説明

ケラチン繊維を加熱するためのデバイス、対応する方法及び対応するキット

【課題】ケラチン繊維を加熱するためのデバイス、対応する方法及び対応するキットを提供すること。
【解決手段】本発明は、
ケラチン繊維に張力を掛ける段階、次いで
ケラチンのジスルフィド結合を還元するために、該ケラチン繊維に、還元性組成物を適用する段階、次いで場合によりリンス操作を経た後に、
該ケラチン繊維を、700〜1,400nmなる範囲の波長域内にある波長の光を含む赤外輻射光に暴露することにより、該ケラチン繊維を加熱する段階、
前記ジスルフィド結合を再生する目的で、該ケラチン繊維に酸化性組成物を適用することにより酸化して固定する段階を含む、
ケラチン繊維を処理するための方法、
該方法を実施するためのケラチン繊維の加熱装置、及び
ケラチン繊維の加熱装置とケラチン繊維の処理組成物を含むキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン繊維を加熱するためのデバイス及び対応する加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトケラチン繊維に適用される様々な処理がある。これらの処理は、該繊維の外観を変えるという目的をもつものであり得る。該繊維の色彩を変更することのできる方法の例として、該繊維を染色(酸化染色又は直接染色)する方法及び該繊維を漂白する方法を挙げることができる。該繊維の形状の変更を可能とする方法の例としては、パーマネントウエーブ掛け方法及び縮毛矯正又は縮毛平滑化方法を挙げることができ、これらの方法においては、例えば該繊維と、水酸化物を含む、極めて強力なアルカリ性組成物とを接触させて、ランチオニン形成(lanthionization)により、該繊維のジスルフィドブリッジの変換を可能とする。これらの処理は、また該ケラチン繊維のクリーニング、該ケラチン繊維の保護又は保存、若しくは該繊維の化粧学的諸特性を改善するという目的を持つこともでき、例えばコンディショニングトリートメント又は紫外輻射光に対する防御処理を含むことができる。
さらに、これら様々な化粧学的処理に際して、ケラチン繊維を加熱するためのデバイス、例えばヘアドライヤー、ヘアアイロン又は加熱ロールを使用することは公知である。
【0003】
上記様々な化粧学的処理の中で、該繊維の形状における持続性の高い変更は、最も十分に発展を遂げた用途の一つである。長期に及ぶヘアスタイルの維持、カール掛けに係る、毛髪の形態付与の有効性及び該繊維に及ぼす影響(特に、該繊維の脆性化又は劣化に係る)は、この型の処理、及び特に還元剤を用いた処理(パーマネントウエーブ掛け及び平滑化製品)又は強力なアルカリ性薬剤(縮毛矯正製品)を用いた処理に関する、主な判断基準である。これらの製品に関連する方法が、とりわけ該製品の有効性を高めるために開発されている。ケラチン繊維の処理を改善する方法の公知の例は、加熱パーマ掛けである。
従来のコールドパーマ掛け方法と比較して、加熱式パーマ掛けは、該パーマのカールに関する有効性の改善及びこのヘアスタイルの長期に渡る持続性という、主な利点を示す。しかし、該ケラチン繊維が比較的高い温度(90-110℃)まで加熱された場合及び該加熱期間が比較的長い(該加熱段階に対して平均して20〜30分間)場合には、該ケラチン繊維は、ユーザーをして、このような方法の反復的な利用、あるいはまたこの方法と染髪又は漂白等の他の処理との組合せによる利用を思い止まらせる、重大な劣化を被ることになる。
【0004】
毛髪を加熱するための遠赤外輻射光の利用については、EP 1 661 481、JP 2006/087628、EP 1 579 782又はJP 10108719から公知である。また、近赤外輻射光の利用及び該近赤外輻射光により改善することのできる処理組成物の使用も、文献US 2003/091602から公知である。
