説明

ケーブルトラフの施工構造

【課題】施工作業が迅速に行えると共に、施工作業コストを安価にすることの出来るケーブルトラフの施工構造を提供する。
【解決手段】ケーブルトラフの一方側側壁部として利用するトンネル、道路あるいは線路の側壁と、底壁部及び該底壁部の幅方向一端から略垂直に立ち上がる他方側側壁部とにより断面略L字状をなすケーブルトラフ本体と、を有し、
ケーブルトラフ本体の他方側側壁部内側と対向する側壁の一方側側壁部内側にはトラフ蓋載置用段つき部が各々形成された、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば道路、トンネル、高架型高速道路あるいは高架橋型鉄道用線路などの路面幅方向端部において側壁や高欄を利用して施工するケーブルトラフの施工構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば道路、トンネル内、高架型高速道路あるいは高架型鉄道用線路の路面幅方向端部に各種の配線ケーブルを収納するケーブルトラフが設けられ、かつ当該ケーブルトラフの施工に際しては数多くの提案がなされている。
例えば特開平6−284543号公報にはトラフ受け台の形状・寸法を変えることなく幅の異なるトラフを敷設できる配線路が提案されている等のごときである。
【0003】
【特許文献1】特開平6−284543号公開公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かくして、本発明は、前記従来からの各種提案にさらに思考、改良を加えて創案されたものであって、施工作業が迅速に行えると共に、施工作業コストを安価にすることの出来るケーブルトラフの施工構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、
ケーブルトラフの一方側側壁部として利用するトンネル、道路あるいは線路の側壁と、底壁部及び該底壁部の幅方向一端から略垂直に立ち上がる他方側側壁部とにより断面略L字状をなすケーブルトラフ本体と、を有し、
前記ケーブルトラフ本体は、プレキャストコンクリート製品で形成し、前記底壁部には、道路あるいは線路の路面上に打設されたモルタルと一体化させる連結アンカーの施工用穴が設けられ、
かつ、ケーブルトラフ本体の長手方向両端面の底壁部と他方側側壁部との境目部には水抜き穴形成用切り欠きが設けられ、
前記ケーブルトラフ本体の他方側側壁部内側と対向する側壁の一方側側壁部内側にはトラフ蓋載置用段つき部が各々形成された、
ことを特徴とし、
または、
ケーブルトラフの一方側側壁部として利用する道路あるいは線路の高欄と、底壁部及び該底壁部の幅方向一端から略垂直に立ち上がる他方側側壁部とにより断面略L字状をなすケーブルトラフ本体と、を有し、
前記ケーブルトラフ本体は、プレキャストコンクリート製品で形成し、前記底壁部には、道路あるいは線路の路面上に打設されたモルタルと一体化させる連結アンカーの施工用穴が設けられると共に、長手方向略中央には吊り上げナット穴が設けられ、
かつ、ケーブルトラフ本体の長手方向両端面の底壁部と他方側側壁部との境目部には水抜き穴形成用切り欠きが設けられ、
前記ケーブルトラフ本体の他方側側壁部内側と対向する高欄の一方側側壁部内側にはトラフ蓋載置用段つき部が各々形成された、
ことを特徴とし、
または、
前記高欄は、CFRP製高欄である、
ことを特徴とするものである。

【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、施工作業が迅速に行えると共に、施工作業コストを安価にしうるケーブルトラフの施工構造を提供出来るとの効果を奏する。

