説明

グローブボックス

【課題】部品を追加することなく、乗員の膝に掛かる衝撃を吸収することのできる、グローブボックスを提供する。
【解決手段】車室内前方のインストルメントパネルPに配設され、後面部2と、この後面部2に連設され、前端がインストルメントパネルリインフォース5に接続された一対の側面部31,32とを有し、後面部2は乗員の膝Kと対峙する位置に配置され、側面部31,32は補強リブ33を備えた、グローブボックス1を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内前方においてインストルメントパネルの内側に配設されるグローブボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図4及び図5に示すように、車輌C1には、前面からの衝撃から助手席の乗員M1を保護するための手段として衝撃吸収機構が設けられている。この種の衝撃吸収機構は、前面からの入力時において、車輌C1の助手席に着座する乗員M1の前方移動抑制を行なうことで、乗員M1の傷害値の低減がなされるように構成されるものである。このうち、乗員M1の下肢の保護手段として、車室内I1前方における乗員M1の膝相当位置に対応したインストルメントパネルの内側位置に、車輌C1の前後方向に変形ストローク性能を備えたニーブラケット101が配設されており、前面衝突時においてニーブラケット101が膝を拘束しながら変形してエネルギを吸収するように構成されている。
【0003】
従来のニーブラケット101は、図4乃至図6に示すように、断面コ字形をなす上部フレーム102と下部フレーム103とが、車輌C1の後方に向かって互いに拡開した略ハ字形に対向配置されている。上部フレーム102と下部フレーム103とは、それらの車輌C1の前方側の端部が車幅方向に延びた円筒形のリインフォース104に固着され、車輌C1の後方側の端部がインストルメントパネル(図示省略)を支持する、上下方向に延びたニーパネル105に固着されて、インストルメントパネルの内側に配設されている。
【0004】
このように構成された従来のニーブラケット101は、上部フレーム102と、下部フレーム103と、ニーパネル105と、の三つの部材によって囲まれる略三角形の枠状構造を有し、前面からの入力時には、図5(A)及び(B)に示すように、下部フレーム103の屈曲部103aが折れ曲がり、前後方向の長さが縮むように変形することで、乗員M1を衝撃から保護することができる。
【0005】
このようなニーブラケットは、上部フレーム102及び下部フレーム103が乗員M1の膝部と対向する位置に設置されることが望ましい。しかし、インストルメントパネルの内部にはワイヤハーネスや他のブラケットなどが配置されており、これらとの干渉によってニーブラケットを理想的な位置に配置できない場合がある。また、ニーブラケットによりグローブボックスなどの容量が制限されてしまう場合もある。さらに、乗員の膝と上部フレーム102及び下部フレーム103との位置がずれていると、荷重がリインフォース104に伝達されず、効果的に衝撃吸収できない。
【0006】
そこで、特許文献1に記載されているように、インストルメントパネルにおける乗員の膝に対向する面に形成した開口に装着されたグローブボックスの表面を覆うように配置され、板状の衝撃吸収部材を有するリッドと、インストルメントパネルの開口周縁で且つリッドよりも車体前方側に配設され、リッドをヒンジ軸を介して支持するとともに、衝撃吸収部材の裏面外縁に荷重伝達可能に対向する枠状の補強板と、補強板よりも車体前方側に配設され、一端が車体に固定され他端が補強板におけるリッドが対向する部位の裏面に荷重伝達可能に対向する荷重支持部材と、を備えたニーボルスターが知られている。
【特許文献1】実開平3−25353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のニーボルスターでは、グローブボックスに補強板や荷重支持部材といった金属部材を別途付加することで、これらの付加された部材の剛性により衝撃を吸収するものであって、部品の追加を必要とするものであるから、部材点数の増加や重量の増加を伴うと共に、グローブボックスの容量が制限されてしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、部品の追加をすることなく、乗員の膝に掛かる衝撃を吸収することのできる、グローブボックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のグローブボックスは、車室内前方のインストルメントパネルに配設され、後面部と、この後面部に連設された一対の側面部とを有し、後面部は乗員の膝と対峙する位置に配置され、側面部は補強リブを備えたことを特徴とする。
【0010】
側面部は、前端がインストルメントパネルリインフォースに接続されていることが望ましい。
【0011】
また、側面部の前端同士は接続部により接続され、後面部と側面部と接続部とにより平面視においてボックス構造が形成されることが望ましい。
【0012】
側面部は、前端同士の間隔が後端同士の間隔より短いことが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のグローブボックスによれば、側面部が補強リブを備えたことにより、別途の補強部品を追加することなく、グローブボックス自体の強度を高めることができ、グローブボックスにより乗員の膝に掛かる衝撃を吸収することができる。
【0014】
側面部の前端がインストルメントパネルリインフォースに接続された場合には、側面部を介して伝達された荷重がインストルメントパネルリインフォースに入力され、効果的に衝撃を吸収することができる。
【0015】
側面部の前端同士が接続部により接続され、後面部と側面部と接続部とにより平面視においてボックス構造が形成される場合には、乗員の膝に掛かる衝撃に対するグローブボックスの強度を効率よく高めることができる。
【0016】
