説明

ケーブルの配線用接続具

【課題】 ケーブルの押込み工法の下で、特に、ケーブルの増設作業が容易な配線用接続具の提供。
【解決手段】 端部にケーブル挿通口1aを有して建物の壁面又は床面に固定されるベース体1と、端部にケーブル挿通口2aを有して該ベース体1と着脱可能に嵌合するカバー体2とから成り、該カバー体2とベース体1の内側に上記各ケーブル挿通口1a・2aと連通する収容空間1b・2bを画成する一方、上記各ケーブル挿通口1a・2aに一定の隙間10を画して別の接続具9を接続して、該隙間10を経て上記収容空間1b・2b内にケーブルを配線する配線用接続具において、上記ベース体1又はカバー体2のいずれか一方の開口端部内面に該内面よりも隆起する傾斜4・7を設けて、該傾斜4・7で押し込みケーブルの先端部を上記収容空間1b・2b側へ強制的に案内することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、光ケーブルを建物の壁面や床面に敷設する際に、該光ケーブルを保護しながら配線する配線用接続具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種配線用接続具は、下記の特許文献1に示すように、平面L字状を呈して建物の壁面や床面に固定される合成樹脂製のベース体と、同じく平面L字状を呈して該ベース体と着脱可能に嵌合する合成樹脂製のカバー体とから成り、該ベース体とカバー体の対向する開口を2個のケーブル挿通口となして、該各ケーブル挿通口を介して、ベース体とカバー体の内側に画成される収容空間内に光ケーブルをL字状に屈曲して配線できる構成となっている。
【0003】
そして、実際の使用に際しては、上記ベース体を建物の壁面又は床面にビスや両面接着テープ等を介して固定した後、該ベース体の収容空間内に光ケーブルを収容する状態を得て、該ベース体にカバー体を嵌合すると、光ケーブルはベース体とカバー体とで保護されながら配線される。尚、この場合には、ベース体とカバー体で画成されるケーブル挿通口側には直線状の別の接続具が接続される。但し、カバー体がベース体よりも長寸法に設定されているので、カバー体と該別の接続具とはオーバーラップして接続される。
【0004】
又、これとは別の配線用接続具は、下記の特許文献2に示すように、平面T字状を呈する合成樹脂製のベース体と、同じく平面T字状を呈する合成樹脂製のカバー体とから成り、該ベース体とカバー体の対向する開口を3個のケーブル挿通口となして、該各ケーブル挿通口を介して、ベース体とカバー体で画成される収容空間内に光ケーブルを分岐させながら配線できる構成となっている。
【0005】
そして、実際の使用に際しては、同様に、ベース体を建物の壁面又は床面に固定した後、該ベース体の収容空間内に光ケーブルを分岐させて収容する状態を得て、該ベース体にカバー体を嵌合すると、光ケーブルは保護されながら分岐配線される。尚、この場合にも、ベース体とカバー体で画成される3個のケーブル挿通口側には直線状の別の接続具が接続される。但し、この特許文献2のものは、ベース体とカバー体が同寸法に設定されているので、例え、その挿通口に別の接続具と接続すると雖も、カバー体が別の接続具とオーバーラップすることはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭46−15553号公報
【特許文献2】特開平10−94137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、オーバーラップして接続される場合でも、オーバーラップせずに接続される場合でも、光ケーブルはベース体とカバー体とで保護されながら配線されることとなるが、特に、これが屋外で配線されるような場合には、通常、成形材料の伸縮を考慮して、各配線用接続具と直線状の別の接続具との接続部に2〜5mm程度の隙間を開けて取り付けている。尚、この隙間は上記のように積極的に形成される他に、作業員の施工具合や切断の仕方でも形成されることがある。
【0008】
しかし、ケーブルを増設するような場合に、各接続具の接続部に上記隙間が形成されていると、配線ライン上に光ケーブルを押し込んでケーブルを挿通するケーブル押し込み工法を用いた際に、該ケーブルの先端部が当該隙間の縁などに引っ掛かり、ケーブルをスムーズに通線することができなくなる恐れが十分にあった。
