説明

ケチアピンの製造方法

本発明は、1−[2−(ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジンとジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミンとの反応を含む、11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)ジベンゾ[b,f]−1,4−チアゼピンおよびその薬学的に許容され得る塩の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケチアピンというINN名で既知の医薬品成分である、式Iの11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)ジベンゾ[b,f]−1,4−チアゼピンを製造するための経済的なアミノ基転移方法を提供する。
【化1】

【0002】
ケチアピンは、抗精神病薬または神経弛緩薬として、とりわけ統合失調症の治療に使用される。本家製品Seroquel(登録商標)は、活性成分としてフマル酸ケチアピンを含有する。
【背景技術】
【0003】
ケチアピンは、特許文献1(特許文献2)に最初に記載された。ケチアピンは、式IIのジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−[10H]オン
【化2】

から、まずオキシ塩化リンによりハロゲン化され、ついで単離、1−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルピペラジンと縮合されケチアピンを得るとして製造される。フラッシュクロマトグラフィーによる精製後、収率は77.7%であった。ハロゲン化の代替方法としては、最初の工程においてチオエーテルを経る方法が存在する。
【0004】
特許文献3において特許請求された方法では、ピペラジン環が最初に11−クロロ−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンと縮合され、その後ケチアピンがハロエトキシエタノールとのその反応により得られる。さらにその塩基がヘミフマル酸塩に変換され、78%の収率で単離された。
【0005】
特許文献4には、インサイチュでオキシ塩化リンを破壊し、有害廃棄物を減らすことにより改良された特許文献1の方法が記載されている。オキシ塩化リンは、式IIの化合物のたった約1当量が使用されるのみであるが、特許文献1の方法では、約15当量が使用されていた。
【0006】
ハロゲン化物の存在下における11−クロロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンとピペラジン部分との反応は、特許文献5に記載されている改良である。この方法は、ケチアピンを高純度で得られると言われている。
【0007】
特許文献6には、10H−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−オンを直接ピペラジン誘導体と反応させることにより、ハロゲン化工程および有害なリン系のハロゲン化剤の使用を回避した方法が記載されている。これは、反応をチタンアルコキシドの存在下に行うことにより達成される。収率はフマル酸塩として50〜75%が報告されている。高価なチタンアルコキシドが開始化合物である式IIの約2〜3倍過剰で使用されている。
【0008】
また、特許文献7の方法も、塩化オキサリルをハロゲン化剤として使用することによりハロゲン化におけるリン化合物の使用を回避している。塩化イミノが66%の収率で得られる。11−クロロ−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピンと1−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルピペラジンとの反応は、有機溶媒中塩基の存在下または2相系で行われる。しかし、使用される試薬塩化オキシルは有毒であり、特別な注意を要する。
【0009】
特許文献8には、ケチアピンの製造のためのワンポット合成が記載されている。オキシ塩化リンがハロゲン化工程において10H−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−オンの約1当量で使用されている。
【0010】
特許文献9には、クロロエトキシエタノールと、ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−[10H]オンのハロゲン化により得られるピペラジニル−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン二塩酸塩との反応、得られた塩化イミノとピペラジンとの反応、および得られた化合物の塩化水素アルコール溶液での処理を含む方法が記載されている。
【0011】
前述の方法はすべて、ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−[10H]オンを出発材料として使用している。この製造方法は、複数の工程を要し、ほとんどの場合ピペラジン部分と縮合され得る前にハロゲン化して塩化イミノにしなければならない。ハロゲン化試薬、たとえばオキシ塩化リンが過剰量で使用され、反応混合物からのそれらの除去のため大規模な蒸発が必要とされる。
【0012】
特許文献10、特許文献11、特許文献12および特許文献13に記載された経路では、保護中間体を使用する別のアプローチが使用されている。あるケースでは、反応はワンポット様式で行われ、追加の精製工程は必要なく、高収率で純粋な生成物を得られる。しかしながら、使用される保護と脱保護の工程が方法を長くし、ケチアピンの製造のためのより短い方法がなお必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許出願公開第240228号明細書
【特許文献2】米国特許第4879288号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第282236号明細書
【特許文献4】国際公開第2006/117700号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2006/113425号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2006/094549号パンフレット
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/0063927号明細書
【特許文献8】国際公開第2007/020011号パンフレット
【特許文献9】国際公開第2007/004234号パンフレット
【特許文献10】国際公開第2005/014590号パンフレット
【特許文献11】国際公開第2005/028457号パンフレット
【特許文献12】国際公開第2005/028458号パンフレット
【特許文献13】国際公開第2005/028459号パンフレット
【発明の概要】
【0014】
本発明は、ケチアピンまたはその塩の製造のための経済的なアミノ基転移方法に関する。
【0015】
反応に使用される化合物は、遊離の塩基またはその酸付加塩のいずれでも良く、いずれも特段の記載がない限り含まれる。したがって、ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミンは、遊離の塩基またはその酸付加塩を意味することができ、同様に、1−[2−(ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジンは遊離の塩基またはその酸付加塩を意味することができる。しかしながら、反応において酸付加塩として使用されるのはいずれか1つのみであり、両方同時に使用されることはない。また、出発化合物を遊離の塩基として使用することも可能であり、遊離の酸は反応に別途添加される。
【0016】
ケチアピンは、ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミンの1−[2−(ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジンによるアミノ基転移により直接生成することが可能であることを発見した。
【0017】
本方法は、式Iの化合物
【化3】

