説明

グロメット

【課題】それぞれ弾性材料からなる2つの筒状の部材が連結されることによって1つの筒状に形成されるグロメットの連結部において、優れた止水性能が得られるとともに締着用ベルトの必要数を低減できること。
【解決手段】グロメット1は、弾性材料からなる第一軟質筒部材10及び第二軟質筒部材20と、より硬い材料からなる硬質筒部材30とを備える。第一軟質筒部材10の一方の端部の第一連結部11は、内周面が硬質筒部材30の第一領域31の外周面に密接する状態で硬質筒部材30に被せられる。第二軟質筒部材の一方の端部の第二連結部21は、内周面が第一連結部11の外周面に密接する状態で、第一連結部11に被せられる。第二軟質筒部材20における第二連結部21に連なる第三連結部22は、内周面が硬質筒部材30の第二領域32の外周面に密接する状態で硬質筒部材30に被せられる。ベルト91は、第二連結部21に締め付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ弾性材料からなる2つの筒状の部材が連結されることによって1つの筒状に形成されるグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
グロメットは、ワイヤハーネスが通される筒状の弾性体からなり、自動車のボディなどの支持体における貫通孔が形成された部分に取り付けられる。グロメットは、支持体の貫通孔に通されるワイヤハーネスを保護するとともに、支持体の貫通孔におけるワイヤハーネスとの間の隙間を塞ぎ、止水機能及び防塵機能を果たす。
【0003】
一般に、グロメットは、板状の支持体の貫通孔の縁部に取り付けられる筒状のパネル装着部を有している。パネル装着部は、支持体における貫通孔の縁部が嵌め入れられる環状の溝が形成された部分である。
【0004】
ところで、弾性材料からなる長い筒状の部材を成形することは、品質面及びコスト面において難しい。そのため、例えば、2つのパネル装着部と、それら2つのパネル装着部の間を繋ぐ長い中間筒部とが必要な場合、連結式グロメットが採用される。
【0005】
連結式グロメットは、特許文献1及び特許文献2に示されるように、それぞれ弾性材料からなる2つの筒状の部材が連結されることによって1つの筒状に形成されるグロメットである。
【0006】
例えば、特許文献1には、それぞれ弾性材料からなる2つの筒状の弾性部材が、中継用の筒状の硬質部材によって連結されることにより1つの筒状に形成される連結式グロメットについて示されている。中継用の筒状の硬質部材は、硬質の樹脂成形部材である。
【0007】
特許文献1に示されるグロメットにおいて、2つの筒状の弾性部材各々は、1つの筒状の硬質部材の両端各々に被せられ、締着用ベルトで締め付けられることなどにより固定される。即ち、特許文献1に示される連結式グロメットにおいて、2つの筒状の弾性部材の連結部における止水構造は、弾性部材と硬質部材との面接触による止水構造である。
【0008】
また、特許文献2には、2つの筒状の弾性部材における一方の端部が、他方の端部に直接被せられ、粘着テープで固定されることにより、1つの筒状に形成される連結式グロメットについて示されている。即ち、特許文献2に示される連結式グロメットにおいて、2つの筒状の弾性部材の連結部における止水構造は、2つの弾性部材相互の面接触による止水構造である。
【0009】
連結式グロメットにおいて、2つの筒状の弾性部材各々を連結相手の部材に対して強固に固定し、十分な止水性能を確保するためには、連結部に締着用ベルトを締め付けることが有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−332063号公報
【特許文献2】実開平6−58529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に示される連結式グロメットにおいて、2つの筒状の弾性部材を筒状の硬質部材に対して強固に固定するためには、少なくとも2箇所において、締着用ベルトの締め付け作業が必要となる。昨今、グロメットの製造のコスト及び工数の低減のために、締着用ベルトの必要数の低減が求められている。
【0012】
また、2つの筒状の弾性部材の連結部における止水構造としては、弾性部材と硬質部材との面接触による止水構造よりも、2つの弾性部材相互の面接触による止水構造の方が望ましい。2つの弾性部材が相互に面接触した部分は、弾性部材と硬質部材とが面接触した部分よりも密着性が高く、止水性能がより優れているからである。
