説明

ケーキ類

【課題】 ソフト感や口溶けなどの食感が良く、更にボリュームの大きなケーキ類を作業性良く得る。
【解決手段】 小麦粉100質量部に対し、(A)ジアシルグリセロールを20質量部以上含有し、更に(B)酵素処理された卵黄又は全卵を含有するケーキ類。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーキ類用油脂組成物、並びに該油脂組成物を含有するケーキ類、及び該油脂組成物を用いたケーキ類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小麦粉、卵、油脂等を主成分とするケーキ類においては、食感を向上させる技術として、一般的にはα化澱粉を用いる方法(特許文献1、2)、多糖類からなる増粘剤を用いる方法(特許文献3)等が提案されている。しかし、前者においてはソフト感はあるものの口溶け感が低下し、後者においてもケーキ生地調製中に増粘剤自身が吸水・凝集し、分散効率が低下することによりやはり口溶け感が低下する等の問題がある。
【0003】
一方、ジアシルグリセロールを含有する油脂を油相に用いた水中油型乳化油脂組成物を生地に添加することにより、ソフト感やしっとり感を向上させ、臭気を抑制させる技術が提案されている(特許文献4)。これは、微細乳化された安定化な乳化物を得ることが目的であり、油脂が生地中に均一分散される効果による。
また、トリアシルグリセロールを高含有する油脂の場合、酵素処理した卵黄又は全卵を生地に添加することにより、ソフト感と口溶けを向上させる技術も提案されている。例えば、ホスホリパーゼで分解率を5〜60%、又は60%以上とした卵黄又は全卵を生地に添加する方法が挙げられる(特許文献5、6)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−224550号公報
【特許文献2】特開平9−224551号公報
【特許文献3】特開2002−291396号公報
【特許文献4】特開平7−289143号公報
【特許文献5】特開昭63−258528号公報
【特許文献6】特開2003−325140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これら従来の技術は、ソフト感や口溶けの食感の向上にはそれなりの効果が得られているものの、ジアシルグリセロール(DAG)を用いる場合、所定の生地比重を出すために長時間を要する欠点があり、トリアシルグリセロール(TAG)を用いる場合、ボリュームが十分でない欠点があったため、ケーキとして要求される外観の良さと作業性を同時に満足するという点では十分とはいえなかった。
従って、本発明の目的は、ソフト感や口溶けなどの食感が良好で、かつボリュームの大きく,かつ,特にDAGの場合に作業性に優れたケーキを得ることができるケーキ用油脂組成物、並びに該ケーキ用油脂組成物含有するケーキ、及び該ケーキの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成すべく検討した結果、一定量以上のジアシルグリセロールと、酵素処理した卵黄又は全卵を含有したケーキ類とすることにより、ソフト感や口溶けなどの食感を向上させ、またケーキ類のボリュームを増大させ、外観が向上すると共に食感がソフトになるという相乗効果も得られることを見い出した。
【0007】
すなわち、本発明は、小麦粉100質量部に対し、(A)ジアシルグリセロールを20質量部以上含有し、更に(B)酵素処理された卵黄又は全卵を含有するケーキ類を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明品のケーキ類とすることにより、ソフト感や口溶けなどの食感が良く、更にボリュームの大きなケーキ類を作業性良く得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に用いるジアシルグリセロールは、小麦粉100質量部に対して20質量部以上含有することが必要であるが、更に30〜60質量部、特に40〜55質量部含有することが、生地の乳化安定性、ソフトで口溶けの良い食感、ケーキボリュームを増大させる点および作業性の点から好ましい。ジアシルグリセロールの他に、一部トリアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、遊離脂肪酸等を含有しても良い。ジアシルグリセロールは、ジアシルグリセロールを高含有する油脂として配合するのが,生地の乳化安定性、ソフトで口溶けの良い食感、ケーキボリュームを増大させる点および作業性の点から好ましい。
