説明

ケーブルユニットおよびアース線の接続方法

【課題】より簡易にノイズを防止できるケーブルユニットを提供する。
【解決手段】ケーブルユニット10は、フラットケーブル12と、当該フラットケーブル12を被覆するシールドチューブ14と、を備えている。シールドチューブ14は内側に導電層22、外側に絶縁層20が形成された筒状部材である。このシールドチューブ14の一端は、外側に折り返した後、導電層22が互いに向かい合うべく当該折り返し部を更に折り返す。そして、向かい合う導電層の間にアース線24のアース端子を挟み込んだ状態で、アース端子をカシメる。アース線接続後のシールドチューブ14の両端は、絶縁テープ26で被覆される。そして、当該シールドチューブ14にフラットケーブル12を挿通することでケーブルユニット10が構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に導電層が、外部に絶縁層が形成された筒状の保護チューブで、信号ケーブルが被覆されたケーブルユニット、および、当該ケーブルユニットへのアース線の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置の多くは、信号ケーブル、例えば、フラットケーブルなどを用いて各電子部品間での信号の送受を実現している。かかる電子装置のうち、高い信号品質が要求される電子装置、例えば、オーディオ装置などでは、信号に重畳される電磁ノイズが大きな問題となる。
【0003】
そのため、従来から、信号ケーブルを電磁ノイズからシールドするための技術が多数提案されている。例えば、特許文献1には、金属箔層と絶縁層とを積層して構成したシールド体により電線を被覆するとともに、当該シールド体を接地することで、電線を電磁ノイズからシールドする技術が開示されている。この特許文献1においては、シールド体で被覆された電線を電子部品に接続するために、当該電線をシールド体の途中から引き出している。また、シールド体を接地するために、シールド体の端部を外側に折り返してアース端子を形成するとともに、当該アース端子をネジ等によりボディやシールドケースに締め付けている。
【0004】
また、別のシールド技術としては、内側に導電層、外側に絶縁層が形成された筒状のシールドチューブに信号ケーブルであるフラットケーブルを挿通するとともに、当該シールドチューブの内側、すなわち、導電層にアース線のアース端子を接続する技術も知られている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−308042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの従来技術によれば、電磁ノイズある程度、シールドすることができる。しかし、特許文献1に記載の技術では、シールド体の端部を折り返して形成されたアース端子において、導電層が外部に露出している。この場合、当該導電層が他の電子部品やコネクタ等に接触、短絡し、何らかの不具合を招く恐れがあった。また、シールド体の途中から電線を引き出すという構成上、電線の端部近傍まで、シールド体で被覆することは困難であった。その結果、電線のうちシールド体で被覆されない部分の面積が大きくなり、電磁ノイズの影響を受けてしまうという問題があった。
【0007】
また、シールドチューブでフラットケーブルを被覆する技術の場合、導電層は外部に殆ど露出しないため、他の電子部品との短絡の問題はある程度解消される。しかし、シールドチューブの端部、すなわち、シールドチューブの切り落とし断面においては、導電層は露出した状態となる。そして、このシールドチューブの端部において露出した導電層とフラットケーブルの端部に接続されるコネクタとの短絡を防止するために、当該技術においても、シールドチューブを短くして、シールドチューブ端部とフラットケーブル端部とを離す必要があった。その結果、やはり、フラットケーブルのうち電磁シールドされる範囲が小さくなり、信号品質の低下等を招く場合があった。さらに、シールドチューブの内側にアース端子を接続する構成の場合、当該アース端子接続のスペースを確保するために、フラットケーブルに比してシールドチューブを幅広にする必要があった。そして、幅広のシールドチューブを用いた場合、ケーブル配線のためのスペースの増加や、コスト増加などの問題を招いていた。さらに、シールドチューブの内側に接続されたアース端子は、フラットケーブルのシールドチューブへの挿通作業を困難にする一因にもなっていた。
【0008】