しかし、上記の製品及び方法は、その処理日においてのみ正確な性能をもたらすに過ぎない。さらに、例えば以下に列挙するような、ユーザーの期待とは相容れない多くの欠点がある:
・特に反復的な適用における、又は酸化染色等の他の処理との組合せにおける、該ケラチン繊維の高レベルでの劣化;
・限定的な条件下(ブロー乾燥中の機械的な張力の印加、反復的なシャンプー洗浄処理操作、光に対する暴露)での、不十分な経時的な持続性;
・化粧学的な状態に係る有益な役割の欠如、即ち加熱の際に、該ケラチン繊維に対して予め適用された処理組成物がもたらす効果の改善の欠如。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、ケラチン繊維の処理の性能、特に経時的な持続性及び該処理の有効性を高め、しかも該繊維の劣化を制限することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明により達成され、本発明の主題は、ケラチン繊維、特に毛髪を処理するための方法であり、該方法においては、該ケラチン繊維を、近赤外領域の輻射光、及び場合により中赤外及び/又は遠赤外領域における輻射光に暴露する。
特に、該近赤外輻射光は、700〜1,400nmなる範囲及び好ましくは750〜1,400nmなる範囲の波長域にある波長をもつ光を含む。該中赤外輻射光は、1,400〜15,000nmなる範囲内の波長域にある波長をもつ光を含み、また該遠赤外輻射光は、15,000nm〜1mmなる範囲内の波長域にある波長をもつ光を含む。
従って、本発明の処理方法では、700〜1,400nmなる範囲及び好ましくは750〜1,400nmなる範囲の波長域にある波長をもつ光を含む赤外輻射光に、該ケラチン繊維を暴露する。この赤外輻射光は、付随的に1,400nm〜1mmなる範囲、好ましくは1,400〜25,000nmなる範囲及びより好ましくは1,400〜15,000nmなる範囲内の波長域にある波長の光を含む。
【0007】
本発明の主題は、同様に上記本発明の方法を実施するための、ケラチン繊維、特に毛髪を加熱するためのデバイスであり、該デバイスは、1又はそれ以上の赤外輻射光のエミッターを含み、ここで該赤外輻射光は、700〜1,400nmなる範囲、好ましくは750〜1,400nmなる範囲の波長域にある波長をもつ光、及び15,000nm〜1mmなる範囲、好ましくは15,000〜25,000nmなる範囲の波長域にある波長をもつ光を含む。
本発明は、また以下のような要素を含む、キットにも係る:
・本発明による、ケラチン繊維を加熱するための、1又はそれ以上のデバイス;及び
・ケラチン繊維を処理するための1又はそれ以上の組成物。
該ケラチン繊維を処理するための組成物は、直接染色組成物、酸化染色組成物、パーマネントウエーブ掛け用の還元性組成物、パーマネントウエーブ掛け用の酸化性組成物、漂白組成物、コンディショナー等のコンディショニング用組成物、例えば洗流し型又は放置型のケア製品、シャンプー等のクリーニング組成物、スタイリング用組成物又は紫外輻射光に対する防御用の組成物から選択することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に見られるような数値範囲の境界値は、特に述べない限り、該範囲内に含まれるものであることに注意すべきである。
さらに、「ケラチン繊維を加熱する」とは、処理中の該繊維の温度を高めることを意味するものと理解すべきである。この加熱は、場合により該繊維に対して以前に適用された処理組成物の、部分的又は完全な蒸発をもたらす可能性があり、即ち該ケラチン繊維の部分的又は完全な乾燥をもたらす可能性がある。
該近赤外輻射光の使用は、低温においてさえ、特に、該近赤外輻射光によって、毛髪内部を効果的に加熱することにより、該ケラチン繊維の加熱期間を実質的に減じることを可能とする。これは、中又は遠赤外輻射光と比較して、近赤外輻射光が、該毛髪内部における、より一層の深部にまで透過し、結果として単に該毛髪の表面だけでなく、その内部でも作用することを可能とするからである。
