説明

グルタミン酸N,N−二酢酸キレート剤の被覆粒子

粒子および被覆を含む被覆粒子の調製方法[ここで、該粒子は、グルタミン酸N,N−二酢酸または式HnYm−GLDAであるその(部分)塩(式中、Yはナトリウム、カリウム、リチウムおよびこれらの混合物の群から選択されるカチオンであり、n+m=4である)を含み、該粒子はグルタミン酸N,N−二酢酸またはその部分塩を含み4〜11のpHを有する溶液から作製され、その後または同時に、HnYm−GLDA(式中、nは0.1〜3.2であり、mは0.8〜3.9である)の粒子上または中間体粒子に被覆が適用される]、該方法によって得ることのできる被覆粒子、ならびにその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式COOH−CH(−CH−CH−COOH)−N−(CH−COOH)のキレート剤であるグルタミン酸N,N−二酢酸(GLDAと略記される)の被覆粒子(またはその塩)、この粒子の製造方法、その方法のための中間粒子、およびこの被覆粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
洗剤市場は、現在、重要な変化を受けている。環境保全上および規制上の理由のため、洗剤調合物中での高濃度のリン酸塩の使用は、すべて禁止される予定であるか少なくとも大きく削減されるに相違ない。洗剤製品の調合業者は、リン酸塩化合物を置き換えるための代替物を見出さなければならず、最も有望な代替物はGLDAなどの生分解性キレート剤である。このようなキレート剤は、5%〜60%の濃度で使用される。多くの洗剤調合物は、典型的にはポリマーまたはホスホン酸塩であるコビルダー(co-builder)を含む。これらのコビルダーは、製剤中に1%〜50%の濃度で存在する。
【0003】
粉末またはタブレットの洗剤調合物では、固形の原材料が調合業者に求められる。例えば、自動食器洗浄機(ADW)への利用では、原材料は、調合物のタブレット化および固体の取扱いを改善するために顆粒形態にあるべきである。これらの顆粒は、典型的には、100〜3,000ミクロンからなる大きさを有する。入手可能なグルタミン酸N,N−二酢酸(GLDA)の通常の形態は、35%〜50%の活性成分を含む液体である。この物質を乾燥した後の粉末または顆粒は、特に非晶質状態で得られた場合、ADW調合業者にとって容認できない程の吸湿性を示す。さらに、造粒工程から得られる顆粒は脆く、そのため求められる大きさまで成長するのが容易でなく、その結果、加工処理が遅くかつ多くの微粉を生じる。加えて、粉末または顆粒のいずれの形態にせよ、(非晶質の)キレート剤GLDAは吸湿性を示し材料を粘着性にさせ、そのため貯蔵、取扱い、および製造上の諸問題を招く。粒子の流動特性は、多くの方法において決定的に重要である。粒子自体の製造中に、それらの粒子は、例えば流動床中で互いに円滑に流動しなければならない。次いで、それらの粒子は、貯蔵用および輸送用容器中に首尾よく移送されなければならない。最終的にそれらの粒子は、貯蔵容器から再び移送され、粉末またはタブレット製造設備中に供給されなければならない。流動の問題はいくつかの原因により生じる。キレート剤の場合、不十分な流動は、低いガラス転移温度、粘着性、湿潤性、小さすぎる粒子、および多面体性不規則形状の粒子の物理的引っ掛かりのためである場合がある。
【0004】
GLDAは、ADW市場に明確に進出し、強力で環境に配慮したキレートが必要とされるその他多くの分野に進出する可能性がある。用語「環境に配慮した(green)」は、本明細書中で、高度に再生可能な炭素成分、環境にやさしい持続可能な製造方法、および/または明確な生分解性評価を備えた材料を意味する。洗剤調合物中で使用されるトリポリリン酸ナトリウム(STPP)およびニトリロ三酢酸(NTA)などの最新技術のビルダーは共造粒または被覆の工程を必要としないが、噴霧乾燥される固形GLDAは、湿りやすく粉末性で粘着性の特性のため、共造粒または被覆することが非常に望ましい。
【0005】
キレート剤と添加剤との単純な混合物は、当技術分野で公知である。このような混合物は、例えばEP884381中に開示されており、該文献は、特定比率のGLDA、アニオン性界面活性剤、カルボン酸単位を含むポリマーの塩、および結晶性アルミノケイ酸塩の混合物を開示している。EP1803801は、また、GLDAの混合物を開示している。この文献は、GLDAと、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレングリコール、およびこれらの誘導体からなる群から選択されるポリマーとの混合物を含む顆粒または粉末を論じている。
【0006】
しかしながら、GLDAおよびその他の添加剤を混合することは、キレート剤の吸湿挙動を低減する上でいかなる有益な効果もほとんど有さない。
【0007】
GLDAの吸湿特性を改善するには、粒子(該粒子はGLDAを含む)と被覆とを含む被覆粒子を作製するのがより有利であることが見出された。
【0008】
グルタミン酸N,N−二酢酸(この場合、GLDAは完全酸の形態であり、式COOX−CH(−CH−CH−COOX)−N−(CH−COOX)を有し、各Xが水素原子である)の被覆粒子を作製する場合、当技術分野で未だ認識されていない多くの不都合に直面する。その不都合は、被覆しても安定な被覆粒子をほとんど生じないほど軟化点が低い材料によって引き起こされる。さらに、低い軟化点は噴霧造粒機の内部温度を制限し、結果として生産力を低下させる。一方、GLDAの完全塩(この場合、GLDAはテトラアニオンの形態であり、式COOX−CH(−CH−CH−COOX)−N−(CH−COOX)を有し、式中の各Xは水素原子ではなくアルカリ金属カチオンである)の被覆粒子を作製する場合、GLDAの完全塩が結合力をほとんど示さずとても脆いため被覆ステップに良好に供することができないという問題にも直面する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、GLDAの被覆粒子を作製する方法を提供することであり、ここで、キレート剤は、適切な被覆によって周囲環境から区別されるだけでなく、被覆粒子を作製する上での前記の問題が回避される。本発明のもう一つの目的は、安定なGLDA被覆粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの目的は本発明によって達成される。本発明は、粒子および被覆を含む被覆粒子の調製方法を提供し、ここで該粒子はグルタミン酸N,N−二酢酸または式HnYm−GLDAであるその(部分)塩(式中、Yはナトリウム、カリウム、リチウムおよびこれらの混合物からなる群から選択されるカチオンであり、n+m=4である)を含有し、該方法において粒子はグルタミン酸N,N−二酢酸またはその部分塩を含む溶液(1%水溶液として測定した場合に4〜11のpHを有する)から作製され、該被覆が、その後にまたは同時に粒子上に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来技術の非被覆粒子の状態を示す。