そこで、本発明では、より簡易にノイズを防止でき得るケーブルユニットおよびアース線接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のケーブルユニットは、内部に導電層が、外部に絶縁層が形成された筒状の保護チューブで、信号ケーブルを被覆したケーブルユニットであって、信号ケーブルを被覆した保護チューブの一端を、外側に一回折り返した後に当該折返し部の導電層が互いに向かい合うべく1回以上折り返し、当該向かい合う導電層の間にアース線の一端を挟みこんだ状態でアース線と導電層とが接続されていることを特徴とする。
【0010】
好適な態様では、前記保護チューブの一端は、非筒状となるべく、周方向において一部が切り落とされている。他の好適な態様では、前記保護チューブの端部は、絶縁体で被覆される。
【0011】
他の本発明であるアース線の接続方法は、筒状の保護チューブで信号ケーブルを被覆したケーブルユニットに、アース線を接続する接続方法であって、内側に導電層、外側に絶縁層が形成された保護チューブの一端を外側に折り返した後に当該押し返し部の導電層が互いに向かい合うべく1回以上折り返し、当該向かい合う導電層の間にアース線の一端を挟みこんだ状態でアース線と導電層とを接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シールドチューブの一端が、外側に折り返された後、導電層が向かい合うようにさらに1回以上折り返され、この向かい合う導電層の間にアース線が挟み込まれた状態で接続される。この場合、アース線は、シールドチューブの外側に接続されているにも関わらず、導電層が外部に露出しないことになる。その結果、フラットケーブルの挿通作業等に影響を与えることなく、また、他の電子部品との短絡等の問題を防止でき、より簡易に電磁ノイズを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態であるケーブルユニット10の概略構成図である。このケーブルユニット10は、フラットケーブル12をシールドチューブ14で被覆することにより構成されている。
【0014】
フラットケーブル12は、周知のとおり、多数の芯材16を絶縁体からなる被覆材18で帯状に束ねた信号線である。このフラットケーブル12の両端においては、芯材16が外部に露出しており、当該両端にコネクタ(図示せず)が圧接される。この圧接されたコネクタを介して、フラットケーブル12の両端は、互いに異なる電子部品に接続され、当該異なる電子部品間での信号の送受を行う。このとき、フラットケーブル12で送受される信号は、周囲に存在する電子部品等から放出される電磁ノイズの影響を受けて、その信号品質が低下する場合がある。また、逆に、当該フラットケーブル12から電磁ノイズが放出され、他の信号の品質を低下させる場合がある。かかる電磁ノイズに起因する信号品質の低下は、高い信号品質が要求される装置、例えば、オーディオ装置などでは、大きな問題となる。
【0015】
そこで、本実施形態では、フラットケーブル12をシールドチューブ14で被覆し、当該フラットケーブル12を電磁ノイズからシールドしている。シールドチューブ14は、内側に導電層22、外側に絶縁層20が形成された筒状部材である。このシールドチューブ14の導電層22に、アース線のアース端子を接続して接地することで、フラットケーブル12の電磁ノイズのシールドが図られている。
【0016】
ここで、図2は、従来のケーブルユニット50の概略構成図である。図2から明らかなとおり、従来は、アース線のアース端子を導電層に接続するために、シールドチューブ54をフラットケーブル52より幅広とし、シールドチューブ54のサイドに余裕を持たせていた。そして、シールドチューブ54のうちフラットケーブル52より幅広で余る部分に、アース線56の一端に設けられた導通部材(以下「アース端子」という)56aを挿入し、アース端子56aとシールドチューブ54の内側の導電層とを接触させた状態でカシメていた。かかる従来の方法では、シールドチューブ54が幅広、ひいては、ケーブルユニット50全体が幅広となり、当該ケーブルユニット50の配線のためのスペースが広く必要となっていた。また、幅広のシールドチューブを用いるためコストアップの原因となっていた。さらに、通常、シールドチューブ54にアース線56を接続した後に、フラットケーブル52をシールドチューブ54に挿通するが、この際、シールドチューブ54の内側に接続されたアース端子56aが邪魔となって、フラットケーブル52の挿通作業を困難にする場合があった。さらに、従来の構成では、シールドチューブ54の端面54aにおいて導電層が露出することになる。この露出したシールドチューブ端面54aの導電層がフラットケーブル52の端部に設けられるコネクタ等と接触して短絡を生じる恐れもあった。そのため、従来では、コネクタ等との短絡を防止するために、シールドチューブ54をフラットケーブル52より短くしていた。この場合、フラットケーブル52のうちシールドチューブ54で被覆されない部分の面積が大きくなるため、電磁ノイズの影響を受けやすくなっていた。
