説明

ケースの防水構造

【課題】 ケースの接合面への水や洗剤や石けんの浸入を抑制するケースの防水構造を提供する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂からなる下ケース7と、下ケース7の周縁に形成される環状の溝11と、溝11と連通するとともに電極13が挿入されるように下ケース7に形成される貫通孔12と、貫通孔12から一部が露出するように溝11内に配設される発熱体17、18と、熱可塑性樹脂からなる上ケース6と、上ケース6に形成され溝11内に嵌る凸部16とを備え、貫通孔12内に電極13を挿入し発熱体17、18に通電して溝11の底と凸部16の端部とを溶着するケースの防水構造において、下ケース7に溝11を備えた第1壁部10と、上ケース6に凸部16を備えた第2壁部15と、を設け、第1壁部10の第2の壁部15との対向面でかつ溝11と凸部16との外側に凹凸嵌合部21を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂からなる上下ケースの接合面に抵抗発熱体を挟み込み、この抵抗発熱体に電圧を印可して発熱させることにより、接合面の樹脂を溶融して溶着するケースの防水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、浴室リモコンなどのように、熱可塑性樹脂からなるケース内の防水性を向上させるために、前記ケースを構成する上下ケースの接合面に抵抗発熱体を挟み込み、この抵抗発熱体に電圧を印可して発熱させることにより、接合面の樹脂を溶融して溶着するケースの防水構造があった(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−31751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、浴室リモコンなどは、浴室内に設置されるために、日常的に、石けんが付着したり、温水シャワーなどの温水を浴びる状況である。このため、前記ケースの接合面に水のみならず石けんが、浸入する場合があり、さらに、浸入した水や洗剤や石けんなどによって、前記ケースの接合面部分にひびが、発生する虞があった。
【0005】
そこで、本発明は、前述した問題点に着目し、ケースの接合面への水や洗剤や石けんの浸入を抑制するケースの防水構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するため、熱可塑性樹脂からなる下ケースと、前記下ケースの周縁に形成される環状の溝と、前記溝と連通するとともに電極が挿入されるように前記下ケースに形成される貫通孔と、前記貫通孔から一部が露出するように前記溝内に配設される発熱体と、熱可塑性樹脂からなる上ケースと、前記上ケースに形成され前記溝内に嵌る凸部とを備え、前記貫通孔内に前記電極を挿入し前記発熱体に通電して前記溝の底と前記凸部の端部とを溶着するケースの防水構造において、前記下ケースに前記溝を備えた第1壁部と、前記上ケースに前記凸部を備えた第2壁部と、を設け、前記第1壁部の前記第2の壁部との対向面でかつ前記溝と前記凸部との外側に凹凸嵌合部を設けたものである。
【0007】
また、前記凹凸嵌合部は、前記下ケースの第1壁部の対向面に、前記上ケースの第2壁部の対向面側に突出した突出部と、前記上ケースの第2壁部の対向面に前記突出部が嵌る凹部と、からなるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所期の目的を達成でき、ケースの接合面への水や洗剤や石けんの浸入を抑制するケースの防水構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態の正面図。
【図2】同実施形態のカバーを外した状態の正面図。
【図3】同実施形態の蓋体を外した状態の正面図。
【図4】同実施形態の下ケースの正面図。
【図5】同実施形態の発熱体の正面図。
【図6】図2中A−A線の断面図。
【図7】図2中B−B線の断面図。
【図8】本発明の第2実施形態の断面図。
【図9】同実施形態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1実施形態を浴室内に配置される風呂釜用のリモコン1を用いて説明する。リモコン1は、表示部2と、スイッチなどの操作部3と、これら表示部2と操作部3及び図示しない回路基板などを収納するケース4とを備えている。なお、本実施形態では、ケース4は、カバー5で覆われており、このカバー5は、表示部2と操作部3とケース4の一部が露出する開口5aを備えている。
【0011】
カバー5で覆われるケース4は、上下ケース6、7で構成されている。上下ケース6、7は、熱可塑性樹脂で形成されている。ケース4は、貫通した孔からなる取り付け孔8を備えており、この取り付け孔8によって、浴室などの壁面に固定される。
【0012】