側面部の前端同士の間隔が後端同士の間隔より短い場合には、後面部が乗員の膝からの荷重により歪んだ場合にも効果的に衝撃を吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1〜3は本発明の実施形態に係るグローブボックス1を示す。図1及び図2に示すように、グローブボックス1は、車室内前方のインストルメントパネルPに配設され、乗員の膝Kと対峙する位置に配置された後面部2と、この後面部2に連設された一対の側面部31,32と、側面部31,32の前端同士を互いに接続する接続部4とを備え、これら後面部2と側面部31,32と接続部4とにより平面視においてボックス構造が形成される。
【0018】
図2及び図3に示すように、後面部2は内板21と外板22とからなる二重構造をなし、内板21と外板22との間に、内板21及び外板22に対し垂直に立設された複数の補強リブ23を備えることにより、いわゆるハニカム構造を形成している。また、側面部31,32は板面に対し垂直に立設された複数の補強リブ33を備えている。
【0019】
側面部31,32の前端はそれぞれインストルメントパネルリインフォース5に接続されている。また、側面部31,32は、前端同士の間隔が後端同士の間隔より短い。すなわち、グローブボックス1は、図1に示すように平面視において、後面部2を長辺、接続部4を短辺、側面部31,32を脚辺とする台形状のボックス構造を構成している。
【0020】
車両衝突時等に、このようなグローブボックス1に対し乗員の膝Kが、図1及び図3に破線で示すように衝突すると、膝Kから加えられた力は、図1に矢印で示すように後面部2に入力され、側面部31,32を伝わってインストルメントパネルリインフォース5に伝達される。
【0021】
この際、後面部2が二重構造をなし、さらに後面部2及び側面部31,32が補強リブ23,33を備えるため、グローブボックス1が簡単に潰れてしまうようなことはない。また、後面部2が十分な面積を持つことから、図1に示すように乗員の膝Kが正常な位置にある場合のみならず、K2で示すようにシートの中心からずれた位置にあるような場合であっても同様に、乗員の膝を拘束することができる。
【0022】
また、グローブボックス1が平面視において台形状のボックス構造を構成することから、後面部2に加えられた入力をインストルメントパネルリインフォース5に効率よく伝達することができる。具体的には、図1に示すように乗員の膝Kがグローブボックス1に衝突すると、乗員の膝Kの入力により後面部2の中心が車両前方へ湾曲するように歪むが、これにより側面部31,32の後端同士の間隔が狭まり、前端同士の間隔に近くなる。すると、側面部31,32がインストルメントパネルリインフォース5に対し垂直に近くなる。こうして、側面部31,32の板面方向が入力方向、すなわち車両前方と平行になる。そのため、衝突時の入力に対するインストルメントパネルリインフォース5からの反力を強く返すことができ、効率よく衝撃を吸収することができる。
【0023】
以上説明したように、本発明のグローブボックスは、車室内前方のインストルメントパネルに配設され、後面部と、この後面部に連設された一対の側面部とを有し、後面部は乗員の膝と対峙する位置に配置され、側面部に補強リブを備えたものであり、その主旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施することができる。例えば、側面部31,32の板面同士がなす角度は適宜設定できるが、想定される最も強い衝撃時にインストルメントパネルリインフォース5に対し垂直になるように設定されることが望ましい。また、補強リブ33は様々な方向のものが交差して設けられてもよいが、少なくとも車両前後方向に沿って設けられることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態のグローブボックスを示す平面図である。
【図2】図1の状態を示す斜視図である。
【図3】図1の状態を示すA−A断面図である。
【図4】(A)は従来のニーブラケットの配設部位を示す車輌前部付近の簡略図、(B)は(A)のニーブラケット周辺の拡大図である。
【図5】(A)は、従来のニーブラケットを備えた車輌の前面衝突時の状態を示す車輌前部付近の簡略図、(B)は従来のニーブラケットの変形状態を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1 グローブボックス
2 後面部
4 接続部
5 インストルメントパネルリインフォース
21 内板
22 外板
23 補強リブ
31 側面部
33 補強リブ
101 ニーブラケット
102 上部フレーム
103 下部フレーム
103a 屈曲部
104 リインフォース
105 ニーパネル
C1 車輌
I1 車室内
M1 乗員
K 膝
P インストルメントパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内前方のインストルメントパネルに配設され、後面部とこの後面部に連設された一対の側面部とを有するグローブボックスであって、
上記後面部は乗員の膝と対峙する位置に配置され、
上記側面部は補強リブを備えたことを特徴とする、グローブボックス。
【請求項2】
前記側面部は、前端がインストルメントパネルリインフォースに接続されたことを特徴とする、請求項1に記載のグローブボックス。
【請求項3】
前記側面部の前端同士が接続部により接続され、前記後面部と前記側面部と上記接続部とにより平面視においてボックス構造が形成されることを特徴とする、請求項1または2に記載のグローブボックス。
【請求項4】
前記側面部は、前端同士の間隔が後端同士の間隔より短いことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のグローブボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−248737(P2009−248737A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98789(P2008−98789)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】