説明

グローワイヤ耐性を向上させたポリアミドをベースとするハロゲンフリーの難燃性熱可塑性成形用組成物

【課題】ホスフィン酸塩含有難燃剤系をベースとするハロゲンフリーの難燃性熱可塑性ポリアミド成形用組成物であって、温度が少なくとも750℃のグローワイヤを用いた様々な肉厚でのIEC60695−2−13GWIT試験において再現性よく着火を起こさない(炎が2秒間を超えて見えていない)成形用組成物を提供する。
【解決手段】成形用組成物に、ホスフィン酸塩に加えて少なくとも2種の異なる窒素含有難燃剤から構成される特定の組合せと、さらには少なくとも1種の酸素、窒素、または硫黄を含有する第2主族または遷移族の金属の化合物とを含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非分岐の熱可塑性ポリアミドと、ホスフィン酸またはジホスフィン酸塩と、窒素含有難燃剤の組合せとに加えて、酸素、窒素、または硫黄を含有する少なくとも1種の金属化合物とを含む熱可塑性成形用組成物に関し、さらには、任意の種類の繊維、箔、および成形品の製造ならびに製造のための本発明の成形用組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックの多くはその化学組成ゆえに容易に燃えてしまう。そのため、プラスチック加工業者やときには法律によって定められる場合もある高い難燃性要件を達成できるように、プラスチックには難燃剤を添加しなければならないのが通常である。この目的のための多種多様な難燃剤および難燃相乗剤が周知であり、これらは市販もされている。煙濃度および煙組成に関する火災関連特性がより有利な非ハロゲン系難燃剤系がここしばらくの間好んで使用されてきた。
【0003】
非ハロゲン系難燃剤の中でも特にホスフィン酸の塩(ホスフィン酸塩)は、特に熱可塑性ポリマーに対して有効であることが判明している((特許文献1)および(特許文献2))。この種の難燃剤の誘導体の中には、熱可塑性成形用組成物の機械特性にほとんど悪影響を及ぼさないという特に興味深いものもある。
【0004】
さらに、非常に多くのポリマーにおいては、ホスフィン酸塩に特定の窒素含有化合物、特にメラミン誘導体を相乗的に組み合わせた方が、ホスフィン酸塩を単独とするよりも難燃剤として有効であることが見出されている((特許文献3)、(特許文献4)に加えて(特許文献5)および(特許文献6))。
【0005】
また、窒素を含有しない無機または鉱物化合物を少量添加することによって、熱可塑性ポリマー中における様々なホスフィン酸塩の難燃作用が大幅に改善できることと、上述した添加剤は窒素含有相乗剤を組み合わせたホスフィン酸塩の難燃作用も同様に改善できることも見出されている((特許文献7)、(特許文献8))。
【0006】
ホスフィン酸塩を含有する難燃剤系を使用した場合、特に加工温度が300℃を超えると、加工中にまずポリマーが一部分解し、ポリマーが変色し、そして発煙するという結果を招く。しかしながら、このような難点は、塩基性または両性の酸化物、水酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、またはスズ酸塩を添加することによって抑制することが可能となった((特許文献9))。
【0007】
一方、特に未だ解消されていないのが、ホスフィン酸塩含有難燃剤系を備えた熱可塑性成形用組成物のIEC60695−2グローワイヤ耐性(glow-wire resistance)、その中でも、シート形態の成形用組成物にグローワイヤを接触させた際に着火を起こさない(ここで言う「着火」とは、炎が5秒間以上見えていることと定義されている)というIEC60695−2−13グローワイヤ着火性試験(「GWIT」)に関する挙動の問題である。このGWIT試験はIEC60335−1の重要な構成要素でもあり、これは、人の注意が行き届かない家電機器中に存在する、電流が流れるかまたは電位がかかる特定の部品に適用され、その材料は、GWITクラスが少なくとも775℃であることが求められる。IEC60335−1において、必須ではないが多くの使用者が求める特に要求の厳しい特性が完成部品のグローワイヤ着火性試験であり、これは、温度が750℃という高温のグローワイヤに部品を接触させた際に炎が長くても2秒間しか見えないというものである。しかしながら、これらの最終部品は多種多様な形状および設計を有していることから、その基礎となる熱可塑性成形用組成物についても同様に、様々な肉厚のシートを用いてグローワイヤ温度を少なくとも750℃としたGWIT試験(IEC60695−2−13)において再現性よく2秒間を超えて炎が見えるという着火が起こらない場合にのみ、IEC60335−1の最終部品試験に合格する可能性が高いと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】DE−A−2252258(米国特許第3,900,444号明細書)
【特許文献2】DE−A−2447727(米国特許第4,036,811号明細書)
【特許文献3】WO−A2002/28953(米国特許出願公開第2004021135A1号)
【特許文献4】WO−A97/01664(米国特許第5,669,095号明細書)
【特許文献5】DE−A−19734437(米国特許第6,207,736号明細書)
【特許文献6】DE−A−19737727(米国特許第6,509,401号明細書)
【特許文献7】EP−A024167(GB8024901A)
【特許文献8】WO−A2004/016684)
【特許文献9】WO−A2004/022640
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、ホスフィン酸塩含有難燃剤系をベースとするハロゲンフリーの難燃性熱可塑性ポリアミド成形用組成物であって、温度が少なくとも750℃のグローワイヤを用いた様々な肉厚でのIEC60695−2−13GWIT試験において再現性よく着火を起こさない(炎が2秒間を超えて見えていない)成形用組成物を提供することにあった。
