ケラチン繊維を処理する方法
本発明は、ケラチン繊維を処理する方法であって、
ケラチン繊維上に、少なくとも1つの糖類またはその誘導体を含む組成物を適用するステップと、
次いで、該ケラチン繊維を閉塞空間中に配置するステップと、
次いで、該ケラチン繊維を加熱するステップと
を含み、
該組成物が、還元剤も、式:
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OHおよびO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、方法に関する。本発明は、さらに、前述の方法に使用するための組成物自体およびキットに関する。
ケラチン繊維上に、少なくとも1つの糖類またはその誘導体を含む組成物を適用するステップと、
次いで、該ケラチン繊維を閉塞空間中に配置するステップと、
次いで、該ケラチン繊維を加熱するステップと
を含み、
該組成物が、還元剤も、式:
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OHおよびO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、方法に関する。本発明は、さらに、前述の方法に使用するための組成物自体およびキットに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ケラチン繊維(毛髪など)を処理する方法、ならびに、該方法に使用される組成物およびキットに関する。
【背景技術】
【０００２】
ケラチン繊維(毛髪など)が日常的に受けなければならない多くの物理的なストレス(UV、シャンプー、ブラッシングなど)および化学的なストレス[着色、パーマ、リラクシング(relaxing)、汚染など]があることから、損傷したケラチン繊維の有効な修復についての研究が、ケラチン繊維の美容処理において重要になっている。
【０００３】
損傷したケラチン繊維の修復は、元の状態のケラチン繊維に戻ったという現実的な感覚が得られてこそ価値がある。さらに、そうした修復処理は、前述のような多様なストレスに対して有効であるべきである。
【０００４】
これまでに提案されている、損傷したケラチン繊維を修復するための処理として公知の技術(組成物および/または方法)は、そうした技術が多くの場合は一時的でありケラチン繊維の元の状態の正しい回復を達成しないという点に限って言えば、未だに不十分である。
【０００５】
糖類または糖は、ケラチン繊維用の化粧品における化粧品用薬剤として知られている。例えば、US-A-2007-226916を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００６】
【特許文献１】US-A-2007-226916
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
しかし、ケラチン繊維に対するこれらの美容特性は、ケラチン繊維上へのこれらの沈着率が低いことまたはケラチン繊維中への浸透性が制限されていることから、未だ不十分である。このことは、糖類を用いたケラチン繊維の美容処理の効率は低く、美容処理のために用いる製剤において多量の糖類が必要であるということを意味する。
【０００８】
したがって、本発明の目的は、良好な美容効果、とりわけ、優れた修復効果または回復効果をケラチン繊維にもたらし、長時間にわたり多様なストレスに対して有効であり得る糖類またはその誘導体を、しかも比較的少量で使用した、ケラチン繊維(毛髪など)の新しい処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
前述の本発明の目的は、ケラチン繊維を処理する方法であって、
該ケラチン繊維上に、少なくとも1つの糖類またはその誘導体を含む組成物を適用するステップと、
次いで、該ケラチン繊維を閉塞空間中に配置するステップと、
次いで、該ケラチン繊維を加熱するステップと
を含み、
該組成物が、還元剤も、式:
【００１０】
【化１】
【００１１】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OHおよびO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、方法により達成できる。
【００１２】
前述の方法は、該組成物をケラチン繊維上に適用するステップの後および/またはケラチン繊維を加熱するステップの後にケラチン繊維をすすぐステップをさらに含んでもよい。
【００１３】
ケラチン繊維に機械的張力を与えてもよい。機械的張力は、カーラー、ローラー、プレートおよびアイロンからなる群から選択される少なくとも1つの再成形手段(reshaping means)を用いることにより与えてもよい。
【００１４】
該閉塞空間は、少なくとも1つのコーティング手段により形成されてもよい。該コーティング手段は、硬質または軟質であってもよい。該コーティング手段は、フィルムおよびシートからなる群から選択される少なくとも1つの部材を含んでもよい。
【００１５】
前述の方法において、ケラチン繊維を加熱するステップの間、ケラチン繊維は45℃から250℃で加熱されてもよい。ケラチン繊維は、熱風、熱蒸気、高周波誘導加熱、マイクロ波加熱、赤外線照射、レーザーおよびフラッシュランプ照射からなる群から選択される少なくとも1つを供給する少なくとも1つの加熱器により加熱されてもよい。該コーティング手段および/または該再成形手段は、該加熱器を備えていてもよい。
【００１６】
糖類は、単糖、オリゴ糖、多糖およびこれらの混合物からなる群から選択することができる。単糖またはその誘導体は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、タロース、ソルボース、キシロース、リキソース、フコース、アラビノース、ラムノース、リボース、リブロース、キシルロース、ソルビトール、トリオース、ペントース、ヘキソース、ケトース、グルコサミンおよびそれらの混合物からなる群から選択することができる。オリゴ糖またはその誘導体は、マルトース、ラクトース、サッカロース、セロビオース、トレハロース、スクロース、フラクトオリゴ糖(flucto-oligosaccharide)、デキストリンおよびそれらの混合物からなる群から選択することができる。多糖またはその誘導体は、アルギン酸、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、アラビノガラクタン、カラギーナン、寒天、カラヤゴム、トラガカントゴム、タラガム(tara gum)、ペクチン、ローカストビーンガム、カードラン(cardolan)、ジェランガム(jellan gum)、デキストラン、プルラン、ヒアルロン酸、セルロースおよびそれらの誘導体ならびにそれらの混合物から選択することができる。
【００１７】
該組成物は、該糖類を、該組成物の総重量に対し、0.001重量%から50重量%の量で含んでもよい。該組成物のpHは、4から11の範囲とすることができる。
【００１８】
本発明の別の態様は、閉塞空間中で加熱されるケラチン繊維を処理するための組成物であって、少なくとも1つの糖類またはその誘導体を含み、
還元剤も、式:
【００１９】
【化２】
【００２０】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OHおよびO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、組成物である。
【００２１】
本発明は、さらに、ケラチン繊維を処理するためのキットであって、
閉塞空間を形成するための少なくとも1つのコーティング手段、および
該閉塞空間中でケラチン繊維を加熱するための少なくとも1つの加熱器を備える装置と、
少なくとも1つの糖類またはその誘導体を含み、
還元剤も、式:
【００２２】
【化３】
【００２３】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OHおよびO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、組成物と
を含む、キットに関する。
【発明を実施するための形態】
【００２４】
鋭意研究の結果、本発明者らは、ケラチン繊維のためのある特定の加熱方法と組み合わせて糖類またはその誘導体を含む組成物を用いることにより、良好な美容効果、特に、長期間様々なストレスに対して有効であり得る優れた修復効果または優れた回復効果を、糖類またはその誘導体を用いた場合でも、毛髪などのケラチン繊維にもたらすことが可能であるということを発見した。
【００２５】
前述の特定の加熱方法は、ケラチン繊維からの水または水分の蒸発を制限し、ケラチン繊維を高温にて好ましくは湿った状態で維持する、閉鎖環境または閉塞環境において実施される。それにより、ケラチン繊維を均等に加熱することができ、糖類またはその誘導体は、ケラチン繊維の中に容易に浸透しまたはその上に沈着することができることから、シャンプーなどの何らかのストレスの後でも、糖類またはその誘導体は、ケラチン繊維の中または上に長時間にわたり残ることができる。
【００２６】
糖類またはその誘導体は、ケラチン繊維上またはその中に容易に留まることができることから、本発明による方法は、糖類またはその誘導体がケラチン繊維上またはその中に留まることが難しい従来の方法と比較して、比較的少量であっても糖類またはその誘導体を用いることにより、良好な美容効果を呈することができる。
【００２７】
本発明において使用される組成物は、チオール化合物などの還元剤を含有してはならない。したがって、還元剤に由来する悪臭を防止できる。さらに、本発明において使用される組成物は、先に定義したように、炭酸イオン源を一切含有してはならない。したがって、ケラチン繊維上またはその中への糖類またはその誘導体の沈着または浸透を阻害しうる泡を形成する二酸化炭素を生じる可能性がないため、美容処理がより有効である。
【００２８】
(組成物)
本発明に使用される組成物は、少なくとも1つの糖類またはその誘導体を含む。
