ケーブルの被覆剥ぎ取り工具
【課題】周方向の切込みと螺旋状の切込みとが行え、構造が簡単で部品点数を少なくして製作コストの低減を図ることのできるケーブルの被覆剥ぎ取り工具を提供する。
【解決手段】ケーブル受け部3と支軸保持部4とアーム部5とで略C形の工具本体2が形成され、ケーブル受け部3には、ケーブル12が、その軸方向を受けローラ13の回転軸13aと平行にして配置され、ケーブル12は常に受けローラ13,13で周方向の2箇所を支持され、回転刃取付用ベース6には、回転刃ユニット11が、その回転刃10の向きを、ケーブル12の軸方向と直交する直交位置と、ケーブル12の軸方向に対し所定傾斜角度で斜交する斜交位置とに位置変更可能で着脱自在に取り付けられ、回転刃ユニット11とケーブル受け部3との間にケーブル12を挟持して工具本体2を回転させることにより、回転刃ユニット11の回転刃10がケーブル12のシース12fを切り込む。
【解決手段】ケーブル受け部3と支軸保持部4とアーム部5とで略C形の工具本体2が形成され、ケーブル受け部3には、ケーブル12が、その軸方向を受けローラ13の回転軸13aと平行にして配置され、ケーブル12は常に受けローラ13,13で周方向の2箇所を支持され、回転刃取付用ベース6には、回転刃ユニット11が、その回転刃10の向きを、ケーブル12の軸方向と直交する直交位置と、ケーブル12の軸方向に対し所定傾斜角度で斜交する斜交位置とに位置変更可能で着脱自在に取り付けられ、回転刃ユニット11とケーブル受け部3との間にケーブル12を挟持して工具本体2を回転させることにより、回転刃ユニット11の回転刃10がケーブル12のシース12fを切り込む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧電力用ケーブルの端末処理に際してケーブルのシース(外側保護被覆)や外部半導電層等の被覆を切り込んで剥ぎ取るために使用する被覆剥ぎ取り工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧電力を輸送するための配電ケーブルには、架橋ポリエチレン絶縁ケーブル(CVケーブル)をはじめとするプラスチック系ケーブルが最も広く利用されている。図11は、比較的単純な内部構造を有する単心ケーブル12の断面図で、このケーブル12は、中心側から順に、銅線を束ねた導体12a、内部半導電層12b、架橋ポリエチレン等からなる絶縁体12c、外部半導電層12g、軟銅テープ12d、紙テープ12e、ポリ塩化ビニルや耐熱ポリエチレン等からなるシース(外側保護被膜)12fを同心状に積層した構造となっている。
【0003】
この種の高圧電力用ケーブル(以下、単に「ケーブル」と称する。)の布設工事においては、ケーブルの端末を接続する際に、電工ナイフ等の刃物でシース12fを周方向及び延長軸方向に切り込んで剥ぎ取り、露出した紙テープ12e及び軟銅テープ12dの一部をめくり、更に外部半導電層12g及び絶縁体12cの一部を剥ぎ取る必要がある。このとき、軟銅テープ12dの表面が刃物で傷つけられると、高圧電流によって損傷箇所に局部的な発熱を生じ、ケーブル12が消失したり、接地端と非接地端との間に生じる大きな電位差が損傷箇所のトラッキング劣化を招いて絶縁破壊に至るといった重大事故を招く。そのため、ケーブル12の端末処理を行う作業員には技能検定が義務づけられているが、強靱な素材からなシース12fを精度良く切開するのは、技能を有する作業者にとっても困難な作業である。
【0004】
ケーブルの布設現場においてシースなどの被覆を剥ぎ取るのに使用される工具として、特許公報等の公知文献を具体的に挙げることはできないが、従来の被覆剥ぎ取り工具は、グリップ部とアーム部とケーブル受け部とが一体に形成された工具本体を有し、ケーブル受け部は略溝形に形成され、その溝内に2組の受けローラが夫々の回転軸を互いに平行にし、適宜距離だけ離隔して配置され、グリップ部には回転刃支持体が、その支持軸部をグリップ部内に挿通された状態で進退自在に保持され、ケーブル受け部と回転刃支持体との間にケーブルが挟持され、回転刃支持体に取り付けた回転刃がケーブルの被覆を切り込むように構成されたもので、回転刃支持体は、支持軸部の軸回りに90度回動自在に保持され、回転刃を受けローラの回転軸と直交させてケーブルの被覆を軸方向に切り込む軸方向切込み姿勢と、回転刃を受けローラの回転軸と平行にしてケーブルの被覆を周方向に切り込む周方向切込み姿勢とに切り替えできるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の被覆剥ぎ取り工具では、回転刃支持体を周方向切込み姿勢にセットし、グリップ部を持って工具本体をケーブルの軸回りに回転させることにより、ケーブルの被覆をケーブル端から所要長さのところで周方向に切込み作業を行い、その後に回転刃支持体を軸方向切込み姿勢に切り替えて、工具本体をケーブルの軸方向に移動させることにより、先に切り込んだ周方向切込み箇所からケーブル端に亙って被覆を周方向に間隔をおいて軸方向に複数本直線的に切り込み、こうして切り込んだ周方向切込み線と軸方向切込み線とで囲まれる被覆部分をペンチ等によって剥ぎ取るようになっているが、そのように周方向切込み線と軸方向切込み線とで囲まれる被覆部分が複数区画に及ぶため、切込み後の剥ぎ取り作業に非常に手間がかかるという問題があった。またこの工具では、回転刃支持体を姿勢変更するのに、ノブをグリップ部に押し込んで回転刃支持体を回転させるクラッチ機構を必要とすることから、グリップ部の内部構造が複雑で、工具全体として部品点数が多くなり、製作コストが高くつくという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑み、回転刃による切込み後のケーブルの被覆の剥ぎ取り作業を容易にするために回転刃がケーブルの被覆に対し周方向の切込みと螺旋状の切込みとを行うように構成すると共に、構造が簡単で部品点数をできるだけ少なくして製作コストの低減を図ることのできるケーブルの被覆剥ぎ取り工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明のケーブルの被覆剥ぎ取り工具は、ケーブル受け部3と支軸保持部4とアーム部5とで略C形の工具本体2が形成され、
ケーブル受け部3は略溝形に形成されて、その溝内に一対の受けローラ13,13が、夫々の回転軸13aを互いに平行にして所要距離だけ離隔した状態で配置され、
支軸保持部4には、回転刃取付用ベース6が、その支軸部7を螺挿させることによって進退自在に保持され、支軸部7の基端部には回転操作用のグリップ部8が設けられ、
ケーブル受け部3には、ケーブル12が、その軸方向を受けローラ13の回転軸13aと平行するように配置され、ケーブル12は常に、その周方向に離隔して配置された一対の受けローラ13,13によって周方向の2箇所を支持され、
回転刃取付用ベース6には、回転刃支持体9及びこれに軸支される回転刃10からなる回転刃ユニット11が、その回転刃10の向きを、ケーブル受け部3に配置されるケーブル12の軸方向と直交する直交位置と、そのケーブル12の軸方向に対し所定傾斜角度で斜交する斜交位置とに位置変更可能で且つ着脱自在に取り付けられ、
回転刃ユニット11とケーブル受け部3との間にケーブル12を挟持した状態で工具本体2を回転させることにより、回転刃ユニット11の回転刃10がケーブル12の被覆(例えばシース12f)を切り込むようになっていて、回転刃ユニット11を前記直交位置にして回転刃取付用ベース6に取り付けた時は被覆を周方向に切り込み、回転刃ユニットを前記斜交位置にして回転刃取付用ベース6に取り付けた時は被覆を螺旋状に切り込むようにしてなることを特徴とする。
【0008】
請求項2は、請求項1に記載のケーブルの被覆剥ぎ取り工具において、回転刃ユニット11は、回転刃10の切込み深さを異にする複数種類の回転刃ユニット11a,11b,11c,11dからなることを特徴とする。
【0009】
請求項3は、請求項1又は2に記載のケーブルの被覆剥ぎ取り工具において、回転刃ユニット11は、回転刃取付用ベース6上に載置される回転刃支持体9の基板9aの左右両端部から立ち上がった両側板9b,9b間に2つのゲージリング20,20を軸支すると共に、両ゲージリング20,20間にゲージリング20より径大の回転刃10を同軸に挟持したもので、基板9aの下面中心部に、回転刃取付用ベース6の支軸部7対応位置に設けられたシャフト嵌合孔16に挿脱自在に嵌合する取付シャフト15を突設すると共に、基板9aの前後対向端部には、回転刃ユニット11を回転刃取付用ベース6上で前記直交位置に位置決めするための一対の直交位置決めピン孔23,23及び前記斜交位置に位置決めするための複数対の斜交位置決めピン孔24,24、25,25を、前記取付シャフト15の直径方向両側対称位置で同じ円周上に貫設し、各一対のピン孔23,23、24,24、25,25を、前記直交位置に対応する位置にあって回転刃取付用ベース6上のシャフト嵌合孔16の直径方向両側対称位置に突設した一対のセットピン17,17に嵌合することにより、回転刃ユニット11を前記直交位置又は斜交位置に取り付けるようにしてなることを特徴とする。
【0010】