【0009】
特に、該近赤外輻射光の使用は、低温(即ち、25〜80℃なる範囲、好ましくは25〜60℃なる範囲の温度)においてさえ、とりわけ迅速な加熱を可能とし、しかも特に過度に高い温度、即ち80℃を越える、あるいはさらに60℃を越える温度による、付随的な損傷を生じることなしに、該毛髪の形状付与に対して持続する変形を施すことを可能とする。
本発明の処理方法を実施する際に使用される、該赤外輻射光は、好ましくは700〜1,400nmなる波長範囲、好ましくは750〜1,400nmなる波長範囲内の波長に位置する第一の極大強度を示す。これらの波長範囲は、近赤外域に属する。該赤外輻射光におけるこの第一の極大強度の存在は、該近赤外輻射光が、上記の如き諸効果を、該全体としての赤外輻射光に付与するのに十分な量で存在することを示している。特に、この第一の極大強度を、該近赤外輻射光による該ケラチン繊維の効果的な加熱が、上記加熱法において支配的なものとなるように選択することができる。従って、該赤外輻射光は、1,400nm〜1mmなる範囲、好ましくは1,400〜25,000nmなる範囲及びより好ましくは1,400〜15,000nmなる波長範囲内にある波長の光を含まない可能性がある。あるいはまた、該赤外輻射光は、中及び/又は遠赤外領域における輻射光、即ち1,400nm〜1mmなる範囲の波長をもつ光を含むことができるが、該赤外輻射光は、この波長範囲内において極大強度を示さない。
【0010】
該赤外輻射光は、また1,400nm〜1mmなる範囲、好ましくは1,400〜25,000nmなる範囲及びより好ましくは1,400〜15,000nmなる波長範囲内にある波長に位置する、1又はそれ以上の他の極大強度を示すことができる。1,400nm〜1mmなる範囲の該波長域は、上記の如く、中及び遠赤外輻射光に相当する。この波長範囲における、少なくとも一つの第二の極大の存在は、上記加熱段階が、単に近赤外輻射光によってのみ行われるものでないことを示している。また、中及び/又は遠赤外輻射光も、特に表面効果によって、該加熱法に関与している。この又はこれらの追加の極大強度の存在も、該中及び/又は遠赤外輻射光が、単に該近赤外輻射光放出の結果であるのではなく、該赤外輻射光内に意図的に存在するものであることを示している。
この場合、該1又はそれ以上の付随的な極大強度の強さは、上記第一の極大強度よりも低いものであり得る。
【0011】
一態様によれば、該赤外輻射光は、700〜1,400nmなる範囲、好ましくは750〜1,400nmなる範囲の波長をもつ輻射光、及び1,400〜15,000nm1mmなる範囲、好ましくは1,400〜3,000nmなる範囲の波長をもつ輻射光を含む。本態様において、該近赤外輻射光は、中赤外輻射光と組合されている。
もう一つの態様によれば、該赤外輻射光は、700〜1,400nmなる範囲、好ましくは750〜1,400nmなる範囲の波長をもつ輻射光、及び15,000nm〜1mmなる範囲、好ましくは15,000〜25,000nmなる範囲の波長をもつ輻射光を含む。本態様において、該近赤外輻射光は、遠赤外輻射光と組合されている。
上記した1,400nm〜1mmなる範囲、好ましくは1,400〜25,000nmなる範囲内の波長域にある輻射光の強度は、該赤外輻射光強度の0〜60%なる範囲、好ましくは10%〜40%なる範囲に相当する値であり得る。該近赤外輻射光のこの強度は、好ましくは上記中及び/又は遠赤外輻射光の強度よりも高くなるように選択される。しかし、該近赤外輻射光の波長範囲が、該中及び遠赤外輻射光の波長範囲に比して極めて狭い限りにおいて、該中及び遠赤外輻射光の強度の和は、場合により該近赤外輻射光の輻射光強度よりも大きくてもよい。
【0012】
