説明

グレーチング用盗難防止具

【課題】既存のグレーチングに対しても簡便にして低コストで盗難防止を可能にし、車両走行のハネ上げ防止にも役立つグレーチング用盗難防止具を提供する。
【解決手段】鉛直方向に配設される金属製板状主部(2)と、その上端部分(21)から外方へ張り出して上端部分(21)とで側面視コ字状板片部(3a)を形成し、コ字状開口部分(39)側をグレーチング(9)の端板上面(94a)に上方から嵌入し、板状主部(2)を吊設させるフック部(3)と、板状主部(2)の下端部分(25)で外方へ突出する板状の突片部(4)とを具備し、グレーチング端板(94)にフック部(3)を嵌入し、側溝ブロックの天板部(81)に設けられる開口(80)にグレーチング(9)で蓋をするのに伴い、板状主部(2)を開口(80)中央側へ反るよう弾性変形させて下降させ、突片部(4)が厚み壁(81b)を通過すると同時に、板状主部(2)が弾性復元して天板部(81)の裏面(81c)側へ突片部(4)が潜り込むようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変側溝等の側溝ブロックに係る天板部に在る平面視矩形開口へグレーチングで蓋をするそのグレーチング用盗難防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、平成23年5月26日付け日刊産業新聞に『道路側溝ふたのグレーチングが盗まれる被害が連続発生。…「本来、あるはずの溝ふたがないため、歩行者や車両が側溝に転落し、重大な事故に発展する恐れもある」(県警)。』の記事が掲載されるようになり、溝蓋すなわち金属製グレーチングの盗難が社会的問題になっている。
こうしたことから、これまでいくつかの対策発明が提案されている(例えば特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−97311号公報
【特許文献2】特開2009−228295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1,2等の発明は、新規にグレーチングを設置する場合に有効であっても、既存のグレーチングに適用するのが設置コスト,工事期間等から難しかった。特許文献2のごとく、上面開口のある可変側溝等の側溝ブロックへのグレーチングの取付構造にあっても、既存のグレーチングに対しては、第一に左右の両端板域に取付口を新たに設けねばならないこと、第二に該取付板にボルト軸を新たに設けねばならないこと、など対応困難であった。側溝ブロックの天板部に形成される平面視矩形開口に蓋をしている既存グレーチングは数多く存在し、これらのグレーチングに対し、簡便にして有効手だてを講じるグレーチング用盗難防止具はこれまで存在しなかった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するもので、新規グレーチングにとどまらず、可変側溝等の側溝ブロックの上面開口に蓋をする既存のグレーチングに対しても、簡便にして低コストで盗難防止を可能にし、さらに車両走行によるグレーチングのハネ上げ防止にも役立つグレーチング用盗難防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、鉛直方向に配設される縦長の金属製板状主部(2)と、該板状主部(2)の上端部分(21)からその板面に対し外方へ張り出して、該上端部分(21)とで側面視コ字状の板片部(3a)を形成し、そのコ字状開口部分(39)側を水平配設されるグレーチング(9)の端板上面(94a)に対向させて上方から嵌入し、該板状主部(2)をグレーチング(9)の端板(94)に吊設させるようにしたフック部(3)と、該板状主部(2)の下端部分(25)にて、該板状主部(2)の板面に対し外方へ突出する板状の突片部(4)と、を具備し、グレーチング(9)の端板(94)に前記フック部(3)を嵌入し、側溝ブロック(8)の天板部(81)に設けられる平面視矩形開口(80)にグレーチング(9)で蓋をするのに伴い、前記板状主部(2)を開口(80)中央側へ反るよう弾性変形させて、該開口(80)を形成する天板部(81)の厚み壁(81b)の下方向へ前記下端部分(25)の方から下降させ、前記突片部(4)が該厚み壁(81b)を通過すると同時に、前記板状主部(2)が弾性復元して、前記開口(80)周りの天板部(81)の裏面(81c)側へ該突片部(4)が潜り込むようにしたことを特徴とするグレーチング用盗難防止具にある。
