説明

ケトン化合物及びそれを含有する除草剤

【課題】雑草に対して優れた防除効力を有する化合物を提供すること。
【解決手段】式(I)



で示されるケトン化合物は雑草防除に優れた効力を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケトン化合物及びそれを含有する除草剤に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、雑草を防除するための除草剤の有効成分となる化合物の開発が広く進められ、雑草防除効力を有する化合物が見出されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は優れた雑草防除の効力を有する化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、鋭意検討した結果、式(I)で表されるケトン化合物が優れた雑草防除の効力を有することを見出し、本発明に至った。
本発明は以下のものである。
[1] 式(I)



で示されるケトン化合物(以下、本発明化合物と記す。)。
[2] 式(II)



で示される化合物とメタクロロ過安息香酸とを反応させる工程を有する[1]記載のケトン化合物の製造方法。
[3] [1]記載のケトン化合物を有効成分として含有する除草剤。
[4] [1]記載のケトン化合物の有効量を雑草又は雑草が生育するもしくは将来生育するであろう土壌に施用する雑草の防除方法。
[5] [1]記載のケトン化合物の雑草防除のための使用。
[6] 式(II)



で示される化合物。
[7] 式(III):



で示される化合物と、式(IV):



〔式中、Xはハロゲン原子を表す。〕
で示される化合物とをルイス酸存在下で反応させる工程を有する[6]記載の化合物の製造方法。
[8] ルイス酸が塩化アルミニウムである[7]記載の製造方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明化合物を用いることにより、雑草を防除することができる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明化合物は例えば以下の製造法により製造することができる。
(製造法1)
式(I):



で示される本発明化合物は、式(II):



で示される化合物とメタクロロ過安息香酸とを反応させることにより製造することができる。
該反応は通常溶媒中で行われる。
反応に用いられる溶媒としては、例えば、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。
反応に用いられるメタクロロ過安息香酸の量は、式(II)で示される化合物1モルに対して、通常2〜4モルの割合である。
該反応の反応温度は、通常−20〜40℃の範囲であり、反応時間は、通常1〜10時間の範囲である。
反応終了後は、例えば、反応混合物を水に注加し、有機溶媒抽出した後、有機層を乾燥、濃縮する等の後処理操作を行うことにより、本発明化合物を単離することができる。単離された本発明化合物は、再結晶、カラムクロマトグラフィー等によりさらに精製することもできる。
(製造法2)
式(II):



で示される化合物は、式(III):



で示される化合物と、式(IV):



〔式中、Xは、塩素、臭素等のハロゲン原子を表す。〕
で示される化合物とをルイス酸存在下で反応させることにより製造することができる。
該反応は、通常、溶媒中で行われる。
反応に用いられるルイス酸としては、塩化アルミニウム等が挙げられる。
反応に用いられる溶媒としては、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。
反応に用いられる試剤の量は、通常は、式(III)で示される化合物1モルに対して、式(IV)で示される化合物が1〜2モルの割合であり、ルイス酸が1〜2モルの割合である。
該反応の反応温度は、通常−20〜40℃の範囲であり、反応時間は、通常1〜10時間の範囲である。
反応終了後は、例えば、反応混合物を水に注加し、有機溶媒抽出した後、有機層を乾燥、濃縮する等の後処理操作を行うことにより、式(II)で示される化合物を粗生成物として得る事ができる。該粗生成物は、精製することなく、次工程に使用することができる。
【0007】
(参考製造法1)
式(III):



で示される化合物は、式(V):



で示される化合物と硫化物塩とを反応させることにより製造することができる。
該反応は、通常、溶媒中で行われる。
反応に用いられる溶媒としては、例えば、1-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
該反応に用いられる硫化物塩としては、例えば、硫化ナトリウム9水和物等が挙げられる。
反応に用いられる試剤の量は、式(V)で示される化合物1モルに対して、硫化物塩は通常1〜4モルの割合である。
該反応の反応温度は通常0〜180℃の範囲であり、反応時間は通常1〜20時間の範囲である。
反応終了後は、例えば、反応混合物を水に注加し、有機溶媒抽出した後、有機層を乾燥、濃縮する等の後処理操作を行うことにより、式(III)で示される化合物を単離することができる。単離された式(III)で示される化合物は、カラムクロマトグラフィー等によりさらに精製することができる。単離された式(III)で示される化合物は、精製することなく、次工程に使用することもできる。
【0008】
(参考製造法2)
式(V):



