説明

グロメット

【課題】ワイヤハーネスを斜め下方へ引っ張るだけの簡単な作業により、パネルの貫通孔からワイヤハーネスを簡単かつ確実に取り外すことができるグロメットを提供する。
【解決手段】内部にワイヤハーネス7が挿通される薄肉の小径筒部11と薄肉の傾斜部12及び厚肉の大径筒部13とを有し、この大径筒部13の外壁面13aにパネル9の貫通孔9aに嵌着される嵌着溝13bを設けたグロメット10において、傾斜部12の内壁面12c及び大径筒部13の内壁面13cの左右両側及び下側に補強部としての3つのリブ14をそれぞれ一体突出形成し、パネル9からワイヤハーネス7を取り外す際にリブ14側の大径筒部13の嵌着溝13bを支点Pとして該ワイヤハーネス7を斜め下方に引っ張り自在にすると共に、傾斜部12及び大径筒部13の強度の弱い上側を弾性変形自在にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌に配索されたグロメット付きのワイヤハーネスを車体から取り外す際に該ワイヤハーネスを引っ張ることで離脱させて解体するようにしたグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のグロメットとして、図8に示すものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このグロメット1は、図8(a),(b)に示すように、内部にワイヤハーネス7が挿通される薄肉の小径筒部2と薄肉で湾曲状の傾斜部3及び厚肉の大径筒部4とを有している。この小径筒部2は円筒状の固定部材5でワイヤハーネス7に固定してある。また、傾斜部3の内壁面3aには、大径筒部4の開口部より車室側に延出する細長い連結部6を有している。この連結部6の先端部6aはテープ8によりワイヤハーネス7に結束してある。さらに、大径筒部4の外壁面4aにパネル9の貫通孔9aに嵌着される嵌着溝4bを設けてある。
【0004】
そして、車輌の解体時等において、パネル9の貫通孔9aからワイヤハーネス7を取り外す際には、図8(b)に示すように、車室側からワイヤハーネス7に引っ張り力Fを加えると、ワイヤハーネス7の車室側への変位に伴って、傾斜部3の内壁面3aに設けられた連結部6が車室側に変位し、これに連動して傾斜部3が局部的に車室側に引っ張られて変形する。この傾斜部3の局部的な変形により、大径筒部4の嵌着溝4bの近傍が部分的に変形して、パネル9の貫通孔9aから大径筒部4の嵌着溝4bが離脱してグロメット1が取り外される。
【特許文献1】特開2000−233696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のグロメット1では、傾斜部3の連結部6の先端部6aをワイヤハーネス7にテープ8で固定する必要があるため、組み付け作業が煩雑となり、また、ワイヤハーネス7を引っ張る際に大きな引っ張り力Fがないと、グロメット1をパネル9の貫通孔9aから取り外し難かった。
【0006】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、ワイヤハーネスを引っ張るだけの簡単な作業により、パネルの貫通孔からワイヤハーネスを簡単かつ確実に取り外すことができるグロメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、内部にワイヤハーネスが挿通される薄肉の小径筒部と薄肉の傾斜部及び厚肉の大径筒部とを有し、この大径筒部の外壁面にパネルの貫通孔に嵌着される嵌着溝を設けたグロメットにおいて、前記傾斜部の内壁面及び前記大径筒部の内壁面の少なくとも一方の片側に補強部を設け、前記パネルから前記ワイヤハーネスを取り外す際に前記補強部側の前記大径筒部の嵌着溝を支点として該ワイヤハーネスを引っ張り自在にすると共に、前記傾斜部及び前記大径筒部の他方の片側を弾性変形自在にしたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載のグロメットであって、前記傾斜部の内壁面及び前記大径筒部の内壁面の少なくとも一方の片側に複数のリブをそれぞれ設けて前記補強部としたことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1記載のグロメットであって、前記傾斜部の内壁面及び前記大径筒部の内壁面の少なくとも一方の片側に厚肉部を設けて前記補強部としