説明

ケーブルまたはラインを構造体に外側で固定するための固定装置の使用

本発明は、ケーブルまたはラインをケーシング(12)に、特にブレーキシリンダのケーシングに外側で固定するための固定装置(54)であって、固定ピン(56)を有しており、該固定ピン(56)が、ケーシング(12)の通気口(52)に係止可能である形式のものに関する。本発明によれば、固定ピン(56)に接続通路(64)が形成されていて、該接続通路を介して、係止状態で、ケーシング(12)の内部(50)が大気に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の、ケーブルまたはラインをケーシングに、特にブレーキシリンダのケーシングに外側で固定するための固定装置であて、固定ピンを有しており、該固定ピンが、ケーシングの通気口に係止可能である形式のものに関する。
【0002】
このような形式の固定装置は、まだ公開されていないDE102004044939号明細書に記載されている。この固定装置は固定クランプから成っていて、この固定クランプは一方では、ブレーキシリンダのケーシング部分の環状の折り曲げ部に、他方では、ケーシングの通気口に係止可能なピンを介してケーシングに結合されている。
【0003】
これに対して本発明の課題は、機能性が改善された固定装置を提供することである。
【0004】
この課題は、請求項1の特徴により解決される。
【0005】
発明の効果
固定ピンに接続通路を形成し、この接続通路を介して、係止状態でケーシングの内部を大気に接続させることが提案されていて、通気口は閉鎖されず、従って、凝縮水をケーシング内部から外部に排出させる機能や、換気の機能は引き続き実行することができる。このことは特に、実際に慣用であるように、ブレーキシリンダのケーシングに多数のケーブルとラインが固定されていて、その結果、複数の通気口を、固定装置のための位置固定点として使用せねばならない場合に重要である。これらの通気口は、本発明のように形成されていなければ、閉じられてしまうので、製造コストを高める別の通気口を設けなければならない。本発明の固定装置は、特に複数の通気口に設けることができ、換気または凝縮水の排出がこれにより妨げられることはない。従って、ケーブルおよびラインはケーシングに複数の個所にも固定することができる。通気口により換気や排水が妨げられずに行われるので、ケーシング内部の腐食の危険は減じられ、このことは特に、安全に関わるブレーキシリンダにおいて極めて有利である。
【0006】
請求項2以下に記載された手段により、請求項1記載の本発明の有利な別の構成が得られる。
【0007】
固定装置が、単に固定ピンを介してケーシングに固定されていて、固定ピンは通気口に、固定装置がピン軸線を中心としてケーシングに対して相対的に旋回可能であるように係止されていると特に有利である。これにより、通常、所定の剛性を有しているケーブルおよびラインは、固定装置を各方向に旋回させることにより、ケーシングに対して自由に方向付けることができる。その結果、ケーブルおよびラインの変向および屈曲を回避することができ、このことは、張力(ストレス)がなくなることにより、一方ではその耐用期間を延ばし、他方では短い敷設長さを可能にする。このことはとりわけ、長さに応じた流れ抵抗を有するブレーキシリンダのニューマチック式のラインのもとで有利である。
【0008】
固定ピンと、ケーシングの通気口との係止は例えば、固定ピンが、基体から突出する、弾性変形可能な少なくとも2つの脚を有しており、これらの脚の間に、接続通路を形成するスリットが設けられていることにより実現することができる。これにより、固定ピンは二重の機能を満たす。即ち、一方ではケーシングにおける固定装置の係止可能な固定を行い、他方では同時に接続通路も形成する。
【0009】
通気口に固定ピンが係止されている状態で接続通路が閉鎖されることは、例えば、基体から、係止状態で、ケーシングの外面に接触する少なくとも1つのスペーサを突出させ、この場合、この接続通路の、外面を越えて延びる端部区分が少なくとも側方で大気に接続されるようになっていることにより防止される。
【0010】