【図2】本発明の被覆粒子を示す。
【図3】非被覆GLDA顆粒の水分取込みを示す。
【図4】乾燥し酸性化されたGLDAの水分吸収(16℃、60%RHで貯蔵)を示す。
【図5】噴霧乾燥されたGLDAの水分吸収(16℃、60%RHで貯蔵)を示す。
【図6】時間の関数としての水分取込みを示す。
【図7】水分吸収[(GL−47−S/GL−Na−40−S[95:5])/Alcoguard4160(80:20) 共顆粒;16℃/60%RHで貯蔵]を示す。
【図8】16℃/60%RHで貯蔵された、非被覆およびMowiol3−85被覆されたGLDA顆粒の水分吸収を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書中で示すpHは、そうでないと述べない限り、反応物の1%水溶液を使用して測定した場合のpHである。しかしながら、このことは本発明の方法が1%水溶液中で実施される必要があることを意味するものではない。
【0013】
本発明の方法を高いpH(アルカリ性)で実施すると、多くの場合、被覆工程に付されるべきGLDA含有材料が脆く、さらに任意の予備形成された粒子が加工処理中に容易に細分化し微細粉末を与えるので、被覆自体が困難であることが見出された。噴霧造粒されるべき液体中での遊離苛性物質(NaOHまたはKOH)の存在量(影響量)は、良好な非脆性顆粒を製造するには明らかに多すぎる。同時に、本発明の方法を低いpH(酸性)で実施する場合、GDLAキレート剤の軟化点が低いためGLDA含有材料は粘着性であり、このこともまたGLDA含有材料を被覆することを困難にすることが分かった。さらに、GLDAは一般に高pHと比べて低pHで吸湿性がより低いことが分かった。それにもかかわらず、酸性化によりpHを下げることによって吸湿性を低下させることは、GLDA(出発)原料をより高価なものにし、経済的観点から望ましくないことも確認された。したがって本発明は、GLDAを被覆することによる吸湿性の低減、本発明の方法で使用されるGLDA溶液に対する適切なpH範囲の選択、および不必要なコストの回避において最良のバランスを示す。
【0014】
本発明は、さらに、粒子および被覆を含む被覆粒子を提供し、ここで、該粒子はグルタミン酸N,N−二酢酸またはその(部分)塩を含み、その際、被覆粒子は、それぞれ、GLDAアニオン1個あたり相互交換様式で利用可能な水素カチオンを0.1〜3.2個有する。
【0015】
好ましくは、本発明の粒子は、HnYm−GLDA(式中、mは0.8〜3.9であり、nは0.1〜3.2である)を有する。しかしながら、mおよびnの値が異なっている粒子も使用できる。このような事例において、粒子中または被覆中のその他の成分は、GLDAとの間でプロトンを交換する(すなわち、GLDAから受け取るか又はGLDAに提供する)のに利用可能であるべきであり、効果的にはGLDAアニオン1個あたり0.1〜3.2個の水素原子をいわゆる「相互交換様式で利用可能」にさせる。
【0016】
本発明はまた、上記の方法のための中間体を包含するものであり、この中間体は、本発明の方法の特徴および本方法により取得できる被覆粒子に対して構造的に寄与する。したがって、本発明は、グルタミン酸N,N−二酢酸または式HnYm−GLDAであるその部分塩(式中、mは0.8〜3.9であり、nは0.1〜3.2であり、n+m=4であり、Yはナトリウム、カリウム、リチウムおよびこれらの混合物からなる群から選択されるカチオンである)を含む粒子を提供する。
【0017】
WO2006/003434およびGB2415695などの文献には、ポリエチレングリコールおよびポリビニルピロリドンなどのポリマー性材料で被覆されたGLDA以外のキレート剤の粒子(例えば、メチルグリシンN,N−二酢酸の粒子)が記載されていることに注目できる。これらの文献はGLDAの被覆粒子に関するものではないという事実に加えて、キレート剤を特定のpH領域で被覆することに関しても開示も示唆もしていない。
【0018】
用語「被覆粒子」は、本出願中で使用する場合、コア(「粒子」)中にGLDAを含有し、少なくとも1種の他の材料(「被覆」)でカプセル化、被覆、マトリックス被覆、またはマトリックスカプセル化されており、その結果として該粒子が非被覆粒子とは異なる物理的特性を有するすべての粒子(例えば、粉末または顆粒)を指すことを意味する。該被覆粒子は、例えば、元の粒子と比較して、改変した色調、形状、体積、見掛け密度、反応性、耐久性、圧力感受性、熱感受性および光感受性を有することができる。
【0019】
GLDA含有粒子を取り囲む被覆は、例えば、粒子中のGLDAが水分を吸収することを十分に遅延させ、それによって、粒子が一緒に固着するかまたは固体塊を形成する速度を低減させるように作用する材料であり得る。同時に、この被覆層は、所望される最終利用においてGLDAまたはその他のキレート剤を十分速やかに放出するために、好ましくは、十分容易に水溶性であるべきである。さらに、いったん調合した粒子は、好ましくは、貯蔵中または輸送中に変化しない安定な粒径を有する。さらに、(構造化された)粒子中のGLDAまたはその他のキレート剤を、被覆することによってUV光線、水分および酸素の影響から保護することができる。被覆および粒子が大きく改善された貯蔵、取扱いおよび製造特性を示すことができるという事実のため、適合性のない粒子種間の化学反応を防止することができる。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、mは1.5〜3.7であり、最も好ましくは、mは2.5〜3.6である。
【0021】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、被覆は、GLDAを含む粒子上に適用することができ、この粒子は5〜10のpHを有するGLDA含有溶液から作製できる。
【0022】
一実施形態において、本発明の被覆粒子は、GLDAに加えて、別のキレート剤を含むことができることを理解されたい。一実施形態において、他のキレート剤は、EDDS(エチレンジアミンN,N’−二コハク酸)、IDS(イミノ二コハク酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、またはMGDA(メチルグリシン−N,N−二酢酸)、これらの塩の1種、またはこれらの化合物の2種以上の混合物の群から選択することができる。
【0023】
一実施形態において、被覆粒子中のGLDA量は、粒子の全重量を基準にして、少なくとも30wt%、より好ましくは少なくとも50wt%、さらにより好ましくは少なくとも60%、および95wt%までである。
【0024】
さらに、本発明の被覆粒子は、2種以上の被覆材料を含むことができると理解されたい。
【0025】
本発明の被覆は、前述の技術的効果を達成するのに好適であり、好ましい実施形態においてはスケール抑制添加剤、ブロッキング防止剤、保護コロイド、およびその他の水溶性ポリマーの群から選択することができる任意の材料でよい。