【0010】
本発明の他の目的は、グローワイヤ耐性を改善するとともに、ホスフィン酸塩含有難燃性ポリアミド成形用組成物に周知の熱および電気特性の良好な物性バランスに加えて難燃性(UL94がV−0、0.8mmから開始)および機械特性(ISO180 1/U IZOD耐衝撃性が45kJ/mを超え、かつ強度が200MPaを超える)の良好な物性バランスをかなり実質的に保持させることにもあった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
意外なことに、この成形用組成物に、ホスフィン酸塩に加えて少なくとも2種の異なる窒素含有難燃剤から構成される特定の組合せと、さらには少なくとも1種の酸素、窒素、または硫黄を含有する第2主族または遷移族の金属の化合物とを含有させた場合、ホスフィン酸塩含有難燃性熱可塑性ポリアミドのIEC60695−2−13グローワイヤ耐性(GWIT)を著しく改善できることがここに見出された。この特定の組合せを用いることにより、電気、熱、および機械特性に関する良好な物性バランスがかなり実質的に保持される。
【0012】
したがって、本発明により、
A)非分岐の熱可塑性ポリアミドを20〜97重量%と、
B)式(I)、
【化1】

(式中、
およびRは、同一であっても異なっていてもよく、水素および/または直鎖もしくは分岐のC〜Cアルキルおよび/またはアリールであり、
は、直鎖もしくは分岐のC〜C10アルキレンまたはC〜C10アリーレンまたはC〜Cアルキルアリーレンまたはアリール−C〜Cアルキレンであり、
Mは、アルカリ土類金属、アルカリ金属、アルミニウム、亜鉛、チタン、ジルコニウム、ケイ素、スズ、および/またはプロトン化された窒素塩基であり、
mは、1〜4であり、
nは、1〜3であり、
xは、1および2である)の1種もしくはそれ以上のホスフィン酸塩および/または式(II)の1種もしくはそれ以上のジホスフィン酸塩および/またはこれらの重合体を、組成物全体を基準として1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%、特に好ましくは5〜15重量%と、
C)C1)シアヌル酸メラミンを、組成物全体(100重量%)を基準として0.1〜25重量%、好ましくは0.2〜10%、特に好ましくは0.5〜5%ならびに
C2)シアヌル酸メラミン以外の窒素含有難燃剤、好ましくは、メラミンとリン酸もしくは縮合リン酸との反応生成物、またはメラミン縮合物とリン酸もしくは縮合リン酸との反応生成物、特に好ましくは、リン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メロン、およびポリリン酸メレム、特に非常に好ましくは、ポリリン酸メラミンを、組成物全体(100重量%)を基準として、少なくとも0.1〜25重量%、好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは2〜10重量%
から構成される窒素含有難燃剤の組合せを1〜40重量%と、
D)少なくとも1種の、酸素、窒素、または硫黄を含有する、好ましくは第2主族または遷移族の金属、特に好ましくはCa、Mg、およびZnの化合物、特に非常に好ましくはホウ酸亜鉛または硫化亜鉛を、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%、特に好ましくは0.75〜3.5重量%と、
を含む熱可塑性成形用組成物が提供される。
【0013】
好ましい一実施態様においては、熱可塑性成形用組成物は、成分A)〜D)に加えて、E)少なくとも1種の滑剤および/または離型剤を、0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、特に好ましくは0.1〜2重量%も含んでいてもよい。
【0014】
好ましい一実施態様においては、熱可塑性成形用組成物は、成分A)〜E)に加えて、またはE)に替えて、成分F)1種またはそれ以上の充填剤および強化材を、0.1〜60重量%、好ましくは1〜50重量%、特に好ましくは10〜40重量%も含んでいてもよい。
【0015】
他の好ましい実施態様においては、熱可塑性成形用組成物は、成分A)〜F)に加えて、または成分E)および/もしくはF)に替えて、G)他の添加剤を、各場合において、組成物全体を基準として、0.01〜40重量%、好ましくは0.01〜20重量%、特に好ましくは0.1〜15重量%も含んでいてもよい。
【0016】
各場合において成分の比率を合計すると全体で100重量%となる。
【0017】
意外なことに、成分A)、B)、C1)、C2)、およびD)を含む熱可塑性成形用組成物により、IEC60695−2−13により要求されるグローワイヤ耐性が得られ、再現性よく着火を起こさず(炎が2秒間を超えて見えていない)、それと同時に、ホスフィン酸塩含有難燃性ポリアミド成形用組成物に周知の良好な物性バランスが保持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
「プラスチックとその特性(Die Kunststoffe und ihre Eigenschaften(Plastics and their Properties))」、第5版(1998年)、p.14のハンス・ドミニングホイス(Hans Domininghaus)によれば、ポリマーとは、その分子鎖が、分岐側鎖を持たないかまたは様々な数の比較的短いかもしくは比較的長い分岐側鎖を有する、加熱によって軟化し、ほとんどすべての所望の方法で成形することができるものである。
【0019】
