説明

グロメットおよびその止水検査装置

【課題】グロメットにおけるワイヤハーネス貫通部分の止水性能を簡易かつ高精度に検査可能とする。
【解決手段】グロメットの第一小径筒部、拡径筒部、および第二小径筒部に前記ワイヤハーネスを貫通させ、該グロメット内部に挿通するワイヤハーネスの電線群の隙間および電線群とグロメットの内周面との間に止水剤を充填して止水処理部を設けており、前記第一小径筒部と第二小径筒部のいずれか一方にガス供給ポートを設けると共に他方にガス検出ポートを設け、前記ガス供給ポートから空気以外の検査用ガスを導入し、前記ガス検出ポートで前記検査用ガスの漏れを検出できる構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグロメットおよびその止水検査装置に関し、詳しくは、グロメットにおけるワイヤハーネス貫通部分の止水性能を簡易かつ高精度に検査できるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のエンジンルームから車室内へ配索されるワイヤハーネスをグロメットに貫通させ、エンジンルームと車室内とを仕切る車体パネルの貫通穴に前記グロメットを取り付けることにより、該貫通穴を通るワイヤハーネスの保護およびエンジンルーム側から車室内への防水、防塵、遮音を図っている。
【0003】
前記グロメットにおいては、貫通させるワイヤハーネスの電線群の隙間や電線群とグロメットの内周面との間に止水剤を充填するなどして、ワイヤハーネスの貫通部分に止水処理を施している。ワイヤハーネスを貫通させたグロメットに対しては、ワイヤハーネス貫通部分である止水処理部の止水性能を検査する必要があり、本出願人は特開2000−241288号公報(特許文献1)に示される止水検査装置1を提案している。
【0004】
即ち、止水検査装置1には、図5のように、エアタンク2と貯水タンク3とを仕切壁4を介して設けており、仕切壁4に設けた貫通穴5にグロメット6の車体係止凹部6aを嵌合させてグロメット6を取り付け、グロメット6に貫通させたワイヤハーネスW/Hの一端側をエアタンク2内に収容すると共に、他端側を貯水タンク3内に収容する。気密状態に保ったエアタンク2内に加圧空気を供給すると共に、貯水タンク3内に水を供給してグロメット6およびワイヤハーネスW/Hの他端側を水没させると、ワイヤハーネス貫通部分である止水処理部7の止水性能が不十分である場合には、エアタンク2内の加圧空気が止水不良部分を通って貯水タンク3内に漏れ出し、気泡となって浮上する。即ち、貯水タンク3内の気泡の有無により、止水処理部7の止水状態の良、不良を判定することができる。
【0005】
しかし、前記構成によれば、グロメット6やワイヤハーネスW/Hの一部を水没させる工程や、検査後、錆や腐食等を防ぐためにワイヤハーネスW/Hなどに付着した水分を取り除く工程が必要となり検査工程が複雑化するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−241288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、グロメットにおけるワイヤハーネス貫通部分の止水性能を簡易かつ高精度に検査できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、第1の発明は、ワイヤハーネスを密着させて貫通させる第一小径筒部と、該第一小径筒部に連続する拡径筒部と、該拡径筒部の大径側の外周面に環状に設けた車体係止凹部と、該拡径筒部の大径端側の内周面から突出させた閉鎖壁と、該閉鎖壁の中央に設けた直径方向のスリットと、該スリットの中央部に対向して設けたワイヤハーネス挿通穴を形成する半円状切欠と、該半円状切欠の周縁より突設した半割状の第二小径筒部を備えたグロメットであって、
前記グロメットの第一小径筒部、拡径筒部、および第二小径筒部に前記ワイヤハーネスを貫通させ、該グロメット内部を挿通するワイヤハーネスの拡径筒部内に電線群の隙間および電線群とグロメットの内周面との間に止水剤を充填して止水処理部を設けており、
前記第一小径筒部と第二小径筒部のいずれか一方にガス供給ポートを設けると共に他方にガス検出ポートを設け、