【0013】
一方、特許文献2に示される連結式グロメットにおいては、筒状の硬質部材が用いられない。そのため、締着用ベルトが、2つの筒状の弾性部材各々の端部が重なる部分に強く締め付けられると、筒状の弾性部材が押しつぶされ、2つの筒状の弾性部材の間に隙間が生じてしまう。
【0014】
本発明は、それぞれ弾性材料からなる2つの筒状の部材が連結されることによって1つの筒状に形成されるグロメットの連結部において、優れた止水性能が得られるとともに締着用ベルトの必要数を低減できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1発明に係るグロメットは、それぞれ弾性材料からなる筒状の第一軟質筒部材及び第二軟質筒部材と、前記弾性材料よりも硬い材料からなり、前記第一軟質筒部材及び前記第二軟質筒部材各々の端部の内側に挿入される筒状の硬質筒部材とを備える。さらに、第1発明に係るグロメットは、以下に示される各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、前記第一軟質筒部材の一方の端から一部の範囲を占める部分であり、内周面が前記硬質筒部材における軸心方向の一方の端から一部の範囲を占める第一領域の外周面に密接する状態で、前記硬質筒部材に被せられる筒状の第一連結部である。
(2)第2の構成要素は、前記第二軟質筒部材の一方の端から一部の範囲を占める部分であり、内周面が前記第一連結部の外周面に密接する状態で、前記第一連結部に被せられる筒状の第二連結部である。
(3)第3の構成要素は、前記第二軟質筒部材における前記第二連結部に連なる部分であり、内周面が前記硬質筒部材における前記第一領域以外の残りの第二領域の外周面に密接する状態で前記硬質筒部材に被せられる筒状の第三連結部である。
【0016】
第2発明に係るグロメットは、第1発明に係るグロメットの一例である。第2発明に係るグロメットにおいては、前記第二連結部の外周面に、当該第二連結部を締め付けるベルトが嵌め入れられる窪みを形成する一対の段差であるベルト用段差が形成されている。
【0017】
第3発明に係るグロメットは、第1発明又は第2発明に係るグロメットの一例である。第3発明に係るグロメットにおいては、前記第一軟質筒部材における前記第一連結部よりも奥側の部分の外周面に、周方向に沿って突起するとともに一部に欠け部が形成された鍔部が形成されている。さらに、第3発明に係るグロメットにおいては、前記第二連結部の一部に、前記第二軟質筒部材の軸心方向に沿って張り出して前記鍔部の前記欠け部に嵌り込む張出部が形成されている。
【0018】
第4発明に係るグロメットは、第1発明から第3発明のいずれかに係るグロメットの一例である。第4発明に係るグロメットにおいては、前記硬質筒部材の外周面に、前記第一領域と前記第二領域との境界をなすとともに前記第一連結部の先端が接する環状の段差である第一連結部側段差が形成されている。
【0019】
第5発明に係るグロメットは、第1発明から第4発明のいずれかに係るグロメットの一例である。第5発明に係るグロメットにおいては、前記第二軟質筒部材における前記第三連結部の内側面に、環状の段差である第一内側段差が形成されている。さらに、第5発明に係るグロメットにおいては、前記硬質筒部材における前記第二領域の外周面に、前記第一内側段差と接する環状の段差である第二連結部側段差が形成されている。
【0020】
第6発明に係るグロメットは、第1発明から第5発明のいずれかに係るグロメットの一例である。第6発明に係るグロメットにおいては、前記第一軟質筒部材の内側面に、前記硬質筒部材における前記第一領域側の端が接するとともに、前記硬質筒部材の内側面と前記第一軟質筒部材の前記第一連結部より奥側の部分の内側面とを面一にする環状の段差である第二内側段差が形成されている。さらに、第6発明に係るグロメットにおいては、前記第二軟質筒部材の内側面に、前記硬質筒部材における前記第二領域側の端が接するとともに、前記硬質筒部材の内側面と前記第二軟質筒部材の前記第三連結部より奥側の部分の内側面とを面一にする環状の段差である第三内側段差が形成されている。
【発明の効果】
【0021】