【００２９】
本明細書では、「糖類」という用語は、1つまたは複数の糖単位から構成され、少なくとも1個のカルボニル基を有し得る多価アルコールを意味する。糖類の誘導体には、糖類の1個もしくは複数のカルボニル基を還元することにより得られる糖アルコール、ならびに1個もしくは複数のそれらのヒドロキシ基中の1個または複数の水素原子が、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アシル基またはカルボニル基などの少なくとも1種の置換基で置き換えられている糖類または糖アルコールが含まれる。
【００３０】
糖類は、単糖、オリゴ糖、多糖およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【００３１】
単糖は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、タロース、ソルボース、キシロース、リキソース、フコース、アラビノース、ラムノース、リボース、リブロース、キシルロース、ソルビトール、トリオース、ペントース、ヘキソース、ケトース、グルコサミンおよびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【００３２】
オリゴ糖は、マルトース、ラクトース、サッカロース、セロビオース、トレハロース、スクロース、フラクトオリゴ糖、デキストリン、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。好ましいオリゴ糖は、2個から10個の単糖から構成され得る。
【００３３】
多糖は、アルギン酸、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、アラビノガラクタン、カラギーナン、寒天、カラヤゴム、トラガカントゴム、タラガム、ペクチン、ローカストビーンガム、カードラン、ジェランガム、デキストラン、プルラン、ヒアルロン酸、セルロースおよびその誘導体、ならびにそれらの混合物から選択することができる。
【００３４】
糖類の誘導体は、エリトリトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトールおよびキシリトールからなる群から選択することができ、そのうち、それらのヒドロキシル基中の少なくとも1個の水素は、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アシル基またはカルボニル基などの少なくとも1個の置換基で置き換えられていてよい。
【００３５】
上記糖類は、L異性体またはD異性体の形態で存在し得る。
【００３６】
糖類またはその誘導体は、組成物の総重量に対して0.001重量%から50重量%の範囲の量、好ましくは0.005重量%から20重量%の範囲の量、0.1重量%から10重量%などで存在し得る。
【００３７】
本発明に使用される組成物は、還元剤も、式:
【００３８】
【化４】
【００３９】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OHおよびO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない。
【００４０】
該組成物のpHは、4から11の範囲、好ましくは4.0から9.0との間、より好ましくは6.0から8.0の間であってもよい。該組成物のpHは比較的高くも低くもないことから、該組成物によるケラチン繊維への損傷を減らすことができる。
【００４１】
pHを調節するために、本発明のイオン源以外の酸性またはアルカリ性化剤を、単独で、または組み合わせて使用してもよい。酸性またはアルカリ性化剤の量は制限されないが、該組成物の総重量に対し0.1重量%から5重量%であってもよい。酸性化剤としては、化粧品中で一般に使用される任意の無機酸または有機酸[クエン酸、乳酸、リン酸または塩酸(HCl)など]を挙げることができる。HClが好ましい。アルカリ性化剤としては、化粧品中で一般に使用される、以下などの任意の無機塩基性または有機塩基性化剤を挙げることができる:アンモニア;アルカノールアミン(alcanolamine)(モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミン、イソプロパノールアミンなど);水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム;尿素、グアニジンおよびその誘導体;塩基性のアミノ酸(リシンまたはアルギニンなど);ならびに、以下の構造:
【００４２】
【化５】
【００４３】
(式中、Rは、ヒドロキシルまたはC1〜C4アルキル基により場合により置換されているプロピレンなどのアルキレンを表し、R1、R2、R3およびR4は、独立に、水素原子、アルキル基またはC1〜C4ヒドロキシアルキル基を表す)に記載されているものなどのジアミン(1,3-プロパンジアミンおよびその誘導体を例に挙げることができる)。アルギニンおよびモノエタノールアミンが好ましい。
【００４４】
本発明に使用される組成物は、1つまたは複数の追加的な化粧品用添加剤(cosmetic agent)を含むこともできる。追加的な化粧品用添加剤の量は制限されないが、該組成物の総重量に対し0.1重量%から10重量%であってもよい。化粧品用添加剤は、以下からなる群から選択してもよい:揮発性または不揮発性、直鎖状または環状の、アミン型またはそうではない、シリコーン、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性または両性のポリマー、ペプチドおよびその誘導体、タンパク質加水分解物、合成または天然の蝋、および特に脂肪アルコール、膨張剤および浸透剤、ならびに、以下など他の活性化合物:陰イオン性、陽イオン性、非イオン性、両性または双性イオン性の界面活性剤、抜け毛防止剤、抗フケ剤、会合型またはそうではない天然または合成の増粘剤、懸濁化剤、金属イオン封鎖剤、不透明化剤(opacifying agent)、色素、日焼け止め剤、充填剤、ビタミンまたはプロビタミン、ミネラル、植物油または合成油、ならびに、香料、保存剤、安定化剤、ならびにそれらの混合物。
【００４５】
本発明に使用される組成物のためのビヒクルは、好ましくは、水からなる水性媒体であり、有利には、化粧品として許容される1つまたはいくつかの有機溶媒を含有してもよく、そのような有機溶媒としては、とりわけ以下が挙げられる:アルコール(エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコールおよびフェニルエチルアルコールなど)、またはポリオールもしくはポリオールエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルおよびエチレングリコールモノブチルエーテルなど)、プロピレングリコールまたはそのエーテル(プロピレングリコールモノメチルエーテルなど)、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ならびにジエチレングリコールアルキルエーテル(ジエチレングリコールモノエチルエーテルまたはジエチレングリコールモノブチルエーテルなど)。水は、該組成物の総重量に対し10重量%から90重量%の濃度で存在してもよい。したがって、有機溶媒は、該組成物の総重量に対し0.1重量%から20重量%、好ましくは1重量%から10重量%の濃度で存在してもよい。
【００４６】
本発明において使用される組成物は、ローション、濃厚もしくはそうではないゲル、またはクリームなどの任意の形態で存在してもよい。
【００４７】
(ケラチン繊維処理方法)
本発明によるケラチン繊維を処理する方法は、
前述のように、ケラチン繊維上に、少なくとも1つの糖類またはその誘導体を含む組成物を適用するステップと、
次いで、該ケラチン繊維を閉塞空間中に配置するステップと、
次いで、該ケラチン繊維を加熱するステップと
により実施できる。
【００４８】
ケラチン繊維の処理方法に関する本発明によれば、ケラチン繊維(毛髪など)は、閉塞空間中で実施する特定の加熱方法に供される。
【００４９】
加熱方法は、自由に制御して該方法にとって望ましい温度を実現できる任意の加熱手段により、実施できる。
【００５０】
加熱方法は、好ましくは、閉塞空間を形成して、前述の組成物中で蒸発性成分(水など)がケラチン繊維から蒸発するのを制限し、該方法を通じて加熱装置中で既定の温度を保つことができる、特別な加熱装置を使用することにより、実施してもよい。
【００５１】
前述の組成物中の蒸発性成分(水など)がケラチン繊維から蒸発する場合、ケラチン繊維に加えられる熱エネルギーの大部分は蒸発により消費されることになると考えられ、したがって、ケラチン繊維の温度は、該組成物中の全ての蒸発性成分が蒸発するまでは、既定の温度まで上昇できない。
【００５２】
前述の加熱装置は、ケラチン繊維と接触しているか、またはケラチン繊維から離れている、そのいずれかの熱エネルギー源と、ケラチン繊維を取り巻く閉塞空間を形成するための少なくとも1つの手段とを含んでもよい。
【００５３】
熱エネルギー源は、ケラチン繊維を加熱するために使用される。熱エネルギー源は、熱風、熱蒸気、高周波誘導加熱、マイクロ波加熱、赤外線照射、レーザーおよびフラッシュランプ照射からなる群から選択される少なくとも1つを供給する少なくとも1つの加熱器であってもよい。
【００５４】
閉塞空間は、少なくとも1つのコーティング手段により形成されてもよい。複数のコーティング手段を使用してもよい。コーティング手段は、硬質または軟質であってもよい。
【００５５】
コーティング手段は、フィルムおよびシートからなる群から選択される少なくとも1つの部材を含んでもよい。フィルムまたはシートの材料は限定されない。例えば、フィルムまたはシートは、熱可塑性または熱硬化性の樹脂、紙、織物材料、覆い(bonnet)、金属箔(アルミニウム箔など)を含んでもよい。
【００５６】