【0010】
本発明に用いる酵素処理卵黄は、生、凍結、粉末、加塩、加糖等任意の形態の卵黄を酵素処理したものである。また卵白を含んだ全卵の形態であってもよい。酵素処理卵黄の含有量は、乳化安定性、ソフトで口溶けの良い食感、ケーキボリューム、風味向上の点から、液状卵黄純分換算で小麦粉100質量部に対して80〜140質量部であるのが好ましく、更に90〜130質量部、特に100〜120質量部であるのが好ましい。
【0011】
また、卵黄の酵素処理に用いる酵素としては、エステラーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼが好ましく、リパーゼ、ホスホリパーゼがより好ましく、ホスホリパーゼが特に好ましい。ホスホリパーゼの中でも、ホスホリパーゼA、すなわちホスホリパーゼA1及びA2が好ましく、特にホスホリパーゼA2が好ましい。
【0012】
本発明においては、酵素処理によるリン脂質の分解率は、特に限定するものではないが、酵素処理された卵黄のうち、卵黄の全リン脂質に対するリゾリン脂質の質量比率(以下「リゾ比率」と記載する)がリン量基準で50質量%以上であることが好ましく、更に60〜100質量%、特に80〜95質量%とすることが、乳化安定性、ソフトで口溶けの良い食感、ケーキボリュームを増大させる点から好ましい。リゾリン脂質は、上述のように卵黄由来であることが好ましいが、大豆由来のものを用いることもでき、また卵黄由来のものと大豆由来のものを併用することもできる。
【0013】
酵素処理条件は、卵黄の全部に酵素処理卵黄を用いる場合、リゾ比率が15%以上となるような条件を適宜選択すればよい。具体的には、酵素添加量は、酵素活性が10000IU/mLの場合、卵黄に対して0.0001〜0.1質量%、特に0.001〜0.01質量%が好ましい。反応温度は20〜60℃、特に30〜55℃が好ましい。反応時間は1〜30時間、特に5〜25時間が好ましい。また卵黄の一部に酵素処理卵黄を用いる場合、酵素未処理卵黄と酵素処理卵黄の合計のリゾ比率が上記範囲となるように酵素処理条件を選択すればよい。かかる酵素処理は、各原料を混合して乳化処理する以前の段階で行うことが好ましい。
【0014】
本発明のケーキ類においては、ジアシルグリセロール、及び酵素処理された卵黄又は全卵を含有するケーキ類用の油脂組成物を予め調製し、これを用いてケーキ類を製造することが、乳化安定性、工業的生産性の点から好ましい。
【0015】
ケーキ類用油脂組成物中のジアシルグリセロール含有量は10質量%以上含有することが好ましく、更に20〜50質量%、特に25〜45質量%含有することが、乳化安定性、ソフトで口溶けの良い食感、ケーキボリュームを増大させる点及び作業性の点から好ましい。ジアシルグリセロールは、ジアシルグリセロールを高含有する油脂として配合するのが工業的生産性の点から好ましい。油脂中には、ジアシルグリセロールの他に、一部トリアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、遊離脂肪酸等を含有しても良い。本油脂組成物は,ジアシルグリセロールを高含有する油脂と酵素処理卵黄の卵黄純分によって規定される。
【0016】
油脂中のジアシルグリセロールの含有量は、15〜95質量%であることが好ましく、35〜95質量%であることがより好ましく、更に50〜95質量%、特に75〜93質量%、殊更80〜90質量%であることが、乳化安定性、ソフトで口溶けの良い食感、ケーキボリュームを増大させる点及び作業性の点から好ましい。
【0017】
本発明で使用されるジアシルグリセロールは、その構成脂肪酸の80〜100質量%が不飽和脂肪酸であることが好ましく、90〜100質量%であることがより好ましく、更に93〜100質量%、特に93〜98質量%、殊更94〜98質量%であるのが脂肪酸の摂取バランス、ソフトで口溶けの良い食感、ケーキボリュームを増大させる点及び作業性の点から好ましい。ここで、この不飽和脂肪酸の炭素数は14〜24、更に16〜22であるのが好ましい。
【0018】
