説明

グロメット

【課題】単純な構造でかつパネルの両側から簡単に取り外すことができるグロメットを提供する。
【解決手段】グロメット1は、弾性材料から構成され、内側にワイヤハーネス4を通す。
グロメット1は、小径筒部10と大径筒部20と連結筒部30と係止部40とを備えている。連結筒部30は、小径筒部10と大径筒部20とを連結し、小径筒部10を大径筒部20の外側に位置付ける状態と小径筒部10を大径筒部20の内側に位置付ける状態とに亘って弾性変形自在に設けられている。係止部40は、小径筒部10が大径筒部20の内側に位置付けられると小径筒部10を大径筒部20内に係止し、大径筒部20をパネル2の孔3内に係止する。係止部40は、大径筒部20から小径筒部10に向かって突出した突部25と、小径筒部10に設けられ突部25との間に弾性変形した連結筒部30の外壁31を挟んで突部25と係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両としての自動車等の車体を構成するパネルに取り付けられかつ内側にワイヤハーネスを通すグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
車両としての自動車等の車体を構成するパネルに設けられた孔内にワイヤハーネスを通し、該ワイヤハーネスに水等の水分(液体)が付着することを防止するために、従来から種々のグロメットが用いられてきた。
【0003】
近年、環境問題を考慮して、廃車等の自動車解体時における部品材料毎の分別回収、及びその後の廃棄やリサイクルが要求されている。例えば、車体のパネルを構成する鉄成分と、車体内に配索されるワイヤハーネスの電線を構成する銅成分とを分別する必要がある。このような分別作業を軽減させるために、パネルから取り外しやすいグロメットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載されたグロメットは、ゴム等の弾性材料から構成されかつ筒状に形成されて内側にワイヤハーネスを通すグロメット本体と、このグロメット本体の一端部の全周に亘って設けられてパネルの孔内に係止する係止凹部と、グロメット本体の他端部側の内面に連なり該グロメット本体の一端部側に突出した帯板状の連結部を備えている。
【0005】
前述した構成のグロメットは、グロメット本体の他端部側からパネルの孔内に挿入して係止凹部をパネルの孔内に係止させた後、連結部の先端部分をワイヤハーネスの外周面に重ねて該先端部分とワイヤハーネスとにテープ等を巻き付けて、パネルに取り付けられる。このグロメットをパネルから取り外す際は、グロメットの一端部側からワイヤハーネスを引っ張ることで、連結部が引っ張られて係止凹部の特にグロメットの他端部側が弾性変形して係止凹部のパネルの孔内への係止が解除される。このように、グロメットをパネルから簡単に取り外すことができる。
【0006】
また、前述した係止凹部のかわりにアンカー形状のクリップ部によってパネルに取り付けられるグロメットが知られている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2に記載されたグロメットは、所謂貫通レスグロメットである。このグロメットは、インナグロメットと、アウタグロメットとを少なくとも備えている。インナグロメットは、比較的硬質な合成樹脂から構成されている。インナグロメットは、貫通孔を有した平板状の基部と、該基部の一方の外面から突出したクリップ部とを備えている。アウタグロメットは、ゴム等の弾性材料から構成されている。アウタグロメットは、貫通孔を有した平板状の基部と、該基部の外縁から折り曲げられた側板部と、貫通孔と連通し内側にワイヤハーネスを通す筒部とを備えている。
【0007】
このグロメットは、インナグロメットの基部の外縁がアウタグロメットの基部と側板部との間に挟まれて一体に組み立てられる。ワイヤハーネスは、インナグロメットの貫通孔内とアウタグロメットの貫通孔及び筒部内を通る。そして、グロメットは、インナグロメットをパネルに重ね合わせてクリップ部をパネルの孔内に係止させ、パネルに取り付けられる。