【0026】
好ましくは、本発明に従って被覆粒子を調製する方法において、GLDA含有粒子は実質的に乾燥した形態であり、ここで、実施的に乾燥とは、GLDA含有粒子が(全)固体を基準にして10wt%未満の、好ましくは6wt%未満の水分含有量を有することを意味する。
【0027】
本発明のGLDAの被覆粒子は、処理条件および材料の選択に応じていくつかの異なる形態を取ることができる。
【0028】
図面参照して、それらの図は、以下にさらに説明するようないくつかの粒子の例示を提供する。
図1A〜Bは、従来技術の被覆されていない粒子の状態を示す。
図1Aは、乾燥されたキレート剤に関する2つの異なるメディアン粒径を概略的に示す。例えば、5〜50μmの粒子を(例えば噴霧乾燥によって)作製でき、あるいは50〜500μmの粒子を(例えば流動床式凝集によって)作製できる。
図1Bは、より頑強な顆粒を提供するために構造形成剤を使用すると、(例えば、流動床式造粒によって)作出される顆粒の最大径を3,000μmまで増大できることを概略的に示す。
図2A〜Cは本発明の被覆粒子を示す。
図2Aは、本発明の被覆粒子を示し、ここで、小さな5〜50μmの粒子は、連続した被覆マトリックスで被覆され、マトリックス封入被覆は、多量の被覆剤と共に噴霧乾燥することによって取得される。図2Bは、より大きな顆粒の集合(または構造化された顆粒)が薄い被覆層で被覆されている本発明の粒子を示す。図2Cは、例えば、外側のポリマー被覆が、内側の構造化されたコアの周囲に作出されている、巨大な構造化顆粒の被覆を示す。
【0029】
被覆材料の力学的特性が図2に示す種々の被覆粒子と優先的につながり得ることは当業者に公知である。各粒子は、本発明の改善された特色を示すことができ、いくつかの異なる利点を示すことになる。例えば、図2Cで概略的に示された被覆粒子は、大きな粒径のため、最も小さな表面積を有し、それゆえ、特定の被覆 対 粒子の重量比率に関して最も厚い被覆層を有する。しかしながら、この被覆粒子は、頑強な内部構造化粒子を提供するために構造形成剤の使用を必要とする可能性がある。しかしながら、構造形成材料が余り望ましくない場合、図2Aに一層類似した被覆粒子が作出される可能性がある。
【0030】
本発明はまた、洗剤、農業、油田現場での利用、水処理、および本発明によって提供される多様な利益、すなわち結晶/スケールの溶解、他の方法では沈殿を生じ得る金属イオンの封鎖、およびスケールの成長抑制を必要とするか、またはそれら利益を受ける他の利用における被覆粒子の使用を包含する。本発明の好ましい一実施形態は、自動食器洗浄における被覆粒子の使用である。本発明の別の好ましい実施形態は、油井の仕上げ、刺激、および生産操業における被覆粒子の使用である。
【0031】
被覆するのに好適なスケール抑制添加剤は、クエン酸塩、ケイ酸塩、ポリカルボン酸塩または炭酸塩のような塩、例えばこれらの任意のアルカリ金属塩のような塩、あるいはスケール抑制ポリマーでよい。被覆するのに機能性であると見出されたスケール抑制ポリマーは種々の化学的形態を有することができ、具体的には合成、天然および混成型スケール抑制ポリマーから選択される。合成ポリマーは、良好な皮膜形成および湿気抵抗性ならびに良好なコビルダー特性および結晶成長抑制特性を付与するため、選択されたレベルのカルボキシル化、スルホン化、リン酸化、および疎水性を備える。天然ポリマーも同様に、良好なコビルダー特性および結晶成長抑制特性を付与するため、分子量調節、カルボキシル化、スルホン化、リン酸化、および疎水特性の組合せを備えて調製される。混成型ポリマーは、良好なコビルダー特性および結晶成長抑制特性を付与するため、天然および合成のモノマーおよびポリマーを併用する。
【0032】
スケール抑制ポリマーおよび/または塩を被覆として使用することの利点は、これらのポリマーが、大部分の洗剤調合物においてコビルダーとして使用できるかまたは既に使用されており、それゆえ、洗浄中に有益な効果を有する。したがって、本発明は、キレート剤に優れた製品形態を付与し、被覆材料もまたコビルダーまたは結晶成長抑制などのその他の利益を提供する。また、本発明のこのような被覆粒子は優れた流動特性を有する。
【0033】
被覆として適した保護コロイドは、一般には水溶性ポリマーであり、ここで水溶性とは、25℃で少なくとも1wt%、好ましくは少なくとも5wt%、より好ましくは少なくとも10wt%の水に対する溶解度を意味する。
【0034】
保護コロイドは、合成ポリマーでよいが、多糖またはペプチドなどのバイオポリマーでもよく、それらバイオポリマーのそれぞれは、天然起源でよく、あるいは調製することもできる。ポリマーは化学合成により修飾され得る。
【0035】
保護コロイドとして適したバイオポリマーおよびそれらの誘導体は、例えば、冷水溶解性の多糖および多糖エーテル(例えば、セルロースエーテルなど)、デンプンエーテル(アミロースおよび/またはアミロペクチンおよび/またはそれらの誘導体)、グアーエーテル、デキストリン、および/またはアルギン酸塩である。また、アニオン性、ノニオン性またはカチオン性のへテロ多糖などの合成多糖、とりわけ、キサンタンガム、ウェランガム、および/またはダイユータンガムを使用することができる。多糖は、限定する必要はないが、例えば、カルボキシメチル、カルボキシエチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、メチル、エチル、プロピル、硫酸基、リン酸基、および/または長鎖アルキル基で化学的に修飾されていてもよい。使用できる好ましいペプチドおよび/またはタンパク質は、例えば、ゼラチン、カゼインおよび/または大豆タンパク質である。とりわけ好ましいバイオポリマーは、デキストリン、デンプン、デンプンエーテル、カゼイン、大豆タンパク質、ゼラチン、ヒドロキシアルキルセルロース、および/またはアルキルヒドロキシアルキルセルロース(ここで、アルキル基は、同一でも異なっていてもよく、好ましくはC〜Cの基、とりわけメチル基、エチル基、n−プロピル基、および/またはi−プロピル基である)である。
【0036】
合成水溶性有機ポリマーは、1種または数種のポリマー、例えば、エチレン(コ)モノマーを含んでいてもよく2,000〜400,000の分子量を有する1種または複数のポリビニルピロリドンおよび/またはポリビニルアセタール;例えばアミノ基、カルボン酸基および/またはアルキル基で修飾されていてもよく好ましくは約70〜100モル%、特に約80〜98モル%の加水分解度、および4%水溶液中で好ましくは1〜100mPas、特に約3〜50mPas(20℃でDIN53015に従って測定して)のヘップラー粘度を有する完全または部分鹸化ポリビニルアルコールおよびそれらの誘導体;ならびにメラミンホルムアルデヒドスルホネート、ナフタレンホルムアルデヒドスルホネート、プロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシドの重合物(それらの共重合物およびブロック共重合物を含む)、スチレン−マレイン酸共重合物および/またはビニルエーテル−マレイン酸共重合物からなることができる。とりわけ好ましいのは、合成有機ポリマー、とりわけ、80〜98モル%の加水分解度、4%水溶液として1〜50mPasのヘップラー粘度を有する、修飾されていてもよい部分鹸化ポリビニルアルコール、および/またはポリビニルピロリドンである。
