説明

ケーブルラック用上下自在継ぎ金具

【課題】専用工具による締付けトルク値の管理が不要になり、高所でも連結作業が容易で均一な電気的接続ができ、電気的に接続されているか否かを連結後でも確認することが可能で、補強子桁を増設する場合でも別途アースボンド線の接続が不要になるケーブルラック用上下自在継ぎ金具を提供する。
【解決手段】重合された継手片20相互の一方の継手片20に該一方の継手片20側からタッピンネジ40又はメートルネジ50を挿通せしめる固定孔22を開穿する。他方の継手片20に一方の継手片20から挿通されたタッピンネジ40又はメートルネジ50の端部を固定せしめる調整孔23又は調整凹部24を形成する。重合された継手片20相互の上下屈曲角度調整位置をタッピンネジ40又はメートルネジ50で固定する。該タッピンネジ40又はメートルネジ50を介して継手片20相互を電気的に接続するように設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルラック相互の電気的接続を確保するケーブルラック用上下自在継ぎ金具に係り、アースボンド線を使用せず、しかも専用工具による締付けトルク値の管理等も不要なケーブルラック用上下自在継ぎ金具に関する。
【背景技術】
【0002】
配線用に用いられる金属製ケーブルラックの多くは、現場の環境変化に対処できるように、耐候性、防錆性、耐塩性、耐湿性、耐薬品性等を考慮して、たとえばメラミン焼付塗装や防錆力の優れたエポキシ樹脂系塗装など特殊な表面処理が施されている。ところが、これらの特殊な表面処理膜は導電性がないので、ケーブルラック相互を電気的に接続するために、各種の提案がなされている。例えば、ケーブルラック相互をアースボンド線で接続する構造が特許文献1に示されている。また、ボルトやナットの座面に突起(特許文献2)や鋸歯状の凹凸(特許文献3)を設け、これらの突起や凹凸でケーブルラックの塗装を強制的に剥離する手段等を用いる提案もある。
【0003】
特許文献1では、ケーブルラック接続作業にアースボンド線を接続する作業が加わるので接続作業として極めて多くの手間を要するものになり、特許文献2や特許文献3では、突起や鋸歯状の凹凸に剥離した塗膜が重なると、それ以上の剥離が困難になり電気的接続が不十分になるなどの問題点が残されていた。当出願人は、かかる問題点を解決するために特許文献4を開発し、現在では電気的接続を確実にする工法として多くのケーブルラック連結工事に採用されている。
【0004】
この特許文献4は、電気的接続を確実にするために、導電性の継ぎボルトに、ケーブルラックのボルト挿通孔に強制嵌入してボルト挿通孔を拡開する角根部を設け、この継ぎボルトにねじ止めされる導電性のナットに、圧接する表面処理膜を周囲に押しやるスクリュー形状の破断突部を形成し、これらの継ぎボルトとナットとの締結手段にて、ケーブルラック相互を電気的に接続するケーブルラックの継ぎ方法に関するものである。
【0005】
しかしながら、特許文献4による継ぎ方法は、これまで上下自在継手部では認可されていなかった。そのため、上下自在継ぎ金具を用いて電気的に接続する場合は、図13に示すように、ラック相互にアースボンド線Rを接続する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭55‐43700号公報
【特許文献2】実開昭54‐48399号公報
【特許文献3】実開昭56‐51414号公報
【特許文献4】特公平4‐4808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献4のケーブルラックの継ぎ方法は、ケーブルラック親桁部材と直線継ぎ金具、または親桁相互を重ね合わせ状とした際に、角根ボルトとセレイト付きの固定ナットを使用して電気的な接続を図るものだが、最近になり、上下自在継手部において重合した継手片相互を電気的に接続する目的で、継手片相互を連結する従来の連結軸に代えて、ケーブルラック親桁部材と直線継ぎ金具とを連結する際に使用する角根ボルトとセレイト付の固定ナットを使用して指定トルク値で締付けること、及び直線継ぎ金具と同様に角根ボルトとセレイト付きの固定ナットを使用してケーブルラック親桁部材と継手片とを連結して指定トルク値で締付けること、更に締付け確認後に締付け確認シールを締付け部近傍に貼付けすることなどの条件によって、上下自在継手部においても特許文献4による継ぎ方法が認可された(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修平成19年度版電気設備工事管理指針)。