【特許文献1】特開2000−233696号公報
【特許文献2】特開2005−86963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した特許文献1に記載されたグロメットを取り付ける際には、パネルの一方の外表面側から、グロメット本体の他端部側からパネルの孔内に挿入してグロメット本体の一端部に設けられた係止凹部をパネルの孔内に係止させる。そして、グロメットを取り外す際には、グロメット本体の一端部側、即ちパネルの一方の外表面側から引っ張る。このように、グロメットの取り付け作業と取り外し作業とをパネルの一方の外表面側から行うことになる。
【0009】
パネルがエンジンルームと車室とを隔てている場合、グロメットを車室側から取り付けていれば、比較的広い車室側から取り外し作業を行うことができる。しかしながら、一般的に前述したパネルにはグロメットをエンジンルーム側から取り付けることが多く、エンジンルーム側から取り外し作業を行わなくてはならない。しかし、狭いエンジンルーム側からワイヤハーネスを引っ張るのは困難であり、グロメットが取り外しづらいといった問題があった。
【0010】
また、特許文献2に記載されたグロメットは、クリップ部によってパネルに簡単に取り付けることができるが、パネルから取り外す際にはクリップ部を破壊しなければならず、係止凹部の場合と同様に手間がかかるといった問題があった。さらに、二部品から構成されているので、部品数の増加によって製造工程が増加しコストがかかるといった問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、単純な構造でかつパネルの両側から簡単に取り外すことができるグロメットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、弾性材料から構成され、内側にワイヤハーネスを通してこのワイヤハーネスと密着する小径筒部と、パネルの孔内に通されて該孔内に取り付けられる大径筒部と、を備えたグロメットにおいて、前記小径筒部と前記大径筒部とを連結し、かつ、前記小径筒部を前記大径筒部の外側に位置付ける状態と前記小径筒部を前記大径筒部の内側に位置付ける状態とに亘って弾性変形自在に設けられた連結筒部と、前記小径筒部が前記大径筒部の内側に位置付けられると前記小径筒部を前記大径筒部内に係止しかつ前記大径筒部を前記パネルの孔内に係止する係止手段と、を備えたことを特徴としたグロメットである。
【0013】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載されたグロメットにおいて、前記係止手段が、前記小径筒部と前記大径筒部とのうちの一方から他方に向かって突出した突部と、他方に設けられかつ前記突部との間に弾性変形した前記連結筒部の外壁を挟んで該突部と係合する凹部と、を備えたことを特徴としたグロメットである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載された発明によれば、弾性変形して小径筒部を大径筒部の内外に位置付ける連結筒部と、大径筒部内に位置付けられた小径筒部を大径筒部内に係止しかつ大径筒部をパネルの孔内に係止する係止手段とを備えているので、小径筒部を大径筒部内に位置付けることでグロメットがパネルに取り付けられる。したがって、グロメットを簡単に取り付けることができる。また、グロメットが単純な構造であり一部品から構成されているので、部品数を減らしてコストを低減することができる。
【0015】
さらに、小径筒部を大径筒部外に位置付けることで係止手段が解除されるので、グロメットを簡単に取り外すことができる。このとき、小径筒部を大径筒部の一端部側と他端部側の双方から大径筒部外に位置付けることができるので、グロメットをパネルの両側から簡単に取り外すことができる。また、大径筒部はパネルと平行な方向に沿ってパネルの孔の内面に押し付けられてパネルに係止するので、パネルと直交する方向、即ちワイヤハーネスの長手方向には大きな力がかかっておらず、ワイヤハーネスを比較的小さな力で引っ張ることでグロメットを簡単に取り外すことができる。