第1発明に係るグロメットは、それぞれ弾性材料からなる第一軟質筒部材及び第二軟質筒部材が連結されることによって1つの筒状に形成される連結式グロメットである。第1発明に係るグロメットにおいて、第二軟質筒部材の第二連結部は、第一軟質筒部材の第一連結部に被せられる。即ち、第1発明に係るグロメットは、2つの弾性部材相互の面接触による止水構造を有する。そのため、第1発明によれば、締着用ベルトが、第一連結部の外側に重なった第二連結部に締め付けられることにより、優れた止水性能が得られる。
【0022】
さらに、第1発明によれば、締着用ベルトが1箇所に装着されるだけで、十分な止水性能が得られるため、締着用ベルトの必要数の低減が可能となる。
【0023】
また、第1発明に係るグロメットにおいて、硬質筒部材の一部が、第二連結部の内側に重なった第一連結部のさらに内側に挿入される。そのため、締着用ベルトが、第一連結部の外側に重なった第二連結部に対して強く締め付けられた場合でも、弾性材料からなる第一連結部及び第二連結部が変形してそれらの間に隙間が生じる不都合は回避される。
【0024】
また、第1発明に係るグロメットにおいて、硬質筒部材の第二領域の部分は、第二軟質筒部材の第二連結部を第一軟質筒部材の第一連結部に被せる作業を容易にし、第一連結部と第二連結部との間に隙間ができることを防ぐ効果を奏する。
【0025】
即ち、それぞれ弾性材料からなる第一連結部と第二連結部との摩擦抵抗は大きい。そのため、第二連結部を第一連結部の外周面に滑らせつつ第一連結部に被せようとすると、第二連結部が変形して第一連結部と第二連結部との間に隙間が生じやすい。しかしながら、第三連結部の内側に硬質筒部材の第二領域が挿入されることにより、第二連結部を第三連結部側へ折り返した後に、第二連結部を第三連結部側から先端側へ順に第一連結部に被せることが容易となる。第二連結部は、そのようにして第一連結部に被せられると、第一連結部と擦れることなく隙間なく第一連結部上に被さる。
【0026】
また、第2発明によれば、ベルト用段差が、正しい締着用ベルトの装着位置を示すとともに、グロメットの軸心方向における締着用ベルトの位置ずれを防ぐ。そのため、締着用ベルトの装着位置の不備、又は締着用ベルトの位置ずれに起因して、第一連結部と第二連結部との面接触による止水の性能が低下することは防止される。
【0027】
ところで、第一軟質筒部材又は第二軟質筒部材に強いねじり方向の力が加わり、その力が第一連結部及び第二連結部の接触面に作用した場合、第一連結部及び第二連結部の周方向における位置ずれ(回転)が生じる恐れがある。そのような位置ずれが生じた場合、第一連結部及び第二連結部各々の接触面が変形し、止水の性能が低下する恐れがある。
【0028】
第3発明に係るグロメットにおいて、第二軟質筒部材の張出部と第一軟質筒部材の鍔部における欠け部との嵌め合い構造は、第一軟質筒部材及び第二軟質筒部材の周方向における位置ずれを防ぐ回転止めとして機能する。従って、第3発明によれば、第一軟質筒部材及び第二軟質筒部材の周方向における位置ずれに起因する止水性能の低下が回避される。特に、第二連結部及び第三連結部各々の内周面の断面が円形である場合に、上記の嵌め合い構造の効果はより顕著となる。
【0029】
また、第4発明によれば、第一連結部側段差が、第一軟質筒部材における第一連結部の長さ、即ち、硬質筒部材に被せられる部分の長さがばらつくことを防止する。第一連結部の長さのばらつきは、連結式グロメットの連結部における止水性能のばらつきの原因となる。従って、第4発明によれば、第一連結部の長さのばらつきに起因する止水性能のばらつき(低下)が回避される。
【0030】
また、第5発明によれば、第二連結部側段差が、第二軟質筒部材における第二連結部の長さ、即ち、第一連結部に被せられる部分の長さがばらつくことを防止する。第二連結部の長さのばらつきは、連結式グロメットの連結部における止水性能のばらつきの原因となる。従って、第5発明によれば、第二連結部の長さのばらつきに起因する止水性能のばらつき(低下)が回避される。
【0031】
また、第6発明によっても、第二内側段差及び第三内側段差が、第一軟質筒部材における第一連結部の長さ、及び第二軟質筒部材における第二連結部の長さがばらつくことを防止する。従って、第6発明によれば、第一連結部及び第二連結部の長さのばらつきに起因する止水性能のばらつき(低下)が回避される。
【0032】