本発明によれば、本組成物は、成分A)として少なくとも1種の非分岐の熱可塑性ポリアミドを含む。本発明のポリアミドは様々な方法で調製することができ、また、多種多様な構成単位から合成することができ、そして特定の用途においては、特定の特性を兼ね備えるように調整された材料となるように、加工助剤、安定剤、ポリマーアロイの混合相手(例えばエラストマー)、または強化材(例えば、鉱物充填剤またはガラス繊維)を単独または組み合わせて備えていてもよい。他のポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー)をある比率でブレンドすることも同様に好適であり、また本明細書においては、適切な場合は、1種またはそれ以上の相溶化剤を使用することが可能である。ポリアミドの例えば耐衝撃性に関する特性を、エラストマーを添加することによって改善することができる(例えば強化ポリアミド)。多種多様な可能な組合せにより、非常に幅広い特性を有する非常に多くの製品を得ることが可能である。
【0020】
ポリアミドを調製するために、所望の最終生成物に応じた異なるモノマー構成単位および所望の分子量に設定するための各種連鎖調節剤または次工程で予定されている後処理のための反応基を有するモノマーを用いるという非常に多くの手順が開示されている。
【0021】
ポリアミドを調製するための工業的に適切な方法のほとんどは溶融物中における重縮合によって進行する。本文脈においては、ラクタムの加水分解重合も重縮合と見なす。
【0022】
好ましいポリアミドは、ジアミンおよびジカルボン酸ならびに/または少なくとも5員環のラクタムもしくは対応するアミノ酸から出発して調製することができる半結晶ポリアミドである。
【0023】
使用可能な出発物質は、脂肪族および/または芳香族ジカルボン酸(アジピン酸、2,2,4−および2,4,4−トリメチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等)、脂肪族および/または芳香族ジアミン(例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタンの異性体、ジアミノジシクロヘキシルプロパンの異性体、ビスアミノメチルシクロヘキサン、フェニレンジアミンの異性体、キシリレンジアミンの異性体)、アミノカルボン酸(例えばアミノカプロン酸)およびそれぞれに対応するラクタムである。上述した複数のモノマーから構成されるコポリアミドも包含される。
【0024】
カプロラクタムが特に好ましく使用され、ε−カプロラクタムが特に非常に好ましく使用される。
【0025】
それ以外の材料では、PA6、PA66、ならびにポリマー鎖中の各ポリアミド基が3〜11個のメチレン基を有する他の脂肪族および/または芳香族ポリアミドおよびコポリアミドをベースとする複合材料のほとんどが特に好適である。
【0026】
本発明に従い調製されるポリアミドは、他のポリアミドおよび/または他のポリマーとの混合物として使用することもできる。
【0027】
このポリアミドは、従来の添加剤、例えば、離型剤、安定剤、および/または流動助剤を、材料がまだ溶融状態にある間に混合するかまたは表面に適用したものを含んでいてもよい。
【0028】
本発明の組成物は、成分B)として、式(I)の1種もしくはそれ以上のホスフィン酸塩および/または式(II)の1種もしくはそれ以上のジホスフィン酸塩および/またはこれらの重合体、
(式中、
およびRは、同一であっても異なっていてもよく、水素および/または直鎖もしくは分岐のC〜Cアルキルおよび/またはアリールであり、
は、直鎖もしくは分岐のC〜C10アルキレン、C〜C10アリーレン、および/またはC〜Cアルキルアリーレン、またはアリール−C〜Cアルキレンであり、
Mは、アルカリ土類金属、アルカリ金属、アルミニウム、亜鉛、チタン、ジルコニウム、ケイ素、スズ、および/またはプロトン化された窒素塩基であり、
mは、1〜4であり、
nは、1〜3であり、
xは、1および2である)を含む。
【0029】
Mは、好ましくは、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、および/または亜鉛である。プロトン化された窒素塩基は、好ましくは、アンモニア、1、3、5−トリアジン化合物、およびトリエタノールアミン、特に好ましくはメラミンのプロトン化された塩基である。RおよびRは、同一であっても異なっていてもよく、好ましくは、直鎖もしくは分岐のC〜Cアルキルおよび/またはフェニルである。RおよびRは、同一であっても異なっていてもよく、特に好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、および/またはフェニルである。Rは、好ましくは、メチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、tert−ブチレン、n−ペンチレン、n−オクチレン、n−ドデシレン、フェニレン、ナフチレン、メチルフェニレン、エチルフェニレン、tert−ブチルフェニレン、メチルナフチレン、エチルナフチレン、tert−ブチルナフチレン、フェニルメチレン、フェニルエチレン、フェニルプロピレン、またはフェニルブチレンである。特に好ましくは、Rは、フェニレンまたはナフチレンである。WO−A97/39053(米国特許第6,365,071号明細書)には好適なホスフィン酸塩が記載されており、当該出願のホスフィン酸塩に関する内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。本発明の目的のために特に好ましいホスフィン酸塩は、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル−n−プロピルホスフィン酸の、アルミニウム、カルシウム、および亜鉛塩、ならびにこれらの混合物である。
【0030】
mは、好ましくは、2および3、特に好ましくは3である。
【0031】
nは、好ましくは、1および3、特に好ましくは3である。
【0032】
xは、好ましくは、1および2、特に好ましくは2である。
【0033】
本発明の目的のために以下に使用するホスフィン酸塩という用語は、ホスフィン酸の塩だけでなく、ジホスフィン酸の塩およびこれらの重合体も意味するものとする。
【0034】