前記ガス供給ポートから空気以外の検査用ガスを導入し、前記ガス検出ポートで前記検査用ガスの漏れを検出できる構成としていることを特徴とするグロメットを提供している。
【0009】
前記のように、グロメットの第一小径筒部と第二小径筒部のいずれか一方に、空気以外の検査用ガスを導入するガス供給ポートを設けると共に、他方にガス検出ポートを設けて前記検査用ガスの漏れを検出できる構成としている。したがって、前記ガス供給ポートとガス検出ポートとの間に配置されたワイヤハーネスの貫通部分、即ち、前記グロメットの止水処理部の止水状態が不十分である場合には、ガス供給ポートから導入された検査用ガスは止水処理部の止水不良部分を通ってガス検出ポート側に漏れ出し、漏れ出した検査用ガスが前記ガス検出ポートで検出されることにより、止水不良を判別することができる。
【0010】
特に、本発明では、グロメット両側の小径筒部にガス供給ポートおよびガス検出ポートを設けているため、止水処理部の止水不良によってガス検出ポート側の小径筒部に漏れ出した検査用ガスを、他に流出させることなくすべてガス検出ポートに流入させて検出することが可能となる。即ち、少ない量の検査用ガスで高感度のガス漏れ検知が可能となり、グロメットの止水処理部の止水状態を高精度に検査することができる。また、従来のように、止水検査のためにグロメットやワイヤハーネスの一部を水没させたり、付着した水分を取り除いたりする必要がなくなるため止水検査を簡易化することができ、グロメットの止水検査に必要な検査装置も小型化することができる。
【0011】
前記ガス供給ポートやガス検出ポートとしては、例えば、検査用ガス供給のためのガス供給管や、検査用ガスを吸引するための吸引プローブを密嵌できる程度の挿入穴としておくことが好ましい。また、前記ガス供給ポートおよびガス検出ポートは、止水処理部の両端より外側位置の第一小径筒部または第二小径筒部に設けておくことが好ましい。これにより、止水処理部全長にわたって止水検査を確実に行うことができると共に、ガス供給ポートおよびガス検出ポートによって止水処理部の止水性能を低下させることもない。
【0012】
前記グロメットの止水処理部において、貫通させるワイヤハーネスの電線群の隙間に止水剤を充填する方法は限定されない。
例えば、電線群を隣接させて並列させ止水剤を電線間に浸透するように塗布し、該止水剤を塗布した部分にフィルムやシート等を被せて断面円形状に丸めた後、外周をテープ巻きしてもよい。
ワイヤハーネスをグロメットに貫通させたのち、グロメットの拡径筒部を大径側を上面とし、該大径側の開口へ上方より止水剤を注入してもよい。
【0013】
前記第一小径筒部に前記ガス検出ポート、前記第二小径筒部に前記ガス供給ポートを設けていることが好ましい。
【0014】
通常、グロメットの第一小径筒部は車室内に配置され、第二小径筒部はエンジンルームに配置される。したがって、前記のように、第一小径筒部にガス検出ポートを、第二小径筒部にガス供給ポートを設けることで、検査用ガスの移動方向を、車両へのグロメット取り付け状態における水の移動方向に合わせることができる。即ち、実際の使用状態に合わせた止水検査を行うことができる。
【0015】
第2の発明は、前記グロメットの止水検査装置であって、
前記ガス供給ポートに連通させて取り付ける検査用ガスのガス供給管と、該ガス供給管に介設した圧力調整器と、
前記ガス検出ポートに連通させて取り付ける吸引プローブと、該吸引プローブと連結したガス漏れ検出器を備えていることを特徴とするグロメットの止水検査装置を提供している。
【0016】
前記のように、グロメットのガス検出ポートに、ガス漏れ検出器と連結させた吸引プローブを取り付けているため、グロメットの止水処理部の止水不良部分を通ってガス検出ポート側に漏れ出した検査用ガスが、前記ガス検出ポートに連通させた吸引プローブによって確実に吸引され、該吸引プローブに連結したガス漏れ検出器で前記検査用ガスが検出されると共に、そのガス漏れ量も検出することができる。即ち、前記構成によれば、ガス検出ポート側のガス漏れ検出器で検出されたガス漏れ量によって、前記止水処理部の止水性能を定量的に把握することができ、より高精度な止水検査を簡易に行うことが可能となる。また、従来のようなエアタンクや貯水タンクも不要となり、止水検査装置を大幅に小型化することができる。
