使用できる。mRNAサブユニットをエンマッセ同定するために、マイクロアレイグリッドに基づいたcDNAまたはオリゴヌクレオチドを使用できる。マイクロアレイで検査された各標的核酸は、位置できる正確なアドレスを有し、その結合は定量化できる。マイクロアレイは、商品として入手できる基質(例えば、紙、ニトロセルロース、ナイロン、他の任意のタイプの膜フィルタ、シリコン化チップなどのチップ、ガラススライド、シリコーンウェーハ、または任意の他の好適な固体支持体または可撓性支持体)内で配置できる。さらに、サンプル中のmRNA類は、標準的方法に従い、「ハイブリゼーションによる配列決定」として公知の過程である、結合および洗浄の緊縮性に基づいて同定できる。
【0083】
mRNAサブセット中のmRNA類の同定、配列決定および/またはその他特性化のための代替アプローチとしては、限定はしないが、示差表示、ファージ表示/分析、遺伝子表現の連続分析(SAGE)およびmRNA調製物からのcDNAライブラリー調製およびライブラリーのメンバー配列決定が挙げられる。
【0084】
本発明のいずれの実施形態を実践するためにも、当業界に周知であり、一般に利用できるDNA配列決定法が使用できる。配列決定法には、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、SEQUENASE(登録商標)(米国Biochemical社、クリーブランド、OH)、Taqポリメラーゼ(Perkin Elmer,マサチューセッツ州ボストン所在)、熱安定性T7ポリメラーゼ(Amersham、イリノイ州シカゴ所在)などの酵素、またはポリメラーゼとGibco BRL(InvitrogenTM、カリフォルニア州カールスバッド)により市販されているElongase(登録商標)Amplification Systemに見られるものなどのプルーフリーディングエキソヌクレアーゼとの組合せが使用できる。この過程は、Hamilton Micro Lab 2200(Hamilton、ネバダ州リノ所在)、Peltier Thermal Cycler(PTC200)(MJ Research、マサチューセッツ州ウォータータウン所在)およびABI Catalystならびに373および377DNA Sequencers(Perkin Elmer、コネチカット州シェルトン所在)などの機械によって、自動化されることが好ましい。
【0085】
一実施形態において、本発明の方法は、発達上の変化または細胞周期の変化を受けているか、または他に、細胞の変化または環境の変化に供されてきた細胞からの単離核において実施され、公知の方法に従って核ラン−オフアッセイを行って転写RNAを得、この転写RNAを、cDNAマイクロアレイを用いて、同じ細胞のmRNP複合体から単離された全体のmRNAレベルと比較する。これらの方法により、定常状態のエンマッセmRNAレベルに及ぼす転写効果を、転写効果から識別することができる。全RNAまたは転写事象および転写後事象により影響される定常状態のmRNAレベルを表すRNA蓄積を示す転写プロフィルとは反対に、核ラン−オフ実験により検出されたmRNAは、転写後事象の影響前の遺伝子の転写のみを表している。mRNP複合体を表しているマイクロアレイは、トランスクリプトームまたは核ラン−オフよりもmRNAの明確でより限定されたサブセットを含有する。
【0086】
mRNP複合体成分を特性化し、同定する他の方法としては、限定はしないが、RT−PCR、QRT−PCR、RNase保護、ノーザンブロット分析、ウェスタンブロット分析、マクロまたはマイクロアレイ分析、インサイチュハイブリダイゼーション、免疫蛍光、放射免疫および免疫沈降などの標準的な実験用方法が挙げられる。mRNAサブセットと他のmRNP成分との機能的関係をさらに特性化するために、これらの方法から得られた結果を比較し、対比させる。
【0087】
また、本発明は、膵臓β細胞、脂肪細胞、前前脂肪細胞、肝細胞、骨格筋および心筋などの細胞サンプルまたは細胞集団に存在する細胞タイプを判断するための診断的方法を提供する。このような分析により、ある細胞タイプを他の細胞タイプから、異なる分化段階の細胞タイプを、またはある人の細胞を他の人の細胞から、例えば、疾患に罹っている、または疾患の危険の高い人を正常な人から識別することができる。前記方法は、少なくとも1種のmRNP複合体を単離し、そのmRNP複合体の少なくとも1種の成分の発現を検出することを含み、ここで前記少なくとも1種の成分はある一定の細胞タイプに特異的であるため、その成分発現の検出は、細胞集団にその細胞タイプが存在することを示す。前記成分は、サンプル全体(例えば、組織または生物)の中の、または細胞集団内のある一定の細胞タイプに特異的であり得る。前記細胞サンプルまたは細胞集団は、例えば、腫瘍、組織、培養細胞、体液、臓器、細胞抽出物または細胞ライセートであり得る。また、本発明の方法は、細胞集団に存在する細胞タイプを決定するためにも使用できる。あるいは、本明細書に用いられる細胞タイプは、特性の組織、特定の種、特定の分化段階、特定の疾患状態または特定の細胞周期に由来する細胞のクラスを指すこともあり得る。
【0088】
(mRNP複合体の成分をコードする遺伝子に関する機能的役割の検証)
mRNP複合体において同定されたある成分が、病因学または他の表現型において、直接的役割を演じていることを確認する目的で、遺伝子サイレンシング研究(例えば、アンチセンス核酸、RNAi、リボゾーム、および/または形質転換動物を用いる)のため、その成分をコードしている標的遺伝子候補が選択される。コントロールのRNAi処理サンプルからのRNAを、RNA結合蛋白質のRNAi処理サンプルから調製されたRNAと比較することにより、遺伝子発現における量的差異を提供することができる。RNA結合蛋白質特異的RNAi処理細胞または組織から単離されたサンプルにおける遺伝子の差異的発現は、同定ならびにRNAiによる特異的RNA結合蛋白質の阻害が原因の量的変化についてのデータを提供する。特異的RNA結合蛋白質のダウンレギュレーションの結果として、発現パターンが変化した遺伝子は、RNA結合蛋白質リボノミック集団の一メンバーであると仮に考えられる。
【0089】
例えば、各々の処置的遺伝子候補に関して、その遺伝子のコード配列を表している1つ以上の短いDNA分節を、U6ポリメラーゼIIIプロモーターまたはRNAse P RNA H1などの適切なプロモーターの下流に、センスまたはアンチセンスの方向で、プラスミドベクター内へ個々にクローン化する。U6ポリメラーゼIIIプロモーターまたはRNAse P RNA H1の下流に、センスまたはアンチセンスの方向で1つ以上の処置的遺伝子候補の2つ以上の短いDNA分節を含有するプラスミドベクターを構築してもよい。あるいは、化学的に合成した相補的22bpRNAのアニーリングによって、RNAiを構築してもよい(Dharmacon、コロラド州ラファイエット所在)。
【0090】
標準的方法に従って、ベクターまたは二本鎖RNAを培養細胞に移入後、標的遺伝子候補(1つまたは複数)の発現阻害効果を測定するため、表現型特性を評価する。例えば、ノーザンブロット、QRT−PCR、ウェスタンブロットまたは当業界に公知の方法により、また個々の遺伝子に対する阻害の有効性と持続時間を示す経時的実験を含み得る他の分析アッセイなどの標準的方法により、そのRNAおよび蛋白質レベルでの遺伝子発現阻害が検証される。
【0091】
トランスフェクションは、1日から5日間の一時的発現を生じ得る。あるいは、RNAiを発現するベクターは、ネオマイシンなどの優位選択可能マーカーによる共トランスフェクションと選択により培養細胞内で安定に発現させることができる。RNAi使用の代替として、対象標的の優性陰性形態を発現する伝統的なアンチセンスDNAまたはベクターが使用される。アンチセンスおよび優性陰性遺伝子は、直接的DNAトランスフェクションにより、または限定はしないが、レトロウィルス、アデノウィルス、アデノ会合ウィルス、バキュロウィルス、ポックスウィルスおよびポリオーマウィルスなどのウィルスベクターの使用により送達される。病原または細胞の表現型における遺伝子の役割を証明するために選択された試験の生物学的システムは、関連する生物学的特徴を模擬している細胞培養または動物モデルなどの生物学的システムの当業界における知識に基づいている。
【0092】
図5は、RASTM分析の実施および検証に関係する工程を示している。
【0093】
(治療標的の同定)
本発明は「試験」細胞サンプル(例えば、薬剤で処理された、または罹病個体由来の細胞)のリボノミックプロフィルを、コントロールサンプル(例えば、未処理または非罹病個体由来の細胞)のリボノミックプロフィルと比較することにより、処置用標的を同定する方法を提供する。2つのサンプル間のmRNP複合体のある成分発現における差異は、その成分が、mRNP複合体の他の成分により調節されているか、または調節しており、したがって、それは、治療標的候補である(例えば、その成分またはそれが調節している成分のアップまたはダウンレギュレーションに関して)ことを示している。治療標的としては、限定はしないが、mRNP複合体の任意の成分、それをコードしている核酸、またはその遺伝子産物を挙げることができる。本発明の一実施形態において、試験細胞サンプルは、試験化合物によって処理され、コントロールサンプルは、試験化合物によって処理されていない細胞を含む。他の実施形態において、試験およびコントロール細胞サンプルは、それらの成長周期の異なる段階における細胞を含む。さらに他の実施形態において、試験細胞サンプルは、腫瘍細胞または他の疾患細胞を含み、コントロールサンプルは正常細胞を含む。標的同定には、限定はしないが、スクリーニングライブラリーの使用、ペプチドファージ表示、cDNAマイクロチップアレイスクリーニング、および当業界の実践者に公知の組合せ化学的方法などの当業界の実践者に公知の方法が含まれる。mRNAまたは蛋白質標的が同定されたら、ある特定の生理学的経路または過程におけるその役割が評価される。例えば、mRNAまたは蛋白質を、標準的方法に従って、ある細胞または生物において阻害または過剰発現させることができる。次に、低発現または過剰発現の効果を、その細胞または生物の表現型分析によって評価できる。例えば、その成分の遺伝子発現をノックアウトするために、RNAiを使用し得る。その過程または経路の他の成分に及ぼす変化した遺伝子の調節効果を決定するために、例えば、マイクロアレイを用いて、その生理学的経路の他の成分の遺伝子発現を評価できる。標的発見の工程の要約は、図5に提供されている。
【0094】
(処置薬の同定)
他の態様において、本発明は、処置薬としての試験化合物の有効性を評価するための方法を提供する。細胞サンプルを試験化合物に接触させ、少なくとも1種のmRNP複合体に会合した少なくとも1種の遺伝子産物の発現を含む細胞サンプルのリボノミックプロフィルを作成する。細胞サンプル中の遺伝子産物(1つまたは複数)の発現レベルを、コントロールサンプル(例えば、試験化合物に接触させていない細胞サンプル)中の遺伝子産物(1つまたは複数)の発現レベルと比較する。処理細胞サンプルと未処理細胞サンプルとの間の遺伝子発現の差異は、試験化合物が、処置薬としての可能性があることを示す。試験化合物は、例えば、核酸、ホルモン、抗体、抗体断片、抗原、サイトカイン、成長因子、薬理学的薬剤(例えば、化学療法剤、発癌剤または他の細胞)、化学組成物、蛋白質、ペプチドおよび/または小分子であり得る。
【0095】
本発明の種々の実施形態において、前記処置薬は、mRNAまたはmRNP複合体会合蛋白質を安定化または不安定化し得る。他の実施形態において、前記処置薬は、例えば、mRNAの翻訳を阻害または増強、mRNAまたはmRNP複合体結合蛋白質の輸送を阻害または促進、mRNAに対するRNA結合蛋白質の結合を阻害、mRNP複合体結合蛋白質に対するRNA結合蛋白質の結合を阻害、またはmRNP複合体結合蛋白質に対するmRNAの結合を阻害し得る。
【0096】
他の態様において、本発明は、例えば、細胞サンプルの処理に使用される試験化合物の濃度または量を変化させることにより、試験化合物の毒性、副作用の可能性、特異性または選択性を評価する方法を提供する。
【0097】
さらに他の態様において、本発明は、対象におけるある処置薬の有効性をモニタリングする方法を提供する。本発明に従って、ある処置薬の有効量が対象に投与される。mRNP複合体に会合した遺伝子産物の変化した発現により、処置薬の投与により変化する対象の細胞サンプルから、少なくとも1種のmRNP複合体を単離する。処置薬の投与後の細胞サンプルにおける遺伝子産物の発現を、コントロールサンプル(例えば、処置薬投与前の対象または正常な対象から得られた第2の細胞サンプル)における遺伝子産物の発現と比較する。処置薬の継続有効性をモニターする期間に亘って試験は繰り返される。処理細胞サンプルとコントロール細胞サンプルとの間の発現の差異は、前記処置薬の有効性を示している。
【0098】
処置薬は、疾患、障害または病態の原因に関与する過剰発現または低発現の蛋白質を標的とし得る。このような過剰発現または低発現は、RNAの不安定化または安定化を生じ得、および/または基質RNAの翻訳を阻害または増強し得る。
【0099】
(mRNAを不安定化する処置薬)
ある疾患、病態または障害が、ある蛋白質の過剰発現を特徴とするならば、そのような病態を処置する処置薬は、その蛋白質をコードするRNAの安定性を低下させ、および/またはそのRNAの翻訳を阻害することにより、前記蛋白質の発現を低下または除去することになる。例えば、RNA結合蛋白質は、細胞増殖に寄与する癌原遺伝子成長因子およびサイトカインをコードする短命のmRNAの安定性を増強させるため、RNA結合蛋白質産生の阻害は、癌または自己免疫疾患などの疾患を軽減し得る(例えば、腫瘍増殖または炎症を各々低下させることにより)。また、幾つかのヒト腫瘍におけるRNA結合蛋白質の過剰発現は、化学療法およびUV照射に対する抵抗性に関連している。UV照射または化学療法剤に応答した、c−fos、c−myc、サイクリンB1および他の短命RNA類の安定性増加は周知である。したがって、これらの腫瘍におけるRNA結合蛋白質発現の阻害は、腫瘍内のmRNAを不安定化し、その結果、癌処置に対して、腫瘍をより応答性にする。
【0100】
対象となる蛋白質の過剰発現を低下させるか、または発現を止めさせるために、有効量の好適な試験化合物(例えば、RNA結合蛋白質阻害剤)をインビトロまたはインビボで投与することにより、mRNAを不安定化できるか、またはその翻訳を阻害できる。試験化合物は、例えば、RNA結合蛋白質に結合することにより、mRNAに対するRNA結合蛋白質の結合を阻害するようにmRNAに結合し、mRNP複合体に結合し、不安定化でき、および/またはmRNAの翻訳を直接的に不安定化または阻害するようにmRNAに結合でき、および/またはmRNAの翻訳を阻害するようにRNA結合蛋白質に結合できる。mRNAに結合するが、mRNAを安定化しない化合物は、mRNAを安定化させるRNA結合蛋白質の能力を阻害できるか、またはmRNAの翻訳を調節できる。前記化合物が、RNA結合蛋白質と競合して結合するならば、その化合物は、mRNAに結合するRNA結合蛋白質の能力を阻害することにより、mRNAの安定性を低下させることができる。
【0101】
あるいは、試験化合物は、RNA結合蛋白質の発現またはそのmRNAの発現を阻害できる。
【0102】
有効な試験化合物(例えば、RNA結合蛋白質阻害剤)は、RNA結合蛋白質産生を妨害するそれらの能力、またはmRNAに対する結合および/またはその安定化または翻訳を阻害するそれらの能力に関して、例えば、本明細書に記載された方法により、化合物をスクリーニングすることにより容易に決定できる。RNA結合蛋白質またはmRNA産生を阻害することによって機能する化合物は、対象となるRNA結合蛋白質またはmRNAを発現する細胞を曝露させ、発見したRNA結合蛋白質またはmRNAのレベルを、各々モニタリングすることにより同定できる。RNA結合蛋白質の安定化作用を阻害することにより、および/またはmRNAの翻訳を阻害するその能力により機能する化合物は、他の場合には、安定化されると考えられるRNA結合蛋白質とmRNAとを組合せ、RNA結合蛋白質阻害剤として評価すべき化合物またはRNA結合蛋白質を増強し、その結果、翻訳の阻害をもたらす化合物を加え、RNA結合蛋白質とmRNAとの結合親和性をモニタリングすることにより同定できる。RNA結合蛋白質とmRNAとの結合親和性を増加または低下させる化合物は、当業界に公知の方法によって容易に決定できる。
【0103】
(mRNAを安定化させる処置薬)
ある疾患、病態または障害が、あるmRNA安定化蛋白質の低発現またはそのmRNA安定化蛋白質の低発現またはそのmRNAの翻訳阻害の結果を特徴としている場合、このような医学的状態を処置するための処置薬は、低発現蛋白質に会合したmRNAを安定化および/またはmRNAの翻訳を促進することにより機能し得る。したがって、有効量の化合物をインビトロまたはインビボで投与することにより、mRNAを安定化またはその翻訳を増強し得る。前記化合物、RNA結合蛋白質と同様の結合能力、および安定化および/または翻訳促進作用を有し得るか、またはmRNAを安定化および/または翻訳を促進させるRNA結合蛋白質の能力を促進し得、および/または対象となるRNA結合蛋白質の産生またはRNA結合蛋白質のmRNAの産生を促進し得る。このような化合物は、RNA結合蛋白質誘導剤と呼ぶことができ、mRNA、RNA結合蛋白質または双方と相互作用することにより機能し得る。あるいは、必要なmRNA安定化作用および/または翻訳促進作用を有する有効量の好適なRNA結合蛋白質を投与することによりmRNAを安定化および/またはその翻訳を促進できる。
【0104】
RNA結合蛋白質産生を高める化合物は、先ずRNA結合蛋白質を発現する細胞を可能性を有する薬剤に曝露し、上記の方法に従ってRNA結合蛋白質の濃度をモニタリングすることにより同定できる。もし、RNA結合蛋白質の発現レベルが高くなれば、その化合物は、RNA結合蛋白質誘導剤である。mRNAに結合するRNA結合蛋白質を阻害するが、mRNAに結合し、安定化し、および/またはmRNAの翻訳を促進させる化合物は、本明細書に開示された方法により同定できる。熟練実践者は、RNA結合蛋白質とmRNAとを組合せ、化合物を加え、そのRNA結合蛋白質とmRNAとの結合親和性をモニターできる。RNA結合蛋白質とmRNAとの結合親和性を高めるか、または低下させる化合物は、本明細書に記載されたとおり、その化合物に曝露後、mRNAに対するRNA結合蛋白質の結合親和性を評価することにより容易に決定できる。mRNAの濃度および/またはmRNAの翻訳の経時的モニタリングにより、mRNAに結合するそれらの化合物を、次いで、mRNAを安定化し、および/またはmRNAの翻訳を促進させるそれらの能力に関してアッセイすることができる。