さらに、第6発明によれば、硬質筒部材の内側面と第一軟質筒部材及び第二軟質筒部材の内側面とが面一となる。これにより、グロメットの内側面にワイヤハーネスの挿入の邪魔となる出っ張りが存在しないため、グロメットにワイヤハーネスを通す作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係るグロメット1を構成する3つの部品の平面図及び側面図である。
【図2】グロメット1を構成する3つの部品における連結される部分の第1の断面図である。
【図3】グロメット1を構成する3つの部品が連結された部分の第1の断面図である。
【図4】グロメット1を構成する3つの部品における連結される部分の第2の断面図である。
【図5】グロメット1を構成する3つの部品が連結された部分の第2の断面図である。
【図6】グロメット1を構成する3つの部品における連結される途中の状態の連結部の断面図である。
【図7】グロメット1を構成する2つの軟質筒部材の連結部の斜視図である。
【図8】グロメット1を構成する3つの部品が連結された部分の斜視図である。
【図9】グロメット1の連結部及びそこに装着された締着用ベルトの斜視図である。
【図10】グロメット1の連結部及びそこに装着されたベルト付クランプの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0035】
<部品構成>
まず、図1を参照しつつ、本発明の実施形態に係るグロメット1の部品構成について説明する。図1に示されるように、グロメット1は、第一軟質筒部材10、第二軟質筒部材20及び硬質筒部材30の3つの部品を含む。
【0036】
第一軟質筒部材10及び第二軟質筒部材20は、それぞれ弾性材料からなる筒状の部材である。第一軟質筒部材10及び第二軟質筒部材20は、例えば、ゴム又はゴム系材料であるエラストマー(elastic polymer)からなる部材である。なお、エラストマーには、天然ゴム及び合成ゴムなどの加硫ゴム、並びにウレタンゴム、シリコーンゴム及びフッ素ゴムなどの熱硬化性樹脂系エラストマーが含まれる。
【0037】
第一軟質筒部材10は、第一連結部11、第一中間筒部12及び第一パネル装着部19を有する。第一連結部11は、第二軟質筒部材20との連結のために形成された部分である。その詳細な構造については後述する。第一パネル装着部19は、板状の支持体の貫通孔の縁部に取り付けられる筒状の部分である。また、第一中間筒部12は、第一連結部11と第一パネル装着部19とを繋ぐ筒状の部分である。本実施形態において、第一中間筒部12は、その一部において蛇腹構造を有する。
【0038】
第二軟質筒部材20は、第二連結部21、第三連結部22、第二中間筒部23及び第二パネル装着部29を有する。第二連結部21及び第三連結部22は、第一軟質筒部材10との連結のために形成された部分である。その詳細な構造については後述する。第二パネル装着部29は、板状の支持体の貫通孔の縁部に取り付けられる筒状の部分である。また、第二中間筒部23は、第三連結部22と第二パネル装着部29とを繋ぐ筒状の部分である。本実施形態において、第二中間筒部23は、その一部において蛇腹構造を有する。
【0039】
一方、硬質筒部材30は、第一軟質筒部材10及び第二軟質筒部材20を構成する弾性材料よりも硬い材料からなる筒状の部材である。硬質筒部材30は、例えば、ポリプロピレン(PP)又はポリアミド(PA)などの熱可塑性樹脂からなる部材である。本実施形態において、硬質筒部材30は、それ全体が一体に成形された樹脂部材である。
【0040】
<連結部の構成>
続いて、図2から図8を参照しつつ、グロメット1における第一軟質筒部材10及び第二軟質筒部材20の連結部の構成について説明する。
【0041】
図2は、グロメット1を構成する3つの部品における連結部の断面図であり、図1(a)に示されるA−A断面の図である。また、図3は、3つの部品が連結された連結部の断面図であり、図2に示されるA−A断面に相当する断面図である。また、図4は、グロメット1を構成する3つの部品における連結部の断面図であり、図1(b)に示されるB−B断面の図である。また、図5は、3つの部品が連結された連結部の断面図であり、図4に示されるB−B断面に相当する断面図である。
【0042】
