説明

グレーチング

【課題】 グレーチング表面と靴底間の接触面積が狭小となると水の膜が形成され難く靴が滑り難くなるが、グレーチング表面の面積が狭小になると、滑り止めに有効な靴底との接触面積が狭小となり、降雨時以外の場合は、グレーチング表面における靴底の摩擦力の低下を招き、滑り易くなる。
【解決手段】 グレーチングは、フレーム20と該フレーム20に設けられているグレーチング本体30を備えている。グレーチング本体30は、所要間隔で並設されている複数本のメインバー31と、これらのメインバーを連結している連結部材を有し、該連結部材で前記グレーチング本体30は前記フレーム20に固着されている。メインバー31は、硬質の合成樹脂で成形されている支脚部32および水平部33と、成形の際に該水平部33の上面に一体に設けられ前記硬質の合成樹脂よりも軟質の合成樹脂で成形されている上面部34を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレーチングに係り、更に詳しくは、グレーチング表面の水の有無に拘わらず滑りにくいグレーチングに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、降雨時に道路等に水が溜まらないようにするため、車道と歩道との境目に集水用の側溝が設置されている。同様の目的で道路の両側に排水枡が設置されている。これら側溝や排水枡の開口部分には、蓋としてグレーチング(塵よけ格子)が使用されている。
【0003】
一般的なグレーチングは金属製であり、降雨時にグレーチングの上に人が乗ると、グレーチング表面と靴底との間の排水ができずに両者の間に水が溜まって水の膜が形成され、この水の膜で靴が滑りやすくなる。この現象は特に革底の靴の場合に顕著に表れる。
これを防止するために、例えば特許文献1記載のような滑り止めを施したグレーチングが提案されている。
【0004】
このグレーチングは、金属製で、断面T字状に構成された上片部の上面に、該上片部の厚みと略同等あるいはそれ以上の高さを有し該上片部の長手方向に対して傾斜する凸条部がその幅方向全部に亘って等間隔に多数突設されているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−27278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載のグレーチングによれば、上片部の上面に凸条部を突設することによってグレーチング表面と靴底間の接触面積が狭小となるために水の膜が形成され難く、従って靴が滑り難くなることが期待できる。
しかしながら、グレーチング表面の面積が狭小となることは、滑り止めに有効な靴底との接触面積が狭小となることであり、降雨時以外の場合は、グレーチング表面における靴底の摩擦力の低下を招き、滑り易くなるという二律背反を生じる。
【0007】
ところで、タイヤのウエット性能がタイヤのゴムの質によって変わり、軟らかいゴムの場合には路面との摩擦力が高まり滑りにくくなることは知られている。
そこで、本発明者はグレーチングの素材を金属よりも軟らかい他の素材、例えば合成樹脂に変えることによって、グレーチング表面の水の有無に拘わらず、有効な滑り止め効果が発揮できないか実験を試みたところ、金属製の場合と比較して滑りにくいことを知見した。
本発明は、この知見に基づいて完成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
【0009】
本発明は、フレームと該フレームに設けられているグレーチング本体を備えているグレーチングであって、
前記グレーチング本体は、
所要間隔で並設されている複数本のメインバーと、これらのメインバーを連結している連結部材を有し、該連結部材で前記グレーチング本体は前記フレームに固着されており、
前記メインバーは、
硬質の合成樹脂で成形されている支脚部および水平部と、成形の際に該水平部の上面に一体に設けられ前記硬質の合成樹脂よりも軟質の合成樹脂で成形されている上面部を有している、
グレーチングである。
【0010】
本発明は、フレームは、所要長さを有し所要間隔を隔てて並設されている一対の側フレームと、該一対の側フレーム間に配設されて側フレームを連結する複数の側フレーム連結部材を備え、メインバーの支脚部下端は、前記側フレーム連結部材の上面と当接する、グレーチングである。
【0011】
本発明は、メインバーの上面部は、長さ方向の両側に形成された切欠部と、該切欠部の間に形成されている頂面を有し、前記メインバーの上面部表面とメインバー間に全長にわたって形成されている通水溝の開口は、グレーチング本体の表面を構成している、グレーチングである。