【0017】
前記グロメットの止水処理部を挟む一方側は前記ガス供給ポートへ供給するガスで高圧とし、他方側は前記吸引プローブから導入される吸引圧力で低圧とし、圧力差を設けていることが好ましい。
【0018】
前記のように、ガス供給ポート側を高圧とする一方、ガス検出ポート側を低圧として、ガス供給ポート側とガス検出ポート側との間に圧力差を設けることにより、ガス供給ポートから導入された検査用ガスが止水処理部の止水不良部分を通ってガス検出ポート側に漏れ出し易くなり、短時間で精度の高い止水検査を行うことができる。
【0019】
前記ガス供給管から導入するガスは、ヘリウムガス、水素などから選択され、前記止水処理部を挟む圧力差は所定範囲内としている。
【0020】
前記止水処理部を挟む差圧と、ガス漏れ検出器で検出された検出ガス量との関係に応じて閾値を設定した記憶部と、該閾値以上の検出量であると止水性能が基準以下と判定される判定部と、判定部で基準以下と判定されると表示する表示部を備えた評価機器を前記ガス漏れ検出器と一体または別体で備えていることが好ましい。
【0021】
前記構成の評価機器を備えることにより、グロメットの止水処理部における止水性能が基準を満たしているか否かが一目瞭然に分かり、より迅速な止水検査が可能となる。
【0022】
ワイヤハーネスの組立作業台上に搭載して、該組立作業台上で前記グロメットにワイヤハーネスを貫通して止水処理後に止水検査を行う構成としていることが好ましい。
【0023】
本発明の止水検査装置は従来の検査装置より構造がシンプルで小型であるため、前記のように、組立作業台上で止水検査を行うことが可能となる。よって、止水検査の作業効率を一層高めることができる。
【発明の効果】
【0024】
前述したように、第1の発明によれば、グロメットの第一小径筒部と第二小径筒部のいずれか一方に、空気以外の検査用ガスを導入するガス供給ポートを設けると共に、他方にガス検出ポートを設けて前記検査用ガスの漏れを検出できる構成としているため、ガス供給ポートとガス検出ポートとの間に配置された前記グロメットの止水処理部の止水状態が不十分である場合には、ガス供給ポートから導入された検査用ガスが前記止水処理部の止水不良部分を通ってガス検出ポート側に漏れ出し、漏れ出した検査用ガスをガス検出ポートで検出することにより、止水不良を判別することができる。
【0025】
特に、第1の発明では、グロメット両側の小径筒部にガス供給ポートおよびガス検出ポートを設けているため、止水処理部の止水不良によってガス検出ポート側の小径筒部に漏れ出した検査用ガスを、他に流出させることなくすべてガス検出ポートに流入させて検出することが可能となる。よって、少ない量の検査用ガスで高感度のガス漏れ検知が可能となり、グロメットの止水処理部の止水状態を高精度に検査することができる。また、従来のように、止水検査のためにグロメットやワイヤハーネスの一部を水没させたり、付着した水分を取り除いたりする必要がなくなるため止水検査を簡易化することができ、グロメットの止水検査に必要な検査装置も小型化することができる。
【0026】
また、第2の発明によれば、グロメットのガス検出ポートに、ガス漏れ検出器と連結させた吸引プローブを取り付けているため、グロメットの止水処理部の止水不良部分を通ってガス検出ポート側に漏れ出した検査用ガスが、前記ガス検出ポートに連通させた吸引プローブによって確実に吸引され、該吸引プローブに連結したガス漏れ検出器で前記検査用ガスが検出されると共に、そのガス漏れ量も検出することができる。即ち、前記構成によれば、前記ガス検出ポート側のガス漏れ検出器で検出されたガス漏れ量により、止水処理部の止水性能を定量的に把握することができ、より高精度な止水検査を簡易に行うことが可能となる。また、従来のようなエアタンクや貯水タンクも不要となり、止水検査装置を大幅に小型化することができる。
【0027】
また、前記のように、ガス供給ポート側を高圧とする一方、ガス検出ポート側を低圧として、ガス供給ポート側とガス検出ポート側との間に圧力差を設けることにより、ガス供給ポートから導入された検査用ガスが止水処理部の止水不良部分を通ってガス検出ポート側に漏れ出し易くなり、短時間で高精度の止水検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態におけるグロメットを示し、(A)は概略平面図、(B)はA−A断面図である。