別の有利な構成によれば、基体にはさらに、弾性的なプラスチックケーブル接続装置を貫通させるための貫通スリットを設けることができ、該貫通スリットは、ケーシングに固定すべきケーブルおよびラインを取り囲む。付加的に基体には、標準化された少なくとも2つの収容部が、このような弾性的なプラスチックケーブル接続装置のために設けられていて、これらは異なる方向に向けられている。さらにケーブルおよびラインは束ねられてケーシングに固定することができ、これらは互いに交差する。固定装置の旋回可能性と組み合わせた場合、結果として、ケーブルおよびラインがケーシングに関して変向することなく延びることができる多数の方向に向けることができる。
【0011】
特に有利には、プラスチックケーブル接続装置も標準化された収容部に係止することができ、例えばこの場合、標準化された収容部は、アンダカット部を備えた横断面を有する収容ピンによって形成され、この収容ピンは、プラスチックケーブル接続装置の固定区分の開口に係止可能である。
【0012】
本発明の実施例を図面に示し、以下に詳しく説明する。
【0013】
実施例の説明
図1には、組み合わされた常用ブレーキ及びばね蓄力ブレーキ装置1が示されている。この装置は、常用ブレーキシリンダ4を備えた常用ブレーキ装置2を有しており、この常用ブレーキシリンダ4には、ニューマチック式に負荷可能な常用ブレーキピストン6がガイドされている。常用ブレーキピストン6は、常用ブレーキピストンロッド8を介して例えば、縮尺の関係で示されていない、商用車のディスクブレーキを操作する。さらに、ばね蓄力ブレーキシリンダ12を備えたばね蓄力ブレーキ装置10が設けられており、このばね蓄力ブレーキシリンダ12には、ニューマチック圧力によりばね蓄力ブレーキ室14内で、蓄力ばね16のばね力に抗して緊張可能なばね蓄力ブレーキピストン18がガイドされている。ばね蓄力ブレーキピストン18により常用ブレーキピストン6はブレーキ緊締方向に負荷可能である。常用ブレーキシリンダ4とばね蓄力ブレーキシリンダ12とは、相前後して軸方向で配置されて、コンビブレーキシリンダ20を成している。
【0014】
ばね蓄力ブレーキピストン18のばね蓄力ブレーキピストンロッド24は、ばね蓄力ブレーキシリンダ12と常用ブレーキシリンダ4との間の隔壁28に設けられた貫通孔26を密に貫通しており、その端面で常用ブレーキピストン6に当接している。常用ブレーキピストン6は、外縁側で、隔壁28と、常用ブレーキシリンダ4の縁部の半径方向外側の肩部30との間に緊締され、軸方向で可動なダイヤフラム32と、このダイヤフラム32に結合された中央のピストンディスク34とを有している(図2)。
【0015】
肩部30は有利には、90°以上屈曲されているので、ダイヤフラム32に向かって傾斜したコンタクト面が生じる。他方、分離壁28にも半径方向外側の縁部で、傾斜したコンタクト面が設けられているので、これらの間には、半径方向外側に向かって楔状に拡開した横断面が生じる。ここには、相補的に成形されたダイヤフラム32の外側の縁部36が形状接続的に保持されている。このような形状接続を安定化させるために、かつ常用ブレーキシリンダ4とばね蓄力ブレーキシリンダ12とを結合させるために、ばね蓄力ブレーキシリンダ12の縁部42は、常用ブレーキシリンダ4の肩部30に形状接続的に係合しており、この場合、特に、形状接続的な折り曲げ部44を通過する。前記肩部30では、ばね蓄力ブレーキシリンダ12の縁部42が塑性変形される。
【0016】
公知のようにさらに、ばね蓄力ブレーキピストン18は、蓄力ばね16の作用に抗して、ばね蓄力ブレーキ室14の通気により解除位置にもたらすことができる。さらに、隔壁28と常用ブレーキピストン6との間に延びる常用ブレーキ室38の通気により、常用ブレーキピストン6は、一方では常用ブレーキピストン6に、他方では、常用ブレーキシリンダ4の端壁に支持された戻しばね46に抗して、緊締位置にもたらされる。ばね蓄力ブレーキピストンロッド24の内側に機械的な発動装置47が組み込まれていて、この発動装置によって、ばね蓄力ブレーキ装置10は、減圧時に、非常発動または補助発動させることができる。
【0017】
このような組み合わされた常用ブレーキ・ばね蓄力ブレーキ装置1の機能形式は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第102004060862号明細書に記載されているので、ここでは詳しく記載しない。
【0018】
組み合わされた常用ブレーキ・ばね蓄力ブレーキ装置1の内側に隔壁28とばね蓄力ブレーキシリンダ12の周壁48との間に形成された環状室50は、例えば、折り曲げ部44の領域において周壁48の周面にわたって分配配置された複数の通気口52によって周囲に接続されている。