で示される化合物は、式(VI):



で示される化合物とパラトルエンスルホニルクロリドとを反応させることにより製造することができる。
該反応は、通常、溶媒中で行われる。
反応に用いられる溶媒としては、例えば、ピリジン等の塩基性溶媒が挙げられる。
反応に用いられる試剤の量は、式(VI)で示される化合物1モルに対して、パラトルエンスルホニルクロリドは通常1〜4モルの割合である。
該反応の反応温度は通常−10〜50℃の範囲であり、反応時間は通常1〜10時間の範囲である。
反応終了後は、例えば、反応混合物を水に注加し、有機溶媒抽出した後、有機層を乾燥、濃縮する等の後処理操作を行うことにより、式(V)で示される化合物を単離することができる。単離された式(V)で示される化合物は、カラムクロマトグラフィー等によりさらに精製することもできる。単離された式(V)で示される化合物は、精製することなく、次工程に使用することができる。
式(VI)で示される化合物は、例えば、Journal of Medicinal Chemistry (2007) Vol.50,(No.12), P2818-2841記載の製造方法、あるいはそれに準じた製造方法により製造できる。
【0009】
本発明化合物は優れた雑草防除の効力を有し、除草剤の有効成分として使用することができ、且つ作物と雑草との間で優れた選択性を有する。本発明化合物が防除することのできる雑草としては、例えば、タイヌビエ、イヌホタルイ、アゼナ、ウリカワ等の水田雑草が挙げられる。
【0010】
本発明化合物を除草剤の有効成分として使用する場合、一般に本発明化合物を適当な液体担体に溶解させるか分散させるか、又は適当な固体担体と混合するか固体担体に吸着させ、使用目的にとって都合の良い剤形に製剤化して使用する。本発明化合物を有効成分として含有する除草剤は、例えば乳剤、液剤、油剤、水和剤、粉剤、DL(ドリフトレス)型粉剤、粒剤、微粒剤、微粒剤F、細粒剤F、顆粒水和剤、水溶剤、フロアブル剤、ドライフロアブル剤、ジャンボ剤、錠剤、等の形態の製剤である。これらの製剤は、必要に応じて、例えば乳化剤、分散剤、展着剤、浸透剤、湿潤剤、結合剤、増粘剤、防腐剤、酸化防止剤、着色剤等の製剤補助剤を更に添加され、公知の方法で調製することができる。
本発明の除草剤には、本発明化合物が通常0.01〜90重量%含有される。
【0011】
製剤化する際に使用される液体担体としては、例えば、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、灯油、燃料油、機械油等)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、メチルナフタレン等)、ハロゲン化炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等)、酸アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、脂肪酸グリセリンエステル等)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル等)等が挙げられる。これらの液体担体は2種以上を適当な割合で混合して使用することもできる。
【0012】
製剤化する際に使用される固体担体としては、植物性粉末(例えば、大豆粉、タバコ粉、小麦粉、木粉等)、鉱物性粉末(例えば、カオリン、ベントナイト、酸性白土、クレイ等のクレイ類、滑石粉、ロウ石粉等のタルク類、珪藻土、雲母粉等のシリカ類等)、アルミナ、硫黄粉末、活性炭、糖類(例えば、乳糖、ブドウ糖等)、無機塩類(例えば、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等)、ガラス中空体(天然のガラス質を焼成加工してその中に気泡を内包させたもの)等が挙げられる。これらの固体担体は2種以上を適当な割合で混合して使用することもできる。
液体担体又は固体担体は、製剤全体に対して通常1〜99重量%、好ましくは約10〜99重量%の割合で用いられる。
【0013】
製剤化する際に使用される乳化剤、分散剤、展着剤、浸透剤、湿潤剤等としては通常界面活性剤が用いられる。界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル塩、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホネートホルムアルデヒド重縮合物等の陰イオン界面活性剤及びポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルポリオキシプロピレンブロックコポリマ−、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は2種以上を用いることもできる。界面活性剤は、製剤全体に対して通常0.1〜50重量%、好ましくは約0.1〜25重量%の割合で用いられる。
【0014】
結合剤及び増粘剤としては、例えば、デキストリン、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリカルボン酸系高分子化合物、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カルシウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、マンニトール、ソルビトール、ベントナイト系鉱物質、ポリアクリル酸とその誘導体、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ホワイトカーボン、天然の糖類誘導体(例えば、キサンタンガム、グアーガム等)等が挙げられる。
