グロメット
【課題】パネルの穴への取付時における挿入力を上げることなく、使用時に前記穴から脱落することを確実に防止できるグロメットを提供する。
【解決手段】グロメット1は、パネル6の穴60内に位置付けられ内側に電線が通される筒部20と、穴60の縁部61に当接する鍔部21と、鍔部21との間にパネル6の縁部61を挟む爪部22と、が設けられたインナー部材2と、筒部20にスライド自在に取り付けられ、筒部20の内側における爪部22の裏側に位置付けられることによって爪部22が筒部20の内側に撓むことを規制する規制部材3と、シール部材4と、を備えている。規制部材3は、インナー部材2が穴60内に圧入されて爪部22が鍔部21との間に穴60の縁部61を挟んだ後に、爪部22の裏側に位置付けられる。
【解決手段】グロメット1は、パネル6の穴60内に位置付けられ内側に電線が通される筒部20と、穴60の縁部61に当接する鍔部21と、鍔部21との間にパネル6の縁部61を挟む爪部22と、が設けられたインナー部材2と、筒部20にスライド自在に取り付けられ、筒部20の内側における爪部22の裏側に位置付けられることによって爪部22が筒部20の内側に撓むことを規制する規制部材3と、シール部材4と、を備えている。規制部材3は、インナー部材2が穴60内に圧入されて爪部22が鍔部21との間に穴60の縁部61を挟んだ後に、爪部22の裏側に位置付けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体等を構成するパネルの穴に取り付けられ、内側に電線が通されるグロメットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の車体等を構成するパネルの穴に通される電線を保護し、前記穴から水等の液体が浸入することを防止するために、例えば、図12〜図14に示すようなグロメット201が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図12及び図14に示すように、上記グロメット201は、硬質な合成樹脂で構成されたインナー部材202と、弾性変形自在なゴムで構成され、インナー部材202に取り付けられたシール部材204と、を備えている。
【0004】
図12及び図13に示すように、上記インナー部材202には、パネル6の穴60内に位置付けられ内側に電線5が通される筒部220と、筒部220の軸方向の一端部220cから筒部220の径方向外側に延設され、穴60の縁部61に係止する複数の爪部222と、筒部220の軸方向の他端部220dから筒部220の径方向外側に延設されるとともに環状に形成されたフランジ部221と、が設けられている。また、パネル6は、自動車の乗員室の床を構成している。
【0005】
図14に示すように、上記シール部材204には、筒状に形成され、筒部220及びフランジ部221の外周に取り付けられるシール部材側筒部240と、シール部材側筒部240の軸方向の一端部から延設されるとともに環状に形成され、穴60の縁部61に密着する外側リップ241と、外側リップ241の内周面から延設されるとともに環状に形成され、穴60の縁部61に密着する内側リップ242と、シール部材側筒部240の軸方向の他端部からシール部材側筒部240の径方向内側に延設された底部243と、底部243の外表面から円管状に延設され、内側に電線5が通される円管部244と、が設けられている。
【0006】
このグロメット201は、筒部220の一端部220c側からパネル6の穴60内に圧入され、複数の爪部222が穴60の縁部61に係止することによってこの穴60に取り付けられる。また、爪部222は、穴60内を通される際に、一旦、筒部220に近付く方向に撓み、その後、筒部220から離れる方向に復元して穴60の縁部61に係止する。また、グロメット201は、穴60に取り付けられた状態で、外側リップ241及び内側リップ242が穴60の縁部61に密着して穴60を覆い、この穴60から水等の液体が浸入することを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−215334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来のグロメット201においては、以下に示す問題があった。即ち、グロメット201は、図14に示すように、筒部220の一端部220cがパネル6の上方に突出しており、この一端部220cが乗員に踏み付けられる可能性があった。その場合、爪部222の付け根部分Gが破損したり、筒部220が矢印H方向に撓んだりして、グロメット201が穴60から脱落する恐れがあるという問題があった。また、パネル6が乗員室の床を構成する場合以外でも、筒部220の一端部220cに荷重が加えられることによってグロメット201が穴60から脱落する恐れがあるという問題があった。
【0009】
したがって、本発明は、パネルの穴への取付時における挿入力を上げることなく、使用時に前記穴から脱落することを確実に防止できるグロメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1に記載された発明は、筒状に形成され、パネルの穴内に位置付けられるとともに内側に電線が通される筒部と、前記筒部の外周面から突出し、前記穴の縁部に当接する鍔部と、前記筒部の外周面から延設されるとともに前記筒部の内側に撓むことが可能に形成され、前記鍔部との間に前記穴の縁部を挟む爪部と、が設けられたインナー部材を備えたグロメットにおいて、前記筒部にスライド自在に取り付けられ、前記筒部の内側における前記爪部の裏側に位置付けられることによって前記爪部が前記筒部の内側に撓むことを規制する規制部材を備え、かつ、前記インナー部材が前記穴内に圧入されて前記爪部が前記鍔部との間に前記穴の縁部を挟んだ後に、前記規制部材が前記爪部の前記裏側に位置付けられることを特徴とするグロメットである。
