説明

グレーチングの連結構造

【課題】 既存グレーチングに適用でき、低コストで完璧な盗難防止を可能とし、更に車両走行によるハネ上げ防止にも役立つグレーチングの連結構造を提供する。
【解決手段】 相対向させた脚部3aの上端が天板部3bで連結され、両脚部の下端寄りに通孔を設けた連結クリップ3と、側面視円形のボルト頭部1bから両通孔に挿通可能なボルト軸1cが延設するボルト1と、該ボルト軸に螺合する雌ねじ部82を形成し且つ外周面に突起80bを設けた止めナット8と、該止めナットを収容できる筒部2bを有する有底筒体の底部2aに透孔20を形成した保護カバー2とを具備し、二つのグレーチング7の両端板71を跨ぐようにして連結クリップ3の両脚部3aを差し込み、該差し込みによって両端板71よりも下方へ突き出した一の通孔30aからボルト軸1cを挿通し、他の通孔30bから突出すボルト軸1cを透孔20に遊挿させて保護カバー2が介在する該ボルト軸に止めナット8を螺着し二つのグレーチングを連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は側溝等に配設されるグレーチングの連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
道路の側溝(雨水溝)等には排水を良くするためにグレーチングが用いられ、強度的な観点から一般に金属製グレーチングが多用されている。ところが、グレーチングが金属製であるため、金属価格の高騰とともに全国各地で盗難被害のニュースが報じられるようになってきている。グレーチングが盗難にあうと、上面開口の側溝に車両が落ち交通事故につながったり、子供の転落事故を招いたりするので、安全性の面からも盗難防止の要請が高まっている。図2,図3や図11,図12に示す汎用グレーチング7は、側溝の上面開口に被せ、単純に載置するだけの構造で、取外しが比較的容易であり、これまで特に盗難防止対策が難しいとされてきた。盗難防止を企図したグレーチングの連結構造はこれまでにもいくつか提案がなされている(例えば特許文献1〜3)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−336345公報
【特許文献2】特開平9−250165号公報
【特許文献3】実用新案登録第3133644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1〜3のいずれの発明もその構造から、時間さえかければグレーチングの取外しを可能にするものであった。その構造が一旦理解されると、手際よく取り外される危険性があった。さらに、特許文献1,3は汎用タイプを改良したグレーチングで、汎用品とはまた違うグレーチングを製作しなければならず厄介であった。汎用性でないため、適用範囲も制約される虞があった。
また、グレーチング上は道路や歩道に沿って設けられたり横切ったりすることが多く、グレーチング上を車両が走行するとグレーチングがハネ上がる不具合が指摘されていた。こうしたハネ上げ防止にも役立つグレーチングの連結構造も追求されているが、特許文献2の発明では対応不十分であった。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するもので、既存グレーチングに対しても適用でき、しかも、低コストで完璧な盗難防止を可能とし、さらに車両走行によるハネ上げ防止にも役立つグレーチングの連結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、相対向させた一対の脚部の上端が天板部で連結され、且つ両脚部の下端寄りにそれぞれ通孔を設けた連結クリップと、該通孔よりも大きな側面視円形のボルト頭部を形成する一方、両通孔に挿通可能にして且つ両脚部間距離より長いボルト軸が該ボルト頭部から延設するボルトと、該ボルト軸に螺合する雌ねじ部を形成し、且つ外周面に突起又は凹溝を設けて、一の前記通孔から他の通孔に挿通したボルト軸の先端部分に螺着される止めナットと、該止めナットを収容できる筒部を有する有底筒体の底部に、前記ボルト軸の軸径よりも大きな透孔を形成し、前記ボルト軸を一の通孔から他の通孔へ挿通して、他の通孔のある脚部とそのボルト軸の先端部分に螺着される前記止めナットとの間のボルト軸の部位で、該止めナットを収容するようにして該ボルト軸に前記透孔が遊挿される保護カバーと、を具備し、二つのグレーチングの両端板同士を近接又は当接させると共に、上方から該両端板を跨ぐようにして前記連結クリップの両脚部を差し込み、且つ該差し込みによって両端板よりも下方へ突き出した前記両脚部に係る一の通孔から他の通孔へ前記ボルト軸を挿通し、さらに他の通孔から突出すボルト軸を前記透孔に遊挿させて前記保護カバーが介在する該ボルト軸に、前記止めナットを螺着し二つの前記グレーチングを連結することを特徴とするグレーチングの連結構造にある。