【0037】
1種または複数のセルロースエーテルの使用も好ましい。それらは、例えば、アルキルヒドロキシアルキルセルロースエーテルおよび/またはアルキルセルロースエーテルの群から選択することができるが、さらなる若干の修飾を含むこともできる。アルキルヒドロキシアルキルセルロースエーテルおよび/またはアルキルセルロースエーテルのアルキル基は、好ましくは、メチル、エチル、および/またはプロピル基であり、アルキルヒドロキシアルキルセルロースエーテルのヒドロキシアルキル基は、好ましくは、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチルおよび/またはヒドロキシプロピル基である。それらのブルックフィールド粘度は、2%水溶液として20℃、20rpmで測定すると、好ましくはほぼ100〜100,000mPas、特にほぼ1,000〜75,000mPas、特に好ましくはほぼ5,000〜50,000mPasである。
【0038】
使用できるポリアルキレングリコールは、好ましくはポリエチレングリコールである。一実施形態において、それは、600を超える、好ましくは1,000を超える、より好ましくは2,000を超える、最も好ましくは10,000を超える分子量を有する。
【0039】
本発明の一実施形態において、GLDA含有粒子は、適切な被覆によって周囲環境から区別されるだけでなく、さらに、GLDA含有粒子は適切な構造化剤(structurant)で構造化される。したがって、本発明の粒子は粒子の物理的強度を向上させる構造化剤を任意に含んでいてもよい。
【0040】
(構造化された)粒子は、多くの有用な機能を有し、粒子中のキレート剤成分を制御された条件下で周辺環境中に放出しなければならない用途と頻繁に関連する多くの様々な領域で使用できる。
【0041】
構造化剤としては、得られる粒子の強度に寄与し、かつ封鎖材料またはビルダーとしても機能するいくつかの塩および/または無機添加剤を挙げることができる。キレート剤のための構造化剤としての機能性であると見出されたビルダー塩は、クエン酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、および硫酸塩である。好ましくは、該材料のナトリウム塩が使用される。これらの塩の中で、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、およびケイ酸ナトリウムが、それらの機能性(例えば、スケール抑制用添加剤としての)のために好ましい。代替的に、シリカなどの無機(ナノ)粒子を使用することができる。
【0042】
一実施形態において、本発明の粒子は15〜90wt%のGLDAおよび任意選択でその他のキレート剤、0〜40wt%の構造化剤、ならびに5〜85wt%の被覆を含む。好ましい実施形態において、それらの粒子は、20〜80wt%のGLDAおよび任意選択でその他のキレート剤、0〜20wt%の構造化剤、ならびに20〜80wt%の被覆を含み、添加される成分の総量は100%までである。
【0043】
一実施形態において、本発明の粒子は100〜3,000ミクロン(μm)、好ましくは200〜2,000ミクロン、最も好ましくは500〜1,000ミクロンの粒径を有する。
【0044】
本発明の方法により粒子上に被覆を適用するのに適した方法は、例えば、「Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technology」16巻、438〜463頁、C.ThiesによるMicroencapsulation、John Wiley & Sons Inc.2001中に開示されおり、限定はされないが、次の方法が挙げられる:
「コア材料とシェル材料との完全混合物を加熱チャンバ中に噴霧し、そこで急速な脱溶媒和が行われる噴霧乾燥カプセル化法」。
【0045】
「加熱された気体(通常的には空気)の流れ中に懸濁した固形粒子の上に溶液またはホットメルト形態のシェル材料を噴霧することを含む流動床カプセル化技術」。いくつかの部類の流動床ユニットが存在するが、マイクロカプセルを製造するには、いわゆる頂部および底部噴霧式ユニットが非常によく使用される。頂部噴霧式ユニットにおいて、ホットメルトシェル材料は、固形粒子の流動床の頂部に噴霧される。続いて、被覆粒子が冷却され、固形シェルを備えた粒子をもたらす。この技術は、種々のカプセル化成分を調製するのに使用される。底部噴霧式またはWursterユニットにおいて、被覆材料は流動化された粒子のカラムの底部中に溶液として噴霧される。新たに被覆された粒子は、空気流によってノズルから被覆チャンバー中に運搬され、そこで溶媒の蒸発によって被覆が固化する。カラムの頂部または噴出孔で粒子は落ち着く。最終的に、それら粒子はチャンバーの底部に降下し、そこで空気流によって噴霧ノズルを通ってもう一度被覆チャンバー中に導かれる。このサイクルは、カプセルの所望のシェル厚が達成されるまで繰り返される。被覆の均一性および被覆粒子の最終径は、被覆調合物を適用するのに使用されるノズルによって強く影響される。この技術は、固形物、特に医薬(任意量)をカプセル化するのに定常的に使用される。この技術は不規則形状の粒子を含む広範な種類の粒子を被覆することができる。一般にこの技術は100〜150mmを超すカプセルをもたらすが、100mm未満の被覆粒子を作ることもできる。
【0046】
被覆法のさらに別の例において、被覆粒子は、例えば、E.Teunou、D.Pondelet「Batch and continuous fluid bed coating review and state of art」J.Food Eng.53(2002),325〜340に記載のような流動床被覆法を使用して、粒子上に被覆を噴霧することによって調製される。慣用的な流動床法において、流動床は、多孔性底部プレートを備えた槽である。多孔性プレートの下の空間は、このプレートを通して低圧空気を均一に供給し、流動化をもたらす。この方法は、次のステップを含む:
(a)粉末形態のカプセル化予定化合物を、該粉末の融点未満の空気入り口温度の空気で流動化するステップ;
(b)水ベースの被覆溶液を含む被覆液を、ノズルを介して粉末上に噴霧し、続いて高温を使用して流動床中で水を蒸発させるステップ。このことが、コア中に化合物を含む粒子上に被覆層を残す。
【0047】
本発明による中間粒子を調製するのに適した方法は、4〜11のpH(1%溶液として測定した場合)を有するGLDA含有溶液を調製するのと類似の方法、およびそれを乾燥することを包含する。
【0048】