【0015】
本発明化合物の製剤中の含有割合は、乳剤、水和剤、顆粒水和剤、液剤、水溶剤、フロアブル剤、錠剤、ドライフロアブル剤等では通常、1〜90重量%の割合であり、油剤、粉剤、DL型粉剤等では通常、0.01〜10重量%の割合であり、微粒剤、微粒剤F、細粒剤F、粒剤、ジャンボ剤等では通常、0.05〜25重量%の割合であるが、使用目的によってはこれらの濃度を適宜変更してもよい。乳剤、水和剤、顆粒水和剤、液剤、水溶剤、フロアブル剤等は、通常は水等で適宜希釈して使用されるが、通常は約100〜100,000倍に希釈して使用される。
【0016】
本発明の雑草の防除方法は、本発明化合物の有効量を雑草又は雑草が生育するもしくは将来生育するであろう土壌に施用することにより行われる。本発明の雑草の防除方法は、通常本発明化合物の製剤を雑草又は雑草が生育するもしくは将来生育するであろう土壌に施用することで行われる。
本発明化合物を有効成分として含有する除草剤の施用方法は、通常の公知の農薬の施用方法と同様の方法を用いることができ、例えば、湛水土壌処理、茎葉処理等があげられる。
本発明化合物は除草剤の有効成分として水田において使用することができる。その使用量は、適用地域、適用時期、施用方法、対象雑草、栽培作物等により差異はあるが、通常は本発明化合物としては水田1ヘクタールあたり1〜5000g程度である。
本発明化合物を有効成分として含有する除草剤は水田雑草防除用としては通常、雑草の出芽前または出芽後に処理することができる。
【0017】
本発明化合物を有効成分として含有する除草剤は、必要に応じて、1種又は2種以上の他の除草剤、植物生長調節剤、殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤等と同時に施用することができ、また該1種又は2種以上の他の除草剤、植物生長調節剤、殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤等の有効成分を配合し、混合して使用することもできる。
本発明化合物と同時に施用及び/又は配合して使用することのできる、かかる除草剤の有効成分としては、例えば、
(1)フェノキシ脂肪酸系除草性化合物、
(2)安息香酸系除草性化合物、
(3)尿素系除草性化合物、
(4)トリアジン系除草性化合物、
(5)ビピリジニウム系除草性化合物、
(6)ヒドロキシベンゾニトリル系除草性化合物、
(7)ジニトロアニリン系除草性化合物、
(8)有機リン系除草性化合物、
(9)カーバメート系除草性化合物、
(10)酸アミド系除草性化合物、
(11)クロロアセトアニリド系除草性化合物、
(12)ジフェニルエーテル系除草性化合物、
(13)環状イミド系除草性化合物、
(14)ピラゾール系除草性化合物、
(15)トリケトン系除草性化合物、
(16)アリールオキシフェノキシプロピオン酸系除草性化合物、
(17)トリオンオキシム系除草性化合物、
(18)スルホニル尿素系除草性化合物、
(19)イミダゾリノン系除草性化合物、
(21)ピリミジニルオキシ安息香酸系除草性化合物、
等が挙げられ、
かかる殺菌剤の有効成分としては、例えば、
(1)ポリハロアルキルチオ系殺菌性化合物、
(2)有機リン系殺菌性化合物、
(3)べンズイミダゾール系殺菌性化合物、
(4)カルボキシアミド系殺菌性化合物、
(6)アシルアラニン系殺菌性化合物、
(7)アゾール系殺菌性化合物、
(8)モルフォリン系殺菌性化合物、
(9)ストロビルリン系殺菌性化合物、
(10)抗生物質系殺菌性化合物、
(11)ジチオカーバメート系殺菌性化合物、
等が挙げられ、
かかる殺虫剤の有効成分としては、例えば、
(1)有機リン系殺虫性化合物、
(2)カルバメート系殺虫性化合物、
(3)合成ピレスロイド系殺虫性化合物、
(4)ネライストキシン系殺虫性化合物、
(5)ネオニコチノイド系殺虫性化合物、
(6)ベンゾイルフェニル尿素系殺虫性化合物、
(7)マクロライド系殺虫性化合物、
等が挙げられる。
【0018】
本発明化合物を有効成分として含有する除草剤には、更に薬害軽減剤、色素、肥料(例えば、尿素等)等を適宜混合してもよい。
【0019】
本発明化合物は、イネ等の作物が栽培されている農耕地において、該作物に対して問題となる薬害を与えることなく、当該農耕地に生育する雑草を防除することができ、水田用の除草剤として使用することができる。
【0020】
上記「作物」には、除草剤に対する耐性が、古典的な育種法により付与された作物も含まれる。
古典的な育種法により耐性が付与された「作物」としては、例えば、イマゼタピル等のイミダゾリノン系除草剤耐性のクリアーフィールド(Clearfield)<登録商標>イネ、等がある。
【実施例】
【0021】
以下に製造例、参考例、製剤例及び試験例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。
製造例及び参考例中、室温とは通常10〜30℃を示す。1HNMR とはプロトン核磁気共鳴スペクトルを示し、内部標準としてテトラメチルシランを用い、ケミカルシフト(δ)をppmで表記した。
製造例及び参考例中用いられている記号は次のような意味を有するものである。
CDCl3:重クロロホルム、s:シングレット、d:ダブレット、t:トリプレット、m:マルチプレット、br.:ブロード(幅広い)、J:カップリング定数、DMSOd6:重ジメチルスルホキシド
【0022】
製造例1
5-ベンゾイル-4-クロロ-2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェン-1,1-ジオキシドの合成