水性媒体中で調製されるこれらのホスフィン酸は、基本的には単量体化合物である。反応条件に応じて、場合によりホスフィン酸塩の重合体も生成し得る。
【0035】
ホスフィン酸塩の構成要素としての好適なホスフィン酸としては、例えば、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル−n−プロピルホスフィン酸、またはジフェニルホスフィン酸が挙げられる。
【0036】
本発明によるホスフィン酸の塩は、周知の方法、例えばEP−A0699708(米国特許第5,780,534号明細書)に記載されている方法によって調製することができる。この内容を本出願の一部を構成するものとしてここに援用する。当該明細書においては、水溶液中においてホスフィン酸を金属炭酸塩、金属水酸化物、または金属酸化物と反応させている。
【0037】
本発明の組成物は、成分C)として、少なくとも2種の異なる窒素含有難燃剤から構成される特定の組合せを含み、その成分C1)は、シアヌル酸メラミンであり、その存在比率は、成形用組成物の成分全体を基準として0.1〜25重量%、好ましくは0.2〜10重量%、特に好ましくは0.5〜5重量%である。シアヌル酸メラミンは、好ましくは等モル量のメラミンとシアヌル酸またはイソシアヌル酸との反応生成物である。このような生成物の中でも市販品の品質等級のものがいずれも適している。その中でも特に、メラプール(Melapur)(登録商標)MC25(スイス国バーゼルのチバ・メラプール(CIBA Melapur,Switzerland,Basle))に加えてバディット(Budit)(登録商標)315(独国ブーデンハイムのブーデンハイム(Budenheim,Budenheim,Germany))またはプラスチサン(Plastisan)(登録商標)Bもしくはプラスチサン(登録商標)S(伊国ベルガモ(Bergamo,Italy)の3V)が例示される。使用されるシアヌル酸メラミンは、平均粒径が0.1μm〜100μm、好ましくは0.1μm〜30μm、特に好ましくは0.1μm〜7μmの粒子から構成されており、周知の手段で表面処理されているかまたは被覆されていてもよい。このようなものの中でも特に、単量体、低重合体、および/または重合体形態でシアヌル酸メラミンに適用されていてもよい有機化合物が挙げられる。一例として、ケイ素含有化合物、例えば有機官能基を有するシランまたはオルガノシロキサンをベースとする被覆系を使用することが可能である。無機成分を用いて被覆することも同様に可能である。シアヌル酸メラミンは、通常、90〜100℃の温度の水性媒体中において出発物質から得られる。
【0038】
成分C)は、シアヌル酸メラミンC1)だけでなく、シアヌル酸メラミン以外の難燃剤または難燃相乗剤としての活性を有する少なくとも1種の他の窒素含有成分C2)も含んでいる。この目的に好適な化合物は、メラミン、ホウ酸メラミン、シュウ酸メラミン、リン酸メラミン(prim.)、リン酸メラミン(sec.)、およびピロリン酸メラミン(sec.)、リン酸メラミン重合体に加えてホウ酸ネオペンチルグリコールアミン(amine neopentyl glycol borate)である。グアニジン塩も同様に好適であり、例えば、炭酸グアニジン、シアヌル酸グアニジン(prim.)、リン酸グアニジン(prim.)、リン酸グアニジン(sec.)、硫酸グアニジン(prim.)、硫酸グアニジン(sec.)、ホウ酸ペンタエリスリチルグアニジン(guanidine pentaerythrityl borate)、ホウ酸ネオペンチルグリコールグアニジン(guanidine neopentyl glycol borate)、リン酸尿素に加えて、シアヌル酸尿素がある。アンメリン、アンメリドに加えて、メラミンの縮合物、例えば、メレム、メラム、メロン、またはこの種のより縮合度の高い化合物を使用することも可能である。同様に好適な化合物は、ポリリン酸アンモニウムおよびイソシアヌル酸トリス(ヒドロキシエチル)またはそのカルボン酸との反応生成物、ベンゾグアナミンならびにその付加生成物および塩、ならびにその窒素原子上に置換基を有する生成物に加えてその塩および付加生成物である。他に使用可能な窒素含有成分は、アラントイン化合物に加えてそのリン酸、ホウ酸、またはピロリン酸との塩、さらにはグリコールウリルまたはその塩である。無機窒素含有化合物、例えばアンモニウム塩を使用することも可能である。
【0039】
成分C2)は、好ましくは、メラミンとリン酸もしくは縮合リン酸との反応生成物、またはメラミン縮合物とリン酸もしくは縮合リン酸との反応生成物、または上述の生成物の混合物である。リン酸との反応生成物は、メラミン化合物またはメラミン縮合物であるメラム、メレム、メロン等とリン酸との反応によって得られる生成物である。このようなものの例としては、リン酸ジメラミン、ピロリン酸ジメラミン、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メロン、およびポリリン酸メレム、ならびに例えばWO−A98/39306(米国特許第6,121,445号明細書)に記載されている混合高分子塩(mixed polysalt)が挙げられる。特に好ましくは、成分C2)はポリリン酸メラミンである。様々な品質等級のポリリン酸メラミン製品が市販されている。このようなものの例として、特に、メラプール(登録商標)200/70(チバ・メラプール、スイス国バーゼル)に加えてバディット(登録商標)3141(ブーデンハイム、独国ブーデンハイム)が挙げられる。
【0040】