【0105】
(化合物ライブラリーに関するハイスループットスクリーニング法)
本発明の一実施形態において、mRNP複合体またはその成分に結合する化合物を、化合物の組合せライブラリー(例えば、ファージ表示ライブラリー、小分子ライブラリーおよびオリゴヌクレオチドライブラリー)から同定するために、ハイスループットスクリーニングアッセイおよび競合的結合アッセイが用いられる。
【0106】
一実施形態において、種々の薬物スクリーニングのいずれかにおいて、化合物のライブラリーをスクリーンするために、mRNP成分、その触媒的または免疫原生断片またはそのオリゴヌクレオチドが使用できる。代表的方法は、本明細書に参照として組み込まれているPCT出願公開の国際公開第84/03584号に記載されている。そのようなスクリーニングに用いられる断片は、溶液中に遊離し得るか。支持体に固定されるか。または細胞表面上または細胞内に置かれ得る。
【0107】
米国特許第5,270,163号に記載されているSELEX法は、好適な結合性を有する化合物に関するオリゴヌクレオチドライブラリーをスクリーンするために用いられる。SELEX法に従い、無作為化配列の領域を有する一本鎖核酸の候補混合物をmRNP成分に接触させることができる。mRNP複合体に対する親和性を高めたそれらの核酸を分離し、リガンドの豊富な混合物を得るために増幅することができる。
【0108】
ファージ表示法は、mRNP複合体またはその成分に結合するペプチドを同定する目的でペプチドファージ表示ライブラリーをスクリーンするために用いられる。ペプチド、ポリペプチド、蛋白質およびそれらの断片などの種々のタイプの分子の多様な集団を含有するライブラリーを調製する方法は、当業界に公知である。また、ファージ表示ライブラリーは、商品として入手することもできる。
【0109】
可能性のあるペプチドを表示するファージのライブラリーをmRNP複合体と共に温置し、mRNP複合体またはその成分に特異的に結合する組換えペプチドをコードするクローンを選択する。少なくとも1回のバイオパンニング(mRNP複合体への結合)の後、ファージDNAを増幅し、配列決定し、それによって、表示された結合性ペプチドに関する配列が提供される。簡単に述べると、標的のmRNP複合体を一晩、組織培養プレートにコーティングし、加湿容器中に温置できる。1回目のパンニングにおいて、凡そ2x1011ファージを、振動させながら室温で60分間、蛋白質コーティングしたプレート上で温置できる。次いで前記プレートを、標準的な洗浄溶液を用いて洗浄する。次に結合しているファージを回収し、標的蛋白質を用いて溶出後、増幅する。必要に応じて第二次および第三次パンニングを実施できる。前後のスクリーニング後、ファージ感染した細菌の個々のコロニーを無作為に採取し、ファージDNAを単離し、自動ジデオキシ配列決定に供することができる。表示されたペプチド類の配列は、DNA配列から推論することができる。表示されたペプチド類の配列は、DNA配列から推論することができる。
【0110】
化合物の生物学的活性は、当業者に公知のインビトロアッセイ(例えば、蛋白質合成アッセイまたは腫瘍細胞増殖アッセイ)を用いて評価できる。あるいは、化合物の生物学的活性は、インビボで評価される。抗体などの種々の化合物は、mRNAの安定性に対する可変的効果を有して、mRNP複合体およびそれらの成分に結合できる。前記化合物が結合したら、その活性は、本明細書に記載されたアッセイを用いて容易に決定できる。
【0111】
結合アッセイは、RNA結合蛋白質およびmRNAが、標識試験化合物と共に温置される無細胞アッセイを含む。温置後、当業界に公知の種々の方法のうちのいずれかを用いて、遊離した、または試験化合物に結合したmRNAを、非試験化合物から分離できる。次に、当業界に公知の検出法を用いて、mRNP複合体またはその成分に結合した試験化合物の量を決定する。
【0112】
あるいは、前記結合アッセイは、細胞無しの競合結合アッセイである。そのようなアッセイにおいて、mRNAは、標識RNA結合蛋白質と共に温置される。試験化合物を、前記反応液に加え、mRNAに対する結合に関してRNA結合蛋白質と競合するその能力についてアッセイする。遊離の標識RNA結合蛋白質を結合したRNA結合蛋白質から分離できる。引き続き、結合したRNA結合蛋白質の量を決定することにより、mRNA結合に関して競合する試験化合物の能力を評価できる。RNA結合蛋白質またはmRNAを支持体に結合させて、それが容易に洗浄され、非結合反応物質が無くなることにより、多数の試験化合物のスクリーニングを促進するように、このアッセイを構成できる。プラスチック支持体(例えば、96ウェルディッシュまたはチップなどのプラスチックプレート)が好ましい。本明細書に記載された無細胞アッセイにおける使用に好適なRNA結合蛋白質およびmRNAは、天然源(例えば、膜調製物)から単離できるか、または組換えにより、または化学的に調製できる。RNA結合蛋白質は、例えば、公知の組換え法を用いて、融合蛋白質として調製できる。好ましい融合蛋白質としては、限定はしないが、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)部分、細胞局在化試験に有用な緑色蛍光蛋白質部分または親和精製に有用なHisタグが挙げられる。
【0113】
競合的アッセイは、細胞ベースもあり得る。したがって、mRNP複合体またはその成分に結合することが知られている化合物、好ましくは標識化された化合物が、試験化合物の存在下、または不在下で、mRNP複合体またはその成分と共に温置される。試験化合物の存在下で温置した細胞に会合した公知の試験化合物の量を、試験化合物の不在下で温置した細胞のそれと比較することにより、RNA結合蛋白質、mRNA、および/またはそれらの複合体に対する試験化合物の親和性を決定できる。細胞増殖は、細胞の核酸への標識塩基の取り込みの測定により(例えば、H、SiC、または14Cなどの放射活性により);CYQUANT(Molecular Probes、オレゴン州ユージーン所在)などの蛍光により;または当業界に知られているBrdU(Sigma,ミズーリ州セントルイス所在)またはMTS(Promega、ウィスコンシン州マジソン所在)などの比色分析によりモニターできる。サイトゾル/細胞質pH決定は、ビス(カルボキシエチル)−カルボニルフルオレセイン(BCECF)(Molecular Probes社、オレゴン州ユージーン所在)などの基質を用いて、デジタル画像化顕微鏡によって行うことができる。
【0114】
mRNAに対するRNA結合蛋白質の結合に及ぼす試験化合物の効果を決定するために実施できる他のタイプのアッセイとしては、限定はしないが、ルイス肺癌アッセイおよびボイデン室アッセイなどの細胞外移動アッセイが挙げられる。
【0115】
したがって、前記方法は、mRNAの結合および安定性に及ぼすRNA結合蛋白質の作用を調整する化合物の能力に関して、化合物をスクリーニングすることを可能にする。本明細書に記載されたアッセイを用いて、mRNAに結合することができ、mRNAの安定性および関連した蛋白質合成からもたらされるそれらの細胞の生物活性に及ぼす作用を調整することのできる化合物が同定される。上記のアッセイに従って同定された化合物は、処置組成物として製剤化される。
【0116】
(疾患の診断およびモニタリング)
他の態様において、本発明は、グルコースおよび/または脂質代謝に関連した疾患または疾患の危険性(例えば、肥満または糖尿病)または細胞の機能を診断するための方法を提供する。対象の細胞サンプルのリボノミックプロフィルが作成され、少なくとも1種のmRNP複合体が分析される。発現の変化が疾患または疾患の危険性を示している。少なくとも1種の遺伝子産物の発現が測定される。前記遺伝子産物は、RNA結合蛋白質、mRNA、mRNP複合体会合蛋白質、またはmRNP複合体に結合または会合した他の遺伝子産物であり得る。細胞サンプルにおける前記遺伝子産物の発現を、コントロールサンプルにおける前記遺伝子産物の発現と比較する。コントロールサンプルは、例えば、正常細胞のサンプルまたは対象の第2の細胞サンプルであり得る。あるいは、コントロールサンプルは、例えば、罹病個体および/または正常個体の陽性コントロールである。コントロールサンプルに比較した細胞サンプル中の遺伝子産物の相対的発現を観察することにより、疾患または疾患の危険性の存在が判断できる。
【0117】
他の態様において、本発明は、ある対象における疾患状態をモニタリングする方法を開示する。mRNP複合体が、疾患に関連する少なくとも1種の遺伝子産物を有する疾患対象の細胞サンプルから、少なくとも1種のmRNP複合体を単離する。対象の細胞サンプル中の遺伝子産物の発現を、コントロールサンプルにおける遺伝子産物の発現と比較する。コントロールサンプルにおける遺伝子産物の発現と疾患対象の細胞サンプル中の遺伝子産物の発現との比較による差異の確認により、その対象の疾患状態の変化が示される。例えば、腫瘍関連抗原またはそのmRNAの産生低下は、腫瘍負荷の低下または寛解を示しており、コントロール的に、腫瘍抗原の発現増加は、攻撃的な腫瘍増殖を示している。薬物処置中のこのようなモニタリングは、対象の薬物療法の有効性についての情報を提供し、また、ある特定の療法が疾患または病態の処置にとって有効でないか、またはもはや有効でない場合を示し得る。コントロールサンプルは、例えば、好ましくは、対象にその疾患の1つ以上の症状が無い時に得られた対象からの第2の細胞サンプルであり得る。あるいは、コントロールサンプルは、例えば、正常な対象からのものか、または他の正常な細胞サンプルである。
【0118】
要約すると、本発明は、細胞のリボノミックプロフィルを決定するため、およびリボノミックプロフィルにおける変化を検出するための有用なインビボおよびインビトロの方法を提供する。本発明は、限定はしないが、細胞の発達または成長のモニタリング、細胞状態のモニタリング、および疾患、病態または障害などの生体系の摂動のモニタリングなどの多数の利用法を有する。本発明は、さらに疾患、病態または障害の診断および適切な処置法の決定のための方法を提供する。また、本発明は、植物種、真菌種、細菌腫、ウィルス種、原生動物種または動物種などの生物間でのリボノミックプロフィルの識別にとって有用である。
【0119】
本発明は、遺伝子発現に対する転写寄与と、転写後寄与とを区別するために、また、蛋白質の組合せとmRNP複合体におけるRNAとの相互作用など、mRNP複合体を介したRNAの動きを追跡するために使用できる。したがって、本発明は、転写因子をコードするmRNAなどのmRNAまたはRNA結合蛋白質の連続的な順序発現を測定し、複数のmRNAの同時的な同調的発現を測定して、活性ポリソームへのmRNAの動員を追跡することにより、単一種または複数種としてのmRNAの翻訳活性化を調べるために使用できる。また、本発明は、他の細胞成分に接触する際のRNA自体のトランス作用性機能を判断するためにも使用できる。これらおよび多数の他の利用法は、本明細書および請求項を検討すれば当業者に明白となろう。
【0120】
以下の実施例は、本発明を例示するために記載されており、本発明を限定するものと考えるべきではない。
【実施例】
【0121】
(実施例1:リボノミックプロフィルを用いた標的発現)
本発明の方法を用いた標的発見に必要な一般的工程は図5に要約している。簡略に述べると、RNA結合蛋白質の発現プロフィルは、例えば、疾患の表現型において、または一定の刺激に応答して、種々の細胞タイプにおける発現を変化させたRNA結合蛋白質を同定するために、RNA結合蛋白質に関する発現プロフィルを作出する。次にRNA結合蛋白質候補をクローン化し、それらのcDNAを種々の細菌および哺乳動物の発現ベクターに、それぞれ組換えRNA結合蛋白質の産生およびRNA結合蛋白質の過剰発現のために挿入できる。次に、細胞または組織からの抽出物において実施されるRASTM分析に使用する目的で、モノクローナルまたはポリクローナル抗体を作出するために、組換えまたは精製RNA結合蛋白質を使用する。次いで例えば、RNA結合蛋白質に対する抗体を用いて、差異的に発現したRNA結合蛋白質に会合した未処理mRNP複合体を免疫沈降させる。mRNP複合体が単離されたら、RNA類および他のmRNP複合体会合蛋白質などのmRNP複合体の他の成分を同定し、比較し、特性化する。mRNP複合体の他の成分の差異的発現を、異なる細胞タイプ、疾患表現型または一定の刺激に対する応答において決定する。差異的発現が決定されたら、mRNP成分候補を同定し、それらの生物学的役割、例えば、一定の経路または疾患における関与を、阻害試験および過剰発現試験によって検証する。ある一定の経路に関与しているmRNP成分は、その経路の異常調節に関係している治療標的候補である。
【0122】
(RNA結合蛋白質遺伝子に関する発現プロフィルの確立)
さらなる分析のため、RNA結合蛋白質候補を同定する一操作において、コントロールおよび薬剤処理した細胞系または組織においておよび正常および疾患ヒト組織から、RNA結合蛋白質発現プロフィルを作出する。細胞または組織を処理するために用いられる薬剤としては、アジポネクチン、レプチン、レシスチン(または、アジポネクチン、レプチン、レシスチンに対する受容体を介して作用する薬剤)、腫瘍壊死因子−α、グルコース、インシュリン、βーアドレナリン作動性アゴニスト、インシュリン様成長因子−1(IGF−1)、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、脂肪酸、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)リガンド類(例えば、チアゾリンジオン類、フィブラート類、ハロゲン化脂肪酸、およびチロシン誘導体)、インシュリン様成長因子−2(IGF−2)、RNA結合蛋白質に対するRNA;RNA結合蛋白質発現を増強させる薬剤および/または小分子(例えば、推定上の薬物)などのインシュリン作用、インシュリン分泌、グルコース代謝または脂質代謝に影響を与える任意の薬剤を挙げることができる。
【0123】
RNA結合蛋白質遺伝子発現の最初の組織、疾患または薬剤スクリーニングは、オリゴdT−プライマーおよび商品として入手できるRNAサンプル(Stratagene社、カリフォルニア州ラジョラ所在;Ambion社、テキサス州オースチン所在;BD Biosciences Clontech、カリフォルニア州パロアルト所在)を用いて、定量的リアルタイムPCR(QRT−PCR)により達成できる。BioRad iCycler Quantitative PCR機(Biorad、カリフォルニア州ヘルクレス所在)において、製造元より提供されたプロトコルを用い、SybrGreen(Molecular Probes社、オレゴン州ユージーン所在)および遺伝子特異的PCRプライマーを使用して定量的PCR(Q−PCR)を実施するために、10μg〜100μgのcDNAが用いられる。実験結果を添付のBioRad iCyclerソフトウェアを用いて分析する。RNA結合蛋白質候補に関するRNAレベルは、rRNAに対して正規化する。
【0124】
上記のアプローチに加えて、組織および細胞系の高速および包括的スクリーニングのために、RIBOCHIPTMアレイ(Ribomics社、ノースカロライナ州ダーハム所在、ノースカロライナ州ハイポイント所在のMWG Biotech米国によりデザインされ製造)を使用できる。RIBOCHIPTMは、ガラススライド上、重複非隣接位置にRNA結合蛋白質遺伝子に対応する50量体のオリゴヌクレオチド類コントロール遺伝子を含有する。核酸配列は、GenBank(NCBI、メリーランド州ベセスダ所在)、PubMed(NCBI、メリーランド州ベセスダ所在)。SRS Evolution(LION Biosciences、マサチューセッツ州ケンブリッジ所在)、LocusLink(NCBI、メリーランド州ベセスダ所在)、Protein FAMilyデータベース(pFAM、ワシントン大学、ミズーリ州セントルイス所在);Welcome研究所;Sanger研究所(英国ヒンクストン)、GOデータベース(Gene OntologyTMConsortium、Gene Ontology:生物学統一化用ツールであるThe Gene Ontology Consortium(2000)Nature Genet.25:p.25−29)などの種々多様な公共データベースおよび探索ツールからコンパイルされた。RIBOCHIPTMにおけるマイクロアッセイ分析に関する詳細な方法および差異的発現遺伝子の節は、以下に記載されている。
【0125】
処置、疾患または細胞周期の変化に応答して発現変化を有することが確認されたRNA結合蛋白質は、RASTMの候補を優先化するために有用である。さらに、RNA結合蛋白質自体が、治療標的および/または遺伝子療法(すなわち、遺伝子置換または遺伝子サイレンシング)または処置用抗体標的の候補であり得る。
【0126】
(細菌ベクターにおけるRNA結合蛋白質遺伝子のクローニングおよび発現)
RNA結合蛋白質候補が同定されたら、完全長cDNAクローンを、市販のRNA組織源および標準的方法を用いて、逆転写酵素−PCR(RT−PCR)によって、作出する。例えば、GATEWAYTMpENTRD−Topo登録ベクターおよびpDEST17 6XHis向けベクター(Invitrogen社、カリフォルニア州カールスバッド所在)またはグルタチオンSトランスフェラーゼベクター(例えば、AmershamからのpGEX、ニュージャージー州ピスカタウェイ所在)に関するファージラムダベース(att)部位特異的組換えプロトコル(Invitrogen社、カリフォルニア州カールスバッド所在)に基づいて、完全長プラスミドクローンを構築する。ポリヒスチジン−タグ化またはGST−タグ化RNA結合蛋白質融合蛋白質を発現する大腸菌(例えば、BL21A1またはBL21A1)を、BL21SI細胞に関しては、0.3M NaCl中37℃で、またはBL21A1細胞に関しては、0.2%mMアラビノースまたは約0.1mMから約1mM IPTG中、20℃〜37℃で約2〜6時間(各クローンに関するパイロット発現試験における最適化に基づいて規定された時間)中間対数期まで増殖させ、誘導する。細菌細胞を音波処理により溶解し、RNA結合蛋白質融合蛋白質量を、標準的な方法を用いて、ニッケルカラム(Quiagen社、カリフォルニア州バレンシア所在)、またはグルタチオンセファロース(Amersham、ニュージャージー州ピスカタウェイ所在)上で精製する。不溶性融合蛋白質は、8M尿素の存在下保持し精製する。また、可溶性蛋白質は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に保持する。精製した融合蛋白質は、標準的方法を用いて、ポリクローナル抗体産生のため、哺乳動物(例えば、ウサギ、ブタ、またはニワトリ)の免疫化に用いる。ポリクローナル抗体は、免疫沈降させ、例えば、ウェスタンブロットにより、天然および組換え蛋白質を検出するそれらの能力によって特性化する。下記のインビトロRASTMには組換えRNA結合蛋白質もまた使用される。