下ケース7は、底板9の周縁に第1壁部10を備えている。この第1壁部10は、切れ目なく環状に形成されている。この第1壁部10には、溝11が設けられている。この溝11も第1壁部10と同様に、切れ目なく環状に形成されている。第1壁部10と溝11は、各取り付け孔8を取り囲むように形成されている。特に、溝11は、取り付け孔8より下ケース7の中心側を通るように設けられている。また、下ケース7には、貫通孔12が設けられている。この貫通孔12は、溝11と連通しており、電極13が、挿入されるものである。そして、この貫通孔12から溝11内に、水などが浸入しないように、貫通孔12の図3中の上側に溝11が、広がっており、貫通孔12の図3中の下側の溝11は、袋小路となっている。
【0013】
下ケース7の溝11内には、2つの発熱体17、18が配設されている。2つの発熱体17、18は、針金状で、それぞれの端部が、貫通孔12から露出している。そして、発熱体17は、コの字形状であり、発熱体18は、主要部がコの字形状で、その端部が、取り付け孔8より下ケース7の中心側を通り、取り付け孔8を取り囲み、発熱体18の端部が、図3中の下側を向くように形成されている。
【0014】
上ケース6は、表示部2や操作部3を備えた表板14の周縁に第2壁部15を備えている。この第2壁部15は、切れ目なく環状に形成されている。この第2壁部15には、凸部16が設けられている。この凸部16も第2壁部15と同様に、切れ目なく環状に形成されている。この凸部16は、溝11内に嵌るものである。
【0015】
上ケース6と下ケース7とは、発熱体17、18を配設した溝11内に、凸部16を嵌め込んだ状態で、貫通孔12内に電極13を挿入し、発熱体17、18に通電して上下ケース6、7の接合面を構成する溝11の底と凸部16の端部とを溶着するものである。
【0016】
また、下ケース7の第1壁部10と上ケース6の第2の壁部15との対向面19、20で、かつ溝11と凸部16との外側に凹凸嵌合部21が、設けられている。
【0017】
凹凸嵌合部21は、下ケース7の第1壁部10の対向面19に、上ケース6の第2壁部15の対向面20側に突出した突出部22と、上ケース6の第2壁部15の対向面20に突出部22が嵌る凹部23と、からなるものである。
【0018】
突出部22は、環状で切れ目なく形成されており、凹部23も、突出部22と同様に、環状で切れ目なく形成されている。このような凹凸嵌合部21を設けたことによって、上下ケース6、7の対向面19、20の沿面距離を伸ばすことができ、上下ケース6、7の溝11の底と凸部16の端部とからなる接合面に水のみならず洗剤や石けんの浸入を防止することができ、ひいては、前記接合面部分でのひびの発生を防止することができる。
【0019】
なお、本実施形態では、突出部22、凹部23の断面形状は、矩形であったが、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、図8、9で示す第2実施形態のように、凹凸嵌合部24を構成する突出部25、凹部26の断面形状が、三角形であってもよい。本実施形態の形状であっても、上下ケース6、7の対向面19、20の沿面距離を伸ばすことができ、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、熱可塑性樹脂からなる上下ケースの接合面に抵抗発熱体を挟み込み、この抵抗発熱体に電圧を印可して発熱させることにより、接合面の樹脂を溶融して溶着するケースにおいて、特に、防水が必要な箇所に配設されるケースに利用可能である。
【符号の説明】
【0021】
6 上ケース
7 下ケース
10 第1壁部
11 溝
12 貫通孔
13 電極
15 第2壁部
16 凸部
17、18 発熱体
21、24 凹凸嵌合部
22、25 突出部
23、26 凹部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる下ケースと、前記下ケースの周縁に形成される環状の溝と、前記溝と連通するとともに電極が挿入されるように前記下ケースに形成される貫通孔と、前記貫通孔から一部が露出するように前記溝内に配設される発熱体と、熱可塑性樹脂からなる上ケースと、前記上ケースに形成され前記溝内に嵌る凸部とを備え、前記貫通孔内に前記電極を挿入し前記発熱体に通電して前記溝の底と前記凸部の端部とを溶着するケースの防水構造において、前記下ケースに前記溝を備えた第1壁部と、前記上ケースに前記凸部を備えた第2壁部と、を設け、前記第1壁部の前記第2の壁部との対向面でかつ前記溝と前記凸部との外側に凹凸嵌合部を設けたことを特徴とするケースの防水構造。
【請求項2】
前記凹凸嵌合部は、前記下ケースの第1壁部の対向面に、前記上ケースの第2壁部の対向面側に突出した突出部と、前記上ケースの第2壁部の対向面に前記突出部が嵌る凹部と、からなることを特徴とする請求項1に記載のケースの防水構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−9510(P2011−9510A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152227(P2009−152227)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】