【0011】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記規制部材に、筒状に形成され、前記筒部の内周面上を前記筒部の軸方向に沿ってスライドする規制部材側筒部と、前記規制部材側筒部の外周面から延設された規制部材側爪部と、が設けられ、前記インナー部材に、前記規制部材側筒部が前記爪部の前記裏側から離れた離間位置に位置付けられている際に、前記規制部材側爪部が係止する第1係止部と、前記規制部材側筒部が前記爪部の前記裏側に位置付けられる際に、前記規制部材側爪部が係止する第2係止部と、が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載された発明は、請求項2に記載された発明において、前記爪部が前記筒部の一端部側に設けられ、前記インナー部材に、前記筒部の一端部から当該筒部の内側に延設され、前記規制部材側筒部の一端面を覆う覆い部が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された発明によれば、前記筒部にスライド自在に取り付けられ、前記筒部の内側における前記爪部の裏側に位置付けられることによって前記爪部が前記筒部の内側に撓むことを規制する規制部材を備え、かつ、前記インナー部材が前記穴内に圧入されて前記爪部が前記鍔部との間に前記穴の縁部を挟んだ後に、前記規制部材が前記爪部の前記裏側に位置付けられるので、パネルの穴への取付時における挿入力を上げることなく、使用時に穴から脱落することを確実に防止できるグロメットを提供することができる。
【0014】
請求項2に記載された発明によれば、前記規制部材に、筒状に形成され、前記筒部の内周面上を前記筒部の軸方向に沿ってスライドする規制部材側筒部と、前記規制部材側筒部の外周面から延設された規制部材側爪部と、が設けられ、前記インナー部材に、前記規制部材側筒部が前記爪部の前記裏側から離れた離間位置に位置付けられている際に、前記規制部材側爪部が係止する第1係止部と、前記規制部材側筒部が前記爪部の前記裏側に位置付けられる際に、前記規制部材側爪部が係止する第2係止部と、が設けられているので、爪部が鍔部との間に穴の縁部を挟むまでは、規制部材側筒部を爪部の裏側から離れた離間位置に位置付けておくことができ、爪部が鍔部との間に穴の縁部を挟んだ後は、規制部材側筒部を離間位置からスライドさせることによって爪部の裏側に位置付けることができる。
【0015】
請求項3に記載された発明によれば、前記爪部が前記筒部の一端部側に設けられ、前記インナー部材に、前記筒部の一端部から当該筒部の内側に延設され、前記規制部材側筒部の一端面を覆う覆い部が設けられているので、筒部の一端部に荷重が加えられた際に、規制部材側筒部に直接荷重が加えられることを防止でき、そのために、使用時に穴から脱落することをより一層確実に防止できるグロメットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態にかかるグロメットがパネルの穴に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示されたグロメットがパネルの穴に取り付けられる様子を説明する説明図であり、グロメットがパネルの穴に取り付けられる前の状態を示す図である。
【図3】図1に示されたグロメットがパネルの穴に取り付けられる様子を説明する説明図であり、図2に示されたグロメットがパネルの穴内に圧入されて、爪部と鍔部との間に穴の縁部が挟まれた状態を示す図である。
【図4】図1に示されたグロメットがパネルの穴に取り付けられる様子を説明する説明図であり、図3に示されたグロメットの規制部材が爪部の裏側に位置付けられて、グロメットがパネルの穴に完全に取り付けられた状態を示す図である。
【図5】図3中のB−B線に沿った断面図である。
【図6】図3中のC−C線に沿った断面図である。
【図7】図4中のD−D線に沿った断面図である。
【図8】図4中のE−E線に沿った断面図である。
【図9】図1に示されたグロメットのインナー部材及び規制部材を示す斜視図であり、規制部材側爪部が第1係止部に係止している状態を示す図である。
【図10】図9に示されたインナー部材を示す斜視図である。
【図11】図9に示された規制部材を示す斜視図である。
【図12】従来のグロメットがパネルの穴に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図13】図12に示されたグロメットのインナー部材を示す斜視図である。
【図14】図12中のF−F線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施の形態にかかるグロメットを、図1ないし図11を参照して説明する。本発明のグロメット1は、自動車の乗員室の床を構成するパネル6の穴60に取り付けられて、前記穴60に通される電線5を保護するとともに、前記穴60から水等の液体が乗員室内に浸入することを防止するものである。
【0018】
上記穴60は、図2に示すように、平面形状が丸形に形成されている。また、図1〜図8においては、パネル6の上方が乗員室内となる。また、上記電線5(図1に二点鎖線で示す。)は、ワイヤハーネスを構成する電線である。
【0019】
上記グロメット1は、図5などに示すように、硬質な合成樹脂で構成されたインナー部材2と、硬質な合成樹脂で構成され、インナー部材2の後述の筒部20にスライド自在に取り付けられた規制部材3と、弾性変形自在なゴムで構成され、規制部材3に取り付けられたシール部材4と、を備えている。
【0020】
上記インナー部材2には、図9及び図10に示すように、筒状に形成され、パネル6の穴60内に位置付けられるとともに内側に電線5が通される筒部20と、筒部20の外周面20aから突出し、穴60の縁部61に当接する鍔部21と、筒部20の外周面20aから延設され、鍔部21との間に穴60の縁部61を挟む爪部22と、規制部材3の後述する規制部材側爪部32が係止する第1係止部24及び第2係止部25と、筒部20の一端部20cから当該筒部20の径方向内側に延設されるとともに環状に形成された覆い部27と、筒部20の内周面20bに設けられ、筒部20の軸方向に延びた位置決め用リブ26と、が設けられている。
【0021】
上記筒部20は、その外径が穴60の内径よりも小さい円筒状に形成されている。また、筒部20は、軸方向の一端部20cがパネル6の上方、即ち乗員室側、に突出し、軸方向の他端部20dがパネル6の下方に位置付けられた状態で、パネル6の穴60内に位置付けられる。また、図5中の一点鎖線Pは、筒部20の中心軸を表している。
【0022】