4〜11のpHを有するGLDA溶液は、H−GLDAまたはY−GLDA(Yは前記と同様の意味を有する)を含む水溶液に塩基または酸を添加することによって、そのpHを制御するためにイオン交換樹脂を使用することによって、あるいはその内容が参照により本明細書に組み込まれるWO2008/065109中に開示のように、H−GLDAまたはY−GLDAの溶液を電池透析で(脱)酸性化することによって調製することができる。
【0049】
溶液を乾燥することは、当業者に公知の任意の乾燥方法によって、例えば、噴霧乾燥、流動床噴霧乾燥、流動床造粒を介して水を蒸発させることによって行うことができる。
【0050】
乾燥材料を、任意選択で、例えば、該材料が所望の形状を有する、すなわち所望の大きさのコア粒子の形態で存在するまで圧密および/または破砕することによってさらに処理することができる。
【0051】
圧密ステップは、例えば、適切には40〜200MPaの圧力、好ましくは50〜120MPaの圧力、最も好ましくは75〜100MPaの圧力下で粒子をタブレット化または凝集化するなど、外部からの力を適用することによって粒子を凝集させる任意の方法を含める。材料を圧密するのに使用される圧力は、タブレットの一軸圧密で印加される圧力(圧密される粒子混合物の特定の密度につながる)である。しかし、圧密は、適切には、ロールコンパクターのような別のコンパクターで行うことができる。このような場合、使用すべき圧力は、一軸圧密と同様の圧密密度をもたらす圧力である。破砕ステップは、それによって粒子の大きさを縮小する任意の方法を含み、破壊、破砕、または粉砕のような方法を含むと解釈される。
【0052】
本発明の好ましい実施形態において、被覆粒子を調製する方法は、その後に流動床被覆法で被覆される(共)顆粒の調製を包含する。(共)顆粒の調製は、GLDAを被覆材料および必要なら構造化剤と一緒に水に溶解することによって開始される。この混合物は、高温の噴霧乾燥チャンバー中に噴霧され、水の蒸発をもたらす。この方法で形成された粒子は、噴霧チャンバー中で再循環され、同時に、水をベースにした混合物のチャンバー中への噴霧が継続され、そのため、粒子は成長し、(共)顆粒が徐々に形成される。(共)顆粒の内部の組成勾配を、噴霧混合物を乾燥チャンバー中に噴霧する間に該噴霧混合物の組成を変えることによって変更することができる。このことは、粒子のコアが、より高いGLDA濃度で存在し、一方、粒子の外側が被覆材料に富むことができることを意味する。形成される粒子は、それが化合物、被覆材料、および必要なら構造化剤からなるので、共顆粒と記される。得られた共顆粒は、その後に流動床法で被覆される。この後者のステップで使用される被覆材料は、噴霧造粒ステップ中で使用されるのと同一の材料でもよいし、そうでなくてもよい。この方法で、粉末は暖かい空気で流動化され、水ベースの被覆溶液が粉末上に噴霧される。水が蒸発すると粒子の表面上に被覆が残る。被覆の量は、噴霧時間を操作することによって容易に調節できる。
【実施例】
【0053】
使用する材料は次の通りである:
・Dissolvine(登録商標)GL−Na−40−S(GLDA一ナトリウム塩の40wt%水溶液);
・Dissolvine(登録商標)GL−47−S(少量の遊離NaOH(±1wt%)を含む、GLDA四ナトリウム塩の47%水溶液)(双方とも、米国イリノイ州シカゴ、Akzo Nobel Functional Chemicals LLCから);
・Alcoguard(登録商標)4160(ナトリウム塩として25/64.5/4.5/6モルパーセントのマレイン酸/アクリル酸/メタクリル酸メチル/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のコポリマー)(米国イリノイ州シカゴ、Akzo Nobel Surface Chemicals LLCから)。
【実施例1】
【0054】
純粋なGLDA材料における水分取込みに対するpHの影響
40wt%溶液であるGL−Na−40−S(pH=3)を、約150℃の空気入り口温度を使用し、パイロット噴霧乾燥ユニット(GEA/NIRO Mobile Minor(商標)2000)で噴霧乾燥した。このような噴霧乾燥ユニット中で、小滴は急速に霧化され乾燥される。したがって、このような噴霧乾燥ユニット中の滞留時間は、流動床造粒機(滞留時間は数10分の桁である)に比べてはるかに短い(数10秒の桁)。このことが、微細で自由流動性の非粘着性粉末を与えた。まず、GL−47−S/GL−Na−40−Sを85/15の比率で混合すること(1%溶液で約10のpHを有する)によって、純粋なGLDA顆粒を作製した。混合物を、サイクロン、外部フィルターユニットおよびスクラバーを備えた流動床噴霧造粒機AGT中に噴霧して、100〜5,000ミクロンの粒径を有する安定で自由流動性の顆粒を得た。噴霧造粒工程の間、空気流量を700〜1,300m/時間で維持し、100〜250℃の空気入り口温度を使用した。
【0055】
前記の粉末および顆粒は、双方とも、水分吸収を測定するために、16℃、60%RHの気象チャンバ中に貯蔵した。
【0056】
粉末の重量を、開始時(t=0)および特定の時間段階後に測定した。重量増加を、次式を利用して%重量増加に再計算した:
時刻tにおける%重量増加=[重量(t=0)−重量(時刻t)]/[重量(t=0)]
【0057】
3種の粉末に関するそれらの測定結果を以下の表1および図3に示す。
表1および図3は、低pHのGLDA溶液から作製した純粋のGLDA粉末は、水分取込み速度が小さいことを明瞭に示している。
【表1】

【0058】
上の表は、水分取込みの観点から、高いpH(pH=10)よりも低いpH(pH=3)が好ましいことを示している。
【実施例2】
【0059】
共顆粒における水分取込みに対するpHの影響
造粒工程を介して2種の共顆粒を製造した。共顆粒の調製は、GLDA溶液にAlcoguard4160を混合した混合物を用いて開始した。この混合物を、高温の噴霧乾燥チャンバー中に噴霧し、水の蒸発をもたらした。この方法で形成された粒子を、噴霧チャンバー中で再循環し、同時に、水ベースの混合物のチャンバー中への噴霧を継続し、それにより粒子は成長して顆粒が徐々に形成された。混合物を、サイクロン、外部フィルターユニットおよびスクラバーを備えた流動床噴霧造粒機AGT型中に連続的に噴霧した。噴霧造粒工程の間、空気流量を700〜1,300m/時間で維持し、100〜250℃の空気入り口温度を使用した。このことが、自由流動性の顆粒をもたらした。
【0060】
その方法で次の共顆粒を製造した:
1)95:5の比率のGL−47−SおよびGL−Na−40−Sからなる1種の共顆粒;該共顆粒は、スケール抑制ポリマーAlcoguard(登録商標)4160を含めて共造粒された(該ポリマーは乾燥顆粒を基準にして全部で20wt%使用した)。これは、1wt%水溶液を調製した場合、約9.8のpHに相当する(nは約0.3)。
2)50:50の比率のGL−47−SおよびGL−Na−40−Sからなる第二の共顆粒;該共顆粒は、スケール抑制ポリマーAlcoguard(登録商標)4160を含めて共造粒された(該ポリマーは乾燥顆粒を基準にして全部で20wt%使用した)。これは、1wt%水溶液を調製した場合、約5のpHに相当する(nは約2.4)。