【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明を図に示す実施例に基づいて説明する。
図1に本発明によるケーブルトラフの施工構造を示す。
【0008】
図1において、符号1は高架橋型の鉄道用線路を示し、当該高架型鉄道用線路1の幅方向両端部には各種複数のケーブル2・・・が収納されたケーブルトラフ3が前記高架型鉄道用線路1の長手方向に向かって敷設される。
【0009】
なお、本発明において、高架型の鉄道線路に限定されるものではなく、一般道路などの交通路でも構わない。
【0010】
符号4は鉄道用線路1の高欄であり、該鉄道用線路1の長手方向に向かって側壁状に設置されている。
【0011】
該高欄4は防音壁、遮音壁の機能をも果たすものであり、いわゆるCFRP製、すなわち炭素繊維強化プラスチック製で形成されることが近年数多く見られる。 当該炭素繊維強化プラスチック製で形成される近年の高欄4は、従来製品の高欄4と比較すると、従来品の5分の1乃至10分の1の重量にすることが出来、超軽量化をはかることができる。また、施工作業性に優れており、高欄施工の工期を大幅に短縮出来る。
【0012】
さらに、防音特性、謝恩特性にも優れ、前記の超軽量化の効果も相まって、軽量化と防音性、遮音性を両立できるものとされている。
【0013】
また、従来製品に比して、高強度、高剛性であり、しかも腐食せず、小片剥落がないため耐久性、安全性がきわめて高いものとなっている。
【0014】
一般に、本発明による高欄4は、図から理解されるように、発泡体などにより構成された所定の厚みを有する平板状のコア材5と、該コア材5を被覆するスキン層6とにより構成されている。そして、前記スキン層6が炭素繊維、合成樹脂などの樹脂で構成される。
【0015】
ここで、前記高欄4は、線路幅方向両端部から、あるいは一方側の端部から上方に向かい立ち上がって形成され、かつ線路の長手方向に向かって長尺に連続して設けられている。
【0016】
しかして、本発明では、ケーブルトラフ3の施工に際し、前記高欄4などをケーブルトラフ3の一方側の側壁として利用するものとした。
【0017】
次いで、符号7は、底壁部8及び該底壁部8の幅方向一端から略垂直に立ち上る他方側側壁部9とによって断面略L字状をなして形成されたケーブルトラフ本体を示す。
【0018】
ここで、該ケーブルトラフ本体7は、あらかじめ工場でプレキャストコンクリート製品として形成される。このように、ケーブルトラフ3を形成するために大部分の時間が費やされるケーブルトラフ本体7の部分をあらかじめプレキャストコンクリート製品としておくと、このプレキャスト製品化したケーブルトラフ本体7・・・を製造して製造工場に大量にストックしておき、その後必要に応じて大量に施工現場(高架型鉄道用線路1内)へ運搬できる。
【0019】
施工現場では、これらケーブルトラフ本体7・・・を線路長手方向に順次接続してケーブルトラフ3を敷設するのみですみ、大幅に施工時間が短縮でき、施工コストも安価にすることが出来る。しかも従来に比して大幅に品質も向上させることが出来るとのメリットがある。
【0020】
ここで、前記ケーブルトラフ本体7の底壁部8には、道路あるいは線路の路面上に打設されるモルタル15と一体化させる連結アンカー16の施工用穴10が設けられていると共に、長手方向略中央には吊り上げ運搬用の吊り上げナット穴11が設けられている。
【0021】
この連結アンカー16の施工用穴10及び吊り上げ運搬用の吊り上げナット穴11の形成個数については何ら制限されるものではなく、それぞれ2個以上の複数個設けても構わないものである。
図7に示す具体例では、連結アンカー16の施工用穴10は底壁部8の長手方向端部側に1個ずつ、また吊り上げナット穴11は1個の合計3個形成してある。
【0022】
さらに、ケーブルトラフ本体7の長手方向両端面の底壁部8及び他方側側壁部9との境目部には水抜き穴形成用切り欠き12が半円状に切り欠かれて設けられおり、前記ケーブルトラフ本体7がその長手方向に接続されたとき、略円状の水抜き穴が形成されることになる。
【0023】
ところで、前記ケーブルトラフ本体7における他方側側壁部9の上端内側には略L字状に凹んで形成されたトラフ蓋載置用段つき部13が設けられている。
【0024】
また、ケーブルトラフ本体7の他方側側壁部9と対向する、例えば線路などの高欄4あるいは側壁の一方側側壁部内側においても略L字状に凹んで形成されたトラフ蓋載置用段つき部13が設けられる。
【0025】
例えば、線路などの高欄4あるいは側壁の内側において、略L字状に凹んで形成されたトラフ蓋載置用段つき部13があらかじめ設けられていることもあるが、このようなトラフ蓋載置用段つき部13があらかじめ設けられていないときは、施工現場において新たに高欄4や側壁の内側に前記トラフ蓋載置用段つき部13を形成する必要がある。しかし、この形成作業は決して困難なものではなく、例えば長尺の角棒状部材を線路などの高欄4あるいは側壁の内側に水平方向へ延出させて取り付ければよいのである。
【0026】
このような取り付け作業により、固定した角棒状部材の上面と、線路などの高欄4あるいは側壁の内側面とによりトラフ蓋載置用段つき部13が容易に形成できることとなる。
【0027】
そして、これら略L字状に凹んで形成されたトラフ蓋載置段つき部13,13間にケーブルトラフ蓋14が載置される。
【0028】