【0127】
(他のmRNP複合体成分の分析)
細胞におけるRNA結合蛋白質の存在量または立体配座における変化は、それらのRNA結合蛋白質に結合した任意のmRNAのプロセシングに影響を与える。RNA結合蛋白質に会合しているmRNAのサブセットは、細胞における表現型の変化をもたらす上で決定的に、または因果的に関与している機能的同時調節を示している。したがって、mRNAが、組織、疾患または薬剤変化を受けたmRNP複合体に会合している遺伝子は、可能性のある治療標的の豊かな供給源である。
【0128】
発現の点で最も劇的な変差を示すRNA結合蛋白質は、分析の次の段階である、リボノミック分析システム(RASTM)アッセイ(Ribonomics、ノースカロライナ州ダーハム所在)へと進む。RASTMアッセイでは、特定のRNA結合蛋白質に会合した特異的mRNAを同定およびまたは定量化するために、マイクロアレイ様式を用いる。前記アレイ製造元から提供された、ハイブリダイゼーション、洗浄、および展開に関するプロトコルを用いて、商品として入手できるガラススライドアレイ(例えば、Human Unigene 14K、Agilent、カリフォルニア州パロアルト所在およびPan Human 10K、MWG Biotech社、ノースカロライナ州ハイポイント所在など)または、例えば、ATLASTM Arrays、BD Biosciences、カリフォルニア州パロアルト所在)などの膜アレイが使用される。
【0129】
RASTMアッセイリーシス緩衝液(PLB)の組成は、具体的なRNA結合蛋白質の結合特性に依って変化し得る。基本的なPLBは、50mM HEPES、pH7〜7.4、1% NP−40、150mM NaCl、1mM DTT、100U/ml RNase OUT(Gibco BRI、Invitrogen社、カリフォルニア州カールスバッド所在)、0.2mM PMSF(Sigma Aldrich、ミズーリ州セントルイス)および1ug/mlロイペプチン(Sigma Aldrich、ミズーリ州セントルイス)を含有する。これらの基本的な成分の変型としては、塩濃度(例えば、約0mMから約500mM NaClまたは約0mMから約5mM KCl)、イオン条件(約0mMから約10mM MgClまたは約0mMから約20mM EDTA)および還元環境(約0mMから約5mM DTT)の変化が挙げられる。例えば、ポリピリミジントラクト結合蛋白質(PTB)mRNP複合体を調べる目的で、細胞抽出物を調製するためには、培養細胞を氷冷PBS中で洗浄し、5mM MgClを含有するPLB中へ直接こすり落とし、氷上で10分間温置した後、4℃で10分間、3700xgで遠心分離する。
【0130】
ある一定の場合には、RNA結合蛋白質がそのmRNA類に会合したままであるように、単離前にmRNP複合体を架橋することが必要である。これは、培養細胞ならびに新鮮組織サンプルにおいて実施される。架橋の程度は、各細胞系または組織に関して滴定され、前記複合体中のmRNAを免疫沈降させる能力に基づいてモニターされる。例えば、培養細胞または組織は、約0%から約1%のホルムアルデヒドを含有するPBS中、室温で約15〜60分間温置される。次に1MトリスpH8.0を250mMトリスpH8.0の最終濃度まで加えることによって架橋をクエンチし、さらに20分間温置する。次いで前記サンプルを50mMトリスpH8.0を含有するPBS中3回洗浄する。培養細胞に関しては、細胞をペレット化し、放射免疫沈降(RIPA)緩衝液(50mM Hepes、pH7.4、150mM NaCl、1% NP−40、0.1% SDS、0.5%デオキシコレート(DOC)(Sigma Aldrich、ミズーリ州セントルイス)および100U/ml RNase OUT(Gibco BRI、Invitrogen社、カリフォルニア州カールスバッド所在)中、約2mg/mlの最終蛋白質レベルまで再懸濁する。組織に関しては。サンプルをRIPA中に再懸濁し、組織を破壊するためにポリトロンにより破砕する。最初の溶解後、プローブ超音波処理器(Branson 450、Branson Ultrasonics社、コネチカット州ダンベリー所在)により、出力設定6で各20秒間、2回サンプルを音波処理に供する。音波処理と音波処理の間に、サンプルを氷上で2分間冷却させる。次にライセートを、3,700xgで15分間の遠心分離により清澄化させる。次の段階は、免疫沈降およびRNA抽出を含む。
【0131】
(mRNP複合体の免疫沈降およびRNA抽出)
平均して、細胞ライセートに関する典型的な最終蛋白質レベルは、2mg/mlである。各免疫沈降条件に対して、凡そ2mgの蛋白質が用いられる。清澄化細胞抽出物を、一次抗体(例えば、抗−PTB(Zymed、カリフォルニア州サウスサンフランシスコ所在)が、10μg/mlの最終濃度で用いられる)または等しい濃度のコントロール抗体(例えば、10μg/mlの最終濃度における免疫前またはIgG血清(Pierce Biotechnology、イリノイ州ロックフォード所在)と共に、4℃で2時間温置する。25μlアリコートのProtein A Trisacrylビーズ(Pierce Biotechnology、イリノイ州ロックフォード所在)を加え、サンプルを4℃で1時間回転する。次に1mlのPLB緩衝液を加えることにより、免疫複合体をPLB緩衝液中、6回の洗浄後、マイクロ遠心器中、5,000rpmで30秒間、短時間で遠心分離する。最終洗浄後、PICOPURETMRNA単離キット(Arcturus社、カリフォルニア州マウンテンビュー所在)のRNA抽出緩衝液50μlをビーズに加え、少しの間渦巻かせ、遠心分離してビーズをペレット化する。抽出されたRNAをPICOPURETMプロトコル(Arcturus社、カリフォルニア州マウンテンビュー所在)に従って精製する。次いでmRNP複合体中に存在するRNAを、RIBOGREENTMアッセイ(Molecular Probes社、オレゴン州ユージーン所在)を用いて定量化する。
【0132】
(マイクロアレイ分析のためのRNA増幅)
mRNP複合体から単離されたmRNAは、全RNAの小さなサブセットのみを表しているため、単離mRNAを標識前に増幅できる。RNAの増幅には、Message AmpTM(Ambion社、テキサス州オースチン所在)が、製造元の使用説明書に従って用いられる。Cy3またはCy5dUTPによる無作為プライマー重合により、標識前に2回の増幅が行われる。ハイブリダイゼーションおよび洗浄を、マイクロアレイ製造元のプロトコルに従って上記のとおり実施する。マイクロアレイデータの取得および分析は、下記のとおり行われる。
【0133】
(マイクロアレイ分析)
これらの方法は、RIBOCHIPTMによるリボノミックプロフィル化を目的としたRNAの分析、ならびにリボノミック集団内の遺伝子を同定するため、mRNP複合体から抽出されたRNAによるパンアレイにおける分析に使用される。
【0134】
(RNA調製)
分析すべきmRNAサンプルを、RNeasyTM(Quiagen社)を用いたRNA抽出により、種々の細胞タイプおよび組織タイプから調製し、吸光度(A260)により定量化し、使用するまで−80℃で保存する。Agilent 2100 Bioanalyzerを用いて精製したDNaseI処理RNAをルーチン分析した。28Sおよび18SリボソームRNA(rRNA)ピークに重なっている広幅ピークの存在に関して、電気泳動図を調べることにより、RNAの純度に関して評価した。この内容の広幅ピークは、ゲノムDNAによる汚染を示す。もし、このような汚染が検出されたら、RNAをDNaseにより再処理して、上記のとおり精製した。さらに、RNAサンプルの品質を評価するために、28Sから18SのrRNAの相対的存在量を決定した。28S/18S rRNAに関して約1.7より高いか、またはそれに等しい比率は、RNAの分解が殆ど、または全く無いこと、そしてマイクロアレイ分析に許容できることを示す。約1.7未満の比率は、マイクロアレイ分析に許容できない分解したRNAであることを示す。
【0135】
(アミノアリル−UMP標識化cDNAの合成)
アミノアリルcDNAは、DeRisi(www.microarray.org;「Reverse Transcription and aa−UTP labeling of RNA」)およびTIGR(www.tigr.org;Protocol M005)によるプロトコルの変更に基づいて合成された。簡略に述べると、全RNA(10μg)を、2μl dT18(200μM)、2μl無作為十量体(1mMストック)およびジエチルピロカルボネート(DEPC)処理水と合わせて、最終容量を17.5μlとする。70℃に10分間加熱することにより、プライマーをRNAテンプレートにアニールしてから、室温または氷上で冷却した。上記反応液を、6μlのSuper Script II第一鎖緩衝液、3mlの0.1Mジチオスレイトール、0.5mlの50X標識混合液(25mM dATP、25mM dGTP、25mM dCTP、15mM dTTP、および10mMアミノアリル−dUTP(Sigma;ミズーリ州セントルイス所在;カタログA0410))、1mlのRNase OUT(Invitrogen;カリフォルニア州カールスバッド所在;カタログ10777−019)、および1mlのSuper Script II(Invitrogen;カリフォルニア州カールスバッド所在;カタログ18064−022)と合わせて加え、42℃で3〜24時間温置することにより、アミノアリルcDNAを合成した。各10μlの1M NaOHおよび0.5Mエチレンジアミンテトラ酢酸を加えた後、65℃で15分間温置することにより、RNAを加水分解した。10μlの1M HClを加えて、前記溶液を中和した。Quiagen QiaQuick PCR精製キットを、以下の変更を施して用い、前記アミノアリルcDNAを精製した。このcDNAと、Quiagen供給のPB緩衝液の5x反応液容量とを混合しQIA高速カラムへ移した。このカラムを採集管内へ置き、13,000rpmで1分間遠心分離した。750μlのリン酸洗浄緩衝液(0.5mLの1M KPO(9.5mL 1M KHPO+0.5mL 1M KHHPO)、pH8.5;15.25RNase無しの水;および84.25mLの95%エタノールの混合により調製された)を加えて、前記カラムを洗浄し、13,000rpmで遠心分離した。前記洗浄工程を繰り返し、カラムを最高速度で1分間遠心分離して、洗浄溶液に残った微量分を全て除去した。前記カラムを清浄な採集管へ移し、30μlのリン酸溶出緩衝液(0.5mLの1M KPO、pH8.5;15.25RNase無しの水;および84.25mLの95%エタノールを混合して調製された)を加えることにより、aa−cDNAを溶出させた。溶出をもう一度繰り返し、サンプルを高速減圧乾燥した。
【0136】
(aa−cDNAに対するシアニン反応性エステルの結合および標識cDNAの精製)
精製aa−cDNAをシアニン色素(Amersham Biosciences;ニュージャージー州ピスカタウェイ所在;カタログ番号PA230001(Cy3)またはPA25001(Cy5))に結合し、精製し、上記のとおり分析した。シアニン3およびシアニン5の反応性N−ヒドロキシスクシンイミド色素は、1本の反応性色素を、73μlの無水DMSOに溶解することにより調製した。4.5μlの反応性DMSO色素溶液を、aa−cDNAに加え、暗所にて室温で1時間温置することにより、反応性色素をaa−cDNAに結合した。結合後、標準的QIA高速PCRクリーンアップキット法および緩衝液を用いて色素標識cDNAを精製した。標識反応は、TIGR M005プロトコルに従い、取り込みに関して分析した。
【0137】
(ハイブリダイゼーションおよびスポテッドマイクロアレイの処理)
各スポテッドマイクロアレイは、1つはCy3で標識され、もう1つはCy5で標識された2種のCy色素標識サンプルの分析にとって十分である。1つはCy3標識され、もう1つはCy5標識からの各マイクロアレイ材料のために、反応液をプールし、高速減圧下で乾燥した。次に、プールしたサンプルを、マイクロアレイにハイブリダイズし、そのスライドを製造元(MWG Biotech、ノースカロライナ州ハイポイント)により提案された一般的指針に従って処理した。
【0138】
(マイクロアレイデータの抽出および分析)
図6は、マイクロアレイを用いたデータの抽出および分析フローチャートを提供している。Axon 4000B ScannerおよびGenePix版4.0ソフトウェア(Axon、カリフォルニア州ユニオンシティー)を用いて、マイクロアレイを走査した。得られた画像ファイルは、標準的なバックグラウンドとスポット発見設定を用い、BioDiscovery’s Imageneソフトウェア版5.5(El Segundo、カリフォルニア州)を使用して定量化した。データ分析の2つの方法を用いた。好ましい方法は、R統計的環境用マイクロアレイライブラリー(www.r−project.org;v1.7.1)のBioConductor Suite(www.bioconductor.org;v.1.2)を用いたデータの前処理を含んだ。前処理は、バックグラウンド減算、アレイ内ローウェス強度の適用、および位置依存的正規化、および幾つかの場合は、BioConductor正規化ライブラリーのMAD関数を用いたアレイ間基準化を含んだ。正規化強度データは、GeneSpring(Silicon Genetics;カリフォルニア州レッドウッドシティー所在)におけるさらなる分析のために転送された。GeneSpring内で、差異的に発現した遺伝子は、ANOVA解析(2つの条件に関するウェルシュ検定)および好適なp値閾値に基づいて同定された。典型的に、≦0.05のp値が採用されたが、この値は、必要に応じて増加できた。また、偽陽性の発生を減少させるため、利用できる複数の試験補正の1つ以上が、データに適用された。これは、特に利用できる反復試験の数が小さすぎる場合には、常に可能であるとは限らなかった。データ解析の代わりの、より望ましさの低い方法もまた、時には採用された。これは、バックグラウンド減算シグナル強度(例えば、≧500)および実験サンプルとコントロールサンプルとの間の差異的発現倍数(例えば、コントロールの≧2倍の差異)に基づくデータの選別を含んだ。ルーチン的に、局所バックグラウンド以上のレベルで発現した遺伝子は、その集団のメンバーと考えられる。候補遺伝子の存在および全RNAを超えるそれらの相対的存在量倍数が検証され、配列特異的プライマーを用いてQRT−PCRにより、より正確に定量化される。
【0139】
標準的なRASTM分析(例えば、正常細胞対疾患細胞または処理細胞対非処理細胞の比較)においては、全RNA含量における定量的および質的変化が特定のmRNP複合体のRNA含量における変化と比較される。得られたデータは、ルーチン的に4つのクラスに分類される。すなわち、(1)mRNP複合体における同等な量的変化を示すRNA類、(2)総RNAにおいては存在するが、mRNP複合体には存在しないRNA類、(3)mRNP複合体に存在するが、総RNAにおいては、明らかに存在していないか、または検出レベル以下であるRNA類、(4)総RNA分析における様式とは量的に異なった様式で、集団において変化するRNA類である。また、RASTMアッセイでは、全存在量は変化しないが、代替処理および調節のために細胞内で再分割される、クラス4で表される遺伝子が同定される。その結果、種々のスプライス変異体が翻訳され得、そのmRNAは細胞内の特定の位置に輸送され、そこで翻訳され得るか、または翻訳自体が高く、または低く調節され得る。3群および4群内に同定された遺伝子のサブセットは、遺伝子発現の特性化に対する現在利用できる他のいずれのアプローチによっても同定することはできない。
【0140】
本発明の方法は、疾患または一定の細胞状態に関連した表現型変化に寄与する細胞経路に関与する遺伝子を同定し、したがって、魅力的な治療標的である。さらに、本発明の方法は、小分子薬物にとって扱い易い標的であることが証明されている標的クラスを同定する。これらの標的クラスとしては、中でも、核受容体(例えば、ホルモン受容体)、G蛋白結合受容体、ホスホジエステラーゼ類。キナーゼ類、プロテアーゼ類、およびイオンチャネル類が挙げられる。処置的に関心がもたれる他の標的クラスとしては、分泌分子、細胞外リガンドおよびホスファターゼ類が挙げられる。
【0141】
RIBOCHIPTMにおいて同定されたか、または差異的に発現したRNA結合蛋白質に対し、およびRASTMアッセイの後、パンアレイにおける全般的遺伝子発現分析によって同定された標的遺伝子候補または遺伝子産物に対し、そのRNAレベルでの可能な場合、蛋白質レベルでの発現を検証するためにウェスタンブロットによるQRT−PCRが用いられる。QRT−PCRに関して、RNAは、推奨されたキットプロトコルに従い、Superscript II逆転写酵素(Invitrogen;カリフォルニア州カールスバッド所在;カタログ18064−014)を用いて、CDNAへ逆転写される。
【0142】
96ウェルPCRプレートにおいて、1X iQ sybrグリーンスーパーミックス(Biorad、カリフォルニア州ヘルクレス所在、カタログ番号94547)および反応特異的またはコントロールのプライマー対のいずれかと共に、50ngのcDNA/ウェルを50μlの最終容量で温置した。全ての反応は、二重反復を行った。QRT−PCR反応は、Biorad iCycler機において、sybr 2工程プログラム(95℃で8分間と30秒の1サイクル;95℃で30秒後、60℃で60秒の2工程40サイクル;55℃で10秒の100サイクル)を用いて行った。データは、アクチン、GAPDH、またはリボソームRNAなどの正規化遺伝子と比較する。コントロールと相対的な発現値を比較し、決定するためにサイクル時間の違いを利用する。