この為、従来にあっては、ケーブルを増設する場合には、ケーブルの押込み工法を止めて、全てのカバー体をベース体から取り外して、光ケーブルを配線用接続具の内部に収容する作業が余儀なくされているので、自ずと作業が大変となる嫌いがあった。
【0009】
そこで、本発明は、ケーブルの押込み工法の下で、従来のようにカバー体を取り外すことなく、増設のためのケーブルを容易に通線できる配線用接続具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑み開発されたもので、端部にケーブル挿通口を有して建物の壁面又は床面に固定されるベース体と、端部にケーブル挿通口を有して該ベース体と着脱可能に嵌合するカバー体とから成り、該カバー体とベース体の内側に上記各ケーブル挿通口と連通する収容空間を画成する一方、上記各ケーブル挿通口に一定の隙間を画して別の接続具を接続し、該隙間を経て上記収容空間内にケーブルを配線する配線用接続具において、上記ベース体又はカバー体のいずれか一方の開口端部内面に該内面よりも隆起する傾斜を設けて、該傾斜で押し込みケーブルの先端部を上記収容空間側へ案内することを特徴とする。
【0011】
好ましくは、上記ベース体とカバー体の対向する開口端部内面に押し込みケーブルの先端部を収容空間側へ強制的に案内する傾斜を個々に設けて、該対向する各傾斜を環状に配する。
【0012】
これを詳述すると、上記ベース体とカバー体を湾曲形状に成形するか、直線形状に成形するか、T字形状に成形する。
【発明の効果】
【0013】
本発明にあっては、ケーブルを増設するために、ケーブルの押込み工法の下で、ケーブルを配線用接続具の内部に通線する場合には、ケーブルの先端部を接続される別の接続具側から押し込んでいくと、ケーブルの先端部がベース体又はカバー体のいずれか一方の開口端部内面に設けられた傾斜に衝突して、ケーブルを収容空間側に強制的に跳ね上げるので、ケーブルが上記隙間の縁などに引っ掛かることなくスムーズに押し込まれる。又、配線用接続具の内部から別の接続具の内部に押し込む場合でも、ケーブルの先端部がやはり隆起する傾斜に衝突して収容空間側に跳ね上がって、隙間を飛び越えて通過するので、隙間の縁などに引っ掛かることがない。従って、従来のように全てカバー体を外さなくとも、ケーブルの増設配線が十分に可能となる。
【0014】
又、本発明に係る配線用接続具は、湾曲形状や直線形状やT字形状に成形できるので、コーナー部での配線や直線部での配線が可能となることは勿論のこと、分岐配線も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係る配線用接続具を内側から示す分解斜視図である。
【図2】同配線用接続具のベース体にカバー体を嵌合した状態を示す断面図である。
【図3】(A)(B)(C)は傾斜の隆起形状例を示す要部拡大断面図である。
【図4】配線用接続具に別の接続具をオーバーラップして接続した状態を示す断面図である。
【図5】光ケーブルの先端部を一方の挿通開口から押し込んだ状態を示す説明図である。
【図6】光ケーブルの先端部を他方の挿通開口から別の接続具へ導いた状態を示す説明図である。
【図7】(A)(B)は傾斜が設けられる箇所の他例を示す断面図である。
【図8】配線用接続具に別の接続具をオーバーラップせずに接続した状態を示す断面図である。
【図9】直線状を呈する配線用接続具を内側から示す分解斜視図である。
【図10】T字状を呈する配線用接続具を内側から示す分解斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を図示する好適な実施例に基づいて詳述する。
【0017】
本実施例に係る配線用接続具は、所謂マガリと称される配線用接続具に応用したもので、図1に示すように、断面U字状を呈しつつ湾曲状に成形されて建物の壁面又は床面にビスや両面接着テープ等を介して固定されるベース体1と、同じく断面U字状を呈しつつ一回り大きな湾曲状に成形されて該ベース体1と着脱可能に嵌合するカバー体2とから成り、これら1・2はいずれも合成樹脂で一体に成形されている。