請求項2の発明たるグレーチングの連結構造は、請求項1で、筒内を前記ボルト軸が挿通できる筒状体にして、且つその筒長が一対の前記脚部間に納まるスペーサをさらに具備し、前記ボルト軸を前記一の通孔から該スペーサに遊挿して他の通孔へ挿通することを特徴とする。
請求項3の発明たるグレーチングの連結構造は、請求項2で、ボルト軸側のボルト頭部に角柱部分を突出形成する一方、該角柱部分が嵌合する前記一の通孔を形成し、この通孔への角柱部分の嵌挿により該ボルト軸が回動不能となるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のグレーチングの連結構造は、盗難防止対策が低コストで万全なものになり、しかも、グレーチング側の改良を要しないことから既存グレーチングに対しても適用でき、さらに車両走行によるハネ上げ防止にも役立つなど極めて優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係るグレーチングの連結構造について詳述する。
(1)実施形態1
図1〜図10は本発明のグレーチングの連結構造の一形態で、図1はその連結に使用する各構成部品の分解斜視図、図2は図1の各構成部品を用いたグレーチングの連結構造の平面図、図3は図2のVI-VI線矢視図、図4は図2の連結クリップ周りの部分斜視図、図5は図4の連結構造を構成する各部品の分解説明斜視図、図6は図2における連結部位の縦断面図、図7は図6とは別態様の連結部位の縦断面図、図8は図7の連結構造を構成する各部品の分解説明斜視図、図9は図1,図8とはまた別態様のグレーチングの連結に使用する各構成部品の分解斜視図、図10は図9の連結部品を用いた連結部位の縦断面図である。
【0009】
本グレーチングの連結構造は、ボルト1と連結クリップ3と止めナット8と保護カバー2とスペーサ4とを具備する(図1)。
【0010】
ボルト1は、連結クリップ3の通孔30よりも大きな側面視円形のボルト頭部1bを形成する一方、両通孔30,30に挿通可能にして、且つ連結クリップ3の両脚部間距離より長いボルト軸1cが該ボルト頭部から延設する金属製連結部品である。一の通孔30a縁にボルト頭部1bを当接して、ここから他の通孔30bへボルト軸1cを挿通し、さらに他の通孔30bから突出すボルト軸1cの先端部分181の雄ねじ部18に止めナット8が螺着されるが、この他の通孔30bから先端部分181までは雄ねじ部18の形成はない。
本実施形態のボルト頭部1bは、図3のごとく左側面視円形の半球状部14を形成し、スパナ,レンチ等の工具で掴んで回しても滑ってボルト1が回り難くする。側面視円形のボルト頭部1bは、図1の半球状部14の他、図11のような円板部13でもよい。さらに円筒体,円錐体,円錐台等などもよい。ボルト頭部1bが図1のような半球状部14等の側面視円形であると、パイプレンチ等の工具で回すにしても円形で滑り易く、掴みづらいので盗難対策に優れる。該ボルト頭部1bには、また図1ごとくボルト軸1c側の底面が中央部だけ突出し、角柱部分10が形成される。ここでの角柱部分10は寸胴の四角柱部とする。角柱部分10を設けると、ボルト1と止めナット8の螺着組付け時に、該角柱部分を連結クリップ3の通孔30に嵌挿させてボルト軸1cを回転不能にでき、ボルト1と止めナット8との組付け作業性を良くする。
ボルト軸1cは、軸部の先端部分に雄ねじ部18を形成する軸体で、半球状部14の在る側と反対の底面側たる角柱部分10に垂設する。ボルト軸1cの軸心をボルト頭部1bの底面11の中心に一致させ、且つボルト軸1cの軸径をボルト頭部1bの底面径よりも一回り小さくする。ここでは、図5のごとく角柱部分10の四角形に略内接する軸径のボルト軸1cとする。尚、本発明でいう「両通孔に挿通可能にして且つ両脚部間距離より長いボルト軸」の長さは、角柱部分10を含めた長さとする。
【0011】