本発明によれば、この組成物は、成分D)として、酸素、窒素、または硫黄を含有する少なくとも1種の金属化合物を、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%、特に好ましくは0.75〜3.5重量%を含む。この目的に好適な化合物は、ZnO、特に活性亜鉛華(例えば独国レベルクーゼンのバイエル・アーゲー(Bayer AG,Leverkusen,Germany))、ZnS、TiO、MgCO、CaCO、ホウ酸亜鉛、CaO、MgO、Mg(OH)、TiN、窒化ホウ素、Mg、Zn、Zn(PO、Ca(PO、ホウ酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、またはこれらの混合物である。本発明による好ましい金属は、Ca、Mg、およびZnであり、ホウ酸亜鉛および硫化亜鉛が特に好ましい。硫化亜鉛は、通常、固体粒状形態で使用される。市販品としては、例えば、ザッハトリツ(Sachtolith)(登録商標)HDSまたはザッハトリツ(登録商標)HD(いずれも独国ドゥイスブルグのザハトレーベン(Sachtleben,Duisburg,Germany)から)が挙げられる。本発明の目的のためのホウ酸亜鉛という用語は、酸化亜鉛およびホウ酸から得ることができる物質を意味する。ホウ酸亜鉛には様々な周知の水和物、例えば、ZnO・B・2HOおよび2ZnO・3B・3.5HOが存在し、本明細書においては、上述した2種の組成の化合物が好ましい。使用可能なホウ酸亜鉛の例がGmelin Syst.、第32巻、Zn、1924年、p.248、補巻、1956年、pp.971〜972、カーク−オスマー(Kirk−Othmer)(第4版)pp.4,407〜408、10,942、ウルマン(Ullmann)第5版A4巻、p.276、ヴィナッカー−キュフラー(Winnacker−Kuechler)(第4版)、p.2556に記載されている。市販の品質等級のホウ酸亜鉛としては、特に、英国ロンドンのアンゾン・リミテッド(Anzon Ltd.,London,England)からの製品であるZB−223、ZB−467、およびZB−Liteまたは独国シュルツバッハのドイチュ・ボラックスGmbH(Deutsche Borax GmbH,Sulzbach,Germany)からの製品であるファイヤーブレーク(Firebrake)(登録商標)ZBが挙げられる。
【0041】
成分D)も同様に、圧縮された材料の形態またはポリマー担体物質中のマスターバッチの形態で使用してもよい。さらに成分D)は、周知の手段によって表面処理されていても被覆されていてもよい。これらの中でも、とりわけ、単量体、低重合体、および/または重合体形態で適用されていてもよい有機化合物が挙げられる。無機成分の被覆も同様に可能である。
【0042】
好ましい一実施態様においては、この組成物は、適切な場合は、成分E)として滑剤および/または離型剤も含んでいてもよい。この目的に好適な化合物としては、例えば、長鎖脂肪酸(例えば、ステアリン酸またはベヘン酸)、これらの塩(例えば、ステアリン酸Caまたはステアリン酸Zn)、またはこれらのエステル誘導体もしくはアミド誘導体(例えばエチレンビスステアリルアミド)、モンタンワックス(炭素原子28〜32個の鎖長を有する直鎖飽和カルボン酸から構成される混合物)、または低分子量ポリエチレンワックス、または低分子量ポリプロピレンワックスが挙げられる。本発明によれば、8〜40個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族カルボン酸と2〜40個の炭素原子を有する飽和脂肪族アルコールまたはアミンとのエステルまたはアミドの群からの滑剤および/または離型剤を使用することが好ましく、本明細書においては、エチレンビスステアリルアミドまたはテトラステアリン酸ペンタエリスリチル(PETS)が特に非常に好ましい。
【0043】
他の好ましい実施態様においては、この組成物は、適切な場合は、E)に加えてまたはE)に替えて、1種またはそれ以上の充填剤および強化材を成分F)として含んでいてもよい。本発明の成形用組成物に添加してもよい繊維状または粒状の充填剤および強化材としては、例えば、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラス織物、ガラスマット、炭素繊維、耐熱性有機繊維(例えば、アラミドまたはポリフタルイミド繊維)、チタン酸カリウム繊維、天然繊維、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、長石、雲母、ケイ酸塩、石英、カオリン、か焼カオリン、二酸化チタン、珪灰石に加えて、ナノサイズの鉱物(例えば、モンモリロナイトまたはナノベーマイト(nano-boehmite))等が挙げられ、また、これらは表面処理されていてもよい。好ましい強化材は市販のガラス繊維である。ガラス繊維は、通常、繊維径が8〜18μmであり、連続フィラメント繊維の形態または切断もしくは粉砕されたガラス繊維の形態で添加することができ、本明細書における繊維は、適切な場合は、表面改質剤(例えば、シランまたはガラス繊維サイズ剤)で処理されていてもよい。針状無機充填剤も同様に好適である。本発明の目的のための針状無機充填剤は、針状性が顕著な無機充填剤である。このようなものとしては例えば針状珪灰石が挙げられるであろう。この鉱物のL/D(長さ対直径)比は、好ましくは2:1〜35:1、好ましくは3:1〜19:1、最も好ましくは4:1〜12:1である。本発明の針状鉱物の、サイラス・グラニュロメーター(CILAS GRANULOMETER)を用いて測定された平均粒度は、好ましくは20μm未満、特に好ましくは15μm未満、特に好ましくは10μm未満、最も好ましくは5μm未満である。無機充填剤は、適切な場合は、表面処理されていてもよい。適切な場合に成分F)として使用される充填剤および強化材の使用量は、各場合において、成形用組成物全体を基準として0.1〜60重量%、好ましくは1〜50重量%、特に好ましくは10〜40重量%である。これらは、最も好ましくは、例えばシランやガラス繊維サイズ剤といった表面改質剤を施されていてもよい繊維径が8〜18μmである市販のガラス繊維であるか、あるいは、同様に表面改質剤を備えていてもよい針状無機充填剤、特に珪灰石である。
【0044】