請求項4は、請求項1〜3の何れかに記載のケーブルの被覆剥ぎ取り工具において、回転刃取付用ベース6には、このベース6をケーブル受け部3に対して進退移動させる時に、工具本体2のアーム部5にスライド自在に嵌合して、ベース6を進退方向に案内する案内手段18を設けてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明によれば、ケーブル受け部3と支軸保持部4とアーム部5とで略C形の工具本体2が形成され、ケーブル受け部3が略溝形に形成されて、その溝内に一対の受けローラ13,13が夫々の回転軸13aを互いに平行にして所要距離だけ離隔した状態で配置され、支軸保持部4には、回転刃取付用ベース6がその支軸部7を螺挿させることによって進退自在に保持され、支軸部7の基端部には回転操作用のグリップ部8が設けられ、ケーブル受け部3には、ケーブル12がその軸方向を受けローラ13の回転軸13aと平行するように配置され、ケーブル12は常に受けローラ13,13によって周方向の2箇所を支持されるように構成されているから、従来のケーブルの被覆剥ぎ取り工具に比べ、ケーブル受け部3及びグリップ部8の構造を簡素化でき、それらの構成部品点数を少なくできて、製作コストの低減を図ることができる。
【0012】
また、この発明のケーブルの被覆剥ぎ取り工具1は、回転刃取付用ベース6に、回転刃支持体9及びこれに軸支される回転刃10からなる回転刃ユニット11が、その回転刃10の向きを、ケーブル受け部3に配置されるケーブル12の軸方向と直交する直交位置と、ケーブル12の軸方向に対し所定の傾斜角度で斜交する斜交位置とに位置変更可能で着脱可能に取り付けられていて、回転刃ユニット11とケーブル受け部3との間にケーブル12を挟持した状態で工具本体2を回転させることにより、回転刃ユニット11の回転刃10がケーブル12の被覆(例えばシース12f)を切り込むようにしたもので、回転刃ユニット11を前記直交位置にして回転刃取付用ベース6に取り付けた時は被覆を周方向に切り込み、回転刃ユニットを前記斜交位置にして回転刃取付用ベースに取り付けた時は被覆を螺旋状に切り込むことができるから、例えば、先に周方向の切込みを行い、その切込み線からケーブル12端に向かうように螺旋状の切込みを行って、その螺旋状に切り込んだ被覆の先端部をペンチ等で掴んで引っ張りながら剥がしていくことによって、被覆を周方向切込み線のところから一連の螺旋状剥ぎ取り片の形態で迅速且つ容易に剥ぎ取ることができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、回転刃ユニット11は、回転刃10の切込み深さを異にする複数種類の回転刃ユニット11a,11b,11c,11dからなるため、ケーブル12の被覆の厚さに応じて、適正な切込み深さの回転刃10を有する回転刃ユニット11に付け替えることができる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、回転刃ユニット11は、回転刃取付用ベース6上に載置される回転刃支持体9の基板9aの左右両端部から立ち上がった両側板9b,9b間に2つのゲージリング20,20を軸支すると共に、両ゲージリング20,20間にゲージリング20より径大の回転刃10を同軸に挟持したものであるから、回転刃10をケーブル12の被覆に食い込ませる時、ゲージリング20が被覆に接触するまで回転刃10を食い込ませることにより、ケーブル12は、ケーブル受け部3の一対受けローラ13,13と、回転刃10の両側にあるゲージリング20,20とにより挟持され、ほぼ直伸した状態で良好に保持され、適正な切込みが行える。また、回転刃ユニット11を取り付けるたり、付け替える時は、各回転刃ユニット11の取付シャフト15を回転刃取付用ベース6のシャフト嵌合孔16に嵌合し、夫々一対の直交位置決めピン孔23,23又は斜交位置決めピン孔24,24又は25,25を回転刃取付用ベース6の一対のセットピン17,17に嵌合するだけで迅速容易に行うことができる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、回転刃取付用ベース6に、工具本体2のアーム部5にスライド自在に嵌合して、ベース6を進退方向に案内する案内手段18を設けているから、ケーブル受け部3に対する支軸部7の進退移動時に支軸部7のガタつきを防止し、支軸部7をスムーズに移動できると共に、回転刃取付用ベース6の所定位置に安定良く的確に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a) は本発明の実施形態に係るケーブルの被覆剥ぎ取り工具の外観斜視図、(b) は同被覆剥ぎ取り工具の側面図である。
【図2】(a) は図1の(a) のX−X拡大断面図、(b) は図2の(a) のY−Y線断面図である。
【図3】回転刃ユニットを取り外した状態のケーブルの被覆剥ぎ取り工具の外観斜視図である。
【図4】(a) は回転刃ユニットを取り外した状態の被覆剥ぎ取り工具の側面図、(b) は回転刃ユニットを取り外した状態の、図2の(a) と同様な断面図、(c) は(a) のZ−Z線断面図である。
【図5】(a) はケーブルの被覆剥ぎ取り工具の回転刃取付用ベースに回転刃ユニットを取り付けようとする状態の斜視図、(b) は回転刃取付用ベースに回転刃ユニットを取り付け終えた状態の斜視図である。
【図6】(a) は回転刃ユニットの一部断面正面図、(b) は(a) のV−V線断面図である。
【図7】回転刃の切込み深さを異にする4種類の回転刃ユニットを例示したもので、(a-1) 〜(d-1) は各回転刃ユニットの正面図、(a-2) 〜(d-2) は側面図、(a-3) 〜(d-3) は斜視図である。
【図8】(a) は本発明に係るケーブルの被覆剥ぎ取り工具による周方向切込み作業状態を示す斜視図、(b) は同工具によるシースの螺旋切込み作業状態を示す斜視図、(c) はシースを剥ぎ取った状態を示す。
【図9】(a) は図1〜図8に例示した被覆剥ぎ取り工具よりも大形タイプの剥取工具を示す外観斜視図、(b) は同被覆剥ぎ取り工具の側面図である。
【図10】同被覆剥ぎ取り工具の一部断面図であって、図2の(a) と同様な断面図である。
【図11】ケーブルの内部構造を簡略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明すると、先ず、図1の(a) は本発明の実施形態に係るケーブルの被覆剥ぎ取り工具の外観斜視図、(b) は側面図であり、図2の(a) は図1の(a) のX−X拡大断面図、(b) は図2の(a) のY−Y線断面図であり、また図3は回転刃ユニットを取り外した状態の被覆剥ぎ取り工具の外観斜視図であり、図4の(a) は同状態の側面図、(b) は同状態の図2の(a) と同様な断面図、(c) は(a) のZ−Z線断面図である。
【0018】
このケーブルの被覆剥ぎ取り工具1は、ケーブル受け部3と支軸保持部4とアーム部5とによって略C形に一体に形成された工具本体2を有する。工具本体2の支軸保持部4には、回転刃取付用ベース6が、その支軸部7を螺挿させることによって進退自在に保持され、この支軸部7の基端部には回転操作用のグリップ部8が設けられ、回転刃取付用ベース6には、回転刃支持体9及びこれに軸支される回転刃10からなる回転刃ユニット11が、その回転刃10の向きを、ケーブル受け部3に配置されるケーブル12の軸方向と直交する直交位置と、そのケーブル12の軸方向に対し所定傾斜角度で斜交する複数の斜交位置とに位置変更可能で着脱自在に取り付けられている。
【0019】
工具本体2は、例えばアルミ合金のダイキャストによって一体形成されたものである。ケーブル受け部3は図示のように略溝形にされ、その溝開口を回転刃支持体9の側に向けている。アーム部5は、図2の(b) に示すように本体板部5aとこれの外面に突設された補強板部5bとで断面略T形に形成されている。
【0020】
ケーブル受け部3には、その溝内に、二組の受けローラ対13,13及び14,14が、夫々の回転軸13a,14aを互いに平行にして所要距離だけ離隔した状態で軸支され、そのうちの一組の受けローラ対13,13は、比較的小さい径のケーブル12に使用するもので、ローラ径が小さく、ローラ間の距離が狭くなっており、他の組の受けローラ対14,14は、比較的大きい径のケーブル12に使用するもので、ローラの径が比較的大きく、ローラ間の距離が広くなっている。
【0021】
このケーブル受け部3には、図1の(b) 及び図2の(a) に示すように、ケーブル12が、その軸方向を、受けローラ13,14の回転軸13a,14aと平行するように配置され、ケーブル12は常に、ケーブル12の周方向に離間して配置された一組の受けローラ対13,13によって周方向の2箇所を支持されるようになっている。図示のケーブル12は、径が比較的小さい場合を例示したもので、受けローラ対13,13によって支持されているが、径の大きいケーブル12の場合は、もう一組の受けローラ対14,14によって周方向の2箇所を支持される。
【0022】
しかして、ケーブル12がケーブル受け部3と回転刃ユニット11との間に挟持された状態で、回転刃ユニット11の円形状回転刃10がケーブル12の被覆(例えばシース12f)を切り込むようになっており、回転刃ユニット11を前記直交位置にして回転刃取付用ベース6に取り付けた時はケーブル12の被覆を周方向に切り込み、回転刃ユニット11を前記斜交位置にして回転刃取付用ベース6に取り付けた時は被覆を螺旋状に切り込むことになる。
【0023】
回転刃取付用ベース6は、図2の(a) 及び図4の(b) に示すように、上面6aが支軸部7の軸方向と直交する平面となるように支軸部7の上端部に固定される。即ち、回転刃取付用ベース6は、回転刃取付用ベース6の下面中央部に設けた取付孔部6bに支軸部7の上端部を嵌合させると共に、支軸部7上端部と取付孔部6b内周面との間にスプリングピン51を介挿することによって、支軸部7の上端部に取り付け固定される。
【0024】
この回転刃取付用ベース6の上面6aには、図2の(a) ,(b) 及び図5の(a) に示すように、回転刃ユニット11を取り付けるために回転刃ユニット11側に設けられた取付シャフト15が嵌合するシャフト嵌合孔16が、前記支軸部7と同軸上に形成され、また回転刃ユニット11を前記直交位置又は斜交位置に選択的に固定するための一対のセットピン17,17が、上記シャフト嵌合孔16の直径方向両側対称位置に突設されている。