【0143】
(RNA結合蛋白質複合体の免疫沈降)
RASTMを用いたmRNP複合体の免疫沈降および単離の一例として、PTBリボノミック集団(PTB集団またはPTB機能集団とも呼ばれる)を単離した。本実施例では、上記のとおり2時間、低グルコース培地で逓減してから高グルコース培地で刺激したINS−1細胞(BetaGene社、テキサス州ダラス所在)から細胞抽出物を調製した。細胞抽出物は、上記のとおり、PLB緩衝液中で採取することにより調製した。遠心分離後、細胞抽出物を、300mM NaClおよび15mM EDTAに移した(PLB−NaCl/EDTA)。この抽出物(500μg蛋白質)を、10μgのα−PTB(Zymed、カタログ番号32−4800)または10μgのコントロールIgG(source、シティー、州)と共に2時間温置した後、30μlの蛋白質Aセファロースと共に、1時間温置した。免疫沈降物をPLB−NaCl/EDTA中で6回洗浄した。他のRNA結合蛋白質と会合成分の免疫沈降の最適化が必要となろう。最適化の例において、pH、イオン条件、塩濃度、還元環境および温置時間を変化させることができる。
【0144】
PicoPure RNA単離キット(Arcturas)を用いて、免疫沈降物からRNAを抽出し、精製した。精製RNAは、RiboGreen(Molecular Probes)分析により定量化し、サンプルの完全性をBioAnalyzer(Agilent)を用いて判断した。これらの分析から、凡そ25〜30mgの核酸が、コントロールIgG免疫沈降物に結合していた。コントロール的にPTB抗体により、凡そ200〜900mgの核酸が免疫沈降した。マイクロアレイ試験用に十分なRNAを得るため、MessageAmpキットとプロトコル(Ambion)を用いて、サンプルを2回の増幅に供した。蛋白質アレイのRNA結合に関する上記のとおり、10K Rat Pan Microarrays(MWGカタログ番号2250−000000)の分析を行った。
【0145】
この分析により、凡そ450個の遺伝子の高濃縮(>5倍)サブセットであることが示された。多くの遺伝子の正規化強度は、15mMグルコースで処置された細胞から単離された集団において変化した(>2倍)が、一方、全RNA分布分析における同じ遺伝子は変化しなかった。これは、グルコースが多くのmRNAのその集団内へのまたは外への出現を調節し得ることを示唆している。多数の予測された遺伝子が、PTB集団において高濃度で存在し、これら多くの存在が、グルコースにより調節された。この系列には、Glut2に関するmRNA、グルコキナーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、Kir6.2(ATP感受性K+−チャネル)、SUR1(スルホニル尿素受容体1)、L型Ca2+−チャネル、アシルcoa−カルボキシラーゼおよびプレプロインシュリンが挙げられる。それに加え、また、重要なことだが、全RNAサンプルのマイクロアレイ分析により分析するとPTB集団において450個の遺伝子のおよそ10%が、検出レベル、またはそれ以下の正規化強度値を有した。したがって、PTB集団を単離し、精製し、その会合mRNAを同定する能力は、通常のアレイ分析においては見逃されたり、無視されたりした可能性が大きい極めて低い存在量の遺伝子の同定をもたらす。遺伝子の独特のサブセットが高濃度に存在しているPTB集団を分離する能力、その集団におけるそれらの調節された出現、および極めて低い存在量の遺伝子の同定により、遺伝子/蛋白質発現におけるRNA結合蛋白質の役割および新規標的ならびに細胞経路情報を得る上での有用性に関する仮説が支持される。さらなる下流分析のために選択されたmRNP複合体における全ての候補mRNAの発現は、遺伝子特異的プライマーを用いて、QRT−PCRにより、mRNAレベルにおいて検証される。
【0146】
(実施例2:RIBOTRAPTMを用いたプレプロインシュリンRNA結合蛋白質の同定および免疫沈降)
RNA結合蛋白質を精製し、同定する1つの代替法は、RIBOTRAPTMアッセイ(Ribonomics、ノースカロライナ州ダーハムRIBOTRAPTM)である。RIBOTRAPTMに関する2つのアプローチが以下に記載されている。第1のアプローチは、RNA結合蛋白質結合要素に対応する配列を有する固定化ビオチン化オリゴヌクレオチドを用いるインビトロ親和性ベースのアッセイである(方法1)。第2のアプローチは、対象である完全長mRNAまたは対象であるmRNAの断片上に付けた親和性タグを使用するアプローチであり、これをある細胞培養モデルにおいて発現させ、そのタグに対する固定化抗体を用いて単離する(方法2)。
【0147】
方法1を要約すると、RNA結合蛋白質結合部位(例えば、5’または3’UTR)をコードする対象である核酸または核酸の一部を表すcDNAを、標準的方法を用いて適切な哺乳動物細胞プロモーター(例えば、CMV、SV40またはアクチンプロモーター)を有する発現ベクター、あるいは、アデノウィルスまたはレトロウィルスベクター内へクローン化し、適合性の哺乳動物細胞系へトランスフェクトする。グルコース代謝および/または脂質代謝に関与するRNA結合蛋白質を単離するため、または膵臓β細胞系において発現させ得る。工学的cDNAの発現後、RNAとそれらの会合したRNA結合蛋白質および存在する場合は、mRNP複合体会合蛋白質との間の会合を保持している細胞抽出物が調製される。トランスフェクトされたcDNAによってコードされるmRNAは、それに結合することが公知である親和性蛋白質、好ましくは、RNA結合蛋白質に対するmRNAの結合を妨害しないものを用いて親和精製される。使用された蛋白質は、アガロースまたはセファロースビーズなどの固体基質に結合でき、ビオチン化、または他に標識化できる(下記の方法1)。あるいは、親和性蛋白質は、固体基質に結合している抗体に対する結合を介して、固体基質に間接的に結合させることもできる(下記の方法2)。RNA結合蛋白質および/またはmRNP複合体会合蛋白質と共に、発現RNAをインビボで単離するために、親和性蛋白質−基質が用いられる。これら2つの方法の変型としては、ホルムアルデヒドによるmRNP複合体の化学的架橋またはエピトープタグ化またはビーズ化結合要素またはエピトープタグ化対象mRNAが挙げられる。
【0148】
RIBOTRAPTMアッセイを用いて、対象であるmRNAに関連して単離される蛋白質は、標準的なプロテオミック法を用いて同定される。例えば、データベース探索に供することのできるペプチド配列を同定するために、基質会合レーザー脱離/イオン化−経過時間質量分析(MALDITOF)およびタンデム質量分析(または質量分析/質量分析(MS/MS))が用いられる。同定されたRNA結合蛋白質またはmRNP複合体会合蛋白質の反応性の抗体は、標準的な方法に従い、哺乳動物において増加させる。
【0149】
(方法および材料)
(方法1:固定化ビオチン化オリゴヌクレオチドを用いたインビトロ親和性ベースのアッセイ)
プレプロインシュリンRNA結合蛋白質の親和精製用プローブを合成し、当業界に公知の方法(例えば、Rossら(1997)Mol.Cell.Biol.17:p.2158−65)により、ビオチン修飾T(チミジン)によって、ビオチン化した。プレプロインシュリンRNA結合蛋白質の精製用プローブは以下のものであった:a)3’−UTR要素1用は5’−gaauaaaaccuuugaaagagcacuac−3’、b)3’−UTR要素2用は5’−cccaccacuacccuguccaccccucugcaaug−3’、およびc)5’−UTR要素2用は5’−agccctaagtgaccagctacagtcggaaaccatcagcaagcaggtcattgttccaac−3’。さらに、非特異的RNA結合蛋白質を同定し、除去するために、陰性コントロールビオチン化プローブ(スクランブル配列)を、上記のとおり使用した。ビオチン化プローブは、上記のとおり、1M NaCl含有緩衝液(Rossら、1997年)中、一晩、ストレプトアビジンアガロース(Pierce Biotechnology、イリノイ州ロックフォード)またはストレプトアビジン磁気ビーズ(Dynal、ニューヨーク州レークサクセス所在)に固定化した。非結合プローブを除去するため、ビーズを高塩緩衝液中で洗浄してから、結合緩衝液中で平衡化した。50mM HEPES、pH7.5、0.5% NP−40、150mM NaCl、1mM DTT、ロイペプチン1ug/ml、アプロチニン1ug/mlおよびPMSF、10%グリセロール、200ユニット/mlRNase OUTを含有するPLBリーシス緩衝液中、細胞抽出物を調製した。ライセートを、10,000xgで5分間遠心分離し、上澄液(凡そ1mg/mlの蛋白質レベル)を結合試験に用いる。固定化ビオチン化プローブ(1〜5mgの結合プローブ)と共に、抽出物を4℃で4〜12時間温置し、洗浄し、蛋白質を、SDS−PAGEサンプル緩衝液中で溶出させた。SDS−PAGEによる分離後、プローブに特異的に結合した蛋白質に対応するバンドを、ウェスタンブロットまたは先に記載した蛋白質の配列決定により同定する。
【0150】
プレプロインシュリン 3’UTRに対するポリピリミジン管結合蛋白質(PTB)の結合を特に確認するために、商品として入手できるPTB抗体を用いて、ウェスタンブロットにより溶出PTBを分析した(図7)。組換えPTBと、INS−1細胞ライセート由来の天然PTBの双方を結合に関して評価した。図7は、PTBがプレプロインシュリンの3’UTRに結合するが、プレプロインシュリンの5’UTRには結合しないことを示している。
【0151】
図8は、プレプロインシュリンmRNAの3’UTRに対するPTB(RBP1とも称される)のグルコース調節RNA結合蛋白質結合ならびに、他の未同定のPTB蛋白質の推定上の結合についての現在のパラダイムを示している。プレプロインシュリンmRNAの5’−UTRは、翻訳レベルで生合成の調節を受けている他のmRNAに見られる構造と類似の二次(ステム−ループ)構造(ΔG=−10.8kcal/mol)を含有する。さらに、このステム−ループ構造は、哺乳動物のプレプロインシュリンmRNAにおいて保存される。5’UTR単独で、グルコースおよび/または脂質応答要素として機能できる。5’−UTRと3’−UTRの双方とも存在する場合、グルコースに対して、さらに大きな応答がある。また、非β細胞には、グルコース応答が見られないため、グルコース刺激翻訳は、膵臓のβ細胞特異的である。これは、グルコースおよび/または脂質調節RNA結合蛋白質の関与が、5’−UTRを介してなされていることを強く示唆している。特定の理論には限定されないが、前記データは、グルコースの低濃度または休止濃度において、RNA結合蛋白質(1つまたは複数)が、プレプロインシュリンmRNAの5’−UTRに結合して、その翻訳を抑制しているモデルを示唆している。栄養素(脂質やグルコースなど)の濃度増加は、RNA結合蛋白質(1つまたは複数)の存在量またはプレプロインシュリンの5’−UTRに対する親和性に変化を引き起し、したがってプレプロインシュリンmRNAの翻訳に対する抑制を緩和し、それを促進させる。
【0152】
(方法2:RNA−エピトープによるmRNAの直接的親和性タグ化)
RNA−エピトープアッセイによるmRNAの直接的親和性タグ化を以下に記載する。この方法は、独特なRNAシステムループ構造の抗体認識に基づいている。標準的方法により、十分に特性化された抗体α−g10(すなわち、α−T7−タグ)を、g10融合蛋白質のN末端に対して増加させる。この抗体は、種々のステムループ構造を表す縮退RNA(10分子)の複雑なライブラリーのスクリーンに用いられる。緊縮洗浄条件に従って、α−g10によって、特異的に認識された各々40のヌクレオチドRNA種が同定される(D10)。さらに特性化すると、このD10RNAは、ペプチド抗原を構築していることが示され、したがって、このペプチドを、競合または溶出のために使用することができる。RNA−エピトープをmRNAに挿入した場合、RNAエピトープタグ化mRNAは、α−g10を用いて、細胞全体のmRNAの混合物から特異的に回収できる。また、抗体単独では、真核生物の細胞全体のmRNAとの反応性を有さない。
【0153】
D10RNA−エピトープタグは、当業者に周知の方法によりNKx6.1およびプレプロインシュリンに関する遺伝子の3’−UTR端に配置される。これは、NKx6.1またはプレプロインシュリンに関し、完全長cDNA内へタグをクローニングするPCRにより達成される(PCRクローニングにより得られる)。これらの構築体は、1)競合試薬および親和性試薬のためにインビトロで転写体を作出するため、および2)哺乳動物細胞培養モデルにおいてNKx6.1またはプレプロインシュリンを過剰発現させ、引き続き、α−g10により、細胞抽出物からRNAエピトープタグ化mRNAを回収するために用いられる。
【0154】
プレプロインシュリン試験に関して、D10RNA−エピトープタグ化プレプロインシュリンcDNAがpcDNA3.1neo内へサブクローン化され、MIN−6、α−TC1.6およびNIH3T3細胞にトランスフェクトするために用いられた。一時的にトランスフェクトされた細胞ならびに確立された安定トランスフェクト体(Neoにより選択された)が調べられた。RT−PCRにより、タグ化mRNAの発現が確認されたら、低グルコースまたは高グルコースにおいて温置された細胞から、上述のとおり、抽出物が調製される。偽トランスフェクト細胞もまた調べられる。
【0155】
D10RNA−エピトープタグ化NKx6.1の構築および種々の細胞タイプ内へのトランスフェクトは、同様の様式で行われる。分析のためにα−g10を用いてRNAエピトープタグ化mRNAを前記抽出物から単離する。これらの複合体中の蛋白質を、SDS−PAGEサンプル緩衝液により、またはD10エピトープに関して競合することが先に示されていた抗原性ペプチド(NH−MASMTGGQQMGRC−COOH)を用いて、溶出させる。種々の細胞抽出物(偽トランスフェクト細胞を含めて)から得られた蛋白質プロフィルの比較により、独特な蛋白質バンドが同定される。溶出された蛋白質は、上記実施例1に記載されたとおり処理されて、ペプチド配列が得られる。この操作の1つの変型として、完全長mRNA断片のD10タグ化(例えば、D10エピトープを含有する5’−UTRまたは3’−UTR単独)が挙げられる。
【0156】
RIBOMAPTMを用いて、細胞タイプ特異的RNA結合蛋白質を同定するため、α−TC1.6細胞、膵臓β細胞(ホメオドメイン転写因子NKx6.1mRNAおよび蛋白質の双方を発現する)およびNIH3T3細胞のRNA結合蛋白質発現プロフィルの比較を行う。これらのRNA結合蛋白質はNKx6.1発現を制御する蛋白質候補に相当する。
【0157】
次にこれらのRNA結合蛋白質候補に対する抗体を用いてRASTMを実施し、得られた機能的集団を、NKx6.1mRNA発現に関して分析する。NKx6.1mRNAを含有する機能的集団は、協調的に調節され、内分泌膵臓の発達および/または膵臓β細胞分化に関与する蛋白質をコードし得る他のmRNAを含有し得る。NKx6.1mRNAの5’−UTRに結合する蛋白質もまた精製される。
【0158】
(RNA結合蛋白質結合要素の特異性およびマッピング)
可能性のあるRNA結合蛋白質およびそれらの結合特異性を検証するために、固定化結合部位(インビボ転写により作出されるビオチン化プローブまたはD10エピトープタグ化プローブのいずれか)を用いて競合実験を行う。例えば、当業界に公知の方法に従って、ストレプトアビジンアガロースまたはα−g10アガロースのいずれかにより、特異的結合部位を固定化し、細胞抽出物、または組換えRNA結合蛋白質と共に温置する。コントロールまたは、競合的な非ビオチン化または非タグ化プローブ(合成オリゴヌクレオチドまたは上記のとおり、インビトロ転写によって作出されたオリゴヌクレオチド)の濃度増加の不在または存在下で結合反応を実施する。結合は、1)当業界に記載された電気泳動移動度シフトアッセイ、および/または2)SDS−PAGEの後、RNA結合蛋白質バンドの有無を検出するためのクーマシー染色によって分析する。第3の検証操作としてRASTMもまた実施できる。この場合、上記のとおり、複合体を免疫沈降させるために、RNA結合蛋白質に対して増加させた抗体を用い、会合mRNAを同定するために、マイクロアレイ分析が行われるが、その会合mRNAのうちの1種が、元の内因性標的mRNAのはずである。
【0159】
(実施例3:ヒト脂肪細胞および前脂肪細胞におけるRNA結合蛋白質発現および会合mRNAの分析)
脂肪細胞は、グルコース処理のための、また、トリグリセリド(脂肪)の形態におけるエネルギー貯蔵のための主要な場所であると長い間考えられてきた。また、脂肪細胞は、グルコースの取り込みおよび脂質生合成によって、インシュリンに応答する重要な内分泌組織を含むだけでなく、全身のエネルギー恒常性に関与する種々のシグナル伝達分子を合成し、分泌もする。RNA結合蛋白質とそれらの会合mRNAおよびmRNP複合体会合蛋白質ならびに脂肪細胞の遺伝子発現におけるそれらの役割を分析することにより、脂肪細胞の機能についてのより十分な理解が提供され、グルコース代謝異常または脂質代謝異常に関連する病態を処置する処置薬にとっての標的を同定することができる。代表的な脂肪細胞分析に関するフローチャートが、図9に提供されている。
【0160】
痩せ型個体(BMI<24)において、前脂肪細胞に比較して成熟脂肪細胞に豊富なRNA結合蛋白質を、以下のとおり同定した。簡略に述べると、ヒト前脂肪細胞を、標準的な操作に従い、3人の痩せ型個体から定時脂肪吸引により採取した。前脂肪細胞の一部を、培養において成熟脂肪細胞へ分化させた(Zen−Bio、ノースカロライナ州ダーハム所在)。実施例1に記載した方法に従いRIBOCHIPTM V.1アレイ(MWG Biotech、ノースカロライナ州ハイポイント所在)を用いて成熟脂肪細胞におけるRNA結合蛋白質の発現パターンを、前脂肪細胞におけるRNA結合蛋白質の発現パターンと比較した。図10は、前脂肪細胞に比較して脂肪細胞において差異的に調節されるRNA結合蛋白質および対応する遺伝子の一覧を提供している。他の実験において、肥満個体の前脂肪細胞におけるRNA結合蛋白質発現を、肥満個体の成熟脂肪細胞における発現と比較した。前脂肪細胞および脂肪細胞は、上記のとおり肥満個体から得た。RNA結合蛋白質は、実施例1に記載したとおりRIBOCHIPTM分析を用いて同定した。図11は、肥満個体の前脂肪細胞に較べて肥満個体の成熟脂肪細胞において2倍以上誘導された14種のRNA結合蛋白質およびそれらの対応する遺伝子の一覧を提供している。