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、傾斜部の内壁面及び大径筒部の内壁面の少なくとも一方の片側に補強部を設け、パネルからワイヤハーネスを取り外す際に補強部側の大径筒部の嵌着溝を支点として該ワイヤハーネスを引っ張り自在にすると共に、傾斜部及び大径筒部の他方の片側を弾性変形自在にしたことにより、ワイヤハーネスを引っ張るだけの簡単な作業により、パネルの貫通孔からグロメット付きのワイヤハーネスを簡単かつ確実に取り外すことができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、傾斜部の内壁面及び大径筒部の内壁面の少なくとも一方の片側に複数のリブをそれぞれ設けて補強部としたことにより、ワイヤハーネスを引っ張るだけの簡単な作業により、パネルの貫通孔からグロメット付きのワイヤハーネスを簡単かつ確実に取り外すことができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、傾斜部の内壁面及び大径筒部の内壁面の少なくとも一方の片側に厚肉部を設けて補強部としたことにより、ワイヤハーネスを引っ張るだけの簡単な作業により、パネルの貫通孔からグロメット付きのワイヤハーネスを簡単かつ確実に取り外すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明の第1実施形態のグロメットを示す側面図、図2は同グロメットを大径筒部側から見た説明図、図3は同グロメットの断面図、図4は同グロメットを取り外す際の断面図である。
【0015】
図1〜図4に示すように、グロメット10は、内部にワイヤハーネス7が挿通される薄肉で円筒状の小径筒部11と、この小径筒部11に一体形成された薄肉で円錐筒状の傾斜部12と、この傾斜部12に一体形成された厚肉で円筒状の大径筒部13とを備え、こらら小径筒部11と傾斜部12及び大径筒部13はゴム等の弾性材料により一体成形されている。
【0016】
図1及び図3に示すように、小径筒部11の外壁の開口側には円環状の凸部11aを一体突出形成してある。そして、この小径筒部11はワイヤハーネス7にテープ8を介して固定してある。また、大径筒部13の外壁面13aには、車輌用のパネル(車体)9の貫通孔9aに嵌着される環凹状の嵌着溝13bを形成してある。
【0017】
図2及び図3に示すように、傾斜部12の内壁面12cと大径筒部13の内壁面13cの左右両側及び下側にはワイヤハーネス7の長手方向に沿うように3つのリブ(補強部)14をそれぞれ一体突出形成してある。そして、図4に示すように、パネル9の貫通孔9aからワイヤハーネス7を取り外す際に、各リブ14側の大径筒部13の嵌着溝13bを支点Pとして該ワイヤハーネス7を車室側の斜め下方に引っ張り自在にすると共に、傾斜部12及び大径筒部13の上側を弾性変形自在にしてある。
【0018】
以上実施形態のグロメット10によれば、図1及び図3に示すように、ワイヤハーネス7とグロメット10の取付状態においては、グロメット10の小径筒部11にワイヤハーネス7を貫通させ、該小径筒部11にテープ8を巻き付けることによりワイヤハーネス7に固定してあると共に、小径筒部11とワイヤハーネス7との間に図示しない止水剤を注入して防水加工を施してある。この状態より、車輌用のパネル(車体)9の貫通孔9aに大径筒部13の嵌着溝13bを嵌着することにより、パネル9にグロメット10を取り付ける。
【0019】
そして、車輌の解体作業時等において、パネル9の貫通孔9aからワイヤハーネス7を取り外す際に、図4に示すように、車室側からワイヤハーネス7を3つのリブ14で補強されてグロメット10の強度が強い方向である斜め下方に小さい引っ張り力Fで引っ張ると、各リブ14側の大径筒部13の嵌着溝13bを支点Pとして該ワイヤハーネス7が車室側の斜め下方に引っ張られることにより、傾斜部12及び大径筒部13のリブ14で補強されていない強度の弱い上側が簡単に弾性変形し、パネル9の貫通孔9aから大径筒部13の嵌着溝13bが離脱してグロメット10が取り外される。
【0020】