他の好ましい実施態様においては、この組成物は、適切な場合は、成分E)およびF)に加えて、または成分E)および/もしくはF)に替えて、他の添加剤を含んでいてもよい。成分G)となる従来の添加剤の例としては、安定剤(例えば、UV安定剤、熱安定剤、ガンマ放射線安定剤、加水分解安定剤)、帯電防止剤、他の難燃剤、乳化剤、造核剤、可塑剤、加工助剤、衝撃強度改質剤、染料、および顔料が挙げられる。上述した添加剤および他の好適な添加剤が、例えば、ゲフター(Gaechter)、ミュラー(Mueller)著、プラスチック添加剤(Kunststoff−Additive(PlasticsAdditives))、第3版、ハンセル・フェルラーク(Hanser−Verlag)、ミュンヘン(Munich)、ウイーン(Vienna)、1989年、およびプラスチック添加剤便覧(Plastics Additives Handbook)、第5版、ハンセル・フェルラーク、ミュンヘン、2001年に記載されている。この添加剤は、単独で使用しても、混合物として使用しても、マスターバッチの形態で使用してもよい。
【0045】
使用可能な安定剤としては、例えば、立体障害フェノールおよび/または亜リン酸エステル、ヒドロキノン、ジフェニルアミン等の芳香族2級アミン、置換レゾルシノール、サリチル酸エステル、ベンゾトリアゾール、およびベンゾフェノンに加えて、これらの群の代表的なものを様々に置換したものおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0046】
UV安定剤としては、様々な置換されたレゾルシノール、サリチル酸エステル、ベンゾトリアゾール、およびベンゾフェノンが挙げられるであろう。
【0047】
衝撃強度改質剤(エラストマー改質剤、改質剤)の場合、非常に一般的な材料は、好ましくは以下に示す少なくとも2種のモノマーから構成されるコポリマーである:エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブテン、イソプレン、クロロプレン、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、およびアルコール成分が1〜18個の炭素原子を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル。
【0048】
添加可能な着色剤は、二酸化チタン、群青、酸化鉄、硫化亜鉛、カーボンブラック等の無機顔料、さらにはフタロシアニン、キナクリドン等の有機顔料、さらにはニグロシン、アントラキノン等の染料、さらには他の着色剤である。本発明の目的のためにはカーボンブラックを使用することが好ましい。
【0049】
使用可能な造核剤は、例えば、フェニルホスフィン酸ナトリウムまたはフェニルホスフィン酸カルシウム、酸化アルミニウムまたは二酸化ケイ素に加えてタルクも好ましい。
【0050】
使用可能な加工助剤は、例えば、少なくとも1種のα−オレフィンと、少なくとも1種の脂肪族アルコールのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルとから構成されるコポリマーである。本明細書において好ましいコポリマーは、α−オレフィンがエテンおよび/またはプロペンから構成され、メタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルが6〜20個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル基をアルコール成分として含むものである。アクリル酸2−エチルヘキシルが特に好ましい。
【0051】
可塑剤としては、例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジル、炭化水素油、N−(n−ブチル)ベンゼンスルホンアミドが挙げられるであろう。
【0052】
他の難燃剤としては、例えば、リン酸およびホスホン酸エステル、ホスホン酸アミン塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、ホスフィンオキシド、およびホスファゼンの単量体および低重合体の群から選択されるリン含有難燃剤を挙げることができ、本明細書においては、これらの1つまたは様々な群から選択される複数の成分の混合物を難燃剤として使用することも可能である。本明細書において具体的に述べられていない、好ましくはハロゲンフリーの他のリン化合物を、単独でまたは他の好ましくはハロゲンフリーのリン化合物との任意の所望の組合せで使用することも可能である。これらの中には、リン酸ホウ素水和物等の純粋な無機リン化合物も含まれる。脂肪族および芳香族スルホン酸の塩を使用することも、水酸化アルミニウムおよび/または水酸化マグネシウム、炭酸CaMg水和物(例えばDE−A4236122(CA2109024A1))、酸化モリブデン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、または亜鉛塩およびマグネシウム塩等の鉱物系難燃化添加剤を使用することも可能である。他の好適な難燃化添加剤は、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニルエーテル、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルフィド、ポリエーテルケトン等のカーボナイザー(carboniser)に加えて、テトラフルオロエチレンポリマー等の滴下防止剤である。
【0053】
好ましい一実施態様においては、本発明の組成物に成分G)の添加剤を添加できる量は、各場合において、成形用組成物全体を基準として、0.01〜40重量%、好ましくは0.01〜20重量%、特に好ましくは0.1〜15重量%である。
【0054】
さらに本発明は、
A)非分岐の熱可塑性ポリアミドを20〜97重量%と、
B)式(I)、
【0055】
【化2】

(式中、
およびRは、同一であっても異なっていてもよく、水素および/または直鎖もしくは分岐のC〜Cアルキルおよび/またはアリールであり、