連結クリップ3は、相対向させた一対の脚部3aの上端が天板部3bで連結され、且つ両脚部3aの下端寄りにそれぞれ通孔30を設けた連結部品である。板面を相対向させた一対の板状脚部3aの上端が天板部3bで連結され、且つ両脚部3aの下端寄りにそれぞれ通孔30が対向するように設けられる。本実施形態の連結クリップ3は金属製帯板の加工品で、板面を対向させた一対の板状脚部3aの上端を天板部3bで連結して側面視略コ字形の板状体とする。通孔30はボルト頭部1b側の一の通孔30aをほぼ角形孔302にし、ボルト頭部1bのボルト軸1c側に突出形成する角柱部分10が嵌合する大きさにする。この通孔30aへの角柱部分10の嵌挿により、ボルト軸1cが回動不能となるよう設定される。他の通孔30b(止めナット8側通孔30)はボルト軸1cが挿通できる円孔とする。
連結クリップ3は、側面視略コ字形としたが、例えば両脚部3aの下端部間距離を狭めた側面視略Ω形の板状連結クリップ(図示省略)としてもよい。側面視略Ω形の板状連結クリップ3で、クリップの弾発力を利用して両脚部3aの下端開口を広げ、二つのグレーチング7A,7Bの両端板71を跨いで両脚部3aを差し込めるようにする。連結クリップ3とグレーチング7との密着度を高めることができより好ましくなる。
【0012】
止めナット8は、ボルト軸1cに螺合する雌ねじ部82を形成し、且つ外周面に突起80b又は凹溝を設けて、一の前記通孔30a(ボルト頭側)から他の通孔30(止めナット8側)に挿通したボルト軸1cの先端部分に螺着される締め付け部品である。ここでの止めナット8は、前記ボルト軸1cに螺合する雌ねじ部82を形成し、且つその外周側面にリブ状突起80bを設けて、外形が図1,図4のような異形体とする。止めナット8は、図1のごとくナット本体80の本体部分が汎用ナットの六角柱(六角形)の外形と違って円柱形とし、該ナット本体の側面部分80aに水平外方向に延びるリブ状突起80bを突設する。突起80bは平面視で本体側面部分80aから外方へ凸状部を突出形成する。各凸状部形状は同じでなく、不揃いとする。本実施形態の止めナット8は、図示のごとく多数設けた凸状部の突起80bのうち、一個だけ他のものよりも大きな凸状部の突起80bにして不揃いにする。この不揃いの凸状部に合致する専用治具でないと取外し不能にするためである。突起80bは、平面視でナット本体80の中心軸を中心にして、側面部分80aから放射線状に複数設けられる。突起80bがあるナット本体80の領域では、垂直方向ほぼ等断面形状になっている。図4のように、専用治具mを止めナット8に深く且つ十分に嵌合させ、専用治具mによる止めナット8の取付け取外しを円滑にするためである。止めナット8が保護カバー2(後述)に収容されていても、ソケット形専用治具mを用いて止めナット8の取付け,取外しできる。突起80bの形成、さらに止めナット8を取り囲む保護カバー2によって市販の汎用レンチは使用不可となる。該突起80bが設けられた異形体に嵌合するソケット形専用治具mだけが止めナット8の取付けや取外しができる。
【0013】
前記突起80bは図1〜図6のごとくナット本体80の側面部分80aから放射線状にいくつも形成されることによって、突起80bへの専用治具mの係止が強化されるが、該突起80bの大きさ,形状,個数等を適宜変えてもよい。
図示を省略するが、図6のボルト軸1cへの止めナット螺着時に、ボルト軸1cと止めナット8との間にスプリングワッシャを介在させると、ボルトと止めナット8の螺着締結が強化されより好ましくなる。
【0014】
保護カバー2は、前記止めナット8を収容できる筒部2bを有する有底筒体の底部2aに、前記ボルト軸1cの軸径よりも大きな透孔20を形成した金属製盗難防止用カバーである。ボルト軸1cを一の通孔30から他の通孔30へ挿通して、他の通孔30のある脚部3aとそのボルト軸1cの先端部分に螺着される止めナット8との間のボルト軸1cの部位で、該ボルト軸1cにその透孔20が遊挿されて、保護カバー2が止めナット8を囲い、これを収容する。保護カバー2の筒部2bは、円筒体にして、その筒長を止めナット8の高さに略等しくする(図6)。ここで、筒部2bで止めナット8の全てを収容する必要はない。止めナット8の過半部以上を収容できれば、本発明でいう「止めナットを収容できる筒部」とみなす。図6の側面視状態で、止めナット8の過半部以上が筒部2bによって収容されれば、パイプレンチ等で止めナット8を挟持して該止めナットを弛めることは困難になり、本発明の盗難防止効果が得られるからである。底部2aの中央に設ける透孔20は、止めナット8の外径よりも小さな円孔で、ボルト軸1cに遊挿されて止めナット8が螺着されれば、保護カバー2は止めナット8側から抜け出ないようになっている。