4-クロロ-2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェン1.00gと塩化アルミニウム1.20gをクロロホルム10mlに加え、氷冷下塩化ベンゾイル1.0mlを滴下した。氷冷下で2時間攪拌後、氷水20mlに反応混合物を加え、更にクロロホルム20mlを加えて分液した。有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥した。減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(酢酸エチル:ヘキサン=1:10)して5-ベンゾイル-4-クロロ-2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェンと7-ベンゾイル-4-クロロ-2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェンの混合物を1.57g得た。この混合物をクロロホルム20mlに加え、氷冷下で70%メタクロロ過安息香酸3.00gを加え、室温下で6時間攪拌した。その後反応液に飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を1ml加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液40mlで4回洗浄した。無水硫酸マグネシウム上で乾燥した。減圧濃縮して得られた残渣を中圧分取HPLC精製(酢酸エチル:ヘキサン=3:7から1:1)して5-ベンゾイル-4-クロロ-2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェン-1,1-ジオキシドを1.31gと7-ベンゾイル-4-クロロ-2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェン-1,1-ジオキシド0.10gを得た。
5-ベンゾイル-4-クロロ-2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェン-1,1-ジオキシド
1HNMR (CDCl3)δppm : 3.45 (2H, t, J=6.9Hz), 3.62 (2H, t, J=6.9Hz),7.49-7.53 (3H, m), 7.65 (1H, d, J=7.5Hz), 7.66-7.80 (3H,m) .
7-ベンゾイル-4-クロロ-2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェン-1,1-ジオキシド
1HNMR (CDCl3)δppm : 3.44 (2H, t, J=6.9Hz), 3.57 (2H, t, J=6.9Hz),7.49-7.52 (2H, m), 7.57 (1H, d, J=8.0Hz), 7.62-7.67 (2H, m) , 7.83-7.85 (2H, m) .
【0023】
以下、本発明化合物の原料化合物の製造例を参考例として示す。
参考例1
2-クロロ-6-フルオロフェニルアセトニトリルの合成



