説明

ケーブルダクト本体とその製造装置

【課題】 開口が予め開設されることなく、必要な箇所のみに開口を工具を使用することなしに開設することができ、しかもバリが残らないケーブルダクト本体とする。
【解決手段】 収納したケーブル(図示省略)を外部に引き出すための開口114が側面部110に形成されるケーブルダクトであって、前記側面部110には前記開口114に対応した折取溝111が予め形成されており、この折取溝111の内側部分112を除去して前記開口114を形成するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルダクト本体と、その製造装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のケーブルダクトとしては、ケーブルを収納する略樋状の樹脂製のダクト本体と、このダクト本体を閉塞する樹脂製の蓋体とから構成されるものがある。
【0003】
ダクト本体は、断面略凹字形状であって、対向する一対の側面部にはケーブルを横方向に引き出すための開口が一定ピッチで形成されている。また、このダクト本体の底面には、ダクト本体を固定するためのネジを貫通させる長孔状の貫通孔が一定ピッチで形成されている。かかるダクト本体の側面の上端部には、前記蓋体の凸脈部が嵌まり込むためのくびれ部が形成されている。
【0004】
一方、前記蓋体は、前記くびれ部に嵌まり込む凸脈部が縁部に設けられている。
【0005】
【特許文献1】特開平03−040037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
配電盤のように外部から見えない箇所に設置されるものであればいいが、外回りのように目につきやすい箇所に設置されると、従来のケーブルダクトでは、側面部に予め開口が開設されているため、内部に収納されたケーブルが外部から視認できてしまう。
また、例えば、食品製造工場や半導体素子製造工場のように塵芥の介入を嫌う箇所では、側面部に予め開口が開設されている従来のケーブルダクトを使用することは困難である。なぜならば、ケーブルダクトの内部に塵芥が溜まったり、ケーブルダクトを介して塵芥の侵入や拡散が生じるおそれがあるからである。
【0007】
このため、側面部に狭いスリットを一定ピッチで形成し、ケーブルを引き出す部分のみ側面部を折り取って開口となるタイプのケーブルダクトもあるが、スリットを介してケーブルダクトの内外が連通している点では、上述した従来のものと同じである。
また、側面部を折り取って開口とすると、バリが残ってしまい、引き出されたケーブルの被覆を損傷するおそれもある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたもので、開口が予め開設されることなく、必要な箇所のみに開口を工具を使用することなしに開設することができ、しかもバリが残らないケーブルダクト本体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るケーブルダクト本体は、収納したケーブルを外部に引き出すための開口が側面部に形成されるケーブルダクト本体であって、前記側面部には前記開口に対応した折取溝が予め形成されており、この折取溝の内側部分を除去して前記開口を形成するように構成されている。
【0010】
前記開口になるべき部分とそれ以外の部分との間には、折取溝が形成されていない橋架部があるとよい。
また、前記橋架部は、開口の角部以外の部分に形成されているとよい。
【0011】
前記開口には、開口から引き出されたケーブルが嵌まり込む凹部が形成されているとよい。
【0012】
前記開口には、開口から引き出されたケーブルが嵌まり込むことができない大きさの凹部が形成されており、この凹部には前記折取溝が形成されていない橋架部がないとよい。
【0013】
本発明に係るケーブルダクト本体の製造装置は、収納したケーブルを外部に引き出すための開口を側面部に形成すべく、前記側面部に前記開口に対応した折取溝が予め形成されたケーブルダクト本体の製造装置であって、前記折取溝を形成するプレス金型を有しており、このプレス金型は、ケーブルダクト本体の側面部に内側から圧接され、前記折取溝に対応した内側凸脈を備えた内側金型と、ケーブルダクト本体の側面部に外側から圧接され、前記折取溝に対応した外側凸脈を備えた外側金型とを有しており、前記外側凸脈の刃先の角度は内側凸脈の刃先の角度より小さく設定されている。
【0014】
