説明

グレーチング

【課題】平面上で湾曲した形状を自己保持した状態で施工することができるグレーチングにおいて、排水がグレーチングの幅方向両側から流入しやすくなっていることで施工部の排水の集水性に優れ、水捌けがよく、しかも髪の毛等が詰まりにくく清掃等のメンテナンス性にも優れたグレーチングを提供する。
【解決手段】グレーチングのメインバー(1)は、踏部(10)と、その下に設けられた脚部(11)を有し、脚部(11)には長手方向に所要数の掛合穴(13)が設けられ、各掛合穴(13)は脚部(11)の両端から所要の距離だけ離れた位置に設けられている。各メインバー(1)を連結するジョイント(2)は、弾性材料で形成され長手方向の両端に各掛合穴(13)に差し込み掛合ができる差込部(20,21)を有しており、各差込部(20,21)の間の中間部(22)は掛合穴(13)より径大に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレーチングに関するものである。更に詳しくは、平面上で湾曲している施工部に、その曲率に合うように湾曲させ、湾曲形状を自己保持した状態で施工することができるグレーチングにおいて、排水がグレーチングの幅方向両側から流入しやすくなっていることで施工部の排水の集水性に優れ、水捌けがよく、しかも髪の毛等が詰まりにくく清掃等のメンテナンス性にも優れたものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば厨房、浴室あるいはプール等の水廻りに施工されるグレーチングにおいて、メインバーの連結を簡単に行うことができる構造で、長さの調節ができると共に平面上で湾曲した施工部にも、その曲率に柔軟に対応して設置することができるものがすでに提案されている。その一例としては、例えば特許文献1記載の「溝ぶたの構造」がある。
【0003】
特許文献1に記載の「溝ぶたの構造」は、単位素子を嵌合連結して成る溝ぶたに於て、単位素子の連結部がY字溝を有し、そのY字溝に他の単位素子の棒状突起を挿入して固定する溝ぶたの構造であって、ステンレス成形や合成樹脂成形で作成された単位素子の本体両端に、連結するための棒状突起及びY字溝を有する端子カバーを嵌合固定し、棒状突起をY字溝に挿入する位置により、自在に湾曲させて、任意な湾曲及び直線を構成することができるようにするというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−83091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の「溝ぶたの構造」には次のような課題があった。
すなわち、溝ぶたは多数の単体素子で構成され、単体素子の両端にある端子カバーによって、溝ぶたの幅方向両端部は実質的に塞がれてしまうので、排水がグレーチングの幅方向両側からはほとんど流入しない(特許文献1の図6参照)。このため、排水のほとんどは溝ぶたの単体素子上面の各隙間からのみ流入するしかなく、集水性が悪いため、水捌けもよくなかった。
【0006】
また、溝ぶたを平面上で湾曲した施工部に施工する場合においては、溝ぶたの幅方向両端部いずれかの側の端子カバーの間が拡がって隙間が生じるために(特許文献1の図7参照)、排水がグレーチングの幅方向側から多少は流入するようになるが、流入する部分の構造が入り組んでいるので髪の毛等が引っ掛かって詰まりやすくなり、取り除くのも容易ではない。しかも、グレーチングの清掃を頻繁に行う必要があるため、メンテナンスに大変な手間がかかっていた。
【0007】
また、下面に滑り止めのようなものがなく滑りやすいので、グレーチングの上面に長手方向へ強い力や衝撃が加わったときに、グレーチングが長手方向に伸びて上に膨らむような変形が起こりやすい。このような変形が起こると、特にプール等での使用においては大変危険であり、甚だしい場合はグレーチングが設置箇所から外れてしまうおそれもある。
【0008】
更には、グレーチングを上面側又は下面側へ径を小さくして丸めることが困難であり、丸めて持ち運ぶ際又はグレーチングを上面側に巻き取ってグレーチングの裏面や排水溝内を清掃をする際等に取り扱いがしにくい課題があった。
【0009】
(本発明の目的)
本発明は、平面上で湾曲している施工部に、その曲率に合うように湾曲させ、湾曲形状を自己保持した状態で施工することができるグレーチングにおいて、排水がグレーチングの幅方向両側から流入しやすくなっていることで施工部の排水の集水性に優れ、水捌けがよく、しかも髪の毛等が詰まりにくく清掃等のメンテナンス性にも優れたグレーチングを提供することを目的とする。