例えば、フィルムまたはシートは、ケラチン繊維により覆われた加熱用ロッド、加熱用バーまたは加熱用プレート上にセットしてもよい。
【００５７】
本発明によれば、コーティング手段は、熱エネルギー源を含んでもよい。したがって、例えば、加熱器を含むフィルムまたはシートは、ケラチン繊維により覆われたロッド、バーまたはプレート上にセットしてもよい。
【００５８】
閉塞状態は、ケラチン繊維に適用された前述の組成物中での蒸発性成分(水など)の蒸発を制限でき、したがって、ケラチン繊維の温度は、開放状態におけるケラチン繊維の従来の加熱方法または装置により得ることができる温度より高く上昇させることができる。さらに、ケラチン繊維を有効に加熱でき、ケラチン繊維を均等に加熱できる。
【００５９】
本発明の一変形形態によれば、閉塞空間は開口部を含んでもよく、その表面積は、コーティング手段の合計表面積の5%未満、好ましくは3%未満、より特定すれば0.5%未満である。この変形形態によれば、コーティング手段の合計表面積は、コーティング手段のための開放手段(存在する場合)の表面積を含む。
【００６０】
開口部は、通路、穴または孔であってもよく、それにより、特に、反応(閉塞空間の内側で蒸気を形成するなど)が大きすぎる際は、閉塞空間とその外部との間の空気の交換が可能になると考えられる。逆に言えば、当業者であれば、閉塞空間中での熱の拡散が障害されないように開口部を形成できる。
【００６１】
ケラチン繊維は、45℃から250℃、好ましくは60℃から200℃、より好ましくは60℃から150℃、より好ましくは60℃から90℃で、該ケラチン繊維を加熱するステップの間、加熱できる。
【００６２】
加熱方法は、ケラチン繊維を処理するのに必要な適切な時間にわたり実施してもよい。加熱方法のための時間の長さは制限されないが、1分から2時間、好ましくは1分から1時間、より好ましくは1分から30分であってもよい。例えば、加熱のための時間は、5から20分、好ましくは10から15分であってもよい。
【００６３】
ケラチン繊維は、該組成物をケラチン繊維上に適用するステップの後および/または該ケラチン繊維を加熱するステップの後にすすいでもよい。
【００６４】
[ケラチン繊維のパーマネント変形(Permanent Deformation)方法]
ケラチン繊維の処理方法に関する本発明によれば、ケラチン繊維に、パーマネント変形に典型的に使用される機械的張力をかけてもよい。
【００６５】
ケラチン繊維のためのパーマネント変形方法は、ケラチン繊維に機械的張力を加える際は、次のように実施してもよい。
【００６６】
まず、ケラチン繊維に、変形のために機械的張力をかける。機械的張力は、意図した形状にケラチン繊維を変形するための任意の手段によりケラチン繊維に加えることができる。例えば、機械的張力は、カーラー、ローラー、クリップ、プレートおよびアイロンからなる群から選択される少なくとも1つの再成形手段により与えてもよい。再成形手段は、前述のように、少なくとも1つの加熱器を含んでもよい。ケラチン繊維をカーラーに巻き付ける場合は、この巻上げは、ケラチン繊維の全長に対して、または、例えば、ケラチン繊維の長さの半分に対して実施してもよい。例えば所望の髪型形状およびカールの量によっては、巻上げは、多少厚い束で実施してもよい。
【００６７】
次に、前述の組成物をケラチン繊維に適用する。該組成物の適用は、ブラシおよび櫛などの任意の手段により実施してもよい。機械的張力を加えておいたケラチン繊維を、該組成物で処理すべきである。ケラチン繊維は、必要に応じ、一定の長さの時間にわたり、そのままの状態で放置することが可能であると考えられる。
【００６８】
最後に、前述の加熱方法を実施する。熱エネルギーは、前述のように、閉塞条件下でケラチン繊維に加えられる。
【００６９】
ケラチン繊維のパーマネント変形のためのこの方法は、ケラチン繊維を酸化させるステップを一切用いずに実施できる。したがって、本発明による方法に要する時間は、酸化ステップを必要とする従来の方法に要する時間より短くすることができる。さらに、酸化ステップによりケラチン繊維に与えられる損傷を回避できる。
【００７０】
該組成物をケラチン繊維上に適用するステップの後および/または該ケラチン繊維を加熱するステップの後に、ケラチン繊維をすすいでもよい。
【００７１】
本発明による毛髪処理方法の一実施形態は、ケラチン繊維、とりわけ毛髪を再成形またはパーマネント変形するための方法であって、
a)カールを形成するために少なくとも1つの再成形手段または機械的張力付与手段(mechanically tensioning means)上に巻き上げることにより、ケラチン繊維を機械的張力下に置くステップ、
b)前述の組成物を該ケラチン繊維に適用するステップ、
c)該ケラチン繊維をすすぐ任意選択的なステップ、
d)少なくとも1つのコーティング手段を該再成形手段または機械的張力付与手段上に(またはその逆に)配置して、1つまたは複数の閉塞空間を形成するステップ、ならびに
e)該ケラチン繊維を45±2または3℃から250±2または3℃の間の温度で1分間から2時間加熱するステップ
を含む方法であってもよい。
【００７２】
この方法において、温度は1つまたは複数の加熱手段を使用することにより設定、調節および調整でき、ケラチン繊維上にセットしたDigital Surface Sensor Module、参照番号MT-144[坂口電熱株式会社(日本)により販売されている]などの温度測定プローブを用いて測定してもよい。通常、プローブは、単一のケラチン繊維上にセットする。しかし、プローブを、閉塞空間と直接接触するケラチン繊維の一部の上にセットし、より好ましくは、プローブを、閉塞空間と直接接触しケラチン繊維のカールの末端を形成する(カーラーを使用する場合)ケラチン繊維の一部の上にセットすることは有利である。
【００７３】
好ましくは、温度は、気圧101325Paで測定する。
【００７４】
本発明によれば、ケラチン繊維の温度は、個体の頭部(ケラチン繊維が毛髪である場合)にわたり一定(変動は±2または3℃)であってもよく、プローブは、任意の種類のケラチン繊維上にセットしてもよい。
【００７５】
ケラチン繊維が毛髪である場合、本発明によれば、一定の温度(変動は±2または3℃)は、任意の種類の毛髪について得ることができ、毛髪の温度は、毛髪を特定の温度で加熱する間、一定±2または3℃であるように制御できる。こうして、髪型は毛髪の全体にわたり均一かつ均質になり、より優れた髪型を最終的に得ることができる。
【００７６】
有利には、コーティング手段は1つまたは複数の断熱材を含んでもよく、より有利には、コーティング手段は、そうした材料からなっていてもよい。
【００７７】
用語「断熱材」は、熱伝導率が0から1W/m℃(PVC:0.17W/m℃)である任意の材料を意味する。
【００７８】
好ましくは、加熱手段は、ケラチン繊維上で測定される温度が50℃以上、より好ましくは55℃から150℃未満、さらにより好ましくは100℃未満であるように調節してもよい。加熱は、電気抵抗による加熱により実施することが好ましい。
【００７９】
有利には、コーティング手段は、ステップb)において使用される組成物に関しては不浸透性である。
【００８０】
前述の実施形態では、再成形手段または機械的張力付与手段のうち少なくとも1つ、および、カバー手段のうち少なくとも1つは、加熱器を含んでもよい。
【００８１】
前述の実施形態では、「閉塞空間」は、コーティング手段を再成形手段または機械的張力付与手段上に(またはその逆に)配置した際、それらの手段が一緒になって閉鎖構造(その中では熱は拡散できるが、熱は該閉鎖構造の外へ拡散できないか、または該構造の外へ拡散することが難しい)を形成することを意味する。コーティング手段および再成形手段または機械的張力付与手段は、頭部(ケラチン繊維が毛髪である場合)の上にセットした際に閉塞空間を形成できることが好ましい。
【００８２】
閉塞空間は、その中で、水、および、ステップb)において使用される組成物中の成分がケラチン繊維から蒸発し、コーティング手段の壁面に付着し、ケラチン繊維上に落ちることができる凝結ケージ(condensation cage)を形成してもよい。このサイクルは、ケラチン繊維の加熱の間、繰り返されると考えられる。こうして、ケラチン繊維を湿った状態で常に保つことができ、ケラチン繊維の乾燥および劣化が防止される。
【００８３】
閉塞空間中のケラチン繊維を湿った状態で保つことができ、ケラチン繊維の温度を一定にできるため、閉塞空間の形成は本発明の重要な特徴である。
【００８４】
好ましくは、本発明の方法は、弾力性のあるコード、伸展性のバンドまたは伸縮性材料(stretch)により、個体の頭部(ケラチン繊維が毛髪である場合)上でコーティング手段を締め付ける追加的なステップを含んでもよい。
【００８５】
本発明の方法によれば、該組成物がケラチン繊維上で継続的に凝結できる閉塞空間があるために、該組成物中の化粧品成分の量は、先行技術における方法と比較して有利に減少する。化粧品成分の量は、該組成物の0.3重量%から3重量%であってもよい。
【００８６】
好ましい一実施形態では、コーティング手段は、再成形手段または機械的張力付与手段としての各ヘアカーラー(ケラチン繊維が毛髪である場合)上に配置してもよい。言い換えれば、ヘアカーラーのそれぞれ(2つ以上のヘアカーラーを使用する場合)を、コーティング手段により個々に覆ってもよい。ステップb)においてケラチン繊維上に適用してある組成物の頭皮への漏出を防止できるため、各ヘアカーラーを覆うことは有利である。
【００８７】
別の好ましい実施形態では、コーティング手段は、全てのヘアカーラー(2つ以上のヘアカーラーを使用する場合)を覆ってもよい。言い換えれば、コーティング手段は、頭部(ケラチン繊維が毛髪である場合)の全体を覆ってもよい。
【００８８】
有利には、ステップd)において形成される閉塞空間は、ステップe)の間、維持されてもよい。言い換えれば、コーティング手段は、ステップe)の後、または、ステップe)における加熱を中止した後にのみ取り外してもよい。
【００８９】