【0016】
請求項2に記載された発明によれば、係止手段が、小径筒部と大径筒部とのうちの一方から他方に向かって突出した突部と、他方に設けられかつ突部との間に弾性変形した連結筒部の外壁を挟んで該突部と係合する凹部とを備えているので、突部と凹部とが係合することで、小径筒部を大径筒部内に確実に係止するとともに大径筒部をパネルの孔内に確実に係止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態にかかるグロメットを図1ないし図5を参照して説明する。本発明の一実施形態にかかるグロメット1は、図4等に示すように、車両としての自動車等の車体を構成するパネル2を貫通した孔3に取り付けられる。このパネル2は、例えばエンジンルームと車室とを隔てている。
【0018】
グロメット1は、弾性変形自在な弾性材料としてのゴム等から構成されている。グロメット1は、図2に示すように、筒状に形成され、内側に前記自動車に配索されるワイヤハーネス4を通す。グロメット1は、パネル2との間を水密に保ち、該パネル2との間から内側に水等の水分(液体)が侵入することを防止して、前記ワイヤハーネス4に水等の水分(液体)が付着することを防止する。グロメット1は、図1及び図2に示すように、小径筒部10と、大径筒部20と、連結筒部30と、係止手段としての係止部40(図2)とを備えている。
【0019】
小径筒部10は、短円筒状に形成され、内側にワイヤハーネス4を通す。小径筒部10の内径はワイヤハーネス4の外径より僅かに小さく、小径筒部10の内面は内側に通されたワイヤハーネス4と密着する。小径筒部10の外径は、パネル2の孔3の内径より小さい。小径筒部10の外面には、係止部40の後述する凹部11が設けられている。なお、小径筒部10の内径をワイヤハーネス4の外径より僅かに大きく形成し、小径筒部10の端部とワイヤハーネス4とにテープ等を巻き付けることで小径筒部10とワイヤハーネス4とを密着させてもよい。
【0020】
大径筒部20は、短円筒状に形成され、内側にワイヤハーネス4を通す。大径筒部20は、小径筒部10と同軸に配されているとともに、連結筒部30を介して小径筒部10と直列に連結されている。大径筒部20の内外径は、小径筒部10の内外径より大きい。大径筒部20の内径は、パネル2の孔3の内径より小さい。大径筒部20の外径は、パネル2の孔3の内径より大きい。大径筒部20は、パネル2の孔3内に通されてパネル2の孔3内に取り付けられる。大径筒部20には、係止凹部21と、係止部40の後述する突部25とが設けられている。
【0021】
係止凹部21は、大径筒部20の外面から凹に設けられている。係止凹部21は、前述した外面の大径筒部20(即ちグロメット1)の軸心P方向中央に設けられ、大径筒部20の全周に亘って設けられている。係止凹部21は、小径筒部10寄りの第1の壁22と、軸心P方向に沿って第1の壁22と対向する第2の壁23と、第1の壁22と第2の壁23との間に形成された凹溝24とを備えている。第1の壁22の第2の壁23から離れた(小径筒部10寄りの)外面には、傾斜面22aが設けられている。傾斜面22aは、第2の壁23から離れるにしたがって大径筒部20の外面に近づくように傾斜している。
【0022】
凹溝24は、一対の内側面24aと、これら内側面24aに連なる内底面24bとを備え、断面形状がコ字状に形成されている。内底面24bと軸心Pとの距離は、パネル2の孔3の半径と略等しいか僅かに大きい。凹溝24内には、パネル2の孔3の縁部が収容される。なお、凹溝24の第2の壁23側の一方の内側面24aには、リップが設けられていてもよい。リップは、前述した一方の内側面24aから第1の壁22に向かって突出し、大径筒部20の全周に亘って設けられる。リップは、係止凹部21がパネル2の孔3内に係止するとパネル2の表面に押し付けられて、パネル2の表面との間を水密に保つ。
【0023】