【0010】
本発明の他の目的は、グレーチングの下面を滑らないようにして、グレーチングの上面に長手方向へ強い力や衝撃が加わったときに、グレーチングが長手方向に伸びて上に膨らむような変形が起こりにくいようにすることである。
【0011】
本発明の他の目的は、径を小さくして丸めることができるようにして、持ち運びや清掃をする際に取り扱いを容易にすることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
(1)本発明は、
所要数のメインバーを並設してジョイントによって連結することにより構成したグレーチングであって、
前記メインバーは、全長にわたり形成されている踏部と、該踏部の下側に設けられた脚部を有し、
該脚部の間又は該脚部と隣り合うメインバーの脚部との間には、全長にわたり空隙部が設けられており、
前記脚部には長手方向に所要数の掛合穴が設けられ、該掛合穴は少なくとも前記脚部の両端から所要の距離だけ離れた位置に設けられており、
前記ジョイントは、弾性材料で所要長さに形成され長手方向の両端に前記メインバーの前記各掛合穴に差し込み、掛合穴の穴縁部と掛止できる掛止部を備えた差込部を有しており、該各差込部の間の中間部は、前記掛合穴より径大に又は太く形成されており、
隣り合う前記メインバーの対向する脚部の各掛合穴に、前記ジョイントの差込部を差し込み掛合してメインバーが連結されている、
グレーチングである。
【0013】
(2)本発明は、
メインバーの脚部の下端に滑り止め要素が設けられている、
前記(1)のグレーチングである。
【0014】
(3)本発明は、
メインバーの脚部に設けられている掛合穴が円形又は多角形状で、ジョイントの中間部の断面形状が掛合穴の形状に合う円形又は多角形状であり、中間部の差込部側の形状が差込部側へ窄まった截頭錐体形である、
前記(1)又は(2)のグレーチングである。
【0015】
(4)本発明は、
ジョイントに、各差込部の外端面を軸線方向に貫通した貫通孔が設けられている、
前記(1)、(2)又は(3)のグレーチングである。
【0016】
(作用)
本発明に係るグレーチングの作用を説明する。なお、ここでは、説明で使用する各構成要件に、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与するが、この符号は、特許請求の範囲の各請求項に記載した符号と同様に、あくまで内容の理解を容易にするためであって、各構成要件の意味を上記各部に限定するものではない。
【0017】
グレーチングを構成するジョイント(2)は、両側の差込部(20,21)の間に中間部(22)を有し、中間部(22)はメインバー(1)の脚部(11)の掛合穴(13)より径大に又は太く形成され、弾性変形して径小となった状態で、掛合穴(13)と中間部(22)の弾性的な復元力による所要の摺動抵抗性をもって掛合できるようになっているので、メインバー(1)の掛合穴(13)との掛合位置を実質的に固定することができる。なお、ジョイントに設けられた貫通孔は、弾性変形を助けるべく変形する。
【0018】
これにより、グレーチングを構成している各メインバー(1)の間の隙間を一定の範囲内で自在に設定することが可能であり、平面上で湾曲している施工部に、グレーチングをその曲率に合うように湾曲させ、湾曲形状を自己保持した状態で施工することができる。
【0019】
そして、施工状態においては、排水がグレーチングのメインバー(1)上面の隙間だけではなく、グレーチングの幅方向両側からも円滑に流入することができる。すなわち、メインバー(1)の掛合穴(13)は少なくとも脚部(11)の両端から所要の距離だけ離れた位置に設けられており、掛合穴(13)に掛合したジョイント(2)が、各メインバー(1)の間隔の広さに関わりなくグレーチングの幅方向両側を塞ぐことがないので、排水はグレーチングの幅方向両側から円滑に流入できる。
【0020】
これにより、施工部の排水の集水性に優れ、水捌けがよい。しかも、排水が流入する部分の構造が入り組んでいないので髪の毛等が詰まりにくい。また、髪の毛等が多少詰まっても容易に取り除くことができ、清掃等のメンテナンス性にも優れている。
【0021】
メインバー(1)の脚部(11)の下端に滑り止め要素(14)が設けられているものは、例えばメインバー(1)上面にグレーチングの長手方向へ大きな力や衝撃が作用したときに、グレーチングが長手方向に伸びて上に膨らむような隆起状の変形が起こりにくく、設置部から外れてしまうような危険な状態になることを防止できる。