必要に応じ、本組成物は、機械的張力をケラチン繊維に加える前にケラチン繊維に適用してもよい。ケラチン繊維は、必要に応じ、機械的張力をケラチン繊維に加える前および/または後、前述の組成物をケラチン繊維に適用する前および/または後、ならびに、ケラチン繊維を加熱する前および/または後に、特定の長さの時間にわたり、そのままの状態で放置することができると考えられる。
【００９０】
前述のステップe)の後、必要に応じ、ケラチン繊維は、コーティング手段から取り出した後で酸化により固定させてもよい。
【００９１】
(製品)
本発明は、さらに、閉塞空間中で加熱されるケラチン繊維を処理するための組成物であって、少なくとも1つの糖類またはその誘導体を含み、
還元剤も、式:
【００９２】
【化６】
【００９３】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OHおよびO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、組成物に関する。
【００９４】
この組成物は、ケラチン繊維の従来のパーマネント変形において使用される酸化剤と組み合わせて使用する必要はないと考えられる。したがって、ケラチン繊維をパーマネント変形する場合には、該組成物は1ステップで使用してもよいが、ケラチン繊維の従来のパーマネント変形においては、2ステップ(還元ステップおよび酸化ステップ)が必要である。
【００９５】
この組成物は、前述の組成物と同じ技術的特徴を有してもよい。
【００９６】
本発明は、さらに、ケラチン繊維を処理するためのキットであって、
ケラチン繊維に機械的張力を与えるための少なくとも1つの再成形手段、
閉塞空間を形成するための少なくとも1つのコーティング手段、および
該閉塞空間中で該ケラチン繊維を加熱するための少なくとも1つの加熱器
を備える装置と、
少なくとも1つの糖類またはその誘導体を含み、
還元剤も、式:
【００９７】
【化７】
【００９８】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OHおよびO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、組成物と
を含む、キットに関する。
【００９９】
キット中のコーティング手段および加熱器ならびに組成物は、前述したものと同じであってもよい。
【０１００】
(実施例)
本発明を、実施例により、さらに詳細に記載することとするが、この実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【０１０１】
組成物1
表1に示す以下の組成を有する毛髪処理用組成物(「組成物1」と呼ぶ)を調製した(活性成分の単位は重量%)。
【０１０２】
【表１】
【０１０３】
(実施例1)
組成物1を、天然の日本人の毛髪束1gに20分間適用した。次いで、毛髪をプラスチックフィルムによって包み、軟質の加熱フィルム(FTH-050、株式会社東京技術研究所製)により覆った。毛髪を閉塞条件下で80℃で10分間加熱した。加熱ステップ後、毛髪をすすぎ、乾燥させた。
【０１０４】
毛髪は柔軟で滑らかであった。
【０１０５】
(比較例1)
組成物1を、1gの天然の日本人の毛髪束(実施例1で使用したものと同じであった)上に20分間適用した。この毛髪を、加熱せずに10分間放置した後、毛髪をすすぎ、乾燥させた。
【０１０６】
処理後に特定の変化は観察されなかった。
【０１０７】
組成物2
表2に示す以下の組成を有する毛髪処理用組成物(「組成物2」と呼ぶ)を調製した(活性成分の単位は重量%)。
【０１０８】
【表２】
【０１０９】
(実施例2)
組成物2を、1.7cmの加熱パーマローラー(perm-roller)に予め巻いておいた天然の日本人の毛髪束1gに15分間適用した。次いで、パーマローラーを、プラスチックフィルムにより覆い、Digital Perm Machine(Oohiro、型番ODIS-2)に差し込んだ。90℃で15分間の加熱方法の後、毛髪をすすぎ、パーマローラーから外して乾燥させた。
【０１１０】
毛髪は滑らかでつやがあった。
【０１１１】
(比較例2)
組成物2を、1gの天然の日本人の毛髪束(実施例2で使用したものと同じであった)上に15分間適用した。毛髪を、加熱せずに15分間放置した後、毛髪をすすぎ、乾燥させた。
【０１１２】
処理後に特定の変化は観察されなかった。
【０１１３】
組成物3
表3に示す以下の組成を有する毛髪処理用組成物(「組成物3」と呼ぶ)を調製した(活性成分の単位は重量%)。
【０１１４】
【表３】
【０１１５】
(実施例3)
組成物3を、1.7cmの加熱パーマローラーに予め巻いておいた天然の日本人の毛髪束1gに15分間適用した。次いで、パーマローラーを、プラスチックフィルムにより覆い、Digital Perm Machine(Oohiro、型番ODIS-2)に差し込んだ。90℃で15分間の加熱方法の後、毛髪をパーマローラーから外してすすぎ、乾燥させた。
【０１１６】
毛髪は柔軟でつやがあった。
【０１１７】
(比較例3)
組成物3を、1gの天然の日本人の毛髪束(実施例2で使用したものと同じであった)上に15分間適用した。毛髪を、加熱せずに15分間放置した後、毛髪をすすぎ、乾燥させた。
【０１１８】
処理後に特定の変化は観察されなかった。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ケラチン繊維(毛髪など)を処理する方法、ならびに、該方法に使用される組成物およびキットに関する。
【背景技術】
【０００２】
ケラチン繊維(毛髪など)が日常的に受けなければならない多くの物理的なストレス(UV、シャンプー、ブラッシングなど)および化学的なストレス[着色、パーマ、リラクシング(relaxing)、汚染など]があることから、損傷したケラチン繊維の有効な修復についての研究が、ケラチン繊維の美容処理において重要になっている。
【０００３】
損傷したケラチン繊維の修復は、元の状態のケラチン繊維に戻ったという現実的な感覚が得られてこそ価値がある。さらに、そうした修復処理は、前述のような多様なストレスに対して有効であるべきである。
【０００４】
これまでに提案されている、損傷したケラチン繊維を修復するための処理として公知の技術(組成物および/または方法)は、そうした技術が多くの場合は一時的でありケラチン繊維の元の状態の正しい回復を達成しないという点に限って言えば、未だに不十分である。
【０００５】
糖類または糖は、ケラチン繊維用の化粧品における化粧品用薬剤として知られている。例えば、US-A-2007-226916を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００６】
【特許文献１】US-A-2007-226916
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
しかし、ケラチン繊維に対するこれらの美容特性は、ケラチン繊維上へのこれらの沈着率が低いことまたはケラチン繊維中への浸透性が制限されていることから、未だ不十分である。このことは、糖類を用いたケラチン繊維の美容処理の効率は低く、美容処理のために用いる製剤において多量の糖類が必要であるということを意味する。
【０００８】
したがって、本発明の目的は、良好な美容効果、とりわけ、優れた修復効果または回復効果をケラチン繊維にもたらし、長時間にわたり多様なストレスに対して有効であり得る糖類またはその誘導体を、しかも比較的少量で使用した、ケラチン繊維(毛髪など)の新しい処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
前述の本発明の目的は、ケラチン繊維を処理する方法であって、
該ケラチン繊維上に、少なくとも1つの糖類またはその誘導体を含む組成物を適用するステップと、
次いで、該ケラチン繊維を閉塞空間中に配置するステップと、
次いで、該ケラチン繊維を加熱するステップと
を含み、
該組成物が、還元剤も、式:
【００１０】
【化１】
【００１１】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OHおよびO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、方法により達成できる。
【００１２】
前述の方法は、該組成物をケラチン繊維上に適用するステップの後および/またはケラチン繊維を加熱するステップの後にケラチン繊維をすすぐステップをさらに含んでもよい。
【００１３】
ケラチン繊維に機械的張力を与えてもよい。機械的張力は、カーラー、ローラー、プレートおよびアイロンからなる群から選択される少なくとも1つの再成形手段(reshaping means)を用いることにより与えてもよい。
【００１４】
該閉塞空間は、少なくとも1つのコーティング手段により形成されてもよい。該コーティング手段は、硬質または軟質であってもよい。該コーティング手段は、フィルムおよびシートからなる群から選択される少なくとも1つの部材を含んでもよい。
【００１５】
前述の方法において、ケラチン繊維を加熱するステップの間、ケラチン繊維は45℃から250℃で加熱されてもよい。ケラチン繊維は、熱風、熱蒸気、高周波誘導加熱、マイクロ波加熱、赤外線照射、レーザーおよびフラッシュランプ照射からなる群から選択される少なくとも1つを供給する少なくとも1つの加熱器により加熱されてもよい。該コーティング手段および/または該再成形手段は、該加熱器を備えていてもよい。
【００１６】