【0019】
ライン、特にニューマチック式ラインまたはケーブルを、組み合わされた常用ブレーキ・ばね蓄力ブレーキ装置1に外側で固定するために固定装置54が設けられている。この固定装置54は固定ピン56を有しており、この固定ピンは、通気口52の1つの係止可能である。特に図2に示したように、固定装置54は、基体58から突出する弾性的に変形可能な有利には2つの脚60,62から成っており、これらの脚の間にはスリット64が設けられている。これらの脚60,62は端部側で、アンダカット部を備えた円錐状の横断面を有しており、脚60,62は、通気口52への導入の際に半径方向内側に向かって曲げられ、係止位置に達した後は、外側に向かってばね弾性的に戻る。これにより、アンダカット部が、通気口52の内縁部に背後から係止することができ、固定装置54はこれによりばね蓄力ブレーキシリンダ12において軸方向で保持されている。固定ピン56の直径および通気口52の直径は、固定装置54が、ばね蓄力ブレーキシリンダ12に対して相対的にピン軸を中心として自由に旋回可能であるように選択されている。
【0020】
半径方向内側に向かって脚60,62の弾性的な運動を可能にする固定ピン56のスリット64は同時に、環状室50の内部を大気に接続する接続通路を形成している。固定ピン56の差し込み状態で、スリット64が、ばね蓄力ブレーキシリンダ12の周壁48によってカバーされないようにするために、基体58からは例えば、ばね蓄力ブレーキシリンダ12の周壁48の外面に接触する、スペーサピン66の形の2つのスペーサが突出していて、この場合、図2に詳しく示したように、周壁48を越えて延びる、スリット64の端部区分68が大気に側方で接続されるようになっている。結果としてスリットの端部区分68は、2つの側に向かって開かれており、大気に連通されている。この場合、固定ピン56は、例えば、両スペーサピン66の間に配置されている。選択的には接続通路64は、基体58を貫通して延びて、大気に開口していても良い。
【0021】
さらに基体58には、弾性的なプラスチックケーブル接続装置70のための標準化された少なくとも2つの収容部が設けられていて、これらの収容部は異なる方向に向けられている。弾性的なプラスチックケーブル接続装置70は十分公知なものであって、一方の端部で舌片74を有し、他方の端部でループ76を有している弾性的に屈曲可能なプラスチックストリップ72から成っている。この場合、舌片74の表面には係止突起が設けられていて、この係止突起は、ループ76の開口に段階的に係止可能であって、ケーブル及び/又はラインの束または個々のケーブル及び/又はラインを挿入するために任意の巻き付け直径を調節することができ、抗張的に保持することができる。このように弾性的なプラスチックケーブル接続装置70は図3では、固定装置54に組み付けられているが、まだ開かれた状態で示されている。このようなプラスチックケーブル接続装置70は、標準化された、基体58から異なる方向に突出した収容部78,80に結合することができる。この収容部78,80は有利には、アンダカットされた横断面を有する収容ピンによって形成されており、プラスチックケーブル接続装置70の固定区分82の開口に係止可能である。このような固定区分82は、差し込み開口を有したスリーブ区分によって形成することができ、この差し込み開口から、差込み状態で収容ピン78,80に係合する係止突起が半径方向内側に向かって突出している。
【0022】
基体58、固定ピン56、スペーサピン66、収容ピン78,80は、プラスチックから成る一体のものとして形成することができる。付加的に、基体58には、弾性的なプラスチックケーブル接続装置70を通すための貫通スリット84を設けることができる。このプラスチックケーブル接続装置70は固有の固定区分を有している必要はない。とりわけ、複数の通気口52にこのような固定装置54を収容させることができる。何故ならば、固定ピン56における接続通路64によって換気および凝縮水の排出は常に保証されているからである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の有利な構成による固定装置を備えたブレーキシリンダの横断面図である。
【図2】図1の固定装置の一部を詳しく示した図である。