上記鍔部21は、爪部22及び第2係止部25が設けられた部分を除いて、外周面20aの全周に亘って略環状に形成されている。また、略環状の鍔部21の外径は、穴60の内径よりも大きく形成されている。この鍔部21は、パネル6の下方に位置付けられ、穴60の縁部61に当接する。
【0023】
上記爪部22は、一端部が外周面20aに連なり、他端部が自由端とされた片持ち板状のアーム部22aと、アーム部22aの前記他端部から筒部20の径方向外側に突出した突起部22bと、で構成されている。また、アーム部22aは、筒部20にコ字状のスリット23が設けられることによって形成されている。即ち、アーム部22aは筒部20の一部で構成されている。また、アーム部22aの前記一端部は、筒部20の軸方向の中央部に位置しており、アーム部22aの前記他端部は、筒部20の軸方向の一端部20cに位置している。このような爪部22は、グロメット1の穴60への取付時において、穴60内を通される際に一旦筒部20の内側に撓み、穴60の上方に位置付けられる際に撓む前の状態に復元して鍔部21との間に穴60の縁部61を挟む。また、爪部22は、筒部20の周方向に沿って互いに等間隔をあけて3つ設けられている。
【0024】
上記第1係止部24は、筒部20の軸方向の他端部20d側の部分に貫通形成された貫通穴24aと、貫通穴24aの他端部20d側に位置する壁24bと、で構成されている。また、壁24bは、筒部20の一部である。上記第2係止部25は、筒部20の軸方向の一端部20c側の部分に貫通形成された貫通穴25aと、貫通穴25aの他端部20d側に位置する壁25bと、で構成されている。また、第2係止部25の貫通穴25aと、壁25bと、第1係止部24の貫通穴24aと、壁24bと、は、筒部20の軸方向に沿って順に並んでいる。また、これら第1係止部24及び第2係止部25は、一つの爪部22と他の爪部22との間に設けられ、筒部20の周方向に沿って互いに等間隔をあけて3つずつ設けられている。
【0025】
上記規制部材3には、図9及び図11に示すように、筒状に形成され、筒部20の内周面20b上を筒部20の軸方向に沿ってスライドする規制部材側筒部30と、規制部材側筒部30の外周面30aから延設され、上述した第1係止部24及び第2係止部25に係止する規制部材側爪部32と、規制部材側筒部30の軸方向の他端部30dから規制部材側筒部30の径方向外側に延設されるとともに環状に形成されたフランジ部31と、規制部材側筒部30の外周面30aに設けられ、規制部材側筒部30の軸方向に延びた位置決め用溝36と、が設けられている。
【0026】
上記規制部材側筒部30は、その外径が筒部20の内径よりも小さい円筒状に形成されている。規制部材側筒部30は、筒部20の他端部20d側の開口部から、筒部20内に挿入され、筒部20の内周面20b上をスライドする。また、規制部材側筒部30は、軸方向の一端部30c側から筒部20内に挿入される。また、規制部材側筒部30が筒部20内に挿入される際は、図9に示すように、位置決め用リブ26が位置決め用溝36内に位置付けられることによって、筒部20と規制部材側筒部30との位置決めがなされる。
【0027】
このような規制部材側筒部30は、図7及び図8に示すように、筒部20の内側における爪部22の裏側に位置付けられることによって爪部22が筒部20の内側に撓むことを規制する。即ち、規制部材側筒部30は、筒部20の一端部20cが乗員に踏み付けられるなどして一端部20cに荷重が加えられ、爪部22が筒部20の内側に撓もうとした際に、爪部22を押し返すことによって、爪部22が筒部20の内側に撓むことを規制する。このことによって、グロメット1の使用時に該グロメット1が穴60から脱落することを確実に防止できる。
【0028】
また、規制部材側筒部30は、インナー部材2が穴60内に圧入されて爪部22が鍔部21との間に穴60の縁部61を挟んだ後に、爪部22の裏側に位置付けられる。即ち、規制部材側筒部30は、爪部22が鍔部21との間に穴60の縁部61を挟むまでは、図5及び図6に示すように、爪部22の裏側から離れた離間位置に位置付けられている。このことによって、爪部22を穴60に通す際に筒部20の内側に撓ませることができ、グロメット1の穴60への挿入力が上がることを回避できる。
【0029】
上記規制部材側爪部32は、一端部が外周面30aに連なり、他端部が自由端とされた片持ち板状のアーム部32aと、アーム部32aの前記他端部から規制部材側筒部30の径方向外側に突出した突起部32bと、で構成されている。また、アーム部32aは、規制部材側筒部30に2本のスリット33が設けられることによって形成されている。即ち、アーム部32aは規制部材側筒部30の一部で構成されている。また、アーム部32aの前記一端部は、規制部材側筒部30の軸方向の中央部に位置しており、アーム部32aの前記他端部は、規制部材側筒部30の軸方向の一端部30cに位置している。また、規制部材側爪部32は、規制部材側筒部30の周方向に沿って互いに等間隔をあけて3つ設けられている。
【0030】
このような規制部材側爪部32は、図5及び図9に示すように、規制部材側筒部30が爪部22の裏側から離れた離間位置に位置付けられている際に、第1係止部24に係止する。また、規制部材側爪部32は、図1及び図7に示すように、規制部材側筒部30が爪部22の裏側に位置付けられる際に、第2係止部25に係止する。また、「規制部材側爪部32が第1係止部24に係止する」とは、規制部材側爪部32の突起部32bが貫通穴24aに通されて、突起部32bが壁24bに掛かることを言う。また、「規制部材側爪部32が第2係止部25に係止する」とは、規制部材側爪部32の突起部32bが貫通穴25aに通されて、突起部32bが壁25bに掛かることを言う。
【0031】
また、グロメット1においては、規制部材側爪部32が第1係止部24に係止することによって規制部材3がインナー部材2に仮保持され、規制部材側爪部32が第2係止部25に係止することによって規制部材3がインナー部材2に本固定される。
【0032】
また、グロメット1においては、規制部材側爪部32が第1係止部24に係止する際の係止力を、規制部材側爪部32が第2係止部25に係止する際の係止力よりも小さくするために、突起部32bの壁24bへの掛かり代を、突起部32bの壁25bへの掛かり代よりも小さく設定している。具体的には、図7に示すように、壁24bの厚みを壁25bの厚みよりも小さく形成し、さらに、壁24bを壁25bよりも筒部20の径方向外側に配置している。このような構成にすることで、規制部材3のインナー部材2への仮保持と、規制部材3のインナー部材2への本固定と、を同じ爪で行うことができる。