は、直鎖もしくは分岐のC〜C10アルキレンまたはC〜C10アリーレンまたはC〜Cアルキルアリーレンまたはアリール−C〜Cアルキレンであり、
Mは、アルカリ土類金属、アルカリ金属、アルミニウム、亜鉛、チタン、ジルコニウム、ケイ素、スズ、および/またはプロトン化された窒素塩基であり、
mは、1〜4であり、
nは、1〜3であり、
xは、1および2である)の1種もしくはそれ以上のホスフィン酸塩および/または式(II)の1種もしくはそれ以上のジホスフィン酸塩および/またはこれらの重合体を、組成物全体を基準として1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%、特に好ましくは5〜15重量%と、
C)C1)シアヌル酸メラミンを、組成物全体(100重量%)を基準として、0.1〜25重量%、好ましくは0.2〜10%、特に好ましくは0.5〜5%ならびに
C2)シアヌル酸メラミン以外の少なくとも1種の窒素含有難燃剤、好ましくは、メラミンとリン酸もしくは縮合リン酸との反応生成物、またはメラミン縮合物とリン酸もしくは縮合リン酸との反応生成物、特に好ましくは、リン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メロン、およびポリリン酸メレム、特に非常に好ましくは、ポリリン酸メラミンを、組成物全体(100重量%)を基準として、少なくとも0.1〜25重量%、好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは2〜10重量%
から構成される窒素含有難燃剤の組合せを1〜40重量%と、
D)少なくとも1種の、酸素、窒素、または硫黄を含有する、好ましくは第2主族または遷移族の金属、特に好ましくはCa、Mg、およびZnの化合物、特に非常に好ましくはホウ酸亜鉛および硫化亜鉛を、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%、特に好ましくは0.75〜3.5重量%と、
を含む熱可塑性成形用組成物から得ることができる繊維、箔、および成形品も提供する。
【0056】
好ましい一実施態様においては、本発明は、適切な場合は、成分A)〜D)に加えて1種またはそれ以上の成分E)および/またはF)および/またはG)を含む繊維、箔、および成形品も提供する。
【0057】
最後に、本発明は、成分A〜D)を含み、好ましい実施態様においては、適切な場合は、E)、F)、および/またはG)も含む成形用組成物が使用されることを特徴とする、繊維、箔、および成形品の製造方法も提供する。
[実施例]
【0058】
本発明に従い説明した難燃性および機械特性の改善を実証することを目的として、適切なプラスチック成形用組成物を調製するために、まず配合を行った。この目的のために、二軸押出機(独国シュトットガルトのコペリオン・ヴェルナー・ウント・フライデラー(Coperion Werner&Pfleiderer,Stuttgart,Germany)からのZSK32メガ・コンパウンダー(Mega Compounder))を用いて個々の成分を270〜335℃の温度で混合し、押出成形し、ペレット化が可能になるまで冷却し、ペレット化した。これを乾燥(通常、70℃の真空乾燥キャビネット内で2日間)した後、このペレットを270〜300℃の温度で加工することによって、UL94V試験用標準試験片、IEC60695−2−12グローワイヤ試験用試験片、さらにはISO180/1U(IZOD耐衝撃性)およびISO178(曲げ試験)の機械試験用試験片を得た。これらを、本発明の成形用組成物の耐火性に加えて機械特性を決定するために使用した。
【0059】
この成形用組成物の難燃性を、まずUL94V法(アンダーライターズ・ラボラトリーズ・インコーポレーテッド(Underwriters Laboratories Inc.)安全基準(Standard of Safety)、「機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験(Test for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances)」、p.14〜18、ノースブルック(Northbrook)、1998年)により決定した。
【0060】
IEC60695−2−12 GWFI(グローワイヤ燃焼性指数)グローワイヤ試験を用いるとともに60695−2−13 GWIT試験(グローワイヤ着火温度)グローワイヤ着火試験を用いることにより、グローワイヤ耐性を決定した。GWFI試験においては、温度550〜960℃のグローワイヤを用いて、3つの試験片(例えば60×60×1.5mmのシート)について、残炎時間が30秒を超えず、かつ試験片から有炎小片が生じない最高温度を測定する。GWIT試験においては同等の試験手順を用い、3回の連続する試験においてグローワイヤに曝されている間でさえも着火を起こさない最高温度よりも25K(900℃〜960℃の場合は30K)高い温度をグローワイヤ着火温度と記述する。ここにおける着火とは、発炎時間が5秒以上であることを意味する。完成部品(例えば、すぐに使用できる状態にある設置済みのプラグコネクタ)にIEC60695−2−13と同等の試験を用いるIEC60335−1に照らすと、グローワイヤ温度が750℃の場合は発炎時間が最高でも2秒間という着火しか許容されず、これに関連する例でも、750℃のグローワイヤに曝された場合の発炎時間を最高で30秒間としている。
【0061】
耐衝撃性測定IZOD(ISO180/1U、23℃)またはISO178の曲げ実験により機械特性を得た。
【0062】
以下に示す材料を用いて実験を行った(この成分の比率を合計すると100重量%となる):
成分A:ナイロン6(デュレタン(Durethan)(登録商標)B29、独国レバークーゼンのランクセス・ドイチュラントGmbH(Lanxess Deutschland GmbH,Leverkusen,Germany)(ランクセス・グループ(Lanxess Group)))