一態様において、上記加熱デバイスは、700〜1,400nmなる波長範囲、好ましくは750〜1,400nmなる波長範囲にある赤外輻射光を放出する第一の放出手段、及び15,000nm〜1mmなる波長範囲、好ましくは15,000〜25,000nmなる波長範囲にある赤外輻射光を放出する第二の放出手段を含むことができる。特に、該加熱デバイスは、一方で近赤外輻射光、及び他方で遠赤外輻射光の放出を可能とする、2つの手段を含む。従って、全体としての赤外輻射光は、夫々該対応する2つの手段の放出波長範囲内に位置する、2つの極大強度を示すものであり得る。さらに、この別々の2つの手段の使用は、簡単な方法で、特にこれら2つの手段に対する電力供給量を変更することによって、即ちこれら2つの手段の輻射光強度を変更することによって、該全輻射光における近赤外輻射光と遠赤外輻射光との間の相対的な割合を変えることを可能とする。従って、ケラチン繊維に対する損傷を制限しつつ、上記した所定の効果を得るために、これら異なる型の赤外輻射光の割合を調節することが可能となる。
該加熱デバイスは、赤外ランプ、ヘアドライヤー、加熱式の櫛、加熱ブラシ、ヘアアイロン、スタイリングフードドライヤー又は加熱ロールとして与えることができる。
【0013】
本発明によるこのデバイスは、また予め定められた期間に渡る、該エミッターへの電力供給を可能とする、プログラム可能なタイマーを含むこともできる。特に、該予め定められた期間は、該エミッターの熱的慣性(thermal inertia)に依存する。このタイマーは、該赤外輻射光に暴露する期間の決定、及びその結果として該加熱方法の有効性の決定を可能とする。しかし、該デバイスは、極めて異なる熱的慣性を示す放出手段を含むことができる。即ち、一つの手段は、赤外輻射光の放出を開始するために、ある一定の期間を要し、一方他方の手段は、同一の電力供給に伴って、より迅速に赤外輻射光を放出するであろう。同様に、該方法の終了時点において、一つの手段は、最早赤外輻射光を放出しなくなるまでに、ある一定の期間を要するが、他方の手段は、赤外輻射光の放出を即座に停止するであろう。該デバイスが近赤外輻射光及び遠赤外輻射光を放出する場合、該タイマーは、場合によっては独立した方法で、これら様々な型の輻射光を調節し、結果として該繊維を、所定の期間に渡り、該所定の赤外輻射光に暴露することを可能とする。
【0014】
一態様によれば、該タイマーは、また該デバイスの該エミッターを調節して、該ケラチン繊維を先ず近赤外輻射光に、次いで遠赤外輻射光に、あるいはこれとは逆の順序で暴露するようにすることも可能である。従って、これら2つの型の赤外輻射光の作用を分断することができ、また該ケラチン繊維を、これら2つの型の赤外輻射光に、異なる期間に渡り暴露することができる。
該赤外輻射光の強度を調節して、該ケラチン繊維の温度を25〜80℃なる範囲、好ましくは25〜60℃なる範囲とすることができる。従って、本発明は、毛髪の温度を制限し、かつ結果として該毛髪の脆性化又は劣化を制限しつつ、該毛髪の加熱を可能とする。
本発明の方法は、該繊維の加熱前、加熱中及び/又はその後に、1又はそれ以上の処理組成物を、該繊維に適用する工程を含むことができる。特に、本発明による、該繊維を赤外輻射光で加熱する段階の使用は、また、特に該組成物の該繊維への透過性を強め、あるいは該組成物の特性の活性化を可能とすることにより、該処理組成物の有効性の改善を可能とする。
【0015】
該処理組成物は、直接染色組成物、酸化染色組成物、パーマネントウエーブ掛け用の還元性組成物、パーマネントウエーブ掛け用の酸化性組成物、漂白組成物、コンディショナー等のコンディショニング用組成物、例えば洗流し型又は放置型のケア製品、シャンプー等のクリーニング組成物、スタイリング用組成物又は紫外輻射光に対する防御用の組成物から選択することができる。
本発明の方法は、また以下のような段階を含むこともできる:
a) 該ケラチン繊維に張力を掛ける段階、
b) 次いで、ケラチンのジスルフィド結合を還元するために、該ケラチン繊維に、還元性組成物を適用する段階、次いで場合によりリンス操作を経た後に、