糖類は、単糖、オリゴ糖、多糖およびこれらの混合物からなる群から選択することができる。単糖またはその誘導体は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、タロース、ソルボース、キシロース、リキソース、フコース、アラビノース、ラムノース、リボース、リブロース、キシルロース、ソルビトール、トリオース、ペントース、ヘキソース、ケトース、グルコサミンおよびそれらの混合物からなる群から選択することができる。オリゴ糖またはその誘導体は、マルトース、ラクトース、サッカロース、セロビオース、トレハロース、スクロース、フラクトオリゴ糖(flucto-oligosaccharide)、デキストリンおよびそれらの混合物からなる群から選択することができる。多糖またはその誘導体は、アルギン酸、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、アラビノガラクタン、カラギーナン、寒天、カラヤゴム、トラガカントゴム、タラガム(tara gum)、ペクチン、ローカストビーンガム、カードラン(cardolan)、ジェランガム(jellan gum)、デキストラン、プルラン、ヒアルロン酸、セルロースおよびそれらの誘導体ならびにそれらの混合物から選択することができる。
【００１７】
該組成物は、該糖類を、該組成物の総重量に対し、0.001重量%から50重量%の量で含んでもよい。該組成物のpHは、4から11の範囲とすることができる。
【００１８】
本発明の別の態様は、閉塞空間中で加熱されるケラチン繊維を処理するための組成物であって、少なくとも1つの糖類またはその誘導体を含み、
還元剤も、式:
【００１９】
【化２】
【００２０】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OHおよびO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、組成物である。
【００２１】
本発明は、さらに、ケラチン繊維を処理するためのキットであって、
閉塞空間を形成するための少なくとも1つのコーティング手段、および
該閉塞空間中でケラチン繊維を加熱するための少なくとも1つの加熱器を備える装置と、
少なくとも1つの糖類またはその誘導体を含み、
還元剤も、式:
【００２２】
【化３】
【００２３】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OHおよびO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、組成物と
を含む、キットに関する。
【発明を実施するための形態】
【００２４】
鋭意研究の結果、本発明者らは、ケラチン繊維のためのある特定の加熱方法と組み合わせて糖類またはその誘導体を含む組成物を用いることにより、良好な美容効果、特に、長期間様々なストレスに対して有効であり得る優れた修復効果または優れた回復効果を、糖類またはその誘導体を用いた場合でも、毛髪などのケラチン繊維にもたらすことが可能であるということを発見した。
【００２５】
前述の特定の加熱方法は、ケラチン繊維からの水または水分の蒸発を制限し、ケラチン繊維を高温にて好ましくは湿った状態で維持する、閉鎖環境または閉塞環境において実施される。それにより、ケラチン繊維を均等に加熱することができ、糖類またはその誘導体は、ケラチン繊維の中に容易に浸透しまたはその上に沈着することができることから、シャンプーなどの何らかのストレスの後でも、糖類またはその誘導体は、ケラチン繊維の中または上に長時間にわたり残ることができる。
【００２６】
糖類またはその誘導体は、ケラチン繊維上またはその中に容易に留まることができることから、本発明による方法は、糖類またはその誘導体がケラチン繊維上またはその中に留まることが難しい従来の方法と比較して、比較的少量であっても糖類またはその誘導体を用いることにより、良好な美容効果を呈することができる。
【００２７】
本発明において使用される組成物は、チオール化合物などの還元剤を含有してはならない。したがって、還元剤に由来する悪臭を防止できる。さらに、本発明において使用される組成物は、先に定義したように、炭酸イオン源を一切含有してはならない。したがって、ケラチン繊維上またはその中への糖類またはその誘導体の沈着または浸透を阻害しうる泡を形成する二酸化炭素を生じる可能性がないため、美容処理がより有効である。
【００２８】
(組成物)
本発明に使用される組成物は、少なくとも1つの糖類またはその誘導体を含む。
【００２９】
本明細書では、「糖類」という用語は、1つまたは複数の糖単位から構成され、少なくとも1個のカルボニル基を有し得る多価アルコールを意味する。糖類の誘導体には、糖類の1個もしくは複数のカルボニル基を還元することにより得られる糖アルコール、ならびに1個もしくは複数のそれらのヒドロキシ基中の1個または複数の水素原子が、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アシル基またはカルボニル基などの少なくとも1種の置換基で置き換えられている糖類または糖アルコールが含まれる。
【００３０】
糖類は、単糖、オリゴ糖、多糖およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【００３１】
単糖は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、タロース、ソルボース、キシロース、リキソース、フコース、アラビノース、ラムノース、リボース、リブロース、キシルロース、ソルビトール、トリオース、ペントース、ヘキソース、ケトース、グルコサミンおよびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【００３２】
オリゴ糖は、マルトース、ラクトース、サッカロース、セロビオース、トレハロース、スクロース、フラクトオリゴ糖、デキストリン、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。好ましいオリゴ糖は、2個から10個の単糖から構成され得る。
【００３３】
多糖は、アルギン酸、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、アラビノガラクタン、カラギーナン、寒天、カラヤゴム、トラガカントゴム、タラガム、ペクチン、ローカストビーンガム、カードラン、ジェランガム、デキストラン、プルラン、ヒアルロン酸、セルロースおよびその誘導体、ならびにそれらの混合物から選択することができる。
【００３４】
糖類の誘導体は、エリトリトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトールおよびキシリトールからなる群から選択することができ、そのうち、それらのヒドロキシル基中の少なくとも1個の水素は、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アシル基またはカルボニル基などの少なくとも1個の置換基で置き換えられていてよい。
【００３５】
上記糖類は、L異性体またはD異性体の形態で存在し得る。
【００３６】
糖類またはその誘導体は、組成物の総重量に対して0.001重量%から50重量%の範囲の量、好ましくは0.005重量%から20重量%の範囲の量、0.1重量%から10重量%などで存在し得る。
【００３７】
本発明に使用される組成物は、還元剤も、式:
【００３８】
【化４】
【００３９】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OHおよびO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない。
【００４０】
該組成物のpHは、4から11の範囲、好ましくは4.0から9.0との間、より好ましくは6.0から8.0の間であってもよい。該組成物のpHは比較的高くも低くもないことから、該組成物によるケラチン繊維への損傷を減らすことができる。
【００４１】
pHを調節するために、本発明のイオン源以外の酸性またはアルカリ性化剤を、単独で、または組み合わせて使用してもよい。酸性またはアルカリ性化剤の量は制限されないが、該組成物の総重量に対し0.1重量%から5重量%であってもよい。酸性化剤としては、化粧品中で一般に使用される任意の無機酸または有機酸[クエン酸、乳酸、リン酸または塩酸(HCl)など]を挙げることができる。HClが好ましい。アルカリ性化剤としては、化粧品中で一般に使用される、以下などの任意の無機塩基性または有機塩基性化剤を挙げることができる:アンモニア;アルカノールアミン(alcanolamine)(モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミン、イソプロパノールアミンなど);水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム;尿素、グアニジンおよびその誘導体;塩基性のアミノ酸(リシンまたはアルギニンなど);ならびに、以下の構造:
【００４２】
【化５】
【００４３】
(式中、Rは、ヒドロキシルまたはC1〜C4アルキル基により場合により置換されているプロピレンなどのアルキレンを表し、R1、R2、R3およびR4は、独立に、水素原子、アルキル基またはC1〜C4ヒドロキシアルキル基を表す)に記載されているものなどのジアミン(1,3-プロパンジアミンおよびその誘導体を例に挙げることができる)。アルギニンおよびモノエタノールアミンが好ましい。
【００４４】
本発明に使用される組成物は、1つまたは複数の追加的な化粧品用添加剤(cosmetic agent)を含むこともできる。追加的な化粧品用添加剤の量は制限されないが、該組成物の総重量に対し0.1重量%から10重量%であってもよい。化粧品用添加剤は、以下からなる群から選択してもよい:揮発性または不揮発性、直鎖状または環状の、アミン型またはそうではない、シリコーン、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性または両性のポリマー、ペプチドおよびその誘導体、タンパク質加水分解物、合成または天然の蝋、および特に脂肪アルコール、膨張剤および浸透剤、ならびに、以下など他の活性化合物:陰イオン性、陽イオン性、非イオン性、両性または双性イオン性の界面活性剤、抜け毛防止剤、抗フケ剤、会合型またはそうではない天然または合成の増粘剤、懸濁化剤、金属イオン封鎖剤、不透明化剤(opacifying agent)、色素、日焼け止め剤、充填剤、ビタミンまたはプロビタミン、ミネラル、植物油または合成油、ならびに、香料、保存剤、安定化剤、ならびにそれらの混合物。