【0022】
メインバー(1)の脚部(11)に設けられている掛合穴(13)が円形又は多角形状で、ジョイント(2)の中間部(22)の断面形状が掛合穴(13)の形状に合う円形又は多角形状であり、中間部(22)の差込部(20,21)側の形状が差込部(20,21)側へ窄まった截頭錐体形であるものは、差込部(20,21)へ向け窄まって細くなっているので、掛合穴(13)の穴縁部と緊密に接触せず、双方の間の隙間が大きくなって遊び空隙を有する。これにより、グレーチングを上面側又は下面側へ丸めるときに、メインバー(1)が、隣接するメインバー(1)に対してより大きな角度をもって姿勢を変えることができるので、グレーチングをより小さな径で丸めることができる。
【0023】
ジョイント(2)に、各差込部(20,21)の外端面を軸線方向に貫通した貫通孔(23)が設けられているものは、中間部(22)及び各差込部(20,21)の潰れる方向への変形を容易にしてジョイント(2)の着脱性を良好にすることができる。また、グレーチングの各ジョイント(2)の貫通孔(23)に紐を通した後、グレーチングを平面上で一方側へ湾曲させ、紐の一端側をストッパーで止め、他方側を引締具で止めて紐を引き絞る等して紐の有効長さを固定することにより、グレーチングの湾曲形状をより確実に自己保持することができる。
【発明の効果】
【0024】
(a)本発明は、平面上で湾曲している施工部に、その曲率に合うように湾曲させ、湾曲形状を自己保持した状態で施工することができるグレーチングにおいて、排水がグレーチングの幅方向両側から流入しやすくなっていることで施工部の排水の集水性に優れると共に水捌けがよく、しかも髪の毛等が詰まりにくく清掃等のメンテナンス性にも優れたグレーチングを提供することができる。
【0025】
(b)メインバーの脚部の下端に滑り止め要素が設けられているものは、例えばメインバー上面にグレーチングの長手方向へ大きな力や衝撃が作用したときに、グレーチングが長手方向に伸びて上に膨らむような隆起状の変形が起こりにくく、設置部から外れてしまうような危険な状態になることを防止できる。
【0026】
(c)メインバーの脚部に設けられている掛合穴が円形又は多角形状で、ジョイントの中間部の断面形状が掛合穴の形状に合う円形又は多角形状であり、中間部の差込部側の形状が差込部側へ窄まった截頭錐体形であるものは、差込部へ向け窄まって細くなっているので、掛合穴の穴縁部と緊密に接触せず、双方の間の隙間が大きくなって遊び空隙を有する。これにより、グレーチングを上面側又は下面側へ丸めるときに、メインバーが、隣接するメインバーに対してより大きな角度をもって姿勢を変えることができるので、グレーチングをより小さな径で丸めることができる。
【0027】
(d)ジョイントに、各差込部の外端面を軸線方向に貫通した貫通孔が設けられているものは、中間部及び各差込部の潰れる方向への変形を容易にしてジョイントの着脱性を良好にすることができる。また、グレーチングの各ジョイントの貫通孔に紐を通した後、グレーチングを平面上で一方側へ湾曲させ、紐の一端側をストッパーで止め、他方側を引締具で止めて紐を引き絞る等して紐の有効長さを固定することにより、グレーチングの湾曲形状をより確実に自己保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るグレーチングの一実施の形態を示し、排水溝への設置状態を併せて表した斜視説明図。
【図2】グレーチングを構成するメインバーとジョイントの分解斜視図。
【図3】ジョイントの構造を示す斜視図。
【図4】ジョイントによるメインバーの連結構造を示し、(a)はメインバーの間隔を最大にした状態の要部断面説明図、(b)はメインバーの間隔を最小にした状態の要部断面説明図。
【図5】グレーチングを平面上で湾曲させた状態を示す斜視図。
【図6】湾曲した排水溝に湾曲させたグレーチングを収めた状態を示す裏面から視た説明図。
【図7】グレーチングを排水溝に設置した状態から上面側へ丸めながらグレーチングの裏面側と排水溝を清掃する方法を示す説明図。
【図8】(a)はグレーチングを上面側へ丸めている状態の断面説明図、(b)はグレーチングを下面側へ丸めている状態の断面説明図。
【図9】グレーチングの湾曲形状をより確実に自己保持する方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔実施の形態〕
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
【0030】
図1乃至図4を参照する。