c) 該ケラチン繊維を、700〜1,400nmなる範囲、好ましくは750〜1,400nmなる範囲の波長域内にある波長の光、及び場合により1,400nm〜1mmなる範囲、好ましくは1,400〜25,000nmなる範囲及びより好ましくは1,400〜15,000nmなる範囲の波長域にある波長をもつ光を含む、赤外輻射光に暴露することにより、該ケラチン繊維を加熱する段階;
d) 次いで、該ジスルフィド結合を再生するために、該ケラチン繊維に酸化性組成物を適用することにより酸化して固定する段階。
【0016】
パーマネントウエーブ掛けに関する本発明のこの例示的態様は、該ケラチン繊維の、輻射光に対する暴露温度を制限しつつ、毛髪の形状付与に関するカール掛けの有効性における改善を可能とする。
好ましくは、該繊維を、1〜45分間、より好ましくは10〜30分間に渡り加熱する。
本発明は、また本発明によるケラチン繊維を加熱するための、1又はそれ以上のデバイス、及び1又はそれ以上のケラチン繊維を処理するための組成物を含むキットにも係る。この又はこれらの組成物は、直接染色組成物、酸化染色組成物、パーマネントウエーブ掛け用の還元性組成物、パーマネントウエーブ掛け用の酸化性組成物、漂白用組成物、コンディショナー等のコンディショニング用組成物、例えば洗流し型又は放置型のケア製品、シャンプー等のクリーニング組成物、スタイリング用組成物又は紫外輻射光に対する防御用の組成物から選択することができる。
【0017】
該組成物は、様々な形状、例えばローション、クリーム、ジェル又はケラチン繊維に適用するのに適した任意の他の形状で与えることができる。
該組成物は、場合により適当な適用手段、例えば細いブラシを初めとするブラシ、又はスポンジをも備えた、別々の区画、容器又はデバイス内に収容される。また、該組成物は、噴射剤の存在下で、エーロゾル容器内に、加圧下に充填することもでき、またフォームを形成することも可能である。
【0018】
以下の例は、本発明を例示するのに役立つが、本発明を限定するものではない。
例示的態様
例1〜4
以下のような組成物を製造した(含有量は活性物質の百分率で表されている):
組成物(i) (還元性組成物)
【0019】
【表1】

【0020】
組成物(ii) (酸化性組成物)
【0021】
【表2】

【0022】
例1(本発明)
上記組成物(i)を、径1.7cmのパーマネントウエーブ掛けロール上に予め巻付けた、2.5gの日本人型天然毛髪の房に、15分間に渡り適用した。所定の放置期間の経過後、該毛髪をリンスした。
該毛髪を、引続き、出力500Wを有し、1,200nmなる波長に極大強度を持ち、3.2 W/(cm2.sr.μm)なる強度を持つ赤外ランプ(ウシオ(Ushio)社から入手したQIR 100V-500W/D)により放出される輻射光に、30分間暴露した。このランプは、近赤外から遠赤外に及ぶ広い赤外線スペクトルを与え、近赤外域に極大強度を持つ。この輻射光の強度を、該毛髪の温度が50℃を越えないように調節した。
次いで、上記組成物(ii)を、該毛髪の房に10分間に渡り適用した。所定の放置期間の経過後、該毛髪を上記パーマネントウエーブ掛けロールから取り出し、リンスし、かつ乾燥させた。
【0023】
例2(比較例)
上記組成物(i)を、径1.7cmのパーマネントウエーブ掛けロール上に予め巻付けた、2.5gの日本人型天然毛髪の房に、15分間に渡り適用した。所定の放置期間の経過後、該毛髪をリンスし、次いで上記組成物(ii)を10分間に渡り適用した。次いで、該毛髪を上記パーマネントウエーブ掛けロールから取外し、リンスし、かつ乾燥させた。
例3(比較例)
上記組成物(i)を、2.5gの日本人型天然毛髪の房に、15分間に渡り適用した。所定の放置期間の経過後、該毛髪をリンスし、次いで径1.7cmのパーマネントウエーブ掛けロール上に巻付けた。