図5のごとく、二つのグレーチング7A,7Bの両端板同士71,71を近接(又は当接)させ、上方から該両端板を跨ぐようにして連結クリップ3の両脚部3aを差し込み、この差し込みによって両端板71よりも下方へ突き出した両脚部3aに係る一の通孔30aから他の通孔30bへボルト軸1cを挿通し、該ボルト軸の先端部分181に止めナット8が螺着されるが、該止めナットの螺着に先立ち、ボルト軸1cに保護カバー2の透孔20が遊挿される。一の通孔30aから他の通孔30bへボルト軸1cを挿通し、さらに他の通孔30bから突出すボルト軸1cを保護カバー2の透孔20に遊挿させて、保護カバー2が介在する該ボルト軸1cに止めナット8が螺着される。保護カバー2はボルト軸1cに対し遊嵌状態にあり、ボルト軸1cに止めナット8を螺着締結した後も、保護カバー2がボルト軸1c,止めナット8に対し回動自在に取付けられる。止めナット8をボルト1に螺着締結しても、雄ねじ部18がボルト1の先端部分181にしかないため、保護カバー2が止めナット8で締め付けられない。前記スプリングワッシャを設けた場合、保護カバー2が該スプリングワッシャに対しても回動自在に取付けられる。
【0015】
スペーサ4は筒内41を前記ボルト軸1cが挿通できる筒状体にして、且つその筒長が一対の前記脚部3a間に納まる金属製品である。グレーチングの連結構造の組付け時には、ボルト軸1cを一の通孔30から該スペーサに遊挿して他の通孔30へ挿通する。本実施形態のスペーサ4の筒長は、前記両脚部3a間の距離よりも若干短くする。ボルト1のボルト軸1cが前記一の脚部3aの通孔30から該スペーサ4の筒内41に遊挿し、さらに他の脚部3aの通孔30へ挿通し、挿通後のボルト軸1cに保護カバー2の透孔20が遊挿され、最後に止めナット8が螺着される。ボルト軸1cに止めナット8を螺着締結した図6で、スペーサ4が両脚部3aによって挟着固定される状態下、連結クリップ3が取付け前の側面視形状をほぼ保てるよう、スペーサ4の筒長が決定される。ボルト1と止めナット8の螺着締結で、ともすれば透孔20同士が近づき、側面視コ形の変形し易い連結クリップ3にあって、スペーサ4の存在で変形を免れる。連結クリップ3が変形しなくなるので、その板厚も薄くできる。
【0016】
本グレーチングの取付け構造へと導くには、さらに図4のようなソケット形専用治具を必要とする。専用治具mは、止めナット8の異形体の外形と略同形の雌形嵌合部mを形成する。前記凹溝を形成した止めナット8については、該凹溝に嵌合する雄形嵌合部を形成する。そして、治具本体mの上端外面部には、止めナット8への嵌合後に該専用治具mを作動させることのできる汎用レンチとの係合部mが設けられる。図4の専用治具mは六角形レンチに対応する係合部mを設けたものである。
【0017】
次に、前記ボルト1と保護カバー2と連結クリップ3とスペーサ4と止めナット8とを用いた本グレーチングの連結構造について説明する。
ここで用いるグレーチング7は図2〜図6ごとくの汎用グレーチングである。全体形状が規格化された長方形盤状をなし、主部材72と連結材73と側板70と端板71とを備える金属製グレーチングとする。多数の金属製帯板からなる主部材72とこれに直交する連結材73とで格子状に形成して、その両側面を側面視L形の側板70で囲む(図3)。主部材72の両端を端板71として、直方形盤とする。連結材73は通称クロスバーとも呼ばれ、金属製棒状材を捩ったツイスト棒からなる。連結材73は、主部材72をその帯幅方向を垂直起立させ且つ所定ピッチで複数配設した状態を確保した後、これらと直交するようにして所定間隔離して主部材72上面に載置される。その後、主部材72と連結材73とを電気圧接固定して格子状した長方形盤に組み立てられる。符号SLはスリットを示す。尚、主部材72は図3,図6のごとくIバーを用いるが、図4ではフラットバーで簡単図示する。グレーチング7は側溝9の上面開口に蓋をするように配設される(図3)。符号90は側溝9の底部、符号91は側溝9の側部、符号92は流水溝を示す。
側溝9上に連なる複数のグレーチング7にあって、隣り合う二つのグレーチングを次のように連結し、盗難防止対策を講じたグレーチングの連結構造とする。側溝9の上面開口に蓋をする複数のグレーチング7が縦一列に配設されるが、両端板71同士が近接又は当接する二つのグレーチング7A,7B毎に、前記ボルト1等の部品で連結していく。