図1、図2、図4及び図7に示されるように、第一軟質筒部材10の第一連結部11は、第一軟質筒部材10の一方の端から一部の範囲を占める部分である。この第一連結部11は、図3及び図5に示されるように、内周面が硬質筒部材30における軸心方向の一方の端から一部の範囲を占める第一領域31の外周面に密接する状態で、硬質筒部材30の第一領域31に被せられる筒状の部分である。
【0043】
以下の説明において、硬質筒部材30における第一領域31以外の残りの領域、即ち、第一連結部11が被せられる領域以外の領域のことを第二領域32と称する。
【0044】
図4に示されるように、硬質筒部材30の第二領域32における、第一領域31との境界部分の外周面には、環状の突起である境界環状鍔部33が形成されている。即ち、境界環状鍔部33は第二領域32に含まれ、境界環状鍔部33の第一領域31側の側面は、第一領域31と第二領域32との境界をなす環状の段差を形成している。以下、この段差のことを、第一連結部側段差331と称する。
【0045】
図3及び図5に示されるように、第一連結部側段差331は、第一領域31と第二領域32との境界をなすとともに、3つの部品が連結された状態において第一連結部11の先端が接する段差である。
【0046】
一方、図1、図2、図4及び図7に示されるように、第二軟質筒部材20の第二連結部21は、第二軟質筒部材20の一方の端から一部の範囲を占める部分である。この第二連結部21は、図3及び図5に示されるように、内周面が第一連結部11の外周面に密接する状態で、第一連結部11に被せられる筒状の部分である。
【0047】
また、図1、図2、図4及び図7に示されるように、第二軟質筒部材20の第三連結部22は、第二軟質筒部材20における第二連結部21に連なる部分である。この第三連結部22は、図3及び図5に示されるように、内周面が硬質筒部材30における第一領域31以外の残りの第二領域32の外周面に密接する状態で、硬質筒部材30の第二領域32に被せられる筒状の部分である。
【0048】
また、第一軟質筒部材10の第一中間筒部12における第一連結部11に近い部分の外周面、即ち、第一連結部11よりも奥側の部分の外周面には、周方向に沿って突起するとともに一部に欠け部132が形成された非環状鍔部13が形成されている。
【0049】
非環状鍔部13の一方の側面131は、3つの部品が連結された状態において、第二軟質筒部材20の一端、即ち、第二連結部21の先端が接する面である。
【0050】
一方、第二連結部21の一部には、図7に示されるように、第二軟質筒部材20の軸心方向に沿って張り出した張出部211が形成されている。この張出部211は、図8に示されるように、3つの部品が連結された状態において、第一軟質筒部材10の非環状鍔部13における欠け部132に密に嵌り込む。
【0051】
また、第二連結部21の外周面には、周方向に沿って環状に突起した部分である第一環状鍔部24が形成されている。同様に、第二軟質筒部材20の外周面における第二連結部21と第三連結部22とに亘る領域には、周方向に沿って環状に突起した部分である第二環状鍔部25が形成されている。
【0052】
第一環状鍔部24及び第二環状鍔部25における相互に対向する2つの側面は、第二連結部21を締め付けるベルト91が嵌め入れられる窪み26を形成する一対の段差をなしている。以下、これら一対の段差のことをベルト用段差241,251と称する。ベルト用段差241,251は、第二連結部21の外周面において、ベルト91が嵌め入れられる窪み26を形成する一対の段差の一例である。
【0053】
また、第二軟質筒部材20における第三連結部22の内側面222に、環状の段差である第一内側段差271が形成されている。そして、硬質筒部材30の境界環状鍔部33の第二領域32側の側面は、3つの部品が連結された状態において、第一内側段差271と接する段差である。以下、この段差のことを、第二連結部側段差332と称する。第二連結部側段差332は、硬質筒部材30における第二領域32の外周面に形成され、第一内側段差271と接する環状の段差である。
【0054】
また、図2及び図4に示されるように、第一軟質筒部材10の内側面には、3つの部品が連結された状態において、硬質筒部材30における第一領域31側の端310が接する環状の段差である第二内側段差14が形成されている。この第二内側段差14は、3つの部品が連結された状態において、硬質筒部材30の内側面302と第一軟質筒部材10の第一連結部11より奥側の部分(第一中間筒部12)の内側面122とを面一にする段差である。