【0025】
また回転刃取付用ベース6には、この回転刃取付用ベース6をケーブル受け部3に対し進退移動させる時に、工具本体2のアーム部5にスライド自在に嵌合して回転刃取付用ベース6を進退方向に案内する案内手段18が設けてある。案内手段18は、図2の(a) から分かるように、アーム部5の本体板部5aに嵌合するように回転刃取付用ベース6の後端部に形成された嵌合凹部18aと、この嵌合凹部18aがアーム部5の本体板部5aに嵌合した状態で本体板部5aの外面両端部をスライド自在に支持するL形支持片18b,18bとからなるもので、各L形支持片18bは、回転刃取付用ベース6に対しビス52で取り付けられている。この案内手段18を設けたことにより、ケーブル受け部3に対する支軸部7の進退時に支軸部7のガタつきを防止し、支軸部7をスムーズに移動できると共に、回転刃取付用ベース6の所定位置に安定良く的確に保持できる。
【0026】
支軸部7は、図1〜図4に示すように、螺軸からなるもので、工具本体2の支軸保持部4に設けてあるネジ孔4aに螺合挿通されている。この支軸部7の下端部は、図4の(b) に示すように、グリップ部8に一体的に連結固定されている。グリップ部8は、金属製の円筒状芯金26と、この芯金26に嵌着固定されたプラスチック製のグリップ本体27とからなるもので、支軸部7の下端部が、固定スリーブ28を介して円筒状芯金26の上端部に嵌合された状態でスプリングピン29により固定されている。このグリップ部8は、支軸部7をその軸周りに回転操作し、また工具本体2をケーブル12の軸周りに回転操作するためのものである。工具本体2のケーブル受け部3には、グリップ部8と対向する部位に補助把手19が突設されている。
【0027】
回転刃ユニット11は、図2、図5及び図6から分かるように、回転刃取付用ベース6の上面6に載置される回転刃支持体9の基板9aの左右両端部から立ち上がった両側板9b,9b間にボルトからなる支杆21を横架して、この支軸21に、2つのゲージリング20,20を同軸に軸支すると共に、両ゲージリング20,20間にゲージリング20より径大の回転刃10を同軸に挟持して支杆21上でゲージリング20と一体回転可能に取り付けたもので、図6の(a) に示すように、基板9aの下面中心部には、回転刃取付用ベース6の支軸部7対応位置に設けられたシャフト嵌合孔16に挿脱自在に嵌合する取付シャフト15が突設されている。また、図6の(b) に示すように、基板9aの前後対向端部には、回転刃ユニット11を回転刃取付用ベース6上で前記直交位置に位置決めするための一対の直交位置決めピン孔23,23及び前記斜交位置に位置決めするための複数対の斜交位置決めピン孔24,24、25,25が、夫々前記取付シャフト15の直径方向両側対称位置で同じ円周上に貫設され、しかして各一対のピン孔23,23、24,24、25,25を、回転刃取付用ベース6の中央部にあるシャフト嵌合孔16の直径方向両側対称位置に突設した一対のセットピン17,17に嵌合することによって、回転刃ユニット11を前記直交位置又は斜交位置に取り付けることができる。
【0028】
回転刃ユニット11は、回転刃10の切込み深さを異にし且つ同じ共通の直交位置決めピン孔23と傾斜角度の異なる2つの斜交位置決めピン孔24,25を有する複数種類、例えば図7に例示するような4種類の回転刃ユニット11a,11b,11c,11dからなるもので、各回転刃ユニットの回転刃10の径は同一であるが、各ゲージリング20の径よりは大きく、そして各ゲージリング20の径は夫々異なっている。尚、ゲージリング20は、回転刃10より小径の短円筒体で、その外周面をケーブル12に当接させることにより、回転刃10の切込み深さを一定に規制する。
【0029】
即ち、図7の(a-1) 〜(a-3) に示す回転刃ユニット11aは、ゲージリング20の直径が最も小さく、従って回転刃10の切込み深さが最も大きく、例えば2.3mmである。そして、直交位置決めピン孔23の両側にある2つの斜交位置決めピン孔24,25は、直交位置決めピン孔23との間隔が同じであるから、ケーブル12の直交面に対する回転刃10の左右傾斜角度は同一となる。このユニット11aの使用にあたって、一対の直交位置決めピン孔23,23(図6の(b) 参照)をベース6のセットピン17,17に嵌合して、ユニット11aを直交位置に取り付けた時は、ケーブル12の被覆を円周方向に切り込むことができる。また、一対の斜交位置決めピン孔24,24又は25,25をベース6のセットピン17,17に嵌合して、ユニット11aを斜交位置に取り付けた時は、ケーブル12の被覆を右傾斜又は左傾斜の螺旋状に切り込むことができる。
【0030】
(b-1) 〜(b-3) に示す回転刃ユニット11bは、ゲージリング20の径がユニット11aのゲージリング20よりも大きく、従って回転刃10の切込み深さは、ユニット11aより小さく、例えば1.9mmである。直交位置決めピン孔23の左右両側にある2つの斜交位置決めピン孔24,25については、ユニット11aのものと同じである。
【0031】
(c-1) 〜(c-3) に示す回転刃ユニット11cは、ゲージリング20の径がユニット11bのゲージリング20よりも大きく、従って回転刃10の切込み深さは、ユニット11bより小さく、例えば1.6mmである。そして直交位置決めピン孔23の両側にある2つの斜交位置決めピン孔24,25は、直交位置決めピン孔23との間隔が同じで、ケーブル12の直交面に対する回転刃10の左右傾斜角度は夫々同じであるが、その直交位置決めピン孔23との間隔は回転刃ユニット11a,11bにおける直交位置決めピン孔23と斜交位置決めピン孔24,25との間隔よりも広いため、ユニット11cを斜交位置に取り付けて、ケーブル12の被覆を螺旋状に切り込む時の、回転刃10の螺旋状切込み傾斜角度は、回転刃ユニット11a,11bのそれより大きくなり、螺旋状切込み線のピッチは広くなる。
【0032】
(d-1) 〜(d-3) に示す回転刃ユニット11dは、ゲージリング20の径がユニット11cのゲージリング20よりも大きく、従って回転刃10の切込み深さは、ユニット11cより小さく、例えば0.2mmである。また、直交位置決めピン孔23の両側にある左右の斜交位置決めピン孔24,25は、直交位置決めピン孔23との間隔が互いに異なり、右側斜交位置決めピン孔25の間隔が左側斜交位置決めピン孔24の間隔よりも広くなっており、従って斜交位置決めピン孔25を使用してユニット11dを斜交位置に取り付け、ケーブル12の被覆を螺旋状に切り込む時の、ケーブル12の直交面に対する回転刃10の螺旋状切込み傾斜角度は、反対側の斜交位置決めピン孔24を使用する場合よりも大きくなり、その螺旋状切込み線のピッチは広くなる。
【0033】
上記のように回転刃ユニット11として、回転刃10の切込み深さを異にし且つ互いに傾斜角度の異なった斜交位置決めピン孔24,25を有する複数種類の回転刃ユニット11a,11b,11c,11dが用意されているため、被覆の厚さのバラツキに応じて、適正な切込み深さの回転刃10を有する回転刃ユニット11に付け替えることができる。しかも、この付け替え作業は、図2及び図に示すように、各回転刃ユニット11(11a,11b,11c,11d)の取付シャフト15を回転刃取付用ベース6のシャフト嵌合孔16に嵌合し、夫々一対の直交位置決めピン孔23,23又は斜交位置決めピン孔24,24又は25,25を回転刃取付用ベース6の一対のセットピン17,17に嵌合するだけでよいから、迅速容易に行うことができる。
【0034】
尚、回転刃ユニット11の取付シャフト15を回転刃取付用ベース6のシャフト嵌合孔16に嵌合し、位置決めピン孔23,24,25を回転刃取付用ベース6のセットピン17に嵌合しただけでは、工具本体2を逆様にした時に取付シャフト15がシャフト嵌合孔16から抜け、位置決めピン孔23,24,25からセットピン17が抜け出して、回転刃ユニット11が回転刃取付用ベース6から脱落するおそれがあるため、それを阻止する手段を図2の(b) に示す。即ち、回転刃取付用ベース6には、シャフト嵌合孔16の孔壁面に開口する横孔33を貫設し、この横孔33にはコイルバネ34を介して球体35を、シャフト嵌合孔16に常時突出付勢するように設け、しかして図2の(b) に示すように、回転刃ユニット11の取付シャフト15を回転刃取付用ベース6のシャフト嵌合孔16に嵌合すると、球体35がバネ34に抗して横孔33内に引っ込められると同時に、バネ34の付勢力で球体35が取付シャフト15の側面を圧接して、取付シャフト15の脱落を阻止する。横孔33の入口は栓体36で塞いでいる。
【0035】
図7に示す回転刃ユニット11の実施形態では、回転刃10の切込み深さを異にし且つ傾斜角度の異なる斜交位置決めピン孔24,25を含む4種類の回転刃ユニット11a,11b,11c,11dを例示したが、回転刃10の切込み深さが異なり、直交位置決めピン孔23及び斜交位置決めピン孔は共通となるような複数種類の回転刃ユニット11を用意してもよいし、あるいは回転刃10の切込み深さを異にし且つ傾斜角度の異なる斜交位置決めピン孔24,25を有する5種類以上の回転刃ユニット11を用意することもできる。
【0036】
上記のような構造のケーブルの被覆剥ぎ取り工具1を使用して、ケーブル12のシース12fを切り込む場合の作用について説明する。
【0037】
ケーブル12のシース12fを円周方向に切り込む時は、先ず、回転刃ユニット11として、例えば図7に示すような複数種類の回転刃ユニット11a〜11dから適当なものを選んで、回転刃取付用ベース6の、ケーブル受け部3に配置されるケーブル12の軸方向と直交する直交位置に取り付ける。この直交位置に取り付ける際、回転刃ユニット11の回転刃支持体9に設けてある一対の直交位置決めピン孔23,23を回転刃取付用ベース6側の一対のセットピン17,17に嵌合する。