この継ぎ方法では、十分な電気的接続を得るために専用工具による締付けトルク値の管理が極めて重要である。すなわち、上下自在継ぎ金具相互の塗膜を破って電気的接続を確実にするには、トルクレンチ等の専用工具で指定トルク値になるまで締付ける必要がある。締付けトルクが不足した場合は、電気的接続が不十分になる恐れがある。
【0008】
そこで、指定トルク値まで締付けた証明として締付け確認シールを締付部近傍に貼り付けることが義務付けられている。ところが、上下自在継ぎ金具相互を連結する作業は高所での作業になることが多いことから確認シールのみでは信頼性に欠ける不都合が生じる。例えば締付けトルクが不十分な状態でシールが貼られていた場合では、この締付けトルクを後からチェックしようとしても高所での確認作業が極めて困難になっているのが現状である。また、高所にあるシールを確認することが困難なケースもある。
【0009】
しかも、電気的接続を確実にする継ぎボルトやナットを使用した連結状態は、一般のボルト、ナットの連結状態と外観上でほとんど変わりがないので、上下自在継ぎ金具相互を連結しているボルトやナットが、電気的接続が可能な継ぎボルトやナットであるかを連結後に判別することも困難になっている。
【0010】
更に、上下自在継ぎ金具は、ケーブルラックを上下に屈曲した状態で連結する際に使用されるので、ケーブルラックの屈曲部分でケーブルを支持するための補強子桁を上下自在継ぎ金具に増設することもある。この場合、補強子桁は、上下自在継ぎ金具を貫通する継ぎボルトに連結されるので、この補強子桁が継ぎボルトによる電気的接続を妨げるものになっていた。そのため、上下自在継ぎ金具に補強子桁を増設する場合、たとえ電気的接続を可能にする継ぎボルト等を使用したとしても、別途アースボンド線を接続する必要が生じていた。
【0011】
そこで本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、上下自在継ぎ金具相互の連結作業において、専用工具による締付けトルク値の管理が不要になり、高所でも連結作業が容易で均一な電気的接続ができ、電気的に接続されているか否かを連結後でも確認することが可能で、補強子桁を増設する場合でも別途アースボンド線の接続が不要になるケーブルラック用上下自在継ぎ金具の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、ケーブルラックPの接続端部相互に装着される一対の連結片10と、該連結片10からそれぞれ延長された継手片20と、ケーブルラックP接続時に重合される継手片20相互に開穿された貫通孔21に挿通して継手片20相互を上下屈曲角度調整自在に連結する連結軸30とから構成され、連結片10と継手片20との表面に非導電性の表面処理膜が施された上下自在継ぎ金具において、重合された継手片20相互の一方の継手片20に該一方の継手片20側からタッピンネジ40又はメートルネジ50を挿通せしめる固定孔22を開穿し、他方の継手片20に一方の継手片20から挿通されたタッピンネジ40又はメートルネジ50の端部を固定せしめる平面略円弧形状に湾曲した長孔状の調整孔23又は調整凹部24を形成し、重合された継手片20相互の上下屈曲角度調整位置をタッピンネジ40又はメートルネジ50で固定すると共に、該タッピンネジ40又はメートルネジ50を介して継手片20相互を電気的に接続するように設けたことにある。
【0013】
第2の手段の前記固定孔22は前記継手片20の前記貫通孔21を中心とする略同芯円上に複数個形成され、前記調整孔23は前記貫通孔21を中心とする略同芯円上に略円弧状に形成されたものである。
【0014】