【0061】
生じた粉末を、16℃、60%相対湿度の気象チャンバ中に置いた。粉末の重量を、開始時(t=0)および特定の時間段階後に測定した。重量増加を、次式を利用して%重量増加に再計算した:
時刻tにおける%重量増加=[重量(t=0)−重量(時刻t)]/[重量(t=0)]。それらの測定結果を以下の表2に示す。
【表2】

共顆粒1の組成:(GL47−S/GL−Na−40−S[50:50])/Alcoguard4160(80:20)
共顆粒2の組成:(GL47−S/GL−Na−40−S[95:5])/Alcoguard4160(80:20)
【0062】
より具体的には、上表から次のものを計算することができる:
最初の6時間における水分吸収速度
pH=5 :3.92[%/hr]
pH=9.8:4.22[%/hr]
【0063】
上に示した結果は、低pHコアにおける水分取込み速度がより遅く、それゆえ別の材料を含めてその共顆粒を作製した後でさえも、低いpHはできる限り水分取込みを回避するために好ましいことを示している。
【実施例3】
【0064】
酸による酸性化を介するpH調節および水分取込みに対する影響
Dissolvine(登録商標)GL−47−Sを、2種の酸:96%硫酸(HSO)およびCO−ドライアイスを添加することによってより低いpHまで酸性化した。これら2種の酸を選択した理由は、それらがNaSOおよびNaCOを生成し、その双方とも食器洗浄およびランドリーの利用でフィラーおよび/またはコビルダーとして使用されている塩であることである。COは、水に溶解し、炭酸を形成することによってpHを低下させる。GLDA溶液自体に固形COドライアイスを添加することなどによって得られるpHは10であった。GLDA溶液自体に様々な量の硫酸を添加することによって得られたpHはそれぞれ7、4.2および3であった。pHを低下させた4種の溶液を、約150℃までの空気温度を採用するBuchiラボスケール噴霧乾燥機で噴霧乾燥した。これによって微細乾燥粉末が得られた。一旦粉末を製造したら、16℃、60%相対湿度の気象チャンバ中に置き、そのチャンバー中に配置したペトリ皿中に粉末の薄層を形成させた。粉末の重量を、開始時(t=0)および特定の時間段階後に測定した。重量増加を、次式を利用して%重量増加に再計算した:時刻tにおける%重量増加=[重量(t=0)−重量(時刻t)]/[重量(t=0)]。4種の粉末に関するそれらの測定結果を以下の表3および図4に示す。表および図は、双方とも、pHが低いほど、水分取込み速度が遅く、かつ最終的な絶対水分取込みが少ないことを明瞭に示している。
【表3】

【実施例4】
【0065】
電気化学的方法による酸性化を介するpH調節および水分取込みに対する影響
95容積%のDissolvine(登録商標)GL−47−Sおよび5容積%のDissolvine(登録商標)GL−Na−40−Sから構成されるGLDA溶液に若干の水を添加して約35wt%溶液を作製し、バイポーラ膜(BPM)法を使用してより低いpHへと酸性化した。BPM法では、バイポーラ膜の電気透析スタックが、WO2008/065109に記載のように使用される。このようなユニットは、バイポーラ膜、およびカチオン交換膜からなる。ナトリウムカチオンはカチオン交換膜を通して除去され、一方、電気化学反応を介して生成物の流れの中に水素が添加される。この方式では溶液は残留ナトリウムカチオンを存在させることなしに徐々に酸性化される。このことは「塩不含」の酸性化が起こったことを意味する。
【0066】
実験の構成は、BPMユニットを通して流体を再循環するための3つの容器からなる。温度は、ジャケット付反応器に加熱/冷却を適用することによって調節した。酸反応器は1Lの撹拌付ガラス製反応器であり、塩基および電解質のループには双方とも撹拌なしの1.5Lガラス製反応器を使用した。カソードで生じる水素ガスを爆発限界よりも十分下に希釈するため、電解質溶液中に気体噴霧器を経由して窒素を通した。
【0067】
反応器に前記の約35wt%GLDA溶液を仕込み、BPMスタック上での反応器内容物の再循環を開始した。GLDA溶液を40℃まで加熱したらすぐに、電流を印加した。スタックに対する電圧(V)は25Vまでに制限し、電流(I)は手動で最大で15Aまでに調節した。所望のpHに到達したら、BPMへの電流を最小にし、反応器およびBPMの双方中の内容物を集めた。
【0068】
該工程を、それぞれpHが7および3である2種の溶液が得られるように調節した。双方の溶液を、220℃の空気入り口温度および120〜130℃の間で変動する出口温度を利用するBuchiラボスケール噴霧乾燥機で噴霧乾燥した。これによって微細乾燥粉末が得られた。一旦粉末を製造したら、16℃、60%相対湿度の気象チャンバ中に置き、そのチャンバー中に配置したペトリ皿中にそれらの粉末の薄層を形成させた。粉末の重量を、開始時(t=0)および特定の時間段階後に測定した。重量増加を、次式を利用して%重量増加に再計算した:
時刻tにおける%重量増加=[重量(t=0)−重量(時刻t)]/[重量(t=0)]。
3種の粉末に関するそれらの測定結果を以下の表4および図5に示す。
表4および図5は双方とも、pHが低いほど水分取込み速度が遅く、かつ最終的な絶対水分取込みが少ないことを明示している。
【表4】

【実施例5】
【0069】
噴霧造粒法における顆粒形成に対するpHの影響
GL−47−SおよびGL−Na−40−Sの溶液を種々の比率で混合して、最終溶液のpHを調節した。使用した比率、ならびに対応するそれ自体のpHおよび1%溶液中で再測定したpHは次表の通りであった:
【表5】

【0070】
これらの混合物を、サイクロン、外部フィルターユニットおよびスクラバーを備えた流動床噴霧造粒機AGT中に噴霧した。噴霧造粒工程の間、空気流量を700〜1,300m/時間で維持し、100〜250℃の空気入り口温度を使用した。
【0071】
粒径が100〜5,000ミクロンの安定な自由流動性顆粒は、混合物2、3および4の場合にのみ得られることが見出された。pH3のGLDA溶液を使用した場合、得られた粉末は100℃未満〜80℃の入り口空気温度において既にひどく粘着性であったため、自由流動性顆粒を得ることができなかった。11を超えるpH(1%溶液中)を有する溶液から作製された材料は、被覆を試みるとバラバラになるといった、あまりにも脆く被覆することのできない粒子からなっていた。Dissolvine(登録商標)GL−47−S中に通常的に存在するすべての遊離の苛性物質を最小限に中和し、1%溶液で約11のpHを有し、そのため本発明の境界にある混合物2は、あまりに脆く明らかに被覆することのできない混合物1に比べて、取り扱いが既により有利であった。したがって、低いpHは低い水分取込み特性には好ましいが、物理的に安定な(共)顆粒を得ること、およびその後にこのような低pHの粒子を被覆することは、粘着性のため不可能であることが分かった。pHが高いGLDA材料を被覆することも、粒子の結合力の欠如およびそれによる強度の欠如のため困難である。