【0038】
こうして回転刃ユニット11を回転刃取付用ベース6の直交位置にセットした後、図8の(a) に示すように、グリップ部8を、回転刃取付用ベース6がケーブル受け部3に近づくように回転させながら締め付けて、回転刃ユニット11の回転刃10をケーブル12のシース12fに食い込ませる。この時、ゲージリング20がシース12fに接触するまで回転刃10を食い込ませることにより、ケーブル12は、ケーブル受け部3の一対の受けローラ13,13と、回転刃10の両側にあるゲージリング20,20とによって挟持され、ほぼ直伸した状態で良好に保持される。しかして、一方の手でケーブル12を掴み、他方の手でグリップ部8を持って工具本体2を1回転させることにより、シース12fが回転刃10によって周方向に切り込まれる。この際、必要に応じて、補助把手19も使用する
【0039】
上記のようにシース12fを周方向の切り込んだ後、引き続き同じ回転刃ユニット11を使用して、シース12fの螺旋状切り込みを行う。この螺旋状切り込みにあたっては、グリップ部8を緩めて、回転刃取付用ベース6をケーブル受け部3から適当に後退させた状態で、回転刃ユニット11を直交位置からケーブル12の軸方向と斜交する斜交位置に切り替える。この切り換えは、直交位置にあった一対の直交位置決めピン孔23,23を回転刃取付用ベース6のセットピン17,17から抜いて、一対の斜交位置決めピン孔24,24又は25,25に嵌合すればよい。この際、直交位置決めピン孔23の一方側の斜交位置決めピン孔24を使用する場合と、反対側の斜交位置決めピン孔25を使用する場合とでは、螺旋状切込み方向が互いに逆となるから、ここでは、先に切り込んだ周方向切込み線(図8の(a) ,(b) に31で示す)からケーブル12の端部側へ向かって螺旋状切込みを行う斜交位置決めピン孔を選択する。
【0040】
回転刃ユニット11を斜交位置にセットした後、周方向切込みの場合と同様に、回転刃取付用ベース6がケーブル受け部3に近づくようにグリップ部8を回転させて締め付け、回転刃ユニット11の回転刃10をシース12fに食い込ませた状態とする。このとき、回転刃10は、ケーブル受け部3に配置されたケーブル12の軸方向に対し斜交状態でケーブル12に食い込んでおり、このケーブル12は、周方向2箇所を支持する受けローラ13,13と、回転刃10及びその両側のゲージリング20,20とによって挟持された状態にある。かかる状態から一方の手でケーブル12を掴み、他方の手でグリップ部8を持って工具本体2を1回転させることによって、シース12fは、図8の(b) に示すように、回転刃10によって、周方向切込み線31からケーブル12の端部に向かって螺旋状に切り込まれ、その螺旋状切込み線を32で示す。この回転刃10による螺旋状切込み作用は、旋盤のねじ切りバイトによって材料に雄ねじを切る場合やねじ切りダイスによって雄ねじを切る場合の作用と同様である。この場合、シース12fに切り込まれる螺旋状切込み線を32のピッチ(工具本体2の1回転当たりに進む距離)は、ケーブル12の直交面に対する回転刃10の傾斜角度で決まり、その傾斜角度が大きいと、ピッチが大きくなり、傾斜角度が小さいと、ピッチは小さくなる。
【0041】
ケーブル12の端部までシース12fの螺旋状切込みを終えたならば、螺旋状に切り込んだシース12fの先端部をペンチ等で掴んで引っ張りながら剥がしていくことにより、シース12fを周方向切込み線31のところから一連の螺旋状剥ぎ取り片の形で簡単且つ容易に剥ぎ取ることができる。
【0042】
図1〜図5によって説明したケーブルの被覆剥ぎ取り工具1は、直径の比較的小さい、例えば14〜40mm程度のケーブル12の被覆剥ぎ取りに使用される剥取工具であるが、図9及び図10には、直径の比較的大きい、例えば40〜60mm程度のケーブル12の被覆剥ぎ取りに使用する大型の剥取工具1を示す。この大型の被覆剥ぎ取り工具1は、工具本体2のケーブル受け部3及びアーム部5の一部が若干異なるだけで、図1〜図5によって説明した前述の剥取工具1と殆ど同じ構造である。その異なるところは、工具本体2のアーム部5の上部32を外側へ湾曲することにより、ケーブル受け部3のいわゆる懐部分を広くして、径大のケーブル12を余裕をもって受け入れできるようにし、またケーブル受け部3の溝内には一対一組の受けローラ13,13を、図1〜図5に示される剥取工具1のそれよりもローラ間の距離を広くとって配設し、図9の(b) に示すように径大のケーブル12の周方向2箇所を支持するようにしている。
【0043】
以上説明した本発明に係るケーブルの被覆剥ぎ取り工具1は、ケーブル受け部3と支軸保持部4とアーム部5とで略C形の工具本体2が形成され、ケーブル受け部3が略溝形に形成されて、その溝内に一対の受けローラ13,13が、夫々の回転軸13aを互いに平行にして所要距離だけ離隔した状態で配置され、支軸保持部4には、回転刃取付用ベース6が、その支軸部7を螺挿させることによって進退自在に保持され、支軸部7の基端部には支軸部7を回転操作するグリップ部8が設けられ、ケーブル受け部3には、シース12f等の被覆を剥ぎ取るケーブル12が、その軸方向を受けローラ13の回転軸13aと平行するように配置され、ケーブル12は常に受けローラ13,13によって周方向の2箇所を支持されるように構成されているから、従来のケーブルの被覆剥ぎ取り工具に比べ、ケーブル受け部3及びグリップ部8の構造がきわめて簡素化され、それらの構成部品点数が少なくなって、製作コストの低減を図ることができる。
【0044】
特に、このケーブルの被覆剥ぎ取り工具1の大きな特徴は、回転刃取付用ベース6に、回転刃支持体9及びこれに軸支される回転刃10からなる回転刃ユニット11が、その回転刃10の向きを、ケーブル受け部3に配置されるケーブル12の軸方向と直交する直交位置と、そのケーブル12の軸方向に対し所定の傾斜角度で斜交する斜交位置とに位置変更可能で且つ着脱可能に取り付けられ、しかして回転刃ユニット11とケーブル受け部3との間にケーブル12を挟持した状態で工具本体2を回転させることにより、回転刃ユニット11の回転刃10がケーブル12の被覆を切り込むようにしたもので、回転刃ユニット11を前記直交位置にして回転刃取付用ベース6に取り付けた時はシース12f等の被覆を周方向に切り込み、回転刃ユニットを前記斜交位置にして回転刃取付用ベースに取り付けた時はシース12f等の被覆を螺旋状に切り込むようになっている。従って、先に周方向の切込みを行い、その切込み線からケーブル12端に向かうように螺旋状の切込みを行って、その螺旋状に切り込んだ被覆の先端部をペンチ等で掴んで引っ張りながら剥がしていけば、その被覆を周方向切込み線のところから一連の螺旋状剥ぎ取り片の形態で迅速且つ容易に剥ぎ取ることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 ケーブルの被覆剥ぎ取り工具
2 工具本体
3 ケーブル受け部
4 支軸保持部
5 アーム部
6 回転刃取付用ベース
7 支軸部
8 グリップ
9 回転刃支持体
10 回転刃
11 回転刃ユニット
11a〜11d 回転刃ユニット
12 ケーブル
13 受けローラ
17 セットピン
20 ゲージリング
23 直交位置決めピン孔
24,25 斜交位置決めピン孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧電力用ケーブルの端末処理に際してケーブルのシース(外側保護被覆)や外部半導電層等の被覆を切り込んで剥ぎ取るために使用する被覆剥ぎ取り工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧電力を輸送するための配電ケーブルには、架橋ポリエチレン絶縁ケーブル(CVケーブル)をはじめとするプラスチック系ケーブルが最も広く利用されている。図11は、比較的単純な内部構造を有する単心ケーブル12の断面図で、このケーブル12は、中心側から順に、銅線を束ねた導体12a、内部半導電層12b、架橋ポリエチレン等からなる絶縁体12c、外部半導電層12g、軟銅テープ12d、紙テープ12e、ポリ塩化ビニルや耐熱ポリエチレン等からなるシース(外側保護被膜)12fを同心状に積層した構造となっている。
【0003】
この種の高圧電力用ケーブル(以下、単に「ケーブル」と称する。)の布設工事においては、ケーブルの端末を接続する際に、電工ナイフ等の刃物でシース12fを周方向及び延長軸方向に切り込んで剥ぎ取り、露出した紙テープ12e及び軟銅テープ12dの一部をめくり、更に外部半導電層12g及び絶縁体12cの一部を剥ぎ取る必要がある。このとき、軟銅テープ12dの表面が刃物で傷つけられると、高圧電流によって損傷箇所に局部的な発熱を生じ、ケーブル12が消失したり、接地端と非接地端との間に生じる大きな電位差が損傷箇所のトラッキング劣化を招いて絶縁破壊に至るといった重大事故を招く。そのため、ケーブル12の端末処理を行う作業員には技能検定が義務づけられているが、強靱な素材からなシース12fを精度良く切開するのは、技能を有する作業者にとっても困難な作業である。
【0004】