【0161】
ヒト成熟脂肪細胞におけるRNA結合蛋白質発現に及ぼすインシュリンまたはβ3アゴニスト、BRL−37344の効果も調β。痩せ型個体の成熟脂肪細胞を上記のとおり得て、未処理のままにする(ベース)か、または、100nmインシュリンもしくは1μMBRL−37344によって処理し、これらの細胞からRNAを調製した(Zen−Bio、ノースカロライナ州ダーハム所在)。上記のとおり、RIBOCHIPTM分析を用いて、RNA結合蛋白質の差異的発現を同定した。図12は、BRL−37344に応答して、差異的に調節されるRNA結合蛋白質および対応する遺伝子の一覧を提供している。図13は、インシュリンに応答して差異的に調節されるRNA結合蛋白質および対応する遺伝子の一覧を提供している。
【0162】
さらに3人の痩せ型個体の成熟脂肪細胞におけるRNA結合蛋白質の発現パターンを、3人の肥満個体(BMI>30)の成熟脂肪細胞におけるRNA結合蛋白質の発現パターンと比較した。前脂肪細胞を定時脂肪吸引により得て、上記のとおり培養した。肥満個体の脂肪細胞は、RNA結合蛋白質発現パターンの変化を示した。
【0163】
これらのデータは、脂肪細胞経路、インシュリン産生またはインシュリン作用、インシュリン抵抗性、脂質生合成経路、糖尿病、肥満、および/またはグルコース代謝経路および脂質代謝経路、またはグルコース代謝および脂質代謝の局面に関与する任意の経路、ならびに関連したmRNP複合体会合蛋白質および関連RNA類に関与するRNA結合蛋白質候補の詳細な一覧を、さらなる検証のために提供する。
【0164】
(実施例4:グルコ−スで処理したラット膵臓β細胞におけるRNA結合蛋白質発現の分析)
ラット膵臓β細胞におけるRNA結合蛋白質発現に及ぼすグルコースの効果を調β。膵臓小島β細胞の通常機能の多くを模擬する能力のため、INS−1ラット膵臓β細胞系の誘導体であるクローン832/13が選択された。INS−1細胞が、インシュリン分泌の2〜4倍増加でグルコース処置に応答する一方、クローン832/13は、グルコース処置により、8〜13倍誘導される。
【0165】
簡略に述べると、832/13細胞を、ほぼ集密になるまで10%ウシ胎仔血清を含有するPRMI(Invitrogen社、カリフォルニア州カールバッド所在)中で増殖させ、低グルコース(3mM)へ1時間移してから、3mMまたは15mMグルコースを含有する新鮮培地で2時間処理した。RNAを調製し、上記のとおり、RIBOCHIPTMを用いてRNA結合蛋白質の差異的発現を測定した。図14は、グルコース処置の結果、2倍のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションを示したRNA結合蛋白質およびそれらの対応する遺伝子の一覧を提供している。
【0166】
これらのデータは、脂肪細胞経路、インシュリン産生またはインシュリン作用、インシュリン抵抗性、脂質生合成経路、糖尿病、肥満、および/またはグルコース代謝経路および脂質代謝経路、またはグルコース代謝および脂質代謝の局面に関与する任意の経路、ならびに関連したmRNP複合体会合蛋白質および関連RNA類に関与するRNA結合蛋白質候補の詳細な一覧を、さらなる検証のために提供する。
【0167】
(実施例5:ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体リガンドに応答するHepG2細胞において差異的に発現したRNA結合蛋白質の同定)
ヒト肝細胞系HepG2において、ヒトRNA結合蛋白質発現に及ぼすペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)リガンドの効果を調β。肝臓は、主要なインシュリン標的組織であり、PPAR受容体の1つであるPPARrは、チアゾリジンジオン類、L−チロシン誘導体、ハロゲン化脂肪酸、およびプロスタグランジン類などの多数のインシュリン感作薬剤にとって、主要な生体標的と考えられている。プロフィル化された化合物としては、プロスタグランジンJ2、ペルフルオロオクタン酸、2−ブロモヘキサデカン酸、シグリタゾン、トログリタゾン、GW−9662、MCC−555、ウェイス(Wyeth) 14643、およびベザフィブラートが挙げられる。RIBOCHIPTMを用いたこれらの化合物の効果のプロフィル化は、これらの薬剤に関連した生理学的および毒性学的性質にとって重要な調節遺伝子における変化を明らかにすると予想された。遺伝子発現における共通のテーマまたはパターンは、恐らく共通の薬理学および毒性学を表し、一方、個々の化合物または化合物のサブセットにより誘導された明確な遺伝子発現変化は、恐らく独特な薬理学的または毒性学的性質を表すであろう。したがって、この様式で同定された遺伝子発現変化は、インシュリン作用機構における関与およびPPARrリガンドの薬理学的および毒性学的性質をめぐる検証のための魅力的な候補である。
【0168】
簡単に述べると、HepG2細胞(ATCC(www.atcc.org.catalog number HB−8065)から入手)を、抗生物質で補足した、10%ウシ胎仔血清を有する最小必須培地(MEM)中、P150プレートにおいて、37℃、5%COで、奨励されたとおり維持した。細胞を1:5分割し、新鮮培地を3日おきに加えた。72時間後に残存した生存細胞フラクションを決定するために、Alamar BlueベースのCell TiterTM Blue Cell Viability Assay(Promega;ウィスコン州マジソン所在)を用いて、細胞(約8000細胞/ウェル)を96ウェルBioCoatコラーゲンコーティングプレート(Becton Dickinson;マサチューセッツ州ベドフォード所在)に塗布した。これにより、試験終了時に、未処理コントロールサンプル(0.25%DMSO)を対数後期(約70%集密)にあるようにした。次いで細胞を、37℃、5%COで24時間回復させた。0.1%BSA(10%FBSの代わりに)を含有するが、フェノールレッドまたは抗生物質を含有しないMEM中3.0mMから出発して、各化合物に2倍希釈系を調製した。細胞回復期後、培地を除去し、化合物を含有する新鮮培地を加えた。各化合物の各投与量について処理を3重に行った。細胞は化合物と共に37℃、5%COで72時間温置した。インジケータなしの新鮮培地によりウェルを洗浄し、水中、0.9%トリトンX−100の添加による残存生存細胞のリーシスおよびCell TiterTM Blue Cell Viability Assay文書に記載されたとおり、Alamer Blueアッセイを行うことにより残存している生存細胞を決定した。Prism4.0(GraphPad;カリフォルニア州サンディエゴ所在)。用量応答分析を用いて、処置72時間後の、媒体のみのコントロールに対して50%細胞死を生じさせる濃度(LD50)を測定した。
【0169】
マイクロアレイ分析用のRNAは、決定したLD50で24時間処理した細胞から得た。典型的には、約1.5x10細胞をp100ディッシュに塗布し、抗生物質なしのMEM+10%FBS中、37℃、5%COで24時間温置しておいた。古い培地を除き、LD50濃度における化合物を含有する、抗生物質無しの新鮮なMEM+0.1%BSAおよび0.25% DMSOをフラスコに加えた。媒体のみの処理も行った。各化合物ならびに媒体のみのコントロールに対して、二重の処理を実施した。前記細胞を化合物と共に37℃、5%COで24時間温置した後、こすり落とし(トリプシンなしで)により採取し、遠心分離した。前記細胞ペレットを瞬間凍結し、RNA抽出用に準備するまで−80℃で保存した。
【0170】
全RNAを抽出し、実施例1に記載したとおり、RIBOCHIPTMを用いて分析した。各処理について、媒体のみのコントロール(0.25% DMSO)に較べて差異的に発現した遺伝子を同定するために、ANOVA解析(p値≦0.05)を用いた。図15〜22は、ベザフィブラート(図15)、ウェイス(Wyeth) 14642(図16)、トログリタゾン(図17)、MCC−555(図18),シグリタゾン(図)19、2−ブロモヘキサデカン酸(図20)、プロスタグランジンJ2(図21)、およびペルフルオロオクタン酸(PFOA)(図22)で処理したHepG2細胞において差異的に発現したRNA結合蛋白質およびそれらの対応する遺伝子の一覧を提供している。
【0171】
(実施例6:精製組換えDNA結合蛋白質を用いたポリピリミジントラクト結合蛋白質複合体に会合したmRNAのインビトロRASTMの同定)
内因性RNA結合蛋白質またはエピトープタグ化RNA結合蛋白質に対する抗体を用いて実施されたインビボRASTMの代替アプローチとして、インビトロRASTMが用いられた。要約すると、細胞または組織の細胞質抽出物、もしくは細胞または組織の精製RNAを、固体支持体に固定させた精製組換えRNA結合蛋白質と共に温置する。以下に提供された例は、GST−PTBおよびINS−1細胞から調製された精製RNAまたは細胞質抽出物を用いて実施されたインビトロRASTMアッセイである。
【0172】
(インシュリンを調節するRNA結合蛋白質遺伝子のクローニングおよび発現)
GST親和性タグを含有するpGEX4Tベクター内へ、ヒトPTBcDNAをクローン化し、大腸菌細胞内で発現させた。上記のとおりGST親和性タグを用いて、細菌ライセートからGST−PTB融合蛋白質を精製した。
【0173】
(インビトロでPTBに結合するRNAの単離)
INS−1細胞を、実施例2に記載されたとおり培養した。細胞を氷上に置き、氷冷PBSで3回洗浄し、1ml/ディッシュのリーシス用緩衝液(50mM HEPES、pH7.2、0.5% NP40、150mM NaCl、2mM MgCl、5%グリセロール、1mM DTT、10ug/mlアプロチニン、1ug/mlロイペプチン、0.2mg/mlPMSF、および200U/ml RNase OUT(Invitrogen社、カリフォルニア州カールスバッド所在、カタログ番号10777−019))に溶解した。前記ライセートを、4℃で10分間、3700gで遠心分離することにより、細胞質フラクションを単離した。上澄液を新しい試験管に移し、NaCl濃度を300mMに上げ、EDTAを加えて、最終濃度を20mMにした。次いでこのサンプルを4℃で10分間、10000gで遠心分離した。この上澄液は、mRNAを含有する細胞質抽出物であると考えられる。追加サンプルとして、先に記載したQuiagenキットを用いて、これらの抽出物からRNAも精製する。
【0174】
PTBに結合するmRNAに関して、GST−PTB融合蛋白質を用いてスクリーンした。要約すると、標準的方法に従い、精製GST−PTB融合蛋白質を、GST結合を介してグルタチオンセファロース(Amersham、スウェーデン国Uppsara所在、カタログ番号17−0756−01)支持体に結合させた。
【0175】
mRNAを含有する精製RNAまたは細胞質ライセートを、ビーズ結合GST−PTB融合蛋白質と共に、4℃で2時間温置した。GST−PTBに結合しているRNAは、ビーズに保持された。結合および洗浄のためのイオン条件は、PTBまたは上記の他のRNA結合蛋白質に対するmRNAの高親和性結合させるように選択して変化させた。この場合、ビーズは、結合用緩衝液(50mM HEPES、pH7.2、0.5% NP40、300mM NaCl、20mM EDTA、2mM MgCl、5%グリセロール、1mM DTT、10ug/mlアプロチニン、1ug/mlロイペプチン、および0.2mg/mlPMSF)により5回洗浄した。最終洗浄後、前記ビーズを、RNAeasyミニプレッププロトコル(Quiagen、カリフォルニア州バレンシア所在、カタログ番号74104)を用いて、350μlのRNAeasyミニプレップ緩衝液RLTおよび精製RNA中に再懸濁した。あるいは、GSTに競合し、ビーズのmRNA−RNA結合蛋白質複合体と入れ代わる10mMのグルタチオン(Sigma、ミズーリ州セントルイス所在)により、標準的方法に従って、結合mRNAを選択的に溶出させる。グルタチオン溶出は、RNA結合蛋白質に結合しているmRNAのみの選択的溶出を可能にし、セファロース基質と非特異的に会合しているmRNAによる汚染を最小化する。陽性コントロールとしての溶出mRNAは、プレプロインシュリンmRNAの存在が多く、これを標準的方法に従って、QRT−PCRを用い、直接評価した。溶出し、精製したRNAを次に、実施例1に記載されたとおり、マイクロアレイ分析により同定する。図23は、精製組換えGST−PTBに結合した遺伝子の一覧を提供している。
【0176】
(細胞または組織に発現したエピトープタグ化RNA結合蛋白質により実施されたRASTM
内因性RNA結合蛋白質に対する抗体を用いるインビボRASTMまたはインビトロRASTMの代替アプローチとして、RNA結合蛋白質のエピトープタグ化体を、対象となる細胞または組織内に発現させる。例えば、T7−エピトープタグ化PTB(T7−PTB)をINS−1細胞にトランスフェクトし、発現させる。多くの状況下でエピトープは、前記複合体の内部に埋もれていないため、エピトープタグの添加は、細胞からmRNP複合体を免疫沈降させる能力を合理化する。T7−PTBの安定選択後、T7−PTBを含有するmRNP複合体を、上記のPLB緩衝液およびT7モノクローナル抗体(Novagen、ウィスコンシン州マジソン所在)を用いて、細胞抽出物から単離する。RNAは、抽出し、記載されたとおり、マイクロアレイ分析により同定する。
【0177】
RNP複合体のインビトロ分析とインビボ分析の組合せは、翻訳後調節試験の強力なアプローチを提供する。比較分析により、種々のアプローチにおいて、協調的に調節されている遺伝子のセットが同定される。INS−1細胞において、PTBに会合している遺伝子に関して、これらのデータは、例えば、インシュリンの適切な産生と分泌を組織化するために協調して作用する調節経路、代謝経路、およびシグナル伝達経路のロードマップを提供する。PTBmRNP複合体における動的変化の分析により、新規診断用生体マーカーの同定ならびにインシュリン産生を調節するために是非とも必要な治療標的およびグルコース代謝および/または脂質代謝、インシュリン作用、インシュリン抵抗性、糖尿病および肥満に関与する他の遺伝子の収集がもたらされた。
【0178】
(実施例7:RNAi媒介遺伝子サイレンシングによる、可能性のある治療標的および細胞経路成分の検証)
可能性のある治療標的として検証するために、または、細胞経路に配置するためにリボノミック集団内の遺伝子を同定したら、mRNP複合体におけるそれらの重要性を証明するために、RNAi媒介遺伝子サイレンシングを実施した。対象となる遺伝子を特異的に標的にするsiRNA類の混合物を含有し、トランスフェクト24時間以内に、標的mRNAの≧50%超の減少をもたらすSMARTPOOLTM設計siRNA類(Dharmacon(コロラド州ラファイエット所在)を用いた。
【0179】
以前はグルコース刺激インシュリン分泌に関連していなかったイオンチャネル核酸であるSMARTPOOLTM siRNA類には、CNCG(カタログ番号M−003833−00−05)、CaCNA2D1、KCNC3(カタログ番号M−003838−00−05)、KCNB2(カタログ番号M−003830−00−05)が含まれた。24ウェル培養ディッシュに塗布し、10%ウシ胎仔血清を含有する新鮮RPMI培地で、トランスフェクト前、90分間温置したINS−1細胞において、各々siRNAのトランスフェクトを実施した。細胞に対して、1〜50nM siRNAの最終濃度となるような濃度範囲のSMARTPOOLTM siRNA類と共に、2μlのトランシットTKOトランスフェクト試剤(Dharmacon、コロラド州ラファイエット所在)を、室温で15分間温置した。細胞を、37℃で24時間温置後、全RNA単離およびグルコース刺激インシュリン分泌のために処理した。トランスフェクトされた未処理コントロールにおける標的遺伝子の発現および配列特異的siRNA移入細胞を、QRT−PCRおよび/または免疫ブロット法により評価した。インシュリン分泌のため、3mMグルコースを含有する血清なし培地で、細胞を60分間温置した。次に培地を、3mMまたは15mMグルコースのいずれかを含有する新鮮培地に取替え、120分間温置した。次いでインシュリンELISA(Linco Research Products、ミズーリ州セントチャールズ所在)を用いて、分泌されたインシュリン濃度を決定するため、各サンプルの馴らし培地を使用した。コントロールsiRNAをトランスフェクトした細胞と比較して、siRNAをトランスフェクトしたINS−1細胞は、PTB(図24A)に対し、CNCG(図24B)、KCNC3(図24B)、KCNB2(図24B)およびCaCNA2D1(図24C)では、インシュリン分泌の変化を示し、これらが、インシュリン分泌経路(図19)に関与していることを示唆した。さらに、拡張的経時実験、グルコース用量応答実験およびスルホニル尿素、GLP−1、および脂肪酸などの他の分泌促進物質に応答する能力を判断する実験を実施することができる。
【0180】
2つのカリウムチャネル、KCN3とKCNB2のRNAi媒介遺伝子サイレンシングは、基礎的インシュリン分泌濃度に非常な増加をもたらし、これらのチャネルが、前記過程に、機能的役割を演じていることを示唆した。これら2つのカリウムチャネル蛋白質は、以前、インシュリン分泌または膵臓β細胞機能の調節に関与していなかった。糖尿病薬の1クラス(スルホニル尿素またはGLUCOVANCEのようなグリブリド類)の作用は、膵臓β細胞上のKチャネルの阻害により作用するため、このことは重要である。これらの薬剤は、全体および基礎的インシュリン分泌を増加させ、それによりグルコース高濃度(高血糖)を制御することによって働く。これらの結果は、この過程に働いているかもしれない追加のKチャネルが存在していることを示唆しており、新規な糖尿病薬にとっての標的候補を提供する。
【0181】