前述した構成の係止凹部21は、グロメット1を小径筒部10側からパネル2の孔3内に挿入していくと、第1の壁22を一旦大径筒部20の内側に撓ませる。そして、凹溝24内にパネル2の孔3の縁部を位置付けた後、第1の壁22を弾性復元力により初期状態(大径筒部20が弾性変形していない状態)に復帰させて、係止凹部21はパネル2の孔3内に仮係止する(図2)。その後、後述するように小径筒部10が大径筒部20の内側に位置付けられて突部25と凹部11とが係合すると、係止凹部21はパネル2の孔3内に係止(本係止)し(図4)、凹溝24の底面がパネル2の孔3の内面に向かって押し付けられて、パネル2の孔3の内面との間を水密に保つ。
【0024】
連結筒部30は、図2に示すように、一端部30aが小径筒部10に連なりかつ他端部30bが大径筒部20に連なって、小径筒部10と大径筒部20とを連結している。連結筒部30は一端部30aから他端部30bに向かう(小径筒部10側から大径筒部20側にいく)にしたがって内外径が徐々に拡大する円筒状に形成されている。連結筒部30は、小径筒部10及び大径筒部20内を通るワイヤハーネス4を内側に通す。連結筒部30の外径は、パネル2の孔3の内径より小さい。連結筒部30は、小径筒部10及び大径筒部20と同軸に配されているとともに、これら小径筒部10及び大径筒部20と直列に連結されている。連結筒部30は、軸心P方向に沿って長尺に形成されるとともにその外壁31が薄く形成されることで、弾性変形自在に設けられている。連結筒部30は、小径筒部10を大径筒部20の外側に位置付ける初期状態(図2)と、小径筒部10を大径筒部20の内側に位置付ける弾性変形状態(図4)とに亘って弾性変形自在に設けられている。
【0025】
係止部40は、図2に示すように、大径筒部20に設けられた突部25と、小径筒部10に設けられた凹部11とを備えている。突部25は、大径筒部20の内面から大径筒部20の内側に向かって突出して設けられている。突部25は、大径筒部20の全周に亘って設けられている。小径筒部10が大径筒部20内に位置付けられると、突部25は凹部11に向かって突出する。
【0026】
凹部11は、小径筒部10の外面に設けられている。凹部11は、小径筒部10の全周に亘って設けられている。凹部11は、小径筒部10の外面から突出した一対のリブ11a、11bによって形成されている。リブ11a、11bは、小径筒部10の全周に亘って設けられ、その断面形状が三角形状に形成されている。一対のリブ11a、11bは、軸心P方向に沿って互いに間隔をあけて配されている。一対のリブ11a、11bの間隔は、突部25の軸心P方向の幅と略等しい。小径筒部10が大径筒部20の内側に位置付けられたときの凹部11の内面と突部25の外面との間隔は、連結筒部30の外壁31の厚さよりも僅かに小さくなるように設けられている。
【0027】
前述した構成の係止部40は、小径筒部10を大径筒部20内に挿入していくと、突部25を一旦小径筒部10から離れる側に撓ませる。そして、小径筒部10が大径筒部20の内側に位置付けられると、突部25を凹部11内に位置付けて弾性復元力により初期状態に復帰させ、突部25と凹部11とを係合させて小径筒部10を大径筒部20内に係止する。このとき、突部25と凹部11との間には弾性変形した連結筒部30の外壁31が挟まれる。
【0028】
前述した構成のグロメット1をパネル2に取り付ける際には、まず、グロメット1内にワイヤハーネス4を通しておく。そして、図1に示すように、小径筒部10とパネル2の孔3とを軸心P方向に沿って相対させ、グロメット1を小径筒部10側から矢印Aに沿って孔3内に徐々に挿入していく。すると、大径筒部20の第1の壁22がパネル2の孔3の縁部に接触する。
【0029】
さらにグロメット1をパネル2の孔3内に挿入していくと、大径筒部20はパネル2の孔3の縁部によって内側に向かって押圧されて内外径が縮小する方向に簡単に弾性変形する。その後、パネル2の孔3の縁部が傾斜面22aを乗り越えて凹溝24内に位置すると、大径筒部20が弾性復元して係止凹部21はパネル2の孔3内に仮係止し、図2に示すように、グロメット1はパネル2に仮係止する。この状態のグロメット1を仮係止状態とする。
【0030】