次いで、該ヘアロールを、90℃にて30分間加熱した(オーヒロ(Oohiro)社から入手できるディジタルパームデバイス(Digital Perm device) ODIS-2モデル)。
該加熱段階の後、上記組成物(ii)を10分間に渡り適用した。次いで、該毛髪を上記パーマネントウエーブ掛けロールから取外し、リンスし、かつ乾燥させた。
【0024】
例4(比較例)
上記組成物(i)を、2.5gの日本人型天然毛髪の房に、15分間に渡り適用した。所定の放置期間の経過後、該毛髪をリンスし、次いで径1.7cmのパーマネントウエーブ掛けロール上に巻付けた。
次いで、該ヘアロールを、50℃にて30分間加熱した(オーヒロ(Oohiro)社から入手できるディジタルパームデバイス(Digital Perm device) ODIS-2モデル)。50℃にて該ロールを加熱した場合には、該毛髪を乾燥するのに、60分間を越える乾燥期間を要したことに注目すべきである。
該加熱段階の後、上記組成物(ii)を10分間に渡り適用した。次いで、該毛髪を上記パーマネントウエーブ掛けロールから取外し、リンスし、かつ乾燥させた。
【0025】
該パーマネントウエーブの評価
該カールの維持に関するテストを、上記例1〜4のパーマ掛けした毛髪について行った。特に、該毛髪の房を、相対湿度100%にて、5時間に渡り張力印加の下に、縮れの無い状態に維持した。該毛髪のカール維持性を、該テスト前後の該毛髪の形状を比較することにより評価した。
該毛髪に及ぼす上記パーマ掛け方法の影響を評価するために、反復的な適用(3回のパーマネントウエーブ掛け)後のカール形成の有効性をも測定した。
得られた結果を、以下の表に与える:
【0026】
【表3】

【0027】
例5〜8
以下のような組成物を製造した(含有量は活性物質の百分率で表されている):
組成物(iii) (還元性組成物)
【0028】
【表4】

【0029】
組成物(iv) (還元性組成物)
【0030】
【表5】

【0031】
これら例に関連して、日本人型の天然の毛髪を、市販の毛髪漂白製品[ロレアル(L'Oreal)社から入手できるプラチフィズコンパクト(PlatifizTM Compact)]を用いて漂白した。この漂白は、40℃にて30分間を要した。
例5(本発明)
上記組成物(iii)を、径1.7cmのパーマネントウエーブ掛けロール上に予め巻付けた、漂白された日本人型毛髪の房1gに、15分間に渡り適用した。所定の放置期間の経過後、該毛髪をリンスした。
次いで、該毛髪を、赤外ランプ(ウシオ(Ushio)社から入手できる、出力500Wで、1,200nmにおいて極大強度を持ち、かつ3.2 W/(cm2.sr.μm)なる強度を持つQIR 100V-500W/D)によって放出される輻射光に、30分間に渡り暴露した。該輻射光の強度を、該毛髪の温度が50℃を越えないように調節した。
引き続き、上記組成物(ii)を、該毛髪に10分間に渡り適用した。所定の放置期間の経過後、該毛髪を上記パーマネントウエーブ掛けロールから取外し、リンスし、かつ乾燥させた。
【0032】
例6(比較例)
上記組成物(iii)を、径1.7cmのパーマネントウエーブ掛けロール上に予め巻付けた、漂白された日本人型毛髪の房1gに、15分間に渡り適用した。所定の放置期間の経過後、該毛髪をリンスし、次いで上記組成物(ii)を、該毛髪に10分間に渡り適用した。所定の放置期間の経過後、該毛髪を上記パーマネントウエーブ掛けロールから取外し、再度リンスし、かつ乾燥させた。
例7(本発明)
上記組成物(iv)を、径1.7cmのパーマネントウエーブ掛けロール上に予め巻付けた、漂白された日本人型毛髪の房1gに、15分間に渡り適用した。所定の放置期間の経過後、該毛髪をリンスした。
次いで、該毛髪を、赤外ランプ(ウシオ(Ushio)社から入手できる、出力500Wで、1,200nmなる波長において極大強度を持ち、かつ3.2 W/(cm2.sr.μm)なる強度を持つQIR 100V-500W/D)によって放出される輻射光に、30分間に渡り暴露した。該輻射光の強度を、該毛髪の温度が50℃を越えないように調節した。