【0017】
このように、従来のケーブルユニットでは、製造工程の煩雑化、コストアップ、電磁ノイズのシールド性の低下など様々な問題があった。そこで、本実施形態では、特殊な態様でシールドチューブへのアース線接続を行い、上記の種々の問題を解決している。以下、この点について詳説する。
【0018】
図3〜図5は、シールドチューブ14の一端付近の図であり、アース線24の接続の過程を示す図である。ケーブルユニット10に用いられるシールドチューブ14は、予め、被覆対象のフラットケーブル12とほぼ同じ長さに調整されている。このシールドチューブ14にアース線24を接続する際には、まず、当該シールドチューブ14の一端を部分的に切り落とし、略矩形、換言すれば、非筒状のヒレ状部30(折り返し部)を形成する(図3参照)。続いて、このヒレ状部30を外側に折り返す。このとき、導電層22が外側にくることになる。さらに、この折り返したヒレ状部30を、そのほぼ中央で、さらに、折り返し、外側に露出していた導電層22が互いに向かい合うように、折り畳む。換言すれば、ヒレ状部30は、外側に一度、山折された後、その中央付近で谷折される。図4は、この時点におけるシールドチューブ14の様子を示した図である。図4から明らかなとおり、山折と谷折とを行った後は、ヒレ状部30において、絶縁層20が外側に露出することになる。続いて、この折り畳まれることにより、互いに向かい合うことになった導電層22でアース線24のアース端子24aを挟み込む。そして、この状態で、折り畳まれたヒレ状部30をアース線24とともにカシメて固定する。このとき、アース線24のアース端子24aは、両側からシールドチューブ14の導電層22に接触することになる。その結果、アース線24と導電層22との導通性を確実に確保することができ、ひいては、確実にシールドチューブ14を接地することができる。また、折り畳まれたヒレ状部30で挟み込んだ上でアース端子24aをカシメているため、当該アース端子24aが脱落しにくく、接地状態を安定して維持できる。
【0019】
また、本実施形態によれば、全体として筒状であるシールドチューブ14の外側にアース端子24aが接続されることになる。その結果、当該シールドチューブ14にフラットケーブル12を挿通する際、当該フラットケーブル12とアース端子24aとの接触が防止される。その結果、フラットケーブル12の挿通作業を容易化できる。また、シールドチューブ14の筒状部分の外側にアース端子24aが接続されているため、シールドチューブ14全体の幅をフラットケーブル12とほぼ同じにすることができる。その結果、コストを低減でき、また、ケーブルユニット10の配線に要するスペースも低減できる。
【0020】
ところで、このアース端子24aを接続した状態では、シールドチューブ14の筒状部分の端面は、外側に露出した状態のままである。この端面においては、導電層22も露出している。この端面における導電層22が、他の電子部品やフラットケーブルに接続されるコネクタ等に接触し、短絡した場合には、装置の誤動作や故障などを招く場合がある。
【0021】
そこで、本実施形態では、アース端子24aを接続した後、シールドチューブ14の端面を、絶縁テープ26で被覆する。図5は、シールドチューブ14の端部周縁に絶縁テープ26を巻きつけた状態を示す図である。絶縁テープ26は、絶縁性材料からなり、その片面に粘着材が塗布されたシート状部材である。この絶縁テープ26を、シールドチューブ14の端部周縁に巻き付け、端面において露出していた導電層22を被覆する。これにより、シールドチューブ14の端部とコネクタとが接触しても短絡することがない。そのため、シールドチューブ14をフラットケーブル12の端部付近まで配置することができる。その結果、図1および図2の比較からも明らかなとおり、フラットケーブル12のうちシールドチューブ14で被覆されていない部分の面積が大幅に低減することができる。そして、これにより、従来に比べて、より確実に電磁ノイズをシールドすることができる。
【0022】
ここで、図2に図示したような従来の構成でも、シールドチューブ54の端部周縁に絶縁テープを巻き付けることで、当該端部において露出している導電層をある程度被覆できる。しかし、筒状のシールドチューブ54の内側にアース端子56aを接続している従来の構成では、当該端部から延びるアース線56が邪魔するため、シールドチューブ端部の全周に渡って絶縁テープを巻き付けることはできなかった。一方、本実施形態では、既述したように、筒状の外側にアース端子24aを接続しているため、アース線24がシールドチューブ端部への絶縁テープ26の邪魔になることはなく、シールドチューブ端部の全周囲に絶縁テープ26を巻き付けることができる。その結果、上述したように、コネクタとシールドチューブ端部との短絡を確実に防止することができる。