請求項2の発明たるグレーチング用盗難防止具は、請求項1で、突片部(4)が、板片状にして、前記板状主部(2)の下端部分(25)で、該板状主部(2)の板面に対し前記フック部(3)の張り出し方向とは逆の外方水平に突出することを特徴とする。
請求項3の発明たるグレーチング用盗難防止具は、請求項2で、引っ掛け用の通孔(50)が形成された板片状にして、前記板状主部(2)の下端部分(25)又はその近くから前記突片部(4)の突出方向とは反対方向へ突出する引掛部(5)、をさらに具備し、且つグレーチング(9)の両端板(94)に前記フック部(3)を夫々嵌入し、側溝ブロック(8)の天板部(81)に設けられる平面視矩形開口(80)にグレーチング(9)で蓋をするのに伴い、少なくとも一方の前記板状主部(2)を開口(80)中央側へ反るよう弾性変形させて、該開口(80)を形成する天板部(81)の厚み壁(81b)の下方向へ前記下端部分(25)の方から下降させ、前記突片部(4)が該厚み壁(81b)を通過すると同時に、前記板状主部(2)が弾性復元して、前記開口(80)周りの天板部(81)の裏面(81c)側へ該突片部(4)が潜り込むようにしたことを特徴とする。請求項4の発明たるグレーチング用盗難防止具は、請求項3で、フック部(3)が、板片状にして、前記板状主部(2)の上端部分(21)と、該板状主部(2)の横幅(B1)よりも横幅(B2)を小さくして、その一側寄り上縁から外方へ張り出す水平張出部分(30)と該水平張出部分(30)の先端縁で屈曲し該板状主部(2)の板面に平行に下降する下降部分(31)とで、側面視コ字状の前記板片部(3a)を形成し、さらに、該下降部分(31)の下部側縁から板状主部(2)の他側方向へ延設してなる側方張出部分(33)と、該側方張出部分(33)の先端部分から前記下降部分(31)と離間させて上方に延びる上方延設部分(34)と、該上方延設部分(34)の上端縁で板状主部(2)側へ屈曲して該板状主部(2)の手前まで水平に延びる爪部分(35)と、を具備し、前記コ字状開口部分(39)側を水平配設されるグレーチング(9)の端板上面(94a)に対向させて上方から該フック部(3)を端板(94)に嵌入すると共に、該爪部分(35)側を下降傾斜させてグレーチング(9)の連結材(92)を潜らせた後、該フック部(3)で板状主部(2)を前記端板(94)に吊設させ、且つ下降部分(31)と上方延設部分(34)との間に該連結材(92)を配し、さらに爪部分(35)をグレーチング端板(94)の上面(94a)に載置させるようにしたことを特徴とする。請求項5の発明たるグレーチング用盗難防止具は、請求項4で、引掛部(5)の基端縁(55)を残して該引掛部(5)用板部の外周縁を切り離す細隙と、前記通孔(50)とを設けた一の金属製平板片から、プレス加工により、前記板状主部(2)、前記フック部(3)、前記突片部(4)、及び該引掛部(5)を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のグレーチング用盗難防止具は、側溝ブロックの開口に蓋をするグレーチングに対し、新規グレーチングは勿論、既存のグレーチングに対して、何の改造をすることなく簡単且つ低コストで、しかも迅速に取り付けることができて、対策が急がれる設置済みグレーチングの盗難防止効果、さらには車両走行に伴うグレーチングのハネ防止にも役立つなど多大な効を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のグレーチング用盗難防止具の一形態で、(イ)が上方から見たその斜視図、(ロ)が下方から見たその斜視図である。
【図2】(イ)が図1のグレーチング用盗難防止具の平面図、(ロ)がその正面図、(ハ)がその右側面図である。
【図3】(イ)が連結材を爪部分が潜る説明斜視図、(ロ)が(イ)の動作後、さらに爪部分をグレーチングの端板上面に載置させる説明斜視図である。
【図4】グレーチングの一の端板にフック部を嵌入した説明斜視図である。
【図5】グレーチングの両端板に盗難防止具を取付け、一方の突片部が開口周りの天板部の裏面下へ潜り込むようグレーチングを傾斜させた説明斜視図である。
【図6】図5の傾斜したグレーチングの上方側を下ろして、側溝ブロック開口に盗難防止具付きグレーチングで蓋をした説明斜視図である。
【図7】図5から図6に至る過程で、板状主部を開口中央側へ反るよう弾性変形させて、突片部が厚み壁の下方向へ移動する説明断面図である。
【図8】図7の移動後、突片部が厚み壁を通過して開口周りの天板部の裏面側へ潜り込んだ説明断面図である。
【図9】(イ)が端板に吊設した盗難防止具に治具を係止させた一部断面正面図、(ロ)が(イ)の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るグレーチング用盗難防止具について詳述する。