ケーブルの布設現場においてシースなどの被覆を剥ぎ取るのに使用される工具として、特許公報等の公知文献を具体的に挙げることはできないが、従来の被覆剥ぎ取り工具は、グリップ部とアーム部とケーブル受け部とが一体に形成された工具本体を有し、ケーブル受け部は略溝形に形成され、その溝内に2組の受けローラが夫々の回転軸を互いに平行にし、適宜距離だけ離隔して配置され、グリップ部には回転刃支持体が、その支持軸部をグリップ部内に挿通された状態で進退自在に保持され、ケーブル受け部と回転刃支持体との間にケーブルが挟持され、回転刃支持体に取り付けた回転刃がケーブルの被覆を切り込むように構成されたもので、回転刃支持体は、支持軸部の軸回りに90度回動自在に保持され、回転刃を受けローラの回転軸と直交させてケーブルの被覆を軸方向に切り込む軸方向切込み姿勢と、回転刃を受けローラの回転軸と平行にしてケーブルの被覆を周方向に切り込む周方向切込み姿勢とに切り替えできるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の被覆剥ぎ取り工具では、回転刃支持体を周方向切込み姿勢にセットし、グリップ部を持って工具本体をケーブルの軸回りに回転させることにより、ケーブルの被覆をケーブル端から所要長さのところで周方向に切込み作業を行い、その後に回転刃支持体を軸方向切込み姿勢に切り替えて、工具本体をケーブルの軸方向に移動させることにより、先に切り込んだ周方向切込み箇所からケーブル端に亙って被覆を周方向に間隔をおいて軸方向に複数本直線的に切り込み、こうして切り込んだ周方向切込み線と軸方向切込み線とで囲まれる被覆部分をペンチ等によって剥ぎ取るようになっているが、そのように周方向切込み線と軸方向切込み線とで囲まれる被覆部分が複数区画に及ぶため、切込み後の剥ぎ取り作業に非常に手間がかかるという問題があった。またこの工具では、回転刃支持体を姿勢変更するのに、ノブをグリップ部に押し込んで回転刃支持体を回転させるクラッチ機構を必要とすることから、グリップ部の内部構造が複雑で、工具全体として部品点数が多くなり、製作コストが高くつくという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑み、回転刃による切込み後のケーブルの被覆の剥ぎ取り作業を容易にするために回転刃がケーブルの被覆に対し周方向の切込みと螺旋状の切込みとを行うように構成すると共に、構造が簡単で部品点数をできるだけ少なくして製作コストの低減を図ることのできるケーブルの被覆剥ぎ取り工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明のケーブルの被覆剥ぎ取り工具は、ケーブル受け部3と支軸保持部4とアーム部5とで略C形の工具本体2が形成され、
ケーブル受け部3は略溝形に形成されて、その溝内に一対の受けローラ13,13が、夫々の回転軸13aを互いに平行にして所要距離だけ離隔した状態で配置され、
支軸保持部4には、回転刃取付用ベース6が、その支軸部7を螺挿させることによって進退自在に保持され、支軸部7の基端部には回転操作用のグリップ部8が設けられ、
ケーブル受け部3には、ケーブル12が、その軸方向を受けローラ13の回転軸13aと平行するように配置され、ケーブル12は常に、その周方向に離隔して配置された一対の受けローラ13,13によって周方向の2箇所を支持され、
回転刃取付用ベース6には、回転刃支持体9及びこれに軸支される回転刃10からなる回転刃ユニット11が、その回転刃10の向きを、ケーブル受け部3に配置されるケーブル12の軸方向と直交する直交位置と、そのケーブル12の軸方向に対し所定傾斜角度で斜交する斜交位置とに位置変更可能で且つ着脱自在に取り付けられ、
回転刃ユニット11とケーブル受け部3との間にケーブル12を挟持した状態で工具本体2を回転させることにより、回転刃ユニット11の回転刃10がケーブル12の被覆(例えばシース12f)を切り込むようになっていて、回転刃ユニット11を前記直交位置にして回転刃取付用ベース6に取り付けた時は被覆を周方向に切り込み、回転刃ユニットを前記斜交位置にして回転刃取付用ベース6に取り付けた時は被覆を螺旋状に切り込むようにしてなることを特徴とする。
【0008】
請求項2は、請求項1に記載のケーブルの被覆剥ぎ取り工具において、回転刃ユニット11は、回転刃10の切込み深さを異にする複数種類の回転刃ユニット11a,11b,11c,11dからなることを特徴とする。
【0009】
請求項3は、請求項1又は2に記載のケーブルの被覆剥ぎ取り工具において、回転刃ユニット11は、回転刃取付用ベース6上に載置される回転刃支持体9の基板9aの左右両端部から立ち上がった両側板9b,9b間に2つのゲージリング20,20を軸支すると共に、両ゲージリング20,20間にゲージリング20より径大の回転刃10を同軸に挟持したもので、基板9aの下面中心部に、回転刃取付用ベース6の支軸部7対応位置に設けられたシャフト嵌合孔16に挿脱自在に嵌合する取付シャフト15を突設すると共に、基板9aの前後対向端部には、回転刃ユニット11を回転刃取付用ベース6上で前記直交位置に位置決めするための一対の直交位置決めピン孔23,23及び前記斜交位置に位置決めするための複数対の斜交位置決めピン孔24,24、25,25を、前記取付シャフト15の直径方向両側対称位置で同じ円周上に貫設し、各一対のピン孔23,23、24,24、25,25を、前記直交位置に対応する位置にあって回転刃取付用ベース6上のシャフト嵌合孔16の直径方向両側対称位置に突設した一対のセットピン17,17に嵌合することにより、回転刃ユニット11を前記直交位置又は斜交位置に取り付けるようにしてなることを特徴とする。
【0010】
請求項4は、請求項1〜3の何れかに記載のケーブルの被覆剥ぎ取り工具において、回転刃取付用ベース6には、このベース6をケーブル受け部3に対して進退移動させる時に、工具本体2のアーム部5にスライド自在に嵌合して、ベース6を進退方向に案内する案内手段18を設けてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明によれば、ケーブル受け部3と支軸保持部4とアーム部5とで略C形の工具本体2が形成され、ケーブル受け部3が略溝形に形成されて、その溝内に一対の受けローラ13,13が夫々の回転軸13aを互いに平行にして所要距離だけ離隔した状態で配置され、支軸保持部4には、回転刃取付用ベース6がその支軸部7を螺挿させることによって進退自在に保持され、支軸部7の基端部には回転操作用のグリップ部8が設けられ、ケーブル受け部3には、ケーブル12がその軸方向を受けローラ13の回転軸13aと平行するように配置され、ケーブル12は常に受けローラ13,13によって周方向の2箇所を支持されるように構成されているから、従来のケーブルの被覆剥ぎ取り工具に比べ、ケーブル受け部3及びグリップ部8の構造を簡素化でき、それらの構成部品点数を少なくできて、製作コストの低減を図ることができる。
【0012】
また、この発明のケーブルの被覆剥ぎ取り工具1は、回転刃取付用ベース6に、回転刃支持体9及びこれに軸支される回転刃10からなる回転刃ユニット11が、その回転刃10の向きを、ケーブル受け部3に配置されるケーブル12の軸方向と直交する直交位置と、ケーブル12の軸方向に対し所定の傾斜角度で斜交する斜交位置とに位置変更可能で着脱可能に取り付けられていて、回転刃ユニット11とケーブル受け部3との間にケーブル12を挟持した状態で工具本体2を回転させることにより、回転刃ユニット11の回転刃10がケーブル12の被覆(例えばシース12f)を切り込むようにしたもので、回転刃ユニット11を前記直交位置にして回転刃取付用ベース6に取り付けた時は被覆を周方向に切り込み、回転刃ユニットを前記斜交位置にして回転刃取付用ベースに取り付けた時は被覆を螺旋状に切り込むことができるから、例えば、先に周方向の切込みを行い、その切込み線からケーブル12端に向かうように螺旋状の切込みを行って、その螺旋状に切り込んだ被覆の先端部をペンチ等で掴んで引っ張りながら剥がしていくことによって、被覆を周方向切込み線のところから一連の螺旋状剥ぎ取り片の形態で迅速且つ容易に剥ぎ取ることができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、回転刃ユニット11は、回転刃10の切込み深さを異にする複数種類の回転刃ユニット11a,11b,11c,11dからなるため、ケーブル12の被覆の厚さに応じて、適正な切込み深さの回転刃10を有する回転刃ユニット11に付け替えることができる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、回転刃ユニット11は、回転刃取付用ベース6上に載置される回転刃支持体9の基板9aの左右両端部から立ち上がった両側板9b,9b間に2つのゲージリング20,20を軸支すると共に、両ゲージリング20,20間にゲージリング20より径大の回転刃10を同軸に挟持したものであるから、回転刃10をケーブル12の被覆に食い込ませる時、ゲージリング20が被覆に接触するまで回転刃10を食い込ませることにより、ケーブル12は、ケーブル受け部3の一対受けローラ13,13と、回転刃10の両側にあるゲージリング20,20とにより挟持され、ほぼ直伸した状態で良好に保持され、適正な切込みが行える。また、回転刃ユニット11を取り付けるたり、付け替える時は、各回転刃ユニット11の取付シャフト15を回転刃取付用ベース6のシャフト嵌合孔16に嵌合し、夫々一対の直交位置決めピン孔23,23又は斜交位置決めピン孔24,24又は25,25を回転刃取付用ベース6の一対のセットピン17,17に嵌合するだけで迅速容易に行うことができる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、回転刃取付用ベース6に、工具本体2のアーム部5にスライド自在に嵌合して、ベース6を進退方向に案内する案内手段18を設けているから、ケーブル受け部3に対する支軸部7の進退移動時に支軸部7のガタつきを防止し、支軸部7をスムーズに移動できると共に、回転刃取付用ベース6の所定位置に安定良く的確に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a) は本発明の実施形態に係るケーブルの被覆剥ぎ取り工具の外観斜視図、(b) は同被覆剥ぎ取り工具の側面図である。
【図2】(a) は図1の(a) のX−X拡大断面図、(b) は図2の(a) のY−Y線断面図である。