【００４５】
本発明に使用される組成物のためのビヒクルは、好ましくは、水からなる水性媒体であり、有利には、化粧品として許容される1つまたはいくつかの有機溶媒を含有してもよく、そのような有機溶媒としては、とりわけ以下が挙げられる:アルコール(エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコールおよびフェニルエチルアルコールなど)、またはポリオールもしくはポリオールエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルおよびエチレングリコールモノブチルエーテルなど)、プロピレングリコールまたはそのエーテル(プロピレングリコールモノメチルエーテルなど)、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ならびにジエチレングリコールアルキルエーテル(ジエチレングリコールモノエチルエーテルまたはジエチレングリコールモノブチルエーテルなど)。水は、該組成物の総重量に対し10重量%から90重量%の濃度で存在してもよい。したがって、有機溶媒は、該組成物の総重量に対し0.1重量%から20重量%、好ましくは1重量%から10重量%の濃度で存在してもよい。
【００４６】
本発明において使用される組成物は、ローション、濃厚もしくはそうではないゲル、またはクリームなどの任意の形態で存在してもよい。
【００４７】
(ケラチン繊維処理方法)
本発明によるケラチン繊維を処理する方法は、
前述のように、ケラチン繊維上に、少なくとも1つの糖類またはその誘導体を含む組成物を適用するステップと、
次いで、該ケラチン繊維を閉塞空間中に配置するステップと、
次いで、該ケラチン繊維を加熱するステップと
により実施できる。
【００４８】
ケラチン繊維の処理方法に関する本発明によれば、ケラチン繊維(毛髪など)は、閉塞空間中で実施する特定の加熱方法に供される。
【００４９】
加熱方法は、自由に制御して該方法にとって望ましい温度を実現できる任意の加熱手段により、実施できる。
【００５０】
加熱方法は、好ましくは、閉塞空間を形成して、前述の組成物中で蒸発性成分(水など)がケラチン繊維から蒸発するのを制限し、該方法を通じて加熱装置中で既定の温度を保つことができる、特別な加熱装置を使用することにより、実施してもよい。
【００５１】
前述の組成物中の蒸発性成分(水など)がケラチン繊維から蒸発する場合、ケラチン繊維に加えられる熱エネルギーの大部分は蒸発により消費されることになると考えられ、したがって、ケラチン繊維の温度は、該組成物中の全ての蒸発性成分が蒸発するまでは、既定の温度まで上昇できない。
【００５２】
前述の加熱装置は、ケラチン繊維と接触しているか、またはケラチン繊維から離れている、そのいずれかの熱エネルギー源と、ケラチン繊維を取り巻く閉塞空間を形成するための少なくとも1つの手段とを含んでもよい。
【００５３】
熱エネルギー源は、ケラチン繊維を加熱するために使用される。熱エネルギー源は、熱風、熱蒸気、高周波誘導加熱、マイクロ波加熱、赤外線照射、レーザーおよびフラッシュランプ照射からなる群から選択される少なくとも1つを供給する少なくとも1つの加熱器であってもよい。
【００５４】
閉塞空間は、少なくとも1つのコーティング手段により形成されてもよい。複数のコーティング手段を使用してもよい。コーティング手段は、硬質または軟質であってもよい。
【００５５】
コーティング手段は、フィルムおよびシートからなる群から選択される少なくとも1つの部材を含んでもよい。フィルムまたはシートの材料は限定されない。例えば、フィルムまたはシートは、熱可塑性または熱硬化性の樹脂、紙、織物材料、覆い(bonnet)、金属箔(アルミニウム箔など)を含んでもよい。
【００５６】
例えば、フィルムまたはシートは、ケラチン繊維により覆われた加熱用ロッド、加熱用バーまたは加熱用プレート上にセットしてもよい。
【００５７】
本発明によれば、コーティング手段は、熱エネルギー源を含んでもよい。したがって、例えば、加熱器を含むフィルムまたはシートは、ケラチン繊維により覆われたロッド、バーまたはプレート上にセットしてもよい。
【００５８】
閉塞状態は、ケラチン繊維に適用された前述の組成物中での蒸発性成分(水など)の蒸発を制限でき、したがって、ケラチン繊維の温度は、開放状態におけるケラチン繊維の従来の加熱方法または装置により得ることができる温度より高く上昇させることができる。さらに、ケラチン繊維を有効に加熱でき、ケラチン繊維を均等に加熱できる。
【００５９】
本発明の一変形形態によれば、閉塞空間は開口部を含んでもよく、その表面積は、コーティング手段の合計表面積の5%未満、好ましくは3%未満、より特定すれば0.5%未満である。この変形形態によれば、コーティング手段の合計表面積は、コーティング手段のための開放手段(存在する場合)の表面積を含む。
【００６０】
開口部は、通路、穴または孔であってもよく、それにより、特に、反応(閉塞空間の内側で蒸気を形成するなど)が大きすぎる際は、閉塞空間とその外部との間の空気の交換が可能になると考えられる。逆に言えば、当業者であれば、閉塞空間中での熱の拡散が障害されないように開口部を形成できる。
【００６１】
ケラチン繊維は、45℃から250℃、好ましくは60℃から200℃、より好ましくは60℃から150℃、より好ましくは60℃から90℃で、該ケラチン繊維を加熱するステップの間、加熱できる。
【００６２】
加熱方法は、ケラチン繊維を処理するのに必要な適切な時間にわたり実施してもよい。加熱方法のための時間の長さは制限されないが、1分から2時間、好ましくは1分から1時間、より好ましくは1分から30分であってもよい。例えば、加熱のための時間は、5から20分、好ましくは10から15分であってもよい。
【００６３】
ケラチン繊維は、該組成物をケラチン繊維上に適用するステップの後および/または該ケラチン繊維を加熱するステップの後にすすいでもよい。
【００６４】
[ケラチン繊維のパーマネント変形(Permanent Deformation)方法]
ケラチン繊維の処理方法に関する本発明によれば、ケラチン繊維に、パーマネント変形に典型的に使用される機械的張力をかけてもよい。
【００６５】
ケラチン繊維のためのパーマネント変形方法は、ケラチン繊維に機械的張力を加える際は、次のように実施してもよい。
【００６６】
まず、ケラチン繊維に、変形のために機械的張力をかける。機械的張力は、意図した形状にケラチン繊維を変形するための任意の手段によりケラチン繊維に加えることができる。例えば、機械的張力は、カーラー、ローラー、クリップ、プレートおよびアイロンからなる群から選択される少なくとも1つの再成形手段により与えてもよい。再成形手段は、前述のように、少なくとも1つの加熱器を含んでもよい。ケラチン繊維をカーラーに巻き付ける場合は、この巻上げは、ケラチン繊維の全長に対して、または、例えば、ケラチン繊維の長さの半分に対して実施してもよい。例えば所望の髪型形状およびカールの量によっては、巻上げは、多少厚い束で実施してもよい。
【００６７】
次に、前述の組成物をケラチン繊維に適用する。該組成物の適用は、ブラシおよび櫛などの任意の手段により実施してもよい。機械的張力を加えておいたケラチン繊維を、該組成物で処理すべきである。ケラチン繊維は、必要に応じ、一定の長さの時間にわたり、そのままの状態で放置することが可能であると考えられる。
【００６８】
最後に、前述の加熱方法を実施する。熱エネルギーは、前述のように、閉塞条件下でケラチン繊維に加えられる。
【００６９】
ケラチン繊維のパーマネント変形のためのこの方法は、ケラチン繊維を酸化させるステップを一切用いずに実施できる。したがって、本発明による方法に要する時間は、酸化ステップを必要とする従来の方法に要する時間より短くすることができる。さらに、酸化ステップによりケラチン繊維に与えられる損傷を回避できる。
【００７０】
該組成物をケラチン繊維上に適用するステップの後および/または該ケラチン繊維を加熱するステップの後に、ケラチン繊維をすすいでもよい。
【００７１】
本発明による毛髪処理方法の一実施形態は、ケラチン繊維、とりわけ毛髪を再成形またはパーマネント変形するための方法であって、
a)カールを形成するために少なくとも1つの再成形手段または機械的張力付与手段(mechanically tensioning means)上に巻き上げることにより、ケラチン繊維を機械的張力下に置くステップ、
b)前述の組成物を該ケラチン繊維に適用するステップ、
c)該ケラチン繊維をすすぐ任意選択的なステップ、
d)少なくとも1つのコーティング手段を該再成形手段または機械的張力付与手段上に(またはその逆に)配置して、1つまたは複数の閉塞空間を形成するステップ、ならびに
e)該ケラチン繊維を45±2または3℃から250±2または3℃の間の温度で1分間から2時間加熱するステップ
を含む方法であってもよい。
【００７２】
この方法において、温度は1つまたは複数の加熱手段を使用することにより設定、調節および調整でき、ケラチン繊維上にセットしたDigital Surface Sensor Module、参照番号MT-144[坂口電熱株式会社(日本)により販売されている]などの温度測定プローブを用いて測定してもよい。通常、プローブは、単一のケラチン繊維上にセットする。しかし、プローブを、閉塞空間と直接接触するケラチン繊維の一部の上にセットし、より好ましくは、プローブを、閉塞空間と直接接触しケラチン繊維のカールの末端を形成する(カーラーを使用する場合)ケラチン繊維の一部の上にセットすることは有利である。
【００７３】
好ましくは、温度は、気圧101325Paで測定する。
【００７４】
本発明によれば、ケラチン繊維の温度は、個体の頭部(ケラチン繊維が毛髪である場合)にわたり一定(変動は±2または3℃)であってもよく、プローブは、任意の種類のケラチン繊維上にセットしてもよい。
【００７５】