引き続き、上記組成物(ii)を、該毛髪に10分間に渡り適用した。所定の放置期間の経過後、該毛髪を上記パーマネントウエーブ掛けロールから取外し、リンスし、かつ乾燥させた。
【0033】
例8(比較例)
上記組成物(iv)を、径1.7cmのパーマネントウエーブ掛けロール上に予め巻付けた、漂白された日本人型毛髪の房1gに、15分間に渡り適用した。所定の放置期間の経過後、該毛髪をリンスし、次いで上記組成物(ii)を、該毛髪に10分間に渡り適用した。所定の放置期間の経過後、該毛髪を上記パーマネントウエーブ掛けロールから取外し、再度リンスし、かつ乾燥させた。カールの程度は、低いものであった。
パーマネントウエーブ掛けの評価
該カールの維持に関するテストを、上記例5〜8のパーマ掛けした毛髪について行った。
得られた結果を以下の表に与える:
【0034】
【表6】

【0035】
例9
以下のような組成物を製造した(含有量は活性物質の百分率で表されている):
【0036】
【表7】

【0037】
この組成物を、径1.7cmのパーマネントウエーブ掛けロール上に予め巻付けた、漂白された日本人型毛髪の房1gに、15分間に渡り適用した。その放置期間中に、該毛髪を、赤外ランプ(ウシオ(Ushio)社から入手できる、出力500Wで、1,200nmなる波長において極大強度を持ち、かつ3.2W/(cm2.sr.μm)なる強度を持つQIR 100V-500W/D)によって放出される輻射光に暴露した。
また、この同一の組成物を、漂白された日本人型毛髪の房1gに、15分間に渡り適用したが、赤外輻射光の照射は行わなかった。
所定の放置期間の経過後、該毛髪をリンスし、次いで上記組成物(ii)を10分間に渡り適用した。次いで、該毛髪を、該パーマネントウエーブ掛けロールから取外し、リンスし、かつ乾燥させた。
この近赤外域に極大強度を持つ輻射光に毛髪を暴露した場合、このカール形成の有効性は、該毛髪を赤外輻射光に暴露しなかった場合よりも良好であることが分かった。
例10
以下のような組成物を製造した(含有量は活性物質の百分率で表されている):
【0038】
【表8】

【0039】
この組成物を、質量基準で、20容量の酸化性溶液と混合し、白色人種型毛髪(90%の白髪)の房1gに、30分間に渡り適用した。この放置期間中に、該毛髪を、赤外ランプ(ウシオ(Ushio)社から入手できる、出力500Wで、1,200nmなる波長において極大強度を持ち、かつ3.2W/(cm2.sr.μm)なる強度を持つQIR 100V-500W/D)によって放出される輻射光に暴露した。
また、この同一の組成物を、白色人種型毛髪(90%の白髪)の房1gに、30分間に渡り適用したが、赤外輻射光による照射は行わなかった。
所定の放置期間の経過後、該毛髪をリンスし、かつ乾燥させた。
この近赤外域に極大強度を持つ輻射光に毛髪を暴露した場合、該毛髪の色合いは、該毛髪を赤外輻射光に暴露しなかった場合よりも、一層濃い緑色を示すことが分かった。
例11
以下のような組成物を製造した(含有量は活性物質の百分率で表されている):
【0040】
【表9】

【0041】
この組成物を、質量基準で、20容量の酸化性溶液と混合し、白色人種型毛髪(90%の白髪)の房1gに、30分間に渡り適用した。この放置期間中に、該毛髪を、赤外ランプ(ウシオ(Ushio)社から入手できる、出力500Wで、1,200nmなる波長において極大強度を持ち、かつ3.2W/(cm2.sr.μm)なる強度を持つQIR 100V-500W/D)によって放出される輻射光に暴露した。
また、この同一の組成物を、白色人種型毛髪(90%の白髪)の房1gに、30分間に渡り適用したが、赤外輻射光による照射は行わなかった。
所定の放置期間の経過後、該毛髪をリンスし、かつ乾燥させた。