【図3】回転刃ユニットを取り外した状態のケーブルの被覆剥ぎ取り工具の外観斜視図である。
【図4】(a) は回転刃ユニットを取り外した状態の被覆剥ぎ取り工具の側面図、(b) は回転刃ユニットを取り外した状態の、図2の(a) と同様な断面図、(c) は(a) のZ−Z線断面図である。
【図5】(a) はケーブルの被覆剥ぎ取り工具の回転刃取付用ベースに回転刃ユニットを取り付けようとする状態の斜視図、(b) は回転刃取付用ベースに回転刃ユニットを取り付け終えた状態の斜視図である。
【図6】(a) は回転刃ユニットの一部断面正面図、(b) は(a) のV−V線断面図である。
【図7】回転刃の切込み深さを異にする4種類の回転刃ユニットを例示したもので、(a-1) 〜(d-1) は各回転刃ユニットの正面図、(a-2) 〜(d-2) は側面図、(a-3) 〜(d-3) は斜視図である。
【図8】(a) は本発明に係るケーブルの被覆剥ぎ取り工具による周方向切込み作業状態を示す斜視図、(b) は同工具によるシースの螺旋切込み作業状態を示す斜視図、(c) はシースを剥ぎ取った状態を示す。
【図9】(a) は図1〜図8に例示した被覆剥ぎ取り工具よりも大形タイプの剥取工具を示す外観斜視図、(b) は同被覆剥ぎ取り工具の側面図である。
【図10】同被覆剥ぎ取り工具の一部断面図であって、図2の(a) と同様な断面図である。
【図11】ケーブルの内部構造を簡略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明すると、先ず、図1の(a) は本発明の実施形態に係るケーブルの被覆剥ぎ取り工具の外観斜視図、(b) は側面図であり、図2の(a) は図1の(a) のX−X拡大断面図、(b) は図2の(a) のY−Y線断面図であり、また図3は回転刃ユニットを取り外した状態の被覆剥ぎ取り工具の外観斜視図であり、図4の(a) は同状態の側面図、(b) は同状態の図2の(a) と同様な断面図、(c) は(a) のZ−Z線断面図である。
【0018】
このケーブルの被覆剥ぎ取り工具1は、ケーブル受け部3と支軸保持部4とアーム部5とによって略C形に一体に形成された工具本体2を有する。工具本体2の支軸保持部4には、回転刃取付用ベース6が、その支軸部7を螺挿させることによって進退自在に保持され、この支軸部7の基端部には回転操作用のグリップ部8が設けられ、回転刃取付用ベース6には、回転刃支持体9及びこれに軸支される回転刃10からなる回転刃ユニット11が、その回転刃10の向きを、ケーブル受け部3に配置されるケーブル12の軸方向と直交する直交位置と、そのケーブル12の軸方向に対し所定傾斜角度で斜交する複数の斜交位置とに位置変更可能で着脱自在に取り付けられている。
【0019】
工具本体2は、例えばアルミ合金のダイキャストによって一体形成されたものである。ケーブル受け部3は図示のように略溝形にされ、その溝開口を回転刃支持体9の側に向けている。アーム部5は、図2の(b) に示すように本体板部5aとこれの外面に突設された補強板部5bとで断面略T形に形成されている。
【0020】
ケーブル受け部3には、その溝内に、二組の受けローラ対13,13及び14,14が、夫々の回転軸13a,14aを互いに平行にして所要距離だけ離隔した状態で軸支され、そのうちの一組の受けローラ対13,13は、比較的小さい径のケーブル12に使用するもので、ローラ径が小さく、ローラ間の距離が狭くなっており、他の組の受けローラ対14,14は、比較的大きい径のケーブル12に使用するもので、ローラの径が比較的大きく、ローラ間の距離が広くなっている。
【0021】
このケーブル受け部3には、図1の(b) 及び図2の(a) に示すように、ケーブル12が、その軸方向を、受けローラ13,14の回転軸13a,14aと平行するように配置され、ケーブル12は常に、ケーブル12の周方向に離間して配置された一組の受けローラ対13,13によって周方向の2箇所を支持されるようになっている。図示のケーブル12は、径が比較的小さい場合を例示したもので、受けローラ対13,13によって支持されているが、径の大きいケーブル12の場合は、もう一組の受けローラ対14,14によって周方向の2箇所を支持される。
【0022】
しかして、ケーブル12がケーブル受け部3と回転刃ユニット11との間に挟持された状態で、回転刃ユニット11の円形状回転刃10がケーブル12の被覆(例えばシース12f)を切り込むようになっており、回転刃ユニット11を前記直交位置にして回転刃取付用ベース6に取り付けた時はケーブル12の被覆を周方向に切り込み、回転刃ユニット11を前記斜交位置にして回転刃取付用ベース6に取り付けた時は被覆を螺旋状に切り込むことになる。
【0023】
回転刃取付用ベース6は、図2の(a) 及び図4の(b) に示すように、上面6aが支軸部7の軸方向と直交する平面となるように支軸部7の上端部に固定される。即ち、回転刃取付用ベース6は、回転刃取付用ベース6の下面中央部に設けた取付孔部6bに支軸部7の上端部を嵌合させると共に、支軸部7上端部と取付孔部6b内周面との間にスプリングピン51を介挿することによって、支軸部7の上端部に取り付け固定される。
【0024】
この回転刃取付用ベース6の上面6aには、図2の(a) ,(b) 及び図5の(a) に示すように、回転刃ユニット11を取り付けるために回転刃ユニット11側に設けられた取付シャフト15が嵌合するシャフト嵌合孔16が、前記支軸部7と同軸上に形成され、また回転刃ユニット11を前記直交位置又は斜交位置に選択的に固定するための一対のセットピン17,17が、上記シャフト嵌合孔16の直径方向両側対称位置に突設されている。
【0025】
また回転刃取付用ベース6には、この回転刃取付用ベース6をケーブル受け部3に対し進退移動させる時に、工具本体2のアーム部5にスライド自在に嵌合して回転刃取付用ベース6を進退方向に案内する案内手段18が設けてある。案内手段18は、図2の(a) から分かるように、アーム部5の本体板部5aに嵌合するように回転刃取付用ベース6の後端部に形成された嵌合凹部18aと、この嵌合凹部18aがアーム部5の本体板部5aに嵌合した状態で本体板部5aの外面両端部をスライド自在に支持するL形支持片18b,18bとからなるもので、各L形支持片18bは、回転刃取付用ベース6に対しビス52で取り付けられている。この案内手段18を設けたことにより、ケーブル受け部3に対する支軸部7の進退時に支軸部7のガタつきを防止し、支軸部7をスムーズに移動できると共に、回転刃取付用ベース6の所定位置に安定良く的確に保持できる。
【0026】
支軸部7は、図1〜図4に示すように、螺軸からなるもので、工具本体2の支軸保持部4に設けてあるネジ孔4aに螺合挿通されている。この支軸部7の下端部は、図4の(b) に示すように、グリップ部8に一体的に連結固定されている。グリップ部8は、金属製の円筒状芯金26と、この芯金26に嵌着固定されたプラスチック製のグリップ本体27とからなるもので、支軸部7の下端部が、固定スリーブ28を介して円筒状芯金26の上端部に嵌合された状態でスプリングピン29により固定されている。このグリップ部8は、支軸部7をその軸周りに回転操作し、また工具本体2をケーブル12の軸周りに回転操作するためのものである。工具本体2のケーブル受け部3には、グリップ部8と対向する部位に補助把手19が突設されている。
【0027】
回転刃ユニット11は、図2、図5及び図6から分かるように、回転刃取付用ベース6の上面6に載置される回転刃支持体9の基板9aの左右両端部から立ち上がった両側板9b,9b間にボルトからなる支杆21を横架して、この支軸21に、2つのゲージリング20,20を同軸に軸支すると共に、両ゲージリング20,20間にゲージリング20より径大の回転刃10を同軸に挟持して支杆21上でゲージリング20と一体回転可能に取り付けたもので、図6の(a) に示すように、基板9aの下面中心部には、回転刃取付用ベース6の支軸部7対応位置に設けられたシャフト嵌合孔16に挿脱自在に嵌合する取付シャフト15が突設されている。また、図6の(b) に示すように、基板9aの前後対向端部には、回転刃ユニット11を回転刃取付用ベース6上で前記直交位置に位置決めするための一対の直交位置決めピン孔23,23及び前記斜交位置に位置決めするための複数対の斜交位置決めピン孔24,24、25,25が、夫々前記取付シャフト15の直径方向両側対称位置で同じ円周上に貫設され、しかして各一対のピン孔23,23、24,24、25,25を、回転刃取付用ベース6の中央部にあるシャフト嵌合孔16の直径方向両側対称位置に突設した一対のセットピン17,17に嵌合することによって、回転刃ユニット11を前記直交位置又は斜交位置に取り付けることができる。
【0028】
回転刃ユニット11は、回転刃10の切込み深さを異にし且つ同じ共通の直交位置決めピン孔23と傾斜角度の異なる2つの斜交位置決めピン孔24,25を有する複数種類、例えば図7に例示するような4種類の回転刃ユニット11a,11b,11c,11dからなるもので、各回転刃ユニットの回転刃10の径は同一であるが、各ゲージリング20の径よりは大きく、そして各ゲージリング20の径は夫々異なっている。尚、ゲージリング20は、回転刃10より小径の短円筒体で、その外周面をケーブル12に当接させることにより、回転刃10の切込み深さを一定に規制する。
【0029】