仮係止状態のグロメット1は、係止凹部21がパネル2の孔3内に仮係止しているだけであり、凹溝24の内底面24bがパネル2の孔3の内面に十分に押し付けられていない。このため、仮係止状態のグロメット1は、小径筒部10側に引っ張られると比較的簡単にパネル2から外れ、パネル2への固定度が十分ではなく、水密性(シール性)も十分ではない。
【0031】
そして、この仮係止状態のグロメット1の小径筒部10を、矢印Bに沿って大径筒部20内へと挿入していく。すると、連結筒部30は外側に広がって内外径が拡大する方向に簡単に弾性変形する。その後、図3に示すように、連結筒部30の外壁31はS字状に湾曲してその一部が小径筒部10と大径筒部20の間に配される。
【0032】
そして、さらに小径筒部10を大径筒部20内へと挿入(圧入)すると、連結筒部30の外壁31や凹部11の大径筒部20寄りの一方のリブ11aと接触して突部25が矢印B方向に弾性変形する。その後、突部25が一方のリブ11aを乗り越えて凹部11内に位置すると、図4に示すように、突部25が弾性復元して突部25と凹部11とが互いの間に連結筒部30の外壁31を挟んだ状態で係合し、小径筒部10全体が大径筒部20の内側に位置付けられる。この状態のグロメット1を本係止状態とする。
【0033】
本係止状態のグロメット1は、突部25と凹部11とが互いの間に連結筒部30の外壁31を挟んだ状態で係合することで、大径筒部20が外側に広がって凹溝24の内底面24bがパネル2と平行な方向に沿ってパネル2の孔3の内面に十分に押し付けられ、係止凹部21がパネル2の孔3に係止(本係止)する。このため、本係止状態のグロメット1は、仮係止状態のグロメット1と比較するとワイヤハーネス4を引っ張っても簡単にパネル2から外れることがなく、パネル2への固定度が十分であり、水密性(シール性)も十分である。
【0034】
図4に示すように、この本係止状態のグロメット1は、ワイヤハーネス4を矢印A方向、または矢印A方向と反対の矢印B方向に沿って引っ張ることでパネル2から取り外すことができる。即ち、グロメット1は、ワイヤハーネス4をパネル2の一方の外表面側2aから引っ張っても、パネル2の他方の外表面2b側から引っ張っても、パネル2から取り外すことができる。
【0035】
まず、ワイヤハーネス4を矢印B方向に沿って(パネル2の一方の外表面2a側から)引っ張る場合について説明する。ワイヤハーネス4を矢印B方向に沿って引っ張ると、突部25が大径筒部20から離れた他方のリブ11bを乗り越えて凹部11外に位置付けられて突部25と凹部11との係合が解除され、図5に示すように、小径筒部10が大径筒部20の外側に位置付けられる。その後、さらにワイヤハーネス4を矢印B方向に引っ張ると、連結筒部30の外壁31が引っ張られて、係止凹部21の第1の壁22が図5中に示す矢印B1方向に沿って大径筒部20の内側に引きずり込まれて係止凹部21のパネル2の孔3内への係止が解除される。その後、第1の壁22がパネル2の孔3内を通り抜け、グロメット1がパネル2から取り外される。
【0036】
次に、ワイヤハーネス4を矢印A方向に沿って(パネル2の他方の外表面2b側から)引っ張る場合について説明する。ワイヤハーネス4を矢印A方向に沿って引っ張ると、突部25が一方のリブ11aを乗り越えて凹部11外に位置付けられて突部25と凹部11との係合が解除され、小径筒部10が大径筒部20の外側に位置付けられて、グロメット1は前述した仮係止状態に戻される。その後、例えば連結筒部30の大径筒部20側を図2に示す矢印A1方向に沿って内側に押し縮めると係止凹部21のパネル2の孔3内への係止が簡単に解除され、この状態でグロメット1をそのまま矢印A方向に引き抜くことで、グロメット1がパネル2から取り外される。
【0037】
本実施形態によれば、弾性変形して小径筒部10を大径筒部20の内外に位置付ける連結筒部30と、大径筒部20内に位置付けられた小径筒部10を大径筒部20内に係止しかつ大径筒部20をパネル2の孔3内に係止(本係止)する係止部40とを備えているので、小径筒部10を大径筒部20内に位置付けることでグロメット1がパネル2に取り付けられる。したがって、グロメット1を簡単に取り付けることができる。また、グロメット1が単純な構造であり一部品から構成されているので、部品数を減らしてコストを低減することができる。