【0012】
本発明は、フレームの一方の端部に設けられている第1の連結要素と、フレームの他方の端部に設けられている第2の連結要素とを有し、該第2の連結要素と前記第1の連結要素とを長手方向に連続して連結するように構成されている、グレーチングである。
【0013】
(作用)
本発明に係るグレーチングの作用を説明する。
グレーチング表面に靴底が接触した場合、靴底と接触する上面部に軟質の合成樹脂を使用しているので、グレーチング表面の水の有無に拘わらず靴底との摩擦力が高まり滑りにくい。
【0014】
また、グレーチング本体は合成樹脂製であるから、金属製のグレーチングと比べて軽く、清掃時の持ち上げなどが容易になる。
【0015】
更に、メインバーの支脚部下端は、側フレーム連結部材の上面と当接するので、側フレーム連結部材はグレーチング本体にかかる荷重を受けることとなり、支脚部及び水平部を硬質の合成樹脂で成形することと相俟ってグレーチング本体の耐荷重性、延いてはグレーチングの耐荷重性が向上する。
【0016】
更にまた、第1の連結要素と第2の連結要素を連結することによって、複数のグレーチングを連結して設置することができ、衝撃による跳ね上がりと盗難の防止が期待できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、グレーチング表面の水の有無に拘わらず滑りにくいグレーチングが提供できる。
また、グレーチング本体が本質的に合成樹脂製でも耐荷重性を有するグレーチングが提供できる。
更に、衝撃による跳ね上がりの防止と盗難の防止が期待できるグレーチングが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るグレーチングの一実施の形態を示した斜視説明図である。
【図2】図1に示すグレーチングのフレーム部分の斜視説明図である。
【図3】図1に示すグレーチングの使用状態を示す側面視説明図である。
【図4】図3に示すグレーチングのメインバーの拡大断面説明図である。
【図5】図1に示すグレーチングを複数連結するときの状態を示しており、要部を拡大した分解説明図である。
【図6】図1に示すグレーチングのメインバーを透視状態とした斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1ないし図6を参照する。なお、各図において、符号は煩雑さを軽減し理解を容易にする範囲内で付している。
グレーチング10は、フレーム20と該フレーム20に嵌入して設けられているグレーチング本体30を備えている。
【0020】
〔フレーム〕
フレーム20は、所要長さを有し所要間隔を隔てて並設されている一対の側フレーム22と、該一対の側フレーム22を連結しており、側フレーム22の長手方向に配設されている複数の(本実施の形態では四本)側フレーム連結部材24a,24b,24c,24d(図2参照)を備えている。
【0021】
側フレーム22は、水平方向設けられているフランジ部220と、このフランジ部220から下方に向けて垂直に設けられている側壁部222を有している。
一対の側フレーム22は、それぞれ側壁部222同士を向かい合わせ、フランジ部220を外方に向けて配置されている。前記フランジ部220は、例えばU字溝Gや排水枡の頂部7(図3に図示)に載置される。
【0022】
側フレーム連結部材24a,24b,24c,24dは、水平な板状であり、両端が上方に向けて垂直に折り曲げられて取着部240が形成されている。取着部240は側フレーム22の側壁部222に、ネジ付きビスなどの固着具で固着されている。固着は他の公知手段、例えば溶接で行うこともできる。
側壁部222には、後で説明する連結ボルトを挿入する挿通孔224が長さ方向に所要間隔で設けられている。
【0023】
側フレーム22の長手方向に配設されている前記側フレーム連結部材のうち、一方の端部(図1では左側の端部)に配置されている側フレーム連結部材24aには、第1の連結要素を構成する連結具26が設けられている。
連結具26は、立ち上がり部とこれと連続する水平部260を有し、水平部260を外側に向けて取着されている。連結具26の水平部260には、連結孔262が形成されている。
【0024】
前記側フレーム連結部材のうち、他方の端部(図1では右側の端部)に配置されている側フレーム連結部材24dには、第2の連結要素を構成する連結孔264が形成されている。
連結孔264は、グレーチング10を長さ方向に複数連結するときに、前記連結孔262と協働して、連続的して配置されるグレーチング10のフレーム20を連結する。