即ち、図7の(a-1) 〜(a-3) に示す回転刃ユニット11aは、ゲージリング20の直径が最も小さく、従って回転刃10の切込み深さが最も大きく、例えば2.3mmである。そして、直交位置決めピン孔23の両側にある2つの斜交位置決めピン孔24,25は、直交位置決めピン孔23との間隔が同じであるから、ケーブル12の直交面に対する回転刃10の左右傾斜角度は同一となる。このユニット11aの使用にあたって、一対の直交位置決めピン孔23,23(図6の(b) 参照)をベース6のセットピン17,17に嵌合して、ユニット11aを直交位置に取り付けた時は、ケーブル12の被覆を円周方向に切り込むことができる。また、一対の斜交位置決めピン孔24,24又は25,25をベース6のセットピン17,17に嵌合して、ユニット11aを斜交位置に取り付けた時は、ケーブル12の被覆を右傾斜又は左傾斜の螺旋状に切り込むことができる。
【0030】
(b-1) 〜(b-3) に示す回転刃ユニット11bは、ゲージリング20の径がユニット11aのゲージリング20よりも大きく、従って回転刃10の切込み深さは、ユニット11aより小さく、例えば1.9mmである。直交位置決めピン孔23の左右両側にある2つの斜交位置決めピン孔24,25については、ユニット11aのものと同じである。
【0031】
(c-1) 〜(c-3) に示す回転刃ユニット11cは、ゲージリング20の径がユニット11bのゲージリング20よりも大きく、従って回転刃10の切込み深さは、ユニット11bより小さく、例えば1.6mmである。そして直交位置決めピン孔23の両側にある2つの斜交位置決めピン孔24,25は、直交位置決めピン孔23との間隔が同じで、ケーブル12の直交面に対する回転刃10の左右傾斜角度は夫々同じであるが、その直交位置決めピン孔23との間隔は回転刃ユニット11a,11bにおける直交位置決めピン孔23と斜交位置決めピン孔24,25との間隔よりも広いため、ユニット11cを斜交位置に取り付けて、ケーブル12の被覆を螺旋状に切り込む時の、回転刃10の螺旋状切込み傾斜角度は、回転刃ユニット11a,11bのそれより大きくなり、螺旋状切込み線のピッチは広くなる。
【0032】
(d-1) 〜(d-3) に示す回転刃ユニット11dは、ゲージリング20の径がユニット11cのゲージリング20よりも大きく、従って回転刃10の切込み深さは、ユニット11cより小さく、例えば0.2mmである。また、直交位置決めピン孔23の両側にある左右の斜交位置決めピン孔24,25は、直交位置決めピン孔23との間隔が互いに異なり、右側斜交位置決めピン孔25の間隔が左側斜交位置決めピン孔24の間隔よりも広くなっており、従って斜交位置決めピン孔25を使用してユニット11dを斜交位置に取り付け、ケーブル12の被覆を螺旋状に切り込む時の、ケーブル12の直交面に対する回転刃10の螺旋状切込み傾斜角度は、反対側の斜交位置決めピン孔24を使用する場合よりも大きくなり、その螺旋状切込み線のピッチは広くなる。
【0033】
上記のように回転刃ユニット11として、回転刃10の切込み深さを異にし且つ互いに傾斜角度の異なった斜交位置決めピン孔24,25を有する複数種類の回転刃ユニット11a,11b,11c,11dが用意されているため、被覆の厚さのバラツキに応じて、適正な切込み深さの回転刃10を有する回転刃ユニット11に付け替えることができる。しかも、この付け替え作業は、図2及び図に示すように、各回転刃ユニット11(11a,11b,11c,11d)の取付シャフト15を回転刃取付用ベース6のシャフト嵌合孔16に嵌合し、夫々一対の直交位置決めピン孔23,23又は斜交位置決めピン孔24,24又は25,25を回転刃取付用ベース6の一対のセットピン17,17に嵌合するだけでよいから、迅速容易に行うことができる。
【0034】
尚、回転刃ユニット11の取付シャフト15を回転刃取付用ベース6のシャフト嵌合孔16に嵌合し、位置決めピン孔23,24,25を回転刃取付用ベース6のセットピン17に嵌合しただけでは、工具本体2を逆様にした時に取付シャフト15がシャフト嵌合孔16から抜け、位置決めピン孔23,24,25からセットピン17が抜け出して、回転刃ユニット11が回転刃取付用ベース6から脱落するおそれがあるため、それを阻止する手段を図2の(b) に示す。即ち、回転刃取付用ベース6には、シャフト嵌合孔16の孔壁面に開口する横孔33を貫設し、この横孔33にはコイルバネ34を介して球体35を、シャフト嵌合孔16に常時突出付勢するように設け、しかして図2の(b) に示すように、回転刃ユニット11の取付シャフト15を回転刃取付用ベース6のシャフト嵌合孔16に嵌合すると、球体35がバネ34に抗して横孔33内に引っ込められると同時に、バネ34の付勢力で球体35が取付シャフト15の側面を圧接して、取付シャフト15の脱落を阻止する。横孔33の入口は栓体36で塞いでいる。
【0035】
図7に示す回転刃ユニット11の実施形態では、回転刃10の切込み深さを異にし且つ傾斜角度の異なる斜交位置決めピン孔24,25を含む4種類の回転刃ユニット11a,11b,11c,11dを例示したが、回転刃10の切込み深さが異なり、直交位置決めピン孔23及び斜交位置決めピン孔は共通となるような複数種類の回転刃ユニット11を用意してもよいし、あるいは回転刃10の切込み深さを異にし且つ傾斜角度の異なる斜交位置決めピン孔24,25を有する5種類以上の回転刃ユニット11を用意することもできる。
【0036】
上記のような構造のケーブルの被覆剥ぎ取り工具1を使用して、ケーブル12のシース12fを切り込む場合の作用について説明する。
【0037】
ケーブル12のシース12fを円周方向に切り込む時は、先ず、回転刃ユニット11として、例えば図7に示すような複数種類の回転刃ユニット11a〜11dから適当なものを選んで、回転刃取付用ベース6の、ケーブル受け部3に配置されるケーブル12の軸方向と直交する直交位置に取り付ける。この直交位置に取り付ける際、回転刃ユニット11の回転刃支持体9に設けてある一対の直交位置決めピン孔23,23を回転刃取付用ベース6側の一対のセットピン17,17に嵌合する。
【0038】
こうして回転刃ユニット11を回転刃取付用ベース6の直交位置にセットした後、図8の(a) に示すように、グリップ部8を、回転刃取付用ベース6がケーブル受け部3に近づくように回転させながら締め付けて、回転刃ユニット11の回転刃10をケーブル12のシース12fに食い込ませる。この時、ゲージリング20がシース12fに接触するまで回転刃10を食い込ませることにより、ケーブル12は、ケーブル受け部3の一対の受けローラ13,13と、回転刃10の両側にあるゲージリング20,20とによって挟持され、ほぼ直伸した状態で良好に保持される。しかして、一方の手でケーブル12を掴み、他方の手でグリップ部8を持って工具本体2を1回転させることにより、シース12fが回転刃10によって周方向に切り込まれる。この際、必要に応じて、補助把手19も使用する
【0039】
上記のようにシース12fを周方向の切り込んだ後、引き続き同じ回転刃ユニット11を使用して、シース12fの螺旋状切り込みを行う。この螺旋状切り込みにあたっては、グリップ部8を緩めて、回転刃取付用ベース6をケーブル受け部3から適当に後退させた状態で、回転刃ユニット11を直交位置からケーブル12の軸方向と斜交する斜交位置に切り替える。この切り換えは、直交位置にあった一対の直交位置決めピン孔23,23を回転刃取付用ベース6のセットピン17,17から抜いて、一対の斜交位置決めピン孔24,24又は25,25に嵌合すればよい。この際、直交位置決めピン孔23の一方側の斜交位置決めピン孔24を使用する場合と、反対側の斜交位置決めピン孔25を使用する場合とでは、螺旋状切込み方向が互いに逆となるから、ここでは、先に切り込んだ周方向切込み線(図8の(a) ,(b) に31で示す)からケーブル12の端部側へ向かって螺旋状切込みを行う斜交位置決めピン孔を選択する。
【0040】
回転刃ユニット11を斜交位置にセットした後、周方向切込みの場合と同様に、回転刃取付用ベース6がケーブル受け部3に近づくようにグリップ部8を回転させて締め付け、回転刃ユニット11の回転刃10をシース12fに食い込ませた状態とする。このとき、回転刃10は、ケーブル受け部3に配置されたケーブル12の軸方向に対し斜交状態でケーブル12に食い込んでおり、このケーブル12は、周方向2箇所を支持する受けローラ13,13と、回転刃10及びその両側のゲージリング20,20とによって挟持された状態にある。かかる状態から一方の手でケーブル12を掴み、他方の手でグリップ部8を持って工具本体2を1回転させることによって、シース12fは、図8の(b) に示すように、回転刃10によって、周方向切込み線31からケーブル12の端部に向かって螺旋状に切り込まれ、その螺旋状切込み線を32で示す。この回転刃10による螺旋状切込み作用は、旋盤のねじ切りバイトによって材料に雄ねじを切る場合やねじ切りダイスによって雄ねじを切る場合の作用と同様である。この場合、シース12fに切り込まれる螺旋状切込み線を32のピッチ(工具本体2の1回転当たりに進む距離)は、ケーブル12の直交面に対する回転刃10の傾斜角度で決まり、その傾斜角度が大きいと、ピッチが大きくなり、傾斜角度が小さいと、ピッチは小さくなる。
【0041】
ケーブル12の端部までシース12fの螺旋状切込みを終えたならば、螺旋状に切り込んだシース12fの先端部をペンチ等で掴んで引っ張りながら剥がしていくことにより、シース12fを周方向切込み線31のところから一連の螺旋状剥ぎ取り片の形で簡単且つ容易に剥ぎ取ることができる。
【0042】
図1〜図5によって説明したケーブルの被覆剥ぎ取り工具1は、直径の比較的小さい、例えば14〜40mm程度のケーブル12の被覆剥ぎ取りに使用される剥取工具であるが、図9及び図10には、直径の比較的大きい、例えば40〜60mm程度のケーブル12の被覆剥ぎ取りに使用する大型の剥取工具1を示す。この大型の被覆剥ぎ取り工具1は、工具本体2のケーブル受け部3及びアーム部5の一部が若干異なるだけで、図1〜図5によって説明した前述の剥取工具1と殆ど同じ構造である。その異なるところは、工具本体2のアーム部5の上部32を外側へ湾曲することにより、ケーブル受け部3のいわゆる懐部分を広くして、径大のケーブル12を余裕をもって受け入れできるようにし、またケーブル受け部3の溝内には一対一組の受けローラ13,13を、図1〜図5に示される剥取工具1のそれよりもローラ間の距離を広くとって配設し、図9の(b) に示すように径大のケーブル12の周方向2箇所を支持するようにしている。