【図2】グロメットの閉鎖壁を示す概略側面図である。
【図3】グロメットの止水処理部の概略断面図である。
【図4】本実施形態のグロメットの止水検査装置を示す概略図である。
【図5】従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4は本実施形態を示している。グロメット10はゴムまたはエラストマーで一体成形しており、図1(A)、(B)に示すように、円錐状に拡径する拡径筒部12の小径側端に第一小径筒部11を連続させて突設していると共に、拡径筒部12の大径側の外周面に車体係止凹部13を環状に設けている。また、拡径筒部12の大径端側の内周面から薄肉の閉鎖壁14を突出させており、閉鎖壁14の中央には、図2に示すように、直径方向のスリット15と、スリット15の中央部に対向させた半円状切欠16を設けている。前記半円状切欠16を対向させることにより、ワイヤハーネスW/Hの挿通穴を形成しており、前記半円状切欠16の周縁より半割状の第二小径筒部17を突設している。
【0030】
また、第一小径筒部11の中央部より外側寄りの位置に、吸引プローブ24を連通して取り付ける挿入穴形状のガス検出ポート18を設けている。また、第二小径筒部17の中央部より外側寄りの位置には、検査用ガスのガス供給管22を連通して取り付ける挿入穴形状のガス供給ポート19を設けている。ガス供給ポート19は、空気以外の検査用ガスを第二小径筒部17内に導入するために設けており、ガス検出ポート18は、第二小径筒部17から第一小径筒部11への前記検査用ガスの漏れを検出するために設けている。
ガス検出ポート18の穴径は吸引プローブ24の外径より小さく設定し、吸引プローブ24がガス検出ポート18を広げながら挿入、密嵌されるようにしている。同様に、ガス供給ポート19の穴径はガス供給管22の外径より小さく設定し、ガス供給管22がガス供給ポート19を広げながら挿入、密嵌されるようにしている。
【0031】
前記グロメット10には、電線群の隙間に止水剤が充填され線間止水が施されたワイヤハーネスW/Hを貫通させている。該止水剤の充填方法は限定されないが、本実施形態では、電線群を隣接させて並列させ、線間止水が必要な領域に止水剤Sを各電線Wの間に浸透するように塗布し、該止水剤Sを塗布した部分にフィルム(図示せず)を被せて断面円形状に丸めた後、電線群の外周にテープTを巻き付けている。
止水剤Sとしてシリコーン系止水剤を用いている。さらに、第一小径筒部11および第二小径筒部17の内径をワイヤハーネスW/Hの外径より小さく設定し、第一、第二小径筒部11、17を治具で広げながら前記ワイヤハーネスW/Hを貫通している。
第一、第二小径筒部11、17の先端から引き出されたワイヤハーネスW/Hと、該第一、第二小径筒部11、17の先端との外周面をテープ巻きしている。該第一、第二小径筒部の先端とワイヤハーネスW/Hとのテープ巻き部分と前記止水処理部Aとの間の第一、第二小径筒部にガス検出ポート18、ガス供給ポート19を設けている(図1、図3、図4参照)。
【0032】
以下、グロメット10の止水検査装置20について説明する。
図4に示す止水検査装置20は、ワイヤハーネスの組立作業台(図示せず)上に搭載され、該組立作業台上でグロメット10にワイヤハーネスW/Hを貫通して前記のような止水処理を行った後、止水検査を行うものである。
止水検査装置20には、グロメット10のガス供給ポート19に連通させて取り付ける検査用ガスのガス供給管22と、該ガス供給管22に介設した圧力調整器23を備えている。具体的には、図4に示すように、検査用ガスが充填されたガスボンベ21に接続されたガス供給管22を、グロメット10の第二小径筒部17に設けたガス供給ポート19の挿入穴に挿入して取り付けており、ガス供給管22には圧力調整器23を介設して、止水処理部Aを挟むガス供給ポート19側の第二小径筒部17内を正圧制御している。なお、本実施形態では、前記検査用ガスとして、ヘリウムガスをガス供給ポート19に導入し、止水処理部Aを挟むガス供給ポート19側の第二小径筒部17の圧力を所定値に保っている。