成分B:式(I)の系(式中、RおよびRはエチルであり、Mはアルミニウムである(EP−A803508/EP−A944637に記載))
成分C/1:シアヌル酸メラミン(スイス国バーゼルのチバからのメラプール(登録商標)MC25)
成分C/2:ポリリン酸メラミン(スイス国バーゼルのチバからのメラプール(登録商標)200/70)
成分D/1:ホウ酸亜鉛(独国シュルツバッハのドイチュ・ボラックスGmbH(Deutsche Borax GmbH,Sulzbach,Germany)からのファイヤーブレーク(登録商標)ZB)
成分D/2:硫化亜鉛(独国ドゥイスブルグのザハトレーベンからのザッハトリツ(登録商標)HDS)
成分E:N,N’−エチレンビスステアリルアミド
成分F:ランクセス・ドイチュラントGmbHからのCS7928ガラスチョップドファイバー
成分G:他の添加剤。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
表1〜3から、本発明によるハロゲンフリーの成分B)、C/1)、C/2)、およびD/1)の特定の組合せ(本発明による実施例E1、E2、およびE3)により、難燃性に関しても(UL94がV−0、GWFIが960℃、GWITが775℃)、さらには機械特性(耐衝撃性および曲げ強さ)に関しても、先行技術に比べて著しい改善が見られることがわかる。さらに、比較例から、成分D1を省くとC1を増量しても(CE1、2、および3)これを補うことができず、その結果として生じるGWIT挙動および機械特性に関する不利益が避けられないことがわかる。C1を省いてD1を増量した場合(CE4および5)にも同様のことが言える。成分C1)およびD1)の両方を省くと機械特性は高い水準を維持するものの、グローワイヤ着火性は依然として要求特性をかなり下回る(CE8)。ここに説明した特徴は、たとえホスフィン酸塩成分Bおよび第2窒素含有成分C2)の比率を高くしても(CE9〜12)依然として変わらない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形用組成物であって、
A)非分岐の熱可塑性ポリアミドを20〜97重量%と、
B)式(I)
【化1】

(式中、
およびRは、エチルであり、
Mは、アルミニウムであり、
mは、1〜4である)の少なくとも1種のホスフィン酸塩を、前記組成物全体を基準として1〜30重量%と、
C)C1)シアヌル酸メラミンを前記組成物全体(100重量%)を基準として0.1〜25重量%および
C2)ポリリン酸メラミンを前記組成物全体(100重量%)を基準として少なくとも0.1〜25重量%
から構成される窒素含有難燃剤の組合せを1〜40重量%と、
D)ホウ酸亜鉛を、前記組成物全体を基準として0.1〜10重量%と、
を含み、
芳香族ジ-もしくはトリ-カルボン酸エステル及び芳香族ジ-もしくはトリ-カルボキサミドを含まない、成形用組成物。
【請求項2】
成形用組成物であって、
A)非分岐脂肪族の熱可塑性ポリアミドを20〜97重量%と、
B)式(I)
【化2】

(式中、
およびRは、エチルであり、
Mは、アルミニウムであり、
mは、1〜4である)の少なくとも1種のホスフィン酸塩を、前記組成物全体を基準として1〜30重量%と、
C)C1)シアヌル酸メラミンを前記組成物全体(100重量%)を基準として0.1〜25重量%および
C2)ポリリン酸メラミンを前記組成物全体(100重量%)を基準として少なくとも0.1〜25重量%
から構成され、C1)シアヌル酸メラミンのC2)ポリリン酸メラミンに対する比率が2:5〜3:5である窒素含有難燃剤の組合せを1〜40重量%と、
D)ホウ酸亜鉛を、前記組成物全体を基準として0.1〜10重量%と、
を含む、成形用組成物。
【請求項3】
エチレン-ビス-ステアリルアミド及びペンタエリスリチルテトラステアレートからなる群より選択される、E)少なくとも1種の滑剤および/または離型剤0.01〜5重量%をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の成形用組成物。
【請求項4】
少なくとも1種の滑剤および/または離型剤が、N,N-エチレン-ビス-ステアリルアミドであることを特徴とする、請求項3に記載の成形用組成物。
【請求項5】
F)1種またはそれ以上の充填剤および強化材0.1〜60重量%をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の成形用組成物。
【請求項6】
G)他の添加剤を前記組成物全体を基準として0.01〜40重量%をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の成形用組成物。
【請求項7】
繊維、箔、または成形品の製造方法であって、前記繊維、箔、または成形品が、請求項1または2に記載の成形用組成物から形成される工程を含む方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載の方法により得られる繊維、箔、および成形品。
【請求項9】
ハロゲンフリーの難燃性箔、繊維、または成形品の製造方法であって、請求項1または2に記載の成形用組成物から前記ハロゲンフリーの難燃性箔、繊維、または成形品を形成する工程を含む方法。

【公開番号】特開2011−21204(P2011−21204A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237733(P2010−237733)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【分割の表示】特願2007−530623(P2007−530623)の分割
【原出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】