またはその薬学的に許容され得る塩の製造方法であって、式IIIのジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミン
【化4】

またはその酸付加塩を、式IVの1−[2−(ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン
【化5】

またはその酸付加塩と反応させること、および任意にはさらに式Iの化合物の適切な酸との反応により薬学的に許容され得る塩を生成すること、および式Iの化合物またはその塩を単離することを含む製造方法を包含する。
【0018】
本発明の別の態様は、アミノ基転移反応によるケチアピンの製造方法であって、さらに出発原料のジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミンまたはその酸付加塩の、2−アミノベンゼンチオールと2−ハロゲノベンゾニトリルとの反応による製造を含む。
【0019】
また、本発明の別の態様は、1−[2−(ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジンの再使用を含む、ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミンと1−[2−(ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジンとの反応によるケチアピンの製造方法である。
【0020】
本発明の1つの態様は、反応における付加的なアミンの使用である。
【0021】
また、本発明の別の態様は、たとえば、酢酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、硫酸、リン酸、塩酸、臭化水素酸または硝酸などの有機酸または無機酸とのジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミンの酸付加塩である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明によれば、式Iの11−(4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニル)ジベンゾ[b,f]−1,4−チアゼピン(ケチアピン)またはその薬学的に許容され得る塩の製造方法が提供される。ケチアピンは、ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミンの1−[2−(ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン(HEEP)とのアミノ基転移により得られる。既知のほとんどのケチアピンの製造方法は、塩化物イオンの置換を含み、これは、塩化物を脱離基とする典型的な周知の方法である。他の一般的な脱離基は、たとえばその他のハロゲン化物およびスルホン酸エステルである。この発明において、出発材料は、HEEPの窒素と反応する式IIIのアミジンであり、第一級の窒素が第三級の窒素に交換される。NH、NHRおよびNRは、極めて弱い脱離基であり、通常N−ジトシレートまたはピリジニウム塩などの誘導体に転移される。しかしながら、付加的な工程は望ましい方法ではないので、直接的なアミノ基転移が試みられた。所望の生成物へのクリーンな変換が見られたことは驚くべきことであった。
【0023】
1−[2−(ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジンは、第二級窒素および保護されていないヒドロキシル基の両方を含み、それらはいずれもジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミンと反応する。驚くべきことに、反応は選択的に第二級窒素とイミノ炭素との間で起こり、ヒドロキシル基の保護は必要ない。アミノ基転移反応は、反応の進行のために少なくとも1当量の酸を必要とする。酸は、いずれかの出発化合物の酸付加塩を用いて反応に導入することができるし、または遊離の酸を反応混合物に添加することもできる。
【0024】
ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミンは、そのHCl塩などの適切な酸付加塩として使用しても良い。他の適切な塩は、たとえば酢酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸または硝酸との塩である。
【0025】
あるいは、ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミンは、塩基として使用してもよく、1−[2−(ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン(HEEP)は酸付加塩として使用してもよい。好ましくは、HEEPは遊離の塩基として使用され、ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミンは塩として使用される。
【0026】
HEEPが大過剰で使用される場合、未反応の量のHEEPを再使用することが可能である。HEEPは出発化合物である式IIIの1〜10当量で使用することができ、たとえば1.5〜8当量、または2〜4当量がなおさら好適である。
【0027】
HEEPの量は、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルアニリン、トリブチルアミンまたは2,4,6−トリメチルピリジンなどの適切な付加的なアミンの使用により減らすことができる。この付加的なアミンは、ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミンの約0〜10当量で使用してもよく、たとえば約1〜2当量が好適である。本発明の1つの実施態様では、アミノ基転移反応は、たとえばジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、または1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)などの適切な有機溶媒中で行ってもよい。本発明の別の実施態様では、HEEPは反応中溶媒として作用することもできる。ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミン塩酸塩と2〜4当量の1−[2−(ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン(HEEP)との付加的なアミンの存在下での付加的な溶媒を用いない反応が好ましい方法である。