【0038】
さらに、小径筒部10を大径筒部20外に位置付けることで係止部40が解除されるので、グロメット1を簡単に取り外すことができる。このとき、小径筒部10をパネル2の一方の外表面2a側と他方の外表面2b側の双方から大径筒部20外に位置付けることができるので、グロメット1をパネル2の両外表面2a、2b側から簡単に取り外すことができる。また、大径筒部20はパネル2と平行な方向に沿ってパネル2の孔3の内面に押し付けられてパネル2に係止(本係止)するので、パネル2と直交する方向、即ちワイヤハーネス4の長手方向には大きな力がかかっておらず、ワイヤハーネス4を比較的小さな力で引っ張ることでグロメット1を取り外すことができる。
【0039】
係止部40が、大径筒部20から小径筒部10に向かって突出した突部25と、小径筒部10に設けられかつ突部25との間に弾性変形した連結筒部30の外壁31を挟んで該突部25と係合する凹部11とを備えているので、突部25と凹部11とが係合することで、小径筒部10を大径筒部20内に確実に係止するとともに大径筒部20をパネル2の孔3内に確実に係止(本係止)することができる。
【0040】
本実施形態においては、突部25が大径筒部20に設けられ、凹部11が小径筒部10に設けられていたが、突部25が小径筒部10に設けられ、凹部11が大径筒部20に設けられていてもよい。また、本実施形態においては、突部25が大径筒部20の全周に亘って設けられ、凹部11が小径筒部10の全周に亘って設けられていたが、突部25及び凹部11は必ずしも全周に亘って設けられていなくてもよい。例えば、複数の突部が大径筒部20の周方向に沿って並んで設けられ、凹部がこれら突部と係合可能な位置に設けられていてもよい。
【0041】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態にかかるグロメットの側面図である。
【図2】図1に示されたグロメットの仮係止状態を示す断面図である。
【図3】図2に示されたグロメットが本係止状態になる途中の状態を示す断面図である。
【図4】図3に示されたグロメットの本係止状態を示す断面図である。
【図5】図4に示されたグロメットがパネルから取り外される途中を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 グロメット
2 パネル
3 孔
4 ワイヤハーネス
10 小径筒部
11 凹部
20 大径筒部
25 突部
30 連結筒部
31 外壁
40 係止部(係止手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性材料から構成され、
内側にワイヤハーネスを通してこのワイヤハーネスと密着する小径筒部と、
パネルの孔内に通されて該孔内に取り付けられる大径筒部と、を備えたグロメットにおいて、
前記小径筒部と前記大径筒部とを連結し、かつ、前記小径筒部を前記大径筒部の外側に位置付ける状態と前記小径筒部を前記大径筒部の内側に位置付ける状態とに亘って弾性変形自在に設けられた連結筒部と、
前記小径筒部が前記大径筒部の内側に位置付けられると前記小径筒部を前記大径筒部内に係止しかつ前記大径筒部を前記パネルの孔内に係止する係止手段と、を備えたことを特徴とするグロメット。
【請求項2】
前記係止手段が、前記小径筒部と前記大径筒部とのうちの一方から他方に向かって突出した突部と、他方に設けられかつ前記突部との間に弾性変形した前記連結筒部の外壁を挟んで該突部と係合する凹部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のグロメット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−201179(P2009−201179A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37160(P2008−37160)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】