第3の手段は、前記継手片20の両方に前記固定孔22と前記調整孔23又は調整凹部24とを併設し、重合された継手片20相互のどちらからでも前記タッピンネジ40又はメートルネジ50を挿通できるように設けられている。
【0015】
第4の手段における前記固定孔22の直径と前記調整孔23の幅は、前記タッピンネジ40のネジ径よりも小径、幅狭に形成されたものである。
【0016】
第5の手段の前記調整孔23の幅は、前記タッピンネジ40のネジ径よりも幅狭に形成され、前記固定孔22の直径は前記タッピンネジ40のネジ径よりも大径に形成されると共に、該固定孔22周囲の外側面にくい込む突起41が前記タッピンネジ40の頭部42下面に設けられている。
【0017】
第6の手段は、ケーブルラックPの連結部分に装着せしめる補強子桁Qを前記連結軸30相互に連結したときに、前記固定孔22と前記調整孔23とが補強子桁Qと干渉しない位置で重合するように設けられたことにある。
【0018】
第7の手段は、前記上下自在継ぎ金具において、前記固定孔22はタッピンネジ40より小径で該タッピンネジ40を食い込ませるように形成した平面略小判形状を成し、他方の継手片20に一方の継手片20から挿通されたタッピンネジ40の先端を押圧せしめる平面略円弧形状の調整凹部24を凹設し、重合された継手片20相互の上下屈曲角度調整位置をタッピンネジ40で固定すると共に、該タッピンネジ40を介して継手片20相互を電気的に接続するように設けたことにある。
【0019】
第8の手段は、前記上下自在継ぎ金具において、前記固定孔22はメートルネジ50をねじ込むようにタップ加工され、他方の継手片20に一方の継手片20から挿通されたメートルネジ50の先端を押圧せしめる平面略円弧形状の調整凹部24を凹設し、重合された継手片20相互の上下屈曲角度調整位置をメートルネジ50で固定すると共に、該メートルネジ50を介して継手片20相互を電気的に接続するように設けたことにある。
【0020】
第9の手段における固定孔22は、前記継手片20にバーリング加工で開穿された挿通孔にタップ加工を施して形成したものである。
【0021】
第10の手段は、前記上下自在継ぎ金具において、前記固定孔22はタッピンネジ40のネジ径より小径で該タッピンネジ40のネジ山を食い込ませるように形成した平面略小判形状を成し、他方の継手片20に一方の継手片20から挿通されたタッピンネジ40の端部を挿通せしめる平面略円弧形状に湾曲した長孔状の調整孔23を形成し、これら固定孔22又は調整孔23を形成した部分の板厚を薄く形成したものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の請求項1の如く、重合された継手片20相互の一方の継手片20に該一方の継手片20側からタッピンネジ40又はメートルネジ50を挿通せしめる固定孔22を開穿し、他方の継手片20に一方の継手片20から挿通されたタッピンネジ40又はメートルネジ50を固定せしめる長孔状の調整孔23を開穿したことにより、ケーブルラックP連結作業に伴う上下自在継ぎ金具相互の上下屈曲角度調整位置をタッピンネジ40又はメートルネジ50が固定すると共に、継手片20相互の電気的接続を確実に行うことができる。この結果、専用工具による締付けトルク値の管理が不要になり、高所でも容易な連結作業で電気的接続を均一に行える。またタッピンネジ40又はメートルネジ50の取付け状態を確認するだけで電気的に接続されているか否かを確実に確認することが可能になる。
【0023】
請求項2の如く、貫通孔21を中心とする同芯円上に固定孔22と調整孔23とを形成したことで、重合した継手片20相互の上下屈曲角度に沿ってタッピンネジ40を挿通することができるので、継手片20の固定作業を容易にすることができる。
【0024】
しかも、請求項3のように、継手片20相互のどちらからでも前記タッピンネジ40を挿通できるように設けることで、角度調整作業や固定作業等がより容易になる。
【0025】
更に、請求項4の如く固定孔22と調整孔23とをタッピンネジ40のネジ径よりも小径に形成することで、タッピンネジ40による固定と電気的接続とを確実にすることができる。