(1)実施形態1
図1〜図9は本発明のグレーチング用盗難防止具(以下、単に「盗難防止具」ともいう。)の一形態で、図1は(イ)が上方から見たその斜視図、(ロ)が下方から見たその斜視図、図2は(イ)が図1の盗難防止具の平面図、(ロ)がその正面図、(ハ)がその右側面図、図3は(イ)が爪部分側を下降傾斜させてグレーチングの連結材を潜らせる説明斜視図、(ロ)が(イ)の動作後、下降部分と上方延設部分との間に連結材を配し、爪部分をグレーチング端板に載置させた説明斜視図、図4〜図6はグレーチングの両端板にフック部を夫々嵌入し、突片部が天板部の裏面側へ潜り込むようにして、側溝ブロックの開口にグレーチングで蓋をする作業手順の説明斜視図、図7は図5から図6に至る過程で、板状主部を開口中央側へ反るよう弾性変形させて、突片部が天板部の厚み壁の下方向へ移動する説明断面図、図8は図7の動作後、突片部が天板部へ潜り込んだ説明断面図、図9は図8の状態から専用治具を使って天板部の裏面側へ潜り込んだ突片部をグレーチング側へ戻す説明図で、(イ)が盗難防止具に専用治具を係止させた一部断面正面図、(ロ)が(イ)の右側面図を示す。尚、主部材91には図7〜図9のようなIバーが用いられているが、他図での主部材91は簡略図示し、図3は盗難防止具の動きを判り易くするため、主部材91の図示を省略する。
【0010】
本盗難防止具1が適用される側溝ブロック8は、天板部81に平面視矩形開口80が形成されるコンクリート製公知品である。本実施形態は側溝ブロック8として図4〜図6ごとくのコンクリート製可変側溝を使用する。所定間隔を開けて対向起立する盤状側部82の上縁両端部が盤状天板部81で繋がり、且つ上面略中央にグレーチング9が被着される開口80が設けられた可変側溝である。側溝ブロック8が設置現場に配された後、図4で天板部81真下の下方底面側に、両側部82をつなぐ勾配付きコンクリート面(図示せず)を現場施工して、側溝流路uが形成される。側溝ブロック8は、両側部82の上半部が両外方へ張出す一方、上面開口80側から流路u内へ向け一段下がった両側部82に段差を設けて受部83とする。グレーチング9を受部83に載置することによって、開口80にグレーチング9で蓋ができるようになっている(図4,図6)。
【0011】
また、本盗難防止具1が適用されるグレーチング9は、例えば図4〜図9ごとくの金属製溝蓋である。全体形状が規格化された矩形盤状をなし、主部材91と連結材92と側板93と端板94とを備える公知品である。多数の金属製帯板からなる主部材91とこれに直交する連結材92とで格子状に形成して長方形盤のグレーチング9とする。
ここでの連結材92は、クロスバーとも呼ばれ、金属製棒状材を捩ったツイスト棒からなる。連結材92は、主部材91をその帯幅方向を起立させ且つ所定ピッチで複数配設した状態を確保した後、これらと直交するようにして所定間隔離して主部材91の上面に載置される。その後、主部材91と連結材92とを電気圧接で固定して格子状とし、両側横方向に側板93を固着して長方形盤のグレーチング本体9aに組み立てられる。主部材91の両端が端板94になり、端板94は主部材91と同形状である。グレーチング本体9aがそのままグレーチング9になる場合もあるが、本実施形態のグレーチング9は、グレーチング本体9aにさらに嵩上げ部材9bが固着される。グレーチング本体9aの下面に、両側板93に沿って角筒状の嵩上げ部材9bを一対固着する。符号90は主部材91と連結材92を格子状に配設することによってできるスリットを示す。
【0012】
盗難防止具1は、板状主部2とフック部3と突片部4と引掛部5とを具備する立体形の金属製板片体である。
板状主部2は鉛直方向に配設される縦長の矩形板部である。ここでの板状主部2は、引掛部5が抜き出た後の通孔50が図1,図2のごとく矩形の形で下端寄りに形成された縦長長方形部になっている。板状主部2の横幅B1は特に制限がないが、その縦長の長さLは、図8に示すごとく側溝ブロック8の天板部81に在る平面視矩形開口80を形成する天板部81の厚み壁81bの厚みWよりも若干長くする。尚、本発明で用いる鉛直方向とは、図4のようにグレーチング9に本盗難防止具1が取付けられる状態下、すなわち盗難防止具1の正面視状態下における鉛直方向をいい、図2(ロ)では紙面下方向を指す。板状主部2の下端寄りとは、図2(ロ)の図面では、文字通り、図面に描かれた板状主部2の下端寄りの部分を指す。また、本発明で用いる上方とは図2(ロ)では紙面上方向、水平方向とは図2(ロ)では紙面に対し左右水平横方向ラインを含む垂直面上の方向をいう。