【0055】
また、図2及び図4に示されるように、第二軟質筒部材20の内側面には、3つの部品が連結された状態において、硬質筒部材30における第二領域32側の端320が接する環状の段差である第三内側段差272が形成されている。この第三内側段差272は、3つの部品が連結された状態において、硬質筒部材30の内側面302と第二軟質筒部材20の第三連結部22より奥側の部分(第二中間筒部23)の内側面232とを面一にする環状の段差である。
【0056】
なお、本実施形態において、第一連結部11の内側面及び外側面、第二連結部21及び第三連結部22の内側面、硬質筒部材30における第一領域31の外側面311及び第二領域32の外側面321、硬質筒部材30の内側面302は、いずれも断面が円形に形成されている。
【0057】
<連結の手順>
以下、図6を参照しつつ、グロメット1を構成する3つの部品を連結する手順の一例について説明する。図6は、グロメット1を構成する3つの部品における、連結される途中の状態の連結部の断面図である。
【0058】
3つの部品が連結される場合、例えば、第二軟質筒部材20の第三連結部22を硬質筒部材30の第二領域32に被せる第一工程が行われる。この第一工程は、硬質筒部材30の第二領域32を第二軟質筒部材20の第三連結部22の内側に挿入する工程であるとも言える。
【0059】
第一工程において、硬質筒部材30は、第二領域32側の端320が第二軟質筒部材20の第三内側段差272に当たる位置まで挿入される。さらに、第一工程においては、図6に示されるように、第二軟質筒部材20の第二連結部21が、硬質筒部材30が内側に挿入された第三連結部22側へ折り返される。
【0060】
仮に、硬質筒部材30が第三連結部22の内側に挿入されていない場合、第二連結部21が折り返される際に、第三連結部22が大きく変形するため、第二連結部21の折り返し作業は難しい。硬質筒部材30の第二領域32が第三連結部22の内側に予め挿入されることにより、第二連結部21の折り返し作業が容易となる。
【0061】
次に、第一軟質筒部材10の第一連結部11を硬質筒部材30の第一領域31に被せる第二工程が行われる。この第二工程は、硬質筒部材30の第一領域31を第一軟質筒部材10の第一連結部11の内側に挿入する工程であるとも言える。
【0062】
第二工程において、硬質筒部材30は、第一領域31側の端310が第一軟質筒部材10の第二内側段差14に当たる位置まで挿入される。なお、第一工程及び第二工程の順序は問わない。即ち、第二工程は、第一工程の前に行われてもよい。
【0063】
第一工程及び第二工程が行われた後、折り返された第二軟質筒部材20の第二連結部21を元の状態に戻しながら、第二連結部21を第三連結部22側(奥側)から先端側へ順に第一軟質筒部材10の第一連結部11に被せる第三工程が行われる。
【0064】
第二連結部21は、以上に示された手順で第一連結部11に被せられると、第一連結部11と擦れることなく隙間なく第一連結部11上に被さる。
【0065】
<締着ベルト>
次に、図9及び図10を参照しつつ、連結部にベルト91が締め付けられたグロメット1について説明する。なお、図9は、グロメット1の連結部及びそこに装着された締着用ベルト9の斜視図である。また、図10は、グロメット1の連結部及びそこに装着されたベルト付クランプ9Aの斜視図である。
【0066】
締着用ベルト9は、グロメット1に巻き付けられるベルト91と、ベルト91を環状に保持するベルト保持部92とを備える締着具である。ベルト保持部92は、ベルト91の一端が固定された部分であり、ベルト91を所望の長さに調整された状態で環状に保持する。なお、締着用ベルト9の構造は周知であるので、その構造の詳細な説明は省略する。
【0067】
図9に示されるように、締着用ベルト9のベルト91は、ベルト用段差241,251が形成する窪み26に嵌め入れられた状態で、第二軟質筒部材20の第二連結部21に対して巻き付けられて締め付けられる。これにより、第一連結部11の外側面と第二連結部21の内側面とが、加圧された状態で密着し、2つの弾性部材相互の面接触による止水構造が完成する。
【0068】