【0018】
具体的には、図2〜図4のごとく隣り合う二つのグレーチング7A,7Bの両端板71を跨ぐようにして、上方から連結クリップ3の両脚部3aを差し込み、且つ該差し込みによって両端板71よりも下方へ突き出した両脚部3aに係る一の脚部3aの通孔30aから他の脚部3aの通孔30bへボルト1を挿通する。角柱部分10が図5に示すようにボルト側通孔30aの角形孔302に嵌挿する。そして、ボルト1を一の脚部3aの通孔30aから、スペーサ4に遊挿して、他の脚部3aの通孔30bへと挿通する。さらに、他の通孔30bから突出すボルト軸1cに保護カバー2の透孔20が遊挿された後、ボルト軸先端181の雄ねじ部18に止めナット8を螺着し、二つのグレーチング7A,7Bを連結する。他の通孔30bから突出すボルト軸1cを透孔20に遊挿させて、保護カバー2が介在する該ボルト軸1cに止めナット8を螺着締結した後も、該保護カバー2がボルト軸1c,止めナット8に対し回動自在に取付けられる。本実施形態は、二つのグレーチング7A,7Bが当接する両端板71に、ボルト1,止めナット8等を使った本グレーチングの連結構造を二カ所設けるが、勿論一カ所でもよい。ここでは、図2のグレーチング7A,7Bが当接(又は近接)する両端板71,71だけに図示するが、図2の左側のグレーチング7Aの左側端板71と、該グレーチング7Aに当接又は近接するその左側のグレーチング7の端板71の両端板同士にも、ボルト1等を使った本連結構造が適用される。側溝9に蓋をする複数のグレーチング7,7,…が本グレーチングの連結構造を採用して次々と一体化される。
【0019】
図1〜図6は、ボルト1と連結クリップ3と止めナット8と保護カバー2とスペーサ4を備えたグレーチングの連結構造であるが、これらに、さらに保持部材5を加えた図7,図8のような別態様のグレーチングの連結構造とすることができる。
図7,図8では、図1〜図6の止めナット8の基端縁に図示のごとくの鍔80dが設けられた止めナット8とする。保持部材5は円筒形筒部50の両筒口に外方に出っ張るフランジ部51,52を設けた部材である。ボルト1のボルト軸1cは図1〜図6のものよりも若干長く、また雄ねじ部18の部分も長くする。
【0020】
前記両脚部3aに係る一の通孔30aから他の通孔30bへボルト軸1cを挿通し、他の通孔30bから突出すボルト軸1cを保持部材5に遊挿し、さらに該保持部材を保護カバー2に遊挿して、該保持カバー及びこれの外側に該保持部材が遊挿されたボルト軸1cに止めナット8を螺着締結する。他の通孔30bから突き出すボルト軸1cを筒部内53,透孔20に遊挿させて、図7のごとく保持部材5,保護カバー2が介在するボルト軸1cに止めナット8を螺着し二つのグレーチング7A,7Bを連結する。
保持部材5に係る筒部50の内径はボルト軸1cのものよりも大きくし、ボルト軸1cが遊挿できるものとする。脚部3a側に配される一のフランジ部51は小さくし、保護カバー2の透孔20が通過できる大きさにする一方、止めナット8側に配される他のフランジ部52の大きさは、止めナット8の鍔80dの大きさに略等しくする。透孔20は止めナットの鍔80dの外径よりも小さな円孔で、保護カバー2は、ボルト軸1c,保持部材5に遊挿されて、ボルト1と止めナット8が螺着されれば、止めナット8側から抜け出ないようになっている。
図7で、止めナット8をボルト1の雄ねじ部18に螺着締結すると、保持部材5のフランジ部52と止めナット8の鍔80dが密着し、止めナット8の弛み防止に役立つ。保持部材5がガスケットの役割を担う。
【0021】
また図7,図8に代えて、図9,図10のような別態様のグレーチングの連結構造とすることができる。ここでのボルト1は、ボルト軸1cがボルト頭部1bから延びるが、雄ねじ部18の形成部分で径を一回り小さくする段付きボルトとする。雄ねじ部18の基端に段差面17が設けられる。両脚部3aに係る一の通孔30aから他の通孔30bへボルト軸1cを挿通し、さらに他の通孔30bから突出すボルト軸1cを透孔20に遊挿させて保護カバー2が介在する該ボルト軸に止めナット8を螺着するが、他の通孔30bから突出すボルト軸1cは雄ねじ部18のない無垢の軸部分がまず突き出していて、その先に雄ねじ部18が延びる。この無垢の部分のボルト軸1cに保護カバー2が回動自在に取付けられる。ボルト1と止めナット8の螺着で、図1〜図6の連結構造よりも、該段差面に止めナット8が面で密着するので螺着締結力を高めることができる。また、図7,図8の保持部材を要しないので、部品点数も減りより好ましくなる。尚、段差面17と止めナット8の間にはガスケットが適宜配設される。