この板状主部2の上端部分21からはフック部3が張り出す。
【0013】
フック部3は、板状主部2の上端部分21から該板状主部2の板面に対し外方へ張り出して、該上端部分21とで、側面視コ字状の板片部3aを形成する張出部である(図2のハ)。該フック部3は、板片部3aのコ字状開口部分39側を水平配設されるグレーチング9の端板上面94aに対向させて上方から嵌入し、グレーチング9の端板94に板状主部2を図4のように吊設させる鉤部になっている。
【0014】
本実施形態のフック部3は、板片状にして、板状主部2の上端部分21と、該板状主部2の横幅B1よりも横幅B2を小さくして、その一側寄り上縁から外方へ張り出す水平張出部分30とその先端縁で屈曲し板状主部2の板面に平行に下降する下降部分31とで、側面視コ字状の板片部3aを形成する。水平張出部分30の一側を板状主部2の一側に合わせ、板状主部2の上縁で屈曲して、水平張出部分30が水平外方へ張り出す。水平張出部分30を含む板片部3aの横幅B2は板状主部2の横幅B1の約1/3とする(図2のイ)。
ここでは、さらに図1のように、下降部分31の下部側縁から板状主部2の他側方向へそのまま延設してなる細幅の側方張出部分33と、その先端部分から下降部分31と離間させて上方に延びる上方延設部分34と、その上端縁で板状主部2側へ屈曲してその手前まで水平に延びる爪部分35とを備える。斯かる盗難防止具は、コ字状開口部分39側を水平配設されるグレーチング9の端板上面94aに対向させて上方からフック部3(詳しくは板片部3a)を端板94に嵌入し、さらに爪部分35側を下降傾斜させて図3(イ)の白抜き矢印のごとくグレーチング9の連結材92を潜らせる。そして、図3(ロ)のごとくフック部3で板状主部2を端板94に吊設させる共に、下降部分31と上方延設部分34との間に連結材92を配し、さらに爪部分35をグレーチング端板94の上面94aに載置させて、グレーチング9に該盗難防止具1が取付けられる。符号36は下降部分31と上方延設部分34との間に連結部が配される切欠部分、符号351は爪部分35の面取りを示す。
【0015】
突片部4は、板状主部2の下端部分25にて、該板状主部2の板面に対し外方へ突出する板状突出部である。ここでの突片部4は、板片状にして、板状主部2の下端部分25で、該板状主部2の板面に対し前記フック部3の張り出し方向とは逆の外方水平に突出する。詳しくは、板状主部2の下端縁から延設する突片部4用板部を、図2(ハ)のごとく垂直方向に起立する板状主部2に対し略直角に屈曲して水平外方へ突き出す板片状の突片部4とする。
【0016】
引掛部5は、引っ掛け用の通孔50が形成され、板状主部2の下端部分25近くから(又は該下端部分25から)、突片部4の突出方向とは反対方向へ突出する板片状部である(図1)。板状主部2から引掛部5用の基端縁55を残して、通孔50及び引掛部5用板部の外周縁を切り離す切断用細隙を打ち抜きプレス加工等により形成し、且つ曲げ加工によって、前記基端縁55で屈曲させて引掛部5を起こし、板状主部2から矩形引掛部5を起立形成する。引掛部5用基端縁55のラインは図1,図2のように鉛直方向に走る。さらに、本実施形態は上述した引掛部5のみならず、予め板状主部2,フック部3,突片部4を備える展開平板片(一の平板片)に切断成形された金属製板片から曲げ加工によって、板状主部2、フック部3、及び突片部4が形成されるようにしている(図1)。
【0017】
そして、前記板状主部2,フック部3,突片部4,引掛部5を備え、両端板94にフック部3(板片部3a)を夫々嵌入してグレーチング9に取着し、側溝ブロック8の天板部81に設けられる開口80にグレーチング9で蓋をするのに伴い、少なくとも一方の板状主部2を開口80中央側へ反るよう弾性変形させて、開口80を形成する厚み壁81bにあてがいつつその下方向へ下端部分25の方から下降させ、突片部4が厚み壁81bを通過すると同時に、板状主部2が弾性復元して、開口80周りの天板部81の裏面81c側へ突片部4が潜り込む構成の盗難防止具1とする。
所定板厚を有して、板状主部2,フック部3,突片部4,引掛部5を有する一の展開平板片に切断成形されたその板片から、曲げ加工だけで、グレーチング9の盗難防止、さらに車両走行に伴うハネ上げをも防止できる所望の盗難防止具1となっている。
【0018】
次に、上記構成の盗難防止具1の一取付け方法を詳述する。
側溝ブロック8の天板部81に設けられる開口80にグレーチング9で蓋をするにあたって、まず、グレーチング9の両端板94にフック部3(板片部3a)を夫々嵌入して、盗難防止具1をグレーチング9に取付ける。盗難防止具1は、突片部4側を下にして、真下が嵩上げ部材9bに当たる箇所を除いた端板94の箇所に取付けられる(図4)。