【0028】
反応温度は使用する溶媒に依存する。付加的な溶媒を使用しない場合、約100〜200℃の間の温度が使用でき、たとえば約140〜180℃の温度が好適である。反応時間は、用いる温度に依存し、たとえば2〜70時間であり得る。
【0029】
本方法の出発原料、ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミンは、たとえばJ. Heterocyclic Chem., 34 (1997), 465-467に記載されているように2−アミノベンゼンチオールを2−フルオロベンゾニトリルで処理することにより生成することができる。この方法は、ワンポットで行うことができるか、または中間体アミノシアノジフェニルスルフィドを単離することができる。記載された方法は、0℃、窒素雰囲気下、ジメチルホルムアミド(DMF)中、水素化ナトリウムの存在下における2−アミノベンゼンチオールの2−フルオロベンゾニトリルとの反応を含む。単離された2−アミノフェニル−2’−シアノフェニルスルフィドは、テトラヒドロフラン中、水素化ナトリウムでジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミンに転移される。
【0030】
ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミンの製造のための他の方法は、水素化ナトリウムが全て一緒に使用されるのを避けるために、たとえば第1工程におけるKCOの使用、または第2工程におけるターシャリブトキシカリウムまたはナトリウム(tBuOKまたはtBuONa)の使用を含む。また、2−クロロ、2−ブロモまたは2−ヨードベンゾニトリルなどの別のハロゲノベンゾニトリルも出発原料として使用することができる。最初の2工程に加えて、さらに酸付加塩の生成が、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トルエンまたはそれらの混合物を溶媒として使用するワンポット様式で行うことができる。
【0031】
ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミン塩酸塩と1−[2−(ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジンとの反応後、ケチアピンが反応混合物から、たとえば水を添加した後の抽出により単離され得る。使用される抽出溶媒は、たとえば熱トルエン、キシレンまたはジクロロメタンであってよい。過剰量のHEEPは水層に残り、水の蒸発により単離でき、蒸留により精製できる。別の可能性は、無機塩基、たとえば炭酸カリウムを水層に添加することであり、粗HEEPが分離する。分離したHEEPは、さらに蒸留により精製することができる。
【0032】
付加的なアミンが使用される場合、それは、酸付加塩として、または酸性水洗浄により除去することができる。ケチアピンは、反応混合物から遊離の塩基として単離してもよく、または直接そのヘミフマル酸塩に変換することもでき、またはまず異なる付加塩に、そしてそれをさらに遊離およびヘミフマル酸塩に変換し単離することもできる。
【0033】
本発明の方法は、広い範囲の条件下で行ってもよいが、本明細書に引用された溶媒および温度範囲は限定的なものではなく、本発明の方法の好ましい様式に対応するのみのものであることが理解されるであろう。
【0034】
一般に、反応は、反応物、触媒または生成物に有害な影響がないよう、緩やかな条件を用いて行われることが望ましい。たとえば、反応温度は反応の速度のみならず、反応物、生成物および触媒の安定性にも影響する。
【0035】
本発明は、さらに以下の非限定的な実施例により明確にされるが、これは本発明の純粋な例示を意図するものである。
【実施例】
【0036】
実施例1. 2−アミノ−2’−シアノジフェニルスルフィド
ジメチルホルムアミド(DMF)(25ml)に溶解した2−アミノベンゼンチオール(11ml)を、DMF(90ml)のKCO(13.8g)懸濁液中にアルゴン下で攪拌しながら滴下した。反応混合物を温め、80〜90℃で1時間攪拌した。その後、クロロベンゾニトリル(13.7g)のDMF(25ml)溶液を滴下し、攪拌を90℃で4時間続けた。反応完了後、混合物を氷水中に注ぎ、酢酸エチルで抽出した(250+3×150ml)。集めた有機層を飽和NaCl溶液(3×100ml)で乾燥し、活性炭で処理し、蒸発乾固した。残渣を4℃まで一晩冷却したところ、固体(20.05g、89%)がもたらされた。融点89〜90℃。
【0037】
実施例2. ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミン
無水テトラヒドロフラン(THF)(60ml)に溶解した2−アミノ−2’−シアノジフェニルスルフィド(4.5g)およびNaH(1.193g、油中60%分散)をアルゴン下攪拌しながら2時間還流した。反応混合物を水(20ml)で希釈し、酢酸エチル(4×25ml)で抽出した。集めた有機層をNaSOで乾燥させ、蒸発乾固してジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミン(3.68g、82%)を得た。これは精製なしで使用できた。融点180〜181℃。
【0038】
実施例3. ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミン塩酸塩