【0033】
また、グロメット1においては、規制部材3に車両下向きの荷重が加えられた際に規制部材側爪部32を第2係止部25から外れ難くするために、図7に示すように、突起部32b及び壁25bの互いに当接する当接面32c,25cに傾斜がつけられている。即ち、アーム部32aの外表面と突起部32bの当接面32cとがなす角度が鋭角になるように、当接面32cに傾斜がつけられている。また、壁25bの内表面と当接面25cとがなす角度が鋭角になるように、当接面25cに傾斜がつけられている。
【0034】
また、グロメット1においては、第1係止部24に係止している規制部材側爪部32を第1係止部24から外して第2係止部25に係止させるのに必要な挿入力が、爪部22を穴60に通すのに必要な挿入力よりも高くなるように設計されている。このような構成にすることで、爪部22が鍔部21との間に縁部61を挟む前に規制部材側筒部30が前記離間位置から爪部22側にスライドするという不都合を回避することができる。
【0035】
このように、本発明では、規制部材側爪部32、第1係止部24、第2係止部25、が設けられているので、爪部22が鍔部21との間に穴60の縁部61を挟むまでは、規制部材側筒部30を爪部22の裏側から離れた離間位置に位置付けておくことができ、爪部22が鍔部21との間に穴60の縁部61を挟んだ後は、規制部材側筒部30を前記離間位置からスライドさせることによって爪部22の裏側に位置付けることができる。
【0036】
また、本発明では、図2に示すように、規制部材側爪部32が第1係止部24に係止した状態で、即ち規制部材3がインナー部材2に仮保持された状態で、パネル6の下方から矢印A方向に沿って穴60内にグロメット1を押し込むことによって、爪部22が穴60を通過するとともに鍔部21が穴60の縁部61に当接して、図3、図5、図6に示すように、爪部22と鍔部21との間に縁部61が挟まれる。そして、この状態でグロメット1を矢印A方向に沿ってさらに押し込むことによって、第1係止部24に係止している規制部材側爪部32が第1係止部24から外れ、規制部材3がパネル6に近付く方向にスライドして、即ち規制部材側筒部30が前記離間位置から爪部22の裏側にスライドして、規制部材側爪部32が第2係止部25に係止し、図1、図4、図7、図8に示すように、規制部材3がインナー部材2に本固定される。このように本発明では、矢印A方向に沿って力を加える動作、即ちワンアクションでグロメット1を穴60に取り付けることができる。
【0037】
上記覆い部27は、図1、図7、図8に示すように、爪部22の裏側に位置付けられた規制部材側筒部30の一端面30eを覆う。このように、本発明では、覆い部27が設けられているので、筒部20の一端部20cが乗員に踏み付けられるなどして一端部20cに荷重が加えられた際に、規制部材側筒部30に直接荷重が加えられることを防止でき、グロメット1の使用時に該グロメット1が穴60から脱落することをより一層確実に防止できる。
【0038】
上記シール部材4には、図2、図7、図8に示すように、筒状に形成され、筒部20及び規制部材側筒部30の外周に配置されるシール部材側筒部40と、シール部材側筒部40の軸方向の一端部から延設されるとともに環状に形成され、穴60の縁部61に密着する外側リップ41と、外側リップ41の内周面から延設されるとともに環状に形成され、穴60の縁部61に密着する内側リップ42と、シール部材側筒部40の軸方向の他端部からシール部材側筒部40の径方向内側に延設された底部43と、底部43の外表面から円管状に延設され、内側に電線5が通される円管部44,45と、が設けられている。また、シール部材4は、規制部材3のフランジ部31に取り付けられている。
【0039】
このようなシール部材4は、グロメット1が穴60に取り付けられた状態で、外側リップ41及び内側リップ42が穴60の縁部61に密着して穴60を覆い、円管部44,45が電線5の外周面に密着することによって、穴60から水等の液体が乗員室内に浸入することを防止する。
【0040】
以上、説明したように、本発明によれば、パネル6の穴60への取付時における挿入力を上げることなく、使用時に穴60から脱落することを確実に防止できるグロメット1を提供することができる。
【0041】
また、上述した実施形態では、グロメット1が自動車の乗員室の床を構成するパネル6の穴60に取り付けられる例を説明したが、本発明のグロメット1は、自動車の他の部位、例えば、エンジンルームを構成するパネルの穴に取り付けることも可能である。
【0042】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 グロメット
2 インナー部材
3 規制部材
5 電線
6 パネル
20 筒部
21 鍔部
22 爪部
60 穴
61 縁部
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体等を構成するパネルの穴に取り付けられ、内側に電線が通されるグロメットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の車体等を構成するパネルの穴に通される電線を保護し、前記穴から水等の液体が浸入することを防止するために、例えば、図12〜図14に示すようなグロメット201が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図12及び図14に示すように、上記グロメット201は、硬質な合成樹脂で構成されたインナー部材202と、弾性変形自在なゴムで構成され、インナー部材202に取り付けられたシール部材204と、を備えている。
【0004】
図12及び図13に示すように、上記インナー部材202には、パネル6の穴60内に位置付けられ内側に電線5が通される筒部220と、筒部220の軸方向の一端部220cから筒部220の径方向外側に延設され、穴60の縁部61に係止する複数の爪部222と、筒部220の軸方向の他端部220dから筒部220の径方向外側に延設されるとともに環状に形成されたフランジ部221と、が設けられている。また、パネル6は、自動車の乗員室の床を構成している。