ケラチン繊維が毛髪である場合、本発明によれば、一定の温度(変動は±2または3℃)は、任意の種類の毛髪について得ることができ、毛髪の温度は、毛髪を特定の温度で加熱する間、一定±2または3℃であるように制御できる。こうして、髪型は毛髪の全体にわたり均一かつ均質になり、より優れた髪型を最終的に得ることができる。
【００７６】
有利には、コーティング手段は1つまたは複数の断熱材を含んでもよく、より有利には、コーティング手段は、そうした材料からなっていてもよい。
【００７７】
用語「断熱材」は、熱伝導率が0から1W/m℃(PVC:0.17W/m℃)である任意の材料を意味する。
【００７８】
好ましくは、加熱手段は、ケラチン繊維上で測定される温度が50℃以上、より好ましくは55℃から150℃未満、さらにより好ましくは100℃未満であるように調節してもよい。加熱は、電気抵抗による加熱により実施することが好ましい。
【００７９】
有利には、コーティング手段は、ステップb)において使用される組成物に関しては不浸透性である。
【００８０】
前述の実施形態では、再成形手段または機械的張力付与手段のうち少なくとも1つ、および、カバー手段のうち少なくとも1つは、加熱器を含んでもよい。
【００８１】
前述の実施形態では、「閉塞空間」は、コーティング手段を再成形手段または機械的張力付与手段上に(またはその逆に)配置した際、それらの手段が一緒になって閉鎖構造(その中では熱は拡散できるが、熱は該閉鎖構造の外へ拡散できないか、または該構造の外へ拡散することが難しい)を形成することを意味する。コーティング手段および再成形手段または機械的張力付与手段は、頭部(ケラチン繊維が毛髪である場合)の上にセットした際に閉塞空間を形成できることが好ましい。
【００８２】
閉塞空間は、その中で、水、および、ステップb)において使用される組成物中の成分がケラチン繊維から蒸発し、コーティング手段の壁面に付着し、ケラチン繊維上に落ちることができる凝結ケージ(condensation cage)を形成してもよい。このサイクルは、ケラチン繊維の加熱の間、繰り返されると考えられる。こうして、ケラチン繊維を湿った状態で常に保つことができ、ケラチン繊維の乾燥および劣化が防止される。
【００８３】
閉塞空間中のケラチン繊維を湿った状態で保つことができ、ケラチン繊維の温度を一定にできるため、閉塞空間の形成は本発明の重要な特徴である。
【００８４】
好ましくは、本発明の方法は、弾力性のあるコード、伸展性のバンドまたは伸縮性材料(stretch)により、個体の頭部(ケラチン繊維が毛髪である場合)上でコーティング手段を締め付ける追加的なステップを含んでもよい。
【００８５】
本発明の方法によれば、該組成物がケラチン繊維上で継続的に凝結できる閉塞空間があるために、該組成物中の化粧品成分の量は、先行技術における方法と比較して有利に減少する。化粧品成分の量は、該組成物の0.3重量%から3重量%であってもよい。
【００８６】
好ましい一実施形態では、コーティング手段は、再成形手段または機械的張力付与手段としての各ヘアカーラー(ケラチン繊維が毛髪である場合)上に配置してもよい。言い換えれば、ヘアカーラーのそれぞれ(2つ以上のヘアカーラーを使用する場合)を、コーティング手段により個々に覆ってもよい。ステップb)においてケラチン繊維上に適用してある組成物の頭皮への漏出を防止できるため、各ヘアカーラーを覆うことは有利である。
【００８７】
別の好ましい実施形態では、コーティング手段は、全てのヘアカーラー(2つ以上のヘアカーラーを使用する場合)を覆ってもよい。言い換えれば、コーティング手段は、頭部(ケラチン繊維が毛髪である場合)の全体を覆ってもよい。
【００８８】
有利には、ステップd)において形成される閉塞空間は、ステップe)の間、維持されてもよい。言い換えれば、コーティング手段は、ステップe)の後、または、ステップe)における加熱を中止した後にのみ取り外してもよい。
【００８９】
必要に応じ、本組成物は、機械的張力をケラチン繊維に加える前にケラチン繊維に適用してもよい。ケラチン繊維は、必要に応じ、機械的張力をケラチン繊維に加える前および/または後、前述の組成物をケラチン繊維に適用する前および/または後、ならびに、ケラチン繊維を加熱する前および/または後に、特定の長さの時間にわたり、そのままの状態で放置することができると考えられる。
【００９０】
前述のステップe)の後、必要に応じ、ケラチン繊維は、コーティング手段から取り出した後で酸化により固定させてもよい。
【００９１】
(製品)
本発明は、さらに、閉塞空間中で加熱されるケラチン繊維を処理するための組成物であって、少なくとも1つの糖類またはその誘導体を含み、
還元剤も、式:
【００９２】
【化６】
【００９３】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OHおよびO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、組成物に関する。
【００９４】
この組成物は、ケラチン繊維の従来のパーマネント変形において使用される酸化剤と組み合わせて使用する必要はないと考えられる。したがって、ケラチン繊維をパーマネント変形する場合には、該組成物は1ステップで使用してもよいが、ケラチン繊維の従来のパーマネント変形においては、2ステップ(還元ステップおよび酸化ステップ)が必要である。
【００９５】
この組成物は、前述の組成物と同じ技術的特徴を有してもよい。
【００９６】
本発明は、さらに、ケラチン繊維を処理するためのキットであって、
ケラチン繊維に機械的張力を与えるための少なくとも1つの再成形手段、
閉塞空間を形成するための少なくとも1つのコーティング手段、および
該閉塞空間中で該ケラチン繊維を加熱するための少なくとも1つの加熱器
を備える装置と、
少なくとも1つの糖類またはその誘導体を含み、
還元剤も、式:
【００９７】
【化７】
【００９８】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OHおよびO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、組成物と
を含む、キットに関する。
【００９９】
キット中のコーティング手段および加熱器ならびに組成物は、前述したものと同じであってもよい。
【０１００】
(実施例)
本発明を、実施例により、さらに詳細に記載することとするが、この実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【０１０１】
組成物1
表1に示す以下の組成を有する毛髪処理用組成物(「組成物1」と呼ぶ)を調製した(活性成分の単位は重量%)。
【０１０２】
【表１】
【０１０３】
(実施例1)
組成物1を、天然の日本人の毛髪束1gに20分間適用した。次いで、毛髪をプラスチックフィルムによって包み、軟質の加熱フィルム(FTH-050、株式会社東京技術研究所製)により覆った。毛髪を閉塞条件下で80℃で10分間加熱した。加熱ステップ後、毛髪をすすぎ、乾燥させた。
【０１０４】
毛髪は柔軟で滑らかであった。
【０１０５】
(比較例1)
組成物1を、1gの天然の日本人の毛髪束(実施例1で使用したものと同じであった)上に20分間適用した。この毛髪を、加熱せずに10分間放置した後、毛髪をすすぎ、乾燥させた。
【０１０６】
処理後に特定の変化は観察されなかった。
【０１０７】
組成物2
表2に示す以下の組成を有する毛髪処理用組成物(「組成物2」と呼ぶ)を調製した(活性成分の単位は重量%)。
【０１０８】
【表２】
【０１０９】
(実施例2)
組成物2を、1.7cmの加熱パーマローラー(perm-roller)に予め巻いておいた天然の日本人の毛髪束1gに15分間適用した。次いで、パーマローラーを、プラスチックフィルムにより覆い、Digital Perm Machine(Oohiro、型番ODIS-2)に差し込んだ。90℃で15分間の加熱方法の後、毛髪をすすぎ、パーマローラーから外して乾燥させた。
【０１１０】
毛髪は滑らかでつやがあった。
【０１１１】
(比較例2)
組成物2を、1gの天然の日本人の毛髪束(実施例2で使用したものと同じであった)上に15分間適用した。毛髪を、加熱せずに15分間放置した後、毛髪をすすぎ、乾燥させた。
【０１１２】
処理後に特定の変化は観察されなかった。
【０１１３】
組成物3
表3に示す以下の組成を有する毛髪処理用組成物(「組成物3」と呼ぶ)を調製した(活性成分の単位は重量%)。
【０１１４】
【表３】
【０１１５】
(実施例3)
組成物3を、1.7cmの加熱パーマローラーに予め巻いておいた天然の日本人の毛髪束1gに15分間適用した。次いで、パーマローラーを、プラスチックフィルムにより覆い、Digital Perm Machine(Oohiro、型番ODIS-2)に差し込んだ。90℃で15分間の加熱方法の後、毛髪をパーマローラーから外してすすぎ、乾燥させた。
【０１１６】
毛髪は柔軟でつやがあった。
【０１１７】
(比較例3)
組成物3を、1gの天然の日本人の毛髪束(実施例2で使用したものと同じであった)上に15分間適用した。毛髪を、加熱せずに15分間放置した後、毛髪をすすぎ、乾燥させた。
【０１１８】
処理後に特定の変化は観察されなかった。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
ケラチン繊維を処理する方法であって、
前記ケラチン繊維上に、少なくとも1つの糖類またはその誘導体を含む組成物を適用するステップと、
次いで、前記ケラチン繊維を閉塞空間中に配置するステップと、
次いで、前記ケラチン繊維を加熱するステップと
を含み、
前記組成物が、還元剤も、式:
【化１】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OHおよびO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、方法。
【請求項２】
前記組成物を前記ケラチン繊維上に適用する前記ステップの後および/または前記ケラチン繊維を加熱する前記ステップの後に前記ケラチン繊維をすすぐステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項３】