PTB集団において同定されたイオンチャネル蛋白質の多くが、以前はグルコース代謝および脂質代謝に関与しているとして確認されていなかったことに注目すべきである。これらの蛋白質は、グルコース代謝および脂質に関与する経路または他の膵臓β細胞の機能を調節するために使用し得る新規処置薬の標的となる。図25は、膵臓β細胞におけるインシュリン分泌に関与している公知の経路の幾つかを例示し、PTB集団に見られるmRNAによりコードされる蛋白質の幾つかを示している。
【0182】
(標的蛋白質の過剰発現)
あるいは、本発明の方法により同定された特定の標的蛋白質を過剰発現させるために、標的蛋白質をコードする核酸を細胞にトランスフェクトできるか、または対象となる標的蛋白質をコードする遺伝子に関する転写エンハンサーにより細胞を処理することができる。次いでこれらの系を記載したとおり、生物学的アッセイ(例えば、グルコース刺激、インシュリン分泌)に供することが考えられる。
【0183】
(実施例8:プレプロインシュリンmRNAの3’−UTRに対するPTBのRIBOTRAPTM特性化)
プレプロインシュリンの3’UTRに対するPTBの結合に及ぼすグルコースの効果を特性化するために、RIBOTRAPTM実験を行った。
【0184】
細胞抽出物の調製:0.5mMグルコースを含有するRPMI培地において、INS−1細胞を2時間温置した。前記細胞を洗浄し、2時間までの種々の時間、培地を0.5mM(低グルコース)または15mM(高グルコース)のいずれかを含有するRPMIに取り替えた。前記細胞を冷PBSで洗浄し、1mL PLBリーシス用緩衝液(50mM HEPES、pH7.5、0.5% NP−40、150mM NaCl、1mM DTT、ロイペプチン1ug/ml、1μg/mlアプロチニンおよびPMSF、10%グリセロール、200units/ml RNase OUT)において採取した。このライセートを、5分間、10,000xgで遠心分離し,上澄液(凡そ1mg/mlの蛋白質レベル)を、結合試験に用いた。
【0185】
RIBOTRAPTM結合試験:プレプロインシュリンの3’−UTRに特異的なビオチン化RNAオリゴヌクレオチドプローブ、5’−gcccaccacuacccugaccaccccucugcaaugaauaaaaccuuugaaagagc−3’、およびビオチン化コントロールRNAオリゴヌクレオチドプローブ、5’−ugaauacaagcucacgacccacuacacaagcuaccagauacaacaacaagcauccacc−3’を、標準的な方法に従って、ストレプトアビジンアガロースビーズに前結合した。PTB結合のため、INS−1細胞抽出物の塩濃度を、300mM NaClに調整し、10〜100μlの細胞抽出物をビオチン化オリゴヌクレオチドプローブ(1〜50μg)と共に、30分間から12時間温置した。ビーズをPLB結合用緩衝液(RLB/300mM NaCl)中で洗浄し、結合した蛋白質を標準的な方法に従ってSDS−PAGEサンプル緩衝液に溶出した。PTBに対するモノクローナル抗体(Zymed、サウスサンフランシスコ所在)を用いて、免疫ブロット法により、結合したPTBの検出を実施した。図26は、α−PTBモノクローナル抗体により探索された免疫ブロットの結果を示しているが、プレプロインシュリンの3’−UTRに対するPTB結合において、グルコースが急性だが一時的増加を刺激していることが示されている。コントロールRNAオリゴヌクレオチドの使用では、結合は検出されなかった。
【0186】
(実施例9:RASTMを用いたPTBリボノミック集団の同定)
PTBリボノミック集団を単離し、RASTMを用いて特性化した。上記の実施例7および実施例8に記載したとおり低グルコースで逓減させ、次いで高グルコース培地で2時間刺激したINS−1細胞を調製した。実施例7に記載されたとおり、RLB緩衝液中で細胞を採取することにより、細胞抽出物を調製した。遠心分離後、細胞抽出物の塩濃度を、300mM NaClおよび15mM EDTA(RLB/NaCl/EDTA)に調整した。これらの抽出物(500μg蛋白質)を、10μgの抗PTBモノクローナル抗体α−PTB(Zymed、カタログ番号32−4800、カリフォルニア州サウスサンフランシスコ所在)または10μgのコントロールIgG(Pierce Biotechnology、イリノイ州ロックフォード所在)と共に、2時間温置した後、30μlの蛋白質Aセファロース(Pierce Biotechnology、イリノイ州ロックフォード所在)と共に1時間温置した。免疫沈降物を、RLB/NaCl/EDTA中、6回洗浄した。Pico Pure RNA単離キット(Arcturus、カリフォルニア州マウンテンビュー)を用いて、免疫沈降物からRNAを抽出し、精製した。精製RNAをRiboGreen分析(Molecular Probes、オレゴン州ユージーン所在)により定量化し、サンプルの完全性をBioAnalyzer(Agilent、カリフォルニア州パロアルト所在)を用いて判断した。これらの分析から、凡そ25〜30ngの核酸が、コントロールIgG免疫沈降物に結合していた。コントロール的に、PTB抗体によって、200〜900ngの核酸が免疫沈降した。マイクロアレイ試験のための十分なRNAを得るために、MessageAmpおよび製造元により記載されたプロトコル(Ambion、テキサス州オースチン)を用いて、凡そ500ngのサンプルを2回の増幅に供した。マイクロアレイ分析を、実施例1に記載されたとおり実施した。
【0187】
PTB集団から、可能性のある処置薬を検討する目的で、増幅された全RNAに比較して、≧5Xで豊富な遺伝子を薬物標的クラスに選別し、図27で一覧にしてある。
【0188】
(実施例10:RBP集団特性化を目的としたRNA結合蛋白質のRNAi媒介遺伝子サイレンシングの利用)
PTB発現を阻害するため、また、PTB集団内の幾つかの遺伝子発現に及ぼすPTB発現のRNAi媒介ダウンレギュレーション効果を調べるため、RNAiを用いた。INS−1細胞を、24ウェル培養ディッシュに塗布し、10%ウシ胎仔血清を含有する新鮮RPMI培地と共に温置した。細胞に対して、1〜50nM siRNAの最終濃度となるような濃度範囲で、PTBに対し特異的に標的化されたSMARTPOOLTM siRNA類(Dharmacon、コロラド州ラファイエット所在、カタログ番号M−003841−00−05)と共に、2μlのトランシットTKOトランスフェクト試剤(Dharmacon、コロラド州ラファイエット所在)を、室温で15分間温置した。37℃で24時間温置後、全RNAを単離し、QR−TPCR分析に用いた。図28は、PTB集団内に見られるPTB、プレプロインシュリンおよびそれに加えて9種の遺伝子の発現に及ぼすPTB阻害効果を示している。図28Aに示されるように、PTBmRNA発現の80%減少があり、PTB特異的RNAiの作用が確認された。さらにCACNA1S、CACNA2D1、Casr、C1c3、Kcnj6、AND Loc245960は、PTBノックダウンの結果、有意にダウンレギュレートされた。図28Bは、PTBノックダウンの結果、発現がアップレギュレートされた遺伝子を示している。これには、3倍アップレギュレートされるインシュリンが含まれる。
【0189】
(等価物)
本発明は、その精神または本質的特徴から逸脱することなく、他の実施形態において具体化できる。したがって、前述の実施形態は、全ての観点で、本明細書に記載された本発明を限定するものではなく、例示的なものと考えるべきである。したがって、本発明の範囲は、前述の説明ではなく、添付の請求項によって示され、請求項と均等な意味および範囲内に入る全ての変更は、請求項に包含されることが意図されている。
【0190】
(参考文献の援用)
本出願に引用された全ての刊行物および特許文献は、個々の各刊行物または特許文献が本明細書に援用されるのと同じ程度に、あらゆる目的のため参考としてその全体が援用される。
【図面の簡単な説明】
【0191】
本発明の目的および特徴は、下記の図面を参照することにより、より理解できると思われる、
【図1】図1は、ストレプトアビジン−アガロース支持体を用いて、対象のビオチン化mRNAに結合しているRNA結合蛋白質(RBP−X)を単離するためのRIBOTRAPTMアッセイの実施形態を要約した概略図である。
【図2】図2は、RIBOTRAPTMアッセイの1タイプおよびRIBOTRAPTMによって同定されたRNA結合蛋白質に対するmRNA基質同定のため、引き続きRASTMアッセイを用いたRNA結合蛋白質の概略図である。
【図3】図3は、リボノミック分析システム、RASTMの全般的図解である。RASTMは、特異的RNA結合蛋白質に基づくmRNP複合体の単離およびmRNP複合体により分離したRNA類の同定を含む。RASTMは、少なくとも3つの方法において実施できる;A)天然の内因性RNA結合蛋白質に対する抗体を用いるインビボRASTM、B)エピトープ−タグ化RNA結合蛋白質およびそのエピトープに対する抗体を用いるインビボRASTM、C)精製組換えRNA結合蛋白質および細胞抽出物または精製RNAを用いるインビトロRASTM
【図4】図4は、ポリピリミジントラクト結合蛋白質(PTBまたはRBP−1)に関して、RIBOTRAPTMおよびRASTMを用いる図解である。リボノミック集団は、RBP−1に特異的な抗体を用いて細胞抽出物から単離される。全域マイクロアレイ分析を用いてこの集団から抽出されたRNAを全RNAと比較する。
【図5】図5は、RNA結合蛋白質およびmRNP複合体を用いる標的発見法の一実施形態の概略図である。
【図6】図6は、組織または疾患特異的RNA結合蛋白質、mRNA類および遺伝子を同定するためのRNA結合蛋白質の発現比較および/またはmRNP複合体からのマイクロアレイ結果に対する分析と解釈に関する例示的なデータフローの概略図である。
【図7】図7は、INS−1細胞ライセートからのPTBが、プリプロインシュリンの3’UTR部分をコードするオリゴヌクレオチドに特異的に結合し、コントロールオリゴヌクレオチドをコードするオリゴヌクレオチドには結合しない検証するインビトロRIBOTRAPTMを例示しているウェスタンブロットである。また、グルコースは、PTB結合の急性で一時的な増加を刺激する。レーン1および2:全細胞ライセート;レーン3および4:コントロールオリゴヌクレオチド;レーン5および6:5’UTRオリゴヌクレオチド;レーン7および8:3’UTRオリゴヌクレオチド。
【図8】図8は、プリプロインシュリンmRNAに結合するグルコース調節RNA結合蛋白質の提案されたモデルとRNA結合蛋白質によるグルコース誘導プリプロインシュリン翻訳の調節を示している。Spは、シグナルペプチド;B、C、Aは、処理されたインシュリンの種々のペプチド鎖に関するコード領域である。
【図9】図9は、主要脂肪細胞における標的発見の概略図である。
【図10−1】図10は、ヒトの前脂肪細胞から脂肪細胞への分化時に、発現が差異的に調節されている(2倍以上)RNA結合蛋白質遺伝子の一覧である。RNAは、痩せ型の患者の前脂肪細胞から、また、痩せ型の患者の分化脂肪細胞からのRNAから単離された。
【図10−2】図10は、ヒトの前脂肪細胞から脂肪細胞への分化時に、発現が差異的に調節されている(2倍以上)RNA結合蛋白質遺伝子の一覧である。RNAは、痩せ型の患者の前脂肪細胞から、また、痩せ型の患者の分化脂肪細胞からのRNAから単離された。
【図10−3】図10は、ヒトの前脂肪細胞から脂肪細胞への分化時に、発現が差異的に調節されている(2倍以上)RNA結合蛋白質遺伝子の一覧である。RNAは、痩せ型の患者の前脂肪細胞から、また、痩せ型の患者の分化脂肪細胞からのRNAから単離された。
【図11】図11は、肥満患者の脂肪細胞分化時、2倍以上アップレギュレートされるRNA結合蛋白質遺伝子の一覧である。
【図12−1】図12は、BRL−37433により処理されたヒト脂肪細胞において、差異的に発現する(2倍以上)RNA結合蛋白質の一覧である。RNAは、未処理のままであったか、またはβ−3アドレナリン作用性アゴニスト、BRL−37433を用いた痩せ型(非肥満)患者から調製されたヒト脂肪細胞から単離された。
【図12−2】図12は、BRL−37433により処理されたヒト脂肪細胞において、差異的に発現する(2倍以上)RNA結合蛋白質の一覧である。RNAは、未処理のままであったか、またはβ−3アドレナリン作用性アゴニスト、BRL−37433を用いた痩せ型(非肥満)患者から調製されたヒト脂肪細胞から単離された。
【図13−1】図13は、インシュリンで処理されたヒト脂肪細胞において、差異的に発現する(2倍以上)RNA結合蛋白質の一覧である。RNAは、未処理のままであったか、またはインシュリン(100nM)を用いた痩せ型(非肥満)患者から調製されたヒト脂肪細胞から単離された。
【図13−2】図13は、インシュリンで処理されたヒト脂肪細胞において、差異的に発現する(2倍以上)RNA結合蛋白質の一覧である。RNAは、未処理のままであったか、またはインシュリン(100nM)を用いた痩せ型(非肥満)患者から調製されたヒト脂肪細胞から単離された。
【図13−3】図13は、インシュリンで処理されたヒト脂肪細胞において、差異的に発現する(2倍以上)RNA結合蛋白質の一覧である。RNAは、未処理のままであったか、またはインシュリン(100nM)を用いた痩せ型(非肥満)患者から調製されたヒト脂肪細胞から単離された。
【図13−4】図13は、インシュリンで処理されたヒト脂肪細胞において、差異的に発現する(2倍以上)RNA結合蛋白質の一覧である。RNAは、未処理のままであったか、またはインシュリン(100nM)を用いた痩せ型(非肥満)患者から調製されたヒト脂肪細胞から単離された。
【図14−1】図14は、INS−1細胞において、グルコースにより差異的に調節されるRNA結合蛋白質の一覧である。
【図14−2】図14は、INS−1細胞において、グルコースにより差異的に調節されるRNA結合蛋白質の一覧である。
【図14−3】図14は、INS−1細胞において、グルコースにより差異的に調節されるRNA結合蛋白質の一覧である。
【図14−4】図14は、INS−1細胞において、グルコースにより差異的に調節されるRNA結合蛋白質の一覧である。
【図14−5】図14は、INS−1細胞において、グルコースにより差異的に調節されるRNA結合蛋白質の一覧である。
【図14−6】図14は、INS−1細胞において、グルコースにより差異的に調節されるRNA結合蛋白質の一覧である。
【図14−7】図14は、INS−1細胞において、グルコースにより差異的に調節されるRNA結合蛋白質の一覧である。
【図14−8】図14は、INS−1細胞において、グルコースにより差異的に調節されるRNA結合蛋白質の一覧である。
【図14−9】図14は、INS−1細胞において、グルコースにより差異的に調節されるRNA結合蛋白質の一覧である。
【図14−10】図14は、INS−1細胞において、グルコースにより差異的に調節されるRNA結合蛋白質の一覧である。
【図14−11】図14は、INS−1細胞において、グルコースにより差異的に調節されるRNA結合蛋白質の一覧である。
【図14−12】図14は、INS−1細胞において、グルコースにより差異的に調節されるRNA結合蛋白質の一覧である。
【図14−13】図14は、INS−1細胞において、グルコースにより差異的に調節されるRNA結合蛋白質の一覧である。
【図14−14】図14は、INS−1細胞において、グルコースにより差異的に調節されるRNA結合蛋白質の一覧である。
【図14−15】図14は、INS−1細胞において、グルコースにより差異的に調節されるRNA結合蛋白質の一覧である。
【図14−16】図14は、INS−1細胞において、グルコースにより差異的に調節されるRNA結合蛋白質の一覧である。
【図14−17】図14は、INS−1細胞において、グルコースにより差異的に調節されるRNA結合蛋白質の一覧である。
【図14−18】図14は、INS−1細胞において、グルコースにより差異的に調節されるRNA結合蛋白質の一覧である。
【図14−19】図14は、INS−1細胞において、グルコースにより差異的に調節されるRNA結合蛋白質の一覧である。
【図14−20】図14は、INS−1細胞において、グルコースにより差異的に調節されるRNA結合蛋白質の一覧である。
【図14−21】図14は、INS−1細胞において、グルコースにより差異的に調節されるRNA結合蛋白質の一覧である。
【図14−22】図14は、INS−1細胞において、グルコースにより差異的に調節されるRNA結合蛋白質の一覧である。
【図14−23】図14は、INS−1細胞において、グルコースにより差異的に調節されるRNA結合蛋白質の一覧である。
【図15】図15は、ベザフィブラートにより処理されたHepG2細胞において差異的に発現するRNA結合蛋白質遺伝子の一覧である。
【図16−1】図16は、Wyeth 14643により処理されたHepG2細胞において差異的に発現するRNA結合蛋白質遺伝子の一覧である。
【図16−2】図16は、Wyeth 14643により処理されたHepG2細胞において差異的に発現するRNA結合蛋白質遺伝子の一覧である。
【図17−1】図17は、トログリタゾンにより処理されたHepG2細胞において差異的に発現するRNA結合蛋白質遺伝子の一覧である。
【図17−2】図17は、トログリタゾンにより処理されたHepG2細胞において差異的に発現するRNA結合蛋白質遺伝子の一覧である。
【図17−3】図17は、トログリタゾンにより処理されたHepG2細胞において差異的に発現するRNA結合蛋白質遺伝子の一覧である。
【図18−1】図18は、MCC−555により処理されたHepG2細胞において差異的に発現するRNA結合蛋白質遺伝子の一覧である。
【図18−2】図18は、MCC−555により処理されたHepG2細胞において差異的に発現するRNA結合蛋白質遺伝子の一覧である。
【図19−1】図19は、シグリタゾンにより処理されたHepG2細胞において差異的に発現するRNA結合蛋白質遺伝子の一覧である。
【図19−2】図19は、シグリタゾンにより処理されたHepG2細胞において差異的に発現するRNA結合蛋白質遺伝子の一覧である。
【図19−3】図19は、シグリタゾンにより処理されたHepG2細胞において差異的に発現するRNA結合蛋白質遺伝子の一覧である。
【図19−4】図19は、シグリタゾンにより処理されたHepG2細胞において差異的に発現するRNA結合蛋白質遺伝子の一覧である。
【図20−1】図20は、2−ブロモヘキサデカン酸(2−BHDA)により処理されたHepG2細胞において差異的に発現するRNA結合蛋白質遺伝子の一覧である。