グレーチングAは、所要数のメインバー1と、それらを連結する所要数のジョイント2で形成されている。
【0031】
メインバー1は、硬質の合成樹脂で形成されており、踏部10と、踏部10の下側に所要間隔で縦方向(垂直方向)へ平行に設けられた二本の脚部11を備えている。各脚部11の間及びこの脚部11と隣り合うメインバー1の脚部11との間には、全長にわたり空隙部15が設けられている。踏部10の上面には、図2、図4に示すように、滑り止めのため又は使用感を良くするために、軟質の合成樹脂製の表層12が設けられている。
【0032】
各脚部11には、正方形状の掛合穴13が表裏両面を貫通して長手方向の二箇所に所要間隔をおいて形成されている。各掛合穴13は、それぞれ脚部11の長手方向両端から所要の距離だけ離れた位置(内方へ入った位置)に形成されている。なお、各脚部11の各掛合穴13は、相対向して同じ位置に形成されている。
【0033】
なお、各脚部11の下端部には、使用時の設置面に対するガタつきや音の発生を抑制する滑り止め要素である軟質の合成樹脂の滑止層14が設けられている。滑止層14の滑り止め作用によれば、例えばメインバー1上面にグレーチングAの長手方向へ大きな力や衝撃が作用したときに、グレーチングが長手方向に伸びて上に膨らむような変形が起こりにくく、設置部から外れてしまうような危険な状態になることを防止できる。
【0034】
ジョイント2は、弾性を有する合成樹脂で形成されている。ジョイント2は、図3に示すように長手方向の両端にメインバー1の掛合穴13に差し込み掛合する差込部20、21を有している。各差込部20、21は、同軸線上に設けられており、それぞれ端部側が径小となった截頭錐体形である円錐台状に形成されている。
【0035】
なお、差込部20、21の径大側の直径は、後述する中間部22の対角線の長さ(又は対角部の幅)及び前記掛合穴13の対角線の長さよりやや径大に又は太く形成されている。また、差込部20、21の径大側の端面は、掛合穴13の穴縁部に当たってジョイント2が抜けないか抜けにくいように掛止する掛止面201、211となっている。
【0036】
各差込部20、21の間には、各差込部20、21の基端部につながるように中間部22が設けられている。中間部22は、断面正方形状の胴部220と、胴部220の両端側に設けられた四角錐台状の接続部221、222で構成されている。なお、前記胴部220は、断面正方形状に限定するものではなく、断面円形状又は断面多角形状のもの等、他の形状を採用してもよい。
【0037】
また、ジョイント2には、各差込部20、21の外端面200、210を軸線方向(中心線方向)に貫通して、断面形状が円形の貫通孔23が設けられている。貫通孔23を設けることにより、中間部22及び各差込部20、21の潰れる方向への変形を容易にしてジョイント2の着脱性を良好にすることができる。
【0038】
なお、中間部22の胴部220の太さは、掛合穴13の口径よりやや太く形成されている。詳しくは、胴部220の断面正方形状の一辺の長さが、掛合穴13の一辺の長さよりやや長くなるように形成されている。胴部220の外表面四面のうち一面(図2、図3で上面)には、四角形状に膨出した停止突部223が形成されている。
【0039】
停止突部223は、隣り合うメインバー1の間隔が狭まったとき、停止突部223の両段部(ジョイント2の軸線方向両端部の段部)に胴部220に嵌る掛合穴13の穴縁(符号省略)が当たることにより、メインバー1を一定間隔で止めるためのものである(図4(b)参照)。なお、各ジョイント2で各メインバー1を連結したときには、グレーチングAの各メインバー1の上面間に空隙部19が形成される。
【0040】
次に、主に図2乃至図4を参照してメインバー1をジョイント2で連結する方法及び連結構造を説明する。
グレーチングAは、並設された所要数の各メインバー1の隣り合う脚部11間にジョイント2を配し、ジョイント2の差込部20、21を差し込み、各メインバー1を連結することにより形成されている。ジョイント2の差込部20、21を脚部11の掛合穴13に掛合する手順は次の通りである。
【0041】
まず、図2に示すようにジョイント2を掛合穴13に合わせ、一方の差込部20を差し込む。このとき、ジョイント2の差込部20が弾性変形して掛合穴13を通り、掛合穴13を貫通することにより、差込部20は元の形状に戻り、接続部221、222が掛合穴13に収まる。これによって、掛合穴13の穴縁部に掛止面201、211を掛止できるようになり、差込部20は掛合穴13から容易には抜けない状態で掛合する。
【0042】