本発明に係る他のケーブルダクト本体の製造装置は、収納したケーブルを外部に引き出すための開口を側面部に形成すべく、前記側面部に前記開口に対応した折取溝が予め形成されたケーブルダクト本体の製造装置であって、前記折取溝を形成するプレス金型を有しており、このプレス金型は、ケーブルダクト本体の側面部に内側から圧接され、前記折取溝に対応した内側凸脈を備えた内側金型と、ケーブルダクト本体の側面部に外側から圧接され、前記折取溝に対応した外側凸脈を備えた外側金型とを有しており、前記外側凸脈の刃先の角度は内側凸脈の刃先の角度と等しく、かつ外側金型のケーブルダクト本体に対する圧接力は、内側金型のケーブルダクト本体に対する圧接力より大きく設定されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るケーブルダクト本体は、側面部の開口は折取溝から内側部分を除去するまでは閉塞されているので、必要な部分にのみ開口を形成することができる。このため、開口が不必要な箇所では、閉塞されたままの状態を維持するので、従来のケーブルダクト本体のように不必要な開口から内部のケーブルが見えたり、ケーブルダクトの内部を介しての塵芥の侵入という問題が発生しない。
【0016】
しかも、折取溝から内側部分を除去して開口を開設するため、手でも抜けるようになっている。なお、工具を使用して内側部分を除去してもよい。この折取溝を形成しておけば、その部分にはバリが生じないので、開口から引き出したケーブルの被覆部の損傷という問題も発生しない。
【0017】
さらに、折取溝に橋架部を設けておけば、例えば、搬送中に加わったわずかな力で折取溝の内側部分を除去されてしまうという問題も発生しない。しかも、この橋架部を開口の角部以外の部分に形成しておけば、橋架部に起因するバリが生じたとして、ケーブルの引き出しの際にケーブルはこのバリによって被覆部を損傷することがない。
【0018】
前記開口に、開口から引き出されたケーブルが嵌まり込む凹部が形成されていると、ケーブルは引き出される際にこの凹部に嵌まり込むので、ケーブルの引き出しの位置を安定させることができる。また、この凹部には前記折取溝が形成されていない橋架部がなければ、この凹部にバリが生じることはないので、ケーブルの被覆部の損傷を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係るケーブルダクト本体の概略的側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るケーブルダクト本体の概略的断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るケーブルダクト本体の概略的底面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るケーブルダクト本体の側面部に形成される折取溝を示す図面であって、同図(A)は概略的断面図、同図(B)は概略的正面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に係るケーブルダクト本体の概略的側面図である。
【図6】本発明のさらに他の実施の形態に係るケーブルダクト本体の側面部に形成される折取溝を示す図面であって、同図(A)はいわゆる変形十字型の開口が形成される折取溝の概略的正面図、同図(B)はいわゆる変形H字型の開口が形成される折取溝の概略的正面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るケーブルダクト本体の側面部に折取溝をプレス金型によって形成する際の概略的説明図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るケーブルダクト本体の折取溝の内側部分に形成される白化部と側面部の湾曲とを除去するための工程の概略的説明図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るケーブルダクト本体の折取溝の内側部分に形成される白化部と側面部の湾曲とを除去するため方法を示す概略的説明図である。
【図10】本発明の実施の形態に係るケーブルダクト本体の折取溝の内側部分に形成される白化部と側面部の湾曲とを除去するため他の方法を示す概略的説明図である。
【図11】本発明の実施の形態に係るケーブルダクト本体の側面部に折取溝をプレス金型によって形成する際の概略的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態に係るケーブルダクト本体100は、収納したケーブル(図示省略)を外部に引き出すための開口114が側面部110に形成されるケーブルダクトであって、前記側面部110には前記開口114に対応した折取溝111が予め形成されており、この折取溝111の内側部分112を除去して前記開口114を形成するようになっている。
【0021】
かかるケーブルダクト本体100は、図2に示すように、一対の対向した側面部110と、この側面部110を底面側で接続する底面部120とが一体になって略樋状に形成されている。かかるケーブルダクト本体100は、側面部110の開放側に図示しない蓋体を係止することで、筒状になる。