【0022】
(2)実施形態2
本実施形態のグレーチングの連結構造は、図11,図12ごとくのグレーチングに適用する。
図11,図12のグレーチング7は図示のごとく嵩上げ部材79付きグレーチング7である。グレーチング7の側板70は、実施形態1と違ってフラットバーとする。ボルト頭部1bは図11のごとくの円板部13とする。側溝には嵩上げ部材79が載る側溝側部91に段差が設けられる。図12の側面断面図は図11のVI-VI線矢視図であり、実施形態1の図3のIV-IV線矢視図と違って、止めナット8が取付けられているグレーチング7Bの方から見た断面図である。図示を省略するが、図11,図12で嵩上げ部材79がない汎用グレーチング7に適用することも勿論可能である。斯かるグレーチングの連結構造の各構成は、実施形態1と同様でその説明を省く。図中、図1〜図8と同一符号は同一または相当部分を示す。
【0023】
ところで、実施形態1,実施形態2では、角柱部分10が嵌合する一の通孔30aを図1,図5のような角形孔302としたが、通孔30は角形孔302に限定されない。一の通孔30たるボルト頭側通孔30aは、該通孔30への角柱部分10の嵌挿により、止めナット8の螺合,締め付けで該ボルト軸1cが回動不能となればよい。例えば、図13、図14のごとくの縦長孔301であってもよい。図13,図14では、断面六角形や断面四角形した角柱部分10の横幅Wに該縦長孔301の横幅Wを合致させて、該角柱部分10の縦長孔301への挿入によって角柱部分10(すなわちボルト1)が連結クリップ3に対し回動不能となる縦長孔301が設けられる。角柱部分10の横幅Wに対し縦長孔301の横幅Wを若干大きくし、両者が嵌合するようにする。縦長孔301を縦長にするのは、角柱部分10の縦長孔301への挿入時に縦長方向に対してゆとりを確保して挿入し易くするためである。ここで、本発明でいう「通孔よりも大きな側面視円形のボルト頭部」とは、通孔よりもボルト頭部が大きい場合だけに限られず、通孔の横幅よりもボルト頭部の横幅、すなわち円径が大きくて、一の通孔から他の通孔へ前記ボルト軸を挿通したときに、ボルト頭部が一の通孔に係止される場合も、「通孔よりも大きな側面視円形のボルト頭部」とみなす。
【0024】
また、止めナット8は、図1〜図6のものや図9,図10のものと異なる図15,図16のような異形体の止めナット8とすることもできる。符号80cは突起80bの形成によって該突起80bと本体側面部分80aとでつくる凹所を示す。図15の止めナット8は雌ねじ部82がナット本体80を貫通する貫通タイプである。図16の止めナット8は図1〜図6の止めナット8の導入口に設けた鍔部80dを円筒部にし、該円筒部の内壁にも雌ねじ部82を形成する。雌ねじ部82が長くなる分、ボルト軸1cも長くでき、両者の螺着固定がより確かなものとなる。斯かる異形体の止めナット8を用いても、本発明のグレーチング1の取付構造になる。図示を省略するが、止めナット8は上蓋円筒体の筒内面に雌ねじ部82を形成し、その上蓋部上側に凹溝を形成する異形体でもよい。
【0025】
(3)効果
このように構成したグレーチングの連結構造は、側溝9の上面開口に縦一列に載置される複数のグレーチング7,7,…にあって、隣り合う二つのグレーチング7A,7Bをボルト1,保護カバー2,連結クリップ3,止めナット8等で連結一体化するので、盗難防止対策が万全となる。ボルト1,保護カバー2, 連結クリップ3,止めナット8,スペーサ4等で、グレーチング7,7,…を数珠つなぎに次々と連結することによって、盗人による側溝からのグレーチングの持ち出しは不可能になる。