【0026】
また、請求項5のように、固定孔22周囲の外側面にくい込む突起41を前記タッピンネジ40の頭部42下面に設けることによっても、タッピンネジ40による固定と電気的接続とが可能になる。
【0027】
請求項6のように、ケーブルラックPの連結部に補強子桁Qが連結された場合でも、固定孔22と調整孔23とが補強子桁Qと干渉しない位置で重合するので、タッピンネジ40を挿通して継手片20相互を電気的に接続することができる。この結果、補強子桁Qを増設する場合でも別途アースボンド線の接続が不要になるものである。
【0028】
請求項7では、平面略小判形状を成し、タッピンネジ40より小径で該タッピンネジ40を食い込ませるように形成した固定孔22と、他方の継手片20に一方の継手片20から挿通されたタッピンネジ40の先端を押圧せしめる調整凹部24とを設けているので、タッピンネジ40を締付けることにより、鉄素地に食い込みながら調整凹部24の表面処理膜を削り取ることで、タッピンネジ40による固定と電気的接続とが可能になる。
【0029】
請求項8及び請求項9によると、前記固定孔22はメートルネジ50をねじ込むようにタップ加工されているので、重合された継手片20相互の上下屈曲角度調整位置をメートルネジ50でも固定することができるものである。
【0030】
請求項10の如く、これら固定孔22又は調整孔23を形成した部分の板厚を薄く形成することで、例えば、ステンレス鋼等の硬い材質や、板厚が厚い場合などでもタッピンネジ40を締付け易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例を示す使用状態の正面図である。
【図2】本発明の一実施例を示す使用状態の平断面図である。
【図3】本発明の連結片と継手片との一実施例を示す正面図である。
【図4】本発明の貫通孔と調整孔との一実施例を示す正面図である。
【図5】本発明の固定孔と調整孔との一実施例を示す要部断面図である。
【図6】本発明の一実施例に補強子桁を装着した状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の継手片の他の実施例を示し、(イ)は正面図(ロ)は断面図である。
【図8】本発明の固定孔と調整凹部との一実施例を示す要部断面図である。
【図9】本発明の固定孔と調整凹部との他の実施例を示す要部断面図である。
【図10】本発明の固定孔と調整凹部との他の実施例を示す要部断面図である。
【図11】本発明の固定孔と調整凹部との他の実施例を示す要部断面図である。
【図12】本発明の固定孔と調整孔との他の実施例を示す要部断面図である。
【図13】従来の上下自在継ぎ金具による継ぎ方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明によると、専用工具による締付けトルク値の管理が不要になり高所でも連結作業が容易で均一な電気的接続ができ、電気的に接続されているか否かを連結後でも確認することが可能で、補強子桁を増設する場合でも別途アースボンド線の接続が不要になるなどといった種々の効果を実現した。
【実施例1】
【0033】
本発明上下自在継ぎ金具は、ケーブルラックP相互を導電状態で連結する継ぎ金具である。すなわち、非導電性の表面処理膜が施された金属製ケーブルラックPの接続端部相互に、非導電性の表面処理膜が施された上下自在継ぎ金具を装着してケーブルラックP相互を上下屈曲自在に連結するものであり、特に、上下自在継ぎ金具自体を上下屈曲自在に固定しながらタッピンネジ40にて電気的に接続する構成になっている。
【0034】