同様に、ジョイント2の他方の差込部21を別のメインバー1の脚部11の掛合穴13に差し込み掛合する。このようにして、ジョイント2は、掛合穴13から軸線方向へ容易には抜けない状態で隣り合うメインバー1同士をつなぐことができる(図4(a)参照)。このように隣り合うメインバー1を二個のジョイント2で連結することにより、必要数のメインバー1を連ねた所要長さのグレーチングAを形成することができる。
【0043】
なお、図1及び後述する図5では、説明の便宜上、グレーチングAの手前側の端部にジョイント2を掛合した状態を表しているが、所要長さに形成されたものは、端部のジョイント2を取り付ける必要はない。
【0044】
また、本実施の形態では、メインバー1には二本の脚部11が平行に設けられているが、これに限定されるものではなく、脚部11は一本でもよいし、設置時の安定を図るため三本以上設けてもよい。脚部11が一本である場合は、各メインバー1を連結するジョイント2を同軸線上に配置せずに交互にずらしてもよいし、脚部11のジョイント2を装着する部分を肉厚に形成して、厚み方向の表裏側の二箇所にジョイント2の装着部を設けてジョイント2を同軸線上に配置した構造としてもよい。
【0045】
(作用)
グレーチングAは、図1に示すように直線的に設けられた排水溝3の載置段部(符号省略)を構成する金属製(ステンレススチール製等)の載置枠30に設置することもできるし、図6に示すように排水溝3の水平方向に湾曲した部分にも、同様に湾曲させた状態で設置して施工することができる。
【0046】
図1に示す施工状態においては、床面を流れてきた排水が排水溝3に入り、グレーチングAのメインバー1上面間の各空隙部19だけではなく、グレーチングAの幅方向両側からも円滑に流入することができる。すなわち、メインバー1の各掛合穴13は少なくとも各脚部11の両端から所要の距離だけ離れた位置に設けられている。
【0047】
したがって、各掛合穴13に掛合したジョイント2が、各メインバー1の間隔の広さに関わりなくグレーチングAの幅方向両側を塞ぐことがないので、排水はグレーチングAの幅方向両側の各脚部11の間の各空隙部15から円滑に流入することができる。これにより、施工部における排水の集水性に優れると共に水捌けがよい。
【0048】
しかも、排水が流入する部分、つまり各メインバー1の各脚部11の両端部間に空隙部15が形成されている構造は、シンプルであり入り組んだ構造ではないので、髪の毛等が詰まりにくい。また、髪の毛等が多少詰まっても容易に取り除くことができるので、清掃等のメンテナンス性にも優れている。
【0049】
グレーチングAを前記のように湾曲させたとき、各ジョイント2は図6に示すような状態となる。すなわち、図6に示すように、湾曲の曲率の大きい側(図6で左側)の各ジョイント2は図4(a)のように差込部20、21が掛合穴13の穴縁に密着した状態となり、湾曲の曲率の小さい側(図6で右側)の各ジョイント2は図4(b)のように中間部22の胴部220の両側が弾性変形して径小となった状態で、掛合穴13と中間部22の弾性的な復元力による所要の摺動抵抗性をもって、すなわち相互にスライドする際に所要の強さの抵抗がある状態で掛合した状態となる。
【0050】
これにより、グレーチングAは、排水溝3の水平方向に湾曲した部分の載置枠30の曲率に合わせるように湾曲させることができ、その湾曲形状を自己保持した状態で排水溝3に設置して施工することができる。したがって、湾曲形状の自己保持ができず反発力が作用する状態で排水溝3の湾曲した部分に収まるグレーチングと相違して、排水溝3の縁部との間に大きな隙間が生じにくく、使用者の足指等が入って怪我をするおそれはない。
【0051】
更には、図9に示すように、グレーチングAの各ジョイント2の貫通孔23に紐24を通した後、グレーチングAを平面上で一方側へ湾曲させ、紐24の一端側にストッパー240を取り付けて、これを一端部のジョイント2に当てて止め、他方側に引締具241を取り付けて、これを他端部のジョイント2に当てて止めて、紐24の有効長さ(引き絞りによるテンションがかかっている部分の長さ)を固定することにより、グレーチングAの湾曲形状をより確実に自己保持することができる。
【0052】
なお、各ジョイント2は弾性を有する合成樹脂で形成されているので、グレーチングAは、例えば図4(a)に示す状態からグレーチングAの上面方向又は下面方向に容易に曲げることができる。すなわち、グレーチングAは、長尺に形成したものを持ち運ぶ際等に、丸めることが可能であり、取り扱いがしやすい。
【0053】