【図20−2】図20は、2−ブロモヘキサデカン酸(2−BHDA)により処理されたHepG2細胞において差異的に発現するRNA結合蛋白質遺伝子の一覧である。
【図21−1】図21は、プロスタグランジンJ2(PJ2)により処理されたHepG2細胞において差異的に発現するRNA結合蛋白質遺伝子の一覧である。
【図21−2】図21は、プロスタグランジンJ2(PJ2)により処理されたHepG2細胞において差異的に発現するRNA結合蛋白質遺伝子の一覧である。
【図22−1】図22は、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)により処理されたHepG2細胞において差異的に発現するRNA結合蛋白質遺伝子の一覧である。
【図22−2】図22は、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)により処理されたHepG2細胞において差異的に発現するRNA結合蛋白質遺伝子の一覧である。
【図22−3】図22は、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)により処理されたHepG2細胞において差異的に発現するRNA結合蛋白質遺伝子の一覧である。
【図22−4】図22は、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)により処理されたHepG2細胞において差異的に発現するRNA結合蛋白質遺伝子の一覧である。
【図23−1】図23は、GST−PTBのインビトロRASTM分析において同定された遺伝子の一覧である。これらの遺伝子およびそれらにコードされた蛋白質は、グルコースおよび脂質の代謝、インシュリン作用、インシュリン抵抗性、糖尿病および肥満に関与する細胞経路の処置的候補となる。
【図23−2】図23は、GST−PTBのインビトロRASTM分析において同定された遺伝子の一覧である。これらの遺伝子およびそれらにコードされた蛋白質は、グルコースおよび脂質の代謝、インシュリン作用、インシュリン抵抗性、糖尿病および肥満に関与する細胞経路の処置的候補となる。
【図23−3】図23は、GST−PTBのインビトロRASTM分析において同定された遺伝子の一覧である。これらの遺伝子およびそれらにコードされた蛋白質は、グルコースおよび脂質の代謝、インシュリン作用、インシュリン抵抗性、糖尿病および肥満に関与する細胞経路の処置的候補となる。
【図23−4】図23は、GST−PTBのインビトロRASTM分析において同定された遺伝子の一覧である。これらの遺伝子およびそれらにコードされた蛋白質は、グルコースおよび脂質の代謝、インシュリン作用、インシュリン抵抗性、糖尿病および肥満に関与する細胞経路の処置的候補となる。
【図23−5】図23は、GST−PTBのインビトロRASTM分析において同定された遺伝子の一覧である。これらの遺伝子およびそれらにコードされた蛋白質は、グルコースおよび脂質の代謝、インシュリン作用、インシュリン抵抗性、糖尿病および肥満に関与する細胞経路の処置的候補となる。
【図23−6】図23は、GST−PTBのインビトロRASTM分析において同定された遺伝子の一覧である。これらの遺伝子およびそれらにコードされた蛋白質は、グルコースおよび脂質の代謝、インシュリン作用、インシュリン抵抗性、糖尿病および肥満に関与する細胞経路の処置的候補となる。
【図23−7】図23は、GST−PTBのインビトロRASTM分析において同定された遺伝子の一覧である。これらの遺伝子およびそれらにコードされた蛋白質は、グルコースおよび脂質の代謝、インシュリン作用、インシュリン抵抗性、糖尿病および肥満に関与する細胞経路の処置的候補となる。
【図23−8】図23は、GST−PTBのインビトロRASTM分析において同定された遺伝子の一覧である。これらの遺伝子およびそれらにコードされた蛋白質は、グルコースおよび脂質の代謝、インシュリン作用、インシュリン抵抗性、糖尿病および肥満に関与する細胞経路の処置的候補となる。
【図23−9】図23は、GST−PTBのインビトロRASTM分析において同定された遺伝子の一覧である。これらの遺伝子およびそれらにコードされた蛋白質は、グルコースおよび脂質の代謝、インシュリン作用、インシュリン抵抗性、糖尿病および肥満に関与する細胞経路の処置的候補となる。
【図23−10】図23は、GST−PTBのインビトロRASTM分析において同定された遺伝子の一覧である。これらの遺伝子およびそれらにコードされた蛋白質は、グルコースおよび脂質の代謝、インシュリン作用、インシュリン抵抗性、糖尿病および肥満に関与する細胞経路の処置的候補となる。
【図23−11】図23は、GST−PTBのインビトロRASTM分析において同定された遺伝子の一覧である。これらの遺伝子およびそれらにコードされた蛋白質は、グルコースおよび脂質の代謝、インシュリン作用、インシュリン抵抗性、糖尿病および肥満に関与する細胞経路の処置的候補となる。
【図23−12】図23は、GST−PTBのインビトロRASTM分析において同定された遺伝子の一覧である。これらの遺伝子およびそれらにコードされた蛋白質は、グルコースおよび脂質の代謝、インシュリン作用、インシュリン抵抗性、糖尿病および肥満に関与する細胞経路の処置的候補となる。
【図23−13】図23は、GST−PTBのインビトロRASTM分析において同定された遺伝子の一覧である。これらの遺伝子およびそれらにコードされた蛋白質は、グルコースおよび脂質の代謝、インシュリン作用、インシュリン抵抗性、糖尿病および肥満に関与する細胞経路の処置的候補となる。
【図23−14】図23は、GST−PTBのインビトロRASTM分析において同定された遺伝子の一覧である。これらの遺伝子およびそれらにコードされた蛋白質は、グルコースおよび脂質の代謝、インシュリン作用、インシュリン抵抗性、糖尿病および肥満に関与する細胞経路の処置的候補となる。
【図23−15】図23は、GST−PTBのインビトロRASTM分析において同定された遺伝子の一覧である。これらの遺伝子およびそれらにコードされた蛋白質は、グルコースおよび脂質の代謝、インシュリン作用、インシュリン抵抗性、糖尿病および肥満に関与する細胞経路の処置的候補となる。
【図23−16】図23は、GST−PTBのインビトロRASTM分析において同定された遺伝子の一覧である。これらの遺伝子およびそれらにコードされた蛋白質は、グルコースおよび脂質の代謝、インシュリン作用、インシュリン抵抗性、糖尿病および肥満に関与する細胞経路の処置的候補となる。
【図23−17】図23は、GST−PTBのインビトロRASTM分析において同定された遺伝子の一覧である。これらの遺伝子およびそれらにコードされた蛋白質は、グルコースおよび脂質の代謝、インシュリン作用、インシュリン抵抗性、糖尿病および肥満に関与する細胞経路の処置的候補となる。
【図24】図24は、RNAi媒介遺伝子サイレンシングに引き続き、グルコース刺激インシュリン分泌を決定するアッセイを用いる標的確認の例を示す。図24Aは、インシュリン分泌に及ぼすPTBのRNAi媒介遺伝子サイレンシングの効果を示す。図24Bは、PTBリボノミック集団内に含有された3つのイオンチャンネルのRNA媒介遺伝子サイレンシングの効果を示す。図24Cは、インシュリン分泌に及ぼすIonCh4またはCNCGのRNAi媒介遺伝子サイレンシングの効果を示す。
【図25】図25は、膵臓のβ細胞におけるインシュリン分泌調節機構の図解である。太字体で示された蛋白質は、PTB集団上に存在している。
【図26】図26Aは、細胞を種々の量のグルコースで増殖させた後、プリプロインシュリン3’UTRオリゴヌクレオチドに対するPT結合を示すPTBモノクローナル抗体によって探索された免疫ブロットを示す。図26Bは、図26Aからのデータを描いている棒グラフである。
【図27−1】図27は、PTBリボノミック集団から得られた治療標的候補を取り上げ、薬物にできる標的のクラスへとまとめている一覧である。
【図27−2】図27は、PTBリボノミック集団から得られた治療標的候補を取り上げ、薬物にできる標的のクラスへとまとめている一覧である。
【図27−3】図27は、PTBリボノミック集団から得られた治療標的候補を取り上げ、薬物にできる標的のクラスへとまとめている一覧である。
【図27−4】図27は、PTBリボノミック集団から得られた治療標的候補を取り上げ、薬物にできる標的のクラスへとまとめている一覧である。
【図27−5】図27は、PTBリボノミック集団から得られた治療標的候補を取り上げ、薬物にできる標的のクラスへとまとめている一覧である。
【図27−6】図27は、PTBリボノミック集団から得られた治療標的候補を取り上げ、薬物にできる標的のクラスへとまとめている一覧である。
【図28】図28は、PTB、プリプロインシュリンの発現に及ぼすRNAiによるPTB阻害効果ならびにPTB集団内に見られる9種の追加遺伝子:CACNA1s、CACNA2D1、Casr、C1c3、KCNJ6、およびLoc245960を示す。図28Aに示されるように、PTB mRNA発現には80%の減少があり、PTB特異的RNAiの作用が確認される。幾つかの他の遺伝子発現もまた、種々の程度にダウンレギュレートされた。図28Bは、PTBノックダウンの結果、発現がアップレギュレートされた遺伝子を示し、それには、3倍アップレギュレートされるプリプロインシュリンmRNAが含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療標的を同定する方法であって、該方法は、以下:
(a)第1の表現型を含む細胞について富化された第1のサンプル中の、単離されたmRNAリボ核蛋白質(mRNP)複合体の少なくとも1種の成分の蛋白質レベルまたはRNAレベルを測定する工程;および
(b)工程(a)で決定された該レベルを、第2の表現型を含む細胞について富化された第2のサンプル中の、該成分の該蛋白質レベルまたは該RNAレベルと比較する工程
を包含し、
該第1のサンプル中の該成分のレベルが、該第2のサンプル中の該成分のレベルと異なる場合、該成分、該成分をコードする核酸または該成分によりコードされる蛋白質が、疾患の処置のための潜在的な治療標的候補である、方法。
【請求項2】
前記第1の表現型を含む細胞が、成熟脂肪細胞、前脂肪細胞、膵臓β細胞、肝細胞、骨格筋細胞、および心筋細胞からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の表現型を含む細胞が、成熟脂肪細胞であり、前記第2の表現型を含む細胞が、前脂肪細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の表現型が、グルコース代謝または脂質代謝に関連する疾患であり、前記第2の表現型が、正常な表現型である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の表現型が、肥満、糖尿病、低血糖症、糖毒性、脂質毒性、インシュリン抵抗性、高脂血症およびリポジストロフィーからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記成分が、RNA結合蛋白質、RNA、およびmRNP会合蛋白質からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、該方法は、
(c)前記成分の前記蛋白質レベルまたは前記RNAレベルを測定する前に、工程(a)における前記サンプルを薬剤により処理する工程であって、該薬剤が、グルコース代謝経路または脂質代謝経路の少なくとも1種の成分レベルを変化させる工程をさらに包含する、方法。
【請求項8】
前記薬剤が、インシュリン、グルコース、インシュリン様成長因子−1(IGF−1)、β−アドレナリン作用性アゴニスト、グルコース、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、脂肪酸、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)リガンド、およびインシュリン様成長因子−2(IGF−2)からなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記薬剤が、試験処置薬である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記薬剤が、核酸、蛋白質、ペプチド、または小分子からなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記成分、該成分をコードする核酸、または該成分によりコードされる蛋白質を単離する工程をさらに包含する、請求項1または7に記載の方法。
【請求項12】
前記成分が、ポリピリミジントラクト結合蛋白質である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記RNA結合蛋白質が、図10から図22で同定されるRNA結合蛋白質からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記成分が、タグを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記成分が、キナーゼ、トランスポーター、ホスファターゼ、チャネル蛋白質、プロテアーゼ、受容体、転写因子およびトランスフェラーゼからなる群より選択される蛋白質をコードするmRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記成分が、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1、核遍在性カゼインキナーゼ2、神経受容体蛋白質−チロシンキナーゼ、MAP−キナーゼ活性化デスドメイン、AMP−活性化プロテインキナーゼβ2調節サブユニット、カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼIV、プロテインキナーゼCβ、アデニル酸キナーゼ3、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ5,6−ホスホフルクト−2−キナーゼ/フルクトース−2,6−ビスホスファターゼ2、ホスファチジルイノシトール4−キナーゼ、グルコキナーゼ、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3β、ホスホリラーゼキナーゼ(γ2、精巣)、蛋白質チロシンホスファターゼ(受容体タイプ1)、蛋白質チロシンホスファターゼ(非受容体タイプ5)、イノシトールポリリン酸5−ホスファターゼD、蛋白質チロシンホスファターゼ(受容体タイプ、ζポリペプチド)、二重特異性ホスファターゼ6、蛋白質チロシンホスファターゼ(非受容体タイプ12)、グルコース−6−ホスファターゼ(触媒的)、6−ホスホフルクト−2−キナーゼ/フルクトース−2,6−ビスホスファターゼ2、プロトン依存性カチオンチャネルDRASIC、ナトリウムチャネル(電位非依存型1、α(上皮))、カルシウムチャネル(電位依存性、α2/δサブユニット1)、内部に整流するカリウム(チャネル、サブファミリーJ、メンバー6)、カリウムチャネル調節因子1、カルシウムチャネル(電位依存性、Tタイプ、α1Gサブユニット)、環状ヌクレオチド依存性カチオンチャネル、アミロライド感受性カチオンチャネル1、内部に整流するカリウムチャネルJ14、カリウムコンダクタンスが大きいカルシウム活性化チャネル(サブファミリーM、αメンバー1)、カリウム電位依存性チャネル(Shab関連サブファミリー、メンバー2)、カリウムチャネルサブユニット(Slack)、カリウムコンダクタンスが中程度/小さいカルシウム活性化チャネル(サブファミリーN、メンバー1)、ナトリウムチャネル(電位依存性、タイプV、αポリペプチド)、アミロライド感受性カチオンチャネル2(神経)、カリウムチャネル(サブファミリーK、メンバー6(TWIK−2))、カチオン−クロリドコトランスポーター6、溶質キャリアファミリー21(有機アニオントランスポーター、メンバー12)、アミノ酸トランスポーター系A2、ペプチド/ヒスチジントランスポーター、コリントランスポーター、溶質キャリアファミリー31(銅トランスポーター類、メンバー1)、溶質キャリアファミリー13(ナトリウム依存性ジカルボン酸トランスポーター)、溶質キャリアファミリー2(促進性グルコーストランスポーター、メンバー13)、溶質キャリアファミリー12(塩化カリウムトランスポーター、メンバー5)、溶質キャリアファミリー6(神経伝達物質トランスポーター、セロトニン、メンバー4)、溶質キャリアファミリー2A2(グルコーストランスポーター、タイプ2)、カルボキシペプチダーゼD、ユビキチン特異的プロテアーゼ2、肥満細胞プロテアーゼ1、前蛋白質転換酵素サブチリシン/ケキシン、タイプ7、ラミニン受容体1(67kD、リボソーム蛋白質SA)、蛋白質チロシンホスファターゼ(非受容体タイプ1)、カルシウム感受性受容体、神経受容体蛋白質−チロシンキナーゼ、グルタミン酸受容体(向代謝性4)、核受容体サブファミリー4(グループA、メンバー2)、神経ペプチドY5受容体、蛋白質チロシンホスファターゼ(非受容体タイプ5)、インシュリン様成長因子1受容体、蛋白質チロシンホスファターゼ(受容体タイプ、ζポリペプチド)、核受容体サブファミリー4(グループA、メンバー3)、グルタミン酸受容体(向代謝性1)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(メンバー1a)、インシュリン受容体、γアミノ酪酸受容体関連蛋白質;蛋白質チロシンホスファターゼ、非受容体タイプ12、コリン作用性受容体(ニコチン性、βポリペプチド1)、嗅覚受容体(U131)、γアミノ酪酸受容体β2、グリア細胞系由来神経栄養因子ファミリー受容体α1、グリシン受容体β、グルタミン酸受容体相互作用蛋白質2、アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド1受容体1、アシアロ糖蛋白質受容体2、アデノシンA3受容体、線維芽細胞成長因子受容体1、核受容体結合因子2、プリン作動性受容体P2Y(G蛋白結合型1)、核受容体サブファミリー1(グループH、メンバー4)、ペルオキシソーム増殖因子活性化因子受容体(γ)、5ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)受容体4、レチノイドX受容体γ、インシュリン受容体関連受容体、推定N−アセチルトランスフェラーゼカメロ4、レシチン−レチノールアシルトランスフェラーゼ、フェニルエタノールアミンN−メチルトランスフェラーゼ、フコシルトランスフェラーゼ2、シアリルトランスフェラーゼ8(GT3α2,8−シアリルトランスフェラーゼ)C、UDP−グルクロノシルトランスフェラーゼ、α1,3−フコシルトランスフェラーゼFuc−T(マウスFut4に類似)、ジアシルグリセロールO−アシルトランスフェラーゼ1、転写3のシグナルトランスデューサーおよび活性化因子3、ISL1転写因子(LIM/ホメオドメイン)、およびオリゴデンドロサイト転写因子1からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記蛋白質が、CNCG,CACNA2D1、KCNC3、およびKCNB2からなる群より選択される遺伝子によってコードされる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