図1乃至図6に示す上下自在継ぎ金具では、円形状の固定孔22と平面略円弧形状に湾曲した長孔状の調整孔23とを組み合わせた実施例を示している。すなわち、本発明上下自在継ぎ金具の構成は、表面に非導電性の表面処理膜が施された連結片10と継手片20、更に、継手片20相互を連結する連結軸30からなる(図1参照)。連結片10は、ケーブルラックPの接続端部相互に装着される一対の部材で、この連結片10から継手片20がそれぞれ延長されている。この継手片20は、ケーブルラックP接続時に重合される部材であり、継手片20相互に貫通孔21が開穿されている(図3参照)。連結軸30は、この貫通孔21に挿通して継手片20相互を上下屈曲角度調整自在に連結するもので、図示例では、連結ボルト30Aとナット30Bとを連結軸30として使用している(図1参照)。このように、継手片20相互を上下屈曲角度調整自在に連結することで、ケーブルラックPの接続端部が上下屈曲角度調整自在に連結されるものとなる。
【0035】
重合された継手片20相互の一方の継手片20に固定孔22を開穿する(図1参照)。この固定孔22は、該一方の継手片20側から他方の継手片20方向にタッピンネジ40を挿通せしめるもので、タッピンネジ40の頭部42が一方の継手片20に接することになる。図示の固定孔22は、継手片20の貫通孔21を中心とする同芯円上に複数個形成されている(図1、図3参照)。固定孔22の形状は、丸孔状、角孔状など任意に形成することが可能で、例えば、貫通孔21を中心とする同芯円上に略円弧状に形成することも可能である(図4(イ)〜(ハ)参照)。
【0036】
重合された継手片20相互の他方の継手片20に調整孔23を開穿する(図1参照)。この調整孔23は、一方の継手片20から挿通されたタッピンネジ40を挿通せしめる長孔状の孔で、貫通孔21を中心とする同芯円上に略円弧状に形成されている。この調整孔23は、タッピンネジ40を挿通して固定すると共に、継手片20相互を電気的に接続するために、調整孔23の幅は、タッピンネジ40のネジ径よりも幅狭に形成されている。図示例では、調整孔23と共に、固定孔22の直径もタッピンネジ40のネジ径よりも小径に形成されている(図5(イ)参照)。また、固定孔22の直径を前記タッピンネジ40のネジ径よりも大径に形成してもよい(同図(ロ)参照)。この場合、固定孔22周囲の外側面にくい込む突起41をタッピンネジ40の頭部42下面に設け、この突起41で継手片20の表面に施された非導電性の表面処理膜を除去して継手片20相互を電気的に接続する。
【0037】
このように、一方の継手片20の固定孔22からタッピンネジ40を挿通し、他方の継手片20の調整孔23にタッピンネジ40を固定することで、継手片20相互の上下屈曲調整位置が固定されると共に、継手片20相互を電気的に接続するものである。このとき、継手片20の両方に前記固定孔22と前記調整孔23とを併設することで、重合された継手片20相互のどちらからでも前記タッピンネジ40を挿通できるようになる(図1、図2参照)。また、いずれか一方の継手片20の基端部を屈曲し、連結片10を固定したケーブルラックP相互の位置が直線上で連結されるように形成することでケーブルラックPの連結精度を高めることができる(図2参照)。
【0038】
本発明上下自在継ぎ金具は、ケーブルラックPを上下に屈曲した状態で連結する際に使用される。そのため、このケーブルラックPの連結部分でケーブルを支持するための補強子桁Qを増設することもある。この場合、補強子桁Qは、重合した前記継手片20の内側相互に架設され、継手片20の貫通孔21を貫通する連結軸30に装着される(図6参照)。このとき、固定孔22と調整孔23とは補強子桁Qと干渉しない位置で重合するように継手片20に形成するものである。
【0039】
ケーブルラックPに装着した連結片10とケーブルラックPとの電気的な接続は従来の角根ボルト1とセレイト3付きの固定ナット2が使用される。すなわち、ケーブルラックPの内側から角根ボルト1を挿通し、ケーブルラックPの外側に配設した連結片10の連結孔11に通して固定ナット2を締付ける(図3、図6参照)。すると、角根ボルト1の角根部により、ケーブルラックP側の表面処理膜を破断する(図2参照)。一方、固定ナット2のセレイト3が連結片10の表面処理膜を周囲に押しやって剥離するので、ケーブルラックPと連結片10とが電気的に接続されるものである。
【0040】
図6では、アルミニウム製タイプのケーブルラックPを連結した状態を示している。また、図13の従来例で示す如く、ケーブルラックPがスチール製タイプの場合には、本発明継ぎ金具における連結片10の形状も従来の継ぎ金具の連結片100と同じ形状に変更される。但し、この場合でも継手片20は従来の継手片200ではなく、図1、図3、