【0005】
図14に示すように、上記シール部材204には、筒状に形成され、筒部220及びフランジ部221の外周に取り付けられるシール部材側筒部240と、シール部材側筒部240の軸方向の一端部から延設されるとともに環状に形成され、穴60の縁部61に密着する外側リップ241と、外側リップ241の内周面から延設されるとともに環状に形成され、穴60の縁部61に密着する内側リップ242と、シール部材側筒部240の軸方向の他端部からシール部材側筒部240の径方向内側に延設された底部243と、底部243の外表面から円管状に延設され、内側に電線5が通される円管部244と、が設けられている。
【0006】
このグロメット201は、筒部220の一端部220c側からパネル6の穴60内に圧入され、複数の爪部222が穴60の縁部61に係止することによってこの穴60に取り付けられる。また、爪部222は、穴60内を通される際に、一旦、筒部220に近付く方向に撓み、その後、筒部220から離れる方向に復元して穴60の縁部61に係止する。また、グロメット201は、穴60に取り付けられた状態で、外側リップ241及び内側リップ242が穴60の縁部61に密着して穴60を覆い、この穴60から水等の液体が浸入することを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−215334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来のグロメット201においては、以下に示す問題があった。即ち、グロメット201は、図14に示すように、筒部220の一端部220cがパネル6の上方に突出しており、この一端部220cが乗員に踏み付けられる可能性があった。その場合、爪部222の付け根部分Gが破損したり、筒部220が矢印H方向に撓んだりして、グロメット201が穴60から脱落する恐れがあるという問題があった。また、パネル6が乗員室の床を構成する場合以外でも、筒部220の一端部220cに荷重が加えられることによってグロメット201が穴60から脱落する恐れがあるという問題があった。
【0009】
したがって、本発明は、パネルの穴への取付時における挿入力を上げることなく、使用時に前記穴から脱落することを確実に防止できるグロメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1に記載された発明は、筒状に形成され、パネルの穴内に位置付けられるとともに内側に電線が通される筒部と、前記筒部の外周面から突出し、前記穴の縁部に当接する鍔部と、前記筒部の外周面から延設されるとともに前記筒部の内側に撓むことが可能に形成され、前記鍔部との間に前記穴の縁部を挟む爪部と、が設けられたインナー部材を備えたグロメットにおいて、前記筒部にスライド自在に取り付けられ、前記筒部の内側における前記爪部の裏側に位置付けられることによって前記爪部が前記筒部の内側に撓むことを規制する規制部材を備え、かつ、前記インナー部材が前記穴内に圧入されて前記爪部が前記鍔部との間に前記穴の縁部を挟んだ後に、前記規制部材が前記爪部の前記裏側に位置付けられることを特徴とするグロメットである。
【0011】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記規制部材に、筒状に形成され、前記筒部の内周面上を前記筒部の軸方向に沿ってスライドする規制部材側筒部と、前記規制部材側筒部の外周面から延設された規制部材側爪部と、が設けられ、前記インナー部材に、前記規制部材側筒部が前記爪部の前記裏側から離れた離間位置に位置付けられている際に、前記規制部材側爪部が係止する第1係止部と、前記規制部材側筒部が前記爪部の前記裏側に位置付けられる際に、前記規制部材側爪部が係止する第2係止部と、が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載された発明は、請求項2に記載された発明において、前記爪部が前記筒部の一端部側に設けられ、前記インナー部材に、前記筒部の一端部から当該筒部の内側に延設され、前記規制部材側筒部の一端面を覆う覆い部が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された発明によれば、前記筒部にスライド自在に取り付けられ、前記筒部の内側における前記爪部の裏側に位置付けられることによって前記爪部が前記筒部の内側に撓むことを規制する規制部材を備え、かつ、前記インナー部材が前記穴内に圧入されて前記爪部が前記鍔部との間に前記穴の縁部を挟んだ後に、前記規制部材が前記爪部の前記裏側に位置付けられるので、パネルの穴への取付時における挿入力を上げることなく、使用時に穴から脱落することを確実に防止できるグロメットを提供することができる。
【0014】
請求項2に記載された発明によれば、前記規制部材に、筒状に形成され、前記筒部の内周面上を前記筒部の軸方向に沿ってスライドする規制部材側筒部と、前記規制部材側筒部の外周面から延設された規制部材側爪部と、が設けられ、前記インナー部材に、前記規制部材側筒部が前記爪部の前記裏側から離れた離間位置に位置付けられている際に、前記規制部材側爪部が係止する第1係止部と、前記規制部材側筒部が前記爪部の前記裏側に位置付けられる際に、前記規制部材側爪部が係止する第2係止部と、が設けられているので、爪部が鍔部との間に穴の縁部を挟むまでは、規制部材側筒部を爪部の裏側から離れた離間位置に位置付けておくことができ、爪部が鍔部との間に穴の縁部を挟んだ後は、規制部材側筒部を離間位置からスライドさせることによって爪部の裏側に位置付けることができる。
【0015】
請求項3に記載された発明によれば、前記爪部が前記筒部の一端部側に設けられ、前記インナー部材に、前記筒部の一端部から当該筒部の内側に延設され、前記規制部材側筒部の一端面を覆う覆い部が設けられているので、筒部の一端部に荷重が加えられた際に、規制部材側筒部に直接荷重が加えられることを防止でき、そのために、使用時に穴から脱落することをより一層確実に防止できるグロメットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態にかかるグロメットがパネルの穴に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示されたグロメットがパネルの穴に取り付けられる様子を説明する説明図であり、グロメットがパネルの穴に取り付けられる前の状態を示す図である。