グルコース代謝異常または脂質代謝異常の処置のための治療標的を同定するための方法であって、該方法は、以下:
(a)第1の細胞サンプル中の単離されたmRNP複合体の少なくとも1種の成分のRNAレベルまたは蛋白質レベルを測定する工程;および
(b)工程(a)で決定されたRNAレベルまたは蛋白質レベルを、第2の細胞サンプルに由来する該成分のRNAレベルまたは蛋白質レベルと比較する工程を包含し、
該第1のサンプル中の該成分のレベルが、該第2のサンプル中の該成分のレベルと異なる場合、該成分、該成分をコードする核酸または該成分によりコードされる蛋白質が、該疾患の処置のための潜在的な治療標的である、方法。
【請求項19】
前記第1の細胞サンプルが、ある疾患を有する危険性があるか、またはある疾患を有する個体に由来し、前記第2の細胞サンプルが、正常または健常な個体に由来する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
疾患の処置に関連する治療標的を同定するための方法であって、該方法は、以下:
(a)グルコース代謝経路または脂質代謝経路の成分の発現を変化させる薬剤により処理されたサンプル中の、単離されたmRNP複合体の少なくとも1種の成分のRNAレベルまたは蛋白質レベルを測定する工程;および
(b)工程(a)で決定されたRNAレベルまたは蛋白質レベルを、未処理のコントロールサンプル中の該成分のRNAレベルまたは蛋白質レベルと比較する工程
を包含し、
該第1のサンプル中の該成分のレベルが、該第2のサンプル中の該成分のレベルと異なる場合、該成分、該成分をコードする核酸または該成分によりコードされる蛋白質が、該疾患の処置のための潜在的な治療標的である、方法。
【請求項21】
生理学的経路に関与する遺伝子または遺伝子産物を同定するための方法であって、該方法は、以下:
a.生理学的経路に関与する少なくとも1種の成分を含むmRNP複合体を単離する工程;
b.該単離されたmRNP複合体の少なくとも1種の追加成分を同定する工程
を包含し、
該追加成分はまた、生理学的経路にも関与する、方法。
【請求項22】
前記生理学的経路が、代謝経路または調節経路を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
細胞中の前記追加成分の発現を阻害し、代謝阻害の効果を決定することにより該追加成分の活性を確認する工程をさらに包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記阻害工程が、RNAi、アンチセンスRNA、リボザイム、およびPNAからなる群より選択される薬剤を用いて、前記追加成分の遺伝子発現を阻害することを包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
生理学的経路を変化させる薬剤を同定するための方法であって、該方法は、以下:
a.細胞サンプルを薬剤に供する工程;
b.該サンプルから、生理学的経路に関与する少なくとも1種の成分を含むmRNP複合体を単離する工程;
c.該単離されたmRNP複合体の少なくとも1種の成分のRNAレベルまたは蛋白質レベルを測定する工程;
d.工程(c)のRNAレベルまたは蛋白質レベルを、未処理のコントロールサンプルから単離される該成分のRNAレベルまたは蛋白質レベルと比較する工程
を包含し、
該未処理のコントロールサンプルと比較された、該薬剤で処理したサンプルの該成分の差異的発現は、該薬剤が該生理学的経路を調節することを示す、方法。
【請求項26】
前記薬剤が、前記生理学的経路の成分と相互作用するか、または該成分を調節する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記薬剤が、前記生理学的経路を阻害する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記薬剤が、前記生理学的経路を促進する、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記生理学的経路が、インシュリン産生経路または脂質生成経路である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
グルコース代謝を調節する蛋白質を同定するための方法であって、該方法は、以下:
a.グルコース代謝に関与する細胞の少なくとも1種の遺伝子産物の単離されたmRNP複合体における発現を測定する工程であって、該遺伝子産物が、RNA結合蛋白質、該RNA結合蛋白質に会合したmRNA、またはmRNP複合体会合蛋白質からなる群より選択される工程;
b.該細胞を、インシュリン、グルコース、インシュリン様成長因子−1(IGF−1)、β−アドレナリン作用性アゴニスト、グルコース、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、脂肪酸、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)リガンド、およびインシュリン様成長因子−2(IGF−2)からなる群より選択される薬剤により処理する工程;ならびに
c.処理後の該遺伝子産物の発現を測定する工程であって、処理前の該遺伝子産物の発現と比較された処理後の該遺伝子産物の発現における相違は、該蛋白質がグルコース代謝を調節することを示す、工程
を包含する、方法。
【請求項31】
インシュリン産生を調節する薬剤を同定するための方法であって、該方法は、以下:
a.インシュリン産生に関与する細胞を、少なくとも1種の蛋白質に結合し得る核酸に接触させる工程であって、該蛋白質は、プレプロインシュリンmRNAの3’非翻訳領域または5’非翻訳領域に結合し得る、工程;
b.該核酸を該蛋白質から分離する工程;および
c.該蛋白質を同定する工程
を包含する、方法。
【請求項32】
前記蛋白質が、5’−gaauaaaaccuuugaaagagcacuac−3’、5’−cccaccacuacccuguccaccccucugcaaug−3’、および5’−agccctaagtgaccagctacagtcggaaaccatcagcaagcaggtcattgttccaac−3’からなる群より選択される配列を含む核酸に結合する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
グルコース代謝または脂質代謝の少なくとも1つに関連するmRNP複合体であって、該mRNP複合体は、ポリピリミジントラクト結合(PTB)蛋白質、およびポリピリミジントラクト結合蛋白質に会合した少なくとも1種のmRNAを含む、mRNP複合体。
【請求項34】
mRNP複合体の成分を同定するための方法であって、該方法は、以下:
(a)細胞サンプルに、RNA結合蛋白質の発現を阻害する核酸をトランスフェクトする工程;
(b)該細胞サンプルおよびコントロールサンプルから全RNAを単離する工程;
(c)該コントロールサンプルと比較して該核酸でトランスフェクトしたサンプルの発現が変化したRNAを同定する工程
を包含する、方法。
【請求項35】
前記疾患が、グルコース代謝異常または脂質代謝異常に関連する、請求項1、7、18および20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記生理学的経路が、グルコース代謝経路または脂質代謝経路を含む、請求項21または25に記載の方法。
【請求項37】
前記測定する工程および前記比較する工程の少なくとも1つが、アレイの使用を含む、請求項1、17、20,25および30のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図13−3】
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【図13−4】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図14−3】
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【図14−4】
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【図14−5】
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【図14−6】
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【図14−7】
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【図14−8】
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【図14−9】
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【図14−10】
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【図14−11】
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【図14−12】
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【図14−13】
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【図14−14】
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【図14−15】
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【図14−16】
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【図14−17】
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【図14−18】
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【図14−19】
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【図14−20】
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【図14−21】
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【図14−22】
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【図14−23】
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【図15】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【図17−1】
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【図17−2】
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【図17−3】
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【図18−1】
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【図18−2】
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【図19−1】
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【図19−2】
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【図19−3】
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【図19−4】
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【図20−1】
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【図20−2】
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【図21−1】
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【図21−2】
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【図22−1】
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【図22−2】
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【図22−3】
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【図22−4】
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【図23−1】
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【図23−2】
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【図23−3】
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【図23−4】
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【図23−5】
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【図23−6】
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【図23−7】
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【図23−8】
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【図23−9】
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【図23−10】
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【図23−11】
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【図23−12】
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【図23−13】
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【図23−14】
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【図23−15】
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【図23−16】
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【図23−17】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27−1】
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【図27−2】
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【図27−3】
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【図27−4】
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【図27−5】
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【図27−6】
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【図28】
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【公表番号】特表2006−524056(P2006−524056A)
【公表日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509775(P2006−509775)
【出願日】平成16年4月7日(2004.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/010686
【国際公開番号】WO2004/092740
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(505211433)リボノミックス, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】