また、図10に示されるように、グロメット1の連結部に装着される締着具が、ベルト付クランプ9Aであることも考えられる。ベルト付クランプ9Aは、締着用ベルト9のベルト保持部92にクランプ93が追加された構造を有する。クランプ93は、板状の支持体に形成された貫通孔の縁部に固定される用具である。なお、ベルト付クランプ9Aの構造は周知であるので、その構造の詳細な説明は省略する。
【0069】
<効果>
グロメット1において、第二軟質筒部材20の第二連結部21は、第一軟質筒部材10の第一連結部11に被せられる。即ち、グロメット1は、2つの弾性部材相互の面接触による止水構造を有する。そのため、グロメット1によれば、締着用のベルト91が、第一連結部11の外側に重なった第二連結部21に締め付けられることにより、優れた止水性能が得られる。
【0070】
さらに、グロメット1が採用されることにより、締着用のベルト91が1箇所に装着されるだけで、十分な止水性能が得られるため、締着用ベルト9又はベルト付クランプ9Aなどの締着具の必要数の低減が可能となる。
【0071】
また、グロメット1において、硬質筒部材30の一部が、第二連結部21の内側に重なった第一連結部11のさらに内側に挿入される。そのため、ベルト91が、第一連結部11の外側に重なった第二連結部21に対して強く締め付けられた場合でも、弾性材料からなる第一連結部11及び第二連結部21が変形してそれらの間に隙間が生じる不都合は回避される。
【0072】
また、グロメット1において、硬質筒部材30の第二領域32の部分は、図6に示したように、第二軟質筒部材20の第二連結部21を折り返した後に第一軟質筒部材10の第一連結部11に被せる作業を容易にする。その結果、第二連結部21を第一連結部11に被せる際に、第二連結部21が第一連結部11と擦れて変形することによって止水部に隙間ができることが回避される。
【0073】
また、グロメット1において、ベルト用段差241,251が、正しいベルト91の装着位置を示すとともに、グロメット1の軸心方向におけるベルト91の位置ずれを防ぐ。そのため、ベルト91の装着位置の不備、又はベルト91の位置ずれに起因して、第一連結部11と第二連結部21との面接触による止水の性能が低下することが防止される。
【0074】
また、グロメット1において、第二軟質筒部材20の張出部211と第一軟質筒部材10の非環状鍔部13における欠け部132との嵌め合い構造は、第一軟質筒部材10及び第二軟質筒部材20の周方向における位置ずれを防ぐ回転止めとして機能する。そのため、第一軟質筒部材10又は第二軟質筒部材20にねじれ方向の力が加わった場合に、そのねじれ力が第一連結部11及び第二連結部21の接触面に作用することは緩和される。
【0075】
従って、グロメット1が採用されることにより、第一軟質筒部材10及び第二軟質筒部材20の周方向における位置ずれに起因する止水性能の低下が回避される。各図に示されたグロメット1において、第二連結部21及び第三連結部22各々の内周面の断面が円形であるため、第一軟質筒部材10及び第二軟質筒部材20は、ねじれ方向の力が加わった場合に相対的に回転しやすい。この場合、張出部211と欠け部132との嵌め合い構造の効果はより顕著となる。
【0076】
また、グロメット1において、第一連結部側段差331が、第一軟質筒部材10における第一連結部11の長さ、即ち、硬質筒部材30に被せられる部分の長さがばらつくことを防止する。第一連結部11の長さのばらつきは、グロメット1の連結部における止水性能のばらつきの原因となる。従って、グロメット1が採用されることにより、第一連結部11の長さのばらつきに起因する止水性能のばらつき(低下)が回避される。
【0077】
また、グロメット1において、第二連結部側段差332が、第二軟質筒部材20における第二連結部21の長さ、即ち、第一連結部11に被せられる部分の長さがばらつくことを防止する。第二連結部21の長さのばらつきは、グロメット1の連結部における止水性能のばらつきの原因となる。従って、グロメット1が採用されることにより、第二連結部21の長さのばらつきに起因する止水性能のばらつき(低下)が回避される。
【0078】
また、グロメット1において、第二内側段差14及び第三内側段差272も、第一軟質筒部材10における第一連結部11の長さ、及び第二軟質筒部材20における第二連結部21の長さがばらつくことを防止する。
【0079】