【図3】図1に示されたグロメットがパネルの穴に取り付けられる様子を説明する説明図であり、図2に示されたグロメットがパネルの穴内に圧入されて、爪部と鍔部との間に穴の縁部が挟まれた状態を示す図である。
【図4】図1に示されたグロメットがパネルの穴に取り付けられる様子を説明する説明図であり、図3に示されたグロメットの規制部材が爪部の裏側に位置付けられて、グロメットがパネルの穴に完全に取り付けられた状態を示す図である。
【図5】図3中のB−B線に沿った断面図である。
【図6】図3中のC−C線に沿った断面図である。
【図7】図4中のD−D線に沿った断面図である。
【図8】図4中のE−E線に沿った断面図である。
【図9】図1に示されたグロメットのインナー部材及び規制部材を示す斜視図であり、規制部材側爪部が第1係止部に係止している状態を示す図である。
【図10】図9に示されたインナー部材を示す斜視図である。
【図11】図9に示された規制部材を示す斜視図である。
【図12】従来のグロメットがパネルの穴に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図13】図12に示されたグロメットのインナー部材を示す斜視図である。
【図14】図12中のF−F線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施の形態にかかるグロメットを、図1ないし図11を参照して説明する。本発明のグロメット1は、自動車の乗員室の床を構成するパネル6の穴60に取り付けられて、前記穴60に通される電線5を保護するとともに、前記穴60から水等の液体が乗員室内に浸入することを防止するものである。
【0018】
上記穴60は、図2に示すように、平面形状が丸形に形成されている。また、図1〜図8においては、パネル6の上方が乗員室内となる。また、上記電線5(図1に二点鎖線で示す。)は、ワイヤハーネスを構成する電線である。
【0019】
上記グロメット1は、図5などに示すように、硬質な合成樹脂で構成されたインナー部材2と、硬質な合成樹脂で構成され、インナー部材2の後述の筒部20にスライド自在に取り付けられた規制部材3と、弾性変形自在なゴムで構成され、規制部材3に取り付けられたシール部材4と、を備えている。
【0020】
上記インナー部材2には、図9及び図10に示すように、筒状に形成され、パネル6の穴60内に位置付けられるとともに内側に電線5が通される筒部20と、筒部20の外周面20aから突出し、穴60の縁部61に当接する鍔部21と、筒部20の外周面20aから延設され、鍔部21との間に穴60の縁部61を挟む爪部22と、規制部材3の後述する規制部材側爪部32が係止する第1係止部24及び第2係止部25と、筒部20の一端部20cから当該筒部20の径方向内側に延設されるとともに環状に形成された覆い部27と、筒部20の内周面20bに設けられ、筒部20の軸方向に延びた位置決め用リブ26と、が設けられている。
【0021】
上記筒部20は、その外径が穴60の内径よりも小さい円筒状に形成されている。また、筒部20は、軸方向の一端部20cがパネル6の上方、即ち乗員室側、に突出し、軸方向の他端部20dがパネル6の下方に位置付けられた状態で、パネル6の穴60内に位置付けられる。また、図5中の一点鎖線Pは、筒部20の中心軸を表している。
【0022】
上記鍔部21は、爪部22及び第2係止部25が設けられた部分を除いて、外周面20aの全周に亘って略環状に形成されている。また、略環状の鍔部21の外径は、穴60の内径よりも大きく形成されている。この鍔部21は、パネル6の下方に位置付けられ、穴60の縁部61に当接する。
【0023】
上記爪部22は、一端部が外周面20aに連なり、他端部が自由端とされた片持ち板状のアーム部22aと、アーム部22aの前記他端部から筒部20の径方向外側に突出した突起部22bと、で構成されている。また、アーム部22aは、筒部20にコ字状のスリット23が設けられることによって形成されている。即ち、アーム部22aは筒部20の一部で構成されている。また、アーム部22aの前記一端部は、筒部20の軸方向の中央部に位置しており、アーム部22aの前記他端部は、筒部20の軸方向の一端部20cに位置している。このような爪部22は、グロメット1の穴60への取付時において、穴60内を通される際に一旦筒部20の内側に撓み、穴60の上方に位置付けられる際に撓む前の状態に復元して鍔部21との間に穴60の縁部61を挟む。また、爪部22は、筒部20の周方向に沿って互いに等間隔をあけて3つ設けられている。
【0024】
上記第1係止部24は、筒部20の軸方向の他端部20d側の部分に貫通形成された貫通穴24aと、貫通穴24aの他端部20d側に位置する壁24bと、で構成されている。また、壁24bは、筒部20の一部である。上記第2係止部25は、筒部20の軸方向の一端部20c側の部分に貫通形成された貫通穴25aと、貫通穴25aの他端部20d側に位置する壁25bと、で構成されている。また、第2係止部25の貫通穴25aと、壁25bと、第1係止部24の貫通穴24aと、壁24bと、は、筒部20の軸方向に沿って順に並んでいる。また、これら第1係止部24及び第2係止部25は、一つの爪部22と他の爪部22との間に設けられ、筒部20の周方向に沿って互いに等間隔をあけて3つずつ設けられている。
【0025】
上記規制部材3には、図9及び図11に示すように、筒状に形成され、筒部20の内周面20b上を筒部20の軸方向に沿ってスライドする規制部材側筒部30と、規制部材側筒部30の外周面30aから延設され、上述した第1係止部24及び第2係止部25に係止する規制部材側爪部32と、規制部材側筒部30の軸方向の他端部30dから規制部材側筒部30の径方向外側に延設されるとともに環状に形成されたフランジ部31と、規制部材側筒部30の外周面30aに設けられ、規制部材側筒部30の軸方向に延びた位置決め用溝36と、が設けられている。
【0026】