なお、このケーブルダクト本体100は、合成樹脂板に対して折曲加工やプレス加工等を施すことで構成されている。また、このケーブルダクト本体100は、軟化した合成樹脂をコ字形状に押出成形した後、プレス加工を施すことで構成することも可能である。
【0022】
前記底面部120は、図3に示すように、一定間隔で長穴121が開設されている。この長穴121は、ケーブルダクト本体100を壁面等に固定する際のビス穴として使用される。
【0023】
前記側面部110は、上端部に前記蓋体を係止するための係止部113が形成されている。この係止部113より底面部120側には、一定間隔で、開口114が形成できるように折取溝111が形成されている。なお、図1においては、左側の4つは開口114が内側部分112で閉塞された状態を示し、右側の3つは開設された開口114を示している。
【0024】
この折取溝111は、後述するケーブルダクト本体の製造装置によって形成されるものであって、ケーブルダクト本体100の側面部110に形成されるべき開口114形状に沿って側面部110の外側及び内側から凸脈311、321を圧接されることで形成されるものである。従って、この折取溝111が形成された部分は、他の部分より肉薄になっているため、折取溝111で囲まれた部分に力を加えると、折取溝111から外れることで、折取溝111の内側部分112が除去され、開口114が形成されるのである。
なお、この折取溝111の内側部分112は、側面部110の外側に向かって凸になっている。
【0025】
側面部110に形成されるべき開口114は、例えば、図1の右側の3つの開口114に示されるように、四隅の角部が丸まった縦長の長方形状のものがある。ここで、四隅の角部を丸く形成したのは、開口114から引き出されるケーブルの被覆部を損傷しないようにするためである。すなわち、ケーブルをケーブルダクトから引き出す際、ケーブルは必ず開口114の角部を擦りながら引き出される。このため、開口114の角部が丸くないと、ケーブルの被覆部が損傷(剥離)してしまうおそれがある。かかる被覆部の損傷が発生しないように開口114の角部を丸く形成するのである。
【0026】
前記開口114は、ケーブルを引き出すべき箇所のみに形成し、他の部分は閉塞された状態のままにしておけば、従来のケーブルダクト本体のように不必要な部分が開放されてケーブルダクト本体の内部のケーブルが外部から視認できたり、塵芥の侵入、拡散という問題は最小限に抑えることができる。
【0027】
前記折取溝111が開口114を形成すべき部分の全周に渡って形成されていると、折取溝111の内側部分112を除去する力は小さくてよい。しかしながら、前記力があまりに小さいと前記内側部分112が不用意に除去されてしまう。例えば、搬送中に加わったわずかな力で折取溝111の内側部分112を除去されてしまうおそれがある。
【0028】
かかる問題を未然に防止するため方策として以下のような構成がある。
すなわち、前記開口になるべき部分である内側部分112とそれ以外の部分との間に、折取溝111が設けられていない部分である橋架部115を設けるのである。
【0029】
この橋架部115は、図5に示すように、1つの折取溝111に少なくとも2箇所以上は設けられるのが望ましい。なぜなら、橋架部115が1箇所であると、橋架部115以外の折取溝111が外れた場合、1箇所の橋架部115だけで折取溝111の内側部分112が保持されることになるので、前記内側部分112が脱落し易くなる。
しかし、橋架部115が2箇所以上あると、橋架部115以外の折取溝111が外れても、2箇所以上の橋架部115で前記内側部分112が保持されることになるので、内側部分112の脱落のおそれが格段に低下するためである。
なお、図5においては、左側の4つは開口114が内側部分112で閉塞された状態を示し、右側の3つは開設された開口114を示している。
【0030】
この橋架部115は、開口114の角部以外の部分に形成されている。なぜなら、折取溝111の内側部分112を除去すると、橋架部115にはバリが残りやすいためである。もし、開口114の角部に橋架部115が形成されており、内側部分112の除去の後に橋架部115に起因するバリが残ったとすると、上述したように、ケーブルの開口114から引き出しの際に、ケーブルが集中的にバリに接触し、その結果、ケーブルの被覆部の剥離が発生するという問題が生じるおそれがあるためである。
従って、橋架部115は、開口114の角部以外の部分に形成されるのが望ましいのである。
なお、図5においては、右側から3つ目の開口114に橋架部115に起因するバリが残っている。
【0031】