また、グロメット1において、硬質筒部材30の内側面302と、第一軟質筒部材10及び第二軟質筒部材20の内側面とが面一となる。これにより、グロメット1の内側面にワイヤハーネスの挿入の邪魔となる出っ張りが存在しないため、グロメット1にワイヤハーネスを通す作業が容易となる。
【符号の説明】
【0080】
1 グロメット
9 締着用ベルト
9A ベルト付クランプ
10 第一軟質筒部材
11 第一連結部
12 第一中間筒部
13 非環状鍔部
14 第二内側段差
19 第一パネル装着部
20 第二軟質筒部材
21 第二連結部
22 第三連結部
23 第二中間筒部
24 第一環状鍔部
25 第二環状鍔部
26 窪み
29 第二パネル装着部
30 硬質筒部材
31 硬質筒部材の第一領域
32 硬質筒部材の第二領域
33 境界環状鍔部
91 ベルト
92 ベルト保持部
93 クランプ
132 欠け部
211 張出部
241,251 ベルト用段差
271 第一内側段差
272 第三内側段差
331 第一連結部側段差
332 第二連結部側段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ弾性材料からなる筒状の第一軟質筒部材及び第二軟質筒部材と、
前記弾性材料よりも硬い材料からなり、前記第一軟質筒部材及び前記第二軟質筒部材各々の端部の内側に挿入される筒状の硬質筒部材と、を備えたグロメットであって、
前記第一軟質筒部材の一方の端から一部の範囲を占める部分であり、内周面が前記硬質筒部材における軸心方向の一方の端から一部の範囲を占める第一領域の外周面に密接する状態で、前記硬質筒部材に被せられる筒状の第一連結部と、
前記第二軟質筒部材の一方の端から一部の範囲を占める部分であり、内周面が前記第一連結部の外周面に密接する状態で、前記第一連結部に被せられる筒状の第二連結部と、
前記第二軟質筒部材における前記第二連結部に連なる部分であり、内周面が前記硬質筒部材における前記第一領域以外の残りの第二領域の外周面に密接する状態で前記硬質筒部材に被せられる筒状の第三連結部と、を備えることを特徴とするグロメット。
【請求項2】
前記第二連結部の外周面に、当該第二連結部を締め付けるベルトが嵌め入れられる窪みを形成する一対の段差であるベルト用段差が形成されている、請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記第一軟質筒部材における前記第一連結部よりも奥側の部分の外周面に、周方向に沿って突起するとともに一部に欠け部が形成された鍔部が形成されており、
前記第二連結部の一部に、前記第二軟質筒部材の軸心方向に沿って張り出して前記鍔部の前記欠け部に嵌り込む張出部が形成されている、請求項1又は請求項2に記載のグロメット。
【請求項4】
前記硬質筒部材の外周面に、前記第一領域と前記第二領域との境界をなすとともに前記第一連結部の先端が接する環状の段差である第一連結部側段差が形成されている、請求項1から請求項3のいずれかに記載のグロメット。
【請求項5】
前記第二軟質筒部材における前記第三連結部の内側面に、環状の段差である第一内側段差が形成されており、
前記硬質筒部材における前記第二領域の外周面に、前記第一内側段差と接する環状の段差である第二連結部側段差が形成されている、請求項1から請求項4のいずれかに記載のグロメット。
【請求項6】
前記第一軟質筒部材の内側面に、前記硬質筒部材における前記第一領域側の端が接するとともに、前記硬質筒部材の内側面と前記第一軟質筒部材の前記第一連結部より奥側の部分の内側面とを面一にする環状の段差である第二内側段差が形成されており、
前記第二軟質筒部材の内側面に、前記硬質筒部材における前記第二領域側の端が接するとともに、前記硬質筒部材の内側面と前記第二軟質筒部材の前記第三連結部より奥側の部分の内側面とを面一にする環状の段差である第三内側段差が形成されている、請求項1から請求項5のいずれかに記載のグロメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−78211(P2013−78211A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216757(P2011−216757)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】