【図3】固定された弾性的なプラスチックケーブル接続装置を有した図1の固定装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1 常用ブレーキ・ばね蓄力ブレーキ装置、 2 常用ブレーキ装置、 4 常用ブレーキシリンダ、 6 常用ブレーキピストン、 8 常用ブレーキピストンロッド、 10 ばね蓄力ブレーキ装置、 12 ばね蓄力ブレーキシリンダ、 14 ばね蓄力ブレーキ室、 16 蓄力ばね、 18 ばね蓄力ブレーキピストン、 20 コンビブレーキシリンダ、 22 固定ピン、 24 ばね蓄力ブレーキピストンロッド、 26 貫通孔、 28 隔壁、 30 肩部、 32 ダイヤフラム、 34 ピストンディスク、 36 縁部、 38 常用ブレーキ室、 42 縁部、 44 折り曲げ部、 46 戻しばね、 48 周壁、 50 環状通路、 52 通気口、 54 固定装置、 56 固定ピン、 58 基体、 60,62 脚、 64 スリット、 66 スペーサピン、 68 端部区分、 70 プラスチックケーブル接続装置、 72 プラスチックストリップ、 74 舌片、 76 ループ、 78,80 収容ピン、 82 固定区分、 84 貫通スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルまたはラインをケーシング(12)に、特にブレーキシリンダのケーシングに外側で固定するための固定装置(54)であって、固定ピン(56)を有しており、該固定ピン(56)が、ケーシング(12)の通気口(52)に係止可能である形式のものにおいて、
固定ピン(56)に接続通路(64)が形成されていて、該接続通路を介して、係止状態で、ケーシング(12)の内部(50)が大気に接続されることを特徴とする、ケーブルまたはラインをケーシングに固定するための固定装置。
【請求項2】
固定ピン(56)が通気口(52)に、固定装置(54)がピン軸線を中心としてケーシング(12)に対して相対的に旋回可能であるように係止されている、請求項1記載の固定装置。
【請求項3】
固定ピン(56)が、基体(58)から突出する弾性的に変形可能な少なくとも2つの脚(60,62)を有しており、これらの脚の間には、接続通路(64)を形成するスリットが設けられている、請求項1又は2記載の固定装置。
【請求項4】
基体(58)から、ケーシング(12)の外面に接触する少なくとも1つのスペーサ(66)が突出しており、前記スリット(64)の、外面を越えて延びる端部区分(68)が、少なくとも側方で大気に接続されるようになっている、請求項3記載の固定装置。
【請求項5】
基体(58)にさらに、弾性的なプラスチックケーブル接続装置(70)を貫通案内するための貫通スリット(84)が設けられている、請求項3または4記載の固定装置。
【請求項6】
基体(58)に、弾性的なプラスチックケーブル接続装置(70)のための標準化された少なくとも2つの収容部(78,80)が設けられており、これらの収容部は異なる方向に向けられている、請求項3から5までのいずれか1項記載の固定装置。
【請求項7】
標準化された収容部(78,80)が、プラスチックケーブル接続装置(70)と係止可能であるように形成されている、請求項6記載の固定装置。
【請求項8】
標準化された収容部(78,80)が、アンダカット部を備えた横断面を有する収容ピンによって形成されており、この収容ピンが、プラスチックケーブル接続装置(70)の固定区分(82)の開口に係止可能である、請求項7記載の固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−537076(P2008−537076A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506987(P2008−506987)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003506
【国際公開番号】WO2006/111342
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(597007363)クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (110)
【氏名又は名称原語表記】Knorr−Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D−80809 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】