連結クリップ3の天板部3bを上にして、上方から二つのグレーチング7A,7Bの両端板71を跨ぐようにして両脚部3aを差し込み、両端板71よりも下方へ突き出した両脚部3aの一方の通孔30から他の脚部3aの通孔30へボルト1を挿通し、さらに他の通孔30から突出すボルト軸1cを透孔20に遊挿させて保護カバー2が介在する該ボルト軸1cに止めナット8を螺着し、二つのグレーチングを連結する構造であるので、グレーチング7A,7Bが一旦連結されると、第三者が外せなくなる。グレーチング7を一個ずつ抜き取ることができなくなる。基本構造はボルト1と止めナット8との螺着結合であるが、ボルト1側の方は、パイプレンチ等の工具を用いて、ボルト頭部1bを挟んで回そうとしても鍔部1bが側面視円形であるため空滑りする。特に、ボルト頭部1bが図1のような半球部14を形成したり、図11のような円板部13の場合は工具で挟むこと自体も困難になり、より一層盗難に遭い難い構造になっている。他方の止めナット8側でも、該止めナット8を収容するようにしてボルト軸1cに透孔20が遊挿される保護カバー2が設けられるので、レンチ等の工具を用いて、保護カバー2を挟んで回しても空回りする。保護カバー2が円筒体となればパイプレンチ等の工具で挟んで回すのも困難であり、より一層盗難に遭い難い構造になる。
【0026】
かくのごとく、止めナット8をパイプレンチ等で掴もうとしても、保護カバー2が邪魔をして把持できない。保護カバー2は、その透孔20がボルト軸1cに遊挿され、ボルト1,止めナット8に対し回動自在に取り付けられているので、盗人が止めナット8を弛めるため保護カバー2を回しても空回りしてしまう。また、保護カバー2内に市販のソケットレンチを突っ込み、保護カバー2に収容された止めナット8に嵌合させようとしても、止めナット8の外周面に突起80b又は凹溝を設けてあり、その嵌合がうまくいかない。もともと盗難を逃れるために工夫された止めナット8であり、汎用工具で係合させることは困難である。止めナット8の外周面に設けた突起80b又は凹溝に合致する専用治具でないと取外しできないため、専用治具を所有しない盗人はグレーチングを一つ一つばらして盗み出すことができない。グレーチングの持ち出しは不可となる。
しかも、本グレーチングの連結構造を構成する各部品が既述のごとく比較的単純形状であり、低コストで完璧な盗難防止を可能にする。
【0027】
また、ボルト軸1c側のボルト頭部1bに角柱部分10を突出形成する一方、該角柱部分10が嵌合するボルト頭部側通孔30aを形成し、この通孔30aへの角柱部分10の嵌挿により該ボルト軸1cは回動できなくなる。従って、ボルト1側を工具で掴む必要がなくなり、ボルト1と止めナット8との組付けは頗る楽になる。ボルト1と止めナット8との組付けは、ボルト軸1cに止めナット8を螺合し、止めナット8側を回転させてボルト1に締め付けていけばよく簡単にできる。螺着締結が円滑に進む。また、ボルト頭部側通孔30aを縦長孔301にすると、バカ穴状に縦長に形成されるので、角柱部10の縦長孔301への挿入が容易になり、側溝現場で行われる作業を一層楽にする。図7,図8のごとくの保持部材5を設けると、ボルト1,止めナット8との螺着締結が強固になり、より確かなグレーチングの連結構造を実現する。
【0028】
加えて、ボルト1を一の脚部3aの通孔30aからスペーサ4に遊挿した後、他の脚部3aの通孔30bへ挿通し、保護カバー2を介して、該ボルト1と止めナット8とを螺着結合すると、その結合時にきつく締め付けてもスペーサ4が介在するので、変形し易い側面視コ字形等の連結クリップ3でも保形維持できる。また盗人が連結クリップ3の両脚部3aの下端部分を力で寄せ合わせて、連結クリップ3と止めナット8に弛みをつくって外そうと試みても、スペーサ4が内側から突っ張っているので困難となる。盗難防止対策上、極めて優れたグレーチングの連結構造になっている。
しかも、グレーチング7に対しては何の加工も必要としないので、特許文献1,3のような制約がない。既存のグレーチング7に対しても、後加工等を要せずに本グレーチングの連結構造を楽に採用できるので、頗る重宝な発明になっている。
【0029】
また一方で、ボルト1,止めナット8,保護カバー2,連結クリップ3を使った本グレーチングの連結構造が完成すると、グレーチング7上を車両走行時に発生し易いグレーチング7のハネ上げも解消する。本連結構造で結ばれた二つのグレーチング7A,7Bは、車両走行によって一方のグレーチング7が跳ね上がろうとしても、両端板71の下方で、ボルト1,スペーサ4が両端板71に対し交差するように配設されるので、これらがストッパになってロックするので、グレーチング7のハネ上げを完全阻止する。本グレーチングの連結構造はグレーチング7のハネ上げ防止にも極めて優れた効果を発揮する。事故防止に絶大な威力を発揮する。
【0030】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。ボルト1,止めナット8,連結クリップ3,スペーサ4,保護カバー2,取外し具6,グレーチング7等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施形態1のグレーチングの連結に使用する各構成部品の分解斜視図である。