図6に示す如く、固定孔22、調整孔23を有する本発明の継手片20になる。
【実施例2】
【0041】
図7及び図8に示す上下自在継ぎ金具では、略小判形状の固定孔22と調整凹部24とを組み合わせた実施例を示している。すなわち、この上下自在継ぎ金具の固定孔22は、タッピンネジ40の直径よりも僅かに小さい径の長孔で形成した平面小判形状に形成したものである(図7(イ)参照)。
【0042】
一方、この上下自在継ぎ金具の調整凹部24は、一方の継手片20から挿通されたタッピンネジ40の先端を押圧せしめる平面略円弧形状の調整凹部24を凹設したものである。この調整凹部24は、前記調整孔23の形状と同様の平面略円弧形状に湾曲した形状の開口部を有し(図7(イ)参照)、例えば継手片20を打ち出して凹部状に形成している(同図(ロ)参照)。
【0043】
このような上下自在継ぎ金具にタッピンネジ40を締め付けると(図8(イ)参照)、タッピンネジ40のねじ山が固定孔22の開口部部分の鉄素地に食い込みながら、タッピンネジ40の先端部が調整凹部24の凹部内部の表面を削り取り、電気的接続が得られる(同図(ロ)参照)。
【実施例3】
【0044】
図9乃至図11に示す上下自在継ぎ金具は、タップ加工を施した丸孔状の固定孔22と前記調整凹部24とを組み合わせた実施例を示している。この実施例では、通常のメートルネジ50を使用することを可能にしている。
【0045】
すなわち、図9に示す固定孔22は、継手片20を丸孔状に開穿し、この開口部分にタップ22Aを加工したものである。また、図10に示す固定孔22は、継手片20に調整凹部24の反対方向に突出するバーリング加工を施し、この内周面にタップ22Aを施したものである。更に、図11に示す固定孔22は、調整凹部24方向に突出するバーリング加工を施し、この内周面にタップ22Aを施したものである。このような固定孔22によると、通常のメートルネジ50を使用することが可能になる。
【実施例4】
【0046】
図12に示す上下自在継ぎ金具は、平面略小判形状の固定孔22と調整孔23とを組み合わせた実施例を示している。この実施例では、タッピンネジ40を使用する。すなわち、固定孔22の直径と調整孔23の幅を、タッピンネジ40のネジ径よりもわずかに小径、幅狭に形成すると共に、これら固定孔22又は調整孔23を形成した部分の板厚を薄く形成したものである。
【0047】
図12(イ)は、固定孔22周囲の板厚を薄く形成してタッピンネジ40をねじ込むものである。また、同図(ロ)のように、調整孔23周囲の板厚を薄く形成することも可能である。このような上下自在継ぎ金具によると、ステンレス鋼のように材質が硬いものや板厚が厚い場合など、タッピンネジ40が入り難い場合でも、タッピンネジ40のねじ込み作業を容易にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、あらゆる形態のケーブルラックPに適応可能である。また、本発明は、図示例に限定されるものではなく、継ぎ金具の形状や構造、固定孔22や調整孔23、調整凹部24の形状、タッピンネジ40やメートルネジ50の代替物など、本発明の要旨を変更しない範囲において自由に変更できるものである。
【符号の説明】
【0049】
P ケーブルラック
P1 連結孔
Q 補強子桁
R アースボンド線
1 角根ボルト
2 固定ナット
3 セレイト
10 連結片
11 連結孔
20 継手片
21 貫通孔
22 固定孔
22A タップ
23 調整孔
24 調整凹部
30 連結軸
40 タッピンネジ
41 突起
42 頭部
50 メートルネジ
100 連結片
200 継手片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルラックの接続端部相互に装着される一対の連結片と、該連結片からそれぞれ延長された継手片と、ケーブルラック接続時に重合される継手片相互に開穿された貫通孔に挿通して継手片相互を上下屈曲角度調整自在に連結する連結軸とから構成され、連結片と継手片との表面に非導電性の表面処理膜が施された上下自在継ぎ金具において、