コ字状開口部分39側を水平配設されるグレーチング9の端板上面94aに対向させて上方から端板94にフック部3を嵌入する。端板94へのフック部3の嵌入,取付けに際しては、板状主部2が図3のように端板94の外側に配されるようにし、突片部4が端板94からグレーチング9の外方へ突出するよう配される。
次いで、爪部分35側を下降傾斜させてグレーチング9の連結材92を潜るようにする(図3のイ)。続いて、フック部3で板状主部2を端板94に吊設させた状態にして、下降部分31と上方延設部分34との間に連結材92を配し、さらに爪部分35をグレーチング端板94の上面94aに載置する(図3のロ)。こうして、グレーチング9の一方の端板94に盗難防止具1が取付けられる(図4)。他方の端板94についても、上記取付け作業と同様にして、盗難防止具1が取付けられる。
【0019】
前記盗難防止具1が取付けられたグレーチング9で側溝ブロック8の開口80に蓋をする場合、例えば次のような作業を行う。
一方の端板94(図5では左側の端板94)側に向けてグレーチング9を下降傾斜させ、その端板94に取付けた突片部4が、開口80周りの天板部81の裏面81cよりも下方になるようにし、且つ開口80を形成する天板部厚み壁81bにグレーチング端板94を寄せて、図5のごとく一方の端板94側グレーチング9を開口80内に嵌め込む。
続いて、図5の白抜き矢印のごとく他方の端板94(図5では右側の端板94)側グレーチング部分を下ろしていく。突片部4の突端41が開口80から水平横方向にはみ出る場合は、板状主部2をグレーチング9中央側へ押圧(図7の実線矢印)することにより、板状主部2が図7の鎖線部から実線部へと弾性変形して突片部4が開口80内に入り込む。天板部81の厚み壁81bは天板部上面81aから天板部裏面81cにいくにしたがい、開口80中央側へ張り出している。そのため、他方の端板94側グレーチング9の下降に伴い、図7のごとく突片部4の突端41が開口80を形成する天板部81の厚み壁81bに一見閊えるようにみえる。しかし、弾性特性を有する金属製板状主部2が開口80中央側へ反るよう弾性変形して(図7の鎖線矢印)、該開口80を形成する天板部81の厚み壁81bの下方向へ、突片部4を支障なく進行(図7の白抜き矢印)させることができる。その後、突片部4,板状主部2の下端部分25が下降し、突片部4が厚み壁81bを通過する。と同時に、板状主部2が弾性復元して、開口80周りの天板部81の裏面81c側へ突片部4が潜り込む(図8)。
この段階で、グレーチング9の上面が天板部上面81aに殆ど一致しているが、その後、他方の端板94側グレーチング部分を持つ手を離せば、開口80が盗難防止付きグレーチング9で蓋がされた状態になる(図6)。開口80にグレーチング9で蓋をするにあたっては、既述のごとく、一方の端板94に取付けた突片部4が、開口80周りの天板部81の裏面81cよりも下方になるようにし、且つ開口80を形成する天板部厚み壁81bに寄せて、他方の端板94側を下降させている。そのため、開口80がグレーチング9で蓋がされた段階で、一方の端板94側に取付けた盗難防止具1の突片部4は、板状主部2が弾性変形することなく、開口80周りの天板部81の裏面81c側へ潜り込む。
かくのごとく、図6で、開口80に蓋をしたグレーチング端板94に取付けた両盗難防止具1の突片部4が、両端板94から夫々グレーチング9の水平外方に突出して、天板部81の裏面81c側へ突片部4が潜り込んでいるので、側溝ブロック8からグレーチング9を取り外そうと持ち上げても、突片部4が閊えて全く外れることがない。盗難防止対策として完璧な盗難防止具1が取付けられることとなる。
【0020】
ところで、図6の盗難防止具1が取付けられたグレーチング9をメンテナンス等で側溝ブロック8から取り外したい場合がある。専用治具6を用いてグレーチング9を開口80から取り外す一方法を以下に述べる。
予め、例えば図9に示すような専用治具6を作製準備する。専用治具6は細長棒状の主軸61の基端側にハンドル62が設けられる一方、主軸61の先端部を曲げて引掛部5の通孔50を貫通できる鉤部63が設けられる。直線状主軸61の長さは、梃子の原理を働かせるため、例えば天板部厚み壁81bの厚みWの十数倍〜数十倍の長さとする。ここでのハンドル62は、主軸61の基端側から延設された棒状部分を曲げ加工によって、手で把持し易いトライアングル状把手とする。符号64は溶接部分を示す。
【0021】