【図2】図1の各構成部品を用いたグレーチングの連結構造の平面図である。
【図3】図2のVI-VI線矢視図である。
【図4】図2の連結クリップ周りの部分斜視図である。
【図5】図4の連結構造を構成する各部品の分解説明斜視図である。
【図6】図2における連結部位の縦断面図である。
【図7】図6とは別態様の連結部位の縦断面図である。
【図8】図7の連結構造を構成する各部品の分解説明斜視図である。
【図9】図1,図8とはまた別態様のグレーチングの連結に使用する各構成部品の分解斜視図である。
【図10】図9の連結部品を用いた連結部位の縦断面図である。
【図11】実施形態2で、嵩上げ部材付きグレーチングに適用したグレーチングの連結構造の平面図である。
【図12】図11のVI-VI線矢視図である。
【図13】実施形態1,2と異なるボルトと、別態様のボルト側通孔を形成した連結クリップの側面図である。
【図14】実施形態1,2と異なる別態様のボルト側通孔を形成した連結クリップの側面図である。
【図15】(イ)が実施形態1,2と異なる別態様の止めナットの斜視図、(ロ)がその平面図である。
【図16】(イ)が実施形態1,2、また図15と異なる別態様の止めナットの斜視図、(ロ)がその側面図、(ハ)が(ロ)の縦断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ボルト
1b ボルト頭部
1c ボルト軸
10 角柱部分
2 保護カバー
2a 底部
2b 筒部
20 透孔
3 連結クリップ
3a 脚部
3b 天板部
30 通孔
4 スペーサ
7,7A,7B グレーチング
71 端板
8 止めナット
80b 突起
82 雌ねじ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向させた一対の脚部の上端が天板部で連結され、且つ両脚部の下端寄りにそれぞれ通孔を設けた連結クリップと、
該通孔よりも大きな側面視円形のボルト頭部を形成する一方、両通孔に挿通可能にして且つ両脚部間距離より長いボルト軸が該ボルト頭部から延設するボルトと、
該ボルト軸に螺合する雌ねじ部を形成し、且つ外周面に突起又は凹溝を設けて、一の前記通孔から他の通孔に挿通したボルト軸の先端部分に螺着される止めナットと、
該止めナットを収容できる筒部を有する有底筒体の底部に、前記ボルト軸の軸径よりも大きな透孔を形成し、前記ボルト軸を一の通孔から他の通孔へ挿通して、他の通孔のある脚部とそのボルト軸の先端部分に螺着される前記止めナットとの間のボルト軸の部位で、該止めナットを収容するようにして該ボルト軸に前記透孔が遊挿される保護カバーと、を具備し、
二つのグレーチングの両端板同士を近接又は当接させると共に、上方から該両端板を跨ぐようにして前記連結クリップの両脚部を差し込み、且つ該差し込みによって両端板よりも下方へ突き出した前記両脚部に係る一の通孔から他の通孔へ前記ボルト軸を挿通し、さらに他の通孔から突出すボルト軸を前記透孔に遊挿させて前記保護カバーが介在する該ボルト軸に、前記止めナットを螺着し二つの前記グレーチングを連結することを特徴とするグレーチングの連結構造。
【請求項2】
筒内を前記ボルト軸が挿通できる筒状体にして、且つその筒長が一対の前記脚部間に納まるスペーサをさらに具備し、前記ボルト軸を前記一の通孔から該スペーサに遊挿して他の通孔へ挿通する請求項1記載のグレーチングの連結構造。
【請求項3】
前記ボルト軸側のボルト頭部に角柱部分を突出形成する一方、該角柱部分が嵌合する前記一の通孔を形成し、この通孔への角柱部分の嵌挿により該ボルト軸が回動不能となるようにした請求項2記載のグレーチングの連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−264068(P2009−264068A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117907(P2008−117907)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(599147218)東北岡島工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】