重合された継手片相互の一方の継手片に該一方の継手片側からタッピンネジ又はメートルネジを挿通せしめる固定孔を開穿し、
他方の継手片に一方の継手片から挿通されたタッピンネジ又はメートルネジの端部を固定せしめる平面略円弧形状に湾曲した長孔状の調整孔又は調整凹部を形成し、
重合された継手片相互の上下屈曲角度調整位置をタッピンネジ又はメートルネジで固定すると共に、該タッピンネジ又はメートルネジを介して継手片相互を電気的に接続するように設けたことを特徴とするケーブルラック用上下自在継ぎ金具。
【請求項2】
前記固定孔は前記継手片の前記貫通孔を中心とする同芯円上に複数個形成され、前記調整孔は前記貫通孔を中心とする同芯円上に円弧状に形成された請求項1記載のケーブルラック用上下自在継ぎ金具。
【請求項3】
前記継手片の両方に前記固定孔と前記調整孔又は調整凹部とを併設し、重合された継手片相互のどちらからでも前記タッピンネジ又はメートルネジを挿通できるように設けられた請求項1又は2記載のケーブルラック用上下自在継ぎ金具。
【請求項4】
前記固定孔の直径と前記調整孔の幅は、前記タッピンネジのネジ径よりも小径、幅狭に形成された請求項1乃至3いずれか記載のケーブルラック用上下自在継ぎ金具。
【請求項5】
前記調整孔の幅は、前記タッピンネジのネジ径よりも幅狭に形成され、前記固定孔の直径は前記タッピンネジのネジ径よりも大径に形成されると共に、該固定孔周囲の外側面にくい込む突起が前記タッピンネジの頭部下面に設けられた請求項1乃至3いずれか記載のケーブルラック用上下自在継ぎ金具。
【請求項6】
ケーブルラックの連結部分に装着せしめる補強子桁を前記連結軸相互に連結したときに、前記固定孔と前記調整孔とが補強子桁と干渉しない位置で重合するように設けられた請求項1乃至5いずれか記載のケーブルラック用上下自在継ぎ金具。
【請求項7】
前記上下自在継ぎ金具において、前記固定孔はタッピンネジより小径で該タッピンネジを食い込ませるように形成した平面略小判形状を成し、他方の継手片に一方の継手片から挿通されたタッピンネジの先端を押圧せしめる平面略円弧形状の調整凹部を凹設し、重合された継手片相互の上下屈曲角度調整位置をタッピンネジで固定すると共に、該タッピンネジを介して継手片相互を電気的に接続するように設けた請求項1乃至3いずれか記載のケーブルラック用上下自在継ぎ金具。
【請求項8】
前記上下自在継ぎ金具において、前記固定孔はメートルネジをねじ込むようにタップ加工され、他方の継手片に一方の継手片から挿通されたメートルネジの先端を押圧せしめる平面略円弧形状の調整凹部を凹設し、重合された継手片相互の上下屈曲角度調整位置をメートルネジで固定すると共に、該メートルネジを介して継手片相互を電気的に接続するように設けた請求項1乃至3いずれか記載のケーブルラック用上下自在継ぎ金具。
【請求項9】
前記固定孔は、前記継手片にバーリング加工で開穿された挿通孔にタップ加工を施して形成した請求項8記載のケーブルラック用上下自在継ぎ金具。
【請求項10】
前記上下自在継ぎ金具において、前記固定孔はタッピンネジのネジ径より小径で該タッピンネジのネジ山を食い込ませるように形成した平面略小判形状を成し、他方の継手片に一方の継手片から挿通されたタッピンネジの端部を挿通せしめる平面略円弧形状に湾曲した長孔状の調整孔を形成し、これら固定孔又は調整孔を形成した部分の板厚を薄く形成した請求項1乃至3いずれか記載のケーブルラック用上下自在継ぎ金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−94012(P2010−94012A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207282(P2009−207282)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000136686)株式会社ブレスト工業研究所 (74)
【Fターム(参考)】