【0025】
〔グレーチング本体〕
グレーチング本体30は、塩化ビニル樹脂の押し出し成形によって成形されたメインバー31を複数本(本実施の形態では9本)並設して構成されている。メインバー31は、支脚部32と支脚部32の上端に形成されている水平部33を有している。本実施の形態では、メインバー31は略「T」形状に形成されているが、逆「L」形状とすることもできる。
【0026】
水平部33の上面には、靴底等と接触して滑り止め作用を有する上面部34が成形の際に一体に溶着されている。上面部34は長さ方向の両側に形成された切欠部36,36と、切欠部36,36の間に形成されている、頂面35を有している。切欠部36,36を形成することによって、メインバー31間に全長にわたって連続する通水溝50の開口が広くなり、道路側から流れてきた雨水が通水溝50に流れ込み易くなる。
また、靴底等が斜め上方向から下りてくる場合、切欠部36,36の頂面35側縁部分が靴底等が滑るのを妨げるように働く部分となり、また、靴底等と線接触状態となり、水の膜が形成されにくくなる。
【0027】
メインバー31を平面視に於て、約6mm以下の間隔(ハイヒールの踵やベビーカーのキャスターが入るのを防止できる間隔)で平行に並べ、メインバー31の間に管状のスぺーサ41を介在させている。
【0028】
そうして両側にねじを刻設した所要本数(本実施例では10本)の連結部材である連結ボルト42を、メインバー31の支脚部32の高さ方向の略中間部に形成した貫通孔320及びスぺーサ41の中空部分を貫通させてグレーチング本体30が構成される。
【0029】
更に、連結ボルト42の両側を側フレーム22の挿通孔224に通し、両側にナット43を螺着することによりグレーチング本体30はフレーム20に固着して設けられる。
【0030】
この構成によってメインバー31間には全長にわたって連続した通水溝50が形成され、路面上の雨水等は、側溝Gや排水枡に排出される。
なお、上面部34の長さ方向の両側に切欠部36,36を形成することによって、メインバー31間に全長にわたって連続する通水溝50の開口は広くなり、道路側から流れてきた雨水が通水溝50に流れ込み易くなる。
【0031】
メインバー31の支脚部32下端は、側フレーム連結部材24a,24b,24c,24dの上面と当接して、グレーチング本体30の荷重を支えるようにしている。従って側フレーム連結部材24a,24b,24c,24dは、前記したような側フレーム22の連結と、合成樹脂製のメインバー31の補強を兼ねている。
【0032】
複数のメインバー31のうち、側フレーム連結部材24dの連結孔264に対応する位置に配置されているメインバー31は、連結孔264に対応する箇所に空間部310が形成されるよう、他のメインバーよりも短く形成されている。
【0033】
60はハイヒール踵などが落ち込むのを防止するキャップで、天部61と、天部61の両側から垂設されている脚部62を有しており、天部には、取付ボルト65を通す挿通孔63が形成されている。
【0034】
なお、グレーチング本体30の素材は、連結ボルト42を除いて合成樹脂であり、連結ボルト42を含むその他のグレーチングの構成部材の素材は、ステンレス鋼等の金属である。
【0035】
本実施の形態の作用を説明する。
図3に示すように、例えばU字溝Gの頂部7にフランジ部220を載置し、衝撃による跳ね上がり防止と盗難防止を兼ねてグレーチング10を長さ方向に複数連結する。
【0036】
連結に当たっては。側フレーム連結部材24dの連結孔264の上方に、側フレーム連結部材24aに設けられている連結具26の連結孔262が、高さ方向に所要間隔を保って同じ位置に来るように配置し、キャップ60の挿通孔63を貫通した取付ボルト65で連結孔262と連結孔264を貫通し、ナット66と協働してグレーチング10同士を締着固定する。
【0037】
連結孔262が形成されている連結具26の水平部260と、連結孔264が形成されている側フレーム連結部材24dとは高さ位置を異にしており、その間に間隙が形成される。
従って、グレーチング10を設置するU字溝Gの頂部7の高さが多少異なっていても、前記間隙でその高さ異なりを吸収し、設置されたグレーチングをU字溝Gの頂部7に沿って設置できる。
【0038】
また、空間部310の穴は、キャップ60によって、ハイヒールの踵などがはまり込むのを防止できるよう塞がれる。
【0039】
(試験例)
一般に軟質の合成樹脂は硬質の合成樹脂に比べて耐久性が犠牲になることが考えられる。そこで、メインバーの上面部の硬度の種類を変えて耐摩耗試験を行った。試験条件は下記のとおりで、試験結果は表1の通りである。