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸のうち、トランス不飽和脂肪酸の含有量は、0〜4質量%、好ましくは0.1〜3.5質量%、更に0.2〜3質量%であるのが風味、生理効果、ソフトで口溶けの良い食感の点及び作業性の点で好ましい。
【0019】
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸のうち、共役不飽和脂肪酸の含有量は1質量%以下であるが、好ましくは0.01〜0.9質量%、更に0.1〜0.8質量%、特に0.2〜0.75質量%、殊更0.3〜0.7質量%であるのが風味、生理効果、ソフトで口溶けの良い食感の点及び作業性の点で好ましい。
【0020】
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸中、炭素数12以下の脂肪酸の含有量は、風味の点で5質量%以下であるのが好ましく、更に0〜2質量%、特に0〜1質量%、実質的に含まないのが最も好ましい。残余の構成脂肪酸は炭素数14〜24、特に16〜22であるのが好ましい。
【0021】
また、生理効果、風味、ソフトで口溶けの良い食感、ケーキボリュームの点から、ジアシルグリセロール中の1,3−ジアシルグリセロールの割合が50質量%以上、より好ましくは52〜100質量%、更に54〜90質量%、特に56〜80質量%であるジアシルグリセロールを用いるのが好ましい。
【0022】
油脂中のトリアシルグリセロールは、4.9〜84.9質量%、更に4.9〜64.9質量%、更に6.9〜39.9質量%、特に6.9〜29.9質量%、殊更9.8〜19.8質量%含有するのが乳化安定性、風味、生理効果、ソフトで口溶けの良い食感、ケーキボリューム、作業性、油脂としての工業的生産性の点で好ましい。トリアシルグリセロールの構成脂肪酸はジグリセリドと同じ構成脂肪酸であることが、油脂としての工業的生産性の点で好ましい。
【0023】
油脂中のモノアシルグリセロールは、0.1〜5質量%、更に0.1〜2質量%、更に0.1〜1.5質量%、特に0.1〜1.3質量%、殊更0.2〜1質量%含有するのが乳化安定性、風味、ソフトで口溶けの良い食感、ケーキボリューム、作業性、油脂としての工業的生産性等の点で好ましい。モノアシルグリセロールの構成脂肪酸はジアシルグリセロールと同じ構成脂肪酸であることが、油脂としての工業的生産性の点で好ましい。
【0024】
油脂中の遊離脂肪酸(塩)は、5質量%以下に低減されるのが好ましく、より好ましくは0〜3.5質量%、更に0〜2質量%、特に0.01〜1質量%、殊更0.05〜0.5質量%含有するのが乳化安定性、風味、油脂としての工業的生産性、ケーキ焼成中の発煙防止の点で好ましい。
【0025】
ジアシルグリセロール高含有油脂の油脂起源としては、植物性、動物性油脂のいずれでもよい。具体的な原料としては、菜種油、ひまわり油、とうもろこし油、大豆油、米油、紅花油、綿実油、牛脂等を挙げることができる。またこれらの油脂を分別、混合したもの、水素添加や、エステル交換反応などにより脂肪酸組成を調整したものも原料として利用できるが、水素添加していないものであることが、油脂を構成する全脂肪酸中のトランス酸含量を低減し、風味が良好となる等の点から好ましい。
【0026】
ジアシルグリセロール高含有油脂は、油脂とグリセリンとのエステル交換反応、又は油脂を加水分解して製造した脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応等により得ることができる。油脂を加水分解する場合には、高圧分解法、及び/又は酵素分解法により行うことができるが、トランス酸含量を低減し、風味が良好となる等の点から原料油脂の一部又は全部を熱履歴の低い酵素法により加水分解することが好ましい。エステル交換反応、又はエステル化反応は、アルカリ触媒等を用いた化学反応でも行うことができるが、1,3−位選択的リパーゼ等を用いて酵素的に温和な条件で反応を行うのが前記と同様の点で優れており好ましい。
【0027】
本発明のケーキ類を製造する際に、ケーキ類用油脂組成物として配合する場合には、小麦粉100質量部に対して120〜200質量部配合することが好ましく、更に130〜190質量部、特に150〜180質量部配合することが乳化安定性、ソフトで口溶けの良い食感、ケーキボリュームを増大させる点から好ましい。ケーキ類の製造方法としては、一般に行われているオールインミックス法、別立て法、共立て法等が挙げられる。