次に、本発明によるケーブルトラフ3の施工につき説明する。
【0029】
まず鉄道の線路あるいは高速道路あるいはトンネルの路面幅方向端部に図に示すようにモルタル15を打設する。ついでケーブルトラフ本体7を前記鉄道の線路あるいは高速道路あるいはトンネルの路面幅方向端部に敷設する。
【0030】
ここで、ケーブルトラフ本体7の吊り上げ運搬作業及び敷設作業は、前記した吊り上げナット穴11が利用される。
【0031】
すなわち、ケーブルトラフ本体7を構成する他方側側壁部9の長手方向両上端部を所定の把持部材で把持すると共に、前記の吊り上げナット穴11にボルト状吊り上げ棒を螺合し、いわゆる3点吊りの状態にして吊り上げ、かつ運搬し、所定位置に載置するのである。
【0032】
ところで、ケーブルトラフ本体7の敷設箇所には、あらかじめ棒状の連結アンカー16、16が突設されて仮設されている。よって、吊り上げられているケーブルトラフ本体7の前記連結アンカー16の施工用穴10、10に前記突設された連結アンカー16が遊嵌するように降下させれば、簡単に位置決めできて所定箇所にケーブルトラフ本体7を敷設できるものとなる。
【0033】
これによりケーブルトラフ本体7の迅速、確実な敷設が確保できるとの効果が得られる。
【0034】
しかして、前記ケーブルトラフ本体7の敷設により、鉄道の線路あるいは高速道路あるいはトンネルの路面幅方向端部には、高欄4や側壁の内側側壁と略L字状をなすケーブルトラフ本体7とにより断面凹状をなすケーブルトラフ3の収納庫が形成できる。
【0035】
なお、連結アンカー16の施工用穴10からは例えば固定用モルタル15を打設して、ケーブルトラフ本体7を前記モルタル15に固定するものとする。
【0036】
かかる敷設作業を、路面の長手方向に向かってケーブルトラフ本体7を繋げながら行う。
【0037】
そして、最終的には、ケーブルトラフ3内に各種のケーブル2・・・を収納した後、対向するトラフ蓋載置用段つき部13,13間にケーブルトラフ蓋14を載置してケーブルトラフの施工終了となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の構成を説明する構成説明図(その1)である。
【図2】本発明の構成を説明する構成説明図(その2)である。
【図3】本発明の構成を説明する構成説明図(その3)である。
【図4】本発明による高欄の構成を説明する構成説明図(その1)である。
【図5】本発明による高欄の構成を説明する構成説明図(その2)である。
【図6】ケーブルトラフ本体の構成を説明する構成説明図(その1)である。
【図7】ケーブルトラフ本体の構成を説明する構成説明図(その2)である。
【符号の説明】
【0039】
1 鉄道用線路
2 ケーブル
3 ケーブルトラフ
4 高欄
5 コア材
6 スキン層
7 ケーブルトラフ本体
8 底壁部
9 他方側側壁部
10 連結アンカーの施工用穴
11 吊り上げナット穴
12 水抜き穴形成用切り欠き
13 トラフ蓋載置用段つき部
14 ケーブルトラフ蓋
15 モルタル
16 連結アンカー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルトラフの一方側側壁部として利用するトンネル、道路あるいは線路の側壁と、底壁部及び該底壁部の幅方向一端から略垂直に立ち上がる他方側側壁部とにより断面略L字状をなすケーブルトラフ本体と、を有し、
前記ケーブルトラフ本体は、プレキャストコンクリート製品で形成し、前記底壁部には、道路あるいは線路の路面上に打設されたモルタルと一体化させる連結アンカーの施工用穴が設けられ、
かつ、ケーブルトラフ本体の長手方向両端面の底壁部と他方側側壁部との境目部には水抜き穴形成用切り欠きが設けられ、
前記ケーブルトラフ本体の他方側側壁部内側と対向する側壁の一方側側壁部内側にはトラフ蓋載置用段つき部が各々形成された、
ことを特徴とするケーブルトラフの施工構造。

【請求項2】
ケーブルトラフの一方側側壁部として利用する道路あるいは線路の高欄と、底壁部及び該底壁部の幅方向一端から略垂直に立ち上がる他方側側壁部とにより断面略L字状をなすケーブルトラフ本体と、を有し、
前記ケーブルトラフ本体は、プレキャストコンクリート製品で形成し、前記底壁部には、道路あるいは線路の路面上に打設されたモルタルと一体化させる連結アンカーの施工用穴が設けられると共に、長手方向略中央には吊り上げナット穴が設けられ、
かつ、ケーブルトラフ本体の長手方向両端面の底壁部と他方側側壁部との境目部には水抜き穴形成用切り欠きが設けられ、
前記ケーブルトラフ本体の他方側側壁部内側と対向する高欄の一方側側壁部内側にはトラフ蓋載置用段つき部が各々形成された、
ことを特徴とするケーブルトラフの施工構造。

【請求項3】
前記高欄は、CFRP製高欄である、
ことを特徴とする請求項2記載のケーブルトラフの施工構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−282345(P2007−282345A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103851(P2006−103851)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(592243313)フジプレコン株式会社 (10)
【Fターム(参考)】