この近赤外域に極大強度を持つ輻射光に毛髪を暴露した場合、該毛髪の色合いは、該毛髪を赤外輻射光に暴露しなかった場合よりも、一層深い赤銅色を示すことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・ケラチン繊維、特に毛髪に張力を掛ける段階、次いで
・ケラチンのジスルフィド結合を還元するために、該ケラチン繊維に、還元性組成物を適用する段階、次いで、場合によりリンス操作を経た後に、
・700〜1,400nmなる範囲、好ましくは750〜1,400nmなる範囲の波長域内にある波長の光を含む赤外輻射光に暴露することにより、該ケラチン繊維を加熱する段階;次いで
・前記ジスルフィド結合を再生するために、該ケラチン繊維に酸化性組成物を適用することにより、これを酸化して固定する段階
を含むことを特徴とする、ケラチン繊維、特に毛髪の処理方法。
【請求項2】
前記赤外輻射光が、700〜1,400nmなる範囲、好ましくは750〜1,400nmなる範囲の波長域内にある波長において、最大強度を呈する、請求項1記載の処理方法。
【請求項3】
前記赤外輻射光が、また、1,400nm〜1mmなる範囲、好ましくは1,400〜25,000nmなる範囲及びより好ましくは1,400〜15,000nmなる範囲内の波長域にある波長の光を含む、請求項1又は2記載の処理方法。
【請求項4】
前記赤外輻射光が、1,400nm〜1mmなる範囲、好ましくは1,400〜25,000nmなる範囲及びより好ましくは1,400〜15,000nmなる範囲内の波長域にある波長において、1又はそれ以上の最大強度を呈する、請求項4記載の処理方法。
【請求項5】
前記1,400nm〜1mmなる範囲、好ましくは1,400〜25,000nmなる範囲の波長域内の前記輻射光の強度が、前記赤外輻射光強度の0〜60%なる範囲、好ましくは10%〜40%なる範囲に相当する、請求項1〜4の何れか1項に記載の処理方法。
【請求項6】
前記ケラチン繊維の温度が、25〜80℃なる範囲、好ましくは25〜60℃なる範囲となるように、前記デバイスの前記赤外輻射光強度を調節する、請求項1〜5の何れか1項に記載の処理方法。
【請求項7】
前記繊維を、1〜45分間、好ましくは10〜30分間に渡り加熱する、請求項1〜6の何れか1項に記載の処理方法。
【請求項8】
1又はそれ以上の、赤外輻射光のエミッターを含む、ケラチン繊維、特に毛髪を加熱するためのデバイスの、請求項1〜7の何れか1項に記載の処理方法を実施するための使用であって、該赤外輻射光が、700〜1,400nmなる範囲、好ましくは750〜1,400nmなる範囲の波長をもつ輻射光、及び15,000nm〜1mmなる範囲、好ましくは15,000〜25,000nmなる範囲の波長をもつ輻射光を含むことを特徴とする、前記デバイスの使用。
【請求項9】
前記デバイスが、赤外ランプ、ヘアドライヤー、加熱式の櫛、加熱ブラシ、ヘアアイロン、スタイリングフードドライヤー又は加熱ロールの形態である、請求項8記載のデバイスの使用。
【請求項10】
・1又はそれ以上の赤外輻射光のエミッターを含む、ケラチン繊維を加熱するための1又はそれ以上のデバイス、ここで該赤外輻射光は、700〜1,400nmなる範囲、好ましくは750〜1,400nmなる範囲の波長をもつ輻射光、及び15,000nm〜1mmなる範囲、好ましくは15,000〜25,000nmなる範囲の波長をもつ輻射光を含み;及び
・パーマネントウエーブ掛け用の1又はそれ以上の還元性組成物及びパーマネントウエーブ掛け用の1又はそれ以上の酸化性組成物、
を含むことを特徴とするキット。

【公開番号】特開2010−174015(P2010−174015A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−34059(P2010−34059)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】