気体HClのi−PrOH溶液(5.7g、31重量%)を、イソプロパノール/tert−ブチルメチルエーテル(TBME)混合物(150ml/120ml)中に溶解したジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミン(10.6g)の溶液に攪拌しながら滴下した。攪拌を1時間続け、生成した沈殿を濾別し、tert−ブチルメチルエーテル(TBME)で洗浄し、風乾して無色の固体として所望の化合物を得た(11.2g、91%)。融点279〜282℃。
【0039】
実施例4. 2−[2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−ピペラジン−1−イル)エトキシ]エタノールヘミフマル酸塩
ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミン塩酸塩(80.0g、アッセイ99+%)、1−[2−(ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン(HEEP、111.0g)およびN,N−ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCHA、58.1g)を攪拌しながら58時間155℃に加熱した。
【0040】
反応混合物を室温に冷却した。反応混合物30gをフラスコに取り、ジクロロメタン(60ml)に溶解し、水(30ml)で2回洗浄した。濃HCl(2.0g)を水(30ml)と加え、還流した(30分)。形成された層を分離し、濃HCl(10.0g)を有機層に添加した。30分還流した後、水(60ml)を添加し、混合物を再度30分還流した。層分離後、水層のpHを50%NaOH(7.48g)で13〜14に調整し、トルエン(60ml)を添加した。抽出および層分離(70℃/15分)後、有機層を水(30ml)で洗浄し、蒸発乾固した。残渣(16.24g、粘性オイル)を80%エタノール(71ml)に溶解し、フマル酸(2.45g)を添加した。混合物を温め(78℃/10分)、徐々に0℃まで冷却した。生成した白色結晶を濾取し、冷エタノール(10ml)で洗浄し、乾燥して12.17g(収率74%)のケチアピンヘミフマル酸塩を得た。
【0041】
実施例5. 2−[2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−ピペラジン−1−イル)エトキシ]エタノール
A. 蒸留による1−[2−(ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン(HEEP)の単離と共に
ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミン塩酸塩(25.0g、アッセイ99+%)および1−[2−(ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン(HEEP)(116.0g)を攪拌しながら173〜175℃で5時間、アルゴンのゆっくりとした連続的な流れのもと加熱した。
【0042】
反応混合物を室温まで冷却し、水(465ml)で希釈した。KCO(6.56g)を添加したのち、70℃まで温め、熱(70〜75℃)トルエンで2回抽出した。
【0043】
集めた有機層を減圧下で蒸発乾固し、35.1gの粘性のオイルを得た。熱イソプロパノール(85ml)に溶解したフマル酸(4.78g)を、熱イソプロパノール(85ml)に溶解したそのオイルに添加した。混合物を室温まで冷却し、一晩4℃に置いた。形成された固体を濾別し、乾燥して34.40gのケチアピンヘミフマル酸塩(アッセイ97%、収率79%)を得た。イソプロパノール(1.4L)からの再結晶により30.7gのケチアピンヘミフマル酸塩(アッセイ99%、回収率91%)が与えられた。融点172〜173℃。
【0044】
水層を減圧下(60℃/60mbar)で水を蒸発させて体積を減らした(〜80%)。残渣は、残りの水を除去した後、室温、10mbarで蒸留した。1−[2−(ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン(HEEP)の2つの画分をまとめた(168〜170℃/20mbar(15.88g)および174℃/25mbar(74.68g))。HEEPの全回収率は、90%であった。
【0045】
B. 層分離および蒸留を用いたHEEPの単離と共に
ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミン塩酸塩(15.0g、アッセイ99%)および1−[2−(ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン(HEEP)(70.0g)を攪拌しながら172〜176℃で5時間、アルゴンのゆっくりとした連続的な流れのもと加熱した。
【0046】
反応混合物を室温まで冷却し、水(180ml)で希釈した。得られた混合物を65℃まで温め、熱トルエン(110、60および60ml)で3回抽出した。
【0047】
集めた有機層を減圧下で蒸発乾固し、22.4gの粘性のオイルを得た。そのオイルを熱イソプロパノール(50ml)に溶解し、熱イソプロパノール(60ml)に溶解したフマル酸(3.05g)を加えた。混合物を室温まで冷却し、一晩4℃に置いた。形成された固体を濾別し、乾燥して21.95gのケチアピンヘミフマル酸塩(収率83%、アッセイ95%)を得た。イソプロパノール(〜1.4L)からの結晶化により20.7gのケチアピンヘミフマル酸塩(回収率95%、アッセイ98%)が与えられた。融点172〜174℃。
【0048】
固体KCO(90g)を攪拌しながら水層に添加した。溶液の温度を50℃に上昇させ、粗HEEPが上部層として形成された。それを分離し、蒸留により精製した。水を減圧下(10mbar、室温)で除去し、HEEPを減圧下(134〜136℃/4mbar)で蒸留し、無色の液体を得た(50.89g、アッセイ99.3%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化1】