【0033】
また、止水検査装置20には、グロメット10のガス検出ポート18に連通させて取り付ける吸引プローブ24と、該吸引プローブ24と連結したガス漏れ検出器25を備えている。即ち、図4に示すように、ガス漏れ検出器25に連結された吸引プローブ24を、グロメット10の第一小径筒部11に設けたガス検出ポート18の挿入穴に挿入して取り付けており、吸引プローブ24による吸引によって止水処理部Aを挟むガス検出ポート18側の第一小径筒部11内を負圧制御している。なお、本実施形態ではガス漏れ検出器25に負圧発生器(図示せず)を内蔵し、止水処理部Aを挟むガス検出ポート18側の第一小径筒部11の圧力を所定値に保っている。
前記のように、止水処理部Aを挟むガス供給ポート19側を正圧制御し、止水処理部Aを挟むガス検出ポート18側を負圧制御することによって、本実施形態ではガス供給ポート19側とガス検出ポート18側との間に所定の圧力差を発生させている。
【0034】
さらに、止水処理部Aを挟む差圧とガス漏れ検出器25で検出された検出ガス量との関係に応じて閾値を設定した記憶部(図示せず)と、該閾値以上の検出量であると止水性能が基準以下と判定する判定部(図示せず)と、該判定部で基準以下と判定されるとその旨を表示する表示部(図示せず)とを備えた評価機器26を、ガス漏れ検出器25に接続している。
【0035】
前記のように、グロメット10の第二小径筒部17に、検査用ガスであるヘリウムガスを導入するガス供給ポート19を設けると共に、第一小径筒部11にガス検出ポート18を設けて前記検査用ガスの漏れを検出できる構成としているため、ガス供給ポート19とガス検出ポート18との間に配置されたグロメット10の止水処理部Aの止水状態が不十分である場合には、ガス供給ポート19から導入されたヘリウムガスが止水処理部Aの止水不良部分を通ってガス検出ポート18側の第一小径筒部11に漏れ出し、漏れ出したヘリウムガスをガス検出ポート18で検出することにより、止水不良を判別することができる。
【0036】
特に、本実施形態ではグロメット10の第二、第一小径筒部17、11にガス供給ポート19およびガス検出ポート18を設けているため、止水処理部Aの止水不良によってガス検出ポート18側の第一小径筒部11に漏れ出したヘリウムガスを、他に流出させることなくすべてガス検出ポート18に流入させて検出することが可能となる。よって、少ないヘリウムガス量で高感度のガス漏れ検知が可能となり、グロメット10の止水処理部Aの止水状態を高精度に検査することができる。また、従来のように、止水検査のためにグロメットやワイヤハーネスの一部を水没させたり、付着した水分を取り除いたりする必要がなくなるため止水検査を簡易化することができる。
【0037】
また、前記のように、第一小径筒部11のガス検出ポート18に、ガス漏れ検出器25と連結させた吸引プローブ24を取り付けているため、止水不良部分を通ってガス検出ポート18側に漏れ出したヘリウムガスが、ガス検出ポート18に取り付けた吸引プローブ24によって確実に吸引され、該吸引プローブ24に連結したガス漏れ検出器25でヘリウムガスが検出されると共に、そのガス漏れ量も検出することができる。即ち、前記構成によれば、ガス漏れ検出器25で検出されたガス漏れ量により、止水処理部Aの止水性能を定量的に把握することができ、より高精度な止水検査を簡易に行うことが可能となる。また、従来のようなエアタンクや貯水タンクも不要となり、止水検査装置20を大幅に小型化することができる。
【0038】
特に、前記のように、ガス供給ポート19側を高圧とする一方、ガス検出ポート18側を低圧として、ガス供給ポート19側とガス検出ポート18側との間に圧力差を設けているため、ガス供給ポート19から導入されたヘリウムガスが止水処理部Aの止水不良部分を通ってガス検出ポート18側に一層漏れ出し易くなり、短時間で高精度の止水検査を行うことができる。