【実施例6】
【0072】
GLDA(Dissolnine(登録商標)GL−47−SおよびDissolvine(登録商標)GL−Na−40−S)をベースにして3種の顆粒を作製した。被覆粒子を調製するための方法は、その後に流動床被覆法で被覆される顆粒を調製することを包含する。顆粒の調製は、ある材料について下記で説明するように、その中に被覆材料が混合されたGLDA水溶液を用いて開始した。この混合物を、高温の噴霧乾燥チャンバー中に噴霧し、水の蒸発をもたらした。この方法で形成された粒子を、噴霧チャンバー中で再循環し、同時に、水をベースにした混合物のチャンバー中への噴霧を継続し、それにより粒子は成長して顆粒が徐々に形成された。続いて得られた顆粒を流動床法で被覆した。この工程では、粉末を暖かい空気で流動化し、水ベースの被覆溶液を粉末上に噴霧した。水は蒸発して粒子表面上に被覆が残った。噴霧時間を操作することによって被覆量を制御した。
【0073】
粉末Aは純粋なGLDAからなっていた。粉末AはGL−47−SおよびGL−Na−40−Sを85:15の比率で混合することによって形成した(1%溶液として測定されたpHは約9.8であることが見出された)。これは、nが0.3であるHnYm−GLDAを含む水溶液に相当する。この混合物を、サイクロン、外部フィルターユニットおよびスクラバーを備えた流動床噴霧造粒機AGT型中に連続的に噴霧した。噴霧造粒工程の間、空気流量を700〜1,300m/時間で維持し、100〜250℃の空気入り口温度を使用した。これにより自由流動性粉末が得られた。
【0074】
粉末Bの場合、噴霧混合物が95:5の比率のGL−47−SおよびGL−Na−40−Sから構成され、スケール防止ポリマーAlcoguard(登録商標)4160と混合されていること(ここで、全GLDAとAlcoguard(登録商標)4160との比率は80:20である)を除いて、粉末Aの場合と同様の手順を利用した。Alcoguard(登録商標)4160は酸性なので、1wt%に溶解された顆粒のpHは約9.8であり、これは、そのnが0.3であるHnYm−GLDAに相当する。粉末Bは、共顆粒を形成するための噴霧造粒を介して作製した(図1で表される粉末B)。粉末BはGLDAとAlcoguard(登録商標)4160との単純な混合物に相当する。
【0075】
粉末Cは、流動床において20%Alcoguard(登録商標)4160で被覆された、前記の純粋GLDA顆粒粉末Aの被覆粒子である。粉末Cは、粉末AをWurster装置および2流体ノズルを使用するGEA Aeromatic Strea−1ラボスケール流動床コーターにおいてAlcoguard(登録商標)4160溶液(約45wt%溶液)で被覆することによって製造した。Alcoguard(登録商標)4160溶液から水を蒸発させるのに使用した空気入り口温度は80℃であった。空気流量は、視覚的に一様な流動化が得られるように選択され、それは、GEA Aeromatic Strea−1での最大空気量の10〜80%に設定することを意味する。被覆の噴霧速度は、粒子上で一様な被覆が得られ、粒子の凝集を起こさず(すなわち、約0.5g/分)、図2Cで表される粒子構造をもたらすように選択した。噴霧被覆は、20wt%(乾基準)のAlcoguard(登録商標)4160がGLDA粒子上に被覆されるまで継続した。
【0076】
一旦粉末を製造したら、その粉末を16℃、60%相対湿度の気象チャンバ中に入れた。粉末の重量を開始時(t=0)および特定の時間段階後に測定した。重量増加を次式を利用して%重量増加に再計算した:時刻tにおける%重量増加=[重量(t=0)−重量(時刻t)]/[重量(t=0)]。3種の粉末に関するそれらの測定結果を以下の表6および図6に示す。
【表6】

【0077】
図6に最初の貯蔵6時間の結果を特に示す(これが、3種の粉末に関する水分取込み速度を最もよく例示しているため)。
【0078】
これらの結果は、いずれの場合も自由流動性粉末を得ることができることを示しており、適切なpHの噴霧溶液を使用することが物理的に安定な粒子をもたらすことを再度示している。
【0079】
粉末AおよびBの結果を比較する場合、表6および図6は、純粋な顆粒(粉末A)および混合物(粉末B)が、同一pH値の噴霧溶液において水分吸収に関して有意に異なる挙動を有さないことを示している。このことは、粉末Bで形成されるようなマトリックス型構造が水分吸収を有意に遅延しないことを指摘している。真のコア−シェル構造、すなわち被覆粒子(粉末C)を使用すると、これらの表および図から、この粒子が水分取込みを遅延することを明確に認めることができる。この効果は、適用された被覆層のため、ならびに、被覆が酸性であり、水または水分と接触した場合に粉末Bに比べて被覆粒子をわずかにより酸性にするという事実のためと考えられる。また、この実施例は、本発明により粒子を被覆することをなんら問題なく行うことができることを立証している。
【実施例7】
【0080】
GLDA共顆粒のポリビニルアルコールでの被覆
GLDAとAlcoguard(登録商標)4160との共顆粒を、噴霧造粒法で製造した。3種の顆粒を、GLDA(Dissolvine(登録商標)GL−47−SおよびDissolvine(登録商標)GL−Na−40−S)、スケール防止ポリマーAlcoguard(登録商標)4160、および水溶性ポリビニルアルコールMowiol3−85(クラレヨーロッパ社から入手可能)をベースにして作製した。被覆粒子を調製するための方法は、その後に流動床被覆法で被覆される顆粒を調製することを包含する。GL−47−SおよびGL−NA−40−Sを95:5の比率で混合し、それにAlcoguard(登録商標)4160(「4160」とも略記する)を添加した。ここで、GLDA/4160の比率は80:20であり、約9.8のpH、および約0.3のn値に相当した。この混合物を、高温の噴霧乾燥チャンバ中に噴霧し、水の蒸発をもたらした。この方式で形成された粒子を、噴霧チャンバ中で循環し、同時に水ベースのGLDA/4160混合物のチャンバ中への噴霧を継続し、それにより粒子は成長し、顆粒が徐々に形成された。形成された粒子はGLDAおよびスケール防止ポリマーからなるので、共顆粒と記される。
【0081】
GLDAと4160との混合物を、サイクロン、外部フィルターユニットおよびスクラバーを備えた流動床噴霧造粒機AGT型中に連続的に噴霧した。噴霧造粒工程の間、空気流を700〜1,300m/時間に維持し、100〜250℃の空気入り口温度を使用した。これによって「非被覆」と記述される自由流動性粉末が生じた。
【0082】
非被覆のGLDA/4160共顆粒を、続いて、流動床(GEA Aeromatic Strea−1)中、Wurster装置および2流体ノズルを使用し、16%Mowiol水溶液を使用して、Mowiol3−85で被覆した。使用した空気入り口温度は80℃であった。空気流量は、視覚的に一様な流動化が得られるように選択され、それは、GEA Aeromatic Strea−1での最大空気流量の10〜80%に設定することを意味する。Mowiol溶液の噴霧速度は、粒子上で一様な被覆が得られ、粒子の凝集を起こさず(すなわち、約0.5g/分)、一様なポリビニルアルコール皮膜で被覆された粒子をもたらすように選択した。噴霧されるMowiol3−85の量は、約10wt%〜約20wt%(乾基準)の間で変化させた。