またはその薬学的に許容され得る塩の製造方法であって、
式IIIのジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミン
【化2】

またはその酸付加塩と、式IVの1−[2−(ヒドロキシエトキシ)−エチル]ピペラジン
【化3】

またはその酸付加塩との反応、および任意には式Iの化合物と適切な酸との薬学的に許容され得る塩を生成する反応、および式Iまたはその塩の単離を含む方法。
【請求項2】
式IIIの化合物の、酢酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、硫酸、リン酸、塩酸、臭化水素酸または硝酸との酸付加塩が使用される請求項1記載の方法。
【請求項3】
式IIIの化合物の硫酸または塩酸との酸付加塩が使用される請求項2記載の方法。
【請求項4】
さらに、2−アミノベンゼンチオールと2−ハロゲノベンゾニトリルとの反応を含む式IIIの化合物の製造を含む請求項1記載の方法。
【請求項5】
2−ハロゲノベンゾニトリルが、2−クロロベンゾニトリル、2−ブロモベンゾニトリル、2−ヨードベンゾニトリルまたは2−フルオロベンゾニトリルである請求項4記載の方法。
【請求項6】
2−ハロゲノベンゾニトリルが、2−クロロベンゾニトリルである請求項4記載の方法。
【請求項7】
試薬1−[2−(ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジンが、出発化合物ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミンの1〜10当量で使用される請求項1記載の方法。
【請求項8】
試薬1−[2−(ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジンが、出発化合物ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミンの1.5〜8当量で使用される請求項1記載の方法。
【請求項9】
試薬1−[2−(ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジンが、出発化合物ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミンの2〜4当量で使用される請求項1記載の方法。
【請求項10】
付加的な溶媒が使用されない請求項1記載の方法。
【請求項11】
さらに、反応において付加的なアミンの使用を含む請求項1記載の方法。
【請求項12】
使用される前記付加的なアミンが、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルアニリン、トリブチルアミンまたは2,4,6−トリメチルピリジンである請求項11記載の方法。
【請求項13】
使用される前記付加的なアミンが、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンである請求項12記載の方法。
【請求項14】
さらに、1−[2−(ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジンの再使用を含む請求項1記載の方法。
【請求項15】
ケチアピンが反応混合物から抽出され、かつ水層に残った過剰量の1−[2−(ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジンが水の蒸発により単離され、蒸留により精製される請求項14記載の方法。
【請求項16】
ケチアピンが反応混合物から抽出され、かつ水層に残った過剰量の1−[2−(ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジンが無機塩基の添加、層分離、続いて蒸留により単離される請求項14記載の方法。
【請求項17】
式IIIの化合物の、酢酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、硫酸、リン酸、塩酸、臭化水素酸または硝酸との酸付加塩である化合物。
【請求項18】
ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イルアミン塩酸塩である請求項17記載の化合物。

【公表番号】特表2011−510960(P2011−510960A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544743(P2010−544743)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【国際出願番号】PCT/FI2009/000021
【国際公開番号】WO2009/095529
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(506090750)
【Fターム(参考)】