前記ガス供給ポート19から導入したヘリウムガスが拡径筒部12、第一小径筒部11へと流入して、第二小径筒部17の先端から外方に漏れることを防止するために、例えばガス供給ポート19を設けた第二小径筒部17の先端とワイヤハーネスとの外周面との間にテープTを巻き付けて、電線間の隙間から漏れが発生しにくいようにしても良いし、止水樹脂を第二小径筒部17の内部まで注入して電線群の隙間を埋めても良い。
【0039】
また、止水処理部Aを挟む差圧とガス漏れ検出器25で検出されたガス量との関係に応じて止水性能を判定する評価機器26を設けることにより、グロメット10の止水性能が基準を満たしているか否かが一目瞭然に分かり、より迅速な止水検査が可能となる。
さらに、本実施形態の止水検査装置20は従来の検査装置より構造がシンプルで小型化できるため、前記のように、組立作業台上で止水検査が可能である。よって、止水検査の作業効率を一層高めることができる。
【符号の説明】
【0040】
10 グロメット
11 第一小径筒部
12 拡径筒部
13 車体係止凹部
14 閉鎖壁
15 スリット
16 半円状切欠
17 第二小径筒部
18 ガス検出ポート
19 ガス供給ポート
A 止水処理部
20 止水検査装置
21 ガスボンベ
22 ガス供給管
23 圧力調整器
24 吸引プローブ
25 ガス漏れ検出器
26 評価装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスを密着させて貫通させる第一小径筒部と、該第一小径筒部に連続する拡径筒部と、該拡径筒部の大径側の外周面に環状に設けた車体係止凹部と、該拡径筒部の大径端側の内周面から突出させた閉鎖壁と、該閉鎖壁の中央に設けた直径方向のスリットと、該スリットの中央部に対向して設けたワイヤハーネス挿通穴を形成する半円状切欠と、該半円状切欠の周縁より突設した半割状の第二小径筒部を備えたグロメットであって、
前記グロメットの第一小径筒部、拡径筒部、および第二小径筒部に前記ワイヤハーネスを貫通させ、該グロメット内部に挿通するワイヤハーネスの電線群の隙間および電線群とグロメットの内周面との間に止水剤を充填して止水処理部を設けており、
前記第一小径筒部と第二小径筒部のいずれか一方にガス供給ポートを設けると共に他方にガス検出ポートを設け、
前記ガス供給ポートから空気以外の検査用ガスを導入し、前記ガス検出ポートで前記検査用ガスの漏れを検出できる構成としていることを特徴とするグロメット。
【請求項2】
前記第一小径筒部に前記ガス検出ポート、前記第二小径筒部に前記ガス供給ポートを設けている請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のグロメットの止水検査装置であって、
前記ガス供給ポートに連通させて取り付ける検査用ガスのガス供給管と、該ガス供給管に介設した圧力調整器と、
前記ガス検出ポートに連通させて取り付ける吸引プローブと、該吸引プローブと連結したガス漏れ検出器を備えていることを特徴とするグロメットの止水検査装置。
【請求項4】
前記グロメットの止水処理部を挟む一方側は前記ガス供給ポートへ供給するガスで高圧とし、他方側は前記吸引プローブから導入される吸引圧力で低圧とし、圧力差を設けている請求項3に記載のグロメットの止水検査装置。
【請求項5】
前記止水処理部を挟む差圧と、ガス漏れ検出器で検出された検出ガス量との関係に応じて閾値を設定した記憶部と、該閾値以上の検出量であると止水性能が基準以下と判定する判定部と、判定部で基準以下と判定されると表示する表示部を備えた評価機器を前記ガス漏れ検出器と一体または別体で備えている請求項4に記載のグロメットの止水検査装置。
【請求項6】
ワイヤハーネスの組立作業台上に搭載し、該組立作業台上で前記グロメットをワイヤハーネスに貫通して止水処理後に止水検査を行う構成としている請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載のグロメットの止水検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−230318(P2010−230318A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74951(P2009−74951)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】