前記橋架部115は、例えば、図5に示すように、縦長の長方形状の開口114の長辺の中央部、短辺の中央部の合計4箇所に設ける。また、橋架部115は、長辺の中央部の2箇所のみ、短辺の中央部の2箇所のみに設けることも可能である。
【0032】
ところで、開口114の形状は、上述したような四隅の角部が丸まった縦長の長方形状のものは限定されていない。正方形状や、三角形状、円形状であってもよい。
【0033】
また、開口114には、図6に示すように、縦長の長方形状の短辺にそれぞれ1つずつ凹部116を設けたもの(図6(A)参照)や、縦長の長方形状の短辺にそれぞれ2つずつ凹部116を設けたもの(図6(B)参照)もある。これらの凹部116は、ケーブルが嵌まり込むことが可能な大きさに設定されている。
このような凹部116が形成された開口114であると、開口114から引き出されたケーブルは必ず凹部116に誘導されて嵌まり込む。
【0034】
そして、この凹部116には、前記橋架部115は形成されていない。例えば、図6(A)に示す変形十字型の開口114であれば凹部116の両脇に橋架部115を設けている。また、図6(B)に示す変形H字型の開口114であれば、2つの凹部116の間に位置する凸部117に橋架部115を設けている。
このため、凹部116には折取溝111の内側部分112を除去した際に発生するバリが存在しない。従って、凹部116に嵌まり込んで引き出されたケーブルには、被覆部の剥離は生じないのである。
【0035】
次に、このようなケーブルダクト本体100の製造工程や、製造装置について説明する。
帯板状の合成樹脂板を加熱し折曲形成することで、樋形状のケーブルダクト本体100の原形を構成する。なお、この工程ですでに側面部110の係止部113は形作られている。
次に、底面部120の長穴121を開設する。この長穴121の開設は、プレス加工にて行う。
なお、このケーブルダクト本体100は、上述したように、軟化した合成樹脂をコ字形状に押出成形した後、プレス加工を施すことで構成することも可能である。
【0036】
次に、側面部110の折取溝111を形成する。この折取溝111を形成するプレス金型300は、図7に示すように、ケーブルダクト本体100の側面部110に内側から圧接され、前記折取溝111に対応した内側凸脈311を備えた内側金型310と、ケーブルダクト本体100の側面部110に外側から圧接され、前記折取溝111に対応した外側凸脈321を備えた外側金型320とを有しており、前記外側凸脈321の刃先の角度αは内側凸脈311の刃先の角度βより小さく設定されている。
【0037】
前記内側金型310は、ケーブルダクト本体100の内側に位置し、側面部110の折取溝111を内側から形成するようになっている。なお、この内側金型310は、折取溝111を形成する際に固定されている。なぜなら、ケーブルダクト本体100の内側はスペース的に余裕が少ないためである。従って、内部にスペース的な余裕があるケーブルダクト本体100の場合には、この内側金型310をも動かすようにすることも可能である。
【0038】
一方、前記外側金型320は、ケーブルダクト本体100の外側に位置し、側面部110の折取溝111を外側から形成するようになっている。なお、この外側金型320は、折取溝111を形成する際にケーブルダクト本体100の側面部に向かって進退するように移動する。なぜなら、ケーブルダクト本体100の外側は内側と比較してスペース的な余裕が大きいためである。
【0039】
外側金型320の外側凸脈321の先端の刃先は、図7に示すように、内側に傾斜面が形成されている。そしてこの刃先の角度αは、例えば、30°に設定されている。
一方、内側金型310の内側凸脈311の先端の刃先は、図7に示すように、内側に傾斜面が形成されている。そして、この刃先の角度βは、例えば、60°に設定されている。
すなわち、外側凸脈321の刃先の角度αは、内側凸脈311の刃先の角度βより小さく設定されているのである。
【0040】
しかも、外側凸脈321の刃先と、内側凸脈311の刃先とは、同一平面上に位置するようになっている。従って、もし、外側金型320を内側金型310に向かって際限なく移動させれば、両金型310、320の両凸脈311、321の先端の刃先は衝突することになる。もし、両凸脈311、321の先端が衝突すると、折取溝111はその時点で切断されてしまうので、注意が必要である。前記橋架部115があったとしても、橋架部115以外の部分は切断されてしまい、その箇所から塵芥の侵入を許してしまうので、切断されないようにすることが大切である。
なお、それほど塵芥の侵入を重要視しない場所で使用されるものであれば、橋架部115以外の部分が切断されてしまってもよい。
しかし、橋架部115を形成しないタイプのものでは、開口114が形成されてしまうので、絶対的に両凸脈311、321の先端の刃先の衝突は回避される必要がある。