【0023】
なお、この周縁に巻き付けられる絶縁テープ26と、折り畳まれたヒレ状部30に接続されたアース線24と、の干渉を極力防止するために、アース端子24aは、折り返し部の谷折線近傍、換言すれば、絶縁テープ26が巻き付けられるシールドチューブ14の筒状部分の端面から極力離れた位置においてカシメられることが望ましい。また、アース線24は、シールドチューブの一端にのみ接続されればよいが、絶縁テープ26は、シールドチューブ14の両端に巻き付ける。
【0024】
以上のような方法でシールドチューブ14へのアース線24の接続、および、シールドチューブ端面への絶縁テープ26の巻き付けが行われれば、当該シールドチューブ14にフラットケーブル12が挿通されて、ケーブルユニット10となる。
【0025】
そして、この本実施形態のケーブルユニット10によれば、フラットケーブル12のほぼ全面をシールドチューブ14で被覆することができるため、電磁ノイズの影響を受けにくく、高品質での信号送付が可能となる。また、シールドチューブ14の幅を低減できるため、ケーブルユニット10の配線に要するスペースを低減でき、また、フラットケーブル12の幅に近い寸法のシールドチューブ14を使用でき、コストも低減できる。
【0026】
なお、以上で説明した構成は一例であり、シールドチューブの端部を折り返すとともに当該折返し部にアース線が接続されるのであれば、その他の構成は適宜、変更されてもよい。例えば、本実施形態では、被覆対象の信号線としてフラットケーブルを例示しているが、当然、他の信号線、例えば、断面円形の信号線を被覆対象としてもよい。また、本実施形態では、シールドチューブの端部を二回折り返しているが、1回、あるいは、3回以上、折り返すようにしてもよい。また、絶縁テープ26をシールドチューブ14の端部に巻き付ける場合、ヒレ状部30を山折りして外側に導電層22を露出させ、この露出された導電層22にアース端子24aをカシめてから、導電層22が互いに向かい合うように折返し(谷折り)しても、その後の絶縁テープ26の巻き付けにより、導電層22によるアース端子24aの挟み込み状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態であるケーブルユニットの概略構成図である。
【図2】従来のケーブルユニットの概略構成図である。
【図3】アース線の接続過程を示す図である。
【図4】アース線の他の接続過程を示す図である。
【図5】アース線の他の接続過程を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
10 ケーブルユニット、12 フラットケーブル、14 シールドチューブ、20 絶縁層、22 導電層、24 アース線、24a アース端子、26 絶縁テープ、30 ヒレ状部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に導電層が、外部に絶縁層が形成された筒状の保護チューブで、信号ケーブルを被覆したケーブルユニットであって、
信号ケーブルを被覆した保護チューブの一端を、外側に一回折り返した後に当該折返し部の導電層が互いに向かい合うべく1回以上折り返し、当該向かい合う導電層の間にアース線の一端を挟みこんだ状態でアース線と導電層とが接続されていることを特徴とするケーブルユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のケーブルユニットであって、
前記保護チューブの一端は、非筒状となるべく、周方向において一部が切り落とされていることを特徴とするケーブルユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のケーブルユニットであって、
前記保護チューブの端部は、絶縁体で被覆されることを特徴とするケーブルユニット。
【請求項4】
筒状の保護チューブで信号ケーブルを被覆したケーブルユニットに、アース線を接続する接続方法であって、
内側に導電層、外側に絶縁層が形成された保護チューブの一端を外側に折り返した後に当該押し返し部の導電層が互いに向かい合うべく1回以上折り返し、当該向かい合う導電層の間にアース線の一端を挟みこんだ状態でアース線と導電層とを接続することを特徴とするアース線の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−147146(P2008−147146A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336236(P2006−336236)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】