上記規制部材側筒部30は、その外径が筒部20の内径よりも小さい円筒状に形成されている。規制部材側筒部30は、筒部20の他端部20d側の開口部から、筒部20内に挿入され、筒部20の内周面20b上をスライドする。また、規制部材側筒部30は、軸方向の一端部30c側から筒部20内に挿入される。また、規制部材側筒部30が筒部20内に挿入される際は、図9に示すように、位置決め用リブ26が位置決め用溝36内に位置付けられることによって、筒部20と規制部材側筒部30との位置決めがなされる。
【0027】
このような規制部材側筒部30は、図7及び図8に示すように、筒部20の内側における爪部22の裏側に位置付けられることによって爪部22が筒部20の内側に撓むことを規制する。即ち、規制部材側筒部30は、筒部20の一端部20cが乗員に踏み付けられるなどして一端部20cに荷重が加えられ、爪部22が筒部20の内側に撓もうとした際に、爪部22を押し返すことによって、爪部22が筒部20の内側に撓むことを規制する。このことによって、グロメット1の使用時に該グロメット1が穴60から脱落することを確実に防止できる。
【0028】
また、規制部材側筒部30は、インナー部材2が穴60内に圧入されて爪部22が鍔部21との間に穴60の縁部61を挟んだ後に、爪部22の裏側に位置付けられる。即ち、規制部材側筒部30は、爪部22が鍔部21との間に穴60の縁部61を挟むまでは、図5及び図6に示すように、爪部22の裏側から離れた離間位置に位置付けられている。このことによって、爪部22を穴60に通す際に筒部20の内側に撓ませることができ、グロメット1の穴60への挿入力が上がることを回避できる。
【0029】
上記規制部材側爪部32は、一端部が外周面30aに連なり、他端部が自由端とされた片持ち板状のアーム部32aと、アーム部32aの前記他端部から規制部材側筒部30の径方向外側に突出した突起部32bと、で構成されている。また、アーム部32aは、規制部材側筒部30に2本のスリット33が設けられることによって形成されている。即ち、アーム部32aは規制部材側筒部30の一部で構成されている。また、アーム部32aの前記一端部は、規制部材側筒部30の軸方向の中央部に位置しており、アーム部32aの前記他端部は、規制部材側筒部30の軸方向の一端部30cに位置している。また、規制部材側爪部32は、規制部材側筒部30の周方向に沿って互いに等間隔をあけて3つ設けられている。
【0030】
このような規制部材側爪部32は、図5及び図9に示すように、規制部材側筒部30が爪部22の裏側から離れた離間位置に位置付けられている際に、第1係止部24に係止する。また、規制部材側爪部32は、図1及び図7に示すように、規制部材側筒部30が爪部22の裏側に位置付けられる際に、第2係止部25に係止する。また、「規制部材側爪部32が第1係止部24に係止する」とは、規制部材側爪部32の突起部32bが貫通穴24aに通されて、突起部32bが壁24bに掛かることを言う。また、「規制部材側爪部32が第2係止部25に係止する」とは、規制部材側爪部32の突起部32bが貫通穴25aに通されて、突起部32bが壁25bに掛かることを言う。
【0031】
また、グロメット1においては、規制部材側爪部32が第1係止部24に係止することによって規制部材3がインナー部材2に仮保持され、規制部材側爪部32が第2係止部25に係止することによって規制部材3がインナー部材2に本固定される。
【0032】
また、グロメット1においては、規制部材側爪部32が第1係止部24に係止する際の係止力を、規制部材側爪部32が第2係止部25に係止する際の係止力よりも小さくするために、突起部32bの壁24bへの掛かり代を、突起部32bの壁25bへの掛かり代よりも小さく設定している。具体的には、図7に示すように、壁24bの厚みを壁25bの厚みよりも小さく形成し、さらに、壁24bを壁25bよりも筒部20の径方向外側に配置している。このような構成にすることで、規制部材3のインナー部材2への仮保持と、規制部材3のインナー部材2への本固定と、を同じ爪で行うことができる。
【0033】
また、グロメット1においては、規制部材3に車両下向きの荷重が加えられた際に規制部材側爪部32を第2係止部25から外れ難くするために、図7に示すように、突起部32b及び壁25bの互いに当接する当接面32c,25cに傾斜がつけられている。即ち、アーム部32aの外表面と突起部32bの当接面32cとがなす角度が鋭角になるように、当接面32cに傾斜がつけられている。また、壁25bの内表面と当接面25cとがなす角度が鋭角になるように、当接面25cに傾斜がつけられている。
【0034】
また、グロメット1においては、第1係止部24に係止している規制部材側爪部32を第1係止部24から外して第2係止部25に係止させるのに必要な挿入力が、爪部22を穴60に通すのに必要な挿入力よりも高くなるように設計されている。このような構成にすることで、爪部22が鍔部21との間に縁部61を挟む前に規制部材側筒部30が前記離間位置から爪部22側にスライドするという不都合を回避することができる。
【0035】
このように、本発明では、規制部材側爪部32、第1係止部24、第2係止部25、が設けられているので、爪部22が鍔部21との間に穴60の縁部61を挟むまでは、規制部材側筒部30を爪部22の裏側から離れた離間位置に位置付けておくことができ、爪部22が鍔部21との間に穴60の縁部61を挟んだ後は、規制部材側筒部30を前記離間位置からスライドさせることによって爪部22の裏側に位置付けることができる。
【0036】
また、本発明では、図2に示すように、規制部材側爪部32が第1係止部24に係止した状態で、即ち規制部材3がインナー部材2に仮保持された状態で、パネル6の下方から矢印A方向に沿って穴60内にグロメット1を押し込むことによって、爪部22が穴60を通過するとともに鍔部21が穴60の縁部61に当接して、図3、図5、図6に示すように、爪部22と鍔部21との間に縁部61が挟まれる。そして、この状態でグロメット1を矢印A方向に沿ってさらに押し込むことによって、第1係止部24に係止している規制部材側爪部32が第1係止部24から外れ、規制部材3がパネル6に近付く方向にスライドして、即ち規制部材側筒部30が前記離間位置から爪部22の裏側にスライドして、規制部材側爪部32が第2係止部25に係止し、図1、図4、図7、図8に示すように、規制部材3がインナー部材2に本固定される。このように本発明では、矢印A方向に沿って力を加える動作、即ちワンアクションでグロメット1を穴60に取り付けることができる。
【0037】