【0018】
そして、前者のベース体1は、両端部にケーブル挿通口1aを有し、内部に該各ケーブル挿通口1aと連通する収容空間1bを有し、その各側壁の外面に後述するカバー体2の嵌合爪6と係合する嵌合肩3を連続して形成し、且つ、上記各開口端部1a、詳しくは、開口端縁の内面に該内面よりも隆起する傾斜4を側壁から下壁に跨って一体に設け、該傾斜4の作用で、押し込みケーブルの先端部を上記収容空間1b側へ強制的に案内する構成となっている。尚、図中5はビスの取付孔である。
【0019】
又、後者のカバー体2は、同じく、両端部にケーブル挿通口2aを有し、内部に該各ケーブル挿通口2aと連通する収容空間2bを有し、その各側壁の対向する内面に上記ベース体1の嵌合肩3に係合する嵌合爪6を間隔をおいて形成し、且つ、上記ベース体1の傾斜4と対応する開口端部の内面に該内面よりも隆起する傾斜7を側壁の途中から上壁に跨って一体に設け、該傾斜7の作用で、押し込みケーブルの先端部を上記収容空間2b側に強制的に案内する構成となっている。尚、この場合は、傾斜7をその開口端縁には設けないので、カバー体2の両端側に後述する直線状の別の接続具9とオーバーラップする延長部8が張り出すこととなる。
【0020】
従って、カバー体2をベース体1に上記各嵌合肩3と各嵌合爪6を介して嵌合すると、図2に示すように、ベース体1がカバー体2の内側に完全に嵌り込む状態をもって上下の各傾斜4・7が環状に配置され、押し込みケーブルの先端部が如何なる状態に押し込まれても、当該環状の傾斜4・7に衝突して跳ね上がり、ケーブルの先端部が上記収容空間1b・2b側に強制的に案内される。
【0021】
ここで、上記ベース体1とカバー体2に設けられる傾斜4・7は、両者4・7が同一の形状を呈し、フラットなベース体1の下壁と側壁及びフラットなカバー体2の上壁と側壁から連続して隆起するもので、具体的な形状は、図3Aに示すように小山状に隆起した形状か、同図Bに示すように外側が急斜面で内側が緩斜面となる隆起した形状か、或いは、同図Cに示すように円弧状に隆起した形状となす。これに限定されるものではなく、いずれにしても、押し込みケーブルの先端部が衝突して収容空間1b・2b側への跳ねを与えられるものであればその他の形状であっても良い。
【0022】
依って、斯かる構成の配線用接続具を用いて光ケーブルを配線する場合には、配線コーナー部において、ベース体1をビス(図示せず)とその取付孔5を介して壁面又は床面に固定する状態を得て、その両端の各ケーブル挿通口1a・2a側に例えば直線状の別の接続具9を2〜5mm程度の隙間10を介在して接続した後、カバー体2をベース体1に嵌合肩3と嵌合爪6を介して嵌合すると、図4に示すように、これにより、配線ラインが決定される。
【0023】
尚、この配線ラインの下にあっては、既述したように、カバー体2の両端に延長部8が形成されているので、該各延長部8は別の接続具9とオーバーラップして接続されることとなるが、上記ベース体1とカバー体2の伸縮を吸収する隙間10が開口端縁又は開口端部に形成されている関係で、各隙間10の内側に傾斜4が位置することとなる。
【0024】
そして、図5に示すように、直線状の別の接続具9の開口等から光ケーブル11の先端部11aを押し込んでいくと、ケーブル11の先端部11aが隙間10を通過しながら、その一方の挿通開口1a側に設けられた傾斜4に衝突して収容空間1b側へ跳ね上がるので、上記隙間10の縁などに接触することなく、ベース体1の内側に確実に押し込まれる。特に、傾斜4(7)はフラットな内面から隆起しているので、ケーブル11の先端部11aの跳ね上がりを効果的に助長できる。
【0025】
次いで、ケーブル11の先端部11aはベース体1の湾曲形状に沿って更に押し込まれて他方の挿通開口1a側へ移行するが、その移行過程で、同挿通開口1aの端縁側に設けられている傾斜4に直に衝突して、図6に示すように、収容空間1b側に跳ね上がって、該傾斜4と隙間10を同時に飛び越えて、他方の別の接続具9内に導かれるので、従来のように、隙間10の縁などに接触して押し込みができなくなるようなことは決してない。
【0026】