【0028】
本発明において、ケーキ類とは、スポンジケーキ、バターケーキ、シフォンケーキ、ロールケーキ、スイスロール、ブッセ、バウムクーヘン、パウンドケーキ、チーズケーキ、スナックケーキ、蒸しケーキ等をいう。また、本発明は、生地に焼成等の加熱工程を施すことにより得られる饅頭、ドーナッツ、ホットケーキ、どら焼き、今川焼き等の菓子類にも適用することができ、本発明におけるケーキ類はこれらも包含する。
【0029】
ケーキ類用油脂組成物を用いてケーキ類を製造する場合には、その他の配合物として、ケーキ類に通常用いられる保湿剤、乳化剤、糖類、澱粉類、アミノ酸、蛋白質、食塩、保存料、pH調整剤、色素、香料等を配合しても良い。また、これらを本発明のケーキ類用油脂組成物中に予め配合しておいても良い。
【0030】
保湿剤としては、蛋白質、増粘多糖類等が挙げられる。蛋白質としては、水に溶解した時、粘性を呈する物質であれば良く、乳蛋白質及び植物性蛋白質等が挙げられる。保湿剤の配合量は、小麦粉100質量部に対して0.001〜2質量部が好ましく、更に0.05〜1.0質量部、特に0.15〜0.8質量部、殊更0.20〜0.5質量部とすることが、充分な老化防止効果を有し、かつソフトで口溶けの良い食感を有する点から好ましい。
【0031】
乳蛋白質としては、ナトリウムカゼイン、カルシウムカゼイン、レンネットカゼイン、ミルクカゼイン、ミルクホエー、ラクトアルブミン、ラクトグロブリン等が挙げられる。植物性蛋白質としては、大豆蛋白質、小麦蛋白質等が挙げられる。増粘多糖類としては、ジェランガム、カラヤガム、タマリンド種子ガム、タラガム、グルコマンナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、プルラン、グアーガム、イオタカラギナン、HMペクチン、LMペクチン、トラガントガム、結晶性セルロース、PGA(アンギン酸プロピレングリコールエステル)、SSHC(水溶性大豆多糖類)、ガティガム、メチルセルロース、サイリウムシード及びカシヤガム等が挙げられる。
【0032】
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、レシチン誘導体、ポリソルベート類等が挙げられる。乳化剤の配合量は、小麦粉100質量部に対して0.33〜12.8質量部、更に1〜10質量部、特に2〜8質量部とすることが、乳化安定性、充分な老化防止効果を有し、かつソフトで口溶けの良い食感を有する点から好ましい。
【0033】
糖類としては、砂糖、水飴、麦芽糖、ブドウ糖、異性化糖、乳糖、オリゴ糖、果糖、ソルビット等が挙げられ、小麦粉100質量部に対して80〜300質量部配合することが好ましい。更に必要に応じてベーキングパウダー、水等を配合しても良い。
【実施例】
【0034】
参考例1〔酵素処理卵黄の調製〕
食塩濃度10%の卵黄液850g(卵黄純分765g)、水135g及び食塩15gを混合し、反応温度である50℃にて十分予備加熱した。次いで、酵素活性10,000IU/mLのホスホリパーゼA2を10%加塩卵黄液に対して0.02質量%添加し、50℃にて20時間反応を行い、酵素処理卵黄を得た。リゾ比率は90%であった。尚、リゾ比率は以下の方法により求めた。まず反応物をクロロホルム/メタノール(3:1)混合溶媒により繰り返し抽出を行い、反応物中の全脂質を得た。得られた脂質混合物を薄層クロマトグラフィーに供した。一次元=クロロホルム:メタノール:水(65:25:49)、二次元=ブタノール:酢酸:水(60:20:20)による二次元薄層クロマトグラフィーにより分画した。分画した各種のリン脂質を分取し、リン脂質中のリン量を市販の測定キット(過マンガン酸塩灰化法、リン脂質テストワコー、和光純薬工業株式会社製)を用いて測定した。リゾ比率(%)は、(リゾリン脂質画分中のリン質量/全リン脂質中のリン質量)×100により求めた。
【0035】
参考例2〔未処理卵黄の調製〕
食塩濃度10%の卵黄液850g(卵黄純分765g)、水135g及び食塩15gを混合したものを比較対象として酵素処理卵黄とした。
【0036】
実施例1
(1)ケーキ生地の調製