2-クロロ-6-フルオロベンジルクロリド50.0gをジメチルスルホキシド300mlに溶解した。そこにシアン化ナトリウム16.0gを加えて23℃で5時間攪拌した。反応混合物を水1000mlに加えて、t-ブチルメチルエーテル1000mlで抽出した。得られた抽出物を飽和食塩水1000mlで洗浄後、無水硫酸マグネシウム上で乾燥した。減圧濃縮して2-クロロ-6-フルオロフェニルアセトニトリルを47.6g得た。
1HNMR (CDCl3)δppm : 3.85 (2H, s), 7.08-7.10 (1H, m), 7.26-7.32 (2H, m) .
【0024】
参考例2
2-クロロ-6-フルオロフェニル酢酸の合成



2-クロロ-6-フルオロフェニルアセトニトリル47.6 g を水150 mlに加え、96%硫酸150mlを加え、120℃で12時間加熱した。水600mlを加え2時間室温下で冷却後、30分間氷冷下で冷却した。析出した固体をろ取し、水300mlで洗浄した。乾燥して2-クロロ-6-フルオロフェニル酢酸を49.2g得た。
1HNMR (DMSOd6)δppm : 3.70 (2H, s), 7.20-7.28 (1H, m), 7.30-7.44 (2H, m) .
【0025】
参考例3
2-(2-クロロ-6-フルオロフェニル)エタノールの合成



2-クロロ-6-フルオロフェニル酢酸24.6gをテトラヒドロフラン600mlに加え、氷冷下でリチウムアルミニウムヒドリド4.20gを加えて室温下で1時間攪拌した。3時間加熱還流した後、室温下で冷却した。氷冷下で水13mlとテトロヒドロフラン53mlも混合物を加えた。10分後反応混合物をセライト上でろ過し、ろ過残渣をテトロヒドロフラン300mlで洗浄した。ろ液を減圧濃縮して2-(2-クロロ-6-フルオロフェニル)エタノールを14.8g得た。
1HNMR (CDCl3)δppm : 1.60 (1H, br), 3.08-3.11 (2H, m), 3.84-3.88 (2H, m), 6.96-7.00 (1H, m), 7.12-7.19 (2H, m) .
【0026】
参考例4
2-(2-クロロ-6-フルオロフェニル)エチル p−トルエンスルホネートの合成

2-(2-クロロ-6-フルオロフェニル)エタノール29.2gをピリジン87mlに加え、氷冷下でパラトルエンスルホニルクロリド30.0gを加えて室温下で5時間攪拌した。水870mlに反応混合物を加え、t-ブチルメチルエーテル870mlで抽出した。有機層を3.5%塩酸900mlで洗浄し、飽和食塩水900mlで洗浄後、無水硫酸マグネシウム上で乾燥した。減圧濃縮して2-(2-クロロ-6-フルオロフェニル)エチル p−トルエンスルホネートを47.3g得た。
1HNMR (CDCl3)δppm : 2.43 (3H, s), 3.14 (2H, t, J=7.1Hz), 4.21 (2H, t, J=7.1Hz), 6.90-7.00 (1H, m), 7.12-7.15 (2H, m), 7.28 (2H,d, J=8.7Hz), 7.71 (2H, d, J=8.7Hz) .
【0027】
参考例5
4-クロロ-2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェン の合成