また、切断されるということは、両凸脈311、321の先端の刃先が衝突することを意味するので、両金型310、320の寿命という観点からは衝突しないようにすることが好ましいのはいうまでもない。
【0041】
橋架部115を形成するには、両凸脈311、321或いはいずれか一方の凸脈311、321に、凹部(図示省略)を形成することで可能となる。すなわち、橋架部115を形成すべき箇所に相当する箇所に前記凹部を形成しておけば、その部分には力が加わらないために橋架部115を形成することができるのである。
【0042】
さて、上述したような外側金型320及び内側金型310を使用すると、側面部110の内側部分112は、図4(A)に示すように、必ず外側に向かったマウンド状の盛り上がりが形成される。そして、マウンド状の盛り上がりの部分には、図4(B)に破線で示すような両端がY字状になった白化部119が形成される。この白化部119は、側面部110が変形した際の内部応力によって形成されると推測される。なお、白化部119があってもケーブルダクト本体100としての性能には影響を与えないが、意匠上で問題とされる場合には、熱加工による解消も可能となっている。
【0043】
また、側面部110は、マウンド状の盛り上がりが形成されるだけではなく、全体として内側に向かって湾曲してしまう。この湾曲も側面部110が変形した際の内部応力によって形成されると推測される。
【0044】
これらの白化部119の解消、側面部110の湾曲を解消するためには、以下の工程が有効である。
開口114に相当する内側部分112に対して、図8に示すように、平台400の上に載置された側面部110の外側方向から加温プレート410を押圧するのである。この加温プレート410は、外側に向かってマウンド状に盛り上がった内側部分112に接触する凸部411が一定間隔で設けられている。そして、この加温プレート410は200℃程度に加熱されており、凸部411が押し当てられることで、マウンド状に盛り上がった内側部分112を加熱する。また、前記凸部411は、側面部110に対して圧力をも加えることになるので、湾曲を修正することが可能になる。なお、加温プレート410が内側部分112を含む側面部110に対して加える圧力は、例えば、200kg〜800kg程度である。
【0045】
また、加温プレート410による加温、加圧の他に、以下のような手段で白化部119の解消、側面部110の湾曲の解消を図ることができる。
すなわち、図9に示すように、開口114となるべく形成された複数の折取溝111の間に、側面部110の外側から図示しない折取溝間凹溝形成手段を圧接して凹溝118Aを形成するのである。
【0046】
このように凹溝118Aを折取溝111の間に形成すると、側面部110に折取溝111を形成した際の内部応力が除去されることで、白化部119が解消され、同時に、側面部110の湾曲が解消されると考えられる。
【0047】
なお、前記折取溝間凹溝形成手段としては、プレス金型を用いるのが最も一般的であろうと思われる。
【0048】
また、図10に示すように、折取溝111が側面部110に形成されていない状態で、折取溝111の内側の開口114となるべき部分(内側部分112)に側面部110の外側から圧接されてスリット118Bを形成しておき、その後に折取溝111を形成すると、白化部119が形成されることなく、しかも側面部110が湾曲しないようになる。
【0049】
前記スリット118Bが形成された側面部110にプレス金型300を用いて折取溝111を形成すると、折取溝111の内側部分112が外側に向かってマウンド状に盛り上がって形成されることで、スリット118Bは自然と閉塞される。そして、白化部119が形成される部分は、予めスリット118Bが形成されているので、白化部119が形成されることはない。
なお、図10においては、折取溝111が形成されているため、スリット118Bは実際には閉塞しているので、縦長の直線状にあらわされるが、説明のため、スリット118Bは、折取溝111が形成される前の状態、すなわち開設された状態で示している。
【0050】
上述した実施の形態では、プレス金型300の内側金型310の内側凸脈311の刃先の角度βと、外側金型320の外側凸脈321の刃先の角度αとでは、前記外側凸脈321の刃先の角度αは内側凸脈311の刃先の角度βより小さく設定しているとした。
このように両凸脈311、321の角度α、βに変化を設けたのは、例えば、図11に示すように、外側凸脈321の刃先の角度αと、内側凸脈311の刃先の角度βとが同じであると、内側部分112のマウンド状の盛り上がりが外側に向かって形成されるものと、内側に向かって形成されるものとが混在し、一定しないためである。
【0051】
なお、図11(A)では外側凸脈321の刃先の角度αと、内側凸脈311の刃先の角度βとはそれぞれ60°と等しく設定されている。