表1に示した組成にてケーキ生地を調製した。5コートミキサーに起泡性油脂(マリッシュゴールド、花王(株)、ケーキ用起泡性油脂)、ジアシルグリセロール高含有油脂、酵素処理卵黄、上白糖、水を秤量し添加した。なお生地温度を調製するため、卵は冷蔵庫(5℃)より取りだした直後のものを使用した。上記混合物を低速にて30秒、次いで中速にて2分撹拌した。ここに薄力粉(バイオレット、日清製粉(株))、ベーキングパウダー(アイコクベーキングパウダー特青缶、大宮糧食工業(株))を加えて、低速にて30秒撹拌後、中速にて生地比重が0.6になるまで撹拌し、ケーキ生地を調製した。
【0037】
(2)ケーキの焼成
上記により得られたケーキ生地を、型に180g流し込み、180℃のオーブンにて35分間焼成した。
【0038】
比較例1
実施例1におけるジアシルグリセロール高含有油脂に替えてトリアシルグリセロールを主体とする通常油脂(日清サラダ油)を使用し、酵素処理卵黄に替えて酵素未処理卵黄を使用した以外は、実施例1と同様にケーキ生地を調製、焼成した。
【0039】
比較例2
実施例1におけるジアシルグリセロール高含有油脂に替えてトリアシルグリセロールを主体とする通常油脂(日清サラダ油)を使用した以外は、実施例1と同様にケーキ生地を調製、焼成した。
【0040】
比較例3
実施例1における酵素処理卵黄に替えて酵素未処理卵黄を使用した以外は、実施例1と同様にケーキ生地を調製、焼成した。
【0041】
〔作業性の評価〕
ケーキ生地調整時の作業性は、生地調製時最終段階で中速にて生地比重が0.6になるまで撹拌する時間を測定することによって評価した。攪拌時間が短ければ作業に時間がかからず効率が良いことから、攪拌時間が短いほど作業性に優れていると判断した。結果を表1に示した。
【0042】
〔ケーキの評価〕
ケーキ焼成後、25℃にて3日保存後に、専門パネラー2名により、(1)ソフト感、(2)口溶け等の食感について、下記基準にて官能評価を行った。また、レーザー体積装置VM−150(ASTEX社)を用い、予め重量を測定したケーキの体積および高さを測定し、得られた体積を重量で割ることによりケーキの比容積を算出した。結果を表1に示した。
【0043】
〔官能評価基準〕
(1)ソフト感
4:非常にソフト感があり大変好ましい
3:ソフト感があり好ましい
2:ややソフト感がある
1:ソフト感がなく好ましくない
(2)口溶け感
4:非常に口溶けが良く全くネトつかない
3:口溶けが良くネトつかない
2:やや口溶けが良い
1:口溶けが悪くネトつく
【0044】
【表1】

【0045】
表1の結果から、酵素処理卵黄を用いることにより、ケーキのソフト感、口溶け感等の食感が良くなるが、ケーキのボリュームは特に十分なものではなかった。(比較例2)。また、ジアシルグリセロールを用いることにより、やはりケーキのソフト感、口溶け感等の食感及びボリュームが向上するが、作業性が低下していた(比較例1及び3)。一方、ジアシルグリセロールと酵素処理卵黄を併用することにより、ケーキのソフト感、口溶け感等の食感が良くなると共に、ケーキのボリュームも向上し、ソフト感及び口溶けにも好影響を与え、かつ外観も良好となり、さらに作業性も向上することが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉100質量部に対し、(A)ジアシルグリセロールを20質量部以上含有し、更に(B)酵素処理された卵黄又は全卵を含有するケーキ類。
【請求項2】
次の成分(A)及び(B):
(A)ジアシルグリセロールを10質量%以上
(B)酵素処理された卵黄又は全卵
を含有するケーキ類用油脂組成物。
【請求項3】
酵素処理された卵黄又は全卵がエステラーゼ、リパーゼ及びホスホリパーゼから選ばれる酵素により処理された卵黄又は全卵である請求項1記載のケーキ類又は請求項2記載の油脂組成物。
【請求項4】
請求項2記載の油脂組成物を含有するケーキ類。
【請求項5】
請求項2記載のケーキ類用油脂組成物を生地に添加するケーキの製造方法。

【公開番号】特開2007−68459(P2007−68459A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258718(P2005−258718)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】