前記ケラチン繊維に機械的張力を与えるステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項４】
前記閉塞空間が、少なくとも1つのコーティング手段により形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項５】
前記コーティング手段が、硬質または軟質である、請求項4に記載の方法。
【請求項６】
前記コーティング手段が、フィルムおよびシートからなる群から選択される少なくとも1つの部材を含む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項７】
前記ケラチン繊維を加熱する前記ステップの間、前記ケラチン繊維が45℃から250℃で加熱される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項８】
前記ケラチン繊維が、熱風、熱蒸気、高周波誘導加熱、マイクロ波加熱、赤外線照射、レーザーおよびフラッシュランプ照射からなる群から選択される少なくとも1つを供給する少なくとも1つの加熱器により加熱される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項９】
前記コーティング手段が前記加熱器を備える、請求項8に記載の方法。
【請求項１０】
前記糖類が、単糖、オリゴ糖、多糖、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項１１】
前記単糖が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、タロース、ソルボース、キシロース、リキソース、フコース、アラビノース、ラムノース、リボース、リブロース、キシルロース、ソルビトール、トリオース、ペントース、ヘキソース、ケトース、グルコサミンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項１２】
前記オリゴ糖が、マルトース、ラクトース、サッカロース、セロビオース、トレハロース、スクロース、フラクトオリゴ糖、デキストリンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項１３】
前記多糖が、アルギン酸、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、アラビノガラクタン、カラギーナン、寒天、カラヤゴム、トラガカントゴム、タラガム、ペクチン、ローカストビーンガム、カードラン、ジェランガム、デキストラン、プルラン、ヒアルロン酸、セルロースおよびその誘導体、ならびにそれらの混合物から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項１４】
閉塞空間中で加熱されるケラチン繊維を処理するための組成物であって、少なくとも1つの糖類またはその誘導体を含み、
還元剤も、式:
【化２】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OHおよびO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、組成物。
【請求項１５】
ケラチン繊維を処理するためのキットであって、
閉塞空間を形成するための少なくとも1つのコーティング手段、および
前記閉塞空間中で前記ケラチン繊維を加熱するための少なくとも1つの加熱器を備える装置と、
少なくとも1つの糖類またはその誘導体を含み、
還元剤も、式:
【化３】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OHおよびO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、組成物と
を含む、キット。
【請求項１】
ケラチン繊維を処理する方法であって、
前記ケラチン繊維上に、少なくとも1つの糖類またはその誘導体を含む組成物を適用するステップと、
次いで、前記ケラチン繊維を閉塞空間中に配置するステップと、
次いで、前記ケラチン繊維を加熱するステップと
を含み、
前記組成物が、還元剤も、式:
【化１】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OHおよびO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、方法。
【請求項２】
前記組成物を前記ケラチン繊維上に適用する前記ステップの後および/または前記ケラチン繊維を加熱する前記ステップの後に前記ケラチン繊維をすすぐステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項３】
前記ケラチン繊維に機械的張力を与えるステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項４】
前記閉塞空間が、少なくとも1つのコーティング手段により形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項５】
前記コーティング手段が、硬質または軟質である、請求項4に記載の方法。
【請求項６】
前記コーティング手段が、フィルムおよびシートからなる群から選択される少なくとも1つの部材を含む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項７】
前記ケラチン繊維を加熱する前記ステップの間、前記ケラチン繊維が45℃から250℃で加熱される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項８】
前記ケラチン繊維が、熱風、熱蒸気、高周波誘導加熱、マイクロ波加熱、赤外線照射、レーザーおよびフラッシュランプ照射からなる群から選択される少なくとも1つを供給する少なくとも1つの加熱器により加熱される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項９】
前記コーティング手段が前記加熱器を備える、請求項8に記載の方法。
【請求項１０】
前記糖類が、単糖、オリゴ糖、多糖、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項１１】
前記単糖が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、タロース、ソルボース、キシロース、リキソース、フコース、アラビノース、ラムノース、リボース、リブロース、キシルロース、ソルビトール、トリオース、ペントース、ヘキソース、ケトース、グルコサミンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項１２】
前記オリゴ糖が、マルトース、ラクトース、サッカロース、セロビオース、トレハロース、スクロース、フラクトオリゴ糖、デキストリンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項１３】
前記多糖が、アルギン酸、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、アラビノガラクタン、カラギーナン、寒天、カラヤゴム、トラガカントゴム、タラガム、ペクチン、ローカストビーンガム、カードラン、ジェランガム、デキストラン、プルラン、ヒアルロン酸、セルロースおよびその誘導体、ならびにそれらの混合物から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項１４】
閉塞空間中で加熱されるケラチン繊維を処理するための組成物であって、少なくとも1つの糖類またはその誘導体を含み、
還元剤も、式:
【化２】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OHおよびO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、組成物。
【請求項１５】
ケラチン繊維を処理するためのキットであって、
閉塞空間を形成するための少なくとも1つのコーティング手段、および
前記閉塞空間中で前記ケラチン繊維を加熱するための少なくとも1つの加熱器を備える装置と、
少なくとも1つの糖類またはその誘導体を含み、
還元剤も、式:
【化３】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OHおよびO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、組成物と
を含む、キット。
【公表番号】特表２０１３−５１４２６４（Ｐ２０１３−５１４２６４Ａ）
【公表日】平成２５年４月２５日（２０１３．４．２５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１２−５２８１３８（Ｐ２０１２−５２８１３８）
【出願日】平成２１年１２月１８日（２００９．１２．１８）
【国際出願番号】ＰＣＴ／ＪＰ２００９／０７１７３５
【国際公開番号】ＷＯ２０１１／０７４１４３
【国際公開日】平成２３年６月２３日（２０１１．６．２３）
【出願人】（３９１０２３９３２）ロレアル (950)
【Ｆターム（参考）】
【公表日】平成２５年４月２５日（２０１３．４．２５）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年１２月１８日（２００９．１２．１８）
【国際出願番号】ＰＣＴ／ＪＰ２００９／０７１７３５
【国際公開番号】ＷＯ２０１１／０７４１４３
【国際公開日】平成２３年６月２３日（２０１１．６．２３）
【出願人】（３９１０２３９３２）ロレアル (950)
【Ｆターム（参考）】
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