【0083】
得られた粉末はすべて16℃、60%相対湿度で操作する気象チャンバ中に貯蔵した。水分吸収速度の尺度として、重量増加を時間の関数として測定した。重量増加を、次式を利用して%重量増加に再計算した:時刻tにおける%重量増加=[重量(t=0)−重量(時刻t)]/[重量(t=0)]。
【0084】
測定結果を、以下の表7および図7に示す。この表および図は、本発明により粒子を被覆することは、なんら問題なしに行うことができること、およびMowiol3−85の被覆層は水分吸収に対して遅延効果を付与し、かつMowiol3−85の濃度が高いほど水分取込みが遅いことを明瞭に示している。
【表7】

【実施例8】
【0085】
純粋GLDA顆粒のポリビニルアルコールでの被覆
GLDAの顆粒を噴霧造粒法で製造した。3種の顆粒を、GLDA(米国、イリノイ州シカゴ、Akzo Nobel Functional Chemicals LLCから入手可能なDissolvine(登録商標)GL−47−SおよびDissolvine(登録商標)GL−Na−40−S)、ならびに水溶性ポリビニルアルコールMowiol3−85(クラレヨーロッパ社から入手可能)をベースにして作製した。被覆粒子を調製するための方法は、その後に流動床被覆法で被覆される顆粒を調製することを包含する。GL−47−SおよびGL−Na−40−Sを85:15の比率(約9.8のpH、および約0.3のn値に相当)で混合した。この混合物を、高温の噴霧乾燥チャンバー中に噴霧し、水の蒸発をもたらした。この方式で形成された粒子を噴霧チャンバー中で再循環し、同時に水ベースのGLDA溶液のチャンバ中への噴霧を継続し、それにより粒子が成長して顆粒が徐々に形成された。
【0086】
GLDA溶液を、サイクロン、外部フィルターユニットおよびスクラバーを備えた流動床噴霧造粒機AGT型中に連続的に噴霧した。噴霧造粒工程の間、空気流を700〜1,300m/時間に維持し、100〜250℃の空気入り口温度を使用した。これにより、非被覆と記述される自由流動性粉末が生じた。
【0087】
続いて、非被覆GLDA顆粒を、流動床(GEA Aeromatic Strea−1)中、Wurster装置および2流体ノズルを使用し、16%Mowiol水溶液を使用して、Mowiol3−85で被覆した。使用した空気入り口温度は80℃であった。空気流量は、視覚的に一様な流動化が得られるように選択され、それは、GEA Aeromatic Strea−1での最大空気流量の10〜80%に設定することを意味する。Mowiol溶液の噴霧速度は、粒子上で一様な被覆が得られ、粒子の凝集を起こさず(すなわち、約0.5g/分)、一様なポリビニルアルコール皮膜で被覆された粒子をもたらすように選択した。噴霧されるMowiol3−85の量を約10wt%〜約20wt%(乾基準)の間で変化させた。
【0088】
得られた粉末はすべて16℃、60%相対湿度で操作する気象チャンバ中に貯蔵した。水分吸収速度の尺度として重量増加を時間の関数として測定した。重量増加を次式を利用して%重量増加に再計算した:時刻tにおける%重量増加=[重量(t=0)−重量(時刻t)]/[重量(t=0)]。
【0089】
それらの測定結果を以下の表8および図8に示す。この表および図は、本発明により粒子を被覆することがなんら問題なく行うことができること、およびMowiol3−85の被覆層は水分吸収に対して遅延効果を付与し、かつMowiol3−85の濃度が高いほど水分取込みが遅いことを明示している。
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子および被覆を含む被覆粒子の調製方法であって、前記粒子がグルタミン酸N,N−二酢酸または式HnYm−GLDAであるその(部分)塩(式中、Yはナトリウム、カリウム、リチウムおよびこれらの混合物の群から選択されるカチオンであり、n+m=4である)を含み、前記粒子が、グルタミン酸N,N−二酢酸またはその部分塩を含む1%水溶液として測定した場合に4〜11のpHを有する溶液から作製され、その後にまたは同時に、前記被覆が前記粒子上に適用される、方法。
【請求項2】
最初にGLDAを含む1%水溶液として測定した場合に4〜11のpHを有する溶液を調製することによってHnYm−GLDAを含む粒子を作製するステップ、その後、乾燥ステップを適用するステップ、次いで該粒子上に被覆を適用するステップを含む、請求項1に記載の被覆粒子の調製方法。
【請求項3】
粒子および被覆を含む被覆粒子であって、前記粒子がグルタミン酸N,N−二酢酸または式HnYm−GLDAであるその(部分)塩(式中、Yはナトリウム、カリウム、リチウムおよびこれらの混合物の群から選択されるカチオンであり、n+m=4である)を含み、前記被覆粒子中でGLDAアニオン1個あたり0.1〜3.2個の水素カチオンが利用可能である、被覆粒子。
【請求項4】
構造化剤を付加的に含む、請求項3に記載の被覆粒子。
【請求項5】
前記被覆が、スケール抑制添加剤、ブロッキング防止剤、保護コロイド、およびその他の水溶性ポリマーの群の化合物を含む、請求項3または4に記載の被覆粒子。
【請求項6】
洗剤、農業、油田現場での利用、または水処理での請求項3から5のいずれか一項に記載の被覆粒子の使用。
【請求項7】
グルタミン酸N,N−二酢酸または式HnYm−GLDAであるその部分塩(式中、mは0.8〜3.9であり、nは0.1〜3.2であり、n+m=4であり、Yはナトリウム、カリウム、リチウムおよびこれらの混合物の群から選択される)を含む粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−515595(P2013−515595A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545284(P2012−545284)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070328
【国際公開番号】WO2011/076769
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(509131443)アクゾ ノーベル ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フエンノートシャップ (26)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel Chemicals International B.V.
【住所又は居所原語表記】Stationsstraat 77, 3811 MH Amersfoort, Netherlands
【Fターム(参考)】