又、上記実施例にあっては、ベース体1とカバー体2の双方に傾斜4・7を環状に設けたものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも、図7Aに示すように、ベース体1の挿通開口1aの端縁のみに設けるか、同図Bに示すように、カバー体2の挿通開口2aの端部内側のみに設けても、光ケーブル11の先端部11aの飛び上がりは可能となる。
【0027】
更に、上記実施例の下では、カバー体2と別の接続具9とがオーバーラップして接続させたものであるが、例えば、図8に示すように、独立部材たる隙間覆い12を用いて、別の接続具9と本配線用接続具とをオーバーラップさせずに接続するものと可能である。尚、この場合も、成形材料の伸縮を考慮して隙間10を形成することは言うまでもないが、この隙間10は作業員の施工具合や切断の仕方によっても形成されることがあるので、ケーブル11の押込み施工の下では、傾斜4・7は必須なものとなる。
【0028】
尚、上記実施例は、所謂マガリと称される湾曲形状に成形された配線用接続具に応用したものであるが、所謂デズミ・イリズミ等と称される湾曲状の配線用接続具に対しても、又は、図9に示す直線状に成形された配線用接続具や、図10に示すT字状に成形された配線用接続具に対しても、同一原理の下で実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0029】
1 ベース体
1a ケーブル挿通口
1b 収容空間
2 カバー体
2a ケーブル挿通口
2b 収容空間
3 嵌合肩
4 傾斜
5 取付孔
6 嵌合爪
7 傾斜
8 延長部
9 別の接続具
10 隙間
11 光ケーブル
11a 光ケーブルの先端部
12 隙間覆い

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部にケーブル挿通口を有して建物の壁面又は床面に固定されるベース体と、端部にケーブル挿通口を有して該ベース体と着脱可能に嵌合するカバー体とから成り、該カバー体とベース体の内側に上記各ケーブル挿通口と連通する収容空間を画成する一方、上記各ケーブル挿通口に一定の隙間を画して別の接続具を接続し、該隙間を経て上記収容空間内にケーブルを配線する配線用接続具において、上記ベース体又はカバー体のいずれか一方の開口端部内面に該内面よりも隆起する傾斜を設けて、該傾斜で押し込みケーブルの先端部を上記収容空間側へ案内することを特徴とするケーブルの配線用接続具。
【請求項2】
上記ベース体とカバー体の対向する開口端部内面に押し込みケーブルの先端部を収容空間側へ案内する傾斜を個々に設けて、該対向する各傾斜を環状に配したことを特徴とする請求項1記載のケーブルの配線用接続具。
【請求項3】
上記ベース体とカバー体は湾曲形状に成形されていることを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれかに記載のケーブルの配線用接続具。
【請求項4】
上記ベース体とカバー体は直線形状に成形されていることを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれかに記載のケーブルの配線用接続具。
【請求項5】
上記ベース体とカバー体はT字形状に成形されていることを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれかに記載のケーブルの配線用接続具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−9454(P2013−9454A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138416(P2011−138416)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【特許番号】特許第4917685号(P4917685)
【特許公報発行日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【出願人】(390025335)マサル工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】