上記覆い部27は、図1、図7、図8に示すように、爪部22の裏側に位置付けられた規制部材側筒部30の一端面30eを覆う。このように、本発明では、覆い部27が設けられているので、筒部20の一端部20cが乗員に踏み付けられるなどして一端部20cに荷重が加えられた際に、規制部材側筒部30に直接荷重が加えられることを防止でき、グロメット1の使用時に該グロメット1が穴60から脱落することをより一層確実に防止できる。
【0038】
上記シール部材4には、図2、図7、図8に示すように、筒状に形成され、筒部20及び規制部材側筒部30の外周に配置されるシール部材側筒部40と、シール部材側筒部40の軸方向の一端部から延設されるとともに環状に形成され、穴60の縁部61に密着する外側リップ41と、外側リップ41の内周面から延設されるとともに環状に形成され、穴60の縁部61に密着する内側リップ42と、シール部材側筒部40の軸方向の他端部からシール部材側筒部40の径方向内側に延設された底部43と、底部43の外表面から円管状に延設され、内側に電線5が通される円管部44,45と、が設けられている。また、シール部材4は、規制部材3のフランジ部31に取り付けられている。
【0039】
このようなシール部材4は、グロメット1が穴60に取り付けられた状態で、外側リップ41及び内側リップ42が穴60の縁部61に密着して穴60を覆い、円管部44,45が電線5の外周面に密着することによって、穴60から水等の液体が乗員室内に浸入することを防止する。
【0040】
以上、説明したように、本発明によれば、パネル6の穴60への取付時における挿入力を上げることなく、使用時に穴60から脱落することを確実に防止できるグロメット1を提供することができる。
【0041】
また、上述した実施形態では、グロメット1が自動車の乗員室の床を構成するパネル6の穴60に取り付けられる例を説明したが、本発明のグロメット1は、自動車の他の部位、例えば、エンジンルームを構成するパネルの穴に取り付けることも可能である。
【0042】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 グロメット
2 インナー部材
3 規制部材
5 電線
6 パネル
20 筒部
21 鍔部
22 爪部
60 穴
61 縁部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成され、パネルの穴内に位置付けられるとともに内側に電線が通される筒部と、前記筒部の外周面から突出し、前記穴の縁部に当接する鍔部と、前記筒部の外周面から延設されるとともに前記筒部の内側に撓むことが可能に形成され、前記鍔部との間に前記穴の縁部を挟む爪部と、が設けられたインナー部材を備えたグロメットにおいて、
前記筒部にスライド自在に取り付けられ、前記筒部の内側における前記爪部の裏側に位置付けられることによって前記爪部が前記筒部の内側に撓むことを規制する規制部材を備え、かつ、
前記インナー部材が前記穴内に圧入されて前記爪部が前記鍔部との間に前記穴の縁部を挟んだ後に、前記規制部材が前記爪部の前記裏側に位置付けられる
ことを特徴とするグロメット。
【請求項2】
前記規制部材に、筒状に形成され、前記筒部の内周面上を前記筒部の軸方向に沿ってスライドする規制部材側筒部と、前記規制部材側筒部の外周面から延設された規制部材側爪部と、が設けられ、
前記インナー部材に、前記規制部材側筒部が前記爪部の前記裏側から離れた離間位置に位置付けられている際に、前記規制部材側爪部が係止する第1係止部と、前記規制部材側筒部が前記爪部の前記裏側に位置付けられる際に、前記規制部材側爪部が係止する第2係止部と、が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記爪部が前記筒部の一端部側に設けられ、
前記インナー部材に、前記筒部の一端部から当該筒部の内側に延設され、前記規制部材側筒部の一端面を覆う覆い部が設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載のグロメット。
【請求項1】
筒状に形成され、パネルの穴内に位置付けられるとともに内側に電線が通される筒部と、前記筒部の外周面から突出し、前記穴の縁部に当接する鍔部と、前記筒部の外周面から延設されるとともに前記筒部の内側に撓むことが可能に形成され、前記鍔部との間に前記穴の縁部を挟む爪部と、が設けられたインナー部材を備えたグロメットにおいて、
前記筒部にスライド自在に取り付けられ、前記筒部の内側における前記爪部の裏側に位置付けられることによって前記爪部が前記筒部の内側に撓むことを規制する規制部材を備え、かつ、
前記インナー部材が前記穴内に圧入されて前記爪部が前記鍔部との間に前記穴の縁部を挟んだ後に、前記規制部材が前記爪部の前記裏側に位置付けられる
ことを特徴とするグロメット。
【請求項2】
前記規制部材に、筒状に形成され、前記筒部の内周面上を前記筒部の軸方向に沿ってスライドする規制部材側筒部と、前記規制部材側筒部の外周面から延設された規制部材側爪部と、が設けられ、
前記インナー部材に、前記規制部材側筒部が前記爪部の前記裏側から離れた離間位置に位置付けられている際に、前記規制部材側爪部が係止する第1係止部と、前記規制部材側筒部が前記爪部の前記裏側に位置付けられる際に、前記規制部材側爪部が係止する第2係止部と、が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記爪部が前記筒部の一端部側に設けられ、
前記インナー部材に、前記筒部の一端部から当該筒部の内側に延設され、前記規制部材側筒部の一端面を覆う覆い部が設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載のグロメット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−10473(P2012−10473A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143467(P2010−143467)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】
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