側溝ブロック8の開口80に蓋をした盗難防止付きグレーチング9を取り外す場合、まず、グレーチング9の上方から専用治具6の下端側鉤部63側を下ろし、鉤部先端63aを引掛部5の通孔50に通す(図9のイ)。
次に、開口80周りの天板部81の裏面81c側へ潜り込んだ図8の状態にある突片部4を、専用治具6を使って、図9(ロ)のごとく突片部4が天板部裏面81cの下方域から離れてグレーチング9側に寄るようにする。具体的には、フック部3に主軸61の一部を当接させて、ここを支点に専用治具6を図9(ロ)の矢印のごとくグレーチング9中央側へ回動させる。そして、この回動で突片部4の突端41と開口80を形成する天板部81の裏面縁81cとの間に隙間εができたところで、この専用治具6を引き上げる。専用治具6に引掛部5で係止状態にある盗難防止具1が一緒に引き上げられ、且つ盗難防止具1と係止状態にある連結材92を介してグレーチング9が一緒に引き上げられる。専用治具6の引き上げ方向は、図5の白抜き矢印と正反対方向になるが、引き上げに伴うグレーチング9,盗難防止具1の姿態は同図とほぼ同じになる。最後に、図5で、グレーチング9の左方端板94側の盗難防止具1が開口縁80eから外れるよう、右方の端板94側にグレーチング9全体をズラし、右方側突片部4の突端41と開口80を形成する天板部81の裏面縁81cとが離れるようにした後、グレーチング9をそのまま上方に持上げることで、側溝ブロック8から該グレーチング9が楽に取り外される。
メンテナンスや流路u内の清掃等を終え、再びグレーチング9に盗難防止具1を取付けて側溝ブロック8の開口80に蓋をする場合は、また、前述した取付け方法によって開口80に盗難防止具1付きグレーチング9で蓋をすることができる。
【0022】
このように構成した盗難防止具1は、特許文献2等と違って、新規は勿論、既存の側溝ブロック8の開口80に蓋をするグレーチング9にも適用できる。前述の取付け方法に従い、既存のグレーチング9に対しても両端板94にグレーチング9側から外方にそれぞれ突片部4が突出するよう盗難防止具1を難なく取付けることができる。そして、開口80に蓋をした盗難防止具1付きグレーチング9の両突片部4が、開口80両サイドにある天板部81の裏面81c側へ夫々潜り込むので、側溝ブロック8からグレーチング9を取り外そうと持ち上げても、突片部4が開口80周りの天板部裏面81cに当たって閊える。盗人が盗もうと思っても側溝ブロック8からグレーチング9を外すことができない。既存グレーチング9や既存の側溝ブロック8をそのまま用いることが可能で、低コスト対応できる。既存の側溝ブロック8及び既存グレーチング9の改造を要しないことから、現場設置済み側溝ブロック開口80に蓋をしている既存グレーチング9に本盗難防止具1を速やかに取付け実施できる。且つグレーチング9への盗難防止具1の取付け自体も簡単で、迅速対応できることから、新聞紙上を騒がせ、道路側溝ふたのグレーチング9が盗まれる被害が連続発生し、対策が急務である盗難防止に打って付けになっている。
また、両端板94に取り付けた盗難防止具1の突片部4が外方へ突出して開口80周りの天板部裏面81cに潜り込んでいるので、両突片部4によってグレーチング9の上動が阻止され、ハネ上げ防止の効果をも発揮する。
【0023】
そして、板状主部2の上端部分21とで側面視コ字状の板片部3aを形成し、そのコ字状開口部分39側をグレーチング9の端板上面94aに対向させて上方から端板94へ嵌入するので、フック部3を簡便構造にして、グレーチング9の端板94に板状主部2を簡単に吊設させることができる。
さらに、突片部4が、板状主部2の下端部分25で、板状主部2の板面に対しフック部3の張り出し方向とは逆の外方水平に突出すると、図8のごとく板状主部2を端板94の外面に当接させるようにできるので、板状主部2の下端部分25から突出する突片部4の長さがそのまま開口80周りの天板部裏面81cに潜り込む有効長さになる。グレーチング9を持上げた際、天板部裏面81cに閊える突片部4の範囲が大きくなり盗難防止効果,ハネ上げ防止効果を一段と高める。尚、板状主部2がグレーチング9と天板部81の厚み壁81bとの間に介在することになるが、グレーチング9と厚み壁81bとの間には板状主部2の板厚部分に相当する隙間が十分設けられているので、何の問題もない。
また、突片部4の突出長さがそのまま開口80周りの天板部裏面81cに潜り込む有効長さになるので、突片部4の突出度合いを必要以上に大きくしなくても済み、盗難防止具1のコンパクト化が図られ、さらに図7から図8に向かう開口80への盗難防止具1付きグレーチング9の据付けで、板状主部2の弾性変形を小さくでき作業性向上につながる。