各メインバー1をつないでいる各ジョイント2は、中間部22の接続部221、222が四角錐台状であり、差込部21、22側へ向け窄まって細くなっているので、掛合穴13の穴縁部と緊密に接触せず、双方の間の隙間130が大きくなって、遊びを有する(図8(a)、(b)参照)。これにより、グレーチングAを上面側又は下面側へ丸めるときに、メインバー1が、隣接するメインバー1に対してより大きな角度をもって姿勢を変えることができるので、グレーチングAをより小さな径で丸めることができる。
【0054】
各掛合穴13に掛合した各ジョイント2が、グレーチングAの幅方向両側を塞ぐことがなく、排水がグレーチングAの幅方向両側の各脚部11の間から円滑に流入することができる点については、グレーチングAを平面上で湾曲させた場合も直線的に設置した場合とほぼ同様である。
【0055】
また、排水溝3に設置されているグレーチングAを清掃する際は、グレーチングAの上面を清掃した後、図7に示すように、グレーチングAを設置した状態から上面側へ丸めながら矢印c方向からグレーチングAの裏面側を清掃することができる。また、グレーチングAを排水溝3から取り外すことなく排水溝3の内部を清掃することができる。これにより、グレーチングAと排水溝3の清掃作業を効率良く容易に行うことができる。
【0056】
本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0057】
A グレーチング
1 メインバー
10 踏部
11 脚部
12 表層
13 掛合穴
130 隙間
14 滑止層
15 空隙部
19 空隙部
2 ジョイント
20、21 差込部
200、210 外端面
201、211 掛合面
22 中間部
220 胴部
221、222 接続部
223 停止突部
23 貫通孔
24 紐
240 ストッパー
241 引締具
3 排水溝
30 載置枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所要数のメインバー(1)を並設してジョイント(2)によって連結することにより構成したグレーチングであって、
前記メインバー(1)は、全長にわたり形成されている踏部(10)と、該踏部(10)の下側に設けられた所要数の脚部(11)を有し、
該脚部(11)の間又は該脚部(11)と隣り合うメインバー(1)の脚部(11)との間には、全長にわたり空隙部が設けられており、
前記脚部(11)には長手方向に所要数の掛合穴(13)が設けられ、該掛合穴(13)は少なくとも前記脚部(11)の両端から所要の距離だけ離れた位置に設けられており、
前記ジョイント(2)は、弾性材料で所要長さに形成されており、長手方向の両端には前記メインバー(1)の前記各掛合穴(13)に差し込み、掛合穴(13)の穴縁部と掛止できる掛止部(201,211)を備えた差込部(20,21)を有しており、該各差込部(20,21)の間の中間部(22)は、前記掛合穴(13)より径大に又は太く形成されており、
隣り合う前記メインバー(1)の対向する脚部(11)の各掛合穴(13)に、前記ジョイント(2)の差込部(20,21)を差し込み掛合してメインバー(1)が連結されている、
グレーチング。
【請求項2】
メインバー(1)の脚部(11)の下端に滑り止め要素(14)が設けられている、
請求項1記載のグレーチング。
【請求項3】
メインバー(1)の脚部(11)に設けられている掛合穴(13)が円形又は多角形状で、ジョイント(2)の中間部(22)の断面形状が掛合穴(13)の形状に合う円形又は多角形状であり、中間部(22)の差込部(20,21)側の形状が差込部(20,21)側へ窄まった截頭錐体形である、
請求項1又は2記載のグレーチング。
【請求項4】
ジョイント(2)に、各差込部(20,21)の外端面を軸線方向に貫通した貫通孔(23)が設けられている、
請求項1、2又は3記載のグレーチング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−14918(P2013−14918A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147642(P2011−147642)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 「UNIVERSAL DESIGN CATALOGUE 2011−2012 ユニバーサルデザイン商品総合カタログ」(平成23年4月26日発行)
【出願人】(500494499)株式会社シマブン (12)
【Fターム(参考)】