【0040】
(a)使用試験機:テイバー摩耗試験機
(b)試験方法 :JIS K 7204 プラスチック摩耗輪による摩擦試験方法
(c)試験条件 :回転数を500回と1000回の2パターンを選定
(d)試験体 :試験片は直径100ミリの円板
厚みは軟質樹脂2mmを段ボール5mmと貼り合わせる(合計7mm)
塩化ビニルの軟質硬度は65、70、80、90の4種類
(e)使用摩耗輪:モデルH−18を使用
中程度の粗い特性で。柔軟なプラスチックシートなどをすり減らす。
摩耗輪に使用した荷重は750g/個
【0041】
【表1】

【0042】
表1からは、回転数に拘わらず、硬度は硬いほど摩耗しやすいことがわかった。
従って、前記本実施の形態において、強度が必要な支脚部32と水平部33の塩化ビニル樹脂の硬度を100度とし、摩擦力による滑り止めを良くした柔らかさが必要な上面部34の硬度を65度としている。しかしこの硬度に限定されるものではなく、支脚部および水平部を成形している合成樹脂より水平部の上面に設けられている上面部の合成樹脂が軟質であるという条件の範囲内で、必要に応じて適当な硬度を採用することができる。
【0043】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0044】
G U字溝
10 グレーチング
20 フレーム
22 側フレーム
24a,24b,24c,24d 側フレーム連結部材
26 連結具
30 グレーチング本体
31 メインバー
32 支脚部
320 貫通孔
33 水平部
34 上面部
35 頂面
36 切欠部
41 スペーサ
42 連結ボルト
43 ナット
50 通水溝
7 頂部
60 キャップ
61 天部
62 脚部
63 挿通孔
65 取付ボルト
66 ナット
220 フランジ部
222 側壁部
224 挿通孔
240 取着部
260 水平部
262 連結孔
264 連結孔
310 空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム(20)と該フレーム(20)に設けられているグレーチング本体(30)を備えているグレーチングであって、
前記グレーチング本体(30)は、
所要間隔で並設されている複数本のメインバー(31)と、これらのメインバーを連結している連結部材を有し、該連結部材で前記グレーチング本体(30)は前記フレーム(20)に固着されており、
前記メインバー(31)は、
硬質の合成樹脂で成形されている支脚部(32)および水平部(33)と、成形の際に該水平部(33)の上面に一体に設けられ前記硬質の合成樹脂よりも軟質の合成樹脂で成形されている上面部(34)を有している、
グレーチング。
【請求項2】
フレーム(20)は、所要長さを有し所要間隔を隔てて並設されている一対の側フレーム(22)と、該一対の側フレーム(22)間に配設されて側フレーム(22)を連結する複数の側フレーム連結部材(24a,24b,24c,24d)を備え、メインバー(31)の支脚部(32)下端は、前記側フレーム連結部材(24a,24b,24c,24d)の上面と当接する、請求項1記載のグレーチング。
【請求項3】
メインバー(31)の上面部(34)は、長さ方向の両側に形成された切欠部(36)と、該切欠部(36)の間に形成されている頂面(35)を有し、前記メインバーの上面部(34)表面とメインバー(31)間に全長にわたって形成されている通水溝(50)の開口は、グレーチング本体(30)の表面を構成している、請求項1又は2記載のグレーチング。
【請求項4】
フレーム(20)の一方の端部に設けられている第1の連結要素と、フレーム(20)の他方の端部に設けられている第2の連結要素とを有し、該第2の連結要素と前記第1の連結要素とを長手方向に連続して連結するように構成されている、請求項1,2又は3記載のグレーチング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−261248(P2010−261248A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113697(P2009−113697)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年4月28日 株式会社シマブン発行の「UNIVERSAL DESIGN CATALOGUE 2009 ユニバーサルデザイン商品総合カタログ」に発表
【出願人】(500494499)株式会社シマブン (12)
【Fターム(参考)】