【0024】
さらにいえば、通孔50を有する引掛部5が、板状主部2の下端部分25又はその近くから突片部4の突出方向とは反対方向へ突出するよう設けられると、開口80に蓋をした盗難防止付きグレーチング9を、流路u内の掃除やメンテナンスで側溝ブロック8から取り外す場合、既述のごとく通孔50を利用して、簡易な専用治具6で容易に取り外すことができる。
【0025】
加えて、フック部3が、上端部分21と水平張出部分30と下降部分31とで板片部3aを形成し、且つ側方張出部分33と上方延設部分34と爪部分35と、を具備し、コ字状開口部分39側をグレーチング9の端板94に上方からフック部3を嵌入し、爪部分35側を下降傾斜させてグレーチング9の連結材92を潜った後、フック部3で板状主部2を端板94に吊設させる共に、下降部分31と上方延設部分34との間に連結材92を配し、さらに爪部分35をグレーチング端板94の上面94aに載置させると、グレーチング9への盗難防止具1の一体化がより確実になる。多少の外力が加わってもグレーチング9から盗難防止具1が外れなくなる。盗難防止具1は半永久的にグレーチング9の盗難を防止できる。また、フック部3が連結材92を跨いで端板94に取り付けられると、開口80に蓋をした盗難防止付きグレーチング9を、流路u内の掃除やメンテナンスで取り外す場合にも、盗難防止具1が連結材92に係止一体化されて動かぬ状態になるので、前記専用治具6での取り外しを円滑遂行できる。
また、一片の平板からなる金属製板片に、引掛部5の基端縁55を残して該引掛部5用板部の外周縁を切り離す切断用細隙と通孔50を設け、曲げ加工だけで、板状主部2、フック部3、突片部4、及び該引掛部5を形成すると、一枚の金属製板材から、プレス加工で盗難防止具1を容易に製造できるので、一層の低コスト化が図られる。
このように、本盗難防止具1は、自由勾配側溝及び可変側溝等の側溝ブロック8に設置されている既存のグレーチング9に簡便に取り付けることにより、グレーチング9の盗難の抑止、グレーチング9の跳ね上がりによる事故防止にも役立ち、且つその取付けにあたって、グレーチング9及び側溝ブロック8に切断,穴あけ,溶接といった加工をすることなく簡単に設置でき、極めて有益である。
【0026】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。板状主部2,フック部3,突片部4,引掛部5,専用治具6,側溝ブロック8,グレーチング9等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。例えば、側溝ブロック8には特開2006-322242号公報記載の「コンクリート製で、底部の下面に対し両側部の外壁面を垂直起立して上方開口の縦通溝を形成し、さらに長手方向の両端部の上面に閉鎖天板部を設けて側面視中空長方形とし、且つ該閉鎖天板部間で前記縦通孔を形成する側部の上部を内側に張出し厚みが増した張出部を設け、該張出部の上部に溝蓋(本発明でいうグレーチング)が載る係止段部を形成して該溝蓋で閉鎖天板部間の上方開口部(本発明でいう開口)に蓋ができる」コンクリート製側溝本体にも適用できる。また、実施形態では一方の板状主部2を開口80中央側へ反るよう弾性変形させて、突片部4が厚み壁81bを開口80周りの天板部裏面81c側へ潜り込むようにしたが、例えば、一方の端板94側に向けてグレーチング9を下降傾斜させることなく、グレーチング9を水平状態で下降させ、両方の板状主部2を開口80中央側へ反るよう弾性変形させて、突片部4が厚み壁81bを開口80周りの天板部81裏面81c側へ潜り込むようにすることもできる。また、実施形態では、グレーチング9の両端板94に盗難防止具を夫々取り付けたが、片方だけでも足りる。その取り付けた側のグレーチング9を持上げれば、盗難防止具1の係止により該グレーチングの上動を阻止でき、盗難防止効果,ハネ上げ防止効果が得られるからである。
【符号の説明】
【0027】
1 盗難防止具
2 板状主部
21 上端部分
25 下端部分
3 フック部
3a 板状片
30 水平張出部分
31 下降部分
33 側方張出部分
34 上方延設部分
35 爪部分
39 コ字状開口部分
4 突片部
5 引掛部
50 通孔
8 側溝ブロック
80 開口
81 天板部
81b 厚み壁
81c 裏面(天板部の下面)
9 グレーチング
92 連結材
94 端板
94a 上面
B1 横幅(板状主部の横幅)
B2 横幅(フック部の横幅)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に配設される縦長の金属製板状主部(2)と、