2-(2-クロロ-6-フルオロフェニル)エチル p−トルエンスルホネート47.0gを1-メチル-2-ピロリドン470mlに加え、硫化ナトリウム9水和物40.2gを加えて150℃で10時間加熱した。水940mlに反応混合物を加え、t-ブチルメチルエーテル940mlで抽出した。有機層を飽和食塩水1000mlで二回洗浄後、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(ヘキサン)して4-クロロ-2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェンを11.6g得た。
1HNMR (CDCl3)δppm : 3.40 (4H, s), 6.95-7.10 (3H, m) .
【0028】
参考例6
5-ベンゾイル-4-クロロ-2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェンと7-ベンゾイル-4-クロロ-2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェンの合成
4-クロロ-2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェン37gをクロロホルム 355mlに溶解させ、そこに砕いた塩化アルミニウムの粉末 41.6gを加え、さらに、氷冷下で塩化ベンゾイル 38.0gを滴下した。得られた混合物を4時間撹拌した。得られた反応混合物を氷水 533mlに加えて、水 178mlで洗った。クロロホルム層を分液し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥後、減圧濃縮し残渣 82.9gを得た。得られた残渣に、ジイソプロピルエーテル 165mlとヘキサン 165mlを加え、得られた混合物を30分間加熱還流した。得られた混合物を室温下で放冷の後、30分間氷冷し、析出した固体をろ取し、5-ベンゾイル-4-クロロ-2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェンと7-ベンゾイル-4-クロロ-2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェンの混合物46.4g得た。得られた混合物の一部 400mgを、アセトニトリル 6mlに溶解して、得られた溶液をODS中圧カラム処理し〔移動相;アセトニトリル : 水 = 86% : 14%(容量%)〕、 5-ベンゾイル-4-クロロ-2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェンを350mg、7-ベンゾイル-4-クロロ-2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェンを3mg得た。

5-ベンゾイル-4-クロロ-2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェン

1HNMR(CDCl3) δ(ppm) : 3.45(4H, s), 7.14〜7.18(2H, m), 7.44〜7.48(2H, m), 7.57〜7.61(1H, m), 7.81〜7.83(2H, m).

7-ベンゾイル-4-クロロ-2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェン

1HNMR(CDCl3) δ(ppm) : 3.34〜3.46(4H, m), 7.06(1H, d, J =8.29Hz), 7.44〜7.50(3H, m), 7.55〜7.60(1H, m), 7.70〜7.72(2H, m).
【0029】
次に、本発明化合物を含有する製剤例を示す。
製剤例1
水和剤
本発明化合物 50重量%
リグニンスルホン酸ナトリウム 5重量%
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 5重量%
ホワイトカーボン 5重量%
クレイ 35重量%
を混合粉砕して水和剤を得る。
【0030】
製剤例2
粒剤
本発明化合物 1.5重量%
リグニンスルホン酸ナトリウム 2重量%
タルク 40重量%
ベントナイト 56.5重量%
を混合し、水を加えて練り合わせ造粒して粒剤を得る。
【0031】
次に、本発明化合物が雑草の防除に有用であることを試験例に示す。
試験例1
プラスチックポット(φ9cm×10cm)に水田土壌を詰め、入水して代掻きし、3日間静置した。このポットにアゼナ種子を混入した土を均一に蒔き、温室内(20〜25℃)で6日間育成した。湛水深を3cmに合わせ、試験化合物をアセトンで溶解して純水で希釈した薬液を所定薬量分処理した。薬剤処理3週間後に、アゼナに対する除草効果を観察し、11段階指数(0:無作用〜10:完全枯殺)で評価した。その結果、本発明化合物は4000g/haの処理薬量で効力8を示した。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明化合物の有効量を雑草又は雑草の生育する土壌に施用することにより、雑草を防除することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)



で示されるケトン化合物。
【請求項2】
式(II)



で示される化合物とメタクロロ過安息香酸とを反応させる工程を有する請求項1記載のケトン化合物の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のケトン化合物を有効成分として含有する除草剤。
【請求項4】
請求項1に記載のケトン化合物の有効量を雑草又は雑草が生育するもしくは将来生育するであろう土壌に施用する雑草の防除方法。
【請求項5】
請求項1に記載のケトン化合物の雑草防除のための使用。
【請求項6】
式(II)



で示される化合物。
【請求項7】
式(III):



で示される化合物と、式(IV):



〔式中、Xはハロゲン原子を表す。〕
で示される化合物とをルイス酸存在下で反応させる工程を有する請求項6記載の化合物の製造方法。
【請求項8】
ルイス酸が塩化アルミニウムである請求項7記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−195561(P2011−195561A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256509(P2010−256509)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】