このように、グロメット10の傾斜部12の内壁面12c及び大径筒部13の内壁面13cの左右両側と下側の90度隔てた位置に補強部としての3つのリブ14をそれぞれ一体突出形成し、パネル9の貫通孔9aからワイヤハーネス7を取り外す際に、各リブ14側の大径筒部13の嵌着溝13bを支点Pとして該ワイヤハーネス7を車室側から斜め下方に引っ張ると、傾斜部12と大径筒部13のリブ14で補強されていない強度の弱い上側が車室側に弾性変形して、パネル9の貫通孔9aから大径筒部13の嵌着溝13bが離脱することにより、ワイヤハーネス7を車室側から斜め下方に引っ張るだけの簡単な作業により、パネル9の貫通孔9aからグロメット10付きのワイヤハーネス7を簡単かつ確実に取り外すことができる。
【0021】
図5は本発明の第2実施形態のグロメットを大径筒部側から見た説明図である。
【0022】
この第2実施形態のグロメット10′は、傾斜部12の内壁面12c及び大径筒部13の内壁面13cの左右両側より下側にワイヤハーネス7の長手方向に沿うように厚肉部(補強部)15を一体突出形成してある。これにより、前記第1実施形態のグロメット10と同様に、ワイヤハーネス7を車室側から斜め下方に引っ張るだけの簡単な作業により、パネル9の貫通孔9aからグロメットグロメット10′付きのワイヤハーネス7を簡単かつ確実に取り外すことができる。
【0023】
尚、前記第1実施形態によれば、グロメット10の傾斜部12の内壁面12c及び大径筒部13の内壁面13cの左右両側と下側の90度隔てた位置に補強部としての3つのリブ14を一体突出形成したが、図6に示すように、傾斜部12の内壁面12c及び大径筒部13の内壁面13cの右側と下側の120度隔てた位置に補強部としての2つのリブ14を一体突出形成しても良い。
【0024】
また、前記第2実施形態によれば、グロメット10′の傾斜部12の内壁面12c及び大径筒部13の内壁面13cの左右両側より下側にワイヤハーネス7の長手方向に沿うように補強部としての厚肉部15を一体突出形成したが、図7に示すように、傾斜部12の内壁面12c及び大径筒部13の内壁面13cの右側より下側にワイヤハーネス7の長手方向に沿うように補強部としての厚肉部15′を一体突出形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態のグロメットを示す側面図である。
【図2】上記グロメットを大径筒部側から見た説明図である。
【図3】上記グロメットの断面図である。
【図4】上記グロメットを取り外す際の断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態のグロメットを大径筒部側から見た説明図である。
【図6】上記第1実施形態のグロメットの変形例を示す説明図である。
【図7】上記第2実施形態のグロメットの変形例を示す説明図である。
【図8】(a)は従来のグロメットの断面図、(b)は同グロメットを取り外す際の断面図である。
【符号の説明】
【0026】
7 ワイヤハーネス
9 パネル
9a 貫通孔
10,10′ グロメット
11 小径筒部
12 傾斜部
12c 内壁面
13 大径筒部
13a 外壁面
13b 嵌着溝
13c 内壁面
14 リブ(補強部)
15,15′ 厚肉部(補強部)
P 支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にワイヤハーネスが挿通される薄肉の小径筒部と薄肉の傾斜部及び厚肉の大径筒部とを有し、この大径筒部の外壁面にパネルの貫通孔に嵌着される嵌着溝を設けたグロメットにおいて、
前記傾斜部の内壁面及び前記大径筒部の内壁面の少なくとも一方の片側に補強部を設け、前記パネルから前記ワイヤハーネスを取り外す際に前記補強部側の前記大径筒部の嵌着溝を支点として該ワイヤハーネスを引っ張り自在にすると共に、前記傾斜部及び前記大径筒部の他方の片側を弾性変形自在にしたことを特徴とするグロメット。
【請求項2】
請求項1記載のグロメットであって、
前記傾斜部の内壁面及び前記大径筒部の内壁面の少なくとも一方の片側に複数のリブをそれぞれ設けて前記補強部としたことを特徴とするグロメット。
【請求項3】
請求項1記載のグロメットであって、
前記傾斜部の内壁面及び前記大径筒部の内壁面の少なくとも一方の片側に厚肉部を設けて前記補強部としたことを特徴とするグロメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−189099(P2009−189099A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23925(P2008−23925)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】