該板状主部(2)の上端部分(21)からその板面に対し外方へ張り出して、該上端部分(21)とで側面視コ字状の板片部(3a)を形成し、そのコ字状開口部分(39)側を水平配設されるグレーチング(9)の端板上面(94a)に対向させて上方から嵌入し、該板状主部(2)をグレーチング(9)の端板(94)に吊設させるようにしたフック部(3)と、
該板状主部(2)の下端部分(25)にて、該板状主部(2)の板面に対し外方へ突出する板状の突片部(4)と、を具備し、
グレーチング(9)の端板(94)に前記フック部(3)を嵌入し、側溝ブロック(8)の天板部(81)に設けられる平面視矩形開口(80)にグレーチング(9)で蓋をするのに伴い、前記板状主部(2)を開口(80)中央側へ反るよう弾性変形させて、該開口(80)を形成する天板部(81)の厚み壁(81b)の下方向へ前記下端部分(25)の方から下降させ、前記突片部(4)が該厚み壁(81b)を通過すると同時に、前記板状主部(2)が弾性復元して、前記開口(80)周りの天板部(81)の裏面(81c)側へ該突片部(4)が潜り込むようにしたことを特徴とするグレーチング用盗難防止具。
【請求項2】
前記突片部(4)が、板片状にして、前記板状主部(2)の下端部分(25)で、該板状主部(2)の板面に対し前記フック部(3)の張り出し方向とは逆の外方水平に突出する請求項1記載のグレーチング用盗難防止具。
【請求項3】
引っ掛け用の通孔(50)が形成された板片状にして、前記板状主部(2)の下端部分(25)又はその近くから前記突片部(4)の突出方向とは反対方向へ突出する引掛部(5)、をさらに具備し、且つグレーチング(9)の両端板(94)に前記フック部(3)を夫々嵌入し、側溝ブロック(8)の天板部(81)に設けられる平面視矩形開口(80)にグレーチング(9)で蓋をするのに伴い、少なくとも一方の前記板状主部(2)を開口(80)中央側へ反るよう弾性変形させて、該開口(80)を形成する天板部(81)の厚み壁(81b)の下方向へ前記下端部分(25)の方から下降させ、前記突片部(4)が該厚み壁(81b)を通過すると同時に、前記板状主部(2)が弾性復元して、前記開口(80)周りの天板部(81)の裏面(81c)側へ該突片部(4)が潜り込むようにした請求項2に記載のグレーチング用盗難防止具。
【請求項4】
前記フック部(3)が、板片状にして、前記板状主部(2)の上端部分(21)と、該板状主部(2)の横幅(B1)よりも横幅(B2)を小さくして、その一側寄り上縁から外方へ張り出す水平張出部分(30)と該水平張出部分(30)の先端縁で屈曲し該板状主部(2)の板面に平行に下降する下降部分(31)とで、側面視コ字状の前記板片部(3a)を形成し、さらに、該下降部分(31)の下部側縁から板状主部(2)の他側方向へ延設してなる側方張出部分(33)と、該側方張出部分(33)の先端部分から前記下降部分(31)と離間させて上方に延びる上方延設部分(34)と、該上方延設部分(34)の上端縁で板状主部(2)側へ屈曲して該板状主部(2)の手前まで水平に延びる爪部分(35)と、を具備し、
前記コ字状開口部分(39)側を水平配設されるグレーチング(9)の端板上面(94a)に対向させて上方から該フック部(3)を端板(94)に嵌入すると共に、該爪部分(35)側を下降傾斜させてグレーチング(9)の連結材(92)を潜らせた後、該フック部(3)で板状主部(2)を前記端板(94)に吊設させ、且つ下降部分(31)と上方延設部分(34)との間に該連結材(92)を配し、さらに爪部分(35)をグレーチング端板(94)の上面(94a)に載置させるようにした請求項3記載のグレーチング用盗難防止具。
【請求項5】
前記引掛部(5)の基端縁(55)を残して該引掛部(5)用板部の外周縁を切り離す細隙と、前記通孔(50)とを設けた一の金属製平板片から、プレス加工により、前記板状主部(2)、前記フック部(3)、前記突片部(4)、及び該引掛部(5)を形成する請求項4記載のグレーチング用盗難防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−83043(P2013−83043A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221732(P2011−221732)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(599147218)東北岡島工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】