【0043】
以上説明した本発明に係るケーブルの被覆剥ぎ取り工具1は、ケーブル受け部3と支軸保持部4とアーム部5とで略C形の工具本体2が形成され、ケーブル受け部3が略溝形に形成されて、その溝内に一対の受けローラ13,13が、夫々の回転軸13aを互いに平行にして所要距離だけ離隔した状態で配置され、支軸保持部4には、回転刃取付用ベース6が、その支軸部7を螺挿させることによって進退自在に保持され、支軸部7の基端部には支軸部7を回転操作するグリップ部8が設けられ、ケーブル受け部3には、シース12f等の被覆を剥ぎ取るケーブル12が、その軸方向を受けローラ13の回転軸13aと平行するように配置され、ケーブル12は常に受けローラ13,13によって周方向の2箇所を支持されるように構成されているから、従来のケーブルの被覆剥ぎ取り工具に比べ、ケーブル受け部3及びグリップ部8の構造がきわめて簡素化され、それらの構成部品点数が少なくなって、製作コストの低減を図ることができる。
【0044】
特に、このケーブルの被覆剥ぎ取り工具1の大きな特徴は、回転刃取付用ベース6に、回転刃支持体9及びこれに軸支される回転刃10からなる回転刃ユニット11が、その回転刃10の向きを、ケーブル受け部3に配置されるケーブル12の軸方向と直交する直交位置と、そのケーブル12の軸方向に対し所定の傾斜角度で斜交する斜交位置とに位置変更可能で且つ着脱可能に取り付けられ、しかして回転刃ユニット11とケーブル受け部3との間にケーブル12を挟持した状態で工具本体2を回転させることにより、回転刃ユニット11の回転刃10がケーブル12の被覆を切り込むようにしたもので、回転刃ユニット11を前記直交位置にして回転刃取付用ベース6に取り付けた時はシース12f等の被覆を周方向に切り込み、回転刃ユニットを前記斜交位置にして回転刃取付用ベースに取り付けた時はシース12f等の被覆を螺旋状に切り込むようになっている。従って、先に周方向の切込みを行い、その切込み線からケーブル12端に向かうように螺旋状の切込みを行って、その螺旋状に切り込んだ被覆の先端部をペンチ等で掴んで引っ張りながら剥がしていけば、その被覆を周方向切込み線のところから一連の螺旋状剥ぎ取り片の形態で迅速且つ容易に剥ぎ取ることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 ケーブルの被覆剥ぎ取り工具
2 工具本体
3 ケーブル受け部
4 支軸保持部
5 アーム部
6 回転刃取付用ベース
7 支軸部
8 グリップ
9 回転刃支持体
10 回転刃
11 回転刃ユニット
11a〜11d 回転刃ユニット
12 ケーブル
13 受けローラ
17 セットピン
20 ゲージリング
23 直交位置決めピン孔
24,25 斜交位置決めピン孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル受け部と支軸保持部とアーム部とで略C形の工具本体が形成され、
ケーブル受け部は略溝形に形成されて、その溝内に一対の受けローラが、夫々の回転軸を互いに平行にして所要距離だけ離隔した状態で配置され、
支軸保持部には、回転刃取付用ベースが、その支軸部を螺挿させることによって進退自在に保持され、支軸部の基端部には回転操作用のグリップ部が設けられ、
ケーブル受け部には、ケーブルが、その軸方向を受けローラの回転軸と平行するように配置され、ケーブルは常に、その周方向に離隔して配置された一対の受けローラによって周方向の2箇所を支持され、
回転刃取付用ベースには、回転刃支持体及びこれに軸支される回転刃からなる回転刃ユニットが、その回転刃の向きを、ケーブル受け部に配置されるケーブルの軸方向と直交する直交位置と、そのケーブルの軸方向に対し所定傾斜角度で斜交する斜交位置とに位置変更可能で且つ着脱可能に取り付けられ、
回転刃ユニットとケーブル受け部との間にケーブルを挟持した状態で工具本体を回転させることにより、回転刃ユニットの回転刃がケーブルの被覆を切り込むようになっていて、回転刃ユニットを前記直交位置にして回転刃取付用ベースに取り付けた時はシースを周方向に切り込み、回転刃ユニットを前記斜交位置にして回転刃取付用ベースに取り付けた時はシースを螺旋状に切り込むようにしてなるケーブルの被覆剥ぎ取り工具。
【請求項2】
回転刃ユニットは、回転刃の切込み深さを異にする複数種類の回転刃ユニットからなる請求項1に記載のケーブルの被覆剥ぎ取り工具。
【請求項3】
回転刃ユニットは、回転刃取付用ベース上に載置される回転刃支持体の基板の左右両端部から立ち上がった両側板間に2つのゲージリングを軸支すると共に、両ゲージリング間にゲージリングより径大の回転刃を同軸に挟持したもので、基板の下面中心部に、回転刃取付用ベースの支軸部対応位置に設けられたシャフト嵌合孔に挿脱自在に嵌合する取付シャフトを突設すると共に、基板の前後対向端部には、回転刃ユニットを回転刃取付用ベース上で前記直交位置に位置決めするための一対の直交位置決めピン孔及び前記斜交位置に位置決めするための複数対の斜交位置決めピン孔を、前記取付シャフトの直径方向両側対称位置で同じ円周上に貫設し、各一対のピン孔を、前記直交位置に対応する位置にあって回転刃取付用ベース上のシャフト嵌合孔の直径方向両側対称位置に突設した一対のセットピンに嵌合することにより、回転刃ユニットを前記直交位置又は斜交位置に取り付けるようにしてなる請求項1又は2に記載のケーブルの被覆剥ぎ取り工具。
【請求項4】
回転刃取付用ベースには、このベースをケーブル受け部に対して進退移動させる時に、工具本体のアーム部にスライド自在に嵌合して、ベースを進退方向に案内する案内手段を設けてなる請求項1〜3の何れかに記載のケーブルの被覆剥ぎ取り工具。
【請求項1】
ケーブル受け部と支軸保持部とアーム部とで略C形の工具本体が形成され、
ケーブル受け部は略溝形に形成されて、その溝内に一対の受けローラが、夫々の回転軸を互いに平行にして所要距離だけ離隔した状態で配置され、
支軸保持部には、回転刃取付用ベースが、その支軸部を螺挿させることによって進退自在に保持され、支軸部の基端部には回転操作用のグリップ部が設けられ、
ケーブル受け部には、ケーブルが、その軸方向を受けローラの回転軸と平行するように配置され、ケーブルは常に、その周方向に離隔して配置された一対の受けローラによって周方向の2箇所を支持され、
回転刃取付用ベースには、回転刃支持体及びこれに軸支される回転刃からなる回転刃ユニットが、その回転刃の向きを、ケーブル受け部に配置されるケーブルの軸方向と直交する直交位置と、そのケーブルの軸方向に対し所定傾斜角度で斜交する斜交位置とに位置変更可能で且つ着脱可能に取り付けられ、
回転刃ユニットとケーブル受け部との間にケーブルを挟持した状態で工具本体を回転させることにより、回転刃ユニットの回転刃がケーブルの被覆を切り込むようになっていて、回転刃ユニットを前記直交位置にして回転刃取付用ベースに取り付けた時はシースを周方向に切り込み、回転刃ユニットを前記斜交位置にして回転刃取付用ベースに取り付けた時はシースを螺旋状に切り込むようにしてなるケーブルの被覆剥ぎ取り工具。
【請求項2】
回転刃ユニットは、回転刃の切込み深さを異にする複数種類の回転刃ユニットからなる請求項1に記載のケーブルの被覆剥ぎ取り工具。
【請求項3】
回転刃ユニットは、回転刃取付用ベース上に載置される回転刃支持体の基板の左右両端部から立ち上がった両側板間に2つのゲージリングを軸支すると共に、両ゲージリング間にゲージリングより径大の回転刃を同軸に挟持したもので、基板の下面中心部に、回転刃取付用ベースの支軸部対応位置に設けられたシャフト嵌合孔に挿脱自在に嵌合する取付シャフトを突設すると共に、基板の前後対向端部には、回転刃ユニットを回転刃取付用ベース上で前記直交位置に位置決めするための一対の直交位置決めピン孔及び前記斜交位置に位置決めするための複数対の斜交位置決めピン孔を、前記取付シャフトの直径方向両側対称位置で同じ円周上に貫設し、各一対のピン孔を、前記直交位置に対応する位置にあって回転刃取付用ベース上のシャフト嵌合孔の直径方向両側対称位置に突設した一対のセットピンに嵌合することにより、回転刃ユニットを前記直交位置又は斜交位置に取り付けるようにしてなる請求項1又は2に記載のケーブルの被覆剥ぎ取り工具。
【請求項4】
回転刃取付用ベースには、このベースをケーブル受け部に対して進退移動させる時に、工具本体のアーム部にスライド自在に嵌合して、ベースを進退方向に案内する案内手段を設けてなる請求項1〜3の何れかに記載のケーブルの被覆剥ぎ取り工具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−244889(P2012−244889A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116292(P2011−116292)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(591095823)株式会社九電工 (17)
【出願人】(591083772)株式会社永木精機 (65)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(591095823)株式会社九電工 (17)
【出願人】(591083772)株式会社永木精機 (65)
【Fターム(参考)】
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