また、図11(B)では外側凸脈321の刃先の角度αと、内側凸脈311の刃先の角度βとはそれぞれ30°と等しく設定されている。
【0052】
しかしながら、外側凸脈321の刃先の角度αは内側凸脈311の刃先の角度βと等しくても、外側金型320のケーブルダクト本体100の側面部110に対する圧接力が、内側金型310のケーブルダクト本体100の側面部110に対する圧接力より大きく設定されていると、内側部分112は必ず外側に向かってマウンド状に盛り上がるようになる。
【0053】
このように、外側金型320の外側凸脈321の刃先の角度αと、内側金型310の内側凸脈311の刃先の角度βとを等しくするということは、外側金型320と内側金型310とが共通したものになるので、金型の種類の低減と、それによるコストの低減とに寄与するというメリットがある。
【符号の説明】
【0054】
100 ケーブルダクト本体
110 側面部
111 折取溝
112 内側部分
114 開口
115 橋架部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納したケーブルを外部に引き出すための開口が側面部に形成されるケーブルダクト本体において、前記側面部には前記開口に対応した折取溝が予め形成されており、この折取溝の内側部分を除去して前記開口を形成することを特徴とするケーブルダクト本体。
【請求項2】
前記開口になるべき部分とそれ以外の部分との間には、折取溝が形成されていない橋架部があることを特徴とする請求項1記載のケーブルダクト本体。
【請求項3】
前記橋架部は、開口の角部以外の部分に形成されていることを特徴とする請求項2記載のケーブルダクト本体。
【請求項4】
前記開口には、開口から引き出されたケーブルが嵌まり込む凹部が形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のケーブルダクト本体。
【請求項5】
前記開口には、開口から引き出されたケーブルが嵌まり込むことができない大きさの凹部が形成されており、この凹部には前記折取溝が形成されていない橋架部がないことを特徴とする請求項1記載のケーブルダクト本体。
【請求項6】
収納したケーブルを外部に引き出すための開口を側面部に形成すべく、前記側面部に前記開口に対応した折取溝が予め形成されたケーブルダクト本体の製造装置であって、前記折取溝を形成するプレス金型を有しており、このプレス金型は、ケーブルダクト本体の側面部に内側から圧接され、前記折取溝に対応した内側凸脈を備えた内側金型と、ケーブルダクト本体の側面部に外側から圧接され、前記折取溝に対応した外側凸脈を備えた外側金型とを有しており、前記外側凸脈の刃先の角度は内側凸脈の刃先の角度より小さいことを特徴とするケーブルダクト本体の製造装置。
【請求項7】
収納したケーブルを外部に引き出すための開口を側面部に形成すべく、前記側面部に前記開口に対応した折取溝が予め形成されたケーブルダクト本体の製造装置であって、前記折取溝を形成するプレス金型を有しており、このプレス金型は、ケーブルダクト本体の側面部に内側から圧接され、前記折取溝に対応した内側凸脈を備えた内側金型と、ケーブルダクト本体の側面部に外側から圧接され、前記折取溝に対応した外側凸脈を備えた外側金型とを有しており、前記外側凸脈の刃先の角度は内側凸脈の刃先の角度と等しく、かつ外側金型のケーブルダクト本体に対する圧接力は、内側金型のケーブルダクト本体に対する圧接力より大きく設定されていることを特徴とするケーブルダクト本体の製造装置。
【請求項8】
請求項6又は7記載のケーブルダクト本体の製造装置において、前記プレス金型によって形成された折取溝の内側の部分に押圧される加温手段を有することを特徴とするケーブルダクト本体の製造装置。
【請求項9】
請求項6又は7記載のケーブルダクト本体の製造装置において、開口となるべく形成された複数の折取溝の間に側面部の外側から圧接されて凹溝を形成する折取溝間凹溝形成手段を有することを特徴とするケーブルダクト本体の製造装置。
【請求項10】
請求項6又は7記載のケーブルダクト本体の製造装置において、折取溝の内側の開口となるべき部分に側面部の外側から圧接されてスリットを形成する溝内スリット形成手段を有することを特徴とするケーブルダクト本体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−90555(P2013−90555A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232227(P2011−232227)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000195